作品投下スレ

110 名前:ζ(゜ー゜*ζ 23:50のようです ◆82dOiqzrzo 投稿日:2011/10/28(金) 23:22:04 ID:AErPwVCk0
ζ(-、-*ζ「いきなり『家に来い』って言っておいて、自分はいないなんて……」


 もう、と苛立ち混じりの溜息。

 時計を見る。
 現在の時刻は十一時四十分を過ぎたところで、窓の外を見ればすっかり夜の帳が下りている。


 携帯が鳴ったのが今から一時間ほど前。
 一つ年下の彼からのメール。
 『今すぐ家に来て下さい』という文面に面食らって、急いでお化粧をしておめかしして、ここに着いたのがつい数分前。

 あろうことか私を呼び出した彼はいない。
 何がなんだか分からないけれど凄く腹が立つ。


ζ(゜ー゜*ζ「期待してたんだけどなあ」


 色々と。

111 名前:ζ(゜ー゜*ζ 23:50のようです ◆82dOiqzrzo 投稿日:2011/10/28(金) 23:22:37 ID:AErPwVCk0
 一人ぼっちで彼の部屋。
 お気に入りだったと言っていた高いソファーに腰掛けて、ずっと一人。 


ζ(、 *ζ「…………」


 こんなにも明るい部屋なのに私の心は真っ暗で。
 ああ、なんか馬鹿みたい。
 何を期待してたんだろう。

 と。


ζ(゜ー゜*ζ「……メールだ」


 机に放り出したままだった携帯が震えメールの受信を伝えてくる。

 差出人はきっと彼だ。
 内容は、遅れるごめん、なんて申し訳程度の謝罪文に違いない。

112 名前:ζ(゜ー゜*ζ 23:50のようです ◆82dOiqzrzo 投稿日:2011/10/28(金) 23:23:18 ID:AErPwVCk0
 メールを開いた。
 五文字。


 ――『少し遅れま』



ζ(ー #ζ「ああもうっ! 謝罪どころか一文として成立してさえいないしなんなの『少し遅れま』って何語なの!?」


 職務を果たしただけの携帯をベッドに向けて投げつけた。
 ……もう怒った。


ζ(゜ー゜*ζ「もう怒ったんだから」


 ぐるぐる部屋を歩き回って、最終的には冷蔵庫を開けてみることにした。

 私と同じかそれ以上に甘いものが好きな彼。
 予想の通り、中には普通の食材に混じってチョコレートやプリンなどが入っている。

113 名前:ζ(゜ー゜*ζ 23:50のようです ◆82dOiqzrzo 投稿日:2011/10/28(金) 23:24:16 ID:AErPwVCk0
 どれを食べてやったら良い仕返しになるだろうかと思い、一番奥に白い箱があることに気づく。
 試しに引き寄せて中身を見れば高そうなショートケーキが二つ入っていた。
 テレビでも紹介された有名店の、一日何個限定とかいう高くて美味しいやつだ。


ζ(-ー-#ζ「もう……もう、もうっ……!」


 むしゃむしゃと乱暴に食べる。
 腹が立ち過ぎてて味はよく分からなかった。


 待たされて、怒ったと言い、仕返しにケーキを食べながらそれでも何処かで期待している自分が恨めしい。
 私をこんなにも期待させるあなたが恨めしい。

 ベッドに顔を埋める。
 不覚にも彼の匂いで安心し、同じだけに悲しくなった。

 ……はあ。


 ――ふと、壁にかけられたカレンダーが目についた。
 今日の日付に赤丸がついている。

114 名前:ζ(゜ー゜*ζ 23:50のようです ◆82dOiqzrzo 投稿日:2011/10/28(金) 23:25:11 ID:AErPwVCk0
 あれ?


ζ(;ー;*ζ「……あれ? 今日私の誕生日だっけ?」

 
 どうしよう、君が隠してたケーキ食べちゃったよ。
 いきなり呼び出したのも、それで何も言わなかったのも、驚かせようとしてたのかな?
 私が忘れてた私の誕生日を君はちゃんと覚えててくれたんだ。

 ……もう泣くのは我慢しよう。
 きっとすぐに君は帰ってくるから。
 
 時計を見ると十一時五十分。


ζ(ー *ζ「……あと十分だよー」


 私もちゃんと謝るから、一緒にコンビニまでケーキを買いに行こうね。
 君と食べるのならどんなものだって美味しいんだからさ。

115 名前:ζ(゜ー゜*ζ 23:50のようです ◆82dOiqzrzo 投稿日:2011/10/28(金) 23:25:48 ID:AErPwVCk0
以上です。

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