- 369 名前: ◆iMrLtJTJZA:2011/10/29(土) 17:47:51 ID:i66xiAX6O
- くるりくるくる踊りませう、踊りませう。
今宵はハロウィン、ワタクシ達の時間。
良い子は楽しく遊びましょうか。
悪い子は今すぐお帰りなさい。
この方の牙が食い込む前に。
その方の叫びを聞く前に。
あの方の爪が届く前に。
どの方の目にも留まらぬ内に。
天へも行けず、地にも降りられず。
哀れなウィルにはなりたくないでしょう?
哀れなウィリアムのようです
- 370 名前: ◆iMrLtJTJZA:2011/10/29(土) 17:48:39 ID:i66xiAX6O
- (( ^ω^)「Trick or Treat!」
家々のドアを叩き、お菓子をねだる子供達。
ドアが開く度に漏れ出す、甘い香りにうっとりと頬を緩ませます。
(*゚ー゚)「はいどうぞ。小さな悪魔さん達」
(*゚∀゚)「ありがとう!」
川*д川「チョコレートだぁ」
ミ*,,゚Д゚彡「美味そうだから! スッゴく美味そうだから!」
(*゚ー゚)「ふふ、貴方も大変ね」
幸せそうな子供達を見ながら、お菓子をくれたおばさんが付き添いのお兄さんに声を掛けます。
カボチャのランタンを持ったお兄さんは困ったように眉を下げました。
(( ^ω^)「次行くお!」
( "ゞ)「……!」
ずりずりと、子供達はお兄さんの腕を掴んで進みます。
引きずられていくお兄さんを見ながら、おばさんはもう一度くすくす笑いました。
- 371 名前: ◆iMrLtJTJZA:2011/10/29(土) 17:55:41 ID:i66xiAX6O
- (*゚∀゚)「一杯貰えたな! 貰いすぎてカゴから溢れちゃう!」
川д川「ちょっと食べちゃおっか。持って帰る途中に落としちゃいそう」
ミ*,,゚〜゚彡「はむっ、はぐむふ美味っ、美味っ」
((; ^ω^)「もうちょい落ち着いて食えお」
楽しそうにきゃいきゃいと。
騒ぐ子供達の後ろに怪しい影。
( ^Д^)「おい、そのお菓子寄越せ」
後ろに立っていたのは町で評判の悪たれで、小さい子供やお年寄りにまで手を出す最低野郎でした。
( ^Д^)「腹減っちまってよ。あんま甘いもん好きじゃねーんだけど、貰ってやるから全部寄越せ」
(*゚∀゚)「やだよ。お兄さんも貰いにいけばいいじゃん」
( ^Д^)「んな事出来るかよ。ほら、良いからとっとと寄越せ」
そう言ってバンシー姿の女の子からカゴを取り上げました。
川#д川「返してよ!」
( ^Д^)「やなこった。……うーあんめー」
ミ#,,゚Д゚彡「貞ちゃんの返さないとダメだから! ダメだから!」
- 372 名前: ◆iMrLtJTJZA:2011/10/29(土) 17:58:24 ID:i66xiAX6O
- 狼男の少年が青年の服の裾を掴みます。
青年は暫く無視していましたが、煩わしそうに、蚊を振り払うように足で蹴り払いました。
バラバラとカゴからお菓子が散らばります。
( ^Д^)「うっせーな。Trick or Treat。これで良いんだろ。痛い目見たくなかったらお菓子寄越せよ」
こぼれたお菓子を拾って食べながら青年はげらけら笑いました。
底意地の悪い、屑のする笑いでした。
(( ^ω^)「……Trick and Treat」
( ^Д^)「んあ?」
(( ^ω^)「お兄さんはやっちゃいけない事をしたお。僕らからお菓子を取り上げて、それにいじめたお」
かぱり、と笑う小鬼の面を少年が外すと、その下からはギョロリと動く不気味な目。
ゾッとするような冷たい視線に青年も思わず顔を引き攣らせました。
( <●><●>)「化け物浮かれるメリーハロウィン。良い子にお菓子を、悪い子にはおしおきを」
(*゚∀゚)「お祭りを邪魔する悪い子は誰かな」
川д川「悪戯もお菓子もなんて欲張りさん」
ミ,,゚Д゚彡「おしおき! おしおき!」
気づけば囲まれ、迫りくる子供達に逃げ場がありません。
- 373 名前: ◆iMrLtJTJZA:2011/10/29(土) 17:59:53 ID:i66xiAX6O
- (# ^Д^)「調子乗ってんじゃねーぞガキがぁ!」
自分が子供相手に怯えていることに気付いて、頭に血が上った青年は一人の子供を蹴り飛ばそうとしました。
けれど痛みにうずくまり悲鳴を上げたのは青年の方です。
鋭い何かに引き裂かれた、そんな痛み。
首には長い髪が絡み付き、ぎりぎりと締め上げていきます。
(; Д )「ぐっ……が、あ……」
( <●><●>)「そろそろランタンを新しくしたいと思っていた所です。丁度いい」
(; Д )「っ、おい、そこのあんた、助けてくれよっ!」
( "ゞ)
叫ぶ青年に、ランタンのお兄さんは微笑みを返すだけ。
( <●><●>)「ウィルオーウィスプ。天にも地にも行けず、死すら許されぬ常闇をさ迷う哀れな燃えさし。ハロウィンのカボチャはあれを模しているのですよ。知っていましたか?」
(; Д )「あっ、ああ……」
( <●><●>)「次が見つかるまで貴方には私達のランタンになって貰います。彼のように、それが化け物達のお祭りを汚した罰」
青年の意識が黒く染まるにつれ消えていく古いランタン。
それは心の底からの安堵の表情を浮かべ、とろりと夜の中に消えていきました。
( <●><●>)「さようなら哀れなウィル。こんばんは哀れなウィル」
終わらない夜へようこそ。
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