作品投下スレ

243 名前:( ^ω^) 愛し続けるようです ◆rK4mD419rc[sage] 投稿日:2011/10/29(土) 05:03:19 ID:90oSZeWU0
ある昼下がり、妻が死んだ。


その妻の死から数ヶ月後、僕の前に妻は再び現れた。足首から先をうっすらと消して。




ξ゚听)ξ

妻の名はツンといった。
家事全般をこなし、研究に没頭する僕を常に気遣い、近所付き合いも良好。
彼女は正に理想の妻だった。その妻がある夏の昼下がり、交通事故に出くわし、若くしてこの世を去った。僕らの間に子供はいなかった。
孤独に埋もれた僕は研究も何もかもを放り投げて自宅に引きこもった。
そうしてただ生き永らえていた僕の前に、彼女は再び現れた。
幽霊となって、僕のもとに。


霊魂などといったオカルト現象は今まで半信半疑だったが、まさか本当に目の前で起こるとは思ってもいなかった。
しかし幽霊とはいえ妻は妻だ。

僕は妻を愛している。今でも変わらず。
だから僕は妻を、ツンを受け入れた。

244 名前:( ^ω^) 愛し続けるようです ◆rK4mD419rc[sage] 投稿日:2011/10/29(土) 05:05:47 ID:90oSZeWU0
幽霊となったツンと再び暮らし始めて数日経った。ツンとは会話できているが、彼女は同じ内容しか話さない。

ξ゚听)ξ「ごめんなさい、本当に、ごめんなさい」

( ^ω^)「いいんだお、こうして僕らまた会えたんだから。例え君が幽霊でも、僕は君を受け入れ、愛し続けるお」

ξ゚听)ξ「ちがうの、そうじゃない、ちがうの」

( ^ω^)「何が違うんだお?何も違わないお。僕の気持ちはこれからも変わらないお」

ξ゚听)ξ「ねえ、ブーン、…私を見て」

( ^ω^)「見てるお。しっかりと」

ξ゚听)ξ「ちがうの、ちがうのよ」

毎日まったく同じ内容の会話を、僕らは続けている。朝起きて、食卓について、そこから太陽が沈むまで、同じ対話を延々と巡らせている。
そして太陽が沈むと同時に、彼女は泣きだし、僕はその様子を見て考察を重ねている。
きっとツンは、自身が幽霊になってしまったことに戸惑っているんだ。まだ混乱していて、だから同じ言葉しか出てこないんだ。
まだ幽霊としての自分に馴染んでいないのだろう。きっと、そうだ。

245 名前:( ^ω^) 愛し続けるようです ◆rK4mD419rc[sage] 投稿日:2011/10/29(土) 05:08:11 ID:90oSZeWU0
(´・ω・`)「内藤さん」

目の前に白衣の男が座っている。ツンが事故で緊急搬送されたとき、病院で彼から説明を受けた気がする。
確かこんな顔だった。同じ顔だと、思う。ネームプレートには「ショボン」と表記されている。

(´・ω・`)「内藤さん、しっかりしてください。あなたの奥さんは」

( ^ω^)「わかってますお」

僕はツンの事情をショボンに話した。しかしこの様子だと、どうやら彼は信じてくれていないようだ。
傍らの白衣の天使も、天使らしからぬ侮蔑と憐憫の表情で僕を見ている。このままここにいても精神科を勧められるだけだろう。
僕は諦めて席を立ち、ショボンに軽く頭を下げてその場を後にした。


僕は次に、大学時代からの友人であるドクオのもとを訪れることにした。十年来の付き合いである彼なら、きっとツンのことも信じてくれるはずだ。

('A`)「いい加減にしろよ、お前の奥さんはな」

( ^ω^)「ドクオもそう言うのかお」

('A`)「お前のためを思って言ってるんだ、いいか、お前の奥さんは」

( ^ω^)「もういいお」

失望だ。
ここまで話のわからない奴だったか。大学時代のドクオとはエライ違いだ。いや、学生のときからこうだったか。どうだっただろう。
明るいリーダータイプだった気もするし、根暗だった気もする。きっと明るい根暗だったのだろう。ほら、そんな気がしてきた。

246 名前:( ^ω^) 愛し続けるようです ◆rK4mD419rc[sage] 投稿日:2011/10/29(土) 05:12:34 ID:90oSZeWU0
喫茶店に入った僕は、デレの姿をいち早く見つけることができた。彼女も気づいたようで、会釈をしてくる。
デレはツンと実の姉妹だ。きっと今のツンの事情も信じてくれるに違いない。姉妹なのだから、手を取り合うに決まっている。

ζ(゚ー゚*ζ「ブーンさん、それが酷い冗談だって気づいていますか」

こいつもか。

ζ(゚ー゚*ζ「これ以上、お姉ちゃんを苦しめないでください。お姉ちゃんは…」

なんて性悪女だ。実の姉の現状も信じないとは。ビッチが。クソビッチめ。
そういえば僕はこのビッチと肉体関係を持っていた気がする。オーガズムに達する際の声が、張り裂けんばかりの金切り声だったのを覚えている。
ということは僕は、妻の実の妹と不倫関係にあったのか。これはとんでもない事態だ。どうして今まで思い出さなかったのだろう。
いや、もしかしたら肉体関係なんて無かったのかもしれない。ツンと似た顔をしているから、ツンと間違えたのかもしれない。
ああ、そうだ、オーガズムに達する際に金切り声を上げるのはツンだ。たしか、そうだ。

どちらにしろ、このビッチにもう用はない。
僕は早々に席を立ち、喫茶店を後にした。

帰宅するとツンがリビングで俯いていた。この状況では仕方のないことだろう。誰も自分を信じてくれないとは、なんと孤独なことだろうか。
しかし僕がいる。僕が彼女の存在を肯定する。彼女は魂のみとなって、ここに存在している。

( ^ω^)「大丈夫だお、ツンが幽霊でも、今はここに存在しているお」

ξ゚听)ξ「ちがうの、ちがうのよ」

心配しないでいい、と抱きしめた瞬間、僕は先ほどの病院の椅子に腰掛けていた。よく考えると先ほどではないかもしれない。十年ぶりな気もしてきた。でもついさっきかもしれない。
抱きしめていたはずのツンは、いつの間にか僕の斜め後ろに座していた。目前には白衣の男。ネームプレートには「ショボン」。傍らには白衣の天使。

247 名前:( ^ω^) 愛し続けるようです ◆rK4mD419rc[sage] 投稿日:2011/10/29(土) 05:16:22 ID:90oSZeWU0
(´・ω・`)「内藤さん、もう一度、しっかりよく考えてからお答えください。あなたの奥さん、ツンさんは」

( ^ω^)「事故で死んだけど、霊魂となって僕のもとにまた現れてくれましたお。今だって後ろに座ってますお。僕にはしっかり見えますお」

ξ゚听)ξ「ちがうの、ブーン、ちがうの」

俯いていたショボンが、不意に顔を上げていっそう険しい表情を見せた。

(´・ω・`)「奥さん、ここまで重度の脳ダメージですと、入院しても完全に治癒できるかどうか…」

( ^ω^)「え?」

ξ゚听)ξ「そんな…」

なんだ、いったい、なにが。ショボンには、ツンが、あれ?

( ^ω^)「ツンが見えているのかお?」

(´・ω・`)「……」

ξ゚听)ξ「ブーン…」

どうして黙るんだ。どうしてそんな目で僕を見る。その目で見るな。僕を見るな。

ξ゚听)ξ「あのね、ブーン、よく聞いて」

やめろ。見るな。逃げたい。動かない。動け。怖い。見るな。僕を、

248 名前:( ^ω^) 愛し続けるようです ◆rK4mD419rc[sage] 投稿日:2011/10/29(土) 05:18:24 ID:90oSZeWU0
ξ゚听)ξ「私ね」

見ないで

ξ゚听)ξ「ちゃんと、生きてるのよ」


(  ω )



(´・ω・`)「内藤さん、しっかりしてください。あなたの奥さんは」

('A`)「お前のためを思って言ってるんだ、いいか、お前の奥さんは」

ζ(゚ー゚*ζ「これ以上、お姉ちゃんを苦しめないでください。お姉ちゃんは…」


ξ゚听)ξ「生きてるのよ、私、ちゃんと」


車椅子を動かして、ツンが僕のすぐ真横に来る。

ξ )ξ「事故で、私の足、こんなになっちゃったけど」

車椅子に座る彼女の足首から先は、何もなかった。

ξ )ξ「ブーンが無事ならいいって思ってたけど、ブーンのほうが、私より苦しんじゃう結果になっちゃって、ごめんなさい、本当に、ごめんなさい」

彼女の目じりから、水滴が溢れていく。

249 名前:( ^ω^) 愛し続けるようです ◆rK4mD419rc[sage] 投稿日:2011/10/29(土) 05:19:25 ID:90oSZeWU0
ξ;;)ξ「私がもっとちゃんと注意していれば、こんなことにはならなかったよね…。ごめんなさい、ごめん、なさい…」

指で拭った彼女の涙はとても温かかった。この温かさに包まれて死んでもいいと思った。
愛しているよ、と呟くと、ツンはいっそう涙を流した。とても綺麗な、泣き顔だった。



目を開けると白い天井が広がっていた。ここは僕らの新しいマイホームだったろうか。
ならばツンはどこだろう。朝食の準備をしているのかもしれない。いつもはおかずが卵焼きだけれど、たまには目玉焼きがいいなあ。
ツンは目玉焼きに何をかけるだろうか。僕は塩胡椒だけれど、ツンは醤油かもしれないな。ああ、朝食が楽しみだ。


                               完

250 名前: ◆rK4mD419rc[sage] 投稿日:2011/10/29(土) 05:21:35 ID:90oSZeWU0
申し訳ありません、こちらの不注意で7レスいってしまいました
ルール違反なので審査からはずしてもらって構いません
長くなってしまい本当申し訳ないです

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