( ^ω^)百物語のようです2012 in創作板( ω  )

186 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/12(日) 06:16:00 ID:NUNCIp6I0


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 (i,)
  |_|

187 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/12(日) 06:18:01 ID:NUNCIp6I0





     ミセ*゚ー゚)リとティッシュ配りのようです





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188 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/12(日) 06:18:59 ID:NUNCIp6I0

ミセ*゚ー゚)リ(何、あいつ)

 そいつは妙な風貌をしていた。
 真夏日だというのに、黒いスラックスと黒いパーカーを着て、ポケットティッシュを配っていた。


( ´_ゝ`)


 暑さを感じていないのかただの変態なのか良く分からないが、不審者である事には変わりない。
 関わらない方が良さそうだ。


ミセ*゚ー゚)リ(無視、無視)

 スーパーのティッシュセールを攻略してきた今の私に、新たなティッシュなど必要ない。

 シカトを決め込んで目の前を通り過ぎる。
 が、その瞬間。

189 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/12(日) 06:20:07 ID:NUNCIp6I0

( ´_ゝ`)「ティッシュいりませんか?」

 声をかけられた。妙なナリの癖に良い声をしている。
 ボイストレーニングを続ければ、それなりに売れる声優へと昇華するかも知れない。

 そんな事はどうでもいいか。


ミセ*゚ー゚)リ

 無視をする。
 こちらは急いでいるのだ。

 ビルの群れに囲まれたこの大通りはヒートアイランド現象と昨今の地球温暖化も相まって、
 少し歩くだけでも結構な量の汗をかいてしまう。とても蒸し暑い。干物になりそうだ。

 早く家に帰り、シャワーを浴びて冷房にあたりたい。
 なのに、


( ´_ゝ`)「そんな事言わずに」

 懲りずにティッシュを手渡そうとしてくる。何も言っていないのだが。
 きちんと見ていなかったから気付かなかったが、なんとこの男、黒い手袋をしている。

190 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/12(日) 06:21:27 ID:NUNCIp6I0

 気になって全身を舐め回すように見ると、靴も黒、パーカーの襟元から覗く下着も黒、髪の毛も瞳の色も黒だった。
 恐らく腹も黒いのだろう、避けて進もうとすれば「幻術だ」と言われながら行く手を阻まれる。大した奴だ。


 この男、動きも反応も早い。鍛えればアスリートかアクションスターにもなれるかも知れない。
 流石にそれは持て囃し過ぎか。

 とにかく目の前に立ち塞がる暗黒卿をどうにかしなければ、先へは進めないだろう。父親ではない。
 眼前の男は中ボス並のオーラしか纏っていない筈なのに、背筋を冷たいものが走った。

 仕方なく、ポケットティッシュを受け取る。


ミセ*゚ー゚)リ

 無言で。
 見ているだけで不快指数がMAX以上に振り切れそうになる変態黒男に、かけてやる言葉など無い。


( ´_ゝ`)「どうもー」

191 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/12(日) 06:22:27 ID:NUNCIp6I0

 * * *



ミセ*゚ー゚)リ「あー疲れたー」

 私の家は、古くも新しくもない、頑丈さが売りだけの二階建ての家。
 勿論、実家だ。だが稼いだお金は入れている。
                       
 何もせずにパラサイトしているようなイ;^ω^)アウアウ!!シとは違う。


ミセ*゚ー゚)リ「?」

 扉の前。何かが、いつもと違う。
 見ると、ポストに何かが詰まっている。

192 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/12(日) 06:23:31 ID:NUNCIp6I0

ミセ*゚ー゚)リ「!!」

 ティッシュ。
 大量のポケットティッシュが、ポストからはみ出そうな程に詰め込まれていた。


ミセ;゚ー゚)リ「いや、受け取ったけどもっ!」

 さっきの男だろうか。

 まさか私の家を知っていて、ティッシュが「いる」という事を行動で示してしまった為に、
 ポストにティッシュを詰め込むという奇行に及んだのだろうか。


 もしそうだとしたら実に迷惑だ。
 既にポケットティッシュは、いきつけの美容室で貰ったものをストックしてある。

 ここまで大量に貰っても、有り難くもなんともない。ただ純粋に迷惑だ。

193 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/12(日) 06:24:25 ID:NUNCIp6I0

ミセ#゚ー゚)リ「何のつもりなの!?」

 大声で独り言をぶちかまし、家に入って大きいビニール袋を探す。
 詰め込まれたアレを袋に移して、黒男に渡す為だ。

 スーパーでティッシュを買ってきた時の袋があるが、これでは入りきらない。

 急いでドアを開け、ビニール袋をまとめてある台所に入ると、何かが砕ける音が響いた。


 見ると、母が巨大な金槌で氷塊を粉微塵に叩き割っている。

ミセ;゚ー゚)リ「何やってるの!?」

J( 'ー`)し「かき氷を作ろうと思って。小さく砕けば良いのよね?」

ミセ;゚ー゚)リ「かき氷機じゃないとダメだって! 飛び散ったのを盛りつけるの!?」

J( 'ー`)し「ごめんね。カーチャン役立たずでごめんね」

194 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/12(日) 06:25:51 ID:NUNCIp6I0

 片手で金槌を担ぎながらそんな事を言われても、寒気しかしない。
 明らかに本編クリア後ダンジョン最強ボス並の威圧感を放っている。

 あの男がゴミのようだ。


ミセ;゚ー゚)リ「おっきいビニール袋を探してるんだけど、どこだったっけ」

J( 'ー`)9m「そこの戸棚の中に入ってるよ」

 母が指差した戸棚を開け、大きなビニール袋を一枚取り出すと、再び強烈な破砕音。
 このまま焼き菓子を割るように地球さえ粉々にしてしまうのではないか、とすら感じてしまう。

ミセ;゚ー゚)リ「かき氷機じゃないとダメだって、さっき言ったでしょ!」

J( 'ー`)し「ごめんね。買いに行くのが面倒でごめんね」

ミセ;゚ー゚)リ「台所壊さないでね! 袋ありがと!」

195 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/12(日) 06:26:57 ID:NUNCIp6I0

 こんな事に時間はかけたくない、あの男が立ち去っている可能性もあるのだ。


 母の大雑把な性格を矯正するにはどうすればいいのか、
 ない頭を雑巾を絞るように絞って絞って絞りながら、道を駆け抜ける。

 体感五分ほどで大通りには着いた。
 あの人間もどきはまだ突っ立っている。炎天下の中、ご苦労な事だ。

 月の裏まで飛んで行ってしまえ。


ミセ#゚ー゚)リ「ちょっとどういうつもり!」

 ポケットティッシュが一杯に詰め込まれた袋を突き付け、腹の底から叫ぶ。

196 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/12(日) 06:27:56 ID:NUNCIp6I0

( ´_ゝ`)「アレですか。いや、受け取られたので。いるのかと思いまして」

ミセ#゚д゚)リ「やっぱりアンタか! ストーカー!?」

( ´_ゝ`)「違いますよ。しがないティッシュ配りです。今はまだLv.3ですが」

 涼しい顔をして紳士的な返答をする男に、怒りが更に燃え上がる。

ミセ#゚д゚)リ「とにかくもうティッシュはいらないから! さっさとオオスズメバチの大群に突っ込んできなさいよ!」

( ´_ゝ`)「分かりました。いらないんですね」

ミセ#゚д゚)リ「えーえー い り ま せ ん よ ! !  さようなら!」

( ´_ゝ`)「ではまた」

ミセ#゚д゚)リ「次は無いから! もう受け取らないから!」

( ´_ゝ`)「はい。さようなら」

 憤怒が体中を猛烈な勢いで駆け巡ったが、なんとか抑えて帰路につく。
 早くシャワーを浴びて汗を流さなければ。

197 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/12(日) 06:28:54 ID:NUNCIp6I0

ミセ*゚ー゚)リ「!」

 扉の前、今度はポストの中には何も入っていなかった。一安心だ。

 もしあの時と同じようにティッシュが入っていれば、慰謝料を命で払ってもらう所だった。
 高くつく慰謝料を。

 そして、食に全く困らない生活を送っていただろう。


ミセ*>ー<)リ「へくっ!」

 突然のくしゃみ。
 夏風邪でも引いたかと不安になりながら、買ったばかりのティッシュに手を伸ばす。


ミセ*゚ー゚)リ「あ? れ?」

198 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/12(日) 06:29:42 ID:NUNCIp6I0

 無い。無い。ティッシュが無い。
 まさか。

 まさか。



ミセ;゚ー゚)リ「いや、いらないとはいったけどもっ!」


 部屋中のどこを探してもティッシュが見当たらない。
 トイレットペーパーだけは残されていた。



ミセ#゚ー゚)リ「あーもーっ!!」

 再び湧き上がる怒りに身を任せ、大通りへ急ぐ。


 しかし、もう男はいなかった。
 血眼になって二時間探し続けても、見つからない。

199 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/12(日) 06:30:28 ID:NUNCIp6I0


ミセ;-ー-)リ「はー……」

 もう無理だ、と呟きながら、バス停のベンチに座り込む。
 すると。


「カァー! カァー!」

ミセ;゚ー゚)リ「うるさいっ!」

 ベンチでぐったりとする私をからかうように、カラスが鳴き声を上げて目の前を飛び去っていった。

 この暑い季節も真っ黒な翼で飛ばなければならないとは、なんともご苦労な事だ。

200 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/12(日) 06:31:40 ID:NUNCIp6I0
  (
   )
  i  フッ
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