作品投下スレ

97 名前:狐だったようです。 投稿日:2011/10/28(金) 22:59:03 ID:WW9dQPVQ0
ある日、父が急に畏まって、お前は狐なのだと言った。

( ФωФ) は……?

( ^ω^) 昔な、子ども流しちまった母さんが、狐の赤んぼ、拾ってきたのさ
       それで、こっちの匂いつけちまった以上、元の場所に戻すわけにもいかねえから、
       母さんと話して、一人で生きられるくらいまでは育てるべってことになったのよ

普段、めっぽう無口な父が、ベラベラと喋っている。
その隣で、母は目頭を手ぬぐいで押さえていた。
普段は明るい妹も、青い顔して、じっと俯いている。

( ^ω^) そんで、ぶるぶる震えてるお前を不憫に思った母さんがな、
       産着に包んで、乳までやって、そうして一晩一緒に寝たのよ、
       したらお前、朝には人間の赤んぼになっててよ、
       母さん、こいつは流しちまった子の生まれ変わりだっつってな
       手放したくないっちゅーもんだから、うちの子どもにしたったのよ

(;ФωФ) いや、親父、そんな、いくらなんでも……

(*;ー;) ろま、信じられないだろうけど、お父さんの言う事は、本当なのよ

(;ФωФ) いや、そったらこと言われたって……困るべや……

川 ゚ -゚)  ………

( ФωФ) おい、くう、おめえも黙ってねえで何か言ってやってくれや 
        兄ちゃんが狐だなんて、そんな言われても、なあ?

急に妙な事を言い出した両親に話が通じそうにもないので、思わず妹に助けを求めた。

98 名前:狐だったようです。 投稿日:2011/10/28(金) 23:00:33 ID:WW9dQPVQ0
川 ゚ -゚)  ………

(;ФωФ) くう、おい……

だが妹も、おかしいのは両親と一緒だった。
まるで、美術室の石膏像のように動かない。
眉間には若い娘には似つかわしくない皺がよっている。

(;ФωФ) そったらめんこくねえ顔して……
 
( ^ω^) くうもこの事は承知でな
       そんで、子どものうちは良かったが、お前もそろそろ大人だ
       本当の事を言わねばならねって母さんとも話してな

(;ФωФ) んなこと言われても、俺、自分が狐だなんて信じられねえべさ

( ^ω^) お前、お稲荷さん好きだべや

(;ФωФ) 親父もお袋も、くうだって好きだべや!

( ^ω^) まあ、とにかくそういうわけだから

(;ФωФ) どうすれっちゅーのさ……

( ^ω^) これを機に、山に帰るのもどうかと思ってな
 
(;ФωФ) はぁ!?

( ^ω^) 実はな。お前に惚れた狐っ子がいてな

99 名前:狐だったようです。 投稿日:2011/10/28(金) 23:03:45 ID:WW9dQPVQ0

(;ФωФ) 狐に惚れられる覚えなんてねえべよ

( ^ω^) まあ、そう言うなや。
       どうだ。狐の生活もそう悪くはねえぞ

(;ФωФ) そったら……

どうやら、父は本気で自分に狐になれと言っているらしい。 
困りきって、ちらりと母を伺うと、手ぬぐいが濡れそぼるようだった。
妹に目をやると、ますます体を凍らせて、膝の上に乗せられた手が小刻みに震えている。

(;ФωФ) ……親父、俺、やっぱ無理だべ
        いくら俺が狐だっつっても、自分のこと人にしか思えねえ
        ここまで親父たちに人の子として育てて貰ったんだから、今更狐にはなれねえわ

( ^ω^) 何も急いで決めることねえんだぞ

(;ФωФ) したっけ、考えても無理だべ。
        狐と結婚なんて想像もつかん

その時、ちゃぶ台に何かがぶつかる大きな音がした。
見ると今まで大人しかった妹が、思い切り両の手のひらを叩きつけていた。

川 ;゚ -゚)  おかしいべや!
       兄ちゃんは自分が狐だってわかんねえだけだ!
       狐のくせに、人様になろうだなんて、上手いこといくはずねえべ!

100 名前:狐だったようです。 投稿日:2011/10/28(金) 23:05:23 ID:WW9dQPVQ0

( ^ω^) くう!

父の、そんな鋭い声を聞くのは、初めてだった。
妹は、父と私を見比べた後、涙目のまま居間を飛び出していった。

( ^ω^) それでいいんだな。ろま

黙ってうなずくと、父はそうか、と言ったきり黙ってしまった。
母のすすり泣く声だけが、静かになった居間の中に響いている。

居心地の悪くなった私は、逃げるように自室へと戻り、風呂にも入らず、すぐ床に入った。



翌朝、目が覚めると、そこに私の家は無かった。
体には、見るも無残なせんべい布団が巻き付いている。
昨日まで普通に生活していた家は、荒れ果て、辛うじて壁が残っているような有様であった。

私はそれを、何の疑問も持たず、不思議な心持で眺めていた。

家族は誰も見当たらない。

自分は生まれてから今まで、狐に化かされ続けていたのだ。

101 名前:秋だ!5レスだ!名無しさん 投稿日:2011/10/28(金) 23:06:46 ID:WW9dQPVQ0
以上です。有難う御座いました。
次の方どうぞ。

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