作品投下スレ

103 名前:( ・∀・)蛍の光のようです 投稿日:2011/10/28(金) 23:15:39 ID:YRgZ7ubUO
ちらり、静かに舞っている淡い光。

不思議だな、もう6月なのに雪が降る。
梅雨の季節に雪が降り、梅雨前線は僕の心に停滞中。


( ・∀・)「やぁ、会いに来たよ」


ぽつり、呟く雪の中。

雪を掴もうと伸ばした手は虚しく空を切る。
それは僕の周りをふわふわ舞って、時折草木へ身を寄せた。
彼女が言った、初夏の雪。


( ・∀・)「蛍を雪に喩えるなんて、君はなかなかの詩人だね」


ふわり、伸ばした手に雪が舞い降りた。

淡い光を放つ、決して溶けない6月の雪。
彼女との思い出が溶け込んだ、命を持った初夏の雪。

僕は、蛍になりたい。

104 名前:( ・∀・)蛍の光のようです 投稿日:2011/10/28(金) 23:16:20 ID:YRgZ7ubUO
去年の6月、彼女と見た蛍。
彼女は目を輝かせて蛍を追いかけてた。


o川*゚ー゚)o「私、蛍になりたかったなー」


彼女は言った。


o川*゚ー゚)o「短い命の間、こうやって懸命に光り輝くんだ」


なんで彼女はあんなことを言ったんだろうか。
ステージの上でスポットライトを浴びる彼女は、あんなにも眩しく光り輝いていたというのに。


o川*゚ー゚)o「ね、こうやって見てるとさ、蛍の光って雪みたいだよね」


ふわふわと光輝く蛍を彼女は雪に喩えた。

ちらちらと舞うその姿は確かに雪に見える。
彼女はそれだけで蛍を雪と呼んだのかな。


雪は春には溶けてしまい、蛍は夏には死んでしまう。
彼女はなんで、蛍を雪に喩えたのかな。

僕は、蛍になりたい。

105 名前:( ・∀・)蛍の光のようです 投稿日:2011/10/28(金) 23:17:11 ID:YRgZ7ubUO
ちくり、胸が痛む。

気がつけば周りには蛍、蛍、蛍。
降りしきる雪のようにせわしなく、柔らかく。


( ・∀・)「ああ、綺麗だよ」


さらり、流れる小川に視線を移す。

水の中にも淡い光。
カワニナを溶かして食べた、雪の幼虫。
成虫とは似ても似つかない、グロテスクな体。
気持ち悪くて、美しい生物。
憎ましい、愛おしい生き物。


( ・∀・)「僕は君と違って輝けないから」


きらり、輝く蛍。

その姿が羨ましくて、愛おしくて。
輝けるそれらが妬ましくて。


僕は、蛍になりたい。

106 名前:( ・∀・)蛍の光のようです 投稿日:2011/10/28(金) 23:17:49 ID:YRgZ7ubUO
去年の冬、白い光に包まれて彼女は静かに眠っていた。
人知れずに、すやすやと。

でも、外は寒かったろうに。
ごめんよ、君の寝床を見つけてあげられなくて。
ごめんよ、君が眠ることを許さないで。

彼女の体は彼女の一番好きだった場所へ埋めておいた。

雪が溶けて小川を作り、春が来たら雪の子供が動き出す。
そして彼女はカワニナになった。

もう少し待っててね。
君はきっと蛍になれるよ。
君が蛍になったら、また会いに来るね。

僕そう彼女に伝えて、春を生きた。
初夏の雪を楽しみに、暖かい春をのうのうと。


僕は、蛍になりたい。

107 名前:( ・∀・)蛍の光のようです 投稿日:2011/10/28(金) 23:18:31 ID:YRgZ7ubUO
ひらり、舞い降りた初夏の雪。

雪になって溶けていった彼女の幻影。
それは僕の手のひらで、弱々しく輝いていた。


( ・∀・)「君は上手く輝けないんだね」


ぐちゃり、潰れた一匹の蛍。

輝けないのは辛かった、彼女はそう言った。
だからあの時もこうすればよかったんだ。


( ・∀・)「君が眠ってしまう前に、君を眠らせてあげればよかったね。ごめんね」


ぐらり、堕ちていく。
ゆらり、沈んでく。
くるり、世界は回る。

僕は、蛍になりたい。
僕も、蛍になりたい。


ああ、視界いっぱいに、蛍の光

108 名前: ◆wyxCol86Us 投稿日:2011/10/28(金) 23:19:01 ID:YRgZ7ubUO
以上です、次の方どうぞ

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