*(‘‘)* 魔法少女ヘリカル沢近のようです

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 22:48:32.76 ID:iD6WIS+70


*(‘‘)* どうしたんですか?

( ;´∀`)て モナ!?


3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 22:49:04.22 ID:iD6WIS+70

ある日のことです。
私、沢近ヘリカルがいつも通り高校からの帰路を一人歩いていると、なんだか困った様子の幼い男の子を見つけました。
なんだかとても困った様子だったので話しかけると、男の子は飛び上がりそうなくらい驚きます。

( ;´∀`) お、おねーちゃんだれだモナ?

おそるおそる訊ねてくる男の子に、私はできるだけ彼の緊張を和らげるように笑顔を浮かべながら答えました。

*(‘‘)* 私は、沢近ヘリカルと言います。通りすがりのただの高校生ですよ

( ;´∀`) モナ……

「そのわりにはちっちゃいモナ」と呟く男の子に、私は笑顔を消さぬまま「殴りますよ?」と穏やかに笑いかけました。
男の子はかなりビビッていました。ざまあみやがれです。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 22:49:34.72 ID:iD6WIS+70

*(‘‘)* それで、何を困っていたんです?

( ;´∀`) モナ……ふーせんがとれなくなっちゃったんだモナ

*(‘‘)* 風船?

男の子の言葉に、私は男の子の指差す木の上を見上げます。
すると少し高い場所にある枝に、黄色い風船がひっかかってしまっているのが見えました。

*(‘‘)* なるほど、そういうことですか

( ;´∀`) モナ、とりたいんだけど ぼくはきにのぼれないんだモナ

*(‘‘)* ふむ……

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 22:50:31.00 ID:iD6WIS+70

少しの間木を見上げていた私は、よし、と呟き、再び男の子に笑いかけます。

*(‘‘)* 大丈夫ですよ、おねーさんがなんとかしてあげます

( ;´∀`) モナ!? でも……

*(‘‘)* いいからいいから、まっかせなさい!

どんと小さいのが悩みの胸を叩きながら、私は男の子にウインクして見せます。
それでも不安そうな男の子に、「ちょっと向こうを向いていてくださいね」とだけ言って、私は風船の引っかかった枝を見上げます。
視界の端で、男の子が不思議そうな顔をしながら向こうを向いたのを確認すると、私はてのひらを風船の方に向け、静かに呟き始めました。


*( --)* ―――「ヘリカル……マジカル……」


6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 22:50:54.90 ID:iD6WIS+70

*(‘‘)* はい、もうこっちを向いていいですよ

( ;´∀`) モナ?

おそるおそるといった様子でふりむく男の子。
彼のその表情は私の右手に握られている黄色い風船を見ると、一瞬でぱあっと輝きました。

(*´∀`) ぼくのふーせんだモナ!! おねーちゃんがとってくれたモナ?

*(‘‘)* こんなこと、私に掛かればお茶の子さいさいです

(*´∀`) おねーちゃん すげーモナ! どうやったんだモナ!?

*(‘‘)* ふふん、それは秘密です

得意になって胸を張る私の前で、男の子はうれしそうにぴょんぴょんと跳ね回ります。
その幸せそうな顔を見て、私もちょっとだけ幸せな気分になりました。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 22:51:19.47 ID:iD6WIS+70

(*´∀`)ノシ おねーちゃん、ほんとにありがとだモナ!

「こんどぜったいおれいするモナ!!」と言いながら、男の子はうれしそうに手をぶんぶん振り、走り去っていきました。

*(‘‘)*ノシ 気をつけて帰るんですよー

私もそう言って笑いながら、男の子に手を振り返します。
まったく、あんなにぴょんぴょん跳ねて転んだりしないでしょうか?

*(‘‘)*=3 じゃ、私もそろそろ帰りますか

男の子の背中が見えなくなって、私がきびすをかえそうとしたときです

「優しいのですね」

ふいに、少年のような声が私の背中からかけられました。

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 22:51:56.18 ID:iD6WIS+70

*(‘‘)* ……?

しかし、あたりを見回してもどこにも人の姿はありません。
不思議に思った私が首をかしげていると

「私のほうから声をかけることになるとは……まったくこんなことは初めてですよ」

また同じ声がしました。
どうやら上のほうから聞こえてくるようです。
声のする方、ちょうど先程の男の子の風船が引っかかっていた木の方を見上げると


(,,゚Д゚) どうもこんにちは、ご機嫌いかがですか?


―――青い毛並みの、なんだか猫のようななにかが、こちらを見下ろしていました。

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 22:52:42.56 ID:iD6WIS+70

見た目は猫のような彼は、しかし人語を解している時点でおそらく猫ではないのでしょう。いえ、というより、私の中には、なぜか彼が猫ではないという確かな確信のようなものがありました。
自分は彼を知っているような気がする、そんな不思議な感覚とともに

*(‘‘)* ……どこかで、お会いしましたか?

だから自然と私の質問は、「あなたは何ですか?」ではなく、「どこかでお会いしましたか?」になりました

(,,゚Д゚) あなたがそんな気がするのなら、おそらくはそうなのでしょう

*(‘‘)* ……?

なんだか的を得ないというか、はぐらかしたような言い方をする彼に、私が戸惑いを隠せないでいると、今度は逆に彼の方から訊ねてきました。

(,,゚Д゚) あなたは、何なのです?

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 22:53:06.53 ID:iD6WIS+70


*(‘‘)* 見ての通り、普通の高校生ですが?

彼の質問に私は平然と答えます。
実際そうだし、嘘はついていないと思うのですが

(,,゚Д゚) 「普通の高校生」ですか……なるほど、たしかにそうなのでしょう。あなたは「普通の高校生」に違いない

「少なくとも、あなたがそう思っている限りはそうでしかない」と彼はなんだか含みのある言い方でそういいます。

(,,゚Д゚) しかし、あなたは本当に「そう思っている」のでしょうか? 実はあなたは、自分が他の人とはちょっと違うと感じているのではありませんか?

木からぴょんと飛び降りた彼は、私の足元まで歩み寄ると、そう言って私を見上げます。

*(‘‘)* 「ちょっと違う」ですか……まぁ、こころ当たりがないわけではありませんね

なんだかこちらを見上げるその真っ直ぐな視線に耐え切れなくて、私は彼から目をそらしながら頬をぽりぽりとかきました。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 22:54:33.14 ID:iD6WIS+70

*(‘‘)* えっとですね、なんと言って良いのかはわからないのですが……

私はそっとしゃがみこみ、こちらを見上げる彼に視線をあわせます。
正直、このことは親友にも話したことがなかったのですが、なぜだか彼には言ってもいいんじゃないかと、そんな気がしました。

いや、正確に言うとそのとき私の中にあったのは「彼にそれを隠すこと自体が無駄なのではないか」という妙な確信のようなものでした。





*(‘‘)* 実は私、魔法使いなんです





13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 22:57:27.82 ID:iD6WIS+70





     *(‘‘)* 魔法少女ヘリカル沢近のようです





15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 22:59:07.92 ID:iD6WIS+70

*(‘‘)*(結局、なんだったのかなぁ……アレ)

翌日、私は自分が通う高校の教室で、昨日自分が出会った『彼』についてボーッと考えていました。
昨日『彼』に出会ってから、私の中では妙な気持ちの悪さのようなものが生まれています。
それは、例えば学校のテストで直前に教科書で暗記したはずの人物の名前が、いざテストになってみると思い出せないときのような、そんな気持ちの悪さでした。

('、`*川 おーいヘリカルー、聞いてるー?

*(;‘‘)*て え、あ、大丈夫です。聞いてますよ?

上の空だった私の視界に、ぶんぶんと振られるてのひら。
今私の目の前にいるのは伊藤ペニサスちゃん。私の一番の親友です。基本的に背も小さく、体も未発達な部分が目立つ私とは対照的に、彼女はとても大人びていて、なかなか良いスタイルをしています。
とくに、胸とか、胸とか……ええ、胸とか。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 22:59:35.93 ID:iD6WIS+70

*(;  )*(大丈夫だもん、小さいってことはまだまだ伸びしろがあるってこと……!)

('、`;川 ……なんか、また自分の世界に入ってない?

*(;‘‘)* わ、私には伸びしろがあるんですッ!!

('、`;川 ……?

なんだか不思議そうな顔をしているペニちゃん。
私は、とりあえず自分が話を聞いていなかったことを弁解して、自分が足を踏み入れているコンプレックスの泥沼から足を引っこ抜くことにしました。
「あーうん、まぁいいけどね、大した話じゃないし」と笑って彼女は続けます。

('、`*川 バイト先の友達からさ、なんか面白い都市伝説聞いたんだけどね

*(;‘‘)* と、都市伝説……?

「都市伝説」というワードを聞いて、私は凍りつきました。
何を隠そう、私は怪談とか「怖い話」関係はだめなのです

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 23:00:43.20 ID:iD6WIS+70

('、`*川 安心してよ、「都市伝説」っつってもそんなに怖い話ってわけじゃないから

「ヘリカルがそういうのダメってのはよく知ってるしね」と笑うペニちゃんの言葉に、私はほっと胸をなでおろしながら、彼女の話の続きに耳を傾けます。

('、`*川 『ギコ』って話なんだけど、ヘリカルは知ってる?

問いかけてくるペニちゃんに、私は首を横に振って否定の意を伝えます。
もともと怖い話の苦手な私が、「都市伝説」なんて知っているわけもありません。

('、`*川 『ギコ』ってのはね、ある日突然目の前に現れるんだって。

ちょっと声のトーンを落として、ペニちゃんは話し始めました。あれ……なんか怖い話じゃないとかいいながら怖がらせる気満々じゃないですか……?

('、`*川 でもね、出会ったときにはそれが『ギコ』だって誰にもわからないらしいの。

「でもね、最終的にはみんなそれが『ギコ』だと気付くんだって」そう言ってペニちゃんは少し間を置きます。

('、`*川 で、『ギコ』はそれが『ギコ』だって気付いたとき、どこかへ消えてしまう

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 23:01:14.01 ID:iD6WIS+70

*(‘‘)* ……

('、`*川 ま、そんだけの話なんだけどね

*(;‘‘)* え? 今ので終わりですか!?

('、`*川 そ、今のでおしまい

「今の話の一体どこに面白みがあったのだろう?」と私が考えていると、ペニちゃんはちょっと微笑みながら、言います。

('、`*川 ねぇヘリカル、今の話なんだけどさ、あんたは知ってる気がしない? この『ギコ』ってやつのこと

*(‘‘)* ……はい?

言われて私は考えます。今の話の『ギコ』の特徴。
「出会ったときはそれと気付かなくて、それがそれであると知った瞬間、姿をけしてしまう」そんな何か……

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 23:01:40.82 ID:iD6WIS+70

*(‘‘)* 言われてみれば、なんだかそんなものを知ってるような気がしなくもないですね

('、`*川 うん、それがこの話のミソなんだけどね

人差し指をぴっとたてて、ペニちゃんはにんまりと微笑みます。

('、`*川 この話を聞いて「知っている気がする」と思った人はみんな『ギコ』に会ったことがある人なんだって

*(;‘‘)* へ?

('、`*川 『ギコ』はね、人によって見え方が違うんだって。「地上から昇る流れ星」に見えたなんて、表現する人もいるの

「でもね、誰が見てもみんな共通した印象を持つんだって」と笑いながら彼女は続けます。

('、`*川 誰が見ても、どこで出会っても『ギコ』に会った人はみんな決まってこう思うらしいの―――

続けようとする彼女の声に、しかし続きを言ったのは全く別の声でした。





「自分は、こいつを知っている気がする」





20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 23:02:46.36 ID:iD6WIS+70

*(;‘‘)* え?

突如後ろから聞こえた声に振り向くと、そこにはよく見るクラスメイトの姿。

( ´_ゝ`)  だろ? 結構マイナーな都市伝説だな

('、`*川 さ、流石くん……

話しかけてきた長身の男子生徒は、流石兄者くん。クラスではちょっとした変人として有名な人です。

( ´_ゝ`)  意外だな、伊藤さんがこんなこと知ってるなんて

('、`*川 あ、いや、その、バイト先の友達にさ、そういうの詳しい人がいて……

私の前でうろたえるペニちゃん。普段落ち着いた雰囲気の彼女にしては珍しい光景を見て、私はちょっとぴんとくるものがありました。

( ´_ゝ`)  そっか、あ、ひょっとして伊藤さんってそういうのに興味ある?

('、`;川 え、あ、いや、興味はあるというか……なきにしもあらず?

「そっか」と言ってちょっと残念そうな顔をする流石くん。
そういえば、普段他のクラスメイトとは距離を置いている感じがする彼が、今日に限ってこんなに積極的に話しかけてくるのも、なんだか変です、もしかしてこの二人……

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 23:04:17.97 ID:iD6WIS+70

ぴんときた私は、ちょっと魔法を使って彼女たちの心の中を覗いてみることにしました。
魔法使いである私は、他人の心をちょっとだけ覗き見ることができます。まぁ覗くといっても、相手の抱いている感情とか、漠然としたものを読み取れる程度ですが。

*( --)*(ヘリカル……マジカル……)

心の中で呪文を呟くと、二人の感情が私の中に流れ込んできました。

*(*‘‘)*(……やっぱり、そういうことですか)

流れ込んできた感情が私の想像通りだったので、私は自分の女の感もなかなかのものだなぁとむふふと微笑みました。

('、`;川 何笑ってるの? ヘリカル

*(*‘‘)* いえいえ、なんでもありませんよ?

なんだか気味が悪そうにこちらを見てくる親友に、私はあからさまに何かがあるような声で返します。
そして、同時に私は決意したのです

*(*‘‘)*(ペニちゃんの恋、全力で支援します!!)

「親友の恋を私がこの手でかなえてみせる」と

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 23:05:06.82 ID:iD6WIS+70

*(;--)*(と、考えてみたものの……)

学校帰り、私は腕を組みながら歩いていました。
考えてみれば、自分には生まれてこの方、全くと言っていいほど色恋沙汰とは無縁だったのです。そんな私に他人の恋愛を成就させる術など、わかるはずもなく……

*(;--)*(はて、どうしたものか……)

そんなわけで、うんうん唸り、首を何度もいろんな方向に傾けながら高校からの帰り道を歩いているわけなのです。

('、`;川 ……一体何をそんなに考えてるの?

*(;‘‘)*て え!? ああ、いやその、なんでもないですよ!?

突然声をかけられて驚いた私は、思わず動揺してしまいます。
横を歩くペニちゃんは、「ふーん、そう」と言いながらも、あからさまに何かを疑う視線をこちらに向けていました。

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 23:05:37.47 ID:iD6WIS+70

('、`*川 あ、そだ。ヘリカルこのあと暇?

*(‘‘)* え? ああ、一応予定はないですが

もともと部活もやらず、無趣味な私は勉強にもそんなに熱心という訳でもなく、学校が終われば大体ひまなのです。
……いまダメ人間とか思った人、ちょっとそこに直りやがりなさい?

('、`*川 そか、じゃあさ、これから渡辺のおばあちゃんに会いに行くんだけど、一緒に行かない?

*(‘‘)* 渡辺のおばあちゃんって、この前の? いいですけど

渡辺のおばあちゃんというのは、ペニちゃんの家の近所に住んでいるおばあちゃんです。
いつもにこにこしていて、どこかふんわりとした雰囲気をもった人だったと記憶しています。
このあいだペニちゃんの家に遊びに行ったときにたまたま来ていて、おかしをもらったりしました。
とてもいい人です。ええ、けっして餌付けされたわけではないのですよ?

('、`*川 渡辺のおばあちゃんね、なんかヘリカルのこと気に入ったみたいでさ、「どうしてもまた会いたい」って

*(‘‘)* へぇ……

人に気に入られるというのは、悪い気はしないものですね。
そんなことを考えながら、私達は渡辺のおばあちゃんの家にむかいました。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 23:06:21.18 ID:iD6WIS+70

('、`*川 ここがそうよ

ペニちゃんの家からしばらく歩いたところに、その家はありました。
外見は広い庭や縁側なんかがあって、なんだか古きよき日本の家という感じです。

从'ー'从 あらぁ〜? ペニちゃん、いらっしゃい

縁側に座っていた渡辺のおばあちゃんはこちらに気付くと、そういってにっこり微笑みました。

('、`*川 こんちわおばあちゃん。ヘリカルつれてきたよ

*(‘‘)* こんにちは

从*'ー'从 あらあらまあまあ、わざわざよく来てくれたねぇ

私を見てうれしそうににっこり笑うおばあちゃん。
なんだかこの人の笑顔を見ていると、見ているこっちまでなんだかうれしくなってしまうから不思議です。
「上がってまっててね〜今お茶でもいれるから」と、家の奥に消えるおばあちゃん。

('、`*川 じゃ、上がらせてもらおっか?

そう言って笑うペニちゃんに、一瞬私はいいのかな? と迷いつつもずっとここで待っているわけにもいかないと思い、とりあえず上がらせてもらうことにしました。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 23:07:23.76 ID:iD6WIS+70

家のなかに入った私たちは、先程おばあちゃんが座っていた縁側に面した座敷でおばあちゃんを待つことにしました。
座敷の中央にはちゃぶ台が一つ置かれていて、ペニちゃんがその傍らに座りこみます。

(’、`*川 どしたの? ヘリカルも座んなよ

*(;‘‘)* あ、はい、じゃあ失礼して

初めてのよその家というのは、なんだか緊張するものです。
ペニちゃんに言われて座った私は、それでもなんだか落ち着かなくて、あたりをきょろきょろと見回します。
目に入るのは仏壇やたんす。そして、その上に置かれた写真。

*(‘‘)*(あれ? この子たち……)

その写真には、今よりちょっと若い渡辺のおばあちゃんと小さな男の子と女の子が写っていました。
男の子は元気に白い歯をむき出しにして笑いながら両手でピースをしています。

〔v( ゚∀゚) v〕

それに対して、その隣にいる女の子はおばあちゃんの服のすそをつかんで、半分おばあちゃんに隠れるように写っていました。

〔⌒*(‘‘)*⌒〕

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 23:07:56.56 ID:iD6WIS+70

从'ー'从 お茶がはいったよぉ〜

私が写真を眺めていると、手にお茶やきゅうすの乗ったお盆をもっておばあちゃんが部屋に入ってきました。
「どうぞ〜」とにっこり微笑みながら渡されたお茶を、私はお礼をいいながら受け取ります。

*(*--)* ふぅ〜、なごみますね〜

渡されたお茶を一口啜ると、私の中で張り詰めていた緊張の糸もいくらかゆるみ、しばしの間私たちはちゃぶ台を囲んでおしゃべりに花を咲かせました。
とりとめのなく続くおしゃべりの中で、私はふと疑問に思っていたことをおばあちゃんに聞いてみることにします。

*(‘‘)* あの写真はお孫さんですか?

从'ー'从 うん、そうだよ〜

私に言われて写真に目を移したおばあちゃんは、微笑みながらそう答えました。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 23:08:26.91 ID:iD6WIS+70

从'ー'从 正確に言えば、右に写ってるほうの男の子は私の孫じゃないけど、でも私からすればかわいいかわいい本当の孫みたいなものだよ

お茶を啜りながら、楽しそうにおばあちゃんは語り始めます。

从'ー'从 左で私の袖に隠れてるのは、孫娘のリリカル。右でカメラに向かってピースしてるのが、リリカルの友達だったジョルくん。

「このジョルくんが、ほんと手のかかるいたずら坊主でね〜」と彼女はまるで自分の本当の孫のことを語るように、楽しそうに彼と、自分の孫娘のことを話していました。

*(‘‘)* おばあちゃんは、本当にお孫さんのことが大好きなんですね

从'ー'从 うん、そりゃあもう目に入れても痛くないくらいにね

「親バカかな?」と笑うおばあちゃんの顔は本当に幸せそうで、その表情には見ているこちらまで幸せになってしまうような、そんな魅力がありました。

('、`*川 へぇ〜、でも知らなかったな。おばあちゃんに孫がいたなんて

*(‘‘)* あれ? ペニちゃん知らなかったんですか?

('、`*川 まぁ、私の家族がここに住むことになったのってつい最近のことだからね

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 23:09:55.78 ID:iD6WIS+70

('、`*川 いまどうしてるの? そのお孫さんたち

何気なくペニちゃんが聞いた一言に、おばあちゃんはちょっと困ったような顔で微笑みました。

从'ー'从 ……じつはね、リリカルのほうはもうこの世にいないんだ

一瞬、何を言われたのかわからなくて、私たちはぽかんと凍りつきました。

*(;‘‘)* す、すみません

しばらくして、自分が目の前のおばあちゃんにしていた仕打ちに気付き、私たちは必死に謝ります。それに対しておばあちゃんはにっこりわらって、静かに「いいのよ」といいました。

从'ー'从 正直ね、うれしかったんだ。久しぶりに大好きな孫たちの話ができて

「こんな境遇になると、みんな気を使って孫の話をさせてくれなくてね」そう言って、おばあちゃんはお茶を啜ります。

从'ー'从 それにね、ヘリカルちゃんのことを見てると、リリカルが戻ってきたような気がしてね

*(;‘‘)* へ……?

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 23:10:48.78 ID:iD6WIS+70
ぽかんとする私。

('、`*川 あー……言われてみればちょっと似てるかも

納得したように、写真を見たペニちゃんがいいました。
言われて私も写真に目をやります。

〔⌒*(‘‘)*⌒〕

写真に写っている、髪を二つ結びにした幼い女の子。
なるほど、言われてみればなんだか似てるような気もします。

从'ー'从 リリカルもね、生きていればあなたたちと同い年くらいなんだ

写真を見つめるおばあちゃん。その目は、どこか遠いところを見ているようで、私はなにかとてもいたたまれないような、そんな気持ちになりました。

从'ー'从 だからね、あの子と同じくらいのあなたたちが、私にはとても可愛く思えてしかたがないの

「なんだか辛気臭い話になっちゃったね」とおばあちゃんは笑います。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 23:11:51.33 ID:iD6WIS+70

*(‘‘)* あの……

从'ー'从 ん?

これは聞いてもいいことなのかな? と私は一瞬迷いました。でも、彼らのことをとても楽しそうに、幸せそうに話すおばあちゃんの表情を思い出し、思い切って聞いてみることにします。

*(‘‘)* もう一人の……ジョルくんのほうは今どうしてるんですか?

从'ー'从 ん〜……わからないなぁ……

「リリカルが死んで、すぐにジョルくんも隣町に引越しちゃったから」と続けるおばあちゃん。その顔はやっぱり寂しそうで、私は少なからず罪悪感を覚えました。
それを見たおばあちゃんは優しく微笑んで「そんな顔しないで、ヘリカルちゃん」と言います。

从'ー'从 私はね、今とっても幸せだよ? あなたたちが遊びに来てくれて、大好きな孫の話も聞いてもらえたんだから

('、`*川 おばあちゃん……

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 23:13:46.81 ID:iD6WIS+70

从'ー'从 だからね、良かったらこれからもたまに遊びに来て、孫の話を聞いて欲しいんだ

「年寄りの相手なんて、面倒くさいだろうけどね」と笑うおばあちゃんに、私たちは「そんなことない」と否定します。

*(‘‘)* ぜったい……ぜったいまた遊びに来ます!

('、`*川 お孫さんの話とか、まだ聞きたいしね

从'ー'从 そう……ありがとう

微笑むおばあちゃんにペニちゃんは「気にしないで、私ら基本的に暇だから」と軽口を叩きます。
それに反論する、私。
おばあちゃんはなんだか楽しそうに、ぎゃーぎゃーと言い合う私たちを眺めていました。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 23:14:49.78 ID:iD6WIS+70

帰宅後、いつものように私は仏壇の前に座ると、父に今日あったことの報告をすることにしました。

【( ^ω^)】

*(‘‘)* とーちゃん、今日はとっても素敵なおばあちゃんにあってきました

*(‘‘)* そのおばあちゃんは、とても大切な人を亡くしていて、それでもくじけずに人を幸せにする笑顔を振りまいていました

*(‘‘)* 私は、今でもたまにとーちゃんが死んだ日のことを思い出すと泣いてしまいます

*(‘‘)* 私も、いつかあんな風に笑えるでしょうか? 悲しみを振り切って、とーちゃんとの楽しかった思い出だけを、あんな素敵な笑顔で誰かに話せるでしょうか?

*(‘‘)* 私もいつか、あんな風に誰かにとーちゃんのことを話せる人間になりたいです

「おーい、ヘリカルそろそろメシだぞー?」

台所から母の声が聞こえたので、私は「今行きます」と答えて遺影の中で微笑む父に「じゃあ、また」と言ってその場をあとにしました。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/22(日) 23:15:16.42 ID:iD6WIS+70






     *(‘‘)* 魔法少女ヘリカル沢近のようです

             つづく






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