作品投下スレ

443 名前:('∀`)は微笑むようです ◆7Qjwcv.qXs:2011/10/30(日) 02:29:35 ID:UUwjLSWk0
「――を前提にお付き合いしていただけませんか?」

('A`)「えっ」

川*д川

空は朱の色。季節は秋。
平安の頃より由とされる風情ある刻限に、僕は彼女に”アイ”を告げられた。

川д川「だって、寂しいじゃありませんか。空はこんなに朱いのに」

つるべが落ちる速度で空は朱に染まり、やがては紅に暮れる。
そんな雅な秋空の元、ただ一人都会のビルの屋上で佇むのは確かに寂しい。
一人よりも二人。たったそれだけで僕らは孤独という常闇から救われるのかもしれない。

('A`)、「手を……、繋いでくれる?」

そっと触れる指先は冷たい。でも、血潮の脈動が確かに伝わってくる。

触れ合うこと。伝え合うこと。分かち合うこと。
思いを。時間を。そして、”生きる”という行為そのものを。
僕らは、今、確かに共有している。
だからこそ、こうして僕らは二人でいるのだ。

だからこそ――

川*^ヮ 川 「心中を前提にお付き合いしていただけませんか?」

満面の笑みで、彼女は僕にもう一度告げたのだ。

444 名前:('∀`)は微笑むようです ◆7Qjwcv.qXs:2011/10/30(日) 02:30:35 ID:UUwjLSWk0
秋風が吹く。頬を伝う空気は刺す様に痛い。
頬を紅藍に染める空を見上げる。嗚呼、人肌が恋しい。もうそんな季節なのだ。

誰もが黄昏る逢魔が刻に、僕らは互いに見つめ会う。
既に空は血の様に紅かった。結ばれた手の影は長く、何物をも深く黒に染めている。

川ヮ川「ずっと、寂しかった……。でも、それもお仕舞い。もう寂しさを感じることも無いわ。
     貴方の笑顔を見ながら、私はそっと闇に包まれるの」

('A`)「貞子さん……」

彼女の笑みは夢現のようで。虚ろげで。儚い。
すすきを揺らす秋風が、その存在を掻き消してしまうかのような。
それほどまでに彼女は”危うい”。それを魅力的に感じた先程までの僕は愚かなのだろうか。
救いが無いほどに、愚かなのだろうか。

川д川、 「私ね、18歳には成れないんだ」

('A`) 「えっ……」

彼女の自叙は、非現実的なまでに鮮やかで。
数奇で。綺麗に彩られて。まるで物語のように整っていた。

例えばそれは、夢見る少女のヒロイズム。
永遠の美しさを讃えた寂しい乙女の物語。
或いはそれは、運命に流される少女のニヒリズム。
終息に価値を求める退廃に充たされた悲しい娘の闘病記。
そう、つまりは――

('A`)「偽りだね……?」

445 名前:('∀`)は微笑むようです ◆7Qjwcv.qXs:2011/10/30(日) 02:31:51 ID:UUwjLSWk0
('A`)「作り話でしょう?今の。映画とか小説とか色々混ざってるけど」

川д川「……」

そっと訪れた沈黙が彼女の怒りを連想させる。
不穏な空気を感じて後ずさる僕に――

川ー川「いけない?」

果たして彼女は、ふふっと息を漏らした。

('A`)「貞子さん、君はいったい何がしたいの」

川д川「確かに私の全ては偽り。でもね、“18歳には成れない“。これだけは本当になるの」

川*ヮ 川「あなたと死ぬことでね」

嘘と偽りにまみれ退廃の虜となっている彼女。
だが、その笑顔は、嗚呼、やはり。どうしようもなく魅力的だった。

('ー`)「いいですよ」

川*д川「ドクオくん……!」

('ー`)「君とならば、何処までも」

何処までも。
本当にそう思えるならば、僕は本当に愚か者なのだろう。

だからこそ、とても残念に思えた。

446 名前:('∀`)は微笑むようです ◆7Qjwcv.qXs:2011/10/30(日) 02:32:27 ID:UUwjLSWk0
川д川「――!――!」

もう言葉は要らない。歩みを、進めよう。

川д川「ドクオくんならきっと解ってくれるって思ってた。私ね、今生きてきた中で一番――」

壁の上で歌うように語る彼女へと。

川*^ヮ 川「嬉しい!」

('A`)

そして手を取り――

川*//ヮ 川「ドクオくん……」

トンッ

川*^ヮ 川

('A`)

突き落とそう。

川゜д川


ドサッ

('A`)

447 名前:('∀`)は微笑むようです ◆7Qjwcv.qXs:2011/10/30(日) 02:33:02 ID:UUwjLSWk0
足元数十メートル下では彼女が黒い塊と化している。
もうここからはあの愛おしい笑顔は見えないことを実感した。

('A`)「ごめんね……」

('A`)「それでも……、僕は生きていたいんだ」

('A`)「ごめんね」

くつくつと、ココロの奥底から何かが湧き上がる。
まるでこの空のような感情は、僕の歪んだ”アイ”故のものだろう。

('A`)「君となら一緒に居られると思ったのに……」

大丈夫。理解している。もう繰り返すことは無い。
僕は人とは歩めない。拳を振り上げる父に鋏を突き立てたあの刻から。

きっと、ずっと僕は独りきりだ。
これまでも。こからも。ずっと彼岸に立ち続ける。

さあ行こう。”シ”の向こう側にある”シ”よりも濃厚な”セイ”を感じるために。
歪んだココロに相応しい、歪んだ微笑をたたえて。





('∀`)

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