( ^ω^)百物語のようです2012 in創作板( ω  )

254 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/12(日) 23:39:07 ID:TOJUEuzs0

  .,、
 (i,)
  |_|



( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` )

255 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/12(日) 23:41:21 ID:TOJUEuzs0



ざば ざば ざば



( ´_ゝ`)「妹者?おーい、妹者ー」

( ´_ゝ`)「どこ行ったんだ。妹者、妹者、妹者やーい」

( ´_ゝ`)「兄者が迎えに来たぞー。
      もう帰ろう。寒いし」

( ´_ゝ`)「早く帰らないと母者に制裁喰らうぞ。主に俺が」


( ´_ゝ`)「……妹者」



ざば ざば ざば


.

257 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/12(日) 23:42:24 ID:TOJUEuzs0
( ´_ゝ`)「……かくれんぼしてるのか?
      ……あー、もー降参だよ。俺の負け」


( ´_ゝ`)「だからほら、早く」



ざばっ ざばっ ばしゃ 

ざぶん ばしゃん



( ´_ゝ`)「出てきて―――」

(´<_`;)「兄者駄目だ!!危ない!!」

261 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/12(日) 23:43:34 ID:TOJUEuzs0
必死に延ばした手で、兄者の腕を掴む。


―――冷たい。
     氷みたいだ。


俺が見つけるまで、こうしてずっと水に浸かっていたのだろうから当たり前だ。


兄者は既に、川の中腹、大人の男でも腰まで水に浸かる程の深い場所に立っていた。


頭の先までひどく濡らして、驚きに見開いた目でぼんやりと俺を見る。

濡れそぼった髪が青白い顔に張りついて
その先端から滴る雫が、ぽたぽたと水面に波紋を作っていた。

その兄者を追って此処まで必死に水を掻き分けて来た俺も、当然同じようにずぶ濡れだ。

262 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/12(日) 23:44:20 ID:TOJUEuzs0
だが、そんな事を気にしている余裕なんて無い。

濡れて滑りやすくなっている兄者の右腕を放してしまわないよう、しっかりと掴んだまま
泥色に濁った水の抵抗をぐいぐい押しのけて、我武者羅に元来た道を戻ろうとする。


(´<_`;)「くっ……!」


足が重い。水が重い。後ろで、咎めるように兄者が喚く。

(;´_ゝ`)「痛い!何するんだ弟者!」

(´<_`;)「戻るんだよ、早く!暴れるな!」

唯でさえ思うように足が進まないのに、兄者がその場から動こうとしてくれない。

この不安定な状況、こんな事をしていては気を抜いた瞬間に足を滑らせ2人とも転倒だ。
水に足を取られれば、今なら簡単に流れに浚われてしまうだろう。

今立っている地点で既にかなり深いのだ。もし溺れてしまったら最悪助からない。


昨夜降った雨で濁った川は、普段より若干水嵩と勢いを増して
微力ながら確実に、俺と兄者を押し流そうと飛沫をあげてぶつかってくる。

263 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/12(日) 23:45:13 ID:TOJUEuzs0
万一流されてしまった場合を覚悟する。
俺は泳ぎは得意な方だけど………そういえば、兄者は泳げたっけ?

(;´_ゝ`)「どうしたんだよ弟者、そんな血相変えて……。
      ちょっと落ち着け。な」

駄目だ、どっちみち今のこいつじゃ当てにならない。


(´<_`;)「馬鹿兄者!どうかしてるぞ、こんな時に川なんか入りやがって!!」

水音に負けないよう精一杯声を張り上げた。


こちらが不安定な足場の上で、流されないよう必死に踏ん張っているというのに
間の抜けた顔をして、未だその場から動こうとしない兄者。

畜生、まるで逆に俺が馬鹿な事してるみたいじゃないか。
段々腹が立ってきた。

無事岸へ連れ戻したら母者より先に拳の一発でも喰らわせてやる。それで目も覚めるだろう。

264 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/12(日) 23:46:11 ID:TOJUEuzs0
それからもう二度と、二度と兄者がこんな馬鹿な真似しないよう
母者と父者を説得してこの町を出る。引っ越すんだ。

この川中での馬鹿げた悶着もこれが一度や二度では無い。
もうこんな目に遭うのは断じてごめんだ。


とにかく、一刻も早くこの川から離れないと。

この川から兄者を離さないと。

今すぐにでも早く。早く。早くしないと本当に―――


( ´_ゝ`)「……だって」


濁流の音に掻き消されてしまいそうな、微かな呟き。

どれ程の時間川にいたのか分からないが、すっかり血色を失った唇を震わせて
水音に混じって届いたか細い声が、俺の思考を中断させた。

265 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/12(日) 23:46:54 ID:TOJUEuzs0


( ´_ゝ`)「だって、妹者が……
      妹者が見つからないんだよ」

( ´_ゝ`)「ずっと探してるんだけど、どこにも」



髪先からぽたぽたと水を滴らせ、先月よりやつれて痩せこけた兄者は

帰りの遅い妹を心配して 迎えに来たのに見つからない。


そんな、途方に暮れた兄の顔をして言った。

266 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/12(日) 23:48:16 ID:TOJUEuzs0


「なぁ、弟者……。
兄者、大丈夫なのか?」


「一昨日もまた、美布川にいるのモナーが見たって……。
川に入ろうとしてたから慌てて止めたけど、その時も様子が変だったって聞いたぜ」


「僕もこの前話しかけたんだけど、心此処にあらずって感じだったお。
なんだか前より痩せたように見えたし、顔色も悪かったし……」


「あのさ……。こんな事言ったら、気ぃ悪くするかもしれないけどさ。
その……一度、病院とかに連れてった方がいいんじゃないのか?」


「……僕もそれがいいと思うお。
なんか……おかしいお、兄者」



「先月に……」





「妹者ちゃんが美布川で溺れて、亡くなってから―――」

267 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/12(日) 23:49:21 ID:TOJUEuzs0

(´<_`;)「……帰るぞ、兄者」

( ´_ゝ`)「なんで?妹者がまだ見つからないのに」

(´<_`;)「もう探さなくていい。俺と一緒に帰るんだ」

( ´_ゝ`)「先に帰っててくれよ。俺はまだ―――」

(´<_`;)「駄目だ!!」


もう腕が外れてしまっても構わない、そんな勢いで兄の腕を引く。

元々、俺の方が力が強い筈なんだ。
それに、以前よりずっと細くなってしまった腕なのに。

……ここまで頑なに拒む力は、どこにあるんだろう。


(´<_`;)「いい加減にしろ。早くこっちに来いってば」

(;´_ゝ`)「……嫌だ」

不信感を顔に出して、俺から離れようとする。

駄目だ、これ以上行けば本当に足のつかない深みへ嵌ってしまう。
掴んだままの手に、ぐっと力を込めた。

268 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/12(日) 23:50:12 ID:TOJUEuzs0
(;´_ゝ`)「は、はなせ。放せよ弟者、放せ!」

兄者が身をよじる。跳ねた飛沫がばしゃばしゃと顔にかかる。頭が痛くなってきた……

(´<_`;)「五月蝿い。いいから来い兄者。
      もう妹者は探さなくていいんだよ」


頼むから


(;´_ゝ`)「何言ってるんだ、暗くなる前に探さないと!
      妹者はまだ小さいんだから、何かあったら大変だろ!!」


頼むから もうやめてくれよ。
もういいんだよ。


(;´_ゝ`)「悪い奴に捕まったり!迷子になっちゃったり!車に、轢かれたり、とか……!
      もしかしたら、もしかしたら、川に―――」


泣きそうな顔で、狼狽する兄の姿が痛々しくて。
胸がぎりぎり痛んで、とてもこれ以上見ていられなくて。

なるべく、兄者に刺激を与えないよう
そして、俺自身の感情が爆発してしまわないよう、震える声を抑える。

269 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/12(日) 23:51:06 ID:TOJUEuzs0
(´<_`;)「いいから……。後で、ちゃんと、話すから。
      大丈夫だから、早く来い。……妹者のこと、ちゃんと話すからさ」

(;´_ゝ`)「嫌だ!!」


叫んで、俺の手を振り払おうとする。
放さない。絶対放さないぞ。放してたまるか。


(;´_ゝ`)「弟者も嘘吐くのか?みんなみたいに嘘吐くのか!!」


(´<_`;)「……」



(  _ゝ)「……」


(  _ゝ)「妹者が………川で、溺れて、死んだ。と か………言うつもりなんだろ」


(  _ゝ)「母者も父者も姉者もモナーもブーンもドクオも。……弟者も。
      みんな、みんな嘘吐きだ。みんなして、ひどい嘘、つきやがって……」

270 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/12(日) 23:52:14 ID:TOJUEuzs0
(´<_`;)「……兄者」


(  _ゝ)「妹者を探さなきゃ」

(  _ゝ)「妹者を1人ぼっちになんてできないだろ。まだあんなに小さいのに」

(  _ゝ)「悪いことが何も起こらないように、守ってあげなきゃいけないんだ」


(  _ゝ)「妹者はまだあんなに、あんなに小さいんだぞ。
     ……だから」




守ってあげなきゃ いけなか った  のに 。





( <_ ;)「……っ!」


―――もう駄目だった。

271 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/12(日) 23:53:15 ID:TOJUEuzs0
(;<_; )「……っもうやめてくれよ兄者!妹者はもう……もういないんだよ!!
     探したって何処にもいないんだよ!!!」

( ´_ゝ`)「此処にいるよ」

(;<_; )「妹者は死んだんだ、溺れちゃったんだよ!
     でも兄者のせいじゃない!!兄者が悪いんじゃない!!」

(;<_; )「だから正気に返ってくれよ、兄者!!」

( ´_ゝ`)「……泣くなよ弟者、妹者を見つけたらすぐ帰るからさぁ。
      1人で帰れるだろ、な?母者には遅くなるって言っといてくれ」

( ´_ゝ`)「だから放してくれよ。痛いよ」

(;<_; )「嫌だ!!」

(;´_ゝ`)「じゃあ弟者も探すの手伝ってくれよ……」

(;<_; )「うるせぇ!!妹者はいないっつってんだろこの分からずや!!」



( ´_ゝ`)「……あ」

272 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/12(日) 23:54:05 ID:TOJUEuzs0
フと言葉を切って、兄者が視線を降ろした。
鈍く濁って、揺れる水面へと。正確には、そのさらに下に。

(´<_` )「……え」

視線を追った先。

水中、兄者の足元に、黒く揺らめく”何か”が広がっていた。
先程までは確かに存在し無かった筈の、水底から広がる黒い靄。

……一体何だ?
目を凝らして、よく見る。


水草?いや………

273 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/12(日) 23:54:50 ID:TOJUEuzs0






                   人の、髪の毛だった。






.

274 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/12(日) 23:55:47 ID:TOJUEuzs0
黒く、長く、不気味に蠢く髪が、兄者の両足に絡みついている。


    、ず

       ぞ  
          ぞ  ぞ 

               ぞ 
                  ぞ 


兄者の下腿を伝い、生き物のように腰まで這い上ってくる髪。
既に、水中に浸かっている彼の半身は黒く染まっていた。


そして 俺は見た。
無数に広がる大量の髪の毛、不気味に澱んだ川底。
黒く蠢くその中心で。




l从 ∀ ノ!リ人




真っ白な女の子の顔が笑っていた。

275 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/12(日) 23:57:02 ID:TOJUEuzs0
(゚<_゚;)「……ッ!!」

( ´_ゝ`)「妹者」

兄者が、“それ”に向けて手を伸ばした。

あっという間に無数の黒い髪がぞわぞわ伸びてきて、絡みつき、覆いつくす。

途端、凄い力で水中へと引き摺り込まれる左腕。
飛沫をあげ、荒れる水面に上体が沈んだ。

(゚<_゚;)「あ、うあああああぁぁぁっ!!!」

必死に兄者の腕を引く。
半狂乱になりながら、水の中の”それ”に向かって叫んだ。


(゚<_゚;)「やめろ、やめてくれ妹者!!兄者を連れてっちゃ駄目だ!!!」


だが、物凄い力で兄者の体を水中へと引き摺り込む毛髪は微塵も力を緩めず
こちらも死に物狂いで踏み堪えるが、どうしてもそれ以上体を引き戻す事が出来ない。

既に口まで水に浸かった状態の兄者からは、何の力も感じられず。
双方向からの牽引に抵抗を示さぬまま、虚ろなその瞳に水面を映し、沈んでいく。

―――次の瞬間、不安定な川底に足を取られ、ずるり、と大きく体勢を崩した。

その勢いで手が滑り、踏み堪える間も無く一気に前方へと持っていかれる。

276 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/12(日) 23:58:04 ID:TOJUEuzs0


そしてついに、今まで必死に掴んでいた腕を―――――放してしまった。



  ど 
   ぶ
  ん



兄者が、飲み込まれる。
真っ黒な水の中、沈む間際に見たその顔は―――



(゚<_゚;)「ああああぁあぁああぁぁっ!!!
     兄者!!兄者っ!!」

何か考える間も無く、今やどす黒く染まった水中に手を突っ込む。
絡みつく大量の髪と水草の塊を闇雲に掻き分け、兄者を



(;^ω^)「弟者!駄目だお、危ないお!!」

277 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/12(日) 23:59:07 ID:TOJUEuzs0
顔まで水に浸かったところで、無理矢理後方に引き上げられた。

そのまま見えない誰かに羽交い絞めされる。咄嗟に、振り払おうと力の限り暴れた。


(゚<_゚;)「や、やめろ放せ!!兄者が、兄者が連れてかれた!!早く助けないと!!」

(;^ω^)「暴れちゃ駄目だお、早く戻るお!!水が増えてきてるお、早く!!」

(゚<_゚;)「放せブーン!!兄者を助けるんだ!!!」

(;^ω^)「落ち着けお弟者、しっかりするんだお!行っちゃ駄目だお!!」


死に物狂いで抵抗するが、体格の良いブーンにがっちり抑えこまれ
いくら喚いても殴ってもびくともしない。抵抗敵わず強引に岸へと連れ戻された。


遠くに見える水中の黒い靄は、その場にゆらゆらと留まり
それ以上追っては来なかった。



あの中に兄者がいるのに。

278 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/13(月) 00:00:17 ID:RHz8VDCw0
(゚<_゚;)「……っブーン、放してくれ。聞こえないのか?兄者が溺れたままなんだよ!!」

ぜぇぜぇと喘ぐように息をし、尚ブーンの手から逃れようともがく。

同じように肩で息をしながらも、俺の腕を掴んだまま力を緩めないブーンが
幾分か呼吸を落ち着かせた後、静かに口を開いた。

(;^ω^)「……弟者、よく聞くお」

(゚<_゚;)「それどころじゃない!!兄者が、兄者が―――」

(;^ω^)「いいから聞くんだお!!」

怒鳴り、無理矢理俺の顔を正面に向けさせる。

あまりの剣幕に、一瞬暴れるのを止めた俺の目を真っ直ぐに覗き込んで
ブーンが言った。


(;^ω^)「……よく聞くんだお。いいかお?




      ―――――兄者は一週間前に死んだお。この川で死んだ!」





………え?

279 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/13(月) 00:01:18 ID:RHz8VDCw0
(;^ω^)「……一ヶ月前に妹者ちゃんが亡くなってから、
      兄者が美布川にいるのを何度も見かけるようになったお」


(;^ω^)「最初は橋の上から眺めているだけだったのに、そのうち川に入ろうとするようになって。
      僕もドクオも、何度も止めさせようとしたんだけど……」


(;^ω^)「“妹者を探す”って言って聞かないんだお。
      弟者が何度連れ帰っても、何度言い聞かせても駄目だった」


(;^ω^)「そして、ついに弟者の家は、兄者の為に違う町へ行くことになったお。
      急いで準備をして、やっと引越し先が決まった先週末。
      ……今日みたいに、前の日の雨で川が荒れていた日だったお」



(;^ω^)「……誰も、気がつかなかったんだお。兄者がいなくなっていた事に」





急いで川へ行ったけど、もう遅かった……。




(゚<_゚;)「……あ」

280 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/13(月) 00:02:05 ID:RHz8VDCw0


一体どれ程の時間水に浮かんでいたのか、氷のように冷たくなった手。


血色を失い真っ青になった顔に、濡れそぼった髪が張りついて
その先端から滴る雫が、ぽたぽたと地面に染みを作っていた。


……ああ、そういえば。

父者と一緒に、重くなった体を担ぎ、やっとの思いで岸へと引き上げた時
泣いて縋った冷たいその体には、誰かの黒く、長い髪が
足に、首に、左腕に。何本も絡まっていたっけ。


そして―――――

281 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/13(月) 00:02:59 ID:RHz8VDCw0
(;^ω^)「……思い出したかお?」


( <_ ;)「……」


紫色に変色した唇を、僅かに綻ばせて。


(;<_; )「……ああ……。
     ……そうだった、な……」




やつれ、痩せこけたその顔は―――



        ―――やっと、心の底から安堵したかのような、優しい笑みを浮かべていた。

282 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/13(月) 00:03:47 ID:RHz8VDCw0


あれから、俺達家族は当初の予定通り
生々しい傷の残るあの町を離れ、遠方へと引っ越した。


あの時俺を命がけで救ってくれたブーンとは、今でも良い友達だ。
毎年、妹者と兄者の命日には欠かさずあの町へ帰郷し、供に墓と川へ花を添えている。

そうして、変わらず流れ続けるあの川を眺めては、あの日の事を思い出し、考えるのだった。


あの出来事は全て、錯乱状態の俺の脳が生み出した幻に過ぎなかったのだろうか?

……常識的に考えれば、確かにそうだ。

俺が1人で、既に亡き兄の幻影を追って川へ入り、溺れそうになったというだけのこと。
そう納得するのが自然だろう。

283 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/13(月) 00:04:36 ID:RHz8VDCw0
……だけど。

氷のように冷たい兄者の腕を
決して放すまいと掴み続けたあの日の感覚が、未だ在り在りとこの手に残っている。
水の中、絡みつく無数の毛髪を我武者羅に掻き分けた、あのぞっとするような感触も。


あれから何年も経った今も尚、あの出来事が幻だったとは、俺はどうしても思えない。

だから時々、不意にどうしようもなくやり切れない気持ちに襲われる時があるのだ。



……兄者は妹者を見つけることが出来たんだよな。
薄っすらとではあるが、あの時確かに笑っていたのだから。

284 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/13(月) 00:05:31 ID:RHz8VDCw0
……笑っていた、筈なのに。





            ………妹者、妹者やーい………





なのに何故、川へ命を沈めたあの後もなお、彼は妹者を探していたのだろう。



川中を彷徨いながら妹の名を呼ぶ、うら悲しげな声が。
青ざめ、途方に暮れた兄の痛切な顔が。頭と心に残り、いつまで経っても忘れる事が出来ない。

285 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/13(月) 00:06:15 ID:RHz8VDCw0



もしかしたらあの川で、兄者は今でも妹者を探しているのかもしれない。



幼い妹を、守ってあげれなかったこと。
一人ぼっちにさせてしまったことを、いつまでも、いつまでも、背負い、嘆き、苦しんで


決して岸へとあがる事の出来ぬ、自責の大河を彷徨いながら。




ずっと……


.

286 名前:( ´_ゝ`)あの子が見つからないようです(´<_` ) 投稿日:2012/08/13(月) 00:07:07 ID:RHz8VDCw0



  (
   )
  i  フッ
  |_|


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