- 1 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/19(日) 00:05:10 ID:zwfLnTZs0
.,、
(i,)
|_|
- 2 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:06:56 ID:zwfLnTZs0
- たまには、アルバム。見てみませんか?
( ´_ゝ`)アルバムの三人目、のようです(・∀・ )
.
- 3 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:07:44 ID:zwfLnTZs0
- 落ちている落ちている。
月が小さくなる。
落ちている。落ちている。
(´<_` )「おーい、起きろー兄者」
夢だった。
( ;´_ゝ`)「なんだ、夢か」
(´<_` )「えらく汗だらけじゃないか」
l从・∀・ノ!リ人「おっきい兄者はお寝坊さんなのじゃ!」
双子の弟と自分とは似ず、とても可愛い妹。
( う_ゝ-)「んー…朝飯は?」
(´<_` )「とっくのとうにできてら」
l从・∀・ノ!リ人「おいしいカレーなのじゃ!」
( ´_ゝ`)「昨日の晩飯の残りじゃあないか」
ははは、と笑いながら階段を降りる。
- 4 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:08:27 ID:zwfLnTZs0
( ´∀`)「おはようモナ、兄者君、弟者君、妹者ちゃん」
( ´_ゝ`)「おはようございます」
(´<_` )「おはようございます」
l从・∀・ノ!リ人「おはようなのじゃー!」
親戚のモナさんは実家から離れた学校に通う俺たちのために親代わりに俺たちの面倒を見てくれている。
- 5 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:13:57 ID:zwfLnTZs0
( ´∀`)「昨日の晩御飯のあまりだけど、一晩寝かせた分おいしいモナよ?」
美味しそうなカレーライス。
( ´~ゝ`)「モグモグ」
(´<_` )「早く食べて制服に着替えるぞ」
l从・∀・ノ!リ人「妹者はもう食べ終わったのじゃ!」
制服を着た妹者がクルリと回り、スカートを翻す。
- 6 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:14:57 ID:zwfLnTZs0
- ( ´∀`)「もうすぐで妹者ちゃんのスクールバスが来る時間モナね」
この家は金持ちだと思う。
馬鹿な俺を私立の高校に通わせてくれる。
私立といっても小中高大エスカレーター式タイプの私立だ。
ヘマをしない限りは同系列の大学への推薦は手に入るだろう。
夢が特に無い俺にはそれでいい。
妹者も同列の小学校。
小学校からのエスカレーター式。
小学校から制服の便利さを知れる幸せ者だ。
- 7 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:15:42 ID:zwfLnTZs0
- ( ´_ゝ`)「ご馳走様でした」
( ´∀`)「お粗末さまでした」
食事を終え、早いところ制服に着替える。
(´<_` )「早く、早く」
( ´_ゝ`)「わかってるって」
靴紐を高速で結びながら靴箱の上の写真を見る。
俺が事故のため入院した病院から退院した日の、家の前での記念撮影。
大っきな一軒家で俺の横で弟者も妹者もモナさんも笑ってる。
退院したての俺はなんだかぼんやりしていた。
- 8 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:17:36 ID:zwfLnTZs0
- ( ´_ゝ`)「フフ…」
(´<_` )「何を笑っている」
( ´_ゝ`)「…別に?」
(´<_` )「早く行くぞ」
写真の自分のアホ面を笑いながら俺は家を出た。
- 9 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:18:19 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
( ^ω^)「兄者の妹さんって本当に可愛いお!」
小、中、高、大一貫して使える馬鹿でかいグラウンドの横で俺は友達とお茶を飲んでいた。
l从・∀・ノ!リ人「おっきい兄者ー!」
⌒*リ´・-・リ「あれが妹者ちゃんのお兄さんなの?」
(*‘ω‘*)「似てないっぽねぇ」
グラウンドで遊ぶ妹者が手を振る。俺も振り返す。
- 10 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:19:01 ID:zwfLnTZs0
- ('A`)「ガキって正直だなあ、気にすんなよ」
( ´_ゝ`)「まあ、マジで俺に似てないけどそのおかげで可愛く育ったし」
( ^ω^)「羨ましいお…僕の妹なんて酷くツンツンしてるお…」
('A`)「俺の妹も、俺より出来がいいしよー、昔は兄ちゃん兄ちゃん呼んでくれたのに今じゃ呼び捨てるし」
(* ^ω^)「あ、でも昔は可愛かったんだお!」
内藤は写真を出す。
- 11 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:21:33 ID:zwfLnTZs0
- ξ゚⊿゚*)ξ(^ω^* )
( ^ω^)「ね?」
('A`)「あー、俺も、俺も」
ドクオはケータイの待ち受けを出す。
川* ゚ -゚)('A`*)
('∀`) 「な?」
(; ´_ゝ`)「お前ら…昔の妹との写真を持ち歩いたりケータイの待ち受けにしてんのかよ…」
( ;^ω^)「え、しないのかお?」
('A`) 「妹者ちゃんは昔はどんな感じだったんだ?」
はて、そういえば。思い出そうとしても出てこない。
- 12 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:22:42 ID:zwfLnTZs0
- ( ´_ゝ`)「んー、思い出せないな」
('A`)「まあ、今が小さい頃だからな、妹者ちゃんは」
( ^ω^)「兄者も写真持って来るお!アルバムとか無いのかお?」
( ´_ゝ`)「そういや見たことないや。今日当たり探して…」
( ;´_ゝ`)「あ……」
( ^ω^)「ん?」
('A`) 「どうした?」
(; ´_ゝ`)「う、うしろ…」
後ろには二人の妹がいた。顔に怒りマークをつけて。
ξ゚⊿゚#)ξ「なに勝手に人の昔の写真持ってるのさ!馬鹿兄貴!」
川# ゚ -゚)「見損なったぞ、ドクオ」
( ;^ω^)「う、う…」
(;'A`) 「し、しまった…」
ξ゚⊿゚)ξ「今日の放課後、サーティーイレブンの雪だるま(海外式)キャンペーン、驕りね」
川 ゚ -゚)「海外式とは、海外の雪だるまが三連なことから由来する」
(; ^ω^)「トホホ」
('A`) 「ちぇ」
( ´_ゝ`)o0(写真、な)
- 13 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:23:27 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
モナさんの寝室をゴソゴソと探す。
( ´_ゝ`)「あった、あった、アルバム」
埃を被ったその表紙を手で払う。
放課後の夕暮れが窓から室内に入り、部屋はオレンジ色だ。
弟者は部活、妹者はピアノのレッスン、モナさんも仕事で家には俺一人。
- 14 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:25:55 ID:zwfLnTZs0
- ( ´_ゝ`)「まずは、一ページ目」
一枚目には三人が並んだ写真。
( ´_ゝ`)l从・∀・ノ!リ人(・∀・ )
( ´_ゝ`)「ん?」
誰だ?こいつ。
見る、めくる。を繰り返す。
やっぱり繰り返すのは三人。
- 15 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:26:42 ID:zwfLnTZs0
- ( >_ゝ<)l从>∀<ノ!リ人(>∀<)
( ´_ゝ`)「はは、旨そう」
カキ氷で頭がキーンとなった、一枚。
( ;_ゝ;)l从;∀;ノ!リ人(;∀; )
( ´_ゝ`)「はは、なんつー顔してんだ?」
ホラーでも見たのか三人とも涙目な一枚。
( ´_ゝ`)「これにしようかな」
幼稚園の入園式。
(* ´_ゝ`)l从*・∀・ノ!リ人(・∀・ *)
妹者がいて、俺がいて…おれと同い年位の誰かがいる。
- 16 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:28:55 ID:zwfLnTZs0
- カバンにその写真をつっこんで他の写真を見るのに専念する。
パラパラ、パラパラ。
いきなり、ページが途絶えた。
( ´_ゝ`)「ありり」
パラリ、パラリ。
「何をしてる」
( ;´_ゝ`)そ「ウェイ!」
- 17 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:29:36 ID:zwfLnTZs0
(´<_` )「勝手にモナさんの寝室を荒らすなよ…」
( ;´_ゝ`)「な、なんだ弟者か…びっくりした…」
(´<_` )「アルバム、見てたのか」
後ろのアルバムを一瞥して弟者は言った。
(; ´_ゝ`)「あ、はは、つい、昔の妹者が見たくなって」
(´<_` )「もう、見るなよ」
( ´_ゝ`)「え…」
(´<_` )「モナさんの寝室に勝手に入るなよ…俺たち、居候なのに…」
( ´_ゝ`)「ああ。うん、わかった、もうしない」
一枚、拝借したのは黙っておくことにした。
- 18 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:30:53 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
(* ^ω^)「可愛いお!」
( ´_ゝ`)「あんま今と変わんない気がするけどな」
('A`)「妹ちゃんは可愛いけどよ、誰だよ、こいつ」
ドクオは三人目を指差す。
( ´_ゝ`)「知らない」
('A`) 「知らないのかよ…一緒に写っといて」
( ^ω^)「兄者って実家からの通学じゃないおね?」
( ´_ゝ`)「ああ、親戚の家に居候の身」
('A`)「ああ、実家の近所の子どもじゃないか?」
( ´_ゝ`)「成る程」
( ^ω^)「もうすぐ夏休みだお、実家に帰ったら思い出せるかもお?」
( ´_ゝ`)「そういえば一度も帰ったことなかったなぁ」
('A`;) 「は?!一度も?!」
- 19 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:31:49 ID:zwfLnTZs0
- (; ^ω^)「それは…え?電話や手紙もかお?」
( ´_ゝ`)「うん、もはや顔も覚えてないや」
('A`) 「親も親だな…少しくらい気にならねーのか?」
( ´_ゝ`)「んー、まあそろそろ夏休みの予定話し出すだろうし、提案してみるよ」
- 20 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:32:33 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
( ´∀`)「晩御飯モナよー!」
( ´_ゝ`)「いただきます」
(´<_` )「いただきます」
l从・∀・ノ!リ人「いただきますなのじゃー!」
素麺。啜る音が響く。今日はいつものダイニングでは無く縁側の和室で外からの空気を障子を開けながら涼む。
( ´∀`)「そろそろ夏休みモナね、今年は何をするモナ?」
- 21 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:34:35 ID:zwfLnTZs0
- l从・∀・ノ!リ人「妹者は夏祭りや花火大会、海でスイカわりしたいのじゃー!」
(* ´∀`)「いいモナ、いいモナ!」
(´<_` )「俺、部活の大会あるから応援に来てくれない?」
l从・∀・ノ!リ人「行くのじゃー!」
( ´∀`)「僕も予定が合えば…」
( ´∀`)「兄者君は何がしたい?」
( ´_ゝ`)「俺は…」
(* ´_ゝ`)「久々に実家に帰りたいかな?」
- 22 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:36:48 ID:zwfLnTZs0
- カラカランと箸を落とす音がした。
( ´_ゝ`)「俺、両親の顔も声も忘れちゃったからさ、そろそろ会いたいな、って」
(´<_` )「兄者、ちょっとこい」
無理くり腕を引っ張られ廊下に出される。
和室に繋がる廊下は夏なのに、冷んやり冷えた、木の床だった。夕方の暗さで弟者の顔すらよく見えない。
- 23 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:37:31 ID:zwfLnTZs0
- (´<_` )「アルバム見て、昔の家が懐かしくなったか」
凛とした声だ。
(* ´_ゝ`)「いや、懐かしいっていうか覚えてすらいないんだ、弟者覚えてる?」
(´<_` )「覚えてない」
嫌に弟者はハッキリと否定した。
- 24 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:38:12 ID:zwfLnTZs0
- (´<_` )「些か失礼じゃないか、
親同然に育ててくれたモナさんの前で親に会いたいだなんて、
モナさんより親の方がいいと暗に伝えているようではないか」
( ;´_ゝ`)「俺はそんなつもりじゃあ…」
(´<_` )「もういい、その話はするなよ」
追撃する余地すら与えない冷たい言葉だった。
( ´_ゝ`)「うん、わかった」
襖を開けると電気のついた明るい空間が待っていた。
- 25 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:39:02 ID:zwfLnTZs0
( ´∀`)「おかえりモナー」
l从・∀・ノ!リ人「夏休みのすけじゅーるがきまったのじゃー!」
モナさんの綺麗な文字で書かれたスケジュールを残りの素麺を啜りながら読む。ツユに浸した分はもうムラサキ色に染まり伸びていた。
やっぱり、俺の意見だけはスケジュールに採用されなかった。
- 26 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:39:58 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
('A`)「ふむふむ、弟さんもなかなか義理人情が強いねぇ」
( ´_ゝ`)「気を使い過ぎにも見えるがな」
(; ^ω^)「ところで本当に覚えてないのかお…親のこと」
('A`)「そうそう、覚えてないのかよ」
( ´_ゝ`)「んー、なんか俺、事故で頭打ったみたいでさー」
( ;^ω^)「うそ!いつのまにかお?!」
( ´_ゝ`)「いや、小学の時だからよく覚えてないや」
('A`) 「そういやお前高校からの編入だったな」
( ´_ゝ`)「そうだっけか」
( ;^ω^)「…覚えてないのかお…」
- 27 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:40:59 ID:zwfLnTZs0
('A`)「お前なんか事故で記憶障害でも患ったんじゃねぇの?」
( ´_ゝ`)「そうかも」
( ^ω^)「事故の前の記憶と直後の記憶が曖昧になる症状の名前は聞いたことあるお!」
('A`) 「ちょっとお前、聞いてみろよ、家族に」
( ´_ゝ`)「わかった」
- 28 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:43:13 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
妹者がバレエでモナさんが仕事。
二人には広すぎるリビングのソファーで俺が、
やっぱり俺にはデカすぎるテレビを見て、
弟者が本を読んでいる。
( ´_ゝ`)「なあ、弟者」
(´<_` )「なんだ兄者」
( ´_ゝ`)「俺事故にあったんだよな?」
(´<_` )「ん…まあな」
( ´_ゝ`)「あの時の記憶…なんか無いんだよ、俺」
(´<_` )「嫌な記憶って忘れたくならない?」
( ´_ゝ`)「いやぁ、なんかさ、友達にそれ言ったらさ記憶障害の一種なんじゃないかと言われたんだよ…だから…」
- 29 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:45:04 ID:zwfLnTZs0
- 腕を引っ張られた俺は体勢を崩す。
言いかけた言葉を言えなかった口の行き先はなぜか弟者の口一直線だった。
(; ´_ゝ`)そ「ウェイ?!」
びっくりして反対方向に飛び下がる。
ソファーのバネがギシギシと嫌な音を立てる。
- 30 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:45:45 ID:zwfLnTZs0
- (´<_` )「いや、ずっと言ってなかったんだけどさ、俺兄者のことが好きなんだよ」
めんどくさそうにまた俺の腕を引いて抱きしめられる。
( ;´_ゝ`)「はにゃん?!」
(´<_` )「だからさ、事故にあった時もすっごい不安だった」
( ;´_ゝ`)「うにゅう…」
(´<_` )「だからさ、あの時のこと、もう、思い出したく無い」
( ;´_ゝ`)「アイヤー…」
言いかけた言葉は飲み込むことにした。
- 31 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:47:16 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
( °_ゝ°)
(; ^ω^)「なんで兄者はあんなにぼっけーとしてるんだお…」
('A`)「知らねーし、直接聞くか」
('A`)「おーい、兄者、どうした、ボケーっとして」
( °_ゝ`)ハッ
( ´_ゝ`)「ああ、うん」
- 32 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:48:24 ID:zwfLnTZs0
(; ^ω^)「ボケーっとしてどうしたんだお」
( ´_ゝ`)「いやー……生まれてはじめてと思わしき愛の告白を受けてね」
('A`)「へぇー…」
('A`) 「は?」
- 33 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:49:32 ID:zwfLnTZs0
- (; ^ω^)「こ、告白を!?」
( ´_ゝ`)「チューまでさりちった」
('A`) 「なかなか積極的なお相手ですな」
( ;^ω^)「それで…いいのかお…兄者は…」
( ´_ゝ`)「まあチューなんてされたからって減るもんじゃないし」
('A`)「初めて…と思わしきものを奪ったことについても気にしないのか…」
- 34 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:50:14 ID:zwfLnTZs0
- ( ^ω^)「あ、そういえば、記憶障害の件は?」
( ´_ゝ`)「ああ、そういえば…」
('A`)「聞けたか?」
( _ゝ)「ハグ…」
つい、昨日の抱擁を思い出して赤くなる。
(; _ゝ )「うわー…」
( ^ω^)「ハグ?」
('A`)「はぐ…らかされたか」
(; ´_ゝ`)「そそ、そゆこと」
('A`)「やっぱ直球ど真ん中じゃダメか…」
- 35 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:52:20 ID:zwfLnTZs0
- ( ^ω^)「入院先の病院とか覚えてないのかお?」
( ´_ゝ`)「ああ…」
( ´_ゝ`)「でも…なんかだんだん思い出して来たかも」
('A`) 「マジか!なんだ!言ってみろ!」
( ´_ゝ`)「回診してくれた女医さん、伊藤…ペニサス先生って名前だった」
( ^ω^)「珍しい名前だお…」
('A`)「そんな珍しい名前ならネットで見つかるんじゃないのか?」
- 36 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:54:47 ID:zwfLnTZs0
ちょっと待ってろとドクオがスマフォをいじりはじめた。
('A`)「この顔か?」
出てきた画像はボヤけた脳内の情報を正した、懐かしい女医さんの顔だった。
( ´_ゝ`)「多分」
('A`)「ラウンジ病院、神経内科」
( ^ω^)「ここ美布市からそう遠くも無いお…」
('A`)「事故が原因の記憶障害なら神経内科にかかることになるしな」
(* ^ω^)「早速今日行ってみるお!」
(; ´_ゝ`)「居候の身で交通費せびっちゃ…」
('A`)「弟のうつってるぞ」
( *^ω^)「それぐらいおごってやるお」
('∀`) 「他人の秘密は蜜の味ってなw面白半分で首突っ込む代わりに協力させてくれよ」
( ´_ゝ`)「…ありがと」
( ^ω^)「早速放課後に出発だお!」
- 37 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:55:59 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
('A`)「あ、運転手さん、ここで」
( ,'3 )「あいよ」
( ^ω^)「いつもありがとうだお」
( ,'3 )「またいつでも」
( ´_ゝ`)「外、暮れたなぁ」
夕方。携帯を開いて時刻を確認する。
(; ´_ゝ`)「六時か…」
帰りの時間、女医さんと話す時間を考えると毎晩七時の夕食に間に合わないだろう。
- 38 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:57:35 ID:zwfLnTZs0
- ( ´_ゝ`)「連絡…しなきゃな…」
弟者へ連絡しようと新規メールを作成する。
でも、昨日を思い出して恥ずかしくなる。
書き直し、書き直し、繰り返し、ようやく出来たメールを読み返す。
「ゴメン、夕食、遅れる。先食べてて 兄者」
無駄の無い、けどあまりにも無愛想。でも、この形を変えたら、絶対、いらない文がひっついて…
(; _ゝ )「……送信」
そういや俺は弟者のことどう思ってるんだろう。
( ´_ゝ`)「よくも悪くも弟。だなぁ…」
('A`)「さっさと行くぞ」
( ´_ゝ`)「ああ…うん」
- 39 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 00:59:39 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
('、`*川「次の方どうぞ」
( ´_ゝ`)「あの…」
('、`*;川「あなた…は…」
( ´_ゝ`)「あ、はい、お久しぶり?です」
('、`*;川「……で、どのようなご用件で?」
( ´_ゝ`)「いや…あの…俺に記憶障害があるんじゃないかって…友達が…」
事情を話す。伊藤先生もうなづきながら話を聞いてくれる。
- 40 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:03:54 ID:zwfLnTZs0
('、`*川「事故より前の記憶と直後の記憶がない…か…」
( ´_ゝ`)「先生は俺の担当医だったんですよね?」
('、`*川「ええ…でも引っ越すからって退院を求められて…
あなたもぼーっとしている時間は多少あるとは言え意識もハッキリし出したころだったから紹介状出したところへの通院を条件に許可したはずだけど…」
( ´_ゝ`)「通院…」
('、`*川「記憶に無い。と」
( ´_ゝ`)「忘れている、だけかと」
('、`*川「だと、いいけど」
沈黙が続く。
- 41 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:04:50 ID:zwfLnTZs0
- ( ´_ゝ`)「先生なら俺の住んでいた場所、知ってます?ここに入院していたころの住所」
('、`*川「患者に患者自身の個人情報を聞かれるとは思って無かったわ」
クスリと先生は笑う。
□⊂('、`*川「はい、特別よ?」
メモを、受け取る。
( ´_ゝ`)つ□
( ´_ゝ`)「ありがとう、ございます」
- 43 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:06:11 ID:zwfLnTZs0
- 話すことはもう無い。
お礼をいい、診察室の扉を開ける。
('、`*川「お大事に」
何に対してのお大事に、なのか。
わからないまま診察室の扉は閉まった。
- 44 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:06:52 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
('A`)「どだった?」
( ´_ゝ`)「OK、入院時の俺の住所ゲット」
( ^ω^)「流石だお、兄者」
('A`)「どれどれ…この近さだと歩いて行けるな」
静かな丘の上の病院を三人で降りる。
しばらく歩いたところ、目的地に辿り着いた。
- 45 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:11:25 ID:zwfLnTZs0
('A`)「……ねぇな」
売り地。と書かれた看板。
周りの家にも俺たちぐらいの子供は居なく、なんか小金持ちな夫婦が冷めた夕飯を食っている音だけがした。
カバンから写真を出して、見る。
入園式の写真。妹者と俺の知らない俺と同い年の男。
入園式。
( ´_ゝ`)「この幼稚園ってこの近くじゃね?」
('A`)「……!!確かめる!!」
- 46 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:13:21 ID:zwfLnTZs0
- スマフォをいじり、幼稚園名から地図で探す。
('A`)「近いな…」
( ^ω^)「行くお!」
- 47 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:15:37 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
('A`;)「ええ…そりゃないぜ…」
写真と同じ景色があった。でも虚しく門に飾られていた『本日閉園日』の文字が俺たちをどっと疲れさせた。
閉園日のため職員が残業、ということもなかった。
俺の記憶の手がかりがあるかもしれない園内には結局入れなかった。
( ´_ゝ`)「……幼稚園ってこんなものだよな」
( ^ω^)「でもわかったお。妹ちゃんの入園したこの幼稚園はこのラウンジ市にあって、
兄者も妹ちゃんも、謎の三人目も、ここに来たんだお。昔に」
沈黙。行き詰まり。
('A`)「…もう、九時か…」
早いな、とドクオは笑った。
- 48 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:18:26 ID:zwfLnTZs0
- ( ;^ω^)「今日はこの辺に…」
('A`)「そうだな、腹減ったし、この辺食うとこも無いし」
( ´_ゝ`)「だな」
それに…と内藤は続ける。
( ^ω^)「兄者の過去も僕も逃げないお」
('A`)「無論俺も逃げない」
他人が、友人が、俺の記憶のためにつきあってくれる。
俺一人じゃ、ここまではこれなかった。
( ´_ゝ`)「ん、俺も」
俺も同じ意思であることを告げた。
三人は、笑う。
('A`)「じゃ、中嶋さん、呼ぶか」
ドクオはスマフォを取り出した。
- 49 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:20:43 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
( ´_ゝ`)「じゃ、また明日な」
( ^ω^)ノシ「また明日だおー」
('∀`)「……マジで逃げんなよ?」
ニヤリとドクオは笑った。
( ´_ゝ`)「もちろん」
俺も、笑った。
- 50 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:21:33 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
( ´_ゝ`)「ただいまー…」
こんな遅くまで外出したこと無かったなぁと思いながら控えめに帰宅する。
もう妹者も寝てるんじゃないだろうか。
( ´∀`)「おかえりモナ」
( ´_ゝ`)「ただいま、モナさん」
書斎からモナさんがやって来た。
コーヒーを注ぎながらモナさんは言う。
( ´∀`)「弟者君から聞いたモナよ、
ダイニングに夕飯用意したからラップ取って食べるモナ。
あと、食べ終わったら弟者君が話したいことがあるから部屋で待ってるって言ってたモナよ」
( ´_ゝ`)「はぁ」
ラップを取る。
美味しそうな焼きそばだった。
- 51 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:22:15 ID:zwfLnTZs0
- ( ´∀`)「じゃあ僕は書斎で仕事してるモナ、おやすみ」
( ´_ゝ`)「おやすみなさい」
書斎の扉がしまった。
( ´_ゝ`)「いただきます」
ズルズル。
焼きそばを啜る。
弟者の話したいことって、なんだろう。
- 52 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:22:57 ID:zwfLnTZs0
- 『そりゃあ昨日の今日だろ。部屋ですることなんざ決まってら』
( ; _ゝ)「ゴホゴホッ」
脳内自分1の声にビビってむせる。
『この破廉恥め、それこそ急すぎる、
急すぎるぞ、ベッタベタのエロゲよりもベタだ、
もっとノーマルな会話だ』
(; ´_ゝ`)「そそ、そうだそうだ」
脳内自分2に意味も無く賛同する。
- 53 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:24:24 ID:zwfLnTZs0
- 『ていうか、そんなことわざわざ脳内会議する時点でおかしく無いか?
弟と会話するだけじゃないのか?
それともお前にとってあいつは弟以上のものなのか?』
( ;´_ゝ`)
バーンとつい箸を落す。
ヤバイ、モナさんの仕事の邪魔だ、妹者が起きる。
- 54 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:25:28 ID:zwfLnTZs0
- 『弟以上ね。
案外恋人だとか、親友だとかよりも弟を優先するやつがいるかもしれないじゃないか。
それが俺かもしれないのに』
『んな人の揚げ足取るなよ、話題がズレてるぞ』
(; ´_ゝ`)「ああ、もう、しまいだ、しまい」
焼きそばをかっくらい皿を洗面台に置く。水を流す音だけに集中し、皿を洗う。
そんな間にやかましい脳内会議は終了した。
- 55 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:26:29 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
弟者の扉をノックする。
『どうぞ』
といつもの声がする。
- 56 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:30:03 ID:zwfLnTZs0
- (; ´_ゝ`)「失礼します…」
(´<_` )「何改まってるんだよ」
弟者は、笑う。
俺もつられて、笑う。
(´<_` )「とりあえずそこに座れば?」
フカフカの俺と色違いのベッド。と言ってもモナさんとも妹者とも色違いだが。
(; ´_ゝ`)「座らせていただきます」
ははは、と弟者はやっぱり、笑う。
- 57 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:33:28 ID:zwfLnTZs0
弟者は机とセットで買った回転椅子に跨がるように座ってクルクル回る。
(´<_` )「で、夜遊びは楽しかったデスカ?」
( ;´_ゝ`)「は、お陰様で」
弟者は、笑う。
(´<_` )「なにしてきたの?」
(; ´_ゝ`)「と、特に、何も」
弟者は、笑う。
- 58 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:34:34 ID:zwfLnTZs0
(´<_` )「そかそか…俺には言えないコトしてきたのかぁ」
(; ´_ゝ`)「……」
昨日のリビングの件からなんとなく、
言うな。と脳内自分が指令した。
(´<_` )「兄者、今から外行かない?」
(; ´_ゝ`)「え?外?!だって今…」
弟者の机上のデジタル時計を見る。
午後11時を回っている。
男子といえども未成年。
大人に見つかったら厄介な時間にさしあたっているのではないか。
(´<_` )「いいじゃん、行こうよ」
( ´_ゝ`)「でも、もう…」
不意に弟者は俺の手を握る。
(´<_` )「行こうよ」
(; _ゝ )「ウェイッ…」
やたら熱い手だった。
- 59 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:35:24 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
( ;´_ゝ`)「そういやさ、モナさんに言わなくていいの?心配するかも…」
(´<_` )「もう言ってあるから大丈夫」
( ;´_ゝ`)「許可がもらえるならモナさんについてきてもらえば…」
(´<_` )「いいじゃん、デートくらいさせてよ、二人きりで」
ラン、ランララランランランと鼻歌で弟者はご機嫌のようだった。
- 60 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:36:21 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
(´<_` )「着いた」
どうやら目的地は廃墟の、町外れの病院だったらしい。
(; ´_ゝ`)「え?な、なんでこんな怖いところ?」
(´<_` )「ほら、吊り橋効果って知らない?人は生理的に興奮している事で、自分が恋愛しているという事を認識するというもの」
(; ´_ゝ`)「ええ?」
(´<_` )「大丈夫、俺について来なよ」
- 61 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:37:04 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
冷や汗かきながら廃墟の病院をなんとか進み切る。
突き当たり。屋上への扉の前にある立ち入り禁止の鎖を弟者は蹴り破った。
(´<_` )「ほいっと」
(; ´_ゝ`)「流石にそこまではいいよ!」
(´<_` )「行こうよ、景色綺麗だよ」
- 62 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:38:00 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
濃い紫の夜空に青白い月だけは悪目立ちしていた。
(; ´_ゝ`)「うわぁ…綺麗だなぁ…さて、そろそろ、帰…」
(´<_` )「知りたい?三番目の男」
(; _ゝ )「……!!」
ひらりと弟者は写真を見せる。
- 63 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:39:04 ID:zwfLnTZs0
(´<_` )「アルバムから一枚だけ抜けてたんだよねぇ…。
そんなに気になってたの?
その男が?俺より?気になってるの?」
(; _ゝ )「……俺は、俺の忘れていることが気になるだけだよ」
(´<_` )「俺が嫌だと言っても…気になるんだ」
(; _ゝ )「……。」
(´<_` )「またそうやって何も言わないんだ。そうやってる顔もそそるけど、もういいや」
弟者がまた腕を引っ張る。
つられて俺の体も前のめりになる。
- 64 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:40:22 ID:zwfLnTZs0
- ガシャン。俺の体が屋上の手すりにぶつかる。
(; ´_ゝ`)「え?」
(´<_` )「大丈夫、また、すぐに助けてあげるから」
(; _ゝ )「ま…た…?」
古い手すりはギシギシと嫌な音を立てる。
(´<_` )「大丈夫、次は流石にうまくやるよ」
(; _ゝ )「弟者、やめ…」
足が浮いた。身を支える手すりも折れてしまい、無い。
落ちている落ちている。
月が小さくなる。
落ちている。落ちている。
(・<_,・ )「また、あとでな」
弟者は、笑う。
- 65 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:41:53 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
ミセ*゚ー゚)リ「この町1の資産家、モナさんの家族になれるなんて…選ばれた子は幸せ者でしょうね!」
( ´∀`)「いえいえ、どうも息子がお兄ちゃんが欲しいお兄ちゃんが欲しいってうるさくってね」
l从・∀・ノ!リ人「妹者ももう一人もっと優しくておしゃべりに付き合ってくれるお兄ちゃんが欲しいのじゃ!」
ミセ*^ー^)リ「あらあら、お嬢ちゃん、そんなこと言ったらモナ家の跡継ぎの御長男に失礼よ」
l从・3・ノ!リ人「だって本当の話なのじゃー」
ミセ*゚ー゚)リ「ウフフ、ではうちの園の子どもたちは皆こちらの部屋にいますので、ごゆっくり」
( ´∀`)「では保母さんは扉でお待ちくださいな」
- 66 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:44:07 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
l从・∀・ノ!リ人「妹者より年上も年下もいっぱいなのじゃー!」
( ´∀`)「さあ、お話しないとどんな子かわからないモナよ?ドンドンおしゃべりするモナ」
l从・∀・ノ!リ人「あ!」
妹者はダッシュする。
l从>∀<ノ!リ人「この本妹者の
お気に入りの絵本なのじゃー!」
「え、その本今僕が読んでるのに…」
l从・∀・ノ!リ人「お兄さん字が読めるのじゃ?」
「う、うん…」
l从>∀<ノ!リ人「妹者に読んで欲しいのじゃー!」
「う、うん…」
「昔むかし、あるところに…」
l从・∀・ノ!リ人「うんうん!」
「うさぎさんはどうして?どうして?と聞くばかりで……」
l从 ;´・∀・ノ!リ人「うさぎさん…」
「くまさんは、ガオー!っと…」
l从;∀;ノ!リ人「くまさん怖いのじゃー…」
「みんなは幸せにくらしました」
l从・∀・ノ!リ人「面白かったのじゃー!お兄さんの読む絵本はみんながお友達に見えたのじゃー!」
「そ、そうかな…?」
Σl从・∀・ノ!リ人「お兄さん笑った顔見れたのじゃ!」
「笑っちゃダメだったかな…?」
l从^∀^ノ!リ人「笑ってる方がちゃーみんぐなのじゃ!」
「あ、ありがとう…」
- 67 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:44:59 ID:zwfLnTZs0
( ´∀`)「あの子の喜怒哀楽は見る人を惹きつけるモナね…」
「父さん」
( ´∀`)「どうしたんだ?お兄ちゃん」
「あの子にする」
(; ´∀`)「へ?」
( ・∀・)「あの子を、僕のお兄ちゃんにする」
- 68 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:46:15 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
ミセ*゚ー゚;)リ「ええ…?!あの子は息子さんと同い年じや…」
(; ´∀`)「それでも、あの子をお兄ちゃんにするって聞かなくて…」
ミセ*゚ー゚;)リ「ええ、まあ、まだ…年下じゃなくてよかったですね…」
( ´∀`)「この町ももう少ししたら離れないと…大変モナ」
l从・∀・ノ!リ人「新しいお兄ちゃんがお兄さんでよかったのじゃー!」
「よろしくね、妹者ちゃん」
( ・∀・)「これから…よろしく…」
( *´_ゝ`)「…よろしく」
- 69 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:48:09 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
数年経って。
( ´∀`)「三人とも!忘れ物無いモナか?」
( *´_ゝ`)「無いよ!父さん!」
( ・∀・)「行こうよ、兄者」
l从・∀・ノ!リ人「妹者も幼稚園のバスがきたのじゃー!」
( ´∀`)「いってらっしゃい!」
(* ´_ゝ`)l从・∀・ノ!リ人(・∀・ )「いってきます!」
- 70 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:48:51 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
( ・∀・)「じゃあ俺、委員会あるから、兄者待ってて」
(* ´_ゝ`)「うん、図書室で待ってるね」
兄者は一人、図書室に向かう。
しかし、途中で止められる。
(゜3゜)「待ちなよ、兄者」
(*; ´_ゝ`)「え…」
(-@∀@)「お前ちょっと来いよ」
兄者は男子小学生徒数名に体育館裏に引きづられながら連れて行かれる。
- 71 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:49:31 ID:zwfLnTZs0
- (*; ´_ゝ`)「な、何…?」
(-@∀@)「お前さ、弟と同い年じゃん?」
(゜3゜)「双子の癖に似なさすぎw」
( ・3・)「おかしくね?前お前の父ちゃんと妹見たけど、誰一人お前に似てないしさ」
( ゚д゚ )「お前だけもらいっこだろ?やーい!もらいっこ!」
(* ; _ゝ )「……」
(-@∀@)「一人で本ばっか読んでつまんねーんだよ!お前!」
(゜3゜)「ひょろひょろしてて運動神経ないしよ…なんで居るんだよ…もらいっこが!」
( ・3・)「前の体育、俺のチームにお前が居たせいで負けたじゃん、俺のチームにもらいっこはいらないんだよ!」
( ゚д゚ )「こいつ皮と骨しか無いんじゃねーの?」
男子生徒の一人がハサミを出す。
- 72 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:51:11 ID:zwfLnTZs0
- ( *; _ゝ )「危ない…やめて…」
話も聞かず兄者の服をジャキジャキと切る。
(-@∀@)「うわー…本当に骨と皮しか無いじゃん」
(゜3゜)「ぎゃはは、もらいっこだから美味しいもの食わしてもらってないんじゃないのか?」
( *; _ゝ)「違う!僕が勝手に少ししか食べてないだけ!」
( ・3・)「うるせーよ」
ジャキジャキと髪をも巻き込みながら服を切る。
- 73 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:53:18 ID:zwfLnTZs0
(*; _ゝ )「やめて!父さんが買ってくれた大事な服!!」
( ・3・)「もらいっこに父さんなんているわけないだろ!?」
( ゚д゚ )「あ、こんなのみっけ!」
兄者のランドセルの中身を一人が床にぶちまける。
(-@∀@)「あー絵本だー」
(゜3゜)「小学生の癖にだっせーのwww」
(*; _ゝ )「そ、それは妹に読んであげたくて…!」
( ゚д゚ )「だからもらいっこに妹なんていないから」
ジャキジャキと絵本までもが切られていく。
- 74 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:55:01 ID:zwfLnTZs0
- (*; _ゝ )「やめて!本は悪くない!」
兄者は男子生徒たちにしがみつく。
(-@∀@)「お前が持ってる時点で罪なんだよ!!」
(゜3゜)「さわんな!」
兄者にしがみつかれた男子生徒は兄者を蹴り飛ばす。
( ・3・)「もらいっこは死ね!」
- 75 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:55:59 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
( ・∀・)「兄者、終わったよ」
図書室に兄者はいない。
( ;・∀・)「あれれ…」
(*; ´_ゝ`)「ゴメン!トイレ行ってた!」
兄者は背後からやってきた。
( ・∀・)「あ、そっかそっか…あれ?」
( ・∀・)「兄者、今朝と服、違わない?」
(*; ´_ゝ`)「ち、違わないよ!」
( ・∀・)「髪の長さも…」
( *;´_ゝ`)「ハサミ使う授業で…間違って切っちゃった…」
( ・∀・)「ふぅーん…」
( ・∀・)「今日は何の本を読んだの?」
( *;´_ゝ`)「えっと…絵本の……『名前も知らない魔女の歌』」
( ・∀・)「前読んで無かった?」
(*; ´_ゝ`)「うん、面白かったからもっかい読んだ」
( ・∀・)「他は?」
(*; ´_ゝ`)「…それだけ」
( ・∀・)「…委員会って結構かかったよね?」
(*; ´_ゝ`)「面白かったから、何度も読んだ!」
( ・∀・)「そっか」
- 76 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:56:53 ID:zwfLnTZs0
- 帰り道、トボトボと二人の兄弟が歩く。
(*; ´_ゝ`)「……。」
(*; ´_ゝ`)「あのさ…」
( ・∀・)「何?ゴメン、家ついたからランドセルから鍵取って?」
( *;´_ゝ`)「う、いや、僕の鍵使おう」
ガチャリ
( ・∀・)「ポケットに入れてたの?ランドセルに入れるって父さん約束したじゃん」
( *;´_ゝ`)「ゴメン…」
( ・∀・)「もう約束破るなよ」
( *;´_ゝ`)「う、うん…」
- 77 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:57:39 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
数日後。
( ´∀`)「ん…おかしいモナ…」
( ・∀・)「どうしたの?父さん?」
( ;´∀`)「兄者の服を明らかに減ってるんモナ」
( ・∀・)「風に飛ばされたとか?」
(; ´∀`)「いや、ここまで風だけで減るとは」
( ・∀・)「そういえば最近兄者、
一緒に帰ってくれなくなったな…」
l从・∀・ノ!リ人「絵本も読んでくれなくなったのじゃ!」
( ´∀`)「今日もまだ帰ってこないモナ…」
午後4時。
( ;・∀・)「お、俺ちょっと迎えにいく!」
嫌な予感がしたんだ。
- 78 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:58:36 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
( ;・∀・)「兄…者…?」
(*; _ゝ )「来ないで…」
(; ∀ )「屋上は危ないよ?早く帰ろう?もうお月様が出てるよ?」
(*; _ゝ )「俺はもらいっこだから…」
( ;・∀・)「はぁ?」
(*; _ゝ )「父さんにも、妹者にも、
お前にも似てないから…」
(*; _ゝ )「同い年の兄弟は似てないとダメなんだって…」
(*; _ゝ )「もらいっこはいらないんだって」
( ;・∀・)「兄者!!」
手すりから兄者は身を乗り出す。落ちる。
外壁のコンクリに頭をぶつけながら落ちていく。
落ちている落ちている。
兄者が小さくなる。
落ちている。落ちている。
- 79 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 01:59:28 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
('、`*川「峠は越えました」
( ´∀`)「本当モナか!!」
l从;∀;ノ!リ人「兄者ー!兄者ー!」
('、`*;川「しかし…ストレスや事故による頭部の強打により記憶障害や性格の変化が起こる可能性が」
性格の変化。と言っても出現する性質としては固より本人が持っていた性格がでてくるだけだ。と女医は追加して言った。
固より本人が持っていた?知らない。俺が欲しくなった兄はあの時妹に絵本を読んであげた、本好きで、感情豊かで笑顔が記憶に残る兄だ。
俺の欲しかったものを俺が奪った?
だって、俺なら、気づけただろうに。
あんなに、近くにいたのに。
- 80 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 02:00:14 ID:zwfLnTZs0
- ( ∀ )「……」
('、`*川「で、でも、もう、生命の心配はございません!」
( ∀ )「……」
( ´∀`)「…嬉しくないモナか?」
( ∀ )「俺が悪いんだ」
( ;´∀`)「モナ?」
( ∀ )「俺が早く、兄者が家族に似てないことが原因でいじめられてるって気づけていれば…」
( ;´∀`)「モナ…」
( ・∀・)「大体おかしかったんだよ、同い年なのに兄なんて、それを選んだのも俺だ」
( ・∀・)「しかもまるっきり似てないの。バカだ。俺」
( ´∀`)「……」
( ・∀・)「父さん、わがまま言っていいかな?」
( ´∀`)「……いいモナよ」
( ・∀・)「父さん、俺を…」
( ・∀・)「俺を兄者の顔にしてよ」
- 81 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 02:01:12 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
( -_ゝ`)「ん…」
(´<_` )「おはよう、兄者」
( ´_ゝ`)「あに、じゃ…?」
(´<_` )「お前の、名前」
(´<_` )「俺は、弟者」
( ´_ゝ`)「おと…じゃ」
おとじゃはわらう。
- 82 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 02:02:06 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
俺たちはグラウンドを眺めながら欠員の出たベンチで座る。
('A`)「あいつ、また転校したんだな」
( ;^ω^)「……」
('A`)「逃げないっつたのにな…」
('A`)「電話も…変えちゃったみたいだしな」
ξ゚⊿゚)ξ「兄貴、もう授業はじまるよ」
川 ゚ -゚)「早く移動しろ、ドクオ」
('A`) 「何よりも残念なのは、妹ちゃんのあの可愛い笑顔が見れなくなったことだな」
('A`) 「ゴメン、内藤、俺も転校するかも」
- 83 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 02:02:54 ID:zwfLnTZs0
- ( ;^ω^)「?!ドクオ?」
('A`) 「俺、あの家の真実が気になるんだよ」
('A`) 「小学校であいつを見て見ぬフリした罪悪感なのかなぁ」
川 ゚ -゚)「ドクオ、転校準備は済ませたぞ」
('A`) 「次はどこ行ったんだろうなぁ、あの一家」
俺はベンチから立ち上がる。
- 84 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 02:03:36 ID:zwfLnTZs0
- ーーー
(´<_` )「今度はちゃんと俺のいうコト聞けよー」
弟者は兄の髪を撫でる。
(´<_` )「顔変えてまで、一緒に居たいんだからさ」
ピクリと動き始めたまぶたを見ながら、
弟者は笑う。
- 85 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/19(日) 02:05:19 ID:zwfLnTZs0
- あなたには記憶が無い時期がありますか?
あるなら…あなたもまた、『理想の家族』を作るために家族の誰かに作り出された『あなた』、かも…しれませんね。
(
)
i フッ
|_|
戻る