- 2 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 18:35:03.56 ID:BruHTtDSO
「クーちゃんはいい子ね」
私は小さい頃から母に"いい子"だと言われてきた。
「クーちゃんは頭が良くて、いい子ね」
「クーちゃんは思いやりがあって、いい子ね」
「クーちゃんはお手伝いしてくれて、いい子ね」
「クーちゃんはなんでもできて、いい子ね」
- 4 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 18:38:02.77 ID:BruHTtDSO
違うの、お母さん。
私は"いい子"なんかじゃないの。
一生懸命勉強したのは、周りの人より上になりたいと思ったからなの。
誰かに優しくしたのは、その人に恩を売りたかったからなの。
お母さんのお手伝いをしたのは、ご褒美に貰えるお小遣いが欲しかったからなの。
私は、なんでもできる"いい子"なんかじゃないよ。
川 ゚ -゚)はいい子ではないようです
ちゃんと私を見て……
- 8 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 18:41:05.65 ID:BruHTtDSO
J( 'ー`)し「クーちゃん! 朝だよ!」
川 - _-) zzZ
J( 'ー`)し「クーちゃん! 遅刻しちゃうわよ!!」
川 - _-)
川;゚ -゚)「はっ!」
川;う-゚)「もう朝か……学校、行かなくちゃ」
J( 'ー`)し「朝ご飯はできてるけど、食べてく?」
川 ゚ -゚)「うん、食べる」
J(*'ー`)し「ふふっ、クーちゃんはいい子ね」
川 ゚ -゚)「……うん」
- 10 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 18:44:04.65 ID:BruHTtDSO
川 ゚ -゚)「ご馳走様。行ってくるよ」
J( 'ー`)し「いってらっしゃい」
私の名は「素直クール」。
家の近くにあるVIP高校に通う1年生だ。
川 ゚ -゚)(自転車で行きたいな……)
VIP高校は私の家から歩いて3分程度の所にある。
故に私は通学するために自転車を使う必要がないのだ。
川 ゚ -゚)(いくら私の家が学校に近いといっても、
私以外の人がみんな自転車で通学していたら自転車に乗りたくもなるよな)
遠くから電車で通学している人から見れば、私が今思っていることは
羨ましいことなのだろうな。
- 11 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 18:47:08.13 ID:BruHTtDSO
ξ゚听)ξ「クー! おはよう!」
川 ゚ -゚)「おはよう」
彼女は津出麗子。通称ツン。
私の友達の一人だ。
川 ゚ -゚)「今日は何時に来たんだ?」
ξ゚听)ξ「うーん……7時50分くらいかな」
川 ゚ -゚)「相変わらず来るのが早いな。
朝のHRは8時40分開始なんだから、もう少し遅く来てもいいと思うぞ」
ξ゚听)ξ「電車がないのよ」
川 ゚ -゚)「それなら仕方ない」
- 12 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 18:50:08.95 ID:BruHTtDSO
( ^ω^)「みんな、おはようだお!」
('A`)「だりー」
教室のドアを勢い良く開けたのは、年中無休で笑顔が眩しい男。
内藤ホライゾン。通称ブーン。
本名とあだ名に接点はないのだが、彼がブーンと呼んで欲しいと言っているので
みんなブーンと呼んでいる。
いつでもスマイル0円なブーンに対し、笑顔を見せる気配がない男は鬱田毒男。
通称は……いや、特にないな。みんなドクオと呼んでいる。
彼はいつもブーンと共に行動している。
なんでも、中学時代からの親友だそうだ。
川 ゚ -゚)「おはよう。二人は相変わらず仲がいいな」
( ^ω^)「だって僕らは親友だお!」
('A`)「親友とか簡単に言うなよ、恥ずかしい」
ξ゚听)ξ「全然恥ずかしがってるように見えないわよ」
('A`)「表情に出ていないだけだよ」
- 13 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 18:53:03.15 ID:BruHTtDSO
ツン、ブーン、ドクオの三人と私は仲が良い。
今はまだ6月だから彼らと知り合って2ヶ月程しか経っていないが、私は彼らが好きだ。
もちろん「ラブ」ではなくて「ライク」だが。
でも、ただ1つだけ、ただ1つだけ私は彼らの嫌いなところがある。
川 ゚ -゚)「む、ドクオ。髪にゴミがついてるぞ」
('A`)「え、どこ」
川 ゚ -゚)「ちょっと動くなよ」
川 ゚ -゚)ノ"('A` )
川 ゚ -゚)「取れたぞ」
('A`)「ありがと」
( ^ω^)「お! クーちゃんはいい子だおね!」
川 ゚ -゚)「……」
彼らは私のことを"いい子"と言うのだ。
- 14 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 18:56:21.42 ID:BruHTtDSO
彼ら三人だけでなく、クラスメイトや先生も私のことを"いい子"と言う。
しかも先程のようにゴミを取っただけで"いい子"と言うのだ。
川 - )("いい子"だなんて気分が悪くなる)
川 - )(別に私は大したことをしてはいないのに)
川 - )(そう簡単に"いい子"だなんて言わないでくれよ)
キーンコーン カーンコーン
朝のHR開始を知らせる鐘の音が学校中に響き渡った。
- 15 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 19:00:36.45 ID:BruHTtDSO
( ´∀`)「この文が彼の気持ちを表現していて……」
川 ゚ -゚)(みんな寝ているな)
モナー先生の現代文の授業中、教室を見渡してみると起きている生徒は私しかいなかった。
川 ゚ -゚)(みんな余程勉強が嫌いなんだろうな)
( ´∀`)「それから彼女は……」
( ;∀`)
( う∀`)「な、泣いてなんかいないモナよ!」
川 ゚ -゚)(モナー先生可哀想に)
思えばモナー先生の授業のみならず、他の授業でもみんな寝ている気がする。
川 ゚ -゚)(勉強意欲のない人ばかりなんだな、このクラスは)
( ´∀`)「……素直」
川;゚ -゚)「は、はい!」
- 18 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 19:03:50.59 ID:BruHTtDSO
( ´∀`)「素直はちゃんと授業を受けていていい子モナね」
川;゚ -゚)「……ありがとうございます」
( ´∀`)「こちらこそ」
川 ゚ -゚)「……」
私は"いい子"と言われるが大嫌いだ。
普通の人がこれを聞いたら「何故?」と問うだろう。
もしも問われたならば私はこう答えよう。
川 - )(私は"いい子"なんかじゃないから)
川 - )(私を"いい子"と言う人は、私をちゃんと見ていないんだ)
キーンコーン カーンコーン
- 19 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 19:06:23.47 ID:BruHTtDSO
( ^ω^)「お! 授業が終わったのかお?」
(-A-)「うえー……」
( ´∀`)「……」
( ´∀`)「みんな、モナがこれから言うことをよく聞くモナよ」
ξ゚听)ξ「? 何かしら」
( ´∀`)「今日やったことを次回テストするモナ」
(;^ω^)「!?」
( ´∀`)「授業の内容をそのまま出すから7割以上取れなかった者は……」
( ´∀`)「放課後に補習、モナ」
「「「な、なんだってー!!」」」
私以外のクラスメイト達が声を揃えて叫んだ。
その声を聞いたモナー先生は極上の笑みを浮かべる。
今のモナー先生のスマイルにはお金を出してもいいかもしれないな。
- 20 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 19:09:25.14 ID:BruHTtDSO
ξ;゚听)ξ「どーしよ……」
('A`)「あの先生、黒板に書いてあるの全部消していきやがったぜ」
_
(;゚∀゚)「なぁ、内藤。ノート貸してくれよ」
(;^ω^)「ブーンの現文のノートは真っ白だから役に立たないお」
_
(;゚∀゚)「ドクオとツンは?」
ξ゚听)ξ「私もブーンと同じよ」
('A`)b「俺はノートすら用意してないぜ!」
ξ;゚听)ξ「威張るな」
_
(;゚∀゚)「二人もダメか。他の人もノートとってないって言うし……」
('A`)「諦めて補習だな」
_
(;-∀-)「部活休むのは嫌だなあ」
川 ゚ -゚)「……」
- 21 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 19:13:20.05 ID:BruHTtDSO
- _
( ゚∀゚)「そうだ! クーちゃんは?」
川 ゚ー゚)「残念だが私のノートも白だ」
_
(;-∀-)「そうか……」
川 ゚ -゚)「……」
私は"いい子"なんかじゃないんだ。
だから、本当はちゃんとノートを写しているけど見せる訳にはいかない。
川 ゚ -゚)(悪いな、みんな)
川 ゚ -゚)「……」
川;゚ -゚)(いや、ちょっと待て! もしもこれで7割以上の点数を取ってしまったら
真面目に授業を受けていたのがバレてしまう)
川;゚ -゚)(その後にどうしてノートを見せてくれなかったのかと責められても困る)
川;゚ -゚)(私も補習は嫌だからわざと点を取らないのは嫌だし……)
川 ゚ -゚)「ジョルジュ!」
_
( ゚∀゚)「ん?」
- 22 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 19:16:18.23 ID:BruHTtDSO
川 ゚ -゚)「さっきのは冗談だ。ほら、ノート」
_
( ゚∀゚)「おおっ! すげっ、綺麗に書いてある!」
('A`)「ホントだ……」
ξ;゚听)ξ「クー! 私も借りていいかしら?」
川 ゚ -゚)「もちろん」
ξ*゚ー゚)ξ「ありがとう」
_
( ゚∀゚)「やっぱクーちゃんはいい子だからノート書いてると思ったぜ!」
川 - )「……」
違うよジョルジュ。
私は"いい子"なんかじゃない。
私はノートを見せた方が自分にメリットがあると思ったから貸したんだ。
誰か、私が"いい子"でないと気づいてよ。
- 23 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 19:19:04.12 ID:BruHTtDSO
結局、私のノートはクラス中を行き渡ることとなった。
その度に「クーちゃんはいい子だ」と言われるので頭が痛くなる。
川 - )(そんなにこのクラスには"いい子"がいないのか)
川 - )(それとも、みんな頭がおかしいのか)
ξ゚听)ξ「クー!」
川 ゚ -゚)「なんだ?」
ξ゚听)ξ「放課後、時間があったら一緒に買い物でも行かない?」
川 ゚ -゚)「別に構わないが」
ξ*゚听)ξ「よし、決まりね! クレープ食べたりしましょうね!」
川 ゚ー゚)「またクレープか。ツン、ダイエットはどうs」
ξ*゚听)ξ「今日はバナナチョコ生クリームにイチゴアイスをトッピングするわ!」
川;゚ー゚)「す、すごいな……」
私の皮肉をツンは華麗にスルーした。
というか聞こえなかったようだ。
- 24 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 19:22:14.60 ID:BruHTtDSO
放課後、私とツンは駅付近で買い物をした。
VIP高校から10分ほど歩いた場所にVIP駅があり、その駅の周りはとても賑わっているのだ。
私達はそこでクレープを食べたり、アイスを食べたり、ハンバーガーを食べたり……
川;゚ -゚)「食べ過ぎじゃないか?」
ξ*゚ー゚)ξ「そんなこと……」
ξ゚听)ξ「あるわね」
ξ;゚听)ξ「どうしよう、太っちゃう!」
川;゚ー゚)「だ、大丈夫さ。ツンは痩せているし、そんなすぐ太らないだろう(多分)」
ξ゚听)ξ「それもそうね」
川;゚ -゚)(いいのかそれで)
ξ゚听)ξ「あら、もう6時。そろそろ電車が来る時間ね」
川 ゚ -゚)「そうか。気をつけて帰るんだぞ」
ξ゚ー゚)ξ「クーもね」
ツンが私に背を向けて駅の方へと歩き出した。
- 26 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 19:24:59.22 ID:BruHTtDSO
だが、歩き出したツンは一度だけ私を振り返って
ξ*^ー^)ξ「クーはやっぱりいい子ね」
と、とてもいい笑顔で呪いの言葉を吐いていった。
- 27 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 19:26:38.67 ID:BruHTtDSO
どうして誰も気づいてくれないんだ
お母さんも友達も先生も
なんで私を"いい子"なんて言うんだよ
そんなに私はいいことをしたのか?
そんなに私は偉いことをしたのか?
私は"いい子"なんかじゃない!!!
- 28 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 19:29:25.49 ID:BruHTtDSO
気がづくと、私は知らない場所を歩いていた。
日はとっくの昔に沈んだようで、満月が私の頭上で輝いている。
いつもより月が綺麗だな、と思ったら周りの家のほとんどの明かりが消えていた。
川 ゚ -゚)(今何時だろう……)
私は時間を確認するためにポケットから携帯電話を取り出した。
川;゚ -゚)(い、1時だと!?)
川;゚ -゚)(ツンと別れてから7時間、私は何をしていたんだ)
川;゚ -゚)(今の時間に帰ったらお母さんに怒られるよな……)
私は携帯の画面をジッと見つめてみた。
デジタル時計が「1:03」と時間を知らせている。
すると、突然1件のメールがきた。
- 29 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 19:33:23.40 ID:BruHTtDSO
私は素早くメールを開く。
送り主は私の母だった。
川 ゚ -゚)(お母さんがメールしてくるなんて珍しい。私のこと心配してるんだろうな)
私は肝心なメールの内容を読んでみた。
J(*'ー`)し『友達の家で飲み過ぎたから帰れませ〜ん\(^o^)/』
川 ゚ -゚)
J(*'ー`)し『だから泊まってくるよo(≧∇≦)o』
川 ゚ -゚)
J(*'ー`)し『ご飯はあるものを適当に食べてNE☆(^_^)v』
川 ゚ -゚)
J(*'ー`)し『って、この時間じゃクーちゃん起きてないか(笑)』
川 ゚ -゚)「……」
- 32 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 19:36:26.54 ID:BruHTtDSO
私は携帯をポケットにしまった。
川 ゚ -゚)(酔っぱらい……)
川 ゚ -゚)(まぁ、不幸中の幸いってやつか)
川 ゚ -゚)
川 ゚ -゚)(帰ろう)
私は携帯をもう一度取り出すと、GPS機能を使って現在地と家までの道のりを調べた。
川 ゚ -゚)(思ったよりも家から遠くないな)
私は、月明かりと外灯とGPSを頼りに夜道を歩き出した。
- 33 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 19:41:14.94 ID:BruHTtDSO
不思議と、暗い道を怖いとは思わなかった。
川 ゚ -゚)(夜風が気持ちいいな)
川 ゚ -゚)(これからは夜中に散歩でもするか)
ミャー
川 ゚ -゚)「ん?」
新しく私の趣味になりそうなものに思いを馳せていると、
突然足元から猫のか弱い鳴き声が聞こえてきた。
足元を見てみると1匹の仔猫が私の足に擦り寄っていた。
(*"―゚) ニャー!
川 ゚ -゚)「……お前、病気か?」
暗闇の中、外灯の弱々しい光で見えた仔猫の姿は酷く汚れていた。
体が汚れているのは勿論、右目は目脂のせいで開いていないし、鼻水がだらだらと出ている。
首輪がないことと容姿からして、この仔猫は野良猫なのだろう。
- 35 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 19:44:05.62 ID:BruHTtDSO
川 ゚ -゚)「親はどうした?」
(*"―゚) ……クシュッ
川 ゚ -゚)「……くしゃみ」
多分、症状からしてこの仔猫は猫風邪にかかっているのだろう。
だとしたら、本来は仔猫の側にいるべき親猫はもう猫風邪で死んでいるかもしれない。
私はそっと、仔猫を抱き上げた。
川 ゚ -゚)(小さいな)
(*"―゚) ……
(*"ー`) スリスリ
川 ゚ -゚)「む」
- 37 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 19:47:02.30 ID:BruHTtDSO
(*"ー`) ……
川 ゚ -゚)「……」
川 ゚ -゚)「寝たのか?」
私の腕の中で安心でもしたのか、仔猫は眠ってしまった。
小さな小さな前足で、私の服にしっかりとしがみついている。
川 ゚ -゚)
川 - )「……」
私は仔猫を抱いたまま歩き出した。
- 38 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 19:50:13.13 ID:BruHTtDSO
しばらく歩いて行くと水の流れる音が聞こえてきた。
川 ゚ -゚)(入速川、だな)
入速川は私の家の近くにある川で、幅は5mほどしかないのであまり大きな川ではない。
だが、夜の川は墨汁でも流し込んだのではないかと思うほど真っ黒に見えるので、
すごく不気味だ。
どれくらい深くて、どれくらいの速さで水が流れているのか、暗くて確認できない。
私は仔猫を見た。
川 ゚ -゚)
(*"ー`) スースー
川 ゚ -゚)「……」
川 - )「悪いな仔猫。私は"いい子"じゃないんだよ」
川 - )「だから私はお前を育てるつもりも、生かすつもりもない」
- 40 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 19:52:27.93 ID:BruHTtDSO
私は、橋の上から寝ている仔猫を放り投げた。
小さな小さな仔猫は深い闇に吸い込まれていった。
- 44 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 19:55:21.01 ID:BruHTtDSO
川; - )「はぁ、はぁ……」
殺した。
仔猫を殺してしまった。
あの後、私は全力疾走で家に帰ると直ぐ様自室にこもった。
心臓が休むことなく全力で動いていて、身体中からは嫌な汗が出てきた。
凄く息苦しい。
川; - )「はぁ……はぁ……」
川;゚ -゚)「……」
川;- -)「ふー……」
川 ゚ -゚)「よし、落ち着いた」
口で落ち着いたと言っても、本当は動揺しまくりだ。
虫を殺したことはあるけれど、自分の意思で動物を殺したのなんて初めだ。
そんな直ぐに落ち着く方がおかしい。
川 ゚ -゚)「……そうだ、2ちゃんを見よう!」
- 46 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 19:58:48.00 ID:BruHTtDSO
私は最近、2ちゃんねるを見ることにハマっている。
主に見ているのはニュー速VIPで、日頃のストレスを発散するのに利用している。
もしかしたらVIPを見ることで落ち着くかもしれない。
そんな望みをかけて私はパソコンの電源を入れると、早速VIPにアクセスした。
川 ゚ -゚)「何か面白いスレはないかな、と」
私はスレを上から一つづつ確認していく。
『公衆トイレで生活してるけど質問ある?(28)』
『ミセリちゃんのエロ画像ください(359)』
『女「別に痛くないし」(273)』
『お前らってさwww(12)』
川 ゚ -゚)(あまり面白そうなのはないな……)
川 ゚ -゚)(質問系は好きじゃないし、ミセリちゃんのエロ画像に興味は)
川;゚ -゚)「!?」
- 47 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 20:01:21.71 ID:BruHTtDSO
今夜のVIPには期待できなそうなどと考えていたら、
私はとんでもないスレを見つけてしまった。
川; - )「……」
『さっき猫を殺した女子高生を見た(241)』
- 49 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 20:04:39.80 ID:BruHTtDSO
川; - )「おおお、落ち着け私!!」
川;゚ -゚)「私のことではないはずだ!」
川;゚ー゚)「世界は広いから、きっと私の他にも猫を殺した女子高生がいたんだ!」
川;゚ー゚)「そうに決まっている」
私は震える手でマウスを握ると、そのスレをクリックした。
[1]:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 01:21:56.85 ID:Eo1Trm5h0
家の近くにある入○川に女子高生が仔猫を放り投げてた
川 ゚ -゚)
私のことだ。
- 54 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 20:08:12.33 ID:BruHTtDSO
私は画面をスクロールしながらレスを読んでいった。
川 - )(殆んどが私に対する暴言か)
川 - )(それにしても、猫好き多いな)
仔猫を殺してしまった罪悪感は、ある。
けれども……
川 ー )「くっ……ふふ、あはは!」
川 ゚ー゚)「そうだよな! 猫殺しは"いい子"がすることじゃないよな!」
川 ゚ー゚)「仔猫の命なんか知ったこっちゃないさ!!」
川 ^ー^)「私は"悪い子"だよ! ははは!!」
- 58 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 20:11:40.52 ID:BruHTtDSO
朝になった。
夜中にあのスレを見た後、私はパソコンの電源を落として布団に潜り込んだ。
そして、何も考えないようにして寝た。
J(;'ー`)し「クーちゃん、朝よ」
川 - )「……うん、おはよう」
J(;'ー`)し「おはよう」
J(;'ー`)し「クーちゃん、ごめんね!」
J(;'ー`)し「さっき帰って来たばかりなのと、
二日酔いで気持ち悪くて朝ごはん作れなかったよ……」
川 う-゚)「大丈夫。コンビニで何か買うから」
J(;'ー`)し「本当にごめんね。でもクーちゃんはいい子だから助かるよ」
川 ゚ -゚)「! うん……」
- 60 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 20:15:13.54 ID:BruHTtDSO
川 ゚ -゚)「……」
いつも通りの学校に、いつもの制服でいつもの時間に着いた。
ただ、いつもと違うものがある。
私の心境だ。
川 ゚ -゚)(私はもう"いい子"じゃないのさ)
川 ゚ -゚)(仔猫の命を犠牲にして"悪い子"になったんだから)
教室の戸に手をかけて、私は思いっきり開けた。
ξ゚听)ξ「おはよう、クー!」
川 ゚ -゚)「ああ、おはよう」
ξ゚听)ξ「昨日はありがとう。楽しかったわ」
川 ゚ -゚)「私も楽しかったよ」
_
( ゚∀゚)「おっ! クーちゃん、おはよう!」
- 61 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 20:18:12.09 ID:BruHTtDSO
川 ゚ -゚)「おはよう」
_
( ゚∀゚)つ□「クーちゃん、これ!」
川 ゚ -゚)「昨日貸したノート、か」
_
( ゚∀゚)つ□「コピーしたから返すよ」
_
( *゚∀゚)「すごい綺麗なノートだったよ。流石、クーちゃんだぜ!」
ξ*゚ー゚)ξ「当たり前じゃない。クーはいい子なんだから」
川 ゚ -゚)「……」
('A`)ノ「おっはよー」
( ^ω^)ノ「おはおー!」
ξ゚听)ξ「おはよう。相変わらず二人は遅いわね」
川 ゚ -゚)「おはよ」
_
( ゚∀゚)「お、ドクオにブーン! おはよう!」
- 63 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 20:21:13.52 ID:BruHTtDSO
- _
( ゚∀゚)つ□「じゃーん!」
('A`)「あ、クーちゃんのノート、コピーしたのか?」
_
( ゚∀゚)「おう!」
( ^ω^)「ホント、クーちゃんのノートは綺麗にまとめてあるおね」
('A`)+「だが、クーちゃんの方が綺麗だぜ」
ξ;゚听)ξ「キモッ!」
_
(;゚∀゚)「……」
( ^ω^)「ドクオ、そういうのはイケメン以外が言ってはダメなんだお」
(;'A`)ガーン
(;'A`)「ごめん、クーちゃん! 気持ち悪かった?」
川 ゚ -゚)「いや、別に気持ち悪くなど……」
ξ*゚听)ξ「! クー、優しい!」
_
( *゚∀゚)「ドクオにまで優しいなんて、流石だ」
( ^ω^)「クーちゃんは優しくていい子だお」
- 64 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 20:24:22.05 ID:BruHTtDSO
(うA;)「ありがと、クーちゃん」
川 ゚ -゚)「……うん」
なんなんだろう、こいつらは。
川 - )「……」
私はもう"いい子"じゃないのに。
仔猫を殺した"悪い子"なのに。
私は"いい子"なんて嫌だ。
- 69 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 20:29:23.49 ID:BruHTtDSO
学校が終わってから直ぐに私は家に帰ってきた。
今は自室のベッドで横になっている。
川 ゚ -゚)「はぁ……溜め息ばかり出てくるな」
川 - -)「はぁ……」
川 ゚ -゚)「こういう時はVIPで相談だよな」
私はベッドから飛び降りて、パソコンを起動させた。
川 ゚ -゚)「スレ立てしよう」
川 ゚ -゚)「えーっと……スレタイは『悪い子になりたい』」
川 ゚ -゚)「『悪い子になるにはどうすればいいですか?』、と」
カチ カチ
川 ゚ -゚)「……あ、レス」
- 72 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 20:32:29.55 ID:BruHTtDSO
川 ゚ -゚)「……」
[2]:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 16:46:15.23 ID:J8Poa5Ip0
悪wいw子wっwてwwww
なんでなりたいんだよ
[3]:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 16:47:03.44 ID:uA2Tnio70
人でも殺せばいいんじゃねwww
[4]:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/06(土) 16:47:39.71 ID:1U1ntDN20
>>3
川 ゚ -゚)「……そうか、仔猫だからダメだったんだ」
川 ゚ -゚)「人間を殺せば"悪い子"になれるんだな」
川 ゚ー゚)「『ありがとう、参考にするよ』、と」
- 73 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 20:34:21.83 ID:BruHTtDSO
「そういえば、今日はお母さん、泊まり込みで仕事するって言ってたなぁ」
カチッ
- 75 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 20:37:04.27 ID:BruHTtDSO
从;'ー'从「ふぇ〜! 友達と遊んでたらもうこんな時間になっちゃったよぉ〜!」
从'ー'从「暗いなぁ、怖いなぁ〜……」
川 - )「……」
从;'ー'从「うひゃぁっ!」
川 - )
从'ー'从「あ、ごめんなさい。暗かったからびっくりしちゃいました」
从'ー'从「高校生かな? ダメだよ、こんな時間に外にいちゃ」
从'ー'从「今は2時だから悪い人がいるかもしれないんだよ! 危ないよ!」
川 - )「……」
从;'ー'从「もしもぉ〜し?」
川 - )「お姉さんも、気をつけた方がいいですよ」
从'ー'从「ふぇ?」
- 77 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 20:39:08.45 ID:BruHTtDSO
川 ー )「私みたいな"悪い子"が、貴女を殺しちゃうかもしれないですから」
グチャッ
- 78 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 20:42:01.28 ID:BruHTtDSO
川 - )「……」
川 ー )「殺っちゃった」
川 ー )「手がぬるぬるするなぁ、気持ち悪い」
川 - )「……さて、この肉片どうするかな」
川 ー )「川にでも流せばいいか」
川 ー )「お母さんの包丁も真っ赤になっちゃったなぁ……」
川;゚ -゚)「!!」
川; - )「おぇっ! がはっ」
川; - )「はぁはぁ……」
川 ; -;)「……お母さん」
- 84 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 20:47:02.86 ID:BruHTtDSO
( ^ω^)「おはよう、だお」
川 ゚ -゚)「え」
朝。
いつもより早い時間に私は学校に来た。
すると、いつも私より後に来ているブーンが校門の前に立っていた。
( ^ω^)「クーちゃん、待っていたお」
川 ゚ -゚)「待っていた? 私を?」
( ^ω^)つ「さぁ、こっちに来るお」
すっ、とブーンが私に手を差し出す。
私はその手に自分の手を重ねた。
- 87 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 20:50:27.55 ID:BruHTtDSO
( ^ω^)「えへへ。クーちゃんと手を繋いじゃっているお」
川 ゚ー゚)「ふふ。じゃあ私はブーンと手を繋いじゃっているぞ」
( ^ω^)「不覚」
川 ゚ -゚)「そんなことは、どうでもいい」
川 ゚ -゚)「ブーン。何のつもりだ?」
( ^ω^)「お?」
川 ゚ -゚)「様子がおかしいぞ」
( ^ω^)「おっおっww やっぱりバレバレかお!」
( ^ω^)「ブーンは直ぐ顔に出ちゃうお!」
( ^ω^)「実は、今日はちょっとした歓迎会をするんだお!」
川 ゚ -゚)「歓迎会?」
( ^ω^)「そうだお!」
( ^ω^)「さあ、教室に着いたお!」
- 88 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 20:53:10.16 ID:BruHTtDSO
教室内に入ると、全クラスメイトが私の方に視線を向けた。
何故だか分からないが、みんなが私を見ながら笑っている。
( ^ω^)「みんなー! 主役が来たお!!」
('∀`)「やっと来たか」
ξ゚ー゚)ξ「待ちくたびれたわよ」
川 ゚ -゚)「……?」
( ^ω^)「今日からクーちゃんも僕達の仲間入りだお」
( ^ω^)「ようこそ。"罪人の集う学校"へ」
- 94 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 20:56:05.12 ID:BruHTtDSO
川;゚ -゚)「"罪人"……?」
"罪人"。
"いい子"とはまったく正反対の言葉。
"悪い子"に近い言葉。
川;゚ -゚)「ブーン、何のことだ?」
( ^ω^)「いやー! クーちゃん、まだこの学校に入って2ヶ月なのに
もう"罪人"になってしまうなんて早過ぎるおw」
('∀`)「俺達だって半年だったのにな」
( ^ω^)「ブーン達も早い方だお」
('∀`)「懐かしいな。あれは確か」
ブーンとドクオが楽しげに思出話を語り始めた。
何のことだか、さっぱり分からない。
ξ;゚听)ξ「ちょっと、ちょっと! クーが話についてきてないわよ!」
( ^ω^)「あ」
- 96 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 20:59:11.39 ID:BruHTtDSO
川 ゚ -゚)「ブーン……」
( ‐ω‐)「ふー」
( ^ω^)「じゃあ、状況が掴めていないクーちゃんの為に説明してあげるお」
( ^ω^)「ここはVIP高校。"罪人の集う学校"だお」
( ^ω^)「この学校には、将来"罪人"になる可能性のある学生が集まるんだお」
( ^ω^)「クーちゃん。君も"罪人"になる可能性があったんだお」
川 ゚ -゚)「……」
( ^ω^)「君は、"いい子"という言葉を酷く嫌っていたからね」
川 ゚ -゚)「!!?」
川; - )「知って、いたのか?」
('A`)「みんな知っていたよ」
- 97 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 21:02:23.18 ID:BruHTtDSO
( ^ω^)「"罪人"とは、人間の生命活動を脅かす者のことを言っているんだお」
( ^ω^)「クーちゃんは仔猫を殺したけど、それでは"罪人"にはならないんだお」
( ^ω^)「人間を殺す、あるいは人間を死に追いやる行為をした者が"罪人"になるお」
川;゚ -゚)「おい待て。何故私が仔猫を、人を殺したことを知って」
( ^ω^)「それくらい僕達は分かるんだお」
( ^ω^)「話を戻すお」
( ^ω^)「この学校は日本中にいる学生の"罪人"を閉じ込める為にあるんだお」
( ^ω^)「今の日本は少し物騒だお」
( ^ω^)「殺人、強盗、詐欺に暴力……数えきれない程の犯罪があって、
そのことによって人生が狂った人がいっぱいいるお」
( ^ω^)「"罪人"はこの世の中にいらない」
( ^ω^)「ならば、どこか違う次元に"罪人"を閉じ込めてしまおう。
と、ある人が考えたんだお」
- 101 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 21:05:02.83 ID:BruHTtDSO
川 - )「なあ、内藤ホライゾン」
( ^ω^)「お?」
川 - )「私が"いい子"と言われることを嫌っていると知りながら、
何故、お前達は私のことを"いい子"などと言ったんだ?」
( ^ω^)「……この学校に閉じ込められるのは"罪人"だけだお」
( ^ω^)「"罪人"になる可能性がある者は、まだ"罪人"じゃないお」
( ^ω^)「もしも在学中に"罪人"にならなければ、
こんな場所には閉じ込められないんだお」
( ^ω^)「そして、僕達は"罪人"だお」
( ω )「"罪人"になる可能性がある者がいたら、そいつも"罪人"にしてやるお」
( ω )「僕達が二度と行くことのできない外の世界に、逃がすつもりはないんだお」
川;゚ -゚)「!」
冷やっとした空気が私の全身を包んだ。
まるで冷蔵庫の中に放り込まれたような感覚。
私は初めてブーン達に恐怖を感じた。
- 102 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 21:08:06.27 ID:BruHTtDSO
川;゚ -゚)「ま、まだ聞きたいことがある!」
震える声を絞り出して、私は尋ねる。
川;゚ -゚)「私は自らの意思で進学先を決め、この高校に入った」
川;゚ー゚)「違う次元? ふざけるなよ。そんな非現実的なことがあるわけないだろ!!」
( ^ω^)「その記憶は、本物かお?」
川 ゚ -゚)「え?」
( ^ω^)「VIP高校なんてものは、この世……あ、この世じゃ変だおね」
( ^ω^)「元の世界にVIP高校なんてものは存在していないんだお」
川 ゚ -゚)「なんだと」
( ^ω^)「信じられないかお? じゃあ聞くお」
- 104 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 21:11:25.51 ID:BruHTtDSO
( ^ω^)「VIP高校に入った動機は?」
川 ゚ -゚)「……」
( ^ω^)「入学試験、どんなんだったお?」
川 ゚ -゚)「……」
( ^ω^)「この学校への道のり、覚えているかお?」
川 - )「……」
答えられない。
( ^ω^)「君が住んでいた家はあっちの世界のものだけど、
この学校周辺はこっちの世界のものなんだお」
( ^ω^)「学校への道のりがわからなくても仕方ないお」
( ^ω^)「さらに、君はある人の手によって強制的にこの学校に通わされているんだお」
( ^ω^)「そこに君の意思は関係なくなるお」
- 107 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 21:14:28.62 ID:BruHTtDSO
川;゚ー゚)「つ、ツン! 一昨日、一緒にVIP駅に行ったよな?」
川;゚ー゚)「ツンはこの学校の外に出てるじゃないか。
閉じ込められるだなんて嘘だからだろ?」
ξ゚听)ξ「クー。VIP駅もね、本当は存在していないのよ」
ξ゚听)ξ「この学校周辺とVIP駅は……」
川;゚ -゚)「嘘だ……嘘だ嘘だ、うそだ」
( ^ω^)「何をそんなに必死になるんだお?」
( ^ω^)「もうクーちゃんは"罪人"なんだお。念願だった"悪い子"になれたんだお!」
( ^ω^)「もっと喜んで欲しいお!」
- 108 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 21:17:20.50 ID:BruHTtDSO
嘘だ、嘘だ。
もうこの学校から出られないだなんて、嘘だ。
もうお母さんに会えないだなんて、嫌だ。
川 ; -;)「お母さん……」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「クーちゃん。君のお母さんの記憶、今なら思い出せるはずだお」
川 ; -;)「は?」
( ^ω^)「よーく、よーく思い出すお。君が"悪い子"になりたかった理由を」
川 ; -;)「……」
- 110 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 21:20:11.62 ID:BruHTtDSO
私はお母さんに"いい子"と言われるのが好きだった。
「クーちゃんは頭が良くて、いい子ね」
一生懸命勉強したのは、周りの人より上になりたいと思ったからじゃないよ。
「クーちゃんは思いやりがあって、いい子ね」
誰かに優しくしたのは、その人に恩を売りたかったからじゃないよ。
「クーちゃんはお手伝いしてくれて、いい子ね」
お母さんのお手伝いをしたのは、ご褒美に貰えるお小遣いが欲しかったからじゃないよ。
お母さんに褒められるのが、嬉しかったんだよ。
- 114 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 21:23:02.78 ID:BruHTtDSO
「クーちゃんはなんでもできて、いい子ね」
「うん! 私、いい子だよ!」
「じゃあ、お母さんがいなくても寂しくないよね? いい子だもんね?」
「うん!」
「よかった、クーちゃんが"いい子"で。お母さん嬉しいよ」
「お母さん。どこに行くの?」
「待って、行かないで!!」
「嘘! 嘘だから! 寂しくないなんて嘘だから!!」
「知らない場所へ、遠い所へ行かないで!!」
私は、なんでもできる"いい子"なんかじゃないから……
だから
- 117 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 21:26:22.64 ID:BruHTtDSO
川 - )「行かないで、お母さん」
川 - )「そっちに行くから、立ち止まってよ」
川 - )「やっと、やっと私は"いい子"じゃなくなったんだから」
川 - )「お母さんの側にいたいよ……」
( ^ω^)「……ふふ」
('A`)「酷いな、ブーン。クーちゃんが傷つくの知ってて思い出させるなんて」
( ^ω^)「おっおっ、ブーンは"罪人"だから人を傷つけるのが好きだおww」
ξ゚听)ξ「さいてー」
( ^ω^)「お前には言われたくないお、ツン」
ξ゚听)ξ「ふん」
('A`)「……ま、俺もクーちゃんが傷ついてるの見て興奮してるけどな」
_
( ゚∀゚)「さいてーwww」
ξ#゚听)ξ「ジョルジュ、真似すんなし」
- 119 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 21:29:08.95 ID:BruHTtDSO
( ^ω^)「とにかく、これでまた"罪人"を増やすことができたお」
ξ゚听)ξ「で、どうすんの? この子を犯したりでもするの?」
( ^ω^)「そんなことはしないお」
( ^ω^)「おっおっwww」
ξ゚ー゚)ξ「やっぱりアンタ、さいてーよ」
川 - )「お母さん……お母さん……」
お か あ さ ん … ‥
- 121 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 21:32:10.19 ID:BruHTtDSO
太陽が東の空から顔を出して朝を告げる。
小鳥達の朝の発生練習と、寝室に射し込む朝日が彼女を目覚めさせた。
目覚めた彼女は思うのだった。
『罪人のいない世界はなんて素晴らしいのだろう』と。
J( 'ー`)し「今日もいい天気ね」
彼女は起き上がると朝食の準備をするためにキッチンへと向かった。
J( 'ー`)し「♪」
自然と零れる鼻唄は、彼女の機嫌の良さの表れだ。
J( 'ー`)し「ご馳走様、と」
朝食を平らげた彼女は食器を片づけるために立ち上がる。
すると、一本の電話がプルルと鳴って彼女の邪魔をした。
- 123 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 21:35:32.53 ID:BruHTtDSO
J( 'ー`)し「誰かしら? ま、想像はつくけど」
彼女は受話器を取った。
J( 'ー`)し「もしもし」
『お早う御座います、カーチャンさん』
J( 'ー`)し「なんの御用?」
『先日の素直クールの件は有り難う御座いました』
J( 'ー`)し「いつものことじゃない。それで?」
『実は、また罪人になる可能性のある者が現れたので、預かって頂きたいのです』
J( 'ー`)し「私に断る理由はないわ。それが仕事だし」
『では、お願いしますね』
ガチャッ
- 124 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 21:38:04.27 ID:BruHTtDSO
J( 'ー`)し「また忙しくなりそうね」
今度来る子は私のご飯を美味しく食べてくれるかしら。
などと考えながら、彼女は受話器を置いた。
J( 'ー`)し(そういえば、素直クールの母親は癌で死んでしまったのよね)
J( 'ー`)し(父親は不詳。ヤるだけヤって逃げたらしい。最低な男ね)
J( 'ー`)し(ま、私には関係ない話だけど)
- 128 名前: ◆hDNzcvQqj. 投稿日:2009/06/06(土) 21:41:17.26 ID:BruHTtDSO
今日もまた一日が始まる。
罪人のいない、平和な世界の一日と
罪人が集う、牢獄の一日が……
川 ゚ -゚)はいい子ではないようです END
戻る