- 115 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/20(月) 00:24:44 ID:FbC6w4w60
- .,、
(i,)
|_|
( ´_ゝ`)アトリエの弟、のようです
- 117 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/20(月) 00:26:03 ID:FbC6w4w60
- 薄暗い小部屋にカチコチと時計が響く。
時にシャッシャと鉛筆が動く音や机に置いてカラカラと転がったりする音がする。
一人の男がモゾモゾと小部屋のソファーで毛布を被りながら話し出す。
( ´_ゝ`)「おはよう弟者」
おはようと弟者は答える。
次に弟者は具合が悪くないか尋ねる。男は数ヶ月前にバイクの事故で頭を打ち脳出血で手術するまで至ったのだ。
( ´_ゝ`)「平気だよ」
本当かと弟者は聞き返す。不安な顔を浮かべた弟者を心配して兄である男はキャンバスの前に座る弟者に近づき、手で弟者の口角を無理矢理上げさせて答える。
- 118 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/20(月) 00:27:21 ID:FbC6w4w60
- ( *´_ゝ`)「そんな顔したらせっかくの俺似の男前が廃るぞ。俺は大丈夫だからさ、笑っとけ、笑っとけ」
弟者はそうか、と満足そうに微笑を浮かべた。
( ´_ゝ`)「本当に弟者は絵が上手いなぁ。弟者の絵柄俺は好きだなぁ」
弟者はありがとうと照れ臭く笑いながら言う。
絵筆を水につける時にチャプチャプと音を立てる。
( ´_ゝ`)「趣味なのが惜しいなぁ」
周りにある真っ二つのキャンバスを見ながら男は答えた。
真っ二つのキャンバスはすべて出来が気に食わなかった弟者が左右に力を込め苛立ちを発散するために折られたものだ。
休日は二人で薄暗いアトリエで弟者は絵を描き男はその様子をぼんやり見ている。時々男はその途中で寝てしまい弟者がソファーに寝せる。
- 119 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/20(月) 00:28:20 ID:FbC6w4w60
- 弟者が完成。と溜息をつきながら筆を置いた。男はソファーから飛び起きてその絵を見に行く。
( ´_ゝ`)「綺麗な人」
流れるような黒髪、豊満な胸、キリッとしたつり目、そして、紅い唇。
( ´_ゝ`)「モデルはいるの?」
彼女。とだけ弟者は言う。
(* ´_ゝ`)「彼女に見せてあげなよ、喜ぶよ、きっと」
明日会うし、見せようかな。弟者は言う。
( ´_ゝ`)「綺麗な人だねぇ」
いつか、本物に会わせてあげるから。弟者は言う。
( ´_ゝ`)「楽しみ」
とだけ男は返す。
- 122 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/20(月) 00:29:35 ID:FbC6w4w60
日曜日が終わり月曜日。アトリエに居たはずの男は自身のベッドで目覚める。
( ´_ゝ`)「またアトリエで寝ちゃったのか」
起き上がって洗面所に行く。
おはよう。と歯を磨く弟者は言う。
( ´_ゝ`)「おはよう」
と髪を梳かしながら男は答える。
- 123 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/20(月) 00:30:35 ID:FbC6w4w60
( ´_ゝ`)「昨日ベッドまで運んでくれて、ありがとう」
どういたしまして。と弟者は答える。
髪のセットを終えて立ち去る男に弟者は待つよう言った。
不審がる男の髪に櫛を当てながら弟者は寝癖。と言う。
( ´_ゝ`)「あー、ゴメン。寝ぼけてるのかな、俺」
弟者は笑いながら洗顔、落としきれてない。とタオルを男の左頬に当てる。
- 125 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/20(月) 00:31:24 ID:FbC6w4w60
- 入院明け最初の出勤、頑張ってと弟者は見送る。
( ´_ゝ`)「お前ももうすぐで出勤時間だろう」
仕事場がより遠い男は弟者より先に出勤した。
- 127 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/20(月) 00:33:04 ID:FbC6w4w60
- ( ・∀・)「無理すんなよ」
( ´_ゝ`)「頑張ります」
男は上司に挨拶を終えて席に座る。さて、一仕事…と思ったところで上司に呼ばれる。
( ・∀・)「早速で悪いが新しいプロジェクトに関しての会議だ」
( ;´_ゝ`)「はーい…」
面倒くさそうに歩いた男はゴミ箱に躓く。
(;´_ゝ`)「おっとっと…」
倒れかけた体を自身の右足でなんとか支える。
(; ・∀・)「本当に大丈夫かー?」
(; ´_ゝ`)「あははー…」
乾いた笑いをする他無かった。
- 129 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/20(月) 00:36:13 ID:FbC6w4w60
- 会議室左端の席に座る男の隣りには上司が座った。
( ・∀・)「久しぶりで感覚鈍ってる?しっかりね」
( ´_ゝ`)「はい!」
眠気覚ましに男はコーヒーを一口飲んだ。
( ;・∀・)「ちょっ、君のはあっち!」
男は左を向く。
確かにコップ並々のコーヒーがあった。
男はついうっかり右側にいる上司のコーヒーを飲んでしまったようだ。
(; ´_ゝ`)「…お取り替えします」
( ;・∀・)「んー、まあ、気にしないけどさ、どうしたの?上の空な感じ?後遺症とか?」
( ´_ゝ`)「寝ぼけてるだけかと思うんですけどねぇ」
( ・∀・)「恋の病。とか?」
上司はニヤリと笑った時にプロジェクトメンバーが集まり、会議が始まった。
( ´_ゝ`)o0(恋ね…)
ふと弟者の彼女が頭に浮かんだ。
- 130 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/20(月) 00:38:24 ID:FbC6w4w60
- ーーー
時計がAM2時を指す。
( ´_ゝ`)「弟者が帰って来ないなぁ」
男はダイニングでボンヤリと待つ。冷めた料理にラップをする。
二人で過ごすには広過ぎる家だが両親は姉夫婦と同居。妹も県外の大学で離れ離れ。
( ´_ゝ`)「今日は俺が料理係なのになぁ」
お腹いっぱいで男はウトウトする。
- 131 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/20(月) 00:40:09 ID:FbC6w4w60
( ´_ゝ`)「あっ…」
男がちょっと目を瞑るはずが3時間。時計はAM5時を指す。
目の前にあるラップが捲られた皿々、男の肩に掛けられた毛布が弟者の帰りを知らせていた。
( ´_ゝ`)「弟者…?」
しかし、弟者はいつもなら男をベッドまで運んでくれる。なのに今日は無い。男は不審になり階段へ向かう。
上への階段は暗いが地下への階段は豆電球が光ってた。
( ´_ゝ`)「アトリエ?」
アトリエは地下にある。そこが光っているなら弟者はそこにいることになる。
- 132 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/20(月) 00:40:58 ID:FbC6w4w60
- ギシギシと階段を降りる。
扉を開けると見慣れた薄暗い空間に弟者は、いた。
扉に背を向け、弟者は絵を描く。男は弟者の背中に尋ねた。
( ´_ゝ`)「珍しいね、深夜の平日にここ来るの」
弟者は答えない。筆を乱暴に扱う音だけ響く。
男は筆の乱暴さがキャンバスを割る弟者を思い出させて嫌になる。
男は弟者の背中に近づく。
- 133 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/20(月) 00:43:38 ID:FbC6w4w60
- ( ´_ゝ`)「なーに描いてるの?」
男が弟者のキャンバスを覗き込む。
それでも弟者は
昨夜の彼女の絵をぐしゃぐしゃに赤い絵の具で塗り潰す。
( ;´_ゝ`)「?!なにやってんだよ!勿体無いじゃん!」
咄嗟に弟者の筆を持つ右腕を男は右手で止める。
男はハネた絵の具が弟者の身体中にまで付いていたことに気付き、その荒々しさに息を飲む。
「なあ、兄者」
- 134 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/20(月) 00:45:07 ID:FbC6w4w60
- 弟者は男を呼ぶ。
「俺は兄者に似てかっこいいよな?」
(; ´_ゝ`)「は…?」
「そう言ってくれたよな?な?!」
( ´_ゝ`)「うん。言った」
「今も…変わらないよな?俺は兄者に似て男前だよな?」
椅子から弟者は立ち上がる。男の、兄者の肩を掴み揺さぶりながら問う。
( ´_ゝ`)「……ああ、お前は俺に似て男前だ。今も、昔も、これからもだ」
兄は弟の右の頬を右手で優しく包む。
「そっか…」
- 135 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/20(月) 00:46:08 ID:FbC6w4w60
- ( ´_ゝ`)「うん」
涙をつぅっと流す弟を見てられなくてやっぱり兄は右手の人差し指で弟の右頬の涙をすくう。
「ねぇ、兄者、逃げちゃおうよ」
( ´_ゝ`)「逃げる?」
「彼女、最低なんだ。兄者が褒めてくれた絵を気持ち悪いなんて言うんだ」
( ´_ゝ`)「まあ、感性は一人一人違うけど言い方がキツイかもな」
「だからさ」
「一緒に逃げちゃおうよ」
....
- 138 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/20(月) 00:48:13 ID:FbC6w4w60
- ーーー
(,,゚Д゚) 「こりゃ酷いな」
ベテラン刑事が呟く。
(-@∀@;)「うぷっ」
メガネの刑事は余りの悲惨さに吐き気を催す。
高層マンションの一部屋で女の変死体が見つかった。
(,,゚Д゚) 「ホトケさんの身元洗ったか?」
(-@∀@)「はい!えっと、素直クールさん27歳、
死亡推定時刻は昨夜3時頃、
死因は失血死。
被害は体の左側に大量の刺し傷…右側は全くの無傷…職業は薬品関係のようです」
(,,゚Д゚) 「あー、
だからこの部屋の厳重な鍵付きの棚には厳重な耐震補強。
そして中身は危なそうな薬品…か。
死亡時に手にしてた空の酸のボトルの使い道は?
犯人像の特定は?」
- 139 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/20(月) 00:49:30 ID:FbC6w4w60
- (-@∀@)「室内の荒れ方からみるとリビングで攻撃を受け、
必死で薬品室に逃げ…
犯人撃退のために酸を犯人に掛けた。
って感じですね。
状況から見ると犯人の顔にかけたと思われ、
飛散状態から犯人は170cm以上…
おそらく男性でしょうか、
該当する交際相手も見つかりました」
(,,゚Д゚) 「じゃあなんだ、
ホシは酸が顔にかかったあと帰ったのか。
爛れたまぶたで前が見えるのか?」
(-@∀@;)「あ、言い忘れてました!
飛散状況から酸は犯人の顔の左側にかかったと推測されます!」
(,,゚Д゚) 「右目だけは見えてたのか…しかし、そんな顔でこの短時間で追えないほど逃げられるのか?
…共犯か…?」
- 140 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/20(月) 00:50:30 ID:FbC6w4w60
- (-@∀@;)「しかし、彼女の交遊関係は狭く、部屋に入れるような間柄は交際相手のみと…」
(,,゚Д゚) 「深夜に友達を紹介するってのもおかしいよな」
(-@∀@;)「近隣もマンションの防音効果と時間が仇となり参考になる情報は」
ミセ*゚ー゚)リ「ギコさん、こんな情報が…」
- 141 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/20(月) 00:53:01 ID:FbC6w4w60
(,,゚Д゚) 「ミセリ、なんだ」
ミセ*゚ー゚;)リ「共犯かは不明ですが、
容疑者の双子の兄が…
数ヶ月前のバイク事故で半側空間無視…
正確には左側空間無視により左側の視覚を失認しています!」
(,,゚Д゚) 「?」
(-@∀@;)「…!」
(,,゚Д゚) 「何か知っているのか!」
- 142 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/20(月) 00:54:39 ID:FbC6w4w60
- (-@∀@)「半側空間無視、英語でならHemispatial neglectとも言われ大脳半球の障害によって、障害された大脳半球の対側からの刺激が認識できなくなってしまう症状です」
(,,゚Д゚;) 「??」
(-@∀@;)「おそらく容疑者の双子の兄は数ヶ月前のバイク事故による右脳の障害で左側の視覚を失認しています!」
(,,゚Д゚;) 「は?普通、左側だけ見えてなかったらおかしいと思わないのか?」
(-@∀@)「この場合、人は見えない部分を記憶や経験で補うのでおかしいとは思わないんです。無意識。だからneglectなんです」
- 143 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/20(月) 00:55:33 ID:FbC6w4w60
- (,, д ) 「おい…待て、じゃあその双子の兄貴は…」
(-@∀@;)「何も知らないで殺人犯と共に逃走中の可能性が…?!」
ミセ*゚ー゚;)リ「い、急いで手配を取ります!」
...
- 144 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/20(月) 00:56:30 ID:FbC6w4w60
- ーーー
(,,゚Д゚) 「ここが容疑者のアトリエか…」
(-@∀@)「この絵…」
二人の刑事はキャンバスの絵を見る。
キャンバスの絵は赤い絵の具で塗り潰された、綺麗な女性の右半身のみが描かれた胸像だった。
- 146 名前:名も無きAAのようです 投稿日:2012/08/20(月) 00:57:50 ID:FbC6w4w60
(
)
i フッ
|_|
戻る