- 752 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/18(土) 23:39:56 ID:WPgJElKI0
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遺書のようです
- 753 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/18(土) 23:40:57 ID:WPgJElKI0
双子の兄が死んだ。
殺された。
オレが三日ほど家を空けた後、帰宅してみると死んでいた。
ピクリとも動かなかった。
目蓋も開いたままで、意思のない瞳がオレをじっと映していた。
オレと兄者は一緒に住んでいた。
両親が死んでから、兄弟と姉妹にわかれて住んでいた。
働いているのはオレと姉者。
妹者はまだ高校生だ。兄者はガチニートだった。
高校でのイジメからずっと引きこもりだ。
オレは違う高校に通っていたから、実際にどの程度のイジメだったのかは知らないけど。
双子の兄弟とはいえ、オレ達は特別仲が良いわけではない。普通の兄弟と同じだ。
一緒に住んでいて、たまに喧嘩をする。
でも、友人よりもずっと近い距離にいる。
腹の立つ部分もあれば、好きな部分もある。
ごく普通の兄弟。
オレが引きこもりの兄者と二人暮らしをしていると知ったとき、
友人達は兄弟仲がいいんだな。と、笑っていたが、それは違うと言いきった。
姉に任せるのも悪いと思っただけだ。
やはり、男兄弟は男が面倒を見るべきだろう。
- 754 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/18(土) 23:42:12 ID:WPgJElKI0
兄者は駄目な人間だった。
人と喋ることができない。
外に出ることができない。
家事もろくにできない。
ただ呼吸をして食事をするだけだ。
世の中には、兄者のような人間が他にもいるというのだから驚きだ。
そして、そんな人間を母親は愛していることもあるというのだから、さらに驚きだ。
断っておくが、オレは兄者のことが嫌いではなかった。
特別仲が良いわけではないだけだ。ごく普通の兄弟なのだから。
だから、オレから兄者を奪った奴をオレは許さない。
兄弟を持っている奴ならば、誰だって思うだろ?
オレが特別兄者のことを思っているわけではない。
血をわけた兄弟が殺されたのだから。
生まれたときから一緒にいて、同じ顔をした片割れが殺されたのだから。
絶対に許すことなんてできない。
兄者と同じところになんて送らない。
地獄に送ってやる。
- 755 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/18(土) 23:44:07 ID:WPgJElKI0
兄者は優しかった。
中学時代は友人も多かった。
授業ノートを見せてやった。
困っている友人がいたら必ず助けに行った。
短気なオレが暴力を振るっても許してくれた。
迷子がいたら根気強く母親を探してやった。
オレにはない優しさを、密かに尊敬していた。
だから兄者は、兄者を殺した奴をきっと許してしまっている。
そんなことは許されない。
ガチクズニートの命だって、そんなに軽いものではない。
決して許してはいけないのだ。
- 756 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/18(土) 23:46:03 ID:WPgJElKI0
オレは、兄者を殺した奴を、決して許さない。
- 757 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/18(土) 23:46:52 ID:WPgJElKI0
ちっちゃい兄者が死んだのじゃ。
自宅で首を吊って死んでしまったのじゃ。
だらりと力なくぶらさがっている体。
部屋にこもる異臭。
周りに置かれていたおっきい兄者の写真と骨壷。
大好きだったちっちゃい兄者。
いつも優しくて、妹者を優しく撫でてくれた手がもうないのじゃ。
もう骨だけになってしまったのじゃ。
離れ離れになってしまってからも、たまに顔を出してくれていたのじゃ。
妹者は顔を見れるだけで満足じゃった。
お土産も何もなくてごめんな。って、いつも謝ってくれていたけど、そんなのはどうでもよかったのじゃ。
ただ会ってさえくれればよかったのじゃ。
それだけで幸せだったのじゃ。
妹者はいつもちっちゃい兄者のために何かできれば。と、思っていたのじゃ。
頑張って勉強して、早く働きたいと思っていたのじゃ。
なのに、どうしてさよならしてしまうのじゃ。
- 758 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/18(土) 23:48:15 ID:WPgJElKI0
ちっちゃい兄者は立派じゃった。
学校の成績はいつもよくて、よく母者に褒められていたのじゃ。
お友達もたくさんいたのじゃ。
ちょっと短気なところがあったみたいじゃが、妹者は一度だって叩かれたことはないのじゃ。
妹者のお友達はみーんな、羨ましいと言っていたのじゃ。
あんなお兄さんがいていいね。って!
そうなのじゃ。自慢のお兄ちゃんなのじゃ。
可愛い服を見せたら必ず褒めてくれたのじゃ。
お化粧をしてみたら、まだ早いとちょっとだけお説教されたのじゃ。
彼女ができたときだって、妹者が嫌だと言えば別れてくれたのじゃ。
勉強を教えてと頼めば、必ず教えてくれたのじゃ。
妹者はちっちゃい兄者が大好きだったのじゃ。
だから、死んでしまってとても悲しいのじゃ。
世界が壊れてしまったようなのじゃ。
たくさん泣いたのじゃ。
悲しくて、悲しくて、絶望しかなかったのじゃ。
- 759 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/18(土) 23:50:09 ID:WPgJElKI0
あの日、ちっちゃい兄者の役に立ちたくて、ちっちゃい兄者のお家へ行ったのじゃ。
でも、ちっちゃい兄者は留守だったのじゃ。
合鍵で部屋に入ると、おっきい兄者が倒れていたのじゃ。
胸は軽く上下に動いていたのじゃ。
ちっちゃい兄者は立派で、優しくて、大好きなのじゃ。
そんなちっちゃい兄者は可哀想なのじゃ。
一人ならもっと自由なのに。
何もしない人間なんていなければもっと幸福になれたはずなのに。
妹者はちっちゃい兄者が大好きだから。
ちっちゃい兄者のためなら何でもできたのじゃ。
- 760 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/18(土) 23:50:52 ID:WPgJElKI0
それが、ちっちゃい兄者のためになると、思っていたのじゃ。
- 761 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/18(土) 23:52:12 ID:WPgJElKI0
小さな妹が死にました。
屋上から飛び降りて死にました。
ぐちゃぐちゃになっていました。
四肢は歪になっていました。
小さな妹は、妹者はとても明るい子でした。
双子の弟の方を少しばかり愛しすぎている節がありましたが、とてもいい子でした。
可愛らしい服を好み、背伸びをしてお化粧をするような子でした。
両親がいなくなってしまった我が家では、きっと大学には進学させられなかったでしょう。
それでもいいのだと笑ってくれるような子だったのです。
家族はみんな彼女が好きでした。私も妹者を愛していました。
無邪気で、真っ直ぐな子供だったのです。
私は妹者と二人で暮らしていました。
仕事でどれほど疲れても、妹者が出迎えてくれるだけで疲れなど消え去りました。
今でも仕事から帰ると、おかえり。と、声が聞こえるような気がするのです。
- 762 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/18(土) 23:54:11 ID:WPgJElKI0
可愛い妹者。
誰からも愛される星のもとに生まれた子。
綺麗な髪をしていた。
細めが多い家系の中でパッチリとした目を持っていた。
柔らかい唇を持っていた。
無意識なのでしょうね、あの双子の弟に恋をしていた。
家族愛と恋愛の違いに最期になるまで気づけなかった。
毎夜泣いているあなたを見ると、私の胸は締め付けられた。
寝言でちっちゃい兄者。と、弟者のことを呼ぶたび、私も泣きそうになった。
穢れのない可愛い妹者はどこへ行ったのでしょうか。
弟者は地獄へ行ったらしいから、あの子も地獄なのでしょうか。
妹者が地獄で辛い思いをしているなんて考えたくもない。
弟者、私の弟。どうして妹者を連れていってしまったの。
あなたは妹者のことを、これっぽっちも愛していなかったのに。
私の家族はみんないなくなってしまった。
神様、これは罰ですか?
- 764 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/18(土) 23:56:05 ID:WPgJElKI0
きっとそうなのですね。
これは罰なのですね。
男性と恋愛をしたことのある私が、ハッキリとした意思を持って妹を愛してしまったから。
妹者が弟者への愛情に気づく前にと、男女で別々の家に住むことをそれとなく誘導したから。
別の家に住んでいても、弟者は私達の家にやってきました。
妹者は嬉しそうでした。
彼女もまた、弟者の家へ行っていました。
悲しかったです。けれど、それでもあの子が笑うのならば。と、ずっと我慢していました。
でも、絶好の機会があったのです。
きっと、神様が下さったのだと、思っていました。
兄者が死んだのです。
弟者が殺したのです。
好きな人には暴力を振るう性質の男が、兄者を殺したのです。
いいえ。本当は、あの天使がしたことだと知っていました。
けれど、私は口を閉ざしました。
妹者は私が守らなくてはならないのですから。
なのに、弟者が死ぬことによって、妹者が本当の気持ちに気づくなんて。
私は思ってもみなかったのです。
- 765 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/18(土) 23:57:12 ID:WPgJElKI0
最期に一つだけお願いです。
兄者も、弟者も、妹者も、私も、
もう二度と兄弟として生まれないようにしてください。
これ以上ないほど歪んでしまった輪から抜け出させてください。
- 766 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/18(土) 23:57:53 ID:WPgJElKI0
(´・ω・`)「待ってよー。シャキン兄さん」
(`・ω・´)「む。早く来い」
ζ(゚ー゚*ζ「ショボン兄さんはいつもシャキン兄さんと一緒だね」
ξ゚听)ξ「そうね。とても仲が良いわね」
(´・ω・`)「そうかな? 普通じゃない?」
ζ(゚ー゚*ζ「うーん。でも、私もショボン兄さんとずっと一緒だから、きっと普通だよ」
(`・ω・´)「オレもいつもデレと一緒だぞ!」
ξ゚听)ξ「はいはい。みーんないつも一緒ね。
ほら、デレはせっかく綺麗なんだから、土をつけないの」
ζ(゚ー゚*ζ「ショボン兄さんも綺麗なデレの方がいい?」
(´・ω・`)「うん? そうだね」
ζ(゚ー゚*ζ「えへへへー。撫でてもらったー」
ξ゚听)ξ「……」
(`・ω・´)「オレもオレもー」
(´・ω・`) ポカッ
(;`・ω・´)「痛いぞ!」
川 ゚ -゚)「あの子達は仲がいいな」
('A`)「兄妹だからな」
- 767 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/18(土) 23:58:36 ID:WPgJElKI0
(` ω ´)
(´;ω;`)「ごめんなさい。ごめんなさい。シャキン兄さん」
ζ(;ー;*ζ「ショボン兄さん、どうして、どうして逝ってしまうの?」
ξ--)ξ「ああ、神様、最期に一つだけ――」
輪廻転生(りんねてんせい)
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i フッ
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