( ^ω^)百物語のようです2012 in創作板( ω  )

886 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/19(日) 02:25:08 ID:aniQS1xU0


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食物連鎖のようです

887 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/19(日) 02:26:18 ID:aniQS1xU0

うだるような暑さが続いている。
ただそれだけでは、俺の目の下のデカイ隈の説明にはならないだろう。
それが始まったのは、ちょうど一週間ほど前だ。


(;'A`)「あぢぃ……」


そんな事を呟きながら、西日差す中を歩いていた。
学校が密集した地域住まいの俺としては、学生が夏休みで居ないだけでもありがたかった。
ただ、それでも暑さは容赦なく襲い来る。
太陽に文句を垂れながら、バイト帰りの気怠さを感じていたんだ。

そんな中、通りにあるバス停の上に黒い影を見た。


ミ○傘○シ


カラスだ。

普通なら気にも留めなかっただろうが、俺はどうもその様子が気になったんだ。
バス停の上に留まって微動だにしないカラスの目が、ずっとこっちを見ている気がした。
夕日のように、紅い瞳だ。

だが、そんなカラスを見ても当時の俺は何の感情も浮かばなかった。
漆黒の体毛は太陽を吸収して暑そうだな、と。
取り留めないことを考えながら、その日は気にせずに帰路へ着いたんだ。

本格的に気付き始めたのは、次の日の朝さ。

888 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/19(日) 02:27:24 ID:aniQS1xU0

('A`)「……すげぇや。集会所かここは」


うっかり俺が呟くのも無理はないほどのカラスが、俺の住む安アパートの裏に集まっていたんだ。
普段は小さな子供の遊び場となっている空き地に、びっしりと。
出かける際にようやく気付いた俺だったが、それでもまだ、異変を感じ取れずにいたんだ。
バイトの事しか考えて無かったからな。


その日の帰り道も、暑かった。
前日と同じような気怠さの中、いつもの道を通って帰る。

そして見た。
バス停の上で微動だにしない、黒いカラスの姿を。


ミ○傘○シ


また居るのか、とか、実は剥製か何かじゃないか、とか。
とにかくそんな不思議な気持ちで眺めたよ。
でも、やっぱり、見てくる。
こっちの瞳を真っ直ぐに、何かを訴えかけるように。
或いは―――何かで貫き通すように。

夕日のように真っ赤な瞳、ってのも今となってはおかしいよな。
大体西日が逆光になって、カラスの目なんて見えないハズなんだ。
でも、見えた。

流石に君が悪くなって、逃げるように立ち去った。
意味不明の汗が流れて、気持ち悪い、気持ち悪い、なんて考えながらな。

889 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/19(日) 02:28:49 ID:aniQS1xU0

さらに次の日。

俺はかねてから約束していたカラオケに行った。
友人の内藤はいつも通りのニヤケ面で、何故か安心した記憶があるな。


( ^ω^)「朝が壊滅的に弱いドクオが起きてるとは、予想外だったお」

('A`)「うるせぇや、まんじゅう顔」


迎えに来た内藤の車に乗る瞬間、音がした。
どん、といった感じの、何かがぶつかる音だ。


(;^ω^)「な、何だお!?」


内藤が何事かと慌てて飛び出した。
俺もつられるように車の側面を見ると、そこには黒い羽根が散らばっていた。
間違いない、体当たりしてきたのはカラスである。
しかしながらどこにも本体は見当たらない。
逃げたか?なんて思っていたら、内藤が笑っていた。


( ^ω^)「止まってる車にぶつかっちゃうとは、カラスもアホだおー」


あぁ、そうだな、と。
俺は乾いた言葉しか返せなかった。

朝の目覚ましより先に聞いた、どん、という音。
フラッシュバックのように、ガラスにへばりついて死んだカラスの姿を思い出したからだ。

890 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/19(日) 02:30:41 ID:aniQS1xU0

内藤とカラオケに行った次の日。
この日の朝は、激しいノックの音から始まった。
まさかカラスがノックしているのか、と戦々恐々としながら、俺は玄関に出向く。
レンズ越しに映っているのは、どこかむすっとした顔の隣人だった。


('A`)「一体どうしました?」

(´・ω・`)「毒島さん。失礼ながら、あなたの家から異臭がしておりまして」

('A`)「異臭!?」


驚いた俺は、昨日の記憶を巻き戻すように辿っていった。
でも、思い当たるような節は無い。
強いて言うならばガラスに体当たりしてきたカラスぐらいだが、奴の死体は既に片づけたはず。

頬を伝う冷や汗を感じながら、恐る恐るベランダへと確認しに行った。
そこに、黒い影。
カラスだ。

しかも、黒いだけじゃない。
赤黒く、腐食が始まっているようだった。
姿を見たとたんに、鼻を刺激する腐臭が酷くなった。
何故、俺はこの環境の中で眠ることが出来たのだろう。


(´・ω・`)「とにかく、片づけておいてくださいね」


お隣さんの言葉に、俺は返事をすることが出来なかった。
死んだカラスの落ち窪んだ目からは、夕日のような光が見えたからだ。

891 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/19(日) 02:32:06 ID:aniQS1xU0

次の日は、雨模様だった。
これならば夕日を見なくて済むと、よく分からない考えで俺はバイトに励んだ。

その帰り道も相変わらず雨、しかも、豪雨と呼んで差支えの無いもの。
俺は安物の傘を手に、急いで帰った。
これでカラスの嫌がらせを考えないで帰れるな、と、雨に感謝しながら。

だが、途中で通りがかるバス停。
これの存在だけは俺は無視しきれなかったんだ。
興味本位―――いや、一種の期待を抱いていたのかもしれない。
ここにカラスが居なければ、今までの怪現象も止まるだろうと、淡い期待を。

あぁ、居たよ。

ずぶ濡れで、俺を待っていたかのように。
夕日のような瞳が俺を射抜いて、俺は心底身震いした。

この体の震えは雨のせいだ。
自分に言い聞かせながら、気づけば、傘が無くなっていた。
ただ我武者羅に走ったせいかもしれない。
でも、そんなことはどうでもよかった。


ミ○傘○シ


あの瞳から逃げ切れれば、それでよかったのだ。

892 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/19(日) 02:33:19 ID:aniQS1xU0

この日、俺は始めてバイトを休んだ。
連絡した時にひどく心配されたが、それほどに声が酷かったのだろう。

俺はその日、布団をかぶって眠り続けることにしたんだ。
どうしても離れない。
あのカラスが俺を小突くんだ。

その赤い目で、そこから発せられる視線で。

893 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/19(日) 02:34:51 ID:aniQS1xU0



俺を啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで
啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで
啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで
啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで
啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで
啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで
啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで啄んで―――

894 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/19(日) 02:36:33 ID:aniQS1xU0

眠りに落ちた俺が次に起きたのは、夜の八時ごろだった。
一日中寝ていた所為か、全身が鉄のように重く感じられた。
寝汗がびっしょりだ。
きっと、あの気味の悪い夢のせいであろう。

とてもじゃないが、これでは二度寝をすることはできそうにない。
腹の虫が騒ぎ立てる中、寝ぼけ眼を擦って立ち上がった。

寝起きには顔を洗えばすっきりすると、内藤が豪語していた。
今はそれにならって、寝汗に塗れた顔をさっぱりとさせることとしよう。


[ ミ○傘○シ ] (  )


洗面台に、俺が映った。

895 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/19(日) 02:37:34 ID:aniQS1xU0

そして、今日に至るってワケだ。

な、目の下に隈が出来た理由がわかっただろ?
悪い夢だったのさ、あんな日々は。

悪夢から目覚めた俺はすっきりしてる。
あぁ、今までの日々がまるでウソみたいに輝いて見えるよ。
じきにこの隈も取れるさ。

さて、俺はそろそろ行かなきゃな。
何処に行くのか、だと?

決まってるだろ。



エサを取りに、ちょっくらバス亭まで、さ。

896 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/19(日) 02:38:42 ID:aniQS1xU0



  (
   )
  i  フッ
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