- 326 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/13(月) 01:09:47 ID:qse/IYaw0
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- 327 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/13(月) 01:10:57 ID:qse/IYaw0
(‘_L’)とてるてる坊主のようです
梅雨はもう明けたというのに、ここ五日間雨が降り頻っている。
じっとりと湿った空気はこれでもかというほど体に纏わりつき、
雨粒と共に街を灰色に塗り潰していた。
歩く度に飛沫が舞い、靴の中にまで染み込んでくる。
靴下が濡れるのは好ましくないが、雨の日の散歩は嫌いではない。
晴れた日と違って人は若干少ないし、もともと散歩は色々な発見がある。
今日も、何か見つけた。
(‘_L’)「おや」
- 328 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/13(月) 01:12:24 ID:qse/IYaw0
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てるてる坊主が、路地裏の金網にぶら下がっていた。
体と頭はティッシュペーパー、そして首に巻き付けられているのは紐だ。
何の変哲もない、普通のてるてる坊主。
しかし、金網に括り付けられている事だけが気に掛かる。
普通ならば家の窓辺にでもぶら下がっている筈だし、そういう光景は子供の頃に幾度も目にしてきた。
こんな所にあるのは何故か。
もしかしたらこの辺りはホームレスがうろついていて、
最近の雨にうんざりした為に括り付けたのだろうか。
(‘_L’)(まあどうでもいい事だ)
- 329 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/13(月) 01:13:58 ID:qse/IYaw0
理由がなくともぶら下がっている事はあるし、ぶら下がっている者もいる。
そんな世の中だ。この程度は不思議でも何でもない。
いつもと同じように、街路を練り歩いて自宅へ戻る。
アパートの扉を開け、部屋に入りテレビを付ける。
ニュース番組がやっていた。
近くにある、もう一つのアパートの一室で男が首吊り自殺をしたらしい。
同じ町でとは、珍しい事もあるものだ。
いや、これが普通なのだろう。
(‘_L’)(これもどうでもいいな……次のニュースは何だ)
こんな事をいちいち気にしても仕方がない、どうせ何ヶ月か経てば忘れている事だ。
ふと時計を見ると、もう五時だった。
汗ばむシャツの感触に少しばかり不快さを感じ、冷房を付け、それから夕食の準備に取り掛かった。
- 330 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/13(月) 01:14:47 ID:qse/IYaw0
* * *
また一つ夜が過ぎ、世界は明るさを取り戻す。
が、空はぐずついたままで、今にも雨が降りそうな様相を呈している。
朝食を終え、傘を持って散歩に出かける。
目的地はあの路地裏だ。
昨日はどうでもいいと思ったが、やはり気になってしまう。
誰かが括り付けている所を目撃できたら儲けものだと思いつつ、はやる足を進めていく。
(‘_L’)「ん」
- 331 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/13(月) 01:16:43 ID:qse/IYaw0
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昨日と同じ薄暗い路地裏の金網。
一つ違うのは、てるてる坊主が二つになっている事。
(‘_L’)(また誰かが?)
わざわざ二つ付けなくても良いだろうに、余程雨が止んで欲しかったのだろうか。
(‘_L’)(今は……)
今は止んでいるが、いつ降り出すか分からない。
また誰かがてるてる坊主を持ってくる可能性もあるだろう。
そう思いながら夕方まで街をうろつき、時々金網を見に行ったが、主は現れなかった。
しかし、金網にあるてるてる坊主は三つに増えている。
見逃したか。
- 332 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/13(月) 01:18:33 ID:qse/IYaw0
(‘_L’)(また今度にしよう)
今日は朝から街を歩いている上、夏の蒸し暑さもあって疲れに疲れている。
夕食の用意をするのも面倒だ。
屋台のラーメンで済ませ、夜風を浴びながらアパートへ帰った。
* * *
次の日の夜明け前、また雨が降り出していた。
一昨日までとは違ってぱらぱらと小さな雨粒が降っているだけ。
まだ明け切らない今、この時間帯に行けば、誰かが居る所を見られるかも知れない。
確信は無い。漠然とした予感だ。
生ぬるい小雨を体に受け、ぽつぽつと人が歩く道を歩き抜ける。
到着。
- 333 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/13(月) 01:19:50 ID:qse/IYaw0
流石に路地裏は暗闇に満ちていて、肉眼では何も見えなかった。
携帯電話のライトを付け、見回す。
(‘_L’)「!!」
そこには昨日と違い、いくつものてるてる坊主が、金網のいたる所にぶら下がっていた。
その数、十一個。
(‘_L’)(一体誰が何の為に?)
疑問は膨らんでいくばかりで、一向に萎む気配はない。
ある一つの仮説が思い浮かんだが、まさかと思い、打ち消す。
念の為、もう一度てるてる坊主をよく調べても、以前と変わっている所はどこにもなかった。
- 334 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/13(月) 01:20:59 ID:qse/IYaw0
(‘_L’)(分からないな……)
雨はまだ止まない。少しくらいは晴れ間が見えても良いだろうに。
アパートの階段を上り、郵便受けに挟まれている新聞を広げて眺める。
(‘_L’)「――」
そこで、先程打ち消した仮説が、もう一度輪郭を浮かび上がらせた。
(‘_L’)(この街で首つりの一家心中が、同じ日に二件。合わせて八人が死亡……)
日に日に増えていくてるてる坊主。
減少の兆しも見えない自殺者の数。
(‘_L’)(あれはてるてる坊主が括られたからか? それとも自殺をしたからか?)
(‘_L’)「どっちだ……?」
- 335 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/13(月) 01:22:23 ID:qse/IYaw0
* * *
あれから十日間。
空は完全に晴れているのだが、未だてるてる坊主は増え続けている。
(‘_L’)「……」
出来るだけ観察は続けてみた。しかし、括り付けている誰かを見た事は一度もない。
(‘_L’)「何なんだ……?」
呟きは、蝉の声に紛れて消えていく。
数あるてるてる坊主の中に、何故か、自分の顔に似たものを見つけた気がしたが、
気のせいだと思う事にした。
気のせいであって欲しいと願いながら、その場を あとにした。
- 336 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/13(月) 01:23:17 ID:qse/IYaw0
(
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i フッ
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