( ^ω^)百物語のようです2012 in創作板( ω  )

26 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/19(日) 23:21:13 ID:HrtL28j.0

  .,、
 (i,)
  |_|

29 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/19(日) 23:22:06 ID:HrtL28j.0

弟者は生まれつき不思議な力を持っていた。
だが、本能的にその力を他人に知られることはよくないことだとわかっていた。

そのため、彼の力のことを知っているのは、弟者本人と、双子の兄である兄者だけだ。
兄者は普通の人間だった。
少しばかり記憶力がよかったようだが、弟者のような力は持っていない。

両親や、溺愛している妹者にさえ、弟者は己が持つ力のことを話さなかった。
知られてしまえば、今の幸せな関係が失われると思っていた。
兄者にだけ力について話したのは、双子ならではの信頼からだった。

弟者の持つ力は非常に便利だ。
しかし、弟者はそれを多用しない。

力がなくとも、幸せを得ることができると知っていた。
また、力を必要としない程度には幸せだった。

30 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/19(日) 23:23:27 ID:HrtL28j.0

(;´_ゝ`)「遠足の日、雨だってよ」

(´<_` )「晴れるさ」

遠足の日、空は真っ青。快晴だった。


l从・∀・ノ!リ「ちっちゃい兄者、明日、劇の役を決めるのじゃ!」

(´<_` )「きっと妹者のなりたい役になれるよ」

妹者は念願の継母役をゲットした。


(;^ω^)「すまんお。借りてた漫画に珈琲零しちゃったお……」

(´<_`# )「難しい数学の問題で当てられればいいのに」

応用問題で指されたブーンは、黒板の前で十数分立たされた。

32 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/19(日) 23:24:21 ID:HrtL28j.0

わかっていただけたと思うが、弟者の力とは、願ったことを口に出すと、本当になる力だ。
いつからあったのかわからない。
おそらくは生まれたときから持っていたのだろう。

力を自覚した時、弟者は兄者にだけ話した。
そして、自身の口を重くすることにした。

元々、明るく活発な兄者と、冷静で兄者を宥める役割を持っていた弟者だ。
口数が多少減ったところで、誰も不思議には思わない。

( ´_ゝ`)「心から思っていなけりゃ本当にならないんだろ?」

(´<_` )「でも、言わないに越したことはないだろ」

兄者は肩をすくめる。

口数が少ないため、友人を作ることを苦手としている弟者を心配していたのだ。
弟者の力は願わないと意味がない。
学校爆発しろ。と、口にしたところで、それがネタの一つだと認識していれば、学校は爆発しない。
リア充も爆発しない。

(´<_` )「心なんて、オレ自身にもよくわからないんだからさ」

( ´_ゝ`)「まあ、そうだけどさ」

33 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/19(日) 23:25:27 ID:HrtL28j.0

弟者は言葉を紡ぐことに対して臆病だった。
その代わり、言葉を書くことが好きだった。

パソコンで、携帯で、鉛筆とノートで。
弟者は文字を書いた。
日記であったり、物語であったり、その形は様々であったが、弟者が普段口にできない思いが詰まっている。

( ´_ゝ`)「……」

家族が多い流石家で、兄者と弟者は同じ部屋に入れられている。
兄者は、学校の用事で弟者の帰りが遅い時を狙って、弟者が書いた物語を読んでいた。

ホラー。ファンタジー。日常。猟奇。ミステリー。冒険。アクション。
様々なジャンルの物語が、毎日作り出されている。

( *´_ゝ`)

それらはとても面白い。
双子だから感性が似ているのかもしれないが、誰に見せても、間違いなく面白いと言うだろうと、兄者は思っていた。
これを見れば、きっと誰でも弟者と仲良くなりたくなるに違いない。
何せ、ここには普段口を開けない弟者の言葉がたくさん詰まっている。

35 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/19(日) 23:26:23 ID:HrtL28j.0

( *´_ゝ`)「弟者、弟者!」

(´<_` )「ん?」

二人は一緒に登校する。
同じ学校なのだから当然といえば当然だ。
友人達が交差点の向こう側に見えた頃、兄者がやけに楽しげな顔をして声をかけた。

( *´_ゝ`)「バーン!」

(´<_`;)「あ……」

兄者が鞄から取り出したのは、シンプルな表紙がついた冊子だ。
それなりの厚みが見て取れる。

( *´_ゝ`)「どうだ? けっこう綺麗にできただろ?」

(´<_`;)「兄者、それって……」

表紙には『弟者短編集』と、銘打たれている。

( *´_ゝ`)「お前の書いた話を見れば、きっとみんなお前のことをもっとよく知ってくれると思うんだ」

(´<_`;)「待て」

( *´_ゝ`)「大丈夫だって! お前の作品の質はオレが保障する!」

36 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/19(日) 23:27:22 ID:HrtL28j.0

信号が青に変わる。
弟者が引き止める声も聞かず、兄者が走る。

( *´_ゝ`)「おーい! ちょっとコレ読んでみてくれー」

( ^ω^)「お?」

( ・∀・)「何々?」

冊子が兄者の手から、ブーンとモララーの手に渡る。

( <_  )

寸前、弟者が冊子を奪い取る。
手に冊子を掴みそこねたブーンとモララーは呆然としていた。

(´<_`# )「何で、勝手にそんなことするんだよ!」

(;´_ゝ`)「あ、す……すまん。
      オレは、ただ……」

(´<_`# )「うるさい! 兄者なんて――」





(´<_`# )「死んじまえ!」

37 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/19(日) 23:28:29 ID:HrtL28j.0

静まり返る空間。
通学通勤途中の人々の雑踏など二人の耳には届かない。


(;´_ゝ`)「おと――」

声は届かない。
声は紡がれない。


(´<_` )


弟者の目の前にトラックが割り込んだ。
凄まじいスピードは、一瞬で兄者を隠してしまう。

一瞬遅れて、弟者は衝突音と、周りの悲鳴を認識した。


(´<_` )「……兄者?」

38 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/19(日) 23:29:21 ID:HrtL28j.0

兄者の葬式がおこなわれた。
棺の中に兄者はいない。
ぐちゃぐちゃになってしまった。

( <_  )


弟者はあの日から放心したままだった。

あの時、弟者は確かに思ってしまっていた。
願いは言葉になり、願いになる。

::( <_  )::「違うんだ……」

::(;<_; )::「本気で、言ったんじゃないんだ……」


いつか、こんな日がくるのではないかと恐れていた。
ふとした弾みで言った言葉が現実になる日が。




::(;<_; )::「兄者、生き返ってくれよ……」

39 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/19(日) 23:30:22 ID:HrtL28j.0





(´<_` )「……あれ」

( ´_ゝ`)「どうしたんだ?」

(´<_` )「兄者?」

( ´_ゝ`)「おう」

(´<_` )「あれ? 何で?」

( ´_ゝ`)「何が」

(´<_` )「だって、死んだんじゃ」

(;´_ゝ`)「縁起の悪いこと言うなよ!」

(´<_` )「……そっか」

40 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/19(日) 23:31:05 ID:HrtL28j.0

本気で願った。
願いが叶った。

ただそれだけのことだった。

世界は葬式などなかったかのように動く。
兄者が死ぬ前まで時間が戻る。
そして、また同じような日がやってくる。





(; _ゝ ) ガッ

(´<_` )「兄者。兄者。オレ、新しい話が書きたいんだ」

(; _ゝ )

(´<_` )「主人公が人を絞め殺すんだ」

(; _ゝ )「お、と……」

(´<_` )「大丈夫。ちゃんと、生き返らせてやるから」

41 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/19(日) 23:31:47 ID:HrtL28j.0

弟者は知った。
この力があれば、どんな風に壊れてしまっても、全て治すことができる。
人も、絆も、全て戻る。
金も地位も名誉もいらない。

(´<_` )「はは……」

(  _ゝ )

(´<_` )「兄者、生き返ってくれよ」



ぐるぐると繰りかえされる生と死。
弟者はその魅力にとり憑かれていた。







( ´_ゝ`)「実はさ、オレはどんなに時間が戻っても記憶を保持したままなんだ」

その言葉が吐き出されるその時までは。

42 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/19(日) 23:32:31 ID:HrtL28j.0

( ´_ゝ`)それぞれ力を持っているようです(´<_` )



  (
   )
  i  フッ
  |_|


戻る

inserted by FC2 system