( ^ω^)百物語のようです2012 in創作板( ω  )

93 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/20(月) 00:07:32 ID:qLLQhYOA0
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94 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/20(月) 00:08:33 ID:qLLQhYOA0



「パパ、おにいちゃん まって」

98 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/20(月) 00:09:59 ID:qLLQhYOA0

これは去年の夏、夏休みを利用して実家に帰省した。
その際バイトとして一ヶ月だけお世話になった、地元ホテル内にある遊泳施設での話。


川;д川「ふぃー」

このホテルのプールは、お盆になると本当に人が多い。
この施設担当のお偉いお兄さん方からは

爪;'ー`)「まじでお盆は忙しいから!みんな気抜かんで頑張ってな!」

と言われていたので覚悟はしていたが、まさかここまでとは予想していなかった。

川д川(お盆くらい田舎に帰れよ…そしてじじばばに顔見せに行け…)

と心の中で毒づきながらも、比較的楽なポジションに居たため、忙しい人たちの手助け(主にお客の誘導、整列)をしながら
キラキラ光る水面を見たり、巨大扇風機の風に当たってみたりしていた。

私の今のポジションはボートスライダーA。
この施設にはプール、流れるプール、子ども用プール、外にジャグジー、そしてスライダーが四本ある。
スライダーは基本的にボートと呼ばれる浮輪に乗って流れる、という形式のもので、一人用と二人用がある。
四本の内、A、B、Cはこれに該当する。
Aは初心者向けの短いコース、BはAより長い、CはBと長さは然程変わらないが、チューブが真黒なので臨場感があってBよりも楽しめる。
といった具合だ。
そしてスライダーD。これはボディースライダーで、まぁ慣れ親しんだ単身乗り込みその身一つで滑っていくという、例のあれである。
Aは最初こそ混雑するが、お客さんは慣れると皆B、Cの方へ行ってしまうので、あとは楽になる。

99 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/20(月) 00:10:39 ID:qLLQhYOA0


川д川(Aにはくるな〜Aにはくるな〜)

私は念を送る。
なるべく、今は平穏を送りたい。
お昼ご飯を食べたばかりの身体に休息を!御慈悲を!
表情には出さないが、そうしてB、C、Dへと向かうお客さんににこやかに手を振った。
無邪気な子どもが何度も手を振り返してくるのが可愛い。

もう一つ、説明しておかねばならないことがある。
まずスライダーはある程度の高さから滑りおりるものだ。
そのためには、一旦高いところに上らねばならない、というのは皆さんもお分かり頂けるだろう。
スライダーの構造を説明させていただきたい。
階段あがってまず二階、ここがスライダーA、私の現在地である。
次に三階、ここにスライダーB。
そして三階から枝分かれして更に上にあるのが、スライダーC。そしてボディースライダーである。
そして各窓口から流されたお客様方々は一階着水プールへ……


つまりBCDのお客様を、私はにこやかに見送る義務があるのだ。
なのでサボっている訳ではない。
断じてない。

101 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/20(月) 00:11:23 ID:qLLQhYOA0



そうして義務を果たしている時に、ふと私の目に留まったのは


(`・ω・´)(´・ω・`)*(‘‘)*


この親子の姿だった。


(`・ω・´) しっかりしたお父さんと
(´・ω・`) よく似た息子
*(‘‘)*  そして赤い水着の、小さな女の子

103 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/20(月) 00:12:23 ID:qLLQhYOA0

川д川「あれぇ〜」

ボートを持っていないからスライダーD(ボディー)のお客さんであることが分かる。
けれど女の子は、…まずスライダーの身長制限さえクリアしてないんじゃないだろうか。

川д川「いちお、無線で連絡するか」

川д川「A、山村です チェック聞こえますか?」

<チェックです、なにー?

川д川「何か、今ボディー行こうとしてる赤い水着の女の子、身長明らかに足りてないんですよー」

<マジで?

川д川「めっちゃ小っちゃいです」

<分かったチェックしとく

川д川「はーい」

川д川「よし、これでいいじゃろ」


連絡し終えた頃には、お客さんがスライダーAに流れ込んできた。

川д川(5、6組くらいかな…)


さて、不安そうな親子をどう楽しませようか……

104 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/20(月) 00:13:22 ID:qLLQhYOA0



川д川「うおーーーーい」

先ほどのお客さんたちは一旦滑ってみるとやはり何てことなかったみたいで、BCコースに行きながら
「おねーさんの言う通り、一回いっちゃうと全然怖くなかった!ありがとねー!」
なーんて言いながらにこにこ上に登っていく。

つまりまた暇になった。

川д川「…そろそろおしゃべりの相手が欲しい」

せめてお客さんの列の整頓くらい、と思い三階にあがるが、上もそんなにお客はいなかった。
一人寂しく二階に居るしかない。

そうして拗ねていると、再びあの親子の姿が目に入った。

(`・ω・´)(´・ω・`)*(‘‘)*

上までこっそり追いかけていくとボディースライダーで順番待ちをしていた。


川д川(さっきの子、身長足りてた…のかな?それとも親がそっちのミスだって言って特別に…ってやつ?)

川;д川(やっべ、身長足りてたんなら、あとで怒られるかな…?)

そう思うと落ち込んだので、着水プールを眺めながら、お客さんの様子をうかがう事にした。

106 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/20(月) 00:14:06 ID:qLLQhYOA0

まず、息子の(´・ω・`)がおりてくる。
間隔を置いてお父さん(`・ω・´)
そして…




バシャーン!( ><)






川д川「……え?」

いやいや、ちゃうねん、次はこの子やろ*(‘‘)*
赤い水着の可愛い女の子やろ。


しかし、次も、その次も女の子は流れてこない。

川;д川「おっかしいな〜」

そう思いつつも、いい加減着水プール側から離れないとサボりになりそうだと思い持ち場に戻る。
そして階段を見るとまたあの親子が立っていた。

108 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/20(月) 00:17:01 ID:qLLQhYOA0


(*`・ω・´*)(*´・ω・`*)*(*‘‘*)*

親子は楽しそうに会話をしていた。

(*`・ω・´*)「ショボン、どうだ!少しは慣れたか?」

(*´・ω・`*)「楽しいね、父さん。すっかり慣れたよ」


しかし女の子は会話に入らずニコニコしている。
それだけなら、まだあまり会話の出来ない、幼い少女なのだから、で終われたかも知れない。
先ほどは滑らずに、上で父たちを待っていたと思えたかもしれない・



私も見なければいいものを。

109 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/20(月) 00:18:32 ID:qLLQhYOA0








川;д川「…………」



その後、何度も上がってくる親子を注意深く見てみたのだが









何度確認しても、女の子にだけ「影」がなかった。

111 名前:名も無きAAのようです[sage] 投稿日:2012/08/20(月) 00:20:11 ID:qLLQhYOA0




その後も、半月の間はバイトを続けたのだが、その女の子を見たのはその日だけだった。




 (
   )
  i  フッ
  |_|




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