作品投下スレ

40 名前:通学路のようです 投稿日:2011/10/28(金) 21:31:50 ID:Yc.XoD..0

 通学路で猫が死んでいた。

 血糊と臓物とをぶちまけて。
 真白の毛並みをぐちゃぐちゃ汚して。

ζ(゚ー゚*ζ「本当に血が詰まっていたのか知りたかったの」

 彼女はそう言って笑ったから。
 きっとそういうものなのだろうと僕も思った。

( ・∀・)「君の疑問は晴れたかい」

 僕が問えば君は曖昧に笑ってみせた。
 
 通学路で猫が死んでいた。

41 名前:通学路のようです 投稿日:2011/10/28(金) 21:32:25 ID:Yc.XoD..0

 通学路で猫が死んでいた。

ζ(゚ー゚*ζ「だって、わからないじゃない」

ζ(゚ー゚*ζ「本当に、このお腹の中、臓器が蠢いているのかとか」

ζ(゚ー゚*ζ「本当に、この皮膚の下、血管が這い巡っているのかとか」

ζ(゚ー゚*ζ「知識としてはあるけれど、それが本当かなんて、わからないじゃない」

 さくさくと。
 死んだ猫の四肢に包丁を差し込みながら。
 何でもない事の様に彼女は言った。

 アスファルトに沁み込んだ血は、街灯に照らされ黒く輝く。

( ・∀・)「そういうものかな」

ζ(゚ー゚*ζ「そういうものよ」

 通学路で猫が死んでいた。

42 名前:通学路のようです 投稿日:2011/10/28(金) 21:32:57 ID:Yc.XoD..0

 通学路で猫が死んでいた。
 注意喚起のプリントが配られた。

 彼女はそれを、白い人差し指と親指で摘みあげ。
 ふぅん、と面白くなさそうに呟き目を通す。

( ・∀・)「猫殺しの不審者」

 僕は茶化すように彼女に言う。
 丁寧に、プリントを紙飛行機の形に折る。

ζ(゚ー゚*ζ「ただの知的好奇心なのに」

ζ(゚ー゚*ζ「ただの探究心なのに」

 彼女は唇尖らせ不平を漏らす。
 折り方が分からないと呟く彼女に折り方を教える。

 僕の紙飛行機は秋空の下、よく飛んだ。
 彼女の紙飛行機は飛ばなかった。

 通学路で猫が死んでいた。

43 名前:通学路のようです 投稿日:2011/10/28(金) 21:33:40 ID:Yc.XoD..0

 通学路で猫が死んでいた。

( ・∀・)「それで君の好奇心とやらは」

( ・∀・)「君の探究心とやらは、満たされたのかい」

 彼女の行為を離れた所から見つめながら。
 僕は何でもない事の様に問う。

ζ(゚ー゚*ζ「この世界はわからないことだらけだもの」

 他人事のように彼女は答えた。
 よく研がれた包丁は簡単に猫の身体を裂いた。

ζ(゚ー゚*ζ「猫のことはわかったかもしれない」

ζ(゚ー゚*ζ「でも犬は、兎は、牛は、豚は」

ζ(゚ー゚*ζ「猿は、鳥は、鯨は、猪は、鼠は、狼は、蟲は、狐は、鯱は、」

ζ(゚ー゚*ζ「人間は?」

 僕を見つめる彼女の眸は、どこまでも透明で。

44 名前:通学路のようです 投稿日:2011/10/28(金) 21:34:14 ID:Yc.XoD..0

ζ(゚ー゚*ζ「この世界はわからないことだらけだわ」

( ・∀・)「わかりきるまで、君はそうやって殺すのかい」

ζ(゚ー゚*ζ「殺してないわよ」

ζ(゚ー゚*ζ「調べていたら死んでしまっただけ」

 薄いゴム手袋をその手から外しながら。
 子供の間違いを正すように彼女は言った。

( ・∀・)「そうかい」

( ・∀・)「それなら、君の気の済むまで、世界を解体すると良いよ」

ζ(゚ー゚*ζ「言われなくても」

ζ(゚ー゚*ζ「そうさせてもらう心算よ」

 彼女はうとりと心酔するように笑った。
 僕は他人事のように笑った。


 通学路で僕が死んでいた。

45 名前: ◆Zz0A0Wg16Q 投稿日:2011/10/28(金) 21:35:06 ID:Yc.XoD..0
以上になります。

次の方どうぞ。

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