从 ゚∀从世界征服を目指す(礎の)ようです

188 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:03:26 ID:TGjBuaEc
それでは投下させていただきます
其の前に諸注意

※この作品はフィクションです。実際の人物、団体とはなんの関わりもありません

189 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:05:10 ID:TGjBuaEc


『神斉モララーは正義のひとである。』



"正義感が強い""責任感がある""リーダーシップがとれる"

 小学校の通信簿に六年間必ずそう書かれる子供であったそうだ。
 そんなモララーを端的に表す事は不可能だ、と高岡は思う。

190 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:05:48 ID:TGjBuaEc



『神斉モララーについて


 第一に頭脳明晰。
 それを分かりやすく伝えるのは難しいが、例えば戯れを装ってIQテストをさせた所、二百を優に越える数値を片手間で叩き出して見せた。
 加えて知識欲も申し分ない。人並み以上に物を良く見聞きし分かり、更なる展開を加えて吐き出す事が可能な、正に灰色の脳細胞を所持している。
 ただ、彼は圧倒的にその頭脳の向かうベクトルを間違えていた。

 第二に眉目秀麗。
 磁器人形のように整った風貌としなやかで長い手足。それと相成った長身は人の目を集め、溌剌とした一挙一動は爽快なものでさえある。
 但し、その動きは大体にまともな結果を伴わない。

 第三に文武両道。
 射撃をさせれば片手でいとも簡単に的の中心を射抜き、組み手をさせれば我流ならではの読めない軌道で相手を叩き伏せる。
 何よりも特筆すべきは身のこなし。「瞬歩法でもやってんじゃねぇか」と他の団員に言わしめるそれは、驚くほど軽く、疾い。
 ただ、その身のこなしは専ら部下の心臓に負荷をかける為にばかり行われる。

 第四に』( ・∀・)「何を書いてるんだい、高岡くん」

从;゚∀从「ぎょへあ?!」

 背後から唐突に声をかけられた高岡は、大凡そ分別のついた大人にあるまじき悲鳴を上げて肩を揺らした。
 聞き慣れてしまった声に恐る恐るといった様子で振り返る。

从;゚∀从「カ、――カンザイ、さん」

( ・∀・)「頼むからモララーと呼んでくれないかな。僕はその名字で呼ばれる度に誰から怒られるかとびくびくするんだ」

191 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:06:30 ID:TGjBuaEc

 そう言って、モララーは人形のように整った顔をすこし歪ませた。
 そして何一つびくびくした様子も無くその辺りの事務椅子を引っ張り、腰で踏みつけるような尊大な仕草で座る。長い足を折り曲げるようにして組んだ。
 ダークスーツから生えた黒い革靴が電灯の光を反射して、鈍く輝いている。

 モララーは膝の上に肘を立て、そこに顎を付けて上目遣いに高岡を睨んだ。
 鮮烈に口角が弧を描く。

( ・∀・)「で、何をやっているんだい?」


『神斉モララーは正義の人だが、その挙動は限りなく悪役のそれに近い。
そして、彼自身がそんな自分を楽しんでいるから、なお悪い』


 肩書きだけはそんなモララーの秘書、の高岡は左手だけでメモパットにそう書き足した。

192 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:07:16 ID:TGjBuaEc






 世界は二つに割れている。
 物理的に、ではない。


 荒巻スカルチノフ。中嶋バルケン。この一組の双子がこの世界を支配していた。
 荒巻の支配する世界は、『政治による秩序』
 中嶋の支配する世界は、『宗教による秩序』

 何が彼らを駆り立てて半世界の覇者にしたのかは定かではない。
 その二人がまるでおやつのパンケーキを半分こするように世界の半分をそれぞれ支配していたのだけが事実だ。

 五年前までは。

 五年前のクリスマスイブ、『政治による秩序の世界』を支配していた荒巻スカルチノフが後継者を遺して自害した。
 後継者というのは、まだほんの若い青年で、当然のように『政治による秩序の世界』は震撼に陥る。
 翌日の青年の世界大統領就任式では暴徒が壇上に上がり、彼を撲殺せんと襲いかかった。後に"クリスマス・テロル"と称される事件である。

( ^ω^)「……ごめんなさい」

 雇われていたSPが動くよりも更に速く。果物が朽ちるように自然に、暴徒の身は幾つもの弾丸に抉られた。
 一キロ離れた時計塔から放たれた射撃銃の一撃。煙のように現れたサブマシンガンによる掃射。観衆のうちから突き抜けたハンドガンの急所撃ち。
 そして、駄目押しのような零距離地点の銃口から吐き出された鉛玉。

 映画のアクションスターの如く拳銃を横に倒し、元・暴徒だったそれの額に突きつけた青年は柔和な笑みの上から眉間に皺を寄せた。
 そして、現実から解離した光景の真ん中で大きく両手を広げ、こう宣言したと言う。

( ^ω^)「僕は、全世界を統一したいんですお」

 二代目世界大統領、内藤ホライゾン。就任の言葉、だった。

193 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:07:46 ID:TGjBuaEc



从 ゚∀从世界征服を目指す(礎の)ようです

194 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:10:43 ID:TGjBuaEc



( ・∀・)「内藤さんは反戦論者だからね、戦争だけはしたくないとおっしゃった。
        だけれど世界の向こう側をそのまま放置したのでは統一は不可能だ。そしてあの人が出した答えは、征服だった」

 朗々とした声が事務室に響く。丸で物語を朗読しているような語り口でモララーはこの世界の局地的な歴史を語っていた。

( ・∀・)「表向きは平和的解決を狙っているらしいけどね。戦争では無く、征服。
        圧倒的な武力でねじ伏せる事を選んだ。反戦主義者の癖に暴力的な解決法だが、悪くは無い」

 僕からすればね、と付け足して彼は微笑む。
 非の打ち所の無い微笑だった。それから目を逸らして、高岡は震える手でパソコンのウィンドウを閉じていく。

( ・∀・)「そしてその征服の為、内藤さんは秘密裏に私兵団を作った。あらゆる暴力のエキスパートの罪人を集めた、私兵団を」

( ・3・)「何語ってんですかYO」

( ・∀・)「いやね、高岡君が僕らをモデルにした小説を書いているらしいから。説明台詞が必要じゃないか」

( ・3・)「はーん、アホなんですね」

( ・∀・)「え、あほ違いますよ? 何言っちゃってんの君。俺上司だよ? お前の上司だよ?」

( ・3・)「俺が上司と認めているのは実質副団長だけですYO」

 町雁ボルジョアは口を尖らせて頷いた。

 三年前、国中を恐怖に陥れた二人組のテロリストの片割れにパソコンの画面を覗き込まれ、高岡は顔をひきつらせる。
 自分と同じ名前を冠した細菌兵器。
 然るべき量をばら撒ければこの惑星全土の動物を死に至らしめる事すら可能とまでいわれた其れを議事堂で撒き散らそうとした彼は、そんな高岡をみて

( ・3・)「なんだYO」

 と幼い子供のように唇を尖らせた。

从;゚∀从「な、んでもありません」

195 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:13:17 ID:TGjBuaEc


『very important people』

 在り来たりに短縮して、VIP


 言葉通り、字面通り『重要な人々』
 モララーは自分が団長と成った時、私兵団をそう命名した。
 世界の半分を揺るがした罪人ばかりを集めたそれ。

『目を離すなよ、噛みつくぞ』

 そう自らを皮肉った名前は、確かにこれ以上無くしっくりと当てはまるものだった。
 いや、ピープルじゃなくてパーソンズじゃないのかと高岡は思うが。その辺りにモララーの間抜けさが滲み出ている、とも。


 空前絶後のクラッカーに、人類未到を踏んだ殺人鬼。悪鬼羅刹の人体破壊魔に、倒壊必至の爆弾狂。精神崩壊を専門としたセラピスト。諸々諸々。
 史上最悪のテロリストの面々。其れを束ねる、世界最悪の天才。

 実際には故意に罪人を集めた訳で無く、適正と才能を持ち合わせた国民を上げていったら罪人ばかりになった、が正しいらしいが。

( ・3・)「んな事よりカンザイさん、丸耳が呼んでたYO」

( ・∀・)「君も俺をカンザイって呼ぶかい……えぇい畜生、良いさ、好きなだけ呼ぶが良い」

( ・3・)「はぁ?」

( ・∀・)「丸耳と言うとあれかい、あの肉膨れか? やだなぁ、あいつ話長いんだ」

 人心掌握の天才は子供のように口を曲げ、頭を掻く。整髪料で整えられた栗色のが容赦なく乱されていった。
 ぎ、と事務椅子が軋みを上げる。

( ・∀・)「まぁ、行かないともっと話が延びるしな。行ってやるか」

196 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:15:05 ID:TGjBuaEc

 颯爽とした動きで立ち上がり、大きく伸びをする。
 高岡はぼぅっとその様子を見ていたが、慌ててパソコンの電源を切って付きそう準備を始めた。
 一応高岡はモララーの秘書である。秘書検定一級。それだけでこの私兵団へと入団させられてしまった高岡は、生来の生真面目な性質から、この罪人まみれのふざけた職場でも真面目に職務を真っ当しようとしていた。

 因みに高岡がその検定を受けたのは高校生の頃で、内容はすっかり忘却の彼方へとやられている。

( ・∀・)「ああ、高岡君は情報室に行ってくれないか」

从 ゚∀从「え?」

 予定等をファイリングしているポートフォリオを立ち上がった高岡の手から奪い、モララーはそう言った。
 優美な手つきでメモ用のルーズリーフを一枚ファイルから引き抜いて、残ったポートフォリオを高岡に押し戻す。

( ・∀・)「兄者の奴に調べ事を頼んでてね。そろそろ引き取りに行こうと思ってたんだ。代わりに行って来い」

从 ゚∀从「……はぁ、分かりました」

( ・∀・)「で、肉膨れは?」

( ・3・)「応接室だYO」

( ・∀・)「ふぅん……あ、高岡君」

 方向転換していたモララーがくるりと高岡を振り返り、自分の唇に人指し指の側面を押し当てた。


( ・∀・)「内容は、見たら駄目だぞ」

197 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:16:07 ID:TGjBuaEc

 酷く幼い、けれど妙にはまった仕草に、高岡は眉をしかめる。

从 ゚∀从、「……はぁ」




 情報室。

 電脳の世界に不可能は無い。で、電脳の世界に絶対は無い。
 差鶏アニジャは弟殺害の容疑で家宅捜索され、国家レベルでの機密事項が詰まったMCDを見て絶句した警察官に、そう言い放ったと言う。
 この光景を見ると、何だかマンガのような話だと高岡は空恐ろしい気分になる。彼らにはプライベートとかプライバシーとかそういう概念はあんまり無いのだろうな、と思いながら眼前のアニジャを見遣った。

( ´_ゝ`)「あ? 何其れ、モララーさんの?」

从 ゚∀从「いや、モララーさんに言われたんですけど……」

( ´_ゝ`)「えーっと、んなのあったっけなぁーあー、デレたん?」

 デスクトップ上にちょこんと座り込むデフォルメされた少女に話しかける。
 アニジャの頭に引っかけられたマイクホンから、音声タイプと同じ要領で声が情報に変換されている、んだと高岡は思っているが、真相は定かではない。

ζ(゚ー゚*ζ『何かな?』

 画面内の少女は滑らかな動きで首を傾げた。
『二次元少女でれたん バージョン5.3』と油性マジックで書かれたディスクケースが高岡の足元に転がっている。

198 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:16:39 ID:TGjBuaEc

( ´_ゝ`)「モララーさんから頼まれてた仕事って何だっけ?」

ζ(゚ー゚*ζ『ああ、其れは三日前の午後四時に神斉さんと話してた事? 録音してあるね。今解析するよ』

( ´_ゝ`)「ん、それかな」

ζ(゚ー゚*ζ『解析結果、他の人には話さないようにと言われているよ。其処のひとは席を外した方が賢明かな』

( ´_ゝ`)「えー、でも最終的にはこいつに渡すんだけど」

 パソコンに表示される文字と会話する様子は、はっきり言って異様だ。

 アニジャはマウスの付いていないノートパソコンの相手をする傍らで漫画のような形状のマザーボードを叩く。高岡は暫く置いていき堀の状態が続いた。
 一つの生き物のように配線が絡み合った床や、もはや前世紀のコンピュータのように壁を取り囲む機械。
 埃っぽい外見を有している割にはその部屋には清潔な空気が漂っていた。

 手持ち無沙汰に立ち竦んでいると、アニジャが高級感漂う事務椅子をくるくると回して高岡のほうに向き直る。

( ´_ゝ`)「おーい高岡」

从 ゚∀从「あっ、はい!」

( ´_ゝ`)「はいよ、モララーさんに渡しといて」

 印刷機から吐き出されたばかりのコピー用紙の束は、仄かになま暖かい。
 受け取って、高岡は頭を下げた。

199 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:17:29 ID:TGjBuaEc

从 ゚∀从「有り難う御座います」

( ´_ゝ`)「はいはい。一応内容は見ないようにな」

从 ゚∀从「分かってます」

 釘刺されましたし、と項を掻いてから情報室の扉へ向かう。
 その背中をアニジャが睨んでいたことを、高岡は知らない。無論、アニジャと二次元少女との音声と文字による会話も。



( ´_ゝ`)「……デーレたーん、副団長とミセリに回線繋いでー、後監視カメラのリアルタイム画像。H棟、ポイントB‐4」

ζ(゚ー゚*ζ『ちょっと待ってね、今二人の居場所を特定するよ』

 自分の組んだプログラムが順調に作動しているのを満足気に見ながら、アニジャは大きく伸びをして映し出された監視カメラの画像の録画準備を始める。

( ´_ゝ`)「さってと、見るかな見ないかなー」






从 ゚∀从「……」

 扉を出て直ぐ、躊躇無くゼムクリップで止められた冊子の一枚目をめくる。

200 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:18:03 ID:TGjBuaEc
 暗い廊下の照明の下、真剣な面もちで紙面を覗き込んだ高岡は、目を見開いた。
 ずらりと字が並ぶ一枚目には、いの一番に特大フォントで『アニジャ特選☆グロ画像』とゴシック体が踊っていた。

从; ∀从「……なんだよぉこれ……」

 がっくりと頭を垂れ、つまみ上げるようにしてポートフォリオに入れる。海よりも深いため息は、じわりと白い廊下の壁にとろけていった。
 ポートフォリオを胸に抱き、事務室にでも戻ろうかと踵を返した所で、

( ・∀・)「見ちゃ駄目だって言ったのに」

从;゚∀从「うぎょ!」

 高岡はまた、情けない悲鳴をあげる事となった。
 人工物のように整ったモララーの顔面が後十五センチと言うところまで迫ってきていたためだ。

从;゚∀从「モ、カンザイさん……」

( ・∀・)「オイちょっと待てよお前、何で今モララーって言おうとしたの? 何で途中で言い直したの?」

从 ゚∀从「見てませんよ、何言ってるんですか」

( ・∀・)「あれ無視? えーなんだよー見とけよー。人生経験だぞ、モタ男から始まって蓮画で終るグロ画像特集。
        『ありとあらゆるグロ画像を見尽くした男、アニジャが特選しました☆』(説明文より引用)」

从 ゚∀从「見るなっつったのはカンザイさんなんですが」

( ・∀・)「まぁそれもそうだがね」

201 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:19:57 ID:TGjBuaEc

 つまらなそうに口を曲げる上司にポートフォリオの蓋を開けて中身を示してみせる。
 其れを見て満足げに頷いたモララーは、高岡の先を行くように歩きだした。向かう先は事務室だろう、と高岡は推測する。

( ・∀・)「あ、高岡、来月の出兵、早まったぞ」

从 ゚∀从「は?」

( ・∀・)「そんでもって出兵先に内藤さんが訪問してくらしいから」

从 ゚∀从「え? ブーンさんがですか?」

( ・∀・)「おう、ぶーんさんが、だ。またなんかイベントがしたいらしくてね。面倒ったらないよ全く」

从 ゚∀从「はぁ……」

202 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:20:44 ID:TGjBuaEc





(*゚∀゚)「……ああ、残念だ、本当に残念だ」

 第二期世界大統領秘密私兵団、副団長の元井ツーは、これから行われる作戦に思いを馳せて天井を仰いだ。
 手に握ったのは、二年前彼女がまだ女学生をしていた頃にモララーに手渡された十口径。親の形見でも託すように、小さなツーの手ごと握りこんだモララーの掌のぬくもりを思い出すようにして力を込める。
 所で彼女の視界の隅に、飛びかかってくる中年の男性が居た。木製の堅そうな椅子を振りかぶっている。

(*゚∀゚)「ざんねんだなぁー」

 ひらりとダンスを踊るように身を交したツーは、腰元から小さなナイフを引き抜いて中年男性を肉薄した。
 辺りは屍山血河を描いている。その死臭と生臭い、甘いような血の香りに酔いながらツーはモララーのことを夢想していた。
 この世界で唯一つ価値の在る人間。彼女にとっての神も等しい存在。

(*゚∀゚)「でもしょうがないよなぁー。罪人だもんな。罪人は、殺さなきゃってモララーさんが言ってたもんなぁ」

(・∀ ・)「モトイさん、どーしたのー」

(*゚∀゚)「いや、なんでもない」

203 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:22:18 ID:TGjBuaEc

 彼女の精神は狂信で出来ている。
 モララーが出来るといった。だから二年前、彼女は自分の親を殺し、その身一つで銀行を襲い、とある政治家の頭をぶっぱなした。
 そのご褒美はモララーの笑顔。それからモララーが彼女の頭を撫でる事。
 それだけで彼女は幸せだった。警察に捕まったのも、モララーが「もういいよ」と微笑んだから。彼女の全てはモララーで出来ている。その髪の毛の一本でさえ。

/ ゚、。 /

(*゚∀゚)「モララーさんが楽しそうだから、いいかなぁって思ってたんだ」

/ ゚、。 /「はぁ」

(*゚∀゚)「でもさ、やっぱり、分かっちゃったら、許せないよね」

 逃げようと四つん這いで涙と鼻水を垂らす男性の首にナイフを差し込む。
 手を濡らした血を柔らかいカーテンで拭い、ツーは其の辺りの部下に笑いかける。部下は極上のその笑顔に頬を染めた。
 なんでこの人あんなひと狂信しちゃってんだろう、という呆れが部下の脳裏に過ぎる。

(*゚∀゚)「やっぱさー、ねぇ。むかつくじゃん?」

(;‘_L’)「ぎゃっ」

(*゚∀゚)「おっ! 大丈夫かー! 今行くぞー!」

/ ゚、。 /「……もったいね」

204 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:23:09 ID:TGjBuaEc




 四月二十日、世界大統領内藤ホライゾン、謡如教(ようじょきょう)狼速支部極秘訪問。



 其処に世界政治側過激派テロリストの攻撃が行われる。

 内藤はSPの手によって命辛々脱出に成功するが、謡如教浪速支部は壊滅状態に。
 これを機に内藤は改めてテロリスト撲滅を訴える。

『平和は暴力で勝ち取るものではない』

 そういうスローガンを掲げて。





( ´_ゝ`)「いや良く出来た筋書きだ。何処のゴーストライターに書かせたんだろうな」

 頭に引っかけられたマイクホンをいじりながらアニジャは呟く。

ミセ*゚ー゚)リ「相手側の拠点を一つ壊滅させて、且つ邪魔なテロリスト共の排斥も出来て、且つ内藤さん本人の評判も、まぁ落ちはしない」

 黒いビジネススーツに身を包んだ玖波ミセリは、その傍らで同じくマイクホンを取り付けながら言った。
 マイクロバンの荷台の半分は機械で埋め尽くされていて残り半分に、アニジャとミセリ、モララーとその護衛と高岡は積み込まれている。

 座席の取り払われたマイクロバンの荷台はお世辞にも広いとは言い難く、むしろ狭い。
 ミセリが床から身を持ち上げて後ろの座席に手を伸ばす度、その豊かな胸が高岡の頬に押し当てられる程狭い。

205 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:24:54 ID:TGjBuaEc

ミセ*゚ー゚)リ「ジュース取ってー」

从;゚∀从「……あの」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、ごめんね。おねーさんカルピス大好きで」

从;゚∀从「……」

 ペットボトルに入ったジュースに口を付けるミセリに複雑な気分になりつつ、眉をしかめた。

 そんな高岡の斜向かいでは、私兵団団長とその護衛代わりの団員がトランプ片手に二人ババ抜きに興じていた。
 脇差を指した軍服まがいと悪役臭いダークスーツは、互いに分別の付いた大人だと言うのに真剣にババ抜きでヒートアップしている。

( ・∀・)「ギコ、君もう降りろ。むさ苦しい。私は密室の男女比が男に傾いてるっていうのに耐えられない人種なんだ」

(,,゚Д゚)「お前はイタリア人かっつーんです」

( ・∀・)「自分の人種なんて知るか!」

(,,゚Д゚)「えええ、其れはちょっとお前どうなんだ……?」

( ・∀・)「うん……ちょっと自分でもどうかと思う……」

(,,゚Д゚)「おそるべし人種のサラダボウル……!」

( ・∀・)「やっぱこう、孤児がもっと減るような政策を考えていくべきだよな」

206 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:26:04 ID:TGjBuaEc

 五月蠅いなぁ、とミセリが呟いた。その隣ではアニジャが無言で頷いている。
 ババの押しつけあいの何が楽しいのかとため息を漏らしながら、高岡はバンの天井を見上げた。
 それから窓にかかったカーテンをちょいと退け、外の様子を伺う。

 郊外の山の中腹、生い茂る樹木に釣り合わないコンクリートの建物があった。
 煙や火の手があがっているのでは無いかと期待していたのだが、ビルは当たり前のように鎮座しているだけだ。
 本当に制圧は進んでいるのだろうか、と若干不安になって高岡は横目でアニジャの背中越しに機械の液晶を覗き込む。


 アニジャの作り上げる機械類と言うのは、得てして何処か漫画チックである。例の二次元少女しかり、今彼が頭につけている通信機械しかり。
 例えば、十五階建てのビルを下から制圧していき、制圧が完了した階は赤く表示されるようになる、だとか。因みに画面端では例の少女が椅子に座って足を揺らしている。
 モララーの立てる策がまるで真剣味の無い漫画のようなものというのも手伝って、こいつら巫山戯けてるんじゃないかという思いが高岡の心中をよぎる。

ミセ*゚ー゚)リ「幹部室には入っちゃ駄目だよ」

( <●><●>)『わかってます』

(*‘ω‘ *)『ぽー』

 ミセリがマイクホンに手を押し当て、無線で繋がる突撃部隊へと指示を送っている。
 まだ其処には事態を察知していない謡如教幹部と、脱出の完了していない内藤が居るためだ。

 謡如教の幹部とて、相手はあの世界大統領。自分達の神に真っ向から挑む異邦人に相対している時、テロリストなんて些事でしか無い。
 謡如教は理由有る殺人を咎めない。そして小さな罪人よりも大きな罪人に優先的な制裁を。そういう教えとなっているらしい。
 理解が及ばない、と高岡は首を振る。

207 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:27:00 ID:TGjBuaEc

ミセ*゚ー゚)リ「で、首尾はどう?」

( ^ ^)『上々ですね』

('(゚∀゚∩『並々だよ!』

 若干ノイズと価値観の違いが混じった報告にミセリは首を振り、団員達を労うかのように優しい手付きで無線を切った。

(゚、゚トソン『五階、制圧完了致しました』

ミ,TДT彡『十二階も完了したのかー』

(゚、゚トソン『いや聞かれても』

( ´_ゝ`)「……カンザイさーん」

 アニジャの呟きにそろそろか、と呟いたモララーは手に残ったカードをギコの顔に投げつけて身を起こす。
 事も無げに其れを自分の手の中のカードで斬り捨てたギコは、三回ほど瞬きをしてから床に散らばったカードを片づけ始めた。
 アニジャとミセリは戦闘部隊では無い。あくまで情報部隊の人間なので、このバンから出る事は無い。アニジャに至っては絶対に出ないと言い張っている。

 だが、モララーは違う。
 戦局作りという本来ならどちらかと言えば裏方の彼だが、今回の出兵に関しては役割があった。

( ・∀・)「まぁ、俺もたまには矢面に立たなくては団長としての威厳が保てんからな」

从 ゚∀从「元から威厳てありました?」

(,,゚Д゚)「威厳は無い……けど副団長が……」

从 ゚∀从「ああ……」

( ・∀・)「……一応僕上司だぞ? 分かってる?」

ミセ*゚ー゚)リ「カンザイさん、そろそろ出発しちゃって下さい」

( ´_ゝ`)「お土産お願いしまーっす」

( ・∀・)「無視かい?」

208 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:28:03 ID:TGjBuaEc

 ひくひくと整った顔をひきつらせ、モララーはバンのドアを開ける。革靴がアスファルトを踏むのを確認してから、高岡もそれに続いた。
 まだほの寒いのは、天気が悪いからに違いない、と高岡は空を見上げる。鉛色の曇天が広がっていた。紫外線に目を細める。
 ひょこりとバンから顔を出したミセリが、高岡に手を振った。

ミセ*゚ー゚)リ「ばいばい、ハインちゃん」

从 ゚∀从「え、はい……」

 妙に優しいその笑みに思わず瞬きをしていると、アニジャの腕が伸びてミセリを引っ張った。




( ・∀・)「じゃ、残党は頼んだよ、ギコ」

(,,゚Д゚)「あいあいさー」

 傍らでギコが脇差を鳴らす。
 網市ギコは剣道四段である。
 其れだけ聞くと、その辺に転がっている剣道経験者でしか無いが、覚悟さえあれば刀で人を殺すに、それ以上の技術は必要ではない。

 その昔、侍という種族は一個人としてはチートと成りうる強さを誇っていたらしい。
 其の技術は、限りなく純度の高い人類最強。
 そう思い知らされる光景だった。

209 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:29:01 ID:TGjBuaEc

 腕が飛ぶ胴が取れる頭が裂ける。現代に生きる侍は名乗りを上げるという行為を捨てた。
 元から散らばっていたもの達の上に、更に重なっていく。
 一つの村を地図から消した元・少年Aは、僅かに残っていた教徒達を斬り捨てていく。その後ろを、モララーと高岡は赤黒く染まった絨毯を国取り気取りで悠々歩く。

 基本的に豪奢な作りとなっていたようだが、私兵団の面々による制圧の所為でかビルの中は酷い有様となっていた。
 普通の精神をした者ならば耐え難い悪臭が漂っている。高岡は詳細な描写を避ける為、元・教徒達から目を逸らした。

( ・∀・)「後ろから来たら高岡君は逃げたまえよ。人を庇える程私やギコは余裕無いぞ」

从 ゚∀从「ボス置いて秘書が真っ先に逃げるのも情けない話ですがね」

( ・∀・)「だって君激弱じゃないか。死にたいなら止めはしないが」

从 ゚∀从「……一般人ですから」

 高岡は、罪人ばかりが集まったvipで唯一と言って差し障り無い一般人である。
 ギコによる大乱闘や散らばった部品や本体や内容物を見ても何一つ動揺しないことから、本当に模範的な一般人とは言い難いのだが、一応本人申告では一般人となっていた。
 身体的にも能力的にも、一般的な成人女性より少し優れている程度。

 其れもその筈、元より高岡はモララーの秘書として私兵団に入団させられたのだから、当たり前だ。

( ・∀・)「しかし何で君何かを秘書に指名したのかね内藤さんは」

从 ゚∀从「嫌がらせじゃ無いデスカぁ」

210 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:29:49 ID:TGjBuaEc

 パンプスのつま先で転がった他人の手を避けながら投げやりに言う。
 そんな様子の高岡を微笑まし気に見ていたモララーは、立ち止まったギコに「おっと」と顎を引いた。

( ・∀・)「着いたか」

(,,゚Д゚)「あいよ」

( ・∀・)「じゃ、行こうかね」

 コンクリートの壁に不釣り合いな程荘厳な木製の扉を前にしてちらと高岡とギコを振り返って見せる。
 磁器人形の妙に幼い笑みに目を細めて、高岡は頷いた。

( ・∀・)「やぁ、どうも今日和。反中嶋派テロリストです、と」

( ^ω^)「おっお、お疲れ様」



 扉の中は、悲惨な外とは別世界のように豪奢な内装だった。
 慇懃無礼な態度で扉を開けたモララーは、一瞬固まってから整った形の眉を跳ね上げる。

 部屋の中には、きっちりとしたスーツに身を包んだ男性が居た。
 柔和な笑みを口元に浮かべている。中堅どころの若手といった風情の男だ。
 丁寧な物腰で手を振る男性に軽く目釈をし、モララーは部屋に入り込む。ギコと高岡もそれに続いた。

( ・∀・)「内藤さん、お一人ですか?」

( ^ω^)「ドクオも居る」

211 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:32:44 ID:TGjBuaEc

 す、と奥に続く扉を指さし、内藤は微笑む。
 モララーの笑みが磁器人形ならばこの人はオルゴール人形だ、と高岡は思った。
 ぎりぎりと何処か不気味に動きながら、その癖温かみのあるように振舞う。

( ^ω^)「あの中にね、教徒の子供が一人残っているんだお。親にも見捨てられた哀れな子供を救い出すと言うのは、悪くない」

( ・∀・)「……謡如教の幹部は?」

( ^ω^)「ケツまくってェ逃げちゃったお。僕を始末しようとすると踏んでたけど、大誤算。信仰心の薄さを甘くみていたお」

 内藤は肩を竦めて笑う。モララーといい、何処か可笑しい人間というのは良く笑うのだろうか、と高岡は思った。それとも、良く笑っている人間が可笑しくなるのか。
 ぎ、とこれまた木の扉が軋んで、ピンストライプのスーツを着た男性が隙間から身を滑り込ませるようにして現れる。
「ちょっと待ってな」と扉の向こうに言葉を残した彼は、モララー達を一瞥して片眉を上げた。

('A`)「……」

 何か言いたげな表情を形作るものの、口を開く事無くその視線を内藤へと向ける。
 内藤はやはり丁寧な所作で口を開いた。

( ^ω^)「クーちゃんの様子は如何だお?」

('A`)「疲れてる。お陰でちょっと落ち着いたかな」

( ^ω^)「うん、其れは良かったお」

212 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:35:43 ID:TGjBuaEc

('A`)「所でブーン、そっちの人達は?」

( ^ω^)「私兵団。ドクオの知り合いも居るお?」

 内藤はいちいち豪華な室内の調度の中でもより一段と豪奢な机の上から、チェスボードを取り上げる。かく、と妙に愛らしい仕草で首をかしげた。それにモララーが対応する。
 その後ろで不意にピンストライプの男性が片手を持ち上げた。その手に握られているのは、大型ナイフ。
 何事かと高岡が首を傾げていると、待ってましたと言わんばかりに後ろに控えていたギコが飛び出した。

 耳に痛い金属音。

从;゚∀从「い゛?」

( ・∀・)「あらあらまぁまぁ元気ねぇ。内藤さんどーもすみませんねーうちの部下が」

( ^ω^)「いやー、全く、歳食っても丸くならないからあいつも困ったもんだお」

( ・∀・)「いえいえ欝田さんはまだまだ現役でいらっしゃる、っていうか、まだ三十代でしょうが貴方達」


(,,゚Д゚)「お久しぶりっす、先輩」

('A`)「おーおー、凶悪犯になっちゃってくれてまぁ」

(,,゚Д゚)「いやぁ先輩のリアル津山三十三人殺しには負けますて」

('A`)「あれ、そんだけだっけ?」

213 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:37:23 ID:TGjBuaEc

 脇差とナイフによる不出来な鍔迫り合いと剣戟が部屋に響く。
 金属音、金属音、破砕音、破砕音。
 内藤は朗らかな笑みを若干しかめて、モララーは端正な顔を盛大に歪めて、高岡はひきつった口の端を更にひきつらせて、二人の攻防を見守っている。

 それは、丸で不釣合いな得物同士による、不細工な剣舞のようだった。

( ^ω^)「どっちが勝つか賭けるかお? モララーくん」

( ・∀・)「そんな事言ってたらどっちかが死ぬまでやってるじゃないですか。それは困りますよ?」

( ^ω^)「冗談。それはこっちも一緒だお。切り込み隊長様が居なくなったら、それなりに困る」

从;゚∀从「……」

 それに終止符を打ったのは、肉を裂く音と肉に刺さる音。
 う、と絞り出した高岡の声は、モララーの手と冷ややか内藤の視線によって止められた。
 ギコの手の平を男のナイフが刺し貫き、男の左腕をギコの脇差が掠っていく。毛足の長い高価そうな絨毯に赤黒い染みが出来ている。

( ^ω^)「……適当に止めとけお」

(,,゚Д゚)「「……はーい」」('A`)

 内藤の言葉に、喧嘩を咎められた子供のように二人は同時に声を上げた。
 それに頷いた内藤は、モララーにチェスの駒を差し出す。モララーは、掌からだばだばと血を垂れ流すギコとそれにドン引きする高岡を見遣って、非の打ち所の無い笑みを浮かべた。

( ・∀・)「ギコ、高岡くん、君らちょっと先出ててくれないかね」

214 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:41:48 ID:TGjBuaEc




 モララーはギコと高岡を部屋から出し、内藤はピンストライプの男を奥の部屋に戻した。二人切りとなった部屋には、張りつめた空気が横たわっている。
 内藤とモララーはチェス盤を挟んで相対していた。
 淀み無い動作でモララーは白、内藤は黒の盤を埋めていく。



 終身刑に処され、刑務所にいたモララーを”第二期”私兵団団長に指名したとき、内藤は彼と一つの約束をした。

( ^ω^)『団長になってくれたら、僕が出来る事、何でも一つ約束するお』

( ・∀・)『じゃあ、統一された世界を俺に下さいよ。その手伝いだと言うならば、団長にだってなんだって成ります』


 其れは、かつて罪人だった内藤と世界大統領だった荒巻が交わしたのと酷く酷似した約束。


( ^ω^)『別に僕がやんなくたっていいんだお。世界が一つになるなら、あんたが世界大統領でいいんだお。でも、あんたじゃ無理だ』

/ ,' 3『だから、お前が世界大統領になる、と』

( ^ω^)『だってあんたに世界教祖が殺せるかお? 自分の弟を』

/ ,' 3『……二年、待て。二年経ってもワシが世界を統一出来なかったら、この座をお前にくれてやる』

( ^ω^)『分かった。待とう。どうか世界を統一してやってくれお』

215 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:42:41 ID:TGjBuaEc



( ・∀・)「内藤さん、俺との約束は忘れてませんよね」

( ^ω^)「当たり前だお。荒巻さんも守ってくれた事を、僕が破る訳にゃいかない。……でももうちょっと待って欲しいかな」

( ・∀・)「待ちますよ。私が欲しいのは世界だけですから」

 モララーは悪の無い世界を作りたい。そのためには先ず世界を統一しなくてはならない。だがその課程を手に入れるには、少し遅かった。
 内藤は世界を統一する課程を楽しめれば其れで良い。だがその後の世界には何一つ興味が無かった。
 二人の利害は、見事に一致していた。

( ・∀・)「楽しみにしていますよ、世界大統領」

( ^ω^)「ま、気長に待ってくれお、団長サマ」

 たん、と黒の女王が白の王を貫いた。チェックメイトのコールも無い勝負の終演に、モララーは優雅な仕草で首を振る。

( ・∀・)「あ、所で内藤さん、高岡君のことなんですが」

( ^ω^)「あのスーツの彼女かお? 綺麗だったお。ツンには劣るけど」

( ・∀・)「愛妻家でいらっしゃる。まぁ、それは置いておきまして……彼女、あなたのスパイでしょう?」

216 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:44:11 ID:TGjBuaEc


从;゚∀从「あ、の?」

 聞いてない、と高岡は両手肩まで上げながら瞬きを繰り返す。
 幾つもの銃口や刃の切っ先が自分を取り囲んでいる、恐怖と焦り。
 其れを突きつけるのは、顔見知った私兵団の面々。

从;゚∀从「何、ですか、これ」

 映画でこんな場面、あったなぁ。
 そんな暢気な事を思ったのは、最早感情が飽和状態となっていたからかもしれなかった。

(*゚∀゚)「オレたちは、神斉モララーに惚れ込んでるんだ。
      だからね、内藤さんに着いてる人間なんて本当の本当の本当に信用ならない、罪人にしか見えない」

 宗教みたいなもんだよ、と顔にかかったショートカットを気にもかけないまま、大口経を高岡の額に突きつけた元井ツーがにやりと口を歪める。
 あ、違います、と高岡を囲む円の一つから声が上がった。

(゚、゚トソン「どっちかって言うと私たちは副団長の方が好きです」

( ^ ^)「モトイさんが団長に着いてくってんなら、ねぇ?」

(*‘ω‘ *)「副団長が言うなら、っぽ」

(*゚∀゚)「え、何其れちょ、止めて照れる」

 ああ、モララーさん、あんた本当に尊敬されて無いんですね、と高岡は口元をひり上げる。

217 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:47:01 ID:TGjBuaEc


( ^ω^)「ありゃ、ばれてたかお?」

( ・∀・)「そりゃあ、分かりますよ。だからね、此方の方で彼女の始末をさせていただきます。大体なんですか? あのお粗末なスパイ?」

( ^ω^)「いやぁ、一応保険にと思って雇ってみたんだお。しかし、始末ってちょっとやりすぎじゃないかお?」

( ・∀・)「……僕は別に良いって言ったんですよ? 高岡君秘書としては優秀だし、面白いし。ただ、ツーちゃんが『そんな罪人許せるか』って聞かなくて」

( ^ω^)「元井ツー、かお」

 目の前の男のありとあらゆる令に従った少女の名前を繰り返す。
 逮捕の瞬間でさえ、モララーに指示を仰いだ彼女。その狂信さえ目を瞑れば、本人のカリスマ性は計り知れない。実質、第二期私兵団団員達がリーダーと仰いでいるのは彼女と言っても過言では無いだろう。
 モララーは細い指で歩兵を弄びながら言う。

 自分を裏切った罪人の破滅を。

( ・∀・)「そしたらもうね、他の連中も盛り上がっちゃって。ほら、ツーちゃん皆に好かれてるんで。もうあれ、宗教ですよね、多分」

( ^ω^)「すると今、彼女の命は無いと考えた方がいいのかお?」

( ・∀・)「そうですねぇ、そろそろちょっと五月蝿くなるかもしれません」

( ^ω^)「……次の秘書を用意しなくちゃ、いけないな」

( ・∀・)「ツンさんみたいな素敵な方を頼みますよ、楽しみにしています」

( ^ω^)「高岡君も中々良い人材だったと思うけどお」

218 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:50:32 ID:TGjBuaEc

( ・3・)「この前書いてたアレも、内藤さんへの報告書だRO?」

 今時メールで情報のやりとりだなんて、古いんだよ、ハインちゃん、と無線から洩れるノイズ混じりのミセリの声。
 いや、まぁ別に悪くはないけどさ、とフォローにもならないアニジャの声が其れを追いかける。

(゚、゚トソン「『モララーさんの邪魔をする奴は許さない』」

( ><)「……って、副団長が言ってるんです」

ミ,TДT彡「だったらしょうがないのかー?」

( <●><●>)「仕様が無いのは分かってます」

(,,゚Д゚)「残念無念」

(*゚∀゚)「アンドバイバイさよなら」

 がちゃり、と金属音がする。戟鉄の上がる音? それすら高岡は分からない。
 刃物の煌き。金属音。金属音。煌き。囁くような声。声。声。金属音。煌き。全てが彼女を攻め立てるように取り囲む。
 死刑だ、と誰かが茶化すように呟いた。



( ・∀・)「ええ、高岡君は本当に優秀な秘書でした。残念だ。団の中で、多分誰よりも善良でしたし」

( ^ω^)「そうかお」

 モララーは磁器人形のように微笑んだ。

( ・∀・)「ま、罪人だって分かったら余裕で殺せるんですけどね」

219 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:51:07 ID:TGjBuaEc




                           从; ∀从



                 「そんじゃ、罪人には処刑を!」




                                                  ./
 --_-三=_ 一 -_ _ 一 三 _  -__                            ヽ, 〃 ヽ,ゝ /
 - = - 一 三 _  -__                                 ,__/ヽ,/    、,_,ィ'
 _______, _- - _- ニ  .,_,,,,       ,|`i'''`i,     ノし,ノゝ,_ノし/
 ___,、、、、、、、、、、_i-,! = _ _ = -.γ´`ヽ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`'ー' ̄ヽ,从ノし,_,   て,
    .|.|.|.|.|.|.|.|.|.|.| |( ̄ ̄'i ̄ ̄ ̄ ̄`ヽ |               |:: :.: ::.: :て   `'ー
    .|,|,|,|,|,|,|,|,|,|,|_|.'ゝ,_ノ________ノ |___________|ll:: ::.:::... .(   (´
 __,r'´    ..o |`'´       'i、'ー'´ノ    o         .,r'`ヽ,`´Y´``  そ
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`|_____,i_ .|─────,,、────'   ⌒Y´`YW´\
             .  |三三三三三)|       /`)
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄,ノ      ゝ,_,ノ____,ィ' ̄
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 --_-三=_ 一 -_ _- = - 一 三 _  -__
  一 三 _  -__--_-三=_ 一ニ____--三 一 -

220 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:51:48 ID:TGjBuaEc




アニジャ特選☆グロ画像  特別付録「世界政府私兵団についてとか」

第二期世界政府秘密私兵団

(団長:)神斉 モララー 
(副)団長:元井 ツー

戸国 ワカッテマス           主甲斐 チンポッポ
町雁 ボルジョア            玖波 ミセリ
網市 ギコ                 寄野 ビロード
差鶏 アニジャ              頭寺 ヤマザキ
同道 トソン                久保 ノカー
悴田 シャキン             梨野 ペニサス
数江 デミタス              算本 ミルナ
江良 オサム               生令 フィレンクト
岳府 ハロー               河豚 ビコーズ
羽筒 マタンキ             米名 ノー
蘆花 ダイオード            秋家 ナオルヨ
紅 ユウタロウ             被風 ガナー
美府 ジー                歩須 モナー
鯉河 マニー               須手 ナナメ
体豆 フーン               芽戸 アヒャ
間田 オオミミ              尾三田 シィ
高岡 ハインリッヒ


第一期世界政府秘密私兵団

団長:内藤 ホライゾン
副団長:鬱田 ドクオ


以下、記録に残っていた者のみを記載する

諸本 ショボン           長岡 ジョルジュ
津田 デレ              沢近 ヘリカル
佐々木 カラマロス       ……

221 名前: ◆0X0wtt2Edk 投稿日:2009/06/07(日) 14:56:16 ID:TGjBuaEc



高岡 ハインリッヒ

 本名長岡ハインリヒ。
 某探偵社に所属。秘書検定一級。簿記検定準二級。
 内藤ホライゾンに雇われている。旧知の仲。
 家族構成、両親他界、現在行方不明の兄が一人(長岡ジョルジュ)
 月給……




以下、アニジャ特選グロ画像

222 名前: ◆RMvPkPTLmY 投稿日:2009/06/07(日) 14:57:11 ID:TGjBuaEc
从 ゚∀从世界征服を目指す(礎の)ようです

 end


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