( ^ω^)百物語のようです2012 in創作板( ω  )

377 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/13(月) 02:27:57 ID:qse/IYaw0

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378 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/13(月) 02:29:04 ID:qse/IYaw0

     (*゚ー゚) しぃのようです




 夜明け時の涼しさもかき消え、日差しが強くなり始めた朝の九時。
 朝食を終えた後に洗い物をしていると、職場の先輩から着信があった。


('、`*川『しぃちゃん、あんた独り身だし寂しいでしょ? 近くの○オンで一緒に買い物でもしない?』

(*゚ー゚)「伊藤さんも寂しかったんですか? じゃあ、もう少し経ったら行きます」

('、`*川『はーいりょうかーい。あんた覚えときなさいよ……』

 いつもの軽い調子で返され、会話を終える。

 先輩と一緒に買い物か。丁度、洗い物を終えた後にスーパーに行くつもりだった。
 その後の予定は変更しないといけなくなったけど、○オンで涼むのも悪くはないだろう。


(*゚ー゚)「さてと」

380 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/13(月) 02:30:09 ID:qse/IYaw0

 ささっと食器を片付け、お気に入りの白い鞄を用意し、着替えを済ませる。

 準備完了、整った。
 電灯も消し、戸締りもして、アパートのドアを開けて、


「あれ」

 飛び出した先は、全く違う場所だった。

381 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/13(月) 02:31:46 ID:qse/IYaw0
「え」

 頭が真っ白になりそうなのを抑えて、周囲の状況を確認する。

 白い、四階建てアパートの一階の部屋から私は出てきた。
 目の前の駐車場を挟んだ向こう側にはもう一つ同じアパートがある。
 その筈なのに。


 私が今居るのは、茶色い二階建てアパートの階段。
 着ているのはスーツで、手に持っているのは黒い鞄で、眼下には道路があって。

 全く見覚えのない場所に、私はいた。


 何故? どうして?
 慌てて携帯電話を確かめる。

 待ち受け画面は好きなアーティストのCDジャケット画像だったのに、
 今は気味の悪い幾何学模様。

 アドレス帳を開く。

382 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/13(月) 02:32:41 ID:qse/IYaw0

「嘘……」

 全て、知らない番号が登録されていた。
 名前も、メールアドレスも、電話番号も、全て。

 勿論、伊藤さんの番号もない。


「えーと……」

 伊藤さんの番号を、うろ覚えで入力する。
 090-4**1-7**5……。

 しばらくして繋がった。


「もしもし、先輩ですか? 信じてもらえないかと思いますが、今」

('、`*川『……誰ですか?』

「えっ」

383 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/13(月) 02:33:59 ID:qse/IYaw0

 言葉に詰まった。

 さっきまで、軽い調子で話し合っていたじゃないですか。ふざけないでくださいよ。

 返答が頭に浮かんでも、声を出す事が出来ない。


「しぃですよ」

 苦しくなる胸を押さえながら、声を絞り出す。
 名前を言えば分かるだろう。どうか分かってください。


 そう願っていたのに。



('、`*川『はい? しぃという人なら私の近くにいますが。悪戯ならやめてください』



 返ってきたのは、受け入れられない事実。

 おかしい。そんな筈がない。
 私はアパートから出て、今ここにいて、あたふたしていて、それで、――。

384 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/13(月) 02:35:41 ID:qse/IYaw0

('、`*川『さようなら』


 やけに遠く聞こえる声に、返答する気力もない。

 手から携帯電話が滑り落ち、階段を転がり落ちていく。
 それを追いかけもせずに、立ち尽くしたまま眺める。


 意味が分からない。どうなっているんだろう。

 放心状態で携帯電話を拾い上げ、プロフィールを確認すると、知らない名前が表示された。


 これからどうすればいいんだろう。私は誰なんだろう。

 私が私である証明は、どうやったらできるんだろう。


 暗いディスプレイに映った知らない顔を見て。
 私は、ただただ呆然とするしかなかった。

385 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/13(月) 02:37:22 ID:qse/IYaw0

  (
   )
  i  フッ
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