それぞれの恐怖のようです(百物語)

46 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/11(土) 23:22:24 ID:ZfYdkgz2O

「(´<_` )隠せないようです」

原曲・amazarashi『千年幸福論』
http://www.youtube.com/watch?v=VYv5HADu3HY&fmt=18


  .,、
 (i,)
  |_|

47 名前:(´<_` )隠せないようです 投稿日:2012/08/11(土) 23:27:46 ID:ZfYdkgz2O
***

昔から、元気いっぱいにはしゃぎまわる姉の後ろを、俺はいつも遮二無二ついてまわっていた。

健康的に麗しく成長していった姉とは違い、俺は背丈ばかりが伸びて筋肉があまり伴わず、特に高校生の頃は並んで歩くと通行人の視線が集まった。
痩せすぎず太すぎず出るとこはかなり出ている女子高生が(セーラーにガーターベルトだった事もあるだろう)、ネクタイをきっちりしめたひょろ長い男子高校生を連れているのだから、目立つのは当然である。

それはそれで楽しかったし、姉と手を繋いでいる時に浴びる、嫉妬のこもった恨みがましい視線で優越感に浸ったりもした。

なにより、姉の彼氏になったみたいで。
今も、僅か手を伸ばせば届く距離にある姉の綺麗な手に、触れたくてたまらない。

48 名前:(´<_` )隠せないようです 投稿日:2012/08/11(土) 23:29:54 ID:ZfYdkgz2O

***

2・(´<_` )隠せないようです

***

49 名前:(´<_` )隠せないようです 投稿日:2012/08/11(土) 23:30:55 ID:ZfYdkgz2O
( ´_ゝ`) …暇だなあ

ノパ听) 寝てれば?

( ´_ゝ`) 眠くはないんだな、これが

ノパ听) そう

旅行先の旅館とくれば畳の上にごろごろするのが基本だが、いかんせん状況が状況である。

( ´_ゝ`) …姉ちゃん

ノハ#゚听) ヒートちゃんと呼びなさいってば

俺の右隣に座る姉は既に二十後半なのだが、いまだに幼少時代と同じように呼ばせようとする。
身内とはいえ、勘弁して欲しい。照れるだろ。

( ´_ゝ`) あんた、彼氏いないんだっけ?

ノパ听) いないけど

( ´_ゝ`) そっか…どうしてなんだろうな、あんたこんなに美人なのになあ…

ノパ听) いきなりどうしたのよ?

( ´_ゝ`) 別に

怪訝な顔をする姉は、本当に綺麗で、魅力的で。

50 名前:(´<_` )隠せないようです 投稿日:2012/08/11(土) 23:32:52 ID:ZfYdkgz2O

いつの頃からか、俺は姉が好きでたまらない。
姉の方はどう想っているのだろうか?
我が生涯で最大の謎である。

解けたら最後、理性など役に立たないだろうから、解くつもりは無いのだが。

ノパ听) まあ、あんたのせいかもねー

( ´_ゝ`) 俺が?

ノパ听) いっつも私の後ろ追っかけて来やがってさー。学生時代だって、学年無視して私のクラスまで弁当食べに来やがってさー。随分からかわれちゃってさー。すっかりブラコン扱いでさー

( ´_ゝ`) フムン
そうかそうか、ブラコン扱いされてたか。外堀を無駄に埋めてた甲斐があったぜ!

ノパ听) 大学でも友達が噂広めちゃってさー。おかげで合コンとか全然お呼びかかんないでやんの。せっかく遊びまくろうと思ったのにさー…

52 名前:(´<_` )隠せないようです 投稿日:2012/08/11(土) 23:40:42 ID:ZfYdkgz2O
ノパ听) だからまあ、多分あんたのせいかな

( ´_ゝ`) 悪いことしたな

一応謝ると姉は突然、にやにやとあどけない童女のような笑みを向け、左手で、畳に投げ出していた俺の右手を握る。

(*;´_ゝ`) な、なんだよ

ノパー゚) べっつにー。なに照れてんのよ、昔はよくやってたじゃない

(*;´_ゝ`) それは…

思考して言おうとする事すべて、動揺で発音できず、黙るしかなかった。

姉も黙っていた。寡黙にただ、にやにやと握ってくるだけ。

ノハ*^ー^)

心なしか、姉の頬が少し朱くみえる。…そうだな、姉は身持ちが堅いだろうから、弟とはいえ恥じらっているのかもな。そうだったら、凄く嬉しい。

ノハ*゚听) ねえ、弟よ

( *´_ゝ`) なんだ

ノハ*゚听) あんたって昔から、隠し事が苦手だよね

53 名前:(´<_` )隠せないようです 投稿日:2012/08/11(土) 23:42:21 ID:ZfYdkgz2O
そう言って、姉は、手を離し。

ノハ*゚听) ばれてない、とでも?

俺の手のひらに滑り込ませて、手のひらを重ねてきた。
優しく、少しぎこちなく絡まる姉の細い指に、思わずして力がこもる。

( *´_ゝ`) …

ノハ*゚听) なんで素直になれないかなー

…だって。
だってさ。
姉弟だぜ、血が繋がってるんだぜ。
あんたが赤の他人なら、ただの年上の幼なじみとかなら、或いは駄目もとで正直にもなれたろう、ハッピーエンドだってたどり着けたのかもしれない。
でも、俺はあんたの弟なんだ。

( ´_ゝ`) …なれるわけ、ないだろう

ノパ听) …まあ、そうだよね

ふと、弟と妹の視線を感じた。

lw´‐ _‐ノv …

(´<_` ) …

ああ、大丈夫だって。悲しいだけじゃないからさ。

54 名前:(´<_` )隠せないようです 投稿日:2012/08/11(土) 23:44:46 ID:ZfYdkgz2O
俺は弟であることを悔やんだことは無いんだよ。俺は家族であり弟であり兄である事を悔やんだりしたことは。

( ´_ゝ`) でもさ、やっぱりこの関係が一番良いと思うわけですよ

ノパ听) そうなの?

( ´_ゝ`) そ。俺は、今の立ち位置が気に入っているのさ

俺が抱く、何よりも貴い事実は、この人の弟であることなのだ。誇りなんだ、貴女が姉であることが。

ノパー゚) …そっか

( ´_ゝ`) そう、そう

話が途切れたを見計らい、俺は左手で頬杖をつく。

ノパ听) なに、結局、寝るの?

( ´_ゝ`) 話してたら、なんだか眠くなってきたよ…なあ、ヒートちゃんよ

ノパ听) …うん

( ´_ゝ`) 家に、かえったらさ

ノパ听) …うん

( ´_ゝ`) また、手を繋いでくれ。あんたの弟として

ノハ*^ー^) うん、わかった

55 名前:(´<_` )隠せないようです 投稿日:2012/08/11(土) 23:46:34 ID:ZfYdkgz2O
( ´_ゝ`) よしよし

(´<_` ) …兄ちゃん

( ´_ゝ`) おう

(´<_` ) あんたは、それでいいのか

lw´‐ _‐ノv …

( ´_ゝ`) うむ…弟よ

(´<_` ) ああ

( ´_ゝ`) おまえは、もう少し頑張れ。若さ故の過ちも、時には必要だと思うぞ

(´<_` ) …うん

良い返事、というには力強さがたりないが、弟の事だから大丈夫だろう。俺よりはもう少し進展できるはずだ。

(´<_` ) てかさ、あんたやっぱ気づいてたろ

( ´_ゝ`) なんのことだ?あれか、俺が寝てる間に悪戯する気だったのか?起きた直後に瞼が開かないとかナシだぞ

ノパ听) …

(´<_` ) いや…なんもしない

( ´_ゝ`) そうか

さー、寝よう寝よう。

56 名前:(´<_` )隠せないようです 投稿日:2012/08/11(土) 23:53:07 ID:ZfYdkgz2O
せっかく、俺に俺自身の死を気づかせないよう…寂しくないように、普段通り接してくれてただろうに、そろそろ感極まって泣き出しそうだ。

俺が居なくても、三人がいれば良い。
希望が残る。そして俺は永遠に、ヒートちゃんの弟でいられるのだ。それで、救われます。

…ちりりりーん、優しい風鈴の音がした。


***


ノパ听) …あいつめ

先程まで兄が座っていた座椅子を見つめたまま、姉が呟く。

lw´‐ _‐ノv あにーちゃん、どこまで解ってたのかな

誰に言うともなく、妹が口にした。

(´<_` ) さてなあ…

ノパ听) …まったく、あいつは本当素直じゃないな

兄は人一倍寂しがり屋で、誰よりも姉を大切に想っていた。
当人は隠していたがそんなこと、一つ屋根の下で暮らしていれば、すぐに分かる。

57 名前:(´<_` )隠せないようです 投稿日:2012/08/11(土) 23:55:47 ID:ZfYdkgz2O
だから、と姉は兄に、姉自身の死も兄自身の死も悟らせずに逝かしてやろうとしたのだ。

(´<_` ) あんただって、素直じゃないだろう

自分の死が兄に絶望をもたらすと…そこまで分かっているのなら、兄が隠していたものが何なのかも、気付いているのだろうから。

ノパ听) …昔さ

(´<_` ) うん

ノパ听) 私が苛められてたのを、あいつが気付いてさ。私の知らない所で色々やってくれたみたいで…ある日、ぼろぼろに怪我して、半裸で帰ってきたんだ

(´<_` ) 初耳だな

ノパ听) 私の部屋で手当しながら、どうしたのって訊いたらさ…あいつ…


「喜べ、対象が僕に変わったぞ!」

58 名前:(´<_` )隠せないようです 投稿日:2012/08/11(土) 23:57:18 ID:ZfYdkgz2O
ノパ听) 私、喜べるわけないのに…あいつ超笑顔でさ…泣き出しちゃって、あいつが慌て泣くな言うのを無視して、わんわん泣きながら、なんでここまでしてくれたのって言ったの

ノパ听) したら、あいつ私のことハグして、しかも勢い余ったのかそのまま押し倒しやがってさ…耳元で、泣きそうな声で言うわけよ

「弟だから」

「姉ちゃんが、一番大事なんだ」

ノパ听) 何度も何度もずーっと、私が泣きやむまで言われ続けた。重かったよ、物理的にも精神的にも

(´<_` ) …らしくないな

ノハ*゚ー゚) 本当よね…らしくなかったわ

言って、姉は腰を浮かし。ひとつ隣にずれて、再び座った。

ノパ听) はー…なんだか私も眠くなってきちゃったなあ…

まるで兄と重なるようにして、机に突っ伏す姉は欠伸をひとつ。

59 名前:(´<_` )隠せないようです 投稿日:2012/08/11(土) 23:58:46 ID:ZfYdkgz2O

ノパ听) なんだろ…すごい落ち着くわー

そりゃあそうだろう。そこには兄が…あんたの弟が確かに座って居たんだから。

ノパ听) あ、我が弟と妹よ。協力してくれてありがとうね


(´<_` ) 気にすんな

lw´‐ _‐ノv 姉妹だし

ノパ听) うん…ふたりとも、元気でね

(´<_` ) 勿論さ

ノパ听) 幸せにね

lw´‐ _‐ノv がんばる

60 名前:(´<_` )隠せないようです 投稿日:2012/08/12(日) 00:05:00 ID:ajSg1e.AO
ノパ听) まめに掃除しろよー

(´<_`; ) 善処します

ノパ听) あとは…えーっと…お金の管理に注意だっ!

lw´‐ _‐ノv うん

ノパ听) うーんと…あ、そうだそうだ、それとね

ノハ*゚听) 今までありがとう、ふたりとも!

(´<_` ) …

泣いちゃだめだ。自分に必死で言い聞かせる。
笑顔のままでと約束したじゃないか。泣いちゃだめなんだ。
泣きわめいて、取り乱すより、落ち着いて気持ちを言葉に込めて、姉を安心させなくちゃいけないんだ。

苦しむより、悲しむよりも先に、伝えなくてはならない言葉が、あるのだ。

lw´‐ _‐ノv …こちらこそ、ありがとう、お姉ちゃん

(´<_` ) ありがとう、姉ちゃん

ノハ*^竸) よしっ!じゃあねっ!

嗚呼、兄よ。この笑顔は、確かに反則的だな。
誰だって守りたくもなるよなあ。

61 名前:(´<_` )隠せないようです 投稿日:2012/08/12(日) 00:06:53 ID:ajSg1e.AO

***


ちりりりーん、風鈴の寝が響く。川のせせらぎと、部屋に吹き込む涼風とが、寂しさを引き立てる。
俺はどうにもたえきれなくて、リモコンに手をのばした。ニュース番組が映る。

lw´‐ _‐ノv おにーちゃん

(´<_` ) ん?

lw´‐ _‐ノv 本当に、これで良いのかな

(´<_` ) 良かったさ

姉が兄に知られまいと隠したように。
知らないことで、もたらされる救いもあるはずだ。
妹だって、それを分かっているのだろうけれど、やっぱりどこか納得がいかないのだろう。俺もそうだし。

(´<_` ) シューは、何も気にする事は無いんだ。シューは罪悪感を感じる事なく…そうだな、将来良いお嫁さんにでもなってだな…


lw´#‐ _‐ノv おにーちゃんっ!

62 名前:(´<_` )隠せないようです 投稿日:2012/08/12(日) 00:08:29 ID:ajSg1e.AO
いきなり立ち上がった妹は飛びつくように俺へと抱きついた。

lw´‐ _‐ノv …おにーちゃん

(´<_`; ) おい、どうした

lw´‐ _‐ノv 隠さないで

妹の言葉が、風に乗って俺の耳を揺さぶる。

(´<_`; ) 隠すって、何を

lw´‐ _‐ノv 知ってたの、わたし。知ってて、隠してた

(´<_`; ) な、なに

テレビのニュースキャスターが、淡々とした口調で今日起きた事故を解説している。

lw´‐ _‐ノv 事故の時の記憶は思い出せないけれど、あにーちゃんも、おねーちゃんも、おにーちゃんも、それにわたしも…どうなったのかは、知ってた

電車の脱線事故で死んだ四人の名前を淡々と、ひたすらに、ニュースキャスターは繰り返している。俺はテレビを消した。

63 名前:(´<_` )隠せないようです 投稿日:2012/08/12(日) 00:10:27 ID:ajSg1e.AO

lw´‐ _‐ノv だって、この旅館、わたしが修学旅行で来た時とぜんぜん違う。窓から川なんて見えなかった

(´<_` ) …そうだったのか

lw´‐ _‐ノv おにーちゃん…わたしは、知っている方が良いの。自分が死んだと気付かないままじゃ、言えない事があるから

妹は、潤んだ瞳で俺を見上げ、両手を俺の背にまわし、密着してきた。

lw´‐ _‐ノv おにーちゃん、あのね、今だから云うけど…わたしね、ずっと前からおにーちゃんが好き

(´<_`; ) …兄妹だろ、俺たち

lw´‐ _‐ノv だから、今まで言わなかったじゃん。でさ、おにーちゃんは?

(´<_`; ) 俺は…

今まで、つまり生きている間。
姉と兄が手を繋いで歩くのが、たまらなく羨ましかった。

64 名前:(´<_` )隠せないようです 投稿日:2012/08/12(日) 00:15:50 ID:ajSg1e.AO

周囲の目を気にせず行動に移せる勇気が、互いを許し合っていることが、羨ましかった。

妹と、あんなふうに手を繋いであるけたらどんなに幸せなことか、思っていながら俺は実行できなかった。
なぜならシスコンだと断言していた兄のせいで学校でからかわれ、妹と接触する時常に周囲の視線や反応が気になってしまったから。

すると尚更妹に触れたくなっていき、自分を抑えるために、そもそも自分は若さ故の情欲を恋愛感情と勘違いしているだけなのだと自分に言い聞かせようと考えたが、妹に情欲を抱いている時点で異常なため言い訳にすらならず、散々悩んだあげく至った結論は。

俺は妹が好きで、その事実をねじ曲げて解釈する余地は無いということ。

65 名前:(´<_` )隠せないようです 投稿日:2012/08/12(日) 00:17:06 ID:ajSg1e.AO
俺は精神的にも肉体的にも妹を欲していると認めざるを得なかった。姉よりも不純に、兄よりも貪欲に。

そんな事が許されるはずもなく俺は、時に妹を突き放してしまう程、妹との距離感に怯えた。
抑えがきかなくなったら、俺は何をしでかすか分からなかったから。

( <_ ; ) 俺は…

66 名前:(´<_` )隠せないようです 投稿日:2012/08/12(日) 00:19:19 ID:ajSg1e.AO


…昔読んだ小説の文章が、よみがえる。

『ああ。何という恐ろしい責め苦でしょう。此美しい、楽しい島はもうスッカリ地獄です。神様。神様。あなたはなぜ私たち二人を、一思いに虐殺して下さらないのですか……。』

姉と兄が仲睦まじいものだから、よく妹と二人きりになる自宅はまさに、『瓶詰の地獄』だった。
妹は、どんなに冷たくしても妹は、俺を慕ってきたのだ。

今のように潤んだ瞳で真っ直ぐ俺を射抜きながら、健気に必死に、嫌われまいと、少しでも傍によろうとするのだ。
それに応えてあげられたのなら、どんなにか幸せなことだろう。

けれども歯止めが効かなくなれば、責任能力すら無い未熟な俺が、この無垢で健気で清らかな妹を、汚し傷つけてしまう。

67 名前:(´<_` )隠せないようです 投稿日:2012/08/12(日) 00:21:17 ID:ajSg1e.AO

…俺の願いは、兄のように世間体を気にすることなく実行すると、犯罪になる。できなかった。

lw´‐ _‐ノv …おにーちゃん

ああ、嗚呼。妹よ、俺の健気な妹よ。そんなに泣きそうな声で縋らないでくれ。

lw´  _ ノv 死んだんだよ、わたしたち

( <_  ) …

lw´‐ _‐ノv 法律も、世間体も、後のことも、何もかも、関係ないよね?

妹の言葉が、胸をえぐる。

lw´‐ _‐ノv だから最期くらいは、幸せになりたいよ…

幸せ。
幸福。
幸福とは何だろう?
たとえ、いつか他人に寝取られようとも、結ばれることは許されないと分かっていようとも、妹が生きている事は俺にとっての幸せだ。

68 名前:(´<_` )隠せないようです 投稿日:2012/08/12(日) 00:26:34 ID:ajSg1e.AO


でも、死んでしまった。それは叶わない。
では残っている幸福とは何か?

『二人は互いに、こうした二人の心をハッキリと知り合っていながら、神様の責罰を恐れて、口に出し得ずに居るのでした。』

もう、二人きりなのだ。
誰も見ていない…神様が居るのなら別だが…俺と妹と二人で消えるしかない。

兄は言った。

「おまえは、もう少し頑張れ。若さ故の過ちも、時には必要だと思うぞ」

姉は言った。

「幸せにね」

あの二人は、俺と妹に希望を込めていたように思う。

兄姉として、また同じ境遇の男女として、自分たちとは違った結末があると信じて消えたように思うのだ。
それは何の根拠も無い、弟としての確固たる確信だ。

道徳も糾弾もない、ある意味で全てから解放された今。

69 名前:(´<_` )隠せないようです 投稿日:2012/08/12(日) 00:29:10 ID:ajSg1e.AO
互いの手をとらないままで消えることに、何の意味があるというのだろう。
正しいとされ、貴いとされる清純さに縋って、何を得る?
俺は神様に近付くよりも、妹に近付きたい。それでこそ俺は、救われる。

(´<_` ) …シュー。いままで悪かった

lw´‐ _‐ノv …

(´<_` ) 俺も、シューが好きだ

華奢で、未熟な身体を、慎重に抱き締めた。

lw´*‐ _‐ノv ありがとう…ありがとう、おにーちゃん

徐々に力を込めると、妹の唇から吐息が漏れた。
その可愛らしい唇を塞ぐと、妹の胸が押し当てられた。
更に力を込めると、妹の腰が俺に乗った。

今までの、日々の空白と虚無感とを少しでも埋め合わせようと、俺と妹はきつく抱き締めあっていた。

『私たち二人はフカの餌食になる価値しか無い、狂妄だったのですから……。あゝ。さようなら。』

嗚呼、風鈴の音が響く。




  (
   )
  i  フッ
  |_|


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