- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:00:53.95 ID:FEWFa4tD0
- ニュー速市内にVIP町と言う町がある。
町自体は何処にでもある様な普通の町、しかし昭和の様な田舎の雰囲気が感じられる町だ。
その町にはVIP中学校が存在する。
この学校は小中一貫校であり、先生や生徒達は小学校からの付き合いと言うことになる。
卒業した生徒はVIP高かニュー速高校へと進学をしていく。
VIP町は昔からの伝統工芸も盛んな町で、親の後を継ぐ為に親と店を経営する道を選ぶ者も多い。
季節は夏、太陽が昇った朝。
二人の生徒が中学校への道を走っていく姿があった。
(;'A`)「はっはっはっ……」
(;^ω^)「ひっひっふっ……」
制服を着たドクオとブーンが並んで走っている。
走りながら、ドクオが見た腕時計の針は8時10分を指していた。
(;'A`)(後5分、学校までギリギリの時間……)
隣では豚、もといブーンが顔を真っ赤にして必死の形相で走っている。
(;'A`)「ブーン急げ、このペースじゃアウトだぞ!」
(;^ω^)「うはwwwもう限界だおwwwww」
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:01:52.09 ID:FEWFa4tD0
- (;'A`)「大丈夫大丈夫、やれば出来る! どうしてそこであきらめんだよ! もっと熱くなれよ!」
(;^ω^)「ブーーーーーーーーン!!!!」
必死に走る二人、秒針は1秒を確実に刻んで行き、時間と言う圧力を与える。
学校まで後直線を残すのみ。時計の針は8時12分を指していた。
(;'A`)「後3分だ! 頑張れブーン! 後直線だけだぞ!」
(;^ω^)「ひっひっふっ……!」
学校への校門が見え、先生の姿も確認出来た。
先生も時計の針をちらちらと見ながら校門を入っていく生徒に挨拶をしている。
必死に走るドクオとブーンの姿に気づいたようで、その顔がニヤニヤしていた。
( ^Д^)「ドクオー! ブーン! 後1分だぞー!」
(;'A`)「はっはっはっ……」
(;^ω^)「ひっひっふっ……」
あと少し、あと少しでゴールだと言う二人の気持ちが己の足を更に力強く躍動させる。
しかし、時計の針は無常にも15分を指し、時間を示す鐘が鳴る。
鐘が鳴った後に、遅れて二人は校門を駆け抜けた。
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:02:23.83 ID:FEWFa4tD0
- 両膝に手をあて、呼吸を整えるドクオとブーン。
(; A )「はっはっはっ…もう…死ねる…」
(; ω )「はっひっふっ…うぇっぷ……吐きそうだお……」
ぜぇ、はぁ、と肺に酸素を求める二人に先生であるプギャーは言葉をかける。
( ^Д^)「あー、あれな? 分かってると思うが遅刻だからな?」
全力疾走の疲労感から声も出せず、顔も上げれずはぁはぁと肩を上下させていた。
その姿を見ながらプギャーは若干思案顔となり、そしてすぐにやれやれと頭を左右に振り言葉をかける。
( ^Д^)「あー、分かった! その努力を認めてギリギリセーフにしといてやるよ!」
ぜぇはぁとまだ息を整えながら二人はゆっくりと顔を見合わせる。
(*'A`)「よっしゃああああああああ!」
(*^ω^)「やったおおおおおおおおお!」
二人は喜びながら靴箱を目指して駆けていった。
その後姿を見届けたプギャーはポツリと呟く。
( ^Д^)「俺もまだまだ甘ちゃんだな…」
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:04:17.92 ID:FEWFa4tD0
- 2-Aと書かれたプレートのある教室の扉をガララッと勢い良く開けると、既に朝のホームルームが始まっていた。
('、`*川「また二人とも遅刻?」
( ^ω^)「おっおっ! 伊藤先生、なんとセーフなんですお!」
ξ゚听)ξ「珍しい事もあるものねー」
( ^ω^)「ツンおはようだお! 今日も可愛いお!」
ξ///)ξ「ばっ! みんなの前で何言ってるのよ!」
(´・ω・`)「ひゅーひゅー、青春だねぇ」
(´<_` )「まったくだ、うんうん」
ブーンとツンが付き合っているのは周知な事実だけに、二人を周りの人間は茶化す。
一方ドクオは入り口近くの兄者と何やら語っていた。
('A`)「賭けは俺の勝ちだ。今日は兄者の奢りな?」
( ;´_ゝ`)「おま! この時間ならアウトだろ!」
('A`)「残念ながらプギャー先生がセーフだと言ってくれた。賭けは俺の勝ちだな」
( ;_ゝ;)「どちくしょおおおおおおお! 俺の小遣いがあああああ!」
( ・∀・)「はいはーい。お前らその辺にしとけー! まだホームルーム終わってねーぞ!」
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:05:52.76 ID:FEWFa4tD0
- モララーはクラスを纏める委員長的存在だ。先生にも頼りにされている。
モララーの言葉を聞き、ドクオとブーンは自分の席へとついた。
('、`*川「モララー君ありがとう。えーと今日は昼休みに────」
席に着いたドクオはチラリとクーが座っている席へと目を向けた。
クーは時折顔を上げながら先生を確認し、なにやら手元の小さな紙に書き込みをしていた。
それを軽く折りたたみ、隣の席のデレにまわしていた。
デレはそれを開くとクスクスと笑っている。
最近女子の間で流行っているまわし手紙と言うやつだろうか?
デレも何かを書き、クーへと渡した。
紙を開き書いてある文章を読んで、クーもクスクスと笑みを零す。
(*'A`)(かわええ……)
クーが何か書いている所を見ていたドクオだが、ふと、顔を上げてこちらを見たクーと目が合ってしまった。
川 ゚ -゚)
(;'A`)「!」
慌てて目をそらすが、ニヤニヤしていたあの顔を見られたと思うと顔が赤くなってきたドクオ。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:06:50.50 ID:FEWFa4tD0
- ('、`*川「えーと、最後に放課後に図書委員の人は、今日が担当日なのでちゃんと行ってくださいね?」
('、`*川「図書委員の人はーと、えーと、素直さんと…欝田君ですねー」
川 ゚ -゚)「分かりましたー」
('、`*川「欝田君? 分かりました? 欝田君?」
(;'A`)「あ! ひゃい!」
_
( ゚∀゚)「ひゃいってwwww何噛んでんだよwwwww」
从 ゚∀从「朝から絶好調だなドクオwwwwwww」
クラス中から笑いが起こり、ドクオは苦笑いをする。
チラリとクーの方を見つめると、クーもクスクスと笑っているのを見て、羞恥心がこみ上げてきた。
(*'A`)「あー、うるせーてめぇら! 噛んで悪かったな! こん畜生!」
ドクオは恥ずかしさを紛らわすためにクラス全体に響くように叫んだ。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:07:41.96 ID:FEWFa4tD0
- 1時間目
( ФωФ)「この詩の意味は……、ハイン言ってみろである」
从;゚∀从「え?! えーと…あー…」
(*゚ー゚)「ハイン頑張れー!」
从'ー'从「がんばれ〜」
沸き起こる頑張れコールの中、ハインは顔を真っ赤にしながら何とか答えきった。
从//∀从「あ、後で覚えとけよ! お前ら!」
2時間目
( ´∀`)「えーと、この式をさっきの例文通りにやっていくとー…、今日は6月24日だから引いて18番!」
川 ゚ -゚)「はい、えーと、X=3です」
( ´∀`)「はい正解モナ。ちゃんと理解できてるモナね」
( ´∀`)「ところで数学とはまったく関係ない話だけど、先週の連休でドライブに出かけたら───」
( ´_ゝ`)「せんせー、流石にそれは嘘でしょwwwwww」
(´<_` )「ねーよwwwww」
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:08:59.23 ID:FEWFa4tD0
- 3時間目
(゚、゚トソン「はい、ミセリさん。1192年には何があったでしょうか?」
ミセ;゚ー゚)リ「えーと、良い国作ろう大化の改新?」
( ・∀・)「wwwwwwwww」
(゚、゚トソン「惜しいですけど違います。じゃあ、隣で笑ってるモララー君」
( ;・∀・)「うぇっ!? え、えーと……」
( ^ω^)「ざまぁwwwwwwwwwww」
4時間目
ノハ#゚听)「私の魔球を食らええええええええええええ!!!」
(`・ω・´)「ふん!!!!そんなボール簡単に取れるわあああああ!」
ノハ#゚听)「ぐぬぬぬぬぬぅ!」
( ^Д^)「シャキン、片足出てくるからアウトー」
ξ;゚听)ξ「女子が投げるボールの速さじゃないわよ……」
(;'A`)「取ったショキンもすげぇ……」
<;`∀´>「と言うか中学生のドッジボールってレベルじゃないニダ……」
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:10:09.53 ID:FEWFa4tD0
- 昼食時間
( ・∀・)「いただきまーす!」
( ^ω^)「はむっ! ハフハフッ! はむっ!」
ζ(゚ー゚*ζ「内藤君焦って食べすぎーw」
('A`)「パクパクパク」
从'ー'从「ドクオ君って結構早く食べるねー」
(;゚A゚)「ムグゥ! くぁせdrftgyふじこlp;@:「」」
_
(;゚∀゚)「おいドクオ! 大丈夫か!?」
(;'A`)「み、水……」
昼休み
(´<_` )「へい、兄者! パース!」
( ´_ゝ`)「良し来た! 必殺のダンクシュウウウウウウウウウウウト!!!」
( ><)「リングに届いてすらいないんです!」
( <●><●>)「兄者が馬鹿なのは分かってます」
(´・ω・`)「と言うかトラベリングな。相手ボールだ」
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:11:09.31 ID:FEWFa4tD0
- 昼休みに校庭でサッカーをする者もいれば、教室で静かに読書をする者。
または机に突っ伏して寝る者、体育館でバスケットをする者。
各々が個人の時間を過ごしている中、ドクオは学校の屋上で大の字に空を見上げていた。
('A`)「………」
ただ、ボーっと雲が流れて行く空の風景を見つめていた。
ガチャリと屋上の扉が開く。
しかし、その音にドクオは気づかない。
('A`)「………」
ドクオは空を見つめている。ただ、雲の流れて行く風景を。
('A`)「………」
雲はただ、流れて行く。風に流されるがまま、ただ、流れて行く。
そして、ドクオの視線を遮るようにブーンの顔が現れた。
( ^ω^)「何してるんだお? ドクオ」
その一言で、ドクオの意識は空の世界から現実の世界へと戻された。
('A`)「空、見てた」
その一言につられてブーンも空を見上げる、が、すぐにドクオに視線を戻す。
( ^ω^)「おっおっ、ドクオらしいお。だけどもうすぐ昼休みも終わりだお?」
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:13:01.31 ID:FEWFa4tD0
- ブーンのその言葉に、ドクオはゆっくりと体を起こしながら分かったと返事をする。
('A`)「5時間目なんだっけ?」
( ^ω^)「えーと、確か理科だお」
理科と言う単語にドクオは敏感に反応した。
(;'A`)「課題してねぇ……」
( ^ω^)「ブーンはツンに見せて貰ったおwww」
(;'A`)「ちょ、俺にも写させて」
( ^ω^)「おっおっ、ドクオはクーに見せてもらえば良いお?」
(;'A`)「俺とクーはそんな関係じゃねぇ! 冗談言ってないで早く戻るぞ!」
( ^ω^)「またまたー、照れちゃってー」
うるせぇ!とブーンを軽く小突きながら二人は急いで教室へと戻っていった。
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:14:22.84 ID:FEWFa4tD0
- 5時間目
( ゚∋゚)「えーと、このオームの法則は次のテスト出すからなー」
_
( -∀-)「ZZZzzz……」
( ゚∋゚)「抵抗だけじゃなくて電流と電圧を求める計算も出すからしっかり勉強しておくように」
_
( -∀-)「ZZZzzz……」
(#゚∋゚)「ジョルジュゥッ!」
_
(;゚∀゚)ビクッ!「はいぃ!」
(;゚ー゚)「びっくりしたー」
6時間目
(*'ω' *)「抜き打ちで音楽の筆記テストやるっぽ! お前ら今すぐ教科書しまえっぽ!」
( ;・∀・)「えーと…この符号は確か……」
ミセ゚ー゚)リ「〜〜〜♪」
(*'ω' *)「後3分しかないっぽ。50点以下の人は罰として校歌を歌ってもらうっぽ!」
川 ゚ -゚)Фカキカキ...
( ;・∀・)(両サイドがスラスラ解いてて焦るんですけどー!)
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:15:14.44 ID:FEWFa4tD0
- 掃除時間
('、`*川「モララー君、ちょっとゴミ箱のゴミ捨ててきてー」
( ^ω^)「おっおー、モララーはバケツの水捨て行きましたおー」
('、`*川「じゃあ内藤君お願いね」
(;^ω^)「ええええええええ!!!」
('A`)「南無南無……」
从 ゚∀从「そろそろ机あげよーぜ!」
帰りのホームルーム
('、`*川「えーと、明日の時間割は────」
('、`*川「学校だよりが出たので今から配りまーす」
('、`*川「明日も忘れ物がないよーに! 以上!」
( ・∀・)「きりーつ! きをつけー! 礼!」
「「「「「「ありがとうございましたー!!!」」」」」」
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:15:54.56 ID:FEWFa4tD0
- ( ^ω^)「ドクオー帰るおー」
('A`)「おー、また俺の家でゲームすっかー」
( ^ω^)「おっおっ! 今日こそはブーンが買ってみせるお!」
('A`)「お前はワンパターンだから相手が楽なんだよね」
( ^ω^)「おっおっ、実は攻略法を考えたんだお! 今日はいけるお!」
('A`)「スマブラの地区大会で優勝したことのある俺に取っちゃお前の相手は余裕だぜ」
荷物を持って、下駄箱へと向かうブーンとドクオ。
ほかの生徒もわらわらと下駄箱へ移動し、自分の靴を取り出す。
中には自分の靴入れに教科書を押し込んでいる生徒もいる。
見つかれば没収だが、下駄箱はどの生徒も使える簡易物置なのだ。
VIP校は部活動も盛んな学校の為、部活動具を担ぎ走っていく生徒も多い。
そんな彼らをよそ目に、ブーンとドクオはゲームの話に花を咲かせながら歩いていく。
( ^ω^)「ところで、ドクオ。クーにはいつ告白するんだお?」
その一言に狼狽するドクオ。
(;'A`)「いや、えっと、あのな? クーが俺の事を好きなはずが無いだろ?」
( ^ω^)「ブーンはそうは思わないお! ブーンもツンに嫌われてると思ってたけど今じゃこんな関係だお!」
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:16:59.33 ID:FEWFa4tD0
- (;'A`)「いや、なんかお前らは特殊な事例というか……」
( ^ω^)「そう言えば、クーの話にふっておいて悪いんだけど」
( ^ω^)「ドクオ、図書委員の仕事は?」
(;'A`)「あ……」
(;゚A゚)「やべぇええええええ!」
( ;^ω^)「い、急いで戻ったほうが良いお!」
(;'A`)「そうするわ! じゃあな、ブーン!」
( ;^ω^)「あ、ドクオ待つお!」
(;'A`)「んだよ?」
( ;^ω^)「二人きりの時はチャンスだお! 玉砕覚悟でやるのが男ってもんだお!」
(;'A`)「だから、無理だって! じゃあな!」
早口でそう言うとドクオは図書室へと向かって駆け出した。
( ;^ω^)「……ツンはうまくやってくれたかおね?」
ドクオの後姿を見ながらそう呟くブーンだった。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:18:26.30 ID:FEWFa4tD0
- 少し遡って、帰りのSHR終了後。
ξ゚听)ξ「クー!」
川 ゚ -゚)「何だ? ツン」
ξ゚听)ξ「今から図書委員の仕事なんでしょ?」
川 ゚ -゚)「おぉ、そう言えばそうだったな。危うくそのまま帰るところだった」
クーのその一言にツンはため息を吐く。
ξ;--)ξ「呆れた。すっかり忘れてたのね」
川 ゚ -゚)「まぁ、人間だからそういう時もあるさ。で、私に何か用があるんだろ?」
ξ;゚听)ξ「相変わらずマイペースな性格ね。えと、話ってのはドクオの───」
川;゚ -゚)「ドクオがどうかしたのか!?」
ξ;゚听)ξ「反応はやっ!」
川;゚ -゚)「そんな事はどうでも良い! それよりもドクオがどうしたんだ!?」
ξ;゚听)ξ「いや、えっとね、これから図書委員でしょ? ドクオと二人きりになるチャンスだし……」
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:19:13.54 ID:FEWFa4tD0
- 川;゚ -゚)(二人きり……ドクオと……?)
川 ゚ -゚)
川*゚ -゚)
川*//-/)「ば、いきなり何を言い出すんだ! 私はドクオの事なんてそんなに───」
ξ゚听)ξ「あ、ドクオ」
川;゚ -゚)「え!?」
ツンのドクオという言葉に反応し、周りを見渡すクー。
そして、しまったと言う顔をして朱に染まる頬のまま俯いてしまう。
ξ;゚听)ξ「こんな事言うのも気の毒かもしれないけど、クラスのほとんどがもう気づいてる事よ?」
川;゚ -゚)「クラスのほとんどが……だと?」
ξ;゚听)ξ「幸か不幸か、気づいてないのは本人だけね」
そうか、と呟きまた俯いてしまうクー。
ξ;゚听)ξ「と、ともかく、せっかく二人きりのチャンスなんだからこの際告白しちゃいなさいよ!」
川;゚ -゚)「え、だって心の準備ってもんが……」
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:20:36.61 ID:FEWFa4tD0
- ξ;゚听)ξ「そんな事言ってたらいつまで経っても気持ちを伝えられないでしょ!」
川;゚ -゚)「む、まぁ、確かに……」
ξ;゚听)ξ「こんなチャンス二度と無いかも知れないんだから!」
川;゚ -゚)「わ、分かった。善処するよ……」
ξ゚ー゚)ξ「大丈夫よ! きっと上手くいくから!」
川;゚ -゚)「う、うん……」
ξ;゚听)ξ「それじゃあ、ブーンを待たせてるから私行くわ! 結果は夜にでも電話で教えて!」
早口でそう言うと、ツンは走って教室から出て行った。
川;゚ -゚)「あ……。行ってしまった……」
川;゚ -゚)「仕方ない、とりあえず図書室に行くとしよう……」
教室から出て図書室へと向かうクー。
クーは頭の中ではどうドクオと話すべきかをあれこれと考えていた。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:21:39.76 ID:FEWFa4tD0
- 川;゚ -゚)(しかし、ツンのあの自信のありようは何なんだろうか?)
川;゚ -゚)(経験者の言葉と言うこともあるが何か確証があるような……)
川*゚ -゚)(まさか、ドクオは本当に私の事が……)
川;゚ -゚)(いやいや、無いな。ドクオはきっと私以外の女が好きなんだ)
川;゚ -゚)(ふぅ……だけど、万が一ドクオが私の事を好きだったら?)
川*゚ -゚)
川;゚ -゚)「おっ、危うく通り過ぎていくところだった」
ゆっくりとドアへと手をかける。その手にはしっとりと汗が滲んでいた。
川;゚ -゚)(ドクオはもう、来ているだろうか……)
意を決してドアを3回、こんこんこんとノックする。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:22:57.71 ID:FEWFa4tD0
「はいはい。どうぞ」
中から聞こえてくるのは先生の声。
声と同時に何かがさごそと物を動かしている音も聞こえてくる。
川;゚ -゚)「し、失礼します」
そう言うとゆっくりとドアを開けるクー。
中にはアザピー先生がいた。しかし、ドクオの姿は無かった。
(-@∀@)「あれ? 君一人だけかい?」
その言葉を聞いて、クーはドクオがいないと言うのをがっかりしたのと同時に、心のどこかで安堵していた。
(;-@∀@)「んー、困ったなぁ。今日は入ってきたばかりの本もあって結構量が多いんだよねぇ」
アザピーの視線の先を追うと、大きいダンボールの箱が数箱積まれていた。
川;゚ -゚)「確かに、多いですね……」
(;-@∀@)「だろう? 君一人にこれをやらせるってのはちょっと───」
(;'A`)「スイマセン! 遅くなりました!」
勢いよくドアを開けながら現れたのは、息を切らしたドクオだった。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:24:30.62 ID:FEWFa4tD0
- (;-@∀@)「びっくりしたぁ。ドアのノックをちゃんとして入ってこないと駄目だろう?」
(;'A`)「す、すいません……」
(-@∀@)「まぁ、良いや。2人揃ったんなら大丈夫だね」
ちらりとクーを見るドクオ。
ドクオの内心はクーが怒ってないか不安だった。
同様にクーもドクオをチラリと見た。
すっぽかさず来てくれたドクオが嬉しかった。
そんな二人の目が合い、一瞬で逸らす。
二人の頬は少し朱に染まっていた。
そんな二人を見て首をかしげる。
(-@∀@)「? んじゃあ、申し訳ないけど、僕これから職員会議に行かないといけないんだ」
川;゚ -゚)「!?」('A`;)
(-@∀@)「ん? あぁ、30分ぐらいか、長くて一時間ぐらいで戻ってくるから大丈夫だよ」
(-@∀@)「怪我には気をつけてね?」
(-@∀@)「ダンボールの側面にどこのコーナーの本か書いてあるから」
(-@∀@)「それじゃあ、宜しくね?」
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:25:44.23 ID:FEWFa4tD0
- 先生は必要な荷物だけを持って図書室を後にした。
残されたのはドクオとクーの二人だけ。
二人は先生が去った後も唖然とした表情でドアを見つめていた。
(;'A`)「と、取り合えず作業を始めようか?」
川;゚ -゚)「あ、あぁ……」
いつまでもこうしている訳にはいかず、二人は作業に取り掛かった。
小さい台車を使って各コーナーへとダンボール箱を運ぶ。
そして、ひとつのコーナーずつ片付けていく。
ダンボール箱から本を取り出し、本棚へと並べる。
そんな単調な作業の繰り返し。お互いが相手を気にしながらも無言のままだった。
(;'A`)(何か話しかけるべきなんだろうか……)
川;゚ -゚)(どうしよう……)
そんな折、ダンボール箱から本を取り出そうとしたドクオとクーのタイミングが重なり、手が触れる。
(;'A`)「!?」
川;゚ -゚)「!?」
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:26:41.70 ID:FEWFa4tD0
- 慌てて手を引っ込めるドクオ。
ほぼ同じタイミングで、クーも手を引っ込めていた。
(;'A`)「す、すまん!」
川;゚ -゚)「いや、こちらこそ、ごめん……」
そして二人はまたより一層気まずい雰囲気の中作業を始めた。
(;'A`)(やはり、何かを話しかけるべきなんだろうけど……)
川;゚ -゚)(何の話をすれば良いんだろうか……)
(;'A`)(えぇい、俺も男だ!)
川;゚ -゚)(よし、話しかけてみよう)
川;゚ -゚)「あ、あの!」('A`;)
川;゚ -゚)「あ……」
(;'A`)「あぅ……」
川;゚ -゚)「えと、お先にどうぞ?」
(;'A`)「いや、そちらからどうぞ?」
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:28:21.01 ID:FEWFa4tD0
- 川;゚ -゚)「いやいや、ドクオからどうぞ」
(;'A`)「いやいやいや、クーからどうぞ」
川;゚ -゚)「……………」('A`;)
川*゚ー゚)「くっ、」
(*'∀`)「は、」
川*゚ー゚)「ははははwww」
(*'∀`)「へへへwwww」
大笑いをする二人、他に誰も居ない図書室にその笑い声は響き渡る。
(*'∀`)「へっへっへw いや、なんかごめんなw」
川*゚ー゚)「はっはっはw こちらこそすまんなw」
川*゚ー゚)「よし、どちらから言うかジャンケンで決めようじゃないか」
(*'∀`)「ジャンケンキングと呼ばれた俺の実力を見せてやんよ」
川*゚ー゚)「言ってくれるじゃないか、じゃあ、ジャーンケーンポン!」
勝ったのはドクオ、負けたのはクーだった。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:29:14.39 ID:FEWFa4tD0
- 川*゚ー゚)「まぁ、約束は約束だからな」
(*'∀`)「謹んで拝聴させて頂きます」
川 ゚ -゚)「ゴホンッ」
川*゚ -゚)「えー、えーと……」
川*゚ -゚)「私は、だな、実はドクオ、私は────」
クーが言葉を発したのと同時に、ドアの開く音が聞こえた。
ドクオの意識はそちらへと向かってしまい、クーがなんと言ったかをはっきりと聞き取れなかった。
('A`)「え?」
(;-@∀@)「いやぁ、ごめんごめん! 思ったより会議が長引いちゃってさぁ!」
時計を見ると、既に作業を始めて1時間以上が経過していた。
('A`)「あ、こんなに経ってたのか……」
(;-@∀@)「ごめんねー。今日はここまでで良いよ! 続きは明日担当の人にやらせるから」
川;゚ -゚)「分かりました……」
そう言ったクーの声は、どこか元気がないようにドクオには聞こえた。
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:30:11.63 ID:FEWFa4tD0
- それじゃあまた明日と言い、分かれた二人。
一人、夕暮れの道を下を向いて歩いて帰るドクオ。
図書室であの時クーがなんと言ったのかを必死に思い出そうとしていた。
('A`)「俺の名前を言ったのは確かだったんだが……」
問題はそこからの続きだ。
完全にドアの音に気をとられ、聞き逃してしまった。
('A`)「なんて言ったんだろう……」
('A`)「わかんねぇなぁー……」
思わず空を見上げるが、そこに答えがあるはずもなく、ただ綺麗な赤い空だった─────。
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:30:46.54 ID:FEWFa4tD0
- ドクオと分かれ、がっくりと肩を落として歩くクー。
川;゚ -゚)「あの様子じゃあ、最後まで聞いていなかったみたいだな……」
折角勇気を出して思いを告げたのに、あと少しと言う所で自分の思いはドクオには届かなかった。
そう思うとクーは残念でならなかった。
ξ゚听)ξ「こんなチャンス二度と無いかも知れないんだから!」
あの時、確かにツンが言った通りだった。
こんなチャンス、もう無いかも知れない。
そう思うと、クーは自然とため息を吐いてしまう。
川;゚ -゚)「つくづく、自分の運の無さが恨めしいよ……」
ため息をふーと吐きながら空を見上げるクー。
空はそんなクーの心を知らず、綺麗に赤く染まっていた─────。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:32:01.30 ID:FEWFa4tD0
- 川;゚ -゚)「ただいまー」
母のお帰りなさいと言う声が聞こえてきた。
靴を脱ぎ、そのまま2階の自室へと向かう。
部屋に着くと、鞄を机の上に置いて、制服から私服へと着替える。
川;゚ -゚)(なんだかどっと疲れたな……)
ちょうど着替え終わったとき、母の名前を呼ぶ声が聞こえた。
母「クール。ちょっと降りてきてー」
川 ゚ -゚)「分かったー」
母は居間にいた、同時にいつもならこの時間帯は仕事の父も椅子に腰掛けていた。
川 ゚ -゚)「む、父さん今日は早いんだね」
父「お帰りクール。今日は色々あってね……」
父の言葉はどこか歯切れが悪かった。
それに関係しているのか、母の顔も少し暗く感じた。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:34:31.79 ID:FEWFa4tD0
- 川 ゚ -゚)「? 何かあったの?」
母「実は……」
母が何か言おうとしたが父がそれを手で制する。
母「だけど、貴方……」
父「いや、私の口から言おう」
どこか深刻そうな二人の会話に、クーはだんだんと不安になってきた。
父「クール。大事な話なんだが……」
大事な話と言う言葉にクーはだんだんと不安が増してきた。
心臓の音が少しずつ大きくなっているようにも思えた。
父「実はだな、ラウンジへと引っ越す事になった」
最初は何を言われたのかが理解できなかった。
ラウンジへ引っ越す? 時間が経つにつれその意味がはっきりと理解できるようになってきた。
川;゚ -゚)「ラウンジへ……引っ越す?」
父「あぁ、仕事の都合上ね。上からの命令でラウンジの支社に配属になったんだよ」
川;゚ -゚)「そんな……急に?」
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:35:27.51 ID:FEWFa4tD0
- 父「あぁ、だけどお前達二人をここに置いていくわけにもいかないだろう?」
母「クール、お父さんの仕事の為よ」
母「お友達と離れ離れになるのは寂しいかもしれないけど、向こうでも友達は作れるわ」
川;゚ -゚)「……引越しの時期は?」
父「今が6月。引っ越すのは7月の下旬だ」
川;゚ -゚)「そう……分かったよ。仕事じゃあ、仕方無いね……」
父「学校にはもう伝えてある。クール、本当にごめんね」
川;゚ -゚)「いや、謝らなくてもいいよ父さん」
母「引越しの準備とかは少しずつやっていくからクールも荷物を纏めておいてね?」
川;゚ -゚)「分かった……」
そう言うとゆっくりと立ち上がり、再び自室へと向かった。
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:36:57.61 ID:FEWFa4tD0
- 母「あの子も辛いでしょうね……」
父「あぁ、せっかく沢山友達がいるこの町から遠くラウンジまで行くんだからな……」
母「あの子、大丈夫かしら?」
父「何、あと一月は一緒に遊べるんだ。それにもう二度と逢えないわけじゃない。悲観することは無いさ」
母「そう、ね……」
自室へと戻ったクーは自分のベッドにうつ伏せになっていた。
川 - )「まさか、引っ越すとはな……」
川 - )「あと一月……」
川 - )「はぁ……」
川 - )「みんなとも……逢えなくなるかも……」
川 - )「ドクオ…………」
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:37:53.05 ID:FEWFa4tD0
- ('A`)「ただいまー」
J( 'ー`)し「おかえりなさい、今日は遅かったわね?」
('A`)「うん、委員会の仕事でね」
J( 'ー`)し「お疲れ様。ちょっと早いけどすぐご飯は食べれるわよ?」
('A`)「んじゃ、そうする」
J( 'ー`)し「じゃあすぐ準備するから、着替えてらっしゃい」
('A`)「へーい」
2回へ上り、自室へと向かう。
もう外出することも無いので黒のパジャマに着替えるドクオ。
('A`)「結局クーはなんて言ったんだろうなぁ……」
('A`)「ま、明日聞いてみるとしますか……」
キッチンへ向かうと、既に香ばしい匂いが立ち込めていた。
J( 'ー`)し「今日はチーズハンバーグを作って見たの、中までちゃんと火が通ってるはずよ」
('A`)「こりゃ味わって食べないと。いただきまーす」
J( 'ー`)し「母さんもいただきまーす」
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:39:29.54 ID:FEWFa4tD0
- ハンバーグはとろとろに溶けたチーズとデミグラスソースの味が見事に合致していて更なる旨味を引き出していた。
中までしっかりと火が通っており、歯ごたえも良い。
まさにこれ以上無いと言った嗜好の一品だった。
(*'A`)「ホント旨いな、母さんの料理は」
J( 'ー`)し「やだねぇ、父さんみたいなこと言っちゃって」
そんな事を言いながら笑いあう二人。
すると、母ちゃんは何か思い出したかのような顔をした。
J( 'ー`)し「そう言えば、ドクオが帰ってくる前に内藤君から電話があったわよ」
('A`)「ブーンから? 内容は?」
J( 'ー`)し「内容は分からないけど、後で掛けなおさせますって言っておいたから」
('A`)「分かった。掛けなおしてみるよ」
('A`)「ご馳走様」
J( 'ー`)し「はい、ご馳走様」
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:40:33.57 ID:FEWFa4tD0
- その後、自室へと戻り子機からブーンの家に電話を掛ける。
3コールもしないうちに、ブーンの声が聞こえてきた。
『はい、内藤ですおー!』
('A`)「もしもし? ドクオだけど」
『おー! 待ってたんだお!』
('A`)「なんか母ちゃんから電話があったって聞いたんだけど?」
『今日どうなったのか待ち遠しくて電話したんだお!』
('A`)「あー、その件はだな、えーと、だな。そのー」
『もしかして……振られちゃったのかお?』
(;'A`)「いやいやいや、そういう事は無かったんだが……」
『じゃあ、上手くいったのかお!?』
(;'A`)「そういう事も無くてだな……」
『じゃあ、どうなったんだお!?』
(;'A`)「えーと、普通に仕事というか作業をして、終わったんだけど……」
『……ホントかお?』
(;'A`)「えーと、うん、だいたいホント?かと……」
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:41:30.51 ID:FEWFa4tD0
- 受話器の向こうからため息の音が聞こえてきた。
何か悪い事でもしたんだろうかと、ドクオは申し訳なく感じていた。
『んじゃ、質問を変えるお! クーに何か変な事は無かったかお?』
('A`)「変なこと?」
『なんか伝えようとしてたとか…』
('A`)「あぁ、そう言えばー、一回お互い何か言おうとしてタイミング被っちゃって、
ジャンケンに負けたクーが何か言おうとしたら先生が来ちゃって聞けなかった……」
そう伝えた後、またしてもブーンのため息が聞こえてきた。
('A`)「? ブーンはクーが何を言おうとしたか分かってるのか?」
『……ドクオって結構鈍感だおね?』
少しの間をおいた後にブーンから辛辣な一言が飛んできた。
こう見えても空気は読めるほうだとドクオは自覚していただけにショックを受けた。
『先生がそのタイミングで帰ってくるのも運が悪いと言うか……』
(;'A`)「はぁ……」
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:43:17.42 ID:FEWFa4tD0
- 『まぁ、いいお! ブーンはドクオを応援するから次は絶対頑張るんだお!』
(;'A`)「あ、あぁ……でもクーはホントに俺なんかと付き合ってくれるのかなぁ……」
『ドクオはもう少し女心を学ぶべきだお?』
更に傷つく一言を言われ、ドクオの精神面は強烈なダメージを負った。
(;'A`)「なんかもう、ごめん」
『いいお! 明日は遅刻しないように早めに来るお! 準備してておね?』
('A`)「おぉ、分かったー」
それじゃあ、と告げると、ドクオは通話を切った。
子機を元の位置に戻してから、あっと思い出す。
('A`)「なんて言おうとしてたのか聞けば良かった」
まぁ、もう一度掛けなおすのも何やら気が引けたのでそうする事をドクオは止めた。
('A`)「しっかし、なんて言おうとしてたんだろうなー……」
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:44:35.83 ID:FEWFa4tD0
- 翌日、ブーンとドクオの二人は珍しく余裕を持って登校する事が出来た。
その日は、いつもと違う事が2つあった。
ひとつはドクオとブーン達が遅刻ギリギリではない時間帯に登校してきた事。
そして、もうひとつは────。
('、`*川「今日の日程は以上です。えー、それと一つ、悲しいお知らせがあります」
その先生の一言にクラス中がざわついた。
('A`)(なんかあったのかな……)
('、`*川「素直クールさんが、家庭の事情でラウンジへと引っ越す事となりました」
('A`)「……………は?」
そのドクオの声がきっかけとなり、クラス内に一気にざわめきが広がった。
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:47:04.78 ID:FEWFa4tD0
- ζ(゚ー゚;ζ「クー、本当なの!?」
デレなどクーの席の周りのクラスメイトが次々と話しかける。
川;゚ -゚)「あ、あぁ、父さんの仕事の都合でな……」
(´・ω・`)「どこに引っ越すの?」
川;゚ -゚)「う、む、ラウジンに引っ越す事になってる」
ラウンジと言う単語に、より一層クラスのざわめきが大きくなった。
(´<_`;)「クラスの数少ないアイドルの一人が引っ越すとはなぁ……」
从'ー'从「あれれー、弟者君。私の事を忘れてないー?」
( ´_ゝ`)「ははは、こやつめ!」
从#'ー'从「あ?」
(;´_ゝ`)「ナンデモナイデス……」
(;^ω^)「マジかお……」
ブーンはチラリとドクオを見た。
( A )
わずか数分でドクオは心ここに在らずといった状態で、完全に放心状態となっていた。
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:49:06.70 ID:FEWFa4tD0
- (;^ω^)(これは不味いお……)
ξ;゚听)ξ「クー……」
( ・∀・)「お前らー、ちょっと落ち着けー! 先生も困ってるぞー!」
ざわめくクラスメイトを纏めるモララー。ざわめきが少し、落ち着いてくる。
('、`*川「はい、えーと、引っ越すと言っても今日明日と言うわけじゃありません」
('、`*川「引っ越すのは来月の下旬ですので、残り一月あります」
('、`*川「皆さん、クールさんとあと一月楽しい思い出をいっぱいプレゼントしてあげてください」
('、`*川「以上です」
そう言うと、クラスに再びざわめきが戻ってくる。
すぐさま、クーの席の周りには人だかりが出来ていた。
_
( ゚∀゚)「ラウンジとなると、そう簡単には会えないよなぁ……」
从 ゚∀从「だなぁ。隣町って訳じゃないし……」
(*゚ー゚)「だけど、ホント急だねぇ」
(,,゚Д゚)「家の事情じゃ仕方ないぞゴルァ」
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:51:04.89 ID:FEWFa4tD0
- 川;゚ -゚)「──────」
クーは周囲を囲まれ、あれこれと質問を投げかけられる。
( A )「……………」
対するドクオは、クーの引越しと言う事実に、小さい心が耐え切れずにいた。
あっという間に昼休みとなった。
ブーンはツンとモララーを引き連れて、ドクオの近くへと弁当を持って移動した。
( A )「……………」
しかし、ドクオは3人には目もくれず、話すこともせず、ただ淡々とご飯を口に運ぶだけだった。
ξ;゚听)ξ「重症ねぇ……」
(;・∀・)「ほっといたら飛び降りそうだもんなぁ……」
(;^ω^)「どうにかならんもんかお……?」
(;・∀・)「いやぁ、僕はカウンセラーじゃないからねぇ……」
何かいい案は無いものかとチラリとプリント類の貼られた壁に目をやる。
ついでに時間割にも目をやった時、ブーンの顔に笑みが浮かぶ。
( *^ω^)「これだお!」
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:52:14.75 ID:FEWFa4tD0
- (;・∀・)「え? 何が?」
ξ;゚听)ξ「時間割がどうかしたの?」
( *^ω^)「6時間目は───だから───をして───すれば」
(;・∀・)「えぇー、それ言うの僕なんでしょ?」
ξ*゚听)ξ「ブーンにしてはナイスアイディアね!」
(;・∀・)「ツンはもう乗り気だし……はぁ……分かったよ!」
( *^ω^)「流石はモララーだお!」
ξ*゚听)ξ「それじゃあ、細かい部分を打ち合わせしましょ!」
何も知らず、放心状態のドクオを置いてけぼりに、その計画を話し合う3人。
その6時間目はあっという間に訪れた。
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:53:21.17 ID:FEWFa4tD0
- ( A )(クーが…引っ越す……)
( A )(ラウンジ……遠い……逢えない……)
ショックのあまり、自分の世界へと現実逃避するドクオ。
「────。────?」
( A )(クーが…引っ越す……)
( A )(ラウンジ……遠い……逢えない……)
同じ考えがひたすらループするドクオ。
「───オ。───オ」
( A )(クーが…引っ越す……)
( A )(ラウンジ……遠い……逢えない……)
「───オ。──クオ」
( A )(なんか呼ばれてるような)
「ドクオ」
('A`)「ん……?」
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:55:41.35 ID:FEWFa4tD0
- はっきりと自分の名前を横から呼ばれ、そちらを向く。
川;゚ -゚)「ドクオ?」
その方向には、先ほどまで考えていたクーの存在があった。
('A`)「…………」
川;゚ -゚)「大丈夫…か?」
クーの問いかけに返事をしないドクオ。
川;゚ -゚)「………?」
('A`)「……………」
('A`)「……………」
('A`)「…………え?」
やっと状況を理解しつつあるドクオ。
頭が現在の状況を理解するにつれ、ドクオの表情は驚きの表情へと変わっていった。
(;゚A゚)「あ、え、は?」
思わず周りを見渡すドクオ。
クラスメイトたちはみんな席の位置が変わっており、隣の生徒と談笑していた。
そこでドクオは、ようやく席替えがあったという事実を理解した。
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:56:55.85 ID:FEWFa4tD0
- ( *^ω^)b
見渡す中でブーンがこっちに親指をグッとつきたててこちらに向けていた。
隣にはツンが座っており、こちらを見て笑みを浮かべていた。
川*゚ -゚)「えと、残り一月、宜しく」
(;'A`)「あ、え、よ、宜しくお願いします?」
(;'A`)(あいつら、嵌めやがった……)
川*゚ -゚)(まさか、ドクオの隣になるとは……)
どこかぎこちない二人。
そんな二人の様子を見ながら、モララーはうんうんと頷いていた。
( ・∀・)(微笑ましい光景だねぇー)
( *^ω^)「上手くいって良かったお!」
ξ*゚听)ξ「そうね、クーも喜んでるみたいだし、ドクオは焦り顔だし」
ξ*///)ξ(私も…ブーンの隣に来れて嬉しいし……)
( ^ω^)「え? なんか言ったかお?」
ξ*///)ξ「な、何も言ってないわよ! 馬鹿!」
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:58:15.23 ID:FEWFa4tD0
- 帰りのショートホームルームの時間となり、先生の話にみんなが耳を傾ける。
('、`*川「えーと、明日はちょっと時間割が変わってますよー。ですから、忘れ物がないように」
('、`*川「それと、もうすぐ期末テストがあるので、しっかり勉強しておくようにー!」
ミセ;゚ー゚)リ「テストかぁ、赤点取らないようにしないとなぁ……」
(;´_ゝ`)「点数悪かったら母ちゃんに殺される……」
テストと言う言葉に少しざわめく。が、すぐに先生の話が再開される。
('、`*川「えーとそれと、もうすぐVIP町恒例の七夕祭りがありまーす」
从 ゚∀从「おー、そういやそうだったなー」
('、`*川「中には親と一緒に出店を出す人もいるみたいですね」
('、`*川「その中でも、ジョルジュ君がお爺さんと一緒に花火を作ってるそうです」
( ><)「花火、楽しみなんです!」
( <●><●>)「ジョルジュのはともかく、お爺さんの花火が凄いのは分かってます」
(´・ω・`)「ホント、前見たときは凄かったなぁ。そうかぁ、今年は七夕祭りでやるのかぁ」
_
(;゚∀゚)「お前ら、少しは俺が作ってる奴にも期待してくれ……」
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 00:59:03.18 ID:FEWFa4tD0
- (`・ω・´)「大丈夫大丈夫、なんだかんだ言ってみんな期待してるさ」
_
(;゚∀゚)「ホントかよ……」
('、`*川「えー、準備が忙しい人もいるかも知れませんが、頑張ってくださいねー」
('、`*川「それじゃあ、今日は以上です!」
( ・∀・)「きりーつ! きをつけー! 礼!」
「「「「「「ありがとうございましたー!!!」」」」」」
( ^ω^)「ドクオー帰るおー」
(;'A`)「おーぅ」
( ^ω^)「今日は何も無いお?」
(;'A`)「そーだな」
そのままドクオの自宅へと向かう二人。
道中は当然今日の席替えと、クーの話題となり、ドクオは一喜一憂しながらの帰路となった。
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:00:53.79 ID:FEWFa4tD0
- ドクオ宅
('A`)「ただいまー」
奥からスリッパのパタパタという音が聞こえ、ドクオの母が玄関へとやってきた。
J( 'ー`)し「はい、お帰りなさい」
J(*'ー`)し「あら、ブーン君もいらっしゃい」
( ^ω^)「お邪魔しますおー!」
J( 'ー`)し「あらあら、ドクオ、お菓子があるから飲み物と一緒に持っていきなさい」
('A`)「分かったー。ブーン、先に上行ってて」
( ^ω^)「分かったおー」
その後はお菓子を食べながらゲームで盛り上がる二人。
一区切りついた所で、少し休憩する事にした。
( *^ω^)「今日はドクオに結構勝てたおー!」
(;'A`)「ちっくしょ、今日は調子悪かったな……」
( *^ω^)「ふふふ、ブーンに実力がついてきたからだお!」
(;'A`)「うるせぇ言ってろ」
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:01:46.85 ID:FEWFa4tD0
- ( ^ω^)「そう言えば、ドクオは七夕祭りはどうするんだお?」
('A`)「特に考えてなかったけど……」
( *^ω^)「ブーンはツンと一緒に行くお!」
(;'A`)「けっ、ノロケ話は聞きたかないぜ……」
( ^ω^)「クーを誘ったらどうだお?」
(;'A`)「いや、ほら、クーは他の女子とかと行きそうだし……」
( ^ω^)「まだ、祭りまで時間があるからまだ誰も誘ってないかもだお!」
(;'A`)「俺なんかと行かないだろ……」
( ^ω^)
(;'A`)
( ^ω^)
(;'A`)
(;'A`)「あのー、ブーンさん? どうかした?」
( ^ω^)「ドクオ」
(;'A`)「ん?」
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:02:45.26 ID:FEWFa4tD0
- ( ^ω^)「ブーンはドクオに失望したお」
( ^ω^)「図書委員の仕事の時も、ドクオは無理だ駄目だって言って告白しようとはしなかったお?」
( ^ω^)「とある人の言葉にこんな言葉があるお」
( ^ω^)「『やらないで後悔するより、やって後悔した方がいい』」
( ^ω^)「今まで、ドクオはいっぱいチャンスがあったはずだお」
( ^ω^)「それなのに、いつも諦めて、後悔してたはずだお」
( ^ω^)「ブーンも通った道だから、その気持ちは分かるお」
( ^ω^)「だけど、いつまでもそうしていたんじゃ、まったく進展は無いお」
( ^ω^)「ドクオは、ドクオはもっと自分に素直になった方が良いお」
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:03:59.04 ID:FEWFa4tD0
- (;'A`)「……………」
( ^ω^)「相手がどう思ってようが、自分の気持ちすら伝えられないようじゃ駄目だお」
チラリと時計を見るブーン。
時間はもうすぐ6時になろうかという所だった。
( ^ω^)「今日はブーンはもう帰るお」
立ち上がり、部屋の出口へと向かうブーン。
部屋を出る前に、一度ドクオの方に振り返る。
( ^ω^)「勇気を出して、一度チャレンジするべきだお。ドクオ」
(;'A`)「……………」
そのままブーンは階段を下りていき、少しして玄関が閉まる音が聞こえた。
ドクオは一人、部屋に残されたままだった。
しばらくして、母の食事を告げる声が聞こえ、母と一緒に食事を取り風呂へと入る。
自室へ戻ると、手元にはクーの電話番号が書いてある連絡網と電話の子機。
(;'A`)「ふぅー……」
子機へと手を伸ばし、掴む。
後は電話番号を押すだけ、しかし、押せない。
- 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:06:02.62 ID:FEWFa4tD0
- ブーンが言っていた言葉を思い出す。
『ドクオはもっと自分に素直になった方が良いお』
『相手がどう思ってようが、自分の気持ちすら伝えられないようじゃ駄目だお』
『やらないで後悔するより、やって後悔した方がいい』
(;'A`)「………よし!」
意を決して、クーの自宅の電話番号を押す。
そして、耳にあてる。少しして、コール音が聞こえてくる。
少しずつ、鼓動が高鳴っていくのが、自分でも分かっていた。
4コール目の途中で、コール音が途切れる。
受話器の向こうから声が聞こえてくる。
『はい、もしもし。素直ですが』
クーの声ではない、別の女の人の声だった。クーの母の声だ。
(;'A`)「え、えと、う、欝田と言いますが、く、クールさんはいますでしょうか?」
『ちょっと待っててくださいね、今呼んで来ますから』
それから、保留音が聞こえ始める。軽快な音楽がドクオの耳に届いていた。
音楽に負けないくらい、自分の心臓の音が聞こえてる気がした。
- 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:07:16.36 ID:FEWFa4tD0
- そして、保留音が途切れる。
『もしもし? クールですが』
(;'A`)「あ、えっと、ドクオだけど……」
『…! えと、何か連絡網?』
(;'A`)「いや、違うんだけど、えーっと…」
言え、言ってしまえと自分に必死に言い聞かせる。
(;'A`)「七夕祭りの事なんだけど……」
『祭りが、どうかしたのか?』
高鳴る鼓動、手にはじわりと汗が浮かび上がってくる。
一言、この一言を言えば良いんだ。
(;'A`)「よ、良ければ、一緒に行かないかなと」
遂に言ってしまった。
それでも、まだ返事が残っている。
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:08:11.34 ID:FEWFa4tD0
- 『…………』
少しの間、無音が続く。
(;'A`)「あ、いや、他の人がいれば─────」
『良い、ぞ』
(;'A`)「断ってくれても……え?」
『誰もまだ誘いが来てなかったからな、その、えと、一緒に行っても良い、ぞ?』
(;'A`)「えと、じゃあ、宜しくお願いします……?」
『うん、楽しみにしてるよ』
(;'A`)「じゃあ、失礼します」
『分かった』
それから、数秒して通話を切る。
子機をおき、少し深呼吸をする。
呼吸を整えていくうちに、少しずつ、喜びがこみ上げてくる。
(*'A`)「よっしゃあああ!」
思わずガッツポーズをとるドクオ。
それから数分後、ブーンに報告する為に電話を掛けるドクオの姿がそこにはあった。
- 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:09:37.93 ID:FEWFa4tD0
- そっと受話器を置く。
自分でも、心臓が高鳴っているのと顔が赤くなっているのが分かった。
まさか、誘いの電話が来るなんて思ってもいなかった。
川*゚ -゚)「ドクオと、祭り……」
帰り道、ツンが言っていた言葉。
『次のお祭りが、クーにとっては最後のチャンスなんだから活かさないと!』
そのチャンスが早くも訪れていた。
次こそは必ず、その決意がクーの心中には確かにあった。
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:11:03.89 ID:FEWFa4tD0
- それからドクオは祭りに向けての準備に奔走する。
(;゚A゚)「着る服がねええええええええええ」
とは言っては、街に買いに行こうとするが買いに行く服が無かったり。
(;'A`)「ブーン。祭りの時どういうルートで出店まわればいいかな?」
( ^ω^)「いやー、普通に行けば良いんじゃないかお? クーにあわせるとか」
(;'A`)「そ、そうか……」
祭りでの巡回ルートをどうすれば良いか悩んだり。
(;'A`)「かーちゃん、言いにくいだけど、祭り用の小遣いを恵んで欲しかったり……」
J( 'ー`)し「あらあら、来月のお小遣いは無いわよ?」
(;'A`)「ぐっ……。が、我慢しますので、恵んでください……」
と、祭りの軍資金の要求をしていたりしていた。
- 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:11:55.26 ID:FEWFa4tD0
- 同様にクーも祭りへの準備に勤しんでいた。
川 ゚ -゚)「ツンは祭りでは何を着ていくんだ?」
ξ゚听)ξ「そうねぇ、浴衣を着ていこうかなー」
川 ゚ -゚)「む、やっぱり浴衣か」
ξ゚听)ξ「だけど、結構着るのが大変なのよねぇ……」
川 ゚ -゚)「ちょっと動きにくいからなぁ……」
川 ゚ -゚)(ドクオも浴衣で来るのかな……?)
ドクオに比べると、割と余裕を持っているクー。
それでも内心は、早く祭りの日が来ないかとわくわくしたり、ちょっとした不安を抱えたりしていた。
- 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:14:16.99 ID:FEWFa4tD0
- 他のクラスメイトも、地域を挙げての祭りということもあってか準備に追われている。
_
( ゚∀゚)「じいちゃん、これの調合はこんなもんか?」
/ ,' 3 「どれ、ふむ……。ちょっと火薬の量が多いな……」
_
(;゚∀゚)「マジか、だいぶ減らした方なんだけどな……」
/ ,' 3 「これじゃと見栄えが悪くなる。もう少し金属粉も減らすと良い」
_
(;゚∀゚)「くー…、手作業じゃ難しいな。機械でやったが楽だぜー……」
/ ,' 3 「ジョルジュ、前も言ったろう。昔は機械なんぞ無くても美しい花火を打ち上げる事が出来た」
/ ,' 3 「それが今の時代に不可能なことでは無いじゃろう。前に比べれば、お前もその腕は確実に上達しちょるわ」
_
(;゚∀゚)「分かってるよ。時間も無いからさっさと終わらせるぜー」
/ ,' 3 「それが終われば次はこれじゃ、どんどん頼むぞい」
_
(;゚∀゚)「人使いが荒いぜー……」
- 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:14:59.48 ID:FEWFa4tD0
- (´・ω・`)「兄貴、これじゃ景品足りないかも」
(;`・ω・´)「マジかー! それだと隣町のおっちゃんの所まで行かないとまずいぞー」
( <●><●>)「ビロード、男の人には7号のポイ。女の人には6号のポイを渡すんですよ?」
( ><)「男の人に6号、女の人に7号ですね! 分かったんです!」
(;<●><●>)「全然理解してないのは分かってます」
( ゚∋゚)「プギャー先生も祭りの準備ですか?」
(;^Д^)「えぇ、実行委員の一人ですから。ここのフリーマーケットの配置について色々と考えてましてね……」
( ゚∋゚)「それだったらこれをここに配置して、この広さですからこれをこっちに持って来ましょう」
( ^Д^)「おぉ! それはナイスアイディアですね!」
( ゚∋゚)「後でビールでもおごってくださいねー」
(;^Д^)「うげぇ!」
从*'ー'从「お祭り楽しみだねー」
从*゚∀从「なんかわくわくするよなー!」
多くの人が楽しみにする七夕祭り。
1日1日と祭りの日が近づいてくる。
祭りの日はもうすぐそこまで迫っていた──────。
- 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:17:11.10 ID:FEWFa4tD0
- 7月7日、七夕祭り当日。
日は暮れて、町並みが夕日に綺麗に映えていた。
朝から天気は崩れる事無く、まさに祭り日和といった天気だった。
祭り会場はVIP町のVIP駅前の大通り。
既に屋台が大通りに沿ってずらっとと並び、大きな櫓が駅の前に設置され、見る者を圧倒させていた。
(;'A`)(もうすぐ時間か。うー、緊張するなぁ……)
少し早めにクーとの待ち合わせ場所である駅近くの薬局に来たドクオ。
しきりに腕時計の時間を確認し、そわそわして落ち着きが無い。
服装は少し色の薄い青の浴衣。
母曰く昔、自分の叔父が使っていたとの事で、少しサイズが大きいのをドクオに合わせて作り直したものだ。
(;'A`)(思ったより浴衣って風通し良いな。だけど暑い……)
祭りに行く人はやはり多かった。
子供連れで行く人も多く、隣町からやってくる電車から降りてくる人も多い。
落ち着かない心境の中、もう一度時計の時刻を確認する。
時間は6時23分。
祭りは6時から始まっており、威勢の良い客寄せの声や、笑い声。
焼き物を焼く音や香ばしい匂いが漂っていた。
(;'A`)(そろそろ時間だなー……)
- 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:18:07.94 ID:FEWFa4tD0
- ほぼ同時刻、クーは待ち合わせ近くまでやってきていた。
川;゚ -゚)(うーむ、やっぱり緊張するなぁ……)
クーの服装は黒っぽい浴衣で、黒に映える花が数箇所にデザインされている。
入念におかしい所が無いかを確認して家を出た。が、やはり不安が残るクー。
何よりドクオに変に思われる服装では無いかが一番の気がかりであった。
川;゚ -゚)(む、あれはドクオか……?)
(;'A`)
周囲を気にし、時間を確認しているドクオの姿があった。
まだこちらには気づいていないようで、ドクオのそわそわしている動きが目立っていた。
川*゚ -゚)
その姿を見て口元が少し緩み、はにかむクー。
自分以上にドクオが落ち着かずそわそわしている姿を見て、そのお陰で緊張がほぐれる。
川*゚ -゚)(よし、ばれないように少しずつ近づこう……)
- 87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:18:32.17 ID:FEWFa4tD0
- 背後から肩をポンポンと叩かれ、ドクオは後ろへと振り向いた。
そこにクーの姿があり、驚いたドクオは少し後ずさる。
(;'A`)「び、びっくりしたぁ……」
川*゚ -゚)「遠めに見てもドクオだとわかってな」
時計の針は6時半を指し、ちょうど待ち合わせの時間となった。
川*゚ -゚)「その、あの、待たせてすまなかったな」
(;'A`)「ん、あ、いや、俺もさっき来たばかりだったから」
そう言いながらドクオはクーの服装を見た。
(*'A`)(可愛い……似合ってるなぁー)
思わずにやけてしまうドクオ。
しかし、それを見たクーは変な所があったのかと不安になり自分の服装を確認する。
川;゚ -゚)「やっぱり、へ、変かな?」
(;'A`)「いや、その、あの……」
(*'A`)「似合ってるよ?」
小声で少し顔を赤らめながらテレを隠すようにそう言うと、笑顔になるクー。
その笑顔を見て、ドクオも少し笑みをこぼす。
- 89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:20:29.27 ID:FEWFa4tD0
- 川*゚ -゚)「その、ありがとう。ドクオも似合ってるぞ?」
(*'A`)「あ、ありがとう」
(*'A`)「それじゃあ、そろそろ行こうか?」
川*゚ -゚)「う、うん」
それから二人は多くの人の行き交う祭りの大通りへと歩き始めた。
('A`)「あの店行きたいとかあれば行って欲しいなー」
川 ゚ -゚)「そうだなー。ショボンやワカッテマス達の店にも行ってみたいし」
川 ゚ -゚)「フリーマーケットで色々と探してみるのもある」
('A`)「まぁ面白そうな店があればそこに行きますか」
川 ゚ -゚)「そ、そうだな!」
二人がまずやってきたのはショボンとシャキンのやっている射的の店だった。
中々好評なようで真剣に的を狙う子供達の姿が特に多かった。
- 92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:22:15.90 ID:FEWFa4tD0
- ('A`)「結構繁盛してるねー」
(`・ω・´)「おう! ドクオにクーじゃねぇか! 浴衣まで着て楽しんでるねぇ!」
川*゚ -゚)「ついさっき来たばかりだけどな」
(´・ω・`)「まぁ寄ったからには当然やっていくよね? 二人とも」
('A`)「ん、まぁね。いくら?」
(`・ω・´)「1回300円で5発だけど、友達価格で250円だな!」
川 ゚ -゚)「250円か…えーと財布財布っと」
(;'A`)「あ、これぐらいなら出すよ」
川 ゚ -゚)「いやいや、自分で払うから大丈夫だぞ?」
(;'A`)「まぁまぁそう言わずに」
そう言いながら500円をショボンに渡す。
川;゚ -゚)「何か悪いな」
(´・ω・`)「まぁまぁ、今日ぐらいはドクオに頼りなー」
(`・ω・´)「はい、ここにコルクつめて狙い定めて撃つ! それだけな」
(´・ω・`)「クーの奴には7発にしておくねー」
- 93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:23:40.84 ID:FEWFa4tD0
- 川*゚ -゚)「む、ありがとう」
('A`)「あれ? 俺のは5発?」
(`・ω・´)「お前は5発で十分だろうが!」
(;'A`)「んだよー、ケチー」
(´・ω・`)「うちは女性には優しいんだよ」
('A`)「はいはい。クー、先にやっていいよー」
川*゚ -゚)「分かった」
川*゚ -゚)(どれにしようかなー……む、あの兎の人形良いな……)
('A`)(クーが欲しいのはあれか、取れなかったら取ってやりてぇ……)
(;'A`)(しかし、落とせるか微妙だなぁあれ、大きさ的にも)
そうこう考えてるうちに、クーは3発ほど箱に入ったその人形を狙う。
当たりはするが中々落ちず、落ちないぞーなどと言いあいながら的を小物に変えて数個を落とす事に成功する。
(´・ω・`)「はい、これとお菓子はサービスね」
川*゚ -゚)「むー、あれが欲しかったんだけどなぁ……」
(`・ω・´)「まぁ落とせた奴があったし良いじゃないか」
川*゚ -゚)「そうだなー」
- 94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:24:21.55 ID:FEWFa4tD0
- ('A`)「んじゃあ、次は俺の番かー」
川*゚ -゚)「頑張ってくれ」
('A`)(クーが欲しがっていたのはあの人形。だけど難しいよなぁ……)
('A`)(射的の基本は取れる物を取る。だけど、今回はちょっと無茶をしてみますか)
('A`)(コルクは目一杯押し込んで、片手を伸ばして出来るだけ商品に近づける)
('A`)(中央や下は狙わないで上の隅を狙う。幸い箱に入ってるからそれも可能だな)
(´・ω・`)(兄貴ー、ドクオは射的のコツを知ってるみたいだねー)
(`・ω・´)(そうだな)
- 95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:27:20.60 ID:FEWFa4tD0
- ('A`)(ここで、撃つ!)
まず、一発目。
箱の左上にあたり、箱がほんの少し回転する。しかし、まだ落ちそうにはない。
('A`)(後2発程度か?)
2発目を撃つ。
さっきよりも、少し回転し、ぐらつきはするが、後ろへ倒れなかった。
('A`)(残り1発で決める……!)
そして3発目。
命中。ぐらつく景品。落ちれ、ドクオはそう願った。
箱はゆっくりと後ろへと傾き、箱の重心が後ろに下がった時、台から落ちていった。
川*゚ -゚)「おぉ! 凄いな!」
残りの2発は適当に部屋の飾りになりそうな小物を狙い、1発外したものの、残りの1発で見事に落とした。
(`・ω・´)「いやー、流石の腕だねぇ」
(´・ω・`)「うんうん、はいこれ落とした奴」
('A`)「流石にあのでかい熊の人形は落とせないけどなー」
(`・ω・´)「まぁね、あれがあれば少しは派手に見えるもんだから。ある意味置物だね」
- 96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:27:56.16 ID:FEWFa4tD0
- ('A`)「んじゃあ、次の店行くわー。頑張ってなー」
川*゚ -゚)「頑張ってくれ」
(`・ω・´)「おぅ! また時間があればよってくれ!」
('A`)「そうそう、さっきの人形の奴。はい」
川*゚ -゚)「いやいや、それはドクオが落とした奴だから」
('A`)「だけどクーも狙ってたでしょ? それに、自分の部屋には合わないからさ」
川*゚ -゚)「ん、うん、じゃあありがたく頂いておくよ。ありがとう」
(*'A`)「どういたしまして」
それから歩きだす二人、途中でカキ氷やフランクフルトなどを食べながら、祭りを堪能する。
途中、ツンとブーンの二人に会い、からかわれたりもした。
他にも渡辺やミセリやハイン、フリーマーケットではトソン先生やプギャー先生と遭遇した。
フリーマーケットではドクオはクーに一つキーホルダーをプレゼント。
クーも人形のお礼にと部屋に飾る小さな飾りをドクオにプレゼントした。
ワカッテマス達の出店は金魚すくいをやっていた。
クーにやってみるかを聞いてみるが、家では飼えないからと理由からワカッテマス達と話をするだけで終わった。
本部近くでは流石兄弟が親と一緒に事務作業を手伝わされていた。
二人はドクオとクーの姿をみるやいなや本部を抜け出して来て、途中まで一緒だったがどこかえと行ってしまう。
- 98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:31:09.41 ID:FEWFa4tD0
- 楽しい時間は過ぎるのが早く、時間は9時になろうという所。
少し歩き疲れた二人は、ジュースを飲みながら休憩をしていた。
川 ゚ -゚)「そう言えば、花火はどこで見ようか?」
花火と言う単語で、ドクオはあっとした表情となる。
祭りの事で精一杯だったドクオは花火を見る場所をまったく考えていなかったのだ。
(;'A`)(しまった……。どうしよう)
(;'A`)「んー、どこで見ようかな。眺めの良い所かぁ……」
何処か良い所は無いか、頭をフル回転させながら考える。
近くで、眺めの良い所、かつ人気の少ない所が良い。その条件で何処か良いかを必死に考える。
その中で、一つ、思い当たるところがあった。
(;'A`)「学校の屋上とか?」
川 ゚ -゚)「学校は閉まってるんじゃないのか?」
(;'A`)「いや、確か鍵が壊れてる窓があって、そこから入れる」
川 ゚ -゚)「そうなのか、まったく知らなかったぞ」
(;'A`)「ジョルジュとかが忘れ物した時に使ったとか言ってたからね」
(;'A`)「屋上も入り口の鍵が簡単に外れるから大丈夫だと思う」
- 99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:33:24.56 ID:FEWFa4tD0
- 川 ゚ -゚)「よし、だったら行ってみよう」
クーがそう言うとドクオは安堵したため息をふーっと吐き出す。
そして空のジュース缶をゴミ箱に入れて二人は学校を目指して歩き始る。
学校には近道を使ったりして15分ほどで着く事が出来た。
川 ゚ -゚)「夜の学校も中々洒落た雰囲気に感じる」
('A`)「朝は活気がある学校もこんなに静かになるからな」
校門をどうにかよじ登り、少し浴衣が汚れたものの敷地内に入る事に成功。
鍵の壊れた窓を目指して校舎の周りを歩き出す。
('A`)「確かこの辺だったはず……」
そう言いながら窓を少し持つような形でぐらぐらと揺らすドクオ。
すると鍵が少しずつ浮き、やがて開ける事に成功した。
川 ゚ -゚)「おー、そういう開け方なのか…覚えておこう」
('A`)「まぁ覚えても使い道はあまり無いかもなー」
そうして校舎内に入る事に成功。二人は屋上を目指して校舎内を歩き出す。
屋上まではあっという間にたどり着き、鍵をドクオが外した。
川 ゚ -゚)「屋上なんて来た事が無かったぞ」
('A`)「俺はたまに昼休みに昼寝に来てるよ。ぽかぽかしてて気持ち良いんだ」
- 101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:34:37.22 ID:FEWFa4tD0
- ガチャリと屋上の扉を開く。
開いた扉の隙間から外の空気が流れ込んで来る。夜という事もあり、それは少し冷たく心地良い。
川*゚ -゚)「おー!」
思わずクーは声をだす。そして屋上のフェンスまで駆け寄る。
普段は来ないような場所から眺めた景色はとても綺麗に見えた。
家の明かりが、地上の星のように見える。
('A`)「星がいっぱいだなー」
川*゚ -゚)「うむ! 凄いなここは!」
少し空を見れば天の川。
きっと多くの人が同じようにこの空を眺めているに違いない。
('A`)「あっちが祭り会場だな。まだ賑わってる」
川*゚ -゚)「屋上からの景色がこんなに良い物だとは思わなかったぞ!」
神秘的な空間、と言えば少し大げさのように見えるが、今のクーには全てが神秘的に見えていた。
高みから見る町並み、空の星達、その全てが違うものに見えた。
('A`)「そろそろだぞー」
そう言うと、ドクオは屋上の真ん中当たりまで移動して花火が上がるであろう方を見ながら腰を下ろす。
クーも興奮からから少し頬を朱く染めながらもドクオの隣に座る。
- 102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:35:49.40 ID:FEWFa4tD0
- まさかの展開にドクオは驚いていた。
駄目元で来た屋上がクーにかなりの好評だからだ。
そして今、クーが間左にいる。
身体こそ密着してはいないものの、置かれた手はまるでその上に重ねて欲しいと誘っているようにも見えた。
自分自身の中で様々な気持ちが葛藤する。
(;'A`)(置くべきなのか? 置かざるべきなのか?)
(;'A`)(どうしよう……)
クーは隣にドクオが座ると言う状況に思い切って踏み出してみた。
何事もチャレンジだ。そう自分に言い聞かせるように。
手もさり気無く重ねられる位置へと置いてみる、がドクオは置く様子が無い。
こっちの作戦はどうも上手くいきそうにない。
川;゚ -゚)(作戦失敗かな……)
ふと冷静になり、さっきまでの自分を振り返ってみる。
テンションが上がってしまい舞い上がっていた自分。
思い返してみればどんどんと顔が赤くなっていった。
川*//-/)(は、恥ずかしい……)
二人の別々の思惑がある、二人きりの屋上。
やがて、花火の打ち上げ時刻となった。
- 103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:37:24.37 ID:FEWFa4tD0
- 笛を吹いたような音が、VIP町へと響き渡った。
次の瞬間、それは天高くまで上がると輝く星星のように空に華を咲かせた。
そして、儚く消えていく。
また、次の花火が打ち上げられる。
一発、一発と花火が打ちあがっては空に一瞬の大きなアートを描く。
ドクオは身体を支える両手の位置を変える。
何気なく動かした右手の着地点に、クーの左手があった。
運命か神のいたずらか、ドクオはクーの手に自分の手を重ね合わせる事に成功したのだ。
しかし、クーは空に上がる花火に夢中で、それに気づく様子は無い。
恥ずかしい気持ち、嬉しい気持ちも湧き上がり、どこか残念な気持ちも湧き上がる。
それもほんの数秒程度。
クーの視線を追うようにドクオは再び花火の描く幻想的な世界へと足を踏み込んだ。
- 104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:38:52.31 ID:FEWFa4tD0
- ( *^ω^)「綺麗だおー」
ξ*゚听)ξ「そうねー」
ドクオ達とは別の場所で眺める二人。
/ ,' 3 「うん。良い出来じゃ」
_
( ゚∀゚)「一瞬だけど、この為に作ったんだなー」
_
( *゚∀゚)(また、作るの頑張ろう!)
自分達が作った物を感慨深く見る二人。
彡⌒ミ
( ´_ゝ`)「見事だな、流石は荒巻さんだ」
( ´_ゝ`)「親父じゃなくて別の女と見たかったぜ」
(´<_` )「まったくだ」
談笑をしながら空を見上げる親子。
从*'ー'从「花火を見ながら食べるお団子も美味しいねー」
从*゚∀从「いつも以上に美味く感じるぜー」
ミセ;゚ー゚)リ「何か雰囲気ぶち壊しのような……」
花より団子と言った様子で眺める乙女達。
- 105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:39:57.51 ID:FEWFa4tD0
- わずか数分と言う時間で、空に上がった花火はVIP町の住人達に心に響き渡る。
最後に一発、それはそれは大きな一発がVIP町を美しく照らす。
花火が消えても、余韻を味わうように二人は空を見ていた。
先に異変に気づいたのはクーだった。
自分の左手に重ねてあるドクオの右手。
川*//-/)「あ、え?」
隣から聞こえた変な声に、思わずクーを見る。
目線を追って下を見ると、そこにはクーの手に重ね合わせた自分の手。
(;'A`)「うわ! あ、すまん!」
重ねていた手をすぐに引っ込めるドクオ。
川*//-/)「あ、いや、だ、大丈夫だ」
クーも重なっていた左手をゆっくりと戻す。
顔を赤く染めながら見つめ合う二人。
どちらかが何かを言うのを待っているようにも見える。
- 106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:40:29.88 ID:FEWFa4tD0
- 川*゚ -゚)「あ、あの!」('A`*)
図書室と同じような形になる二人。
二人ともそれを思い出してか、ほぼ同じタイミングで笑い出す。
ひとしきり笑った後で、先にドクオがクーへと声を掛ける。
(*'A`)「どうする、ジャンケンでまた決めるか?」
川*゚ー゚)「ふふ、それも良い。だけど今回はドクオに譲ろう」
そうか、と言うとドクオは一つ咳払いをする。そこで、空気が変わる。
('A`)「クー、あのな、あの……」
一つ一つの単語を出すのにも苦労する。
凄い勢いでのどが渇いていくような感覚。
少しずつ高鳴っていく鼓動。それはクーも同様だった。
この雰囲気。何を言うのか、言われるのか、お互いが自然と分かっている。そんな事を感じさせる。
一つ、ドクオは思いっきり深呼吸をする。
躊躇いが消え、身体が軽くなったような感覚がした。
('A`)(よし!)
再び、ドクオの口が開く。
自身の気持ちを伝えるために。
- 108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:41:24.25 ID:FEWFa4tD0
- ('A`)「クーは引っ越して、ラウンジに行く」
('A`)「ラウンジは遠いし、簡単には行けない」
('A`)「だから、行く前にこれを伝えさせてくれ」
('A`)「俺は…、俺は─────」
『素直クールが、大好きだ』
- 109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:42:02.68 ID:FEWFa4tD0
- はっきりと、相手に聞こえる声でそう告げた。
誰もいない屋上、遮る者はいない。
自分が前から言えずにいた気持ち。
しかし、それを今、ようやく告げる事が出来た。
後は、相手の返事を待つだけだ。
川 - )「あ、ありがとう」
顔を伏せながらそう言ったクー。
そしてゆっくりと顔を上げる。
川*゚ -゚)「あの、その、だな」
『私も、ドクオの事が大好きだ』
- 110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:45:53.23 ID:FEWFa4tD0
- 満天の星空に二人の笑顔。
二人の気持ちは今、ようやく相手に届いた。
後一歩が、近いようで遥か遠く。
踏み出す事が出来ず、チャンスを逃してきた。
多くの友に支えられて、この時に一歩を踏み出す事が出来た。
七夕は、織姫と彦星が年に一度、再会をする日。
今日と言うその日に、長い時間を経てドクオとクーの恋は実った。
織姫と彦星は、明日になるとまた引き裂かれる。
しばらくするとドクオとクーも、離れ離れになってしまう。
しかし、二人の相手を思う強い気持ち。
それはきっと距離と言う壁を軽々と越えてしまうだろう。
手を繋ぎ、星を眺める。
星星の輝きはまるで二人を祝福しているように輝いている。
まだ遠くからは祭りの太鼓の音が聞こえていた──────。
- 112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:47:14.72 ID:FEWFa4tD0
- クーは引越しの準備が終わり、全てを運び出した自分の部屋を入り口から眺めていた。
川 ゚ -゚)「うむ、忘れ物は無し。さらばだ、住み慣れたわが部屋よ」
階段をリズム良く降りていき、靴を履いて玄関を出る。
引越しやがまだ荷台近くの段ボール箱を積み込んでいた。
それを眺める、クラスメイト達。
その集団に駆け寄っていく。
( ^ω^)「クーがいなくなると寂しくなるおー……」
ξ;凵G)ξ「向こうでも元気でねー」
川;゚ -゚)「ツン、泣く事は無いだろう」
ξ;凵G)ξ「だって、クーが遠くに行っちゃうんだもん」
( ・∀・)「ツンは涙もろいからなぁ」
(´・ω・`)「ラウンジかぁ、都会だからちょっと羨ましいな」
( <●><●>)「たまに手紙とか送ってくれると嬉しいのはワカッテマス」
川*゚ -゚)「うん。向こうに着いたら学校宛で手紙を書くとするよ」
( ´_ゝ`)「まぁ、こっちからも送れるしな、住所教えてもらったし」
- 113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:48:27.35 ID:FEWFa4tD0
- 从'ー'从「はい、クーにプレゼントー」
そう言って渡辺が手渡したのは、クマの人形と手作りのお守り。
从 ゚∀从「いやはや、裁縫するのは楽しいぜ」
ミセ*゚ー゚)リ「ハインって見た目と違って手先が器用よねー」
(*゚ー゚)「意外と女の子らしいところもあるもんねー」
川*゚ -゚)「大切にさせて貰うぞ」
(´<_` )「祭りじゃ逃げ出すのにお世話になってすまんね」
(`・ω・´)「浴衣姿も中々眼福だった」
川*゚ -゚)「祭りは私も楽しかったぞ」
_
( ゚∀゚)「これ、余った材料で作った花火。ちょいと失敗した奴もあるけどたぶん遊べるぞ」
<ヽ`∀´>「これはキムチニダ。お父さん好きそうだから食べてくれニダ」
川*゚ -゚)「ありがとう、ジョルジュ、ニダー」
- 114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:48:50.63 ID:FEWFa4tD0
- ( ^ω^)「ほらドクオ、締めの挨拶だお」
(;'A`)「お、押すな! 分かってるよ!」
クーと向かいあい、ごほんと一つ咳払いをする。
(;'A`)「あー、そのー、あの、だなー」
( ^ω^)「ほらほらー頑張って言うおー。時間無いおー」
(´<_` )「何であのへたれが好きになったんだろうか……」
从'ー'从「乙女心は複雑なのよ〜?」
( ´_ゝ`)「あんたは単純だけどねー」
从'ー'从「あ?」
(;><)(凄い表情見ちゃったんです! 怖いんです!)
後ろで勝手気ままに喋るクラスメイト達。
普段はそれを止めるモララーはニヤニヤとドクオを見ていた。
(#'A`)「あー! お前らうるせー! ちょっと黙れ!」
川*゚ -゚)「ドクオ、あまり無理しなくても……」
(;'A`)「いや、ここは言わせてくれ」
- 115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:50:12.27 ID:FEWFa4tD0
- (;'A`)「あのー、だなー、そのー……」
(*'A`)「向こうでも、頑張ってくれ。後、出来るだけ手紙書くから」
川*゚ -゚)「うむ、期待して待ってるぞ」
(´・ω・`)「ひゅーひゅー」
( ^ω^)「ひゅーひゅー」
( ´_ゝ`)「いよ! どくおとこ!」
(#'A`)「うるへー!」
やんややんやと騒ぐクラスメイト達。
やがて、家の中の確認を終えたクーの父が玄関から出てきた。
父「それじゃあ行こうか?」
川*゚ -゚)「うん」
母「わざわざお土産に見送り、ありがとうね」
クラスメイト達にお辞儀をする両親。
クーも照れながら軽くお辞儀をする。
- 116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:54:00.29 ID:FEWFa4tD0
- 車に乗り込み、シートベルトを締める。
父がエンジンを掛ける。
引越しのトラックも遅れてエンジンを掛ける。
後部座席の窓を開けるクー。
川*゚ -゚)「それじゃあ、みんなも元気で」
( ^ω^)「クーも元気で頑張ってお!」
ξ;凵G)ξ「絶対手紙書くからねー」
やがて、トラックが出発する。それを見た父が、一度クラクションを鳴らした。
そして、クーが乗った車はゆっくりと動き出した。
少しずつ、遠くなるクラスメイト達。
集団の中からドクオが一人、大きな声を出した。
(*'A`)「絶対手紙書くからなー! 向こうでも頑張れよー!」
少し窓から身を乗り出し、ドクオに届くように返事を言う。
川*゚ -゚)「分かったー!」
手を振ると、みんなが手を振りかえしてきた。
やがて、みんなの姿が見えなくなる。
車内でクーは溢れ出そうな涙をこらえ、皆との楽しい思い出を胸に、新しい街ラウンジを目指した。
- 117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:54:32.13 ID:FEWFa4tD0
- それから、クーとドクオの遠距離恋愛が始まる。
ドクオからは体育祭などの学校行事や、ブーンやツンなどクラスメイト達に関する手紙。
一方クーからは引っ越したラウンジの環境や、驚いた事、通う学校の事などが手紙が送られてくる。
お互い、話題が尽きることは無く、時折ブーンやツンからも手紙が送られていた。
月日はあっという間に流れて行く。
やがて、クーはラウンジ高校へと入学した。
入試が近づいてくると、ドクオからの手紙が少しずつ減りだしていた。
クー自身も忙しく、返事が遅れたりする事が多くなった。
しかし、3月に入り、4月になっても、ドクオからの手紙ぱったりとこなくなった。
こちらから手紙を出してみても、返事が返ってこない。
ブーンやツンに手紙を出してみる。
すると、ドクオは家でごたごたがあって今大変な事になっている。との事だった。
クーは不安になりながらも定期的に手紙を出した。
やがて、5月となり、ラウンジへ入学して1月が経過した。
- 119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:55:53.45 ID:FEWFa4tD0
- 5月の半ばの事だった。
本来ならば朝のホームルームの時間だが、先生が中々やってこない。
クラスでは何かあったのだろうかと話をする人がいれば本を読んでいる人がいた。
やがて、遅れて先生がやってきた。
|゚ノ ^∀^)「遅れてすいません。突然ですが、今日は転校生を紹介します」
/ ゚、。 /「この時期に? 少し珍しいね」
爪'ー`)「何かあったんじゃねーの?」
|゚ノ ^∀^)「えーと、家庭の事情でラウンジの叔父の家に引っ越してきたとの事です」
lw´‐ _‐ノv「せんせー、男ですか? 女ですか?」
|゚ノ ^∀^)「男子ですよ。男子は特に仲良くしてあげてくださいねー」
男子と言う言葉に女子は少しざわついた。
もしかしてイケメンかもと言う話題で既に数人が盛り上がっている。
対して男子は残念そうな顔をした生徒が多い。
*(*'')*「男子だって! クーちゃんもしかしたらカッコイイかもよ!」
川 ゚ -゚)「私はあまり興味は無いなー」
*(*'')*「そっかー、そう言えばクーちゃん好きな人いるんだったねー」
川*゚ -゚)「ま、まぁな!」
- 120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:57:15.17 ID:FEWFa4tD0
- |゚ノ ^∀^)「えーそれでは、入ってきてくださーい」
みんなの視線がドアに集中する。
ゆっくりとドアが開き、一人の男子生徒が入ってくる。
川;゚ -゚)(!?)
少しざわめく教室。
男子生徒はゆっくりと教卓へと歩いてゆく。
川;゚ -゚)(ま、まさか……)
|゚ノ ^∀^)「それでは自己紹介をお願いします」
ごほんと一つ咳払いをして、教室を見渡す転校生。
「えーと、あのー、VIP町からラウンジへ引っ越してきました」
その声は、クーが聞き覚えのある声。
- 121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:59:09.16 ID:FEWFa4tD0
- 「そのー、えーっと……こっちにきてまだ全然日が経ってないので」
緊張しているのか、顔も少し赤く、言葉に詰まっている。
「えーと、分からない事とかいっぱいあるけど、宜しくお願いします」
そこで、深々と一礼。
|゚ノ ^∀^)「名前をお願いしますねー」
「あ、え、そ、そうでしたね」
『欝田ドクオです。宜しくお願いします』
- 122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 01:59:59.28 ID:FEWFa4tD0
- 川* - )
言葉に言い表せない感情がこみ上げてくる。
それは、奇跡か運命か。
一度は離れ離れになった二人がまた、一緒に通う事が出来るようになった。
ここから、二人の恋物語が再び始まる。
長く長く続くであろう、恋物語。
それがどうなるのかは、また別のお話。
川 ゚ -゚)彼らの青春のようです('A`)
終
- 123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/11/23(月) 02:01:55.08 ID:FEWFa4tD0
- 使用させていただいた没ネタは下記の物です。
川 ゚ -゚)彼らの青春のようです('A`)
【あらすじ】
舞台は中学。
クラスが全員友達みたいな田舎の学校で、主要メンバーはいつもバカ騒ぎしてるような仲良しな奴ら。
しかし、突然クーの転校が決まってしまう。
【キャラ】
お互いすきなのに微妙な距離のドクオとクー。
ドクオとクーの恋を全力で応援するブーンとツン。
有名な花火師、荒巻の孫であるジョルジュ。
まとまりのない皆をまとめる面倒見のいいモララー。他にもいろんなクラスメイト達。
原案者様、素晴らしい没ネタをありがとうございます。
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