- 358 名前:無題:2011/10/29(土) 17:35:36 ID:vsDDCQ8Q0
きっかけはそれだけだった。
( ^ω^)
帰り道で、一匹の黒猫が死んでいるのを見つけた。
特に珍しいものでもなんでもない。
車に轢かれたのだろうと思った。
たったそれだけのことだった。生理的嫌悪感からその猫だったモノから目を背け、立ち去ろうと踏み出す。
( ^ω^)
なのに、目を離せなかった。動けなかった。
内蔵や骨が飛び出し、艶のある黒い毛並みが未だに流れ出る赤い血に染まる。
月明かりに照らされた黒と朱のコントラストが一種の芸術のように輝く。
その冷たさと残酷さは、
吐き気がするくらい、
美しかった。
- 359 名前:無題:2011/10/29(土) 17:36:11 ID:vsDDCQ8Q0
不意に、何かが身体の奥底から湧き出してきた。
叫びたかった、泣きたかった、怒りたかった、悲しかった、傷付けたかった
悔しかった、壊したかった、すがり付きたかった、嬉しかった。
( ^ω^)
この強烈な衝動を、エネルギーを僕はどうすれば良いのだ。
考える間にも衝動は大きくなっていく。
そして、それが臨界点に達した時、僕は走り出していた。
始めはおそるおそる、そして徐々に大胆に。
気がつけば僕は深夜の住宅街を全力疾走していた。
- 355 名前:無題 ◆RXNH5Qccj6:2011/10/29(土) 17:32:52 ID:vsDDCQ8Q0
- ⊂(#^ω^)⊃「ぶぅぅぅぅううううううううううん!!!」
叫ばずにはいられない。
衝動で空気を震わせ、自分を縛るものや敵対するもの全てを吹き飛ばし、ただひたすら全力で走る。
鈍重な身体が煩わしい。
無駄なものは棄てろ。
全て振り切れ。
もっと速く、もっと速く。
⊂(#^ω^)⊃「おおおおぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!」
今ここにいるのは僕一人。
ああ、今、僕は自由だ。
- 356 名前:無題:2011/10/29(土) 17:33:24 ID:vsDDCQ8Q0
- ⊂(#^ω^)⊃
体が軽くなる。
視界はスローになり、聞こえるのは自分の心臓の鼓動だけ。
これが全力ということか。
感情の爆発に身を任せることは、こんなにも気持ちの良いことだったのか。
自由とは、こんなにも
孤独なものだったのか。
⊂(; ω )⊃「……お?」
孤独。
それを感じた途端、僕の自由は消え去った。
- 357 名前:無題:2011/10/29(土) 17:33:57 ID:vsDDCQ8Q0
- それから僕は近所の人が呼んだ警察に捕まりかけ、再び全力で逃げ出した。
なんとか逃げ切ることは出来たが、よくもまあ頑張ったものだ。
火事場の馬鹿力万歳。
それと、あの衝動はあれからそのなりを潜めている。
昨日、同じ場所で全力疾走してみたがあの全能感とも言うべき感覚は湧いて来なかった。
自由とは遠いものだ。
そして今、僕は普通の生活をして過ごしている。
何かと不満も多いが概ねほどほどに頑張っている。
これからもそうやって僕は、全力ではなくほどほどに、頑張って生きていくのだろう。
- 360 名前: ◆RXNH5Qccj6:2011/10/29(土) 17:37:44 ID:vsDDCQ8Q0
- 終わり
本当にお騒がせしましたすいませんでした
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