- 56 名前:ミセ*゚ー゚)リの幼なじみは人間らしいようです 投稿日:2011/10/28(金) 21:50:34 ID:zxsy2wg20
この子は私の幼なじみ。
彼女はね、なんにだってなれるんだ。
(゚、゚トソン
ミセ*゚ー゚)リ「トソンちゃんどったの?」
(=ノω;)「ひっく、ひっく」
ミセ*゚ー゚)リ「あちゃー。バカな子だなぁ、風船が木に引っかかっちゃったのかー」
(゚、゚トソン「自業自得です。
泣くほど大切なものなのに、手を離したりなんかするからですよ」
ミセ*゚ー゚)リ「トソンちゃんそれ言い過……」
ばさっ。言葉の終わりを待たずに隣から飛び立った影が目の前を横切り、私の前髪をふわり揺らす。
影の正体を目で追うと、ちょうどトソンちゃんが風船のヒモを手に、少年の前に降り立ったところだ。
(゚、゚トソン カサカサ・・・
頭から伸びた触角をぴくぴくと動かしながら、
巨大なゴキブリに姿を変えたトソンちゃんは、そっと子供に風船を差し出した。
- 57 名前:ミセ*゚ー゚)リの幼なじみは人間らしいようです 投稿日:2011/10/28(金) 21:51:14 ID:zxsy2wg20
(= ω )ノ「……ひっ」
(゚、゚トソン カサ・・・
(=;ω;)ノ「ぎゃー! くるなバケモノー!!」
(゚、゚トソン
(=;ω;)ノ「うわーん! おかあさーん!!」
_,
ミセ#゚д゚)リ「待たんかクソガキー! 風船とってあげたのになんだその態度はわりゃあああ!!」
逃げ出した子供の腕を折らんばかりの勢いで振り下ろした手は、空気を掴んで終わった。
遠ざかる背中を見て、自然と私の口から舌打ちが漏れる。
ミセ#゚д゚)リ「次に会ったらただじゃおかねー……」
(゚、゚トソン「いいんですよ。それより、ミセリさん」
(゚、゚トソン「風船、いります?」
六本の足の内の二本を器用に使い、リンゴみたいに真っ赤な風船が差し出される。
私はためらうことなく両手を伸ばした。
ミセ*^ー^)リ「うん! ちょーだい!」
私の幼なじみはちょっと変わった人間だ。
彼女はなんにだって変身出来るんだ、だから高い空も飛べるし、深い海も泳げる。
- 58 名前:ミセ*゚ー゚)リの幼なじみは人間らしいようです 投稿日:2011/10/28(金) 21:51:58 ID:zxsy2wg20
生まれたときからの幼なじみだから知ってる。
厳しい口調だけど優しい性格のトソンちゃんが、何度も困ってる人を助けようとしたこと。
なのに。
どうしていつも、彼女に浴びせられるのは冷たい結末ばかりなんだろう。
ミセ* ー )リ「トソンちゃん、なんで」
(゚、゚トソン「ミセリさんは私以外のおっきなゴキブリに会ったら怖いですか?」
ミセ* ー )リ「そりゃあ、怖いよ。
でっかいゴキブリなんて気持ち悪いじゃん」
(゚ー゚トソン「ふふ。そういうことです」
どうして、橋から落ちた人を助けようとしたトソンちゃんが撃たれなくちゃいけないんだろう。
どうして、でっかいゴキブリってだけで「化け物」になっちゃうんだろう。
ミセ* ー )リ「ていうか、なんであんな奴ら助けるの。
ほっとけばいいじゃん、あんな見せかけだけの形に捕らわれた奴らなんか」
(゚、゚トソン「そうですね。なんででしょうね。
私が彼らと同じ人間だからじゃないですか?」
- 59 名前:ミセ*゚ー゚)リの幼なじみは人間らしいようです 投稿日:2011/10/28(金) 21:52:28 ID:zxsy2wg20
ミセ#゚ー゚)リ「なんで怒んないのさ。
分かってるの?なんにも悪いことしてないのに、撃たれたんだよ?
死んじゃうんだよ?もっと怒っていいんだよ?泣いていいんだよ?」
(゚、゚トソン「そういうの苦手なんです。
私の分までミセリさんがしてくれてるじゃないですか。
だからそれでいいです。得意な人がやればいいんです」
ミセ#゚ー゚)リ「意味分かんない」
(゚ー゚トソン「それでいいんですよ」
ミセ ゚ー゚)リ
(゚、゚トソン「……花」
(゚、゚トソン「まだ花にだけなったことがないんです。
花になっても愛されなかったらどうしようって、怖かったから」
(゚、゚トソン「私はここで花になります。
高い空を飛んでも深い海を泳いでも、誰からも愛されなかったけど、
こんな私だって、誰にでも愛される存在になれるのだと、証明したい」
最期だから。と。
そう微笑みながら、私の幼なじみは植物へと姿を変えた。
- 60 名前:ミセ*゚ー゚)リの幼なじみは人間らしいようです 投稿日:2011/10/28(金) 21:53:11 ID:zxsy2wg20
ミセ*゚ー゚)リ「わぁ……すごい、すごいよトソンちゃん!
すっごくおっきな花が咲いてるよ!真っ白な花!」
ミセ*^ー^)リ「おめでとう!今のトソンちゃんすっごく、すーごっっくキレイだよ!!」
( ー トソン「本当、ですか……?嬉しい……ありがとう、あり……が…………」
( 、 トソン
ミセ*^ー^)リ
ミセ* ー )リ「……おやすみ、トソンちゃん。
ごめんね」
私はほんの少し笑って、泣いた。
泣きながら目の前で枯れていく彼女を抱き締めた。
その巨大な雑草に、花はなかった。
彼女はなんにだってなれる。空を飛ぶものにも、海を潜るものにも。
けれど、人に愛される存在にはなれなかった。
ミセ* ー )リ「おかしいよ。あんな人たちに愛されたいだなんて。
生きてく上でそんな必要どこにもないのに」
「それは私が人間だからですよ」
彼女の声が聞こえた気がした。
おしまい
- 61 名前: ◆j.uYa3HPOI 投稿日:2011/10/28(金) 21:54:18 ID:zxsy2wg20
- 終わりです
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