- 130 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/12(日) 01:56:32 ID:vV2BBjaQ0
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- 131 名前:( ^ω^)七不思議を知ってしまったようです 投稿日:2012/08/12(日) 01:58:04 ID:vV2BBjaQ0
ポーン。ポーン。
( ^ω^)「お。もう11時かお」
ブーンは手にしていた漫画を本棚に戻す。
日が暮れるのが遅くなってきた夏。ついつい夕飯や風呂に入るのが遅くなってしまう。
時間はずれこみ、普段通りのつもりで漫画を読んでいると日付けが変わってしまうこともある。
明日が日曜日であることが救いだ。
ヴー。ヴー。
( ^ω^)「お?」
目覚まし時計の代わりに枕もとに置かれている携帯がなった。
バイブのリズムからして電話だ。
( ^ω^)「こんな時間に誰だお?」
二つ折りの携帯を開くと、画面には学校の友人の名前が表示されている。
こんな夜遅くに電話をしてくるような人物ではないだけに、急用なのだろうかと思う。
( ^ω^)「もしもしおー」
- 132 名前:( ^ω^)七不思議を知ってしまったようです 投稿日:2012/08/12(日) 02:00:04 ID:vV2BBjaQ0
(;^ω^)「夜の学校かお」
ξ゚听)ξ「何よそんなに怯えて」
(;^ω^)「いや、いつもと違う雰囲気の学校はやっぱりちょっと怖いお」
ブーンは電話で学校に呼び出されたのだ。
曰く、二人で肝だめしをしよう。とのこと。
同じクラスになって以来、淡い恋心のようなものを抱いているブーンが誘いに乗らないわけがなかった。
カーチャンが眠っているのを確認してから、こっそりと学校へやってきたのだ。
( ^ω^)「それにしても二人で肝だめしなんて……。
どういう心境の変化だお?」
ξ゚听)ξ「だって、私って怖がりで有名じゃない」
( ^ω^)「そうだお。夏休みになったら肝だめしをしよう! っていう計画にも大反対していたお」
ξ゚听)ξ「だからよ。ちょっと克服しようかと思って」
( ^ω^)「なるほど」
ξ゚ー゚)ξ「ブーンと二人なら安心だから」
( *^ω^)「お?」
- 133 名前:( ^ω^)七不思議を知ってしまったようです 投稿日:2012/08/12(日) 02:02:01 ID:vV2BBjaQ0
ξ゚听)ξ「さっ、行きましょ」
( ^ω^)「まずはどこに行くお?」
ξ゚听)ξ「どこでも良いわよ?
……と、いうかうちの学校の七不思議ってなんだっけ?」
(;^ω^)「それすら知らないのかお」
ξ;゚听)ξ「だって怖いじゃない!」
( ^ω^)「……でも、ブーンも三つしか知らないお」
ξ゚听)ξ「え、そうなの?」
( ^ω^)「話題にはなるんだけど、みんな三つしか知らないんだお」
ξ;゚听)ξ「それじゃ七不思議にならないじゃない」
(;^ω^)「ブーンに言われても」
ξ゚听)ξ「で、その三つっていうのは?」
- 134 名前:( ^ω^)七不思議を知ってしまったようです 投稿日:2012/08/12(日) 02:04:06 ID:vV2BBjaQ0
( ^ω^)「一つはさまよう者だお」
ξ゚听)ξ「さまよう?」
( ^ω^)「学校中をうろうろしているって話だお」
ξ゚听)ξ「それだけ?」
( ^ω^)「それだけだお」
ξ゚听)ξ「……でも幽霊がうろうろしてると思うと怖いわね」
( *^ω^)「怖がりだおー」
ξ;゚听)ξ「うううううるさいわよ!」
( *^ω^)「おっおっ」
ξ゚听)ξ「でも、それだと探すのは難しそうね」
( ^ω^)「そうだおね……」
ξ゚听)ξ「他の二つは?」
- 135 名前:( ^ω^)七不思議を知ってしまったようです 投稿日:2012/08/12(日) 02:06:03 ID:vV2BBjaQ0
( ^ω^)「鏡に住む者ってのがあるお」
ξ゚听)ξ「ああ、よくあるパターンの」
( ^ω^)「だお。ほら、二階と三階の間にある階段の踊り場。
あそこにある姿見に出るって噂だお」
ξ゚听)ξ「どんなおばけなの?」
( ^ω^)「それは知らないお」
ξ゚听)ξ「えー」
( ^ω^)「七不思議なんてそんなもんだお」
ξ゚听)ξ「もう。まあ、とりあえずは姿見を見に行きましょうか」
( *^ω^)「お」
ブーンの手が、柔らかい女子の手と触れ合う。
何だかんだ言っても怖いのだろう。かすかに震えている手がブーンの手と取る。
ξ゚听)ξ「ほら、早く」
( *^ω^)「わかってるお」
- 136 名前:( ^ω^)七不思議を知ってしまったようです 投稿日:2012/08/12(日) 02:08:12 ID:vV2BBjaQ0
学校の中にはすんなりと入ることができた。
あらかじめ窓を一つ開けておいたのだと、彼女が胸を張る。
そんな姿の一つだって可愛らしく見えてしまう。
ξ゚听)ξ「ほらほら」
( ^ω^)「急がなくても鏡は逃げないお」
ξ゚听)ξ「でも、早く帰りたいし……」
( ^ω^)「誘ってきたのはそっちなのに……」
ブーンとしては一分一秒長く留まっていたい心持ちだ。
ξ゚听)ξ「あ、月」
( ^ω^)「綺麗だお」
一階と二階の間の踊り場から月が見えた。
夜空の中で輝く月は黄色というよりは乳白色だ。
周りの暗さを払うようで、抱き締めるような優しい光を放っている。
ξ゚听)ξ「うん。綺麗ね」
( ^ω^)+「キミと同じくらい綺麗だお」
ロマンチックな雰囲気に言葉を乗せる。
- 137 名前:( ^ω^)七不思議を知ってしまったようです 投稿日:2012/08/12(日) 02:10:12 ID:vV2BBjaQ0
ξ*゚听)ξ「もう、馬鹿なことばっかり言って!」
( *^ω^)「照れなくてもいいお」
二人は手をしっかりと繋いだまま階段を登る。
普段とは違う薄暗い廊下は少しだけ怖い。
足音が響き、幾つもの足音に聞こえる。
( ^ω^)「あとで教室も見てみるかお?」
ξ゚听)ξ「それは……いいじゃない」
( ^ω^)「そんなに早く帰りたいのかお?」
ξ゚听)ξ「……」
黙って手を握る力を強くする。
( ^ω^)「わかったお。でも、また肝だめししたいおね」
ξ゚听)ξ「あたしが怖いの嫌いって知ってるくせに……」
( ^ω^)「これも特訓だお」
ξ><)ξ「もー」
( *^ω^)「おー。危険危険! オバケより怖いおー」
- 138 名前:( ^ω^)七不思議を知ってしまったようです 投稿日:2012/08/12(日) 02:12:09 ID:vV2BBjaQ0
二人でじゃれあっていると、あっという間に二階と三階の間の踊り場が見えてきた。
窓ガラスが左右に。その間に一枚の姿見。
月の光に照らされ、鏡に何が映っているのか、二階からは見えない。
( ^ω^)「――お?」
しかし、鏡の前に何かがいる。
ブーンは首を傾げる。
「――だ。――――でな、――って」
何かを認識した途端、声まで聞こえてきた。
ξ゚―゚)ξ
(;^ω^)
互いに手を強く握る。
まさか本当に幽霊が出たとでも言うのだろうか。
心臓がなる。
肋骨を破って出てくるのではないかと思うほど激しく動く。
- 139 名前:( ^ω^)七不思議を知ってしまったようです 投稿日:2012/08/12(日) 02:14:09 ID:vV2BBjaQ0
怯えている彼女に代わってブーンが目をこらす。
月の光と闇の深さに惑わされないように。
|(´<_` )
(;^ω^)「お、とじゃ……!」
- 140 名前:( ^ω^)七不思議を知ってしまったようです 投稿日:2012/08/12(日) 02:16:15 ID:vV2BBjaQ0
ブーンは素早く一階へ駆け下りる。
バタバタと足音が響いているが、そんなことは気にしていられない。
ξ;゚听)ξ「ブ、ブーン!」
(;^ω^)「あれは、あれは弟者だったお……!」
一階へたどりつくと、すぐに近くの教室に身を隠す。
不思議と鍵はかかっていなかった。
ξ;゚听)ξ「弟者って……」
(;^ω^)「二ヶ月前から行方不明の、弟者だお」
弟者はブーンと同じクラスにいた友人だった。
行方不明ならば、先ほどの弟者は本物だという可能性もあるだろう。
しかし、彼のことをよく知っているブーンには、そうは思えなかった。
(;^ω^)「何度か家を訪ねたこともあったお。でも、弟者はまともじゃなかったお。
そんな弟者が確かに言っていたんだお。
兄者のところに行ってくるって……」
- 141 名前:( ^ω^)七不思議を知ってしまったようです 投稿日:2012/08/12(日) 02:18:13 ID:vV2BBjaQ0
兄者は弟者の双子の兄だ。
真面目な弟とは違い、おとぼけ者だった兄者は、ある日友人と教室で遊んでいる最中に窓から落ちた。
四階の教室から落ちたのだ。
当然、兄者は死んだ。
それから弟者は家から出なくなった。
心配した友人達は弟者の家を訪ねたが、誰一人として弟者を立ち直らせることはできなかった。
(;^ω^)「生きてるって、信じたいけど……。
でも、きっと弟者は死んでしまったはずだお」
ξ;゚听)ξ「……」
(;^ω^)「弟者、鏡に向かって何か喋ってたお?
あれは、弟者が生きているときに家を訪ねたときからそうだったお」
鏡に映る自分を兄者だと信じて、弟者は毎日言葉を紡いでいた。
その狂気を思い出せば、先ほどの彼が幽霊であることを不思議には思えない。
むしろ、死んでいる方が幸福であるに違いないとまで思う。
- 142 名前:( ^ω^)七不思議を知ってしまったようです 投稿日:2012/08/12(日) 02:20:09 ID:vV2BBjaQ0
|(´<_` )「兄と弟の区別くらいつけろよな」
|(´<_` )「者とか呼び出すんだぜあいつら」
|(´<_` )「はあ? っつったら、兄か弟かわかんねぇしww って」
|(´<_` )「どうなんだよな、それは」
|(´<_` )「ここも居心地いいよな」
|(´<_` )「なあ、でもそろそろ帰ろうぜ? 母者も心配してる」
|(´<_` )「ん。そっか。怒った母者は怖いからな」
|(´<_` )「だけど、さっさと帰った方が傷は浅いぞ」
|(´<_` )「よく言っておくよ。姉者もご立腹だったしな」
|((( ´_>`)
|
( ´_ゝ`)|
- 143 名前:( ^ω^)七不思議を知ってしまったようです 投稿日:2012/08/12(日) 02:22:17 ID:vV2BBjaQ0
( ´_ゝ`)| 「これは酷い」
( ´_ゝ`)| 「うーん。まだ死んだ自覚がないのも問題だなぁ」
( ´_ゝ`)| 「しかし、鏡に姿が映ってないのに、何でオレと会話してる気分になれるんだ」
( ´_ゝ`)| 「ていうか、本当に母者と父者に申し訳ないわ」
( ´_ゝ`)| 「一応ここまで育ててもらったし」
( ´_ゝ`)| 「緒がまだへそについてる時期から隣にいるんだ。死んでも隣……って駄目か」
( ´_ゝ`)| 「にしても、せっかく弟者を見守るために前の七不思議と交代してもらったのになぁ」
( ´_ゝ`)| 「いっそのこと成仏しておけば、弟者も天国に逝けたのかな」
( ´_ゝ`)| 「れいになってるって自覚さえすれば成仏しそうな気もす、」
( ´_ゝ`)| 「る、が……。それは……ちょっと寂しい、な。もうちょっと七不思議継続してもらっとくか」
( ´_ゝ`)| 「しかし、ブーンだっけ? あいつ……」
( ´_ゝ`)| 「いいのか? こんな時間、こんな場所、あんな奴といて」
( ´_ゝ`)| 「いや……気づいていないのか」
( ´_ゝ`)| 「かわいそうに」
- 144 名前:( ^ω^)七不思議を知ってしまったようです 投稿日:2012/08/12(日) 02:24:10 ID:vV2BBjaQ0
( ^ω^)「……帰るお?」
ξ゚听)ξ「……うん」
ブーンは彼女の手を優しく握る。
振るえが手を通して伝わってくる。
怯えているのだ。
ただでさえ怖がりな彼女だ。おばけを目にして怯えていないはずがない。
これからも一緒に肝だめしをしたかったのだが、難しいかもしれない。
少しだけ残念に思った。
ξ゚听)ξ「あ、ちょっと待って」
( ^ω^)「お?」
ξ゚听)ξ「走ったから、髪の毛が乱れてるかも」
( ^ω^)「大丈夫だお」
ξ゚听)ξ「もー。女の子には身だしなみっていうのが大切なの!」
彼女がブーンの手を引く。
( ^ω^)「デレはどんな髪型でも可愛いお」
- 145 名前:( ^ω^)七不思議を知ってしまったようです 投稿日:2012/08/12(日) 02:26:14 ID:vV2BBjaQ0
手を引かれてたどりついたのは、客用玄関に設置されている姿見の前。
ξ゚听)ξ「ねぇ、ブーン」
( ^ω^)「お?」
ξ゚听)ξ「もう一つ、七不思議知ってるのよね?」
( ^ω^)「知ってるお」
ξ゚听)ξ「教えてちょうだい」
( ^ω^)「鏡の中にひきずりこむ者の話だお」
ξ゚听)ξ「そっか……」
彼女がぐいっとブーンを引っ張る。
ξ゚听)ξ「ブーン、あたしがいいことを教えてあげる」
(;^ω^)「お……」
- 146 名前:( ^ω^)七不思議を知ってしまったようです 投稿日:2012/08/12(日) 02:28:09 ID:vV2BBjaQ0
ブーンの体が鏡に押し付けられる。
冷たい感触が服を通して背中に伝わっていた。
(;^ω^)「デ、レ……?」
ξ゚∀゚)ξ「あのね、七不思議はちゃんと七つあるの」
冷たく、硬い感触が消えた。
背中から飲み込まれていく感触へと変わる。
(;^ω^)「え? え?」
ξ゚∀゚)ξ「さまよう者。
鏡に住む者。
鏡にひきずりこむ者。
おばけはこの三つしかいないの」
(;^ω^)「何を……」
ξ゚∀゚)ξ「四つ目の七不思議は友人から11時に電話がかかってくる。
五つ目、学校には友人ではないモノが待っている。
六つ目、幽霊は入れ替わる」
(;^ω^)「友人じゃないモノ……」
ξ゚ー゚)ξ「ありがとう。ブーン」
- 147 名前:( ^ω^)七不思議を知ってしまったようです 投稿日:2012/08/12(日) 02:30:08 ID:vV2BBjaQ0
とぷん。
体が落ちる。
ゆるやかに落ちる。
切り離される感覚。
闇に消える感覚。
- 148 名前:( ^ω^)七不思議を知ってしまったようです 投稿日:2012/08/12(日) 02:32:13 ID:vV2BBjaQ0
ζ(゚ー゚*ζ「おはよー」
ξ゚听)ξ「おはよう」
ζ(゚ー゚*ζ「ちゃんと宿題した?」
ξ゚听)ξ「したわよ」
('A`)「うーっす」
_
( ゚∀゚)「なあ、お前達も肝だめしにこいって」
ζ(゚ー゚*ζ「ぜーったい嫌!」
ξ゚听)ξ「デレは怖いもの嫌いだもんね」
ζ(゚ー゚*ζ「うん。私、この学校の七不思議だって怖くてしかたないのに」
('A`)「ああ、あの三つしかないっていう」
_
( ゚∀゚)「適当にもほどがあるよな」
ξ゚听)ξ「いいのよ。それで」
ζ(゚ー゚*ζ「そうそう。怖いものなんて少なければ少ないほどいいの!」
ξ ー )ξ「三つくらいでいいのよ。三つで」
- 149 名前:( ^ω^)七不思議を知ってしまったようです 投稿日:2012/08/12(日) 02:34:08 ID:vV2BBjaQ0
( ´_ゝ`)| 「ツンは上手く入れ替わったのか」
鏡の中で兄者は一人呟く。
( ´_ゝ`)| 「オレも入れ替わりたいけど、弟者を置いていくのはなぁ」
|(´<_` )
今も死した自覚のない弟を思えば、一人で入れ替わるのも不安が残る。
( ´_ゝ`)| 「あ、双子こないかな。双子」
双子と入れ替わることができれば、また共に人生を歩める。
自分が生きていると思っている弟者が上手く入れ替われるかは心配であるが。
( ´_ゝ`)| 「ま、何とかなるだろ」
兄者は鼻歌交じりに外の世界を覗く。
いつか双子が目の前に現れるのを心待ちにしているのだ。
- 150 名前:( ^ω^)七不思議を知ってしまったようです 投稿日:2012/08/12(日) 02:36:06 ID:vV2BBjaQ0
(´・ω・`)「兄さん、本当に行くの?」
(`・ω・´)「お前は怖がりだなぁ。大丈夫だよ」
(´・ω・`)「兄さんが強すぎなんだよ……」
(`・ω・´)「双子なのに、どうしてこうも違うんだろうなぁ」
(´・ω・`)「知らないよ……」
学校に双子が訪れる。
( _ゝ゚)|
|(゚<_ )
- 151 名前:( ^ω^)七不思議を知ってしまったようです 投稿日:2012/08/12(日) 02:38:02 ID:vV2BBjaQ0
七つ目。
七不思議は三つまでしか知ってはいけない。
四つを隠すことで、死を隠すことができる。
もしも、三つの不思議を知り、四つ目を目の当たりにしてしまったら――。
( ^ω^)「おーい。二人も肝だめしかお?」
(´・ω・`)「あ、ロマ」
(`・ω・´)「お前もきていたのか」
( ^ω^)「そうだお。ボクも一緒に行動していいかお?」
(´・ω・`)「もちろん」
四つを隠すことができなくなれば、死んでしまう。
(
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i フッ
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