作品投下スレ

172 名前:( ^ω^)秋は深まるようです。 投稿日:2011/10/29(土) 01:27:28 ID:qXLp/pKo0
从 ゚∀从「さみーなー」

部活からの帰り道、幼馴染みのハインが夜に染まり始めた空を見上げぽつりと呟いた。

( ^ω^)「秋だからだお」

少し視線を下にやれば、歩道の端に落ち葉が溜まっているのが見える。
彼女はわざわざそれを蹴飛ばし、それからくるりとこちらを振り向いた。

从 ゚∀从「なあ、ブーン。寒いよなー?」

上目遣いで何かをねだるように話しかけてくる。ここで返事をしたら強制的に何かしら奢る羽目になるだろう。
それは分かってはいるのだが、どうにも僕は彼女のわがままに弱い。

( ^ω^)「なら早く家に帰るお」

せめてもの抵抗として、空とぼけてみるも彼女、ハインには通用しない。

从 ゚∀从「わかってるくせによお。幼馴染みの可愛い女の子が寒がってるっていうのに気が利かねえなあ」

気が利くだのなんだの以前に、人間としてこう何度も人にタカるのはどうなんだと言いたい。いい加減自分で買えと。
だけどそんなわがままを僕は断れない。むしろそれを聞くことが嬉しくさえもあるのだ。
悔しいがこれが惚れた弱みというやつなんだろう。
それを表にだして言ったことはないし、これから先言うこともないだろうが。

( ^ω^)「いつもいつも僕に奢らせて……たまには自分で買えお」

我ながら、ツンデレ乙。
見つめ合うと素直におしゃべり出来ないとか僕は中学生か。

173 名前:( ^ω^)秋は深まるようです。 投稿日:2011/10/29(土) 01:28:30 ID:qXLp/pKo0
从 ゚∀从「おいおいブーン、そこはひとつ返事でオレのために温かいココアでも奢るべきなんじゃねーの?」

あまりに身勝手で一方的な言い分。普通なら怒っても良いはずだ。
それなのに僕はその我が侭にずっと小学生の頃から付き合っている。

たまにケンカになることもあったが、それでも結局僕は彼女のわがままを聞き続けている。
考えてみればおかしなことだが、ハインのわがままを本気で嫌だと感じたことはなかった。
これも惚れた弱みというやつだろうか。

( ^ω^)「はあ……仕方ないおね。そこの公園寄って自販機で何か買うお」

从 ゚∀从「よっしゃ!」

ガッツポーズ。こういう風に全身で感情を表せるところも僕が好きなところだ。見ているこっちも嬉しくなる。
彼女をベンチに座らせ、自販機へと向かう。

( ^ω^)「今月も厳しいお……」

小学生の頃から彼女のわがままに付き合っていたため財布が厳しくなかったことなどほとんどなかったのだが。

( ^ω^)「ホットココアと……何にするかお」

昼食代を削ることを真剣に検討しつつ、ホットココアとカフェオレを購入。
僕はブラックの方が好きなのだが、男勝りなくせに甘党という乙女な一面を持つ彼女のために、一応二つとも甘いものをチョイス。
火傷するかと思うくらい、予想以上に熱い缶をポケットに突っ込み急ぎ足でベンチへ。

174 名前:( ^ω^)秋は深まるようです。 投稿日:2011/10/29(土) 01:32:42 ID:qXLp/pKo0
( ^ω^)「ほら、ココア。熱いから気をつけるお」

从*゚∀从「おう、サンキューなブーン」

にっこりと心底嬉しそうなハインを見てるとジュース代くらい別に良いかなと思えてくる。
たとえ明日のお昼には死ぬほど後悔すると知っていても。

ベンチに腰掛け、プシュと缶を開けて甘ったるいカフェオレを口に含む。
横目で彼女を確認するとココアが熱かったのかふーふーと冷ましながら飲んでいる。

从*-∀从「はあー、なんか落ち着くなー」

僕はお前の隣にいるとまったく落ち着かないと言いたい。もちろん言わないが。

( ^ω^)「そうだおね、なんか懐かしい感じがして落ち着くお」

昔この公園でハインと遊んでいた時のことを思い出す。あの頃も僕たちはこんな関係だった。
僕たちの関係はあの頃から変わってない。ハインが僕を振り回して、僕はハインのわがままに付き合って。
そんな関係は変わってないはずなのに、あの頃と今は何かが決定的に変わっている。それが妙な懐かしさの原因なのだろうか。

( ^ω^)「……昔と何が変わったのかおね」
思わず口にしてしまう。

从 ゚∀从「んー何が?」

( ^ω^)「いや僕たちも昔を懐かしむ程度には何か変わったんだなぁって」
ハインは少し考えて言った。
从 ゚∀从「そりゃ……まあオレらだって成長したしなあ」
( ^ω^)「なんか寂しいおね」
関係自体は変わらなくても、彼女も僕も変わってしまったということか。あの頃にはもう戻れない。

175 名前:( ^ω^)秋は深まるようです。 投稿日:2011/10/29(土) 01:35:08 ID:qXLp/pKo0
( ^ω^)「……」

从 ゚∀从

从 -∀从「……あーもう」

( ^ω^)「!」
そう言うと急に彼女は手を握ってきた。一瞬驚き逃れようとする。
しかし彼女の手にしっかりと捕らえられているため逃げれない。
从 ゚∀从「そんな寂しそうにすんなっての」
その言葉に驚く。今僕はそんなに顔に出ていたのだろうか。
从 ゚∀从「顔に出なくったって分かるっての。長い付き合いなんだから」
あっけらかんとそう言う彼女。その手から伝わる暖かさに安心しそれを求めて少しだけ強くその手を握り直す。

( ^ω^)「暖かいお」

从 ゚∀从「おう」

( ^ω^)「暖かくて、すごく……」

从 ゚∀从

( ^ω^)「ほっとするお」

从 ゚∀从

从*゚∀从「へへっ」

はにかむ彼女を横目に、空を見上げる。

176 名前:( ^ω^)秋は深まるようです。 投稿日:2011/10/29(土) 01:38:50 ID:qXLp/pKo0
空気が冷えてきたせいか寂しげな空に、月がハッキリよく見える。ピリッ肌を刺すような冷たい風が秋の深まりを知らせる。
( ^ω^)「もう秋だおね……」
从 ゚∀从「……そうだな」
そう言って彼女はギュッと手を強く握った。
( ^ω^)「おっ」
嬉しくなって僕も握り返す。
从 ゚∀从「むっ」
すると彼女が更に強く握り返してくる。僕もまた、そうする。
それを何度も繰り返す。
从 ゚∀从「くくっwww」
( ^ω^)「おっおっwww」
何だか可笑しくなって二人で笑う。何が可笑しいのか分からないのに、可笑しくてたまらない。
それでいて僕も彼女も手を放そうとはしない。
( ^ω^)「おっ、もうこんな時間だお。ハイン早く帰るお」
そうして昔より少しだけ近くなった距離を繋いだ手の温もりに感じながら
从;゚∀从「ちょ一人で勝手に走って行こうとすんなバカ!」
昔より少しだけ深まった仲で
「門限に間に合わないと叱られるんだおー!」
これからも少しずつ変わりながら
从 ゚∀从

从 ^∀从「ったく……仕方ねえなあ」

「おーい!ハイーン早く来るおー!」

从 ゚∀从「うっせえ!今行くっての!」

从 ^∀从秋は深まるようです。

177 名前: ◆ILtf6me/DY 投稿日:2011/10/29(土) 01:40:13 ID:qXLp/pKo0
終わり。

行数制限のバカヤローーーーーーーーーーーーーッ

戻る

inserted by FC2 system