- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:19:59.31 ID:Lfv/cO5E0
――プロローグ――
ある小さな駅前のバスロータリーに、一人の小太りの男が立ち尽くしていた。
( ^ω^)「次のバスまで一時間……すっかり忘れてたお」
バスの時刻表に書かれている数字は五つだけ。
二つは朝、一つは昼、そしてあとの二つは、この男が乗ろうとしていた夕方のバス。
一つは三分前に出発したばかりとあれば、男が乗れるのはこの日最後のバスしかなかった。
(;^ω^)「うーん……困ったお」
彼がこれから向かうのは小さな村。
すぐ近くにはタクシーが一台停まっていたが、生憎彼の現在の所持金で目的地までたどり着けないのは明白であった。
( ^ω^)「こんな辺鄙な町に娯楽施設どころか喫茶店もないし、困ったお」
肩にかけた大きな鞄を下ろし、仕方なしに彼はベンチに座った。
通話でもしようものなら、すぐに電池切れをおこしそうな携帯電話を見る。
時刻は午後五時。
日の出る時間の短いこの季節、すでに太陽は地平線の彼方に沈んでいた。
( ^ω^)「寒いお。もう少し着込んでくればよかった」
身を切るような風が吹き抜ける。いくら脂肪の鎧を纏っているとはいえ、その寒さは尋常ではない。
加えて、今年のこの地域は平年以上の寒さだという。
泣き言が出るのも仕方ないことであった。
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:20:47.07 ID:Lfv/cO5E0
駅にあった自動販売機で温かい飲み物でも買おうか、そう考える男の耳に、よく聞き慣れた声が飛び込んだ。
「お前、ブーン、だよな」
自分の小さな頃から聞き慣れたあだ名が呼ばれれば、男――ブーンは反射的にそちらを向くしかなかった。
( ・∀・)「久しぶり」
ブーンの前に立つ男は、ブーンとは対照的で、すらりとした四肢に整った顔立ちである。
それでも嫌味を感じさせないのは、きっとその顔に浮かべた爽やかな笑みゆえであろう。
( ^ω^)「モララー……!? モララーも帰ってきてたのかお!?」
(;・∀・)「急に大声あげるなよ」
(;^ω^)「お……すまんお……」
モララーはブーンの隣に腰掛けると、缶をブーンに差し出した。
( ^ω^)「お?」
( ・∀・)「缶コーヒー。こんなところに座りっぱなしじゃ、寒いだろ?」
( ^ω^)「おお……今買いに行こうか迷ってたところなんだお。ありがとう」
( ・∀・)「お安い御用さ」
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:21:41.15 ID:Lfv/cO5E0
二人はほぼ同時にプルタブを開けると、ほぼ同時に湯気の立つコーヒーに口をつけた。
(;・∀・)「熱っ!?」
声を上げたのはモララーだった。
ブーンは心配そうに彼を見ながらも、呆れたように言うのだった。
( ^ω^)「自分が猫舌なの、忘れてたのかお?」
( ・∀・)「いや……あまりに寒いから、コーヒーの誘惑に負けた」
涙目のモララーは、しぶしぶ飲むことを諦めて、缶コーヒーを両手で持って暖を取ることにした。
しばらく、ただブーンがコーヒーを啜る音だけが響く。
モララーは羨ましそうにそれを見つめて、溜め息を吐いた。
( ^ω^)「モララー」
コーヒーを三分の一ほど飲んだところで、ブーンがおもむろに口を開いた。
( ^ω^)「モララーは、何で町に出てきたんだお?」
モララーはブーンと同じように上京した男だ。
そんな彼が大きな荷物の一つも持っていないとなれば、一度実家に帰った後、改めて町に来たとしか考えられないのである。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:22:26.93 ID:Lfv/cO5E0
( ・∀・)「冬休み明けにゼミのプレゼンがあってさ。
その資料を休み中に作っておかないといけなくて、駅の向こうの図書館に行ってたんだ」
( ^ω^)「おお……一流大学は大変そうだお……」
( ・∀・)「いや、僕は経営学部だからマシな方。理系は皆死にそうな顔してるよ」
そう言って、モララーはコーヒーに口をつけた。今度は熱くなかった。
( ・∀・)「ブーンは、どうして戻ってきたんだ? バイトは?」
( ^ω^)「今年は母ちゃんがうるさくて。無理言ってバイトも一週間休みにしてもらったお」
ブーンは一気に缶コーヒーを呷る。ごくごくと、音に合わせて喉が動く。
( ^ω^)「美味かったお。これ、コーヒー代」
飲み終えたブーンは厚手のジャンパーのポケットから財布を出し、小銭をモララーに差し出す。
( ・∀・)「いや、僕のおごりでいいのに……」
( ^ω^)「悪いお」
ブーンの律儀さを知っているモララーは、コーヒー代を受け取った。
彼は時に融通のきかない男なのだ。
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:23:20.30 ID:Lfv/cO5E0
( ^ω^)「バスが来るまで、まだ四十分あるお」
駅の正面にある大きな時計は、午後五時二十分を示していた。
( ・∀・)「まさか一本逃すなんてなぁ」
( ^ω^)「とんだ災難だお」
空になった缶をすぐ近くのゴミ入れに捨てに行ったブーンが再びベンチに腰掛けるのを確認して、
モララーはつい先程までよりずっと低い声でブーンに話し掛けた。
( ・∀・)「ブーン……知ってる?」
( ^ω^)「お?」
雰囲気の変わったモララーに嫌な予感はするが、いきなりの問いに答えられるはずもない。
( ・∀・)「……ドクオって、僕らと仲良かっただろう?」
( ^ω^)「仲良かったもなにも、過疎な村で小学校から高校まで、皆ずっと同じクラスだったお」
( ・∀・)「まあ、そうなんだけどさ」
モララーはなにか戸惑ったような表情で、自分から言い出した話にもかかわらず、先を続けるか迷っているらしい。
しかし僅かな沈黙の後、ブーンの知らない衝撃的なことを言い放った。
( ・∀・)「ドクオ、通り魔にあって入院してるんだよ」
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:24:10.23 ID:Lfv/cO5E0
( ^ω^)「お……?」
目の前の友人の言葉が一瞬、理解出来なかった。
そして理解した瞬間、自らの血の気が引くのが分かった。
(;^ω^)「え、でもそんなの、メールとかでも聞いてないお……!」
( ・∀・)「やっぱりな。一週間前に背後から襲われたらしい。
今日見舞いに行ったけど、僕達に心配かけたくなかったから連絡しなかったんだってさ」
その言葉にブーンは表情を緩めた。
( ^ω^)「なんだ……意識はあるのかお……」
(;・∀・)「ブーン……お前……」
( ^ω^)「ドクオ、昔っから貧弱だから、てっきり……」
( ・∀・)「……とにかく、命に別状はなかったらしい」
ブーンは安堵の息を吐いた。
ドクオは、高校までの十八年間で、一番仲の良かった人物だ。
その彼が知らないうちに事件に巻き込まれていたというのはショックだったが、無事だと知って一気に力が抜けてしまった。
( ・∀・)「……ブーン」
そんな、気持ちの緩んだブーンにモララーは何故か暗い表情のままで声を掛けた。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:24:59.72 ID:Lfv/cO5E0
( ・∀・)「……三ヵ月前、プギャーが死んだのは、まだ覚えてるよな」
唐突な話題。
モララーやドクオと同じように高校までを共に過ごした男の死に関する話題など、あまりしたいものではない。
( ^ω^)「……覚えてるお」
( ・∀・)「じゃあ、先月、ギコの家が燃えたのは知ってるか?」
(;^ω^)「……!?」
不穏な空気を感じながらも親友の無事を知って安心しきっていた心に、それは大きな衝撃を与えた。
ギコも大切な友人であり、彼に不幸が降り掛かったというのは信じたくないことであった。
( ・∀・)「僕も、今日ドクオから聞いたんだけど。幸い、家族は皆無事だったらしいけどね」
そこまで言って、モララーは口を閉じた。
ブーンが不審に思っていると、モララーは顎で道路の方向を指した。
ブーンの視界に飛び込む光。
それは待ちに待った、故郷へ向かうバスのものであった。
( ・∀・)「……この話は、また今度」
そう言って、モララーは空になった缶をゴミ入れに投げ入れ、バスに乗り込む。
ブーンも荷物を抱えて、慌てて立ち上がった。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:25:53.18 ID:Lfv/cO5E0
二人はバスの一番後ろの席に並んで座った。
しかし、互いに会話をすることはない。
乗客は二人だけだが、運転手が機嫌良さげに鼻歌を歌うために静かすぎるというわけではない。
それでも居心地は悪かった。
左右に雪の積み上げられた道を、バスはひたすら進む。
やがて前方に、街灯に仄かに照らされた看板が見えた。
“ようこそ美府村”
錆付いた看板に下手な絵とともに書かれた文字。
ブーンの故郷は、もう、すぐそこまで迫っていた。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:26:41.12 ID:Lfv/cO5E0
――( ^ω^)雪の花のようです――
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:27:38.79 ID:Lfv/cO5E0
――1――
朝の日差しが差し込むベッドの上で、ブーンは目を覚ました。
( ^ω^)「……」
身体が怠い。
それは不調とかそういう類いのものではなく、原因は心にあった。
悪夢を見たのだ。
暗闇と雪と静寂が支配する空間で、何かに追い掛けられる。それは姿どころか影すら見えない。
ひたすら逃げて、逃げて、ついには足がもつれて転んで自らの終わりを覚悟した、その時。
瞼の向こうを照らす陽光と聞き慣れた母の声によって、彼は目覚めることが出来たのだ。
J( 'ー`)し「もう九時よ。こんな時間まで寝てて、学校は大丈夫なの?」
以前は聞きたくもない小言だったが、悪夢から覚めたばかりのブーンには心地よく聞こえた。
(;^ω^)「お……。いつもはちゃんと起きられるお。今日は夢見が悪くて……」
J( 'ー`)し「あら、久しぶりにこの部屋で寝たから、緊張してたのかしらね」
( ^ω^)「分からんお」
ブーンはベッドから降り、枕元に用意してあった着替えに手を伸ばした。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:28:33.67 ID:Lfv/cO5E0
J( 'ー`)し「今日の朝ご飯はちょっと豪華よ。楽しみにしてなさい」
母は優しく微笑むと、ブーンの部屋を出ていった。
( ^ω^)「……着替えるかお」
昨日モララーにあんな話をされたから、あんな夢を見たに違いない。
故郷に帰って最初の朝、すでにブーンの気持ちは沈みきっていた。
着替えを終えたブーンが階下のリビングに向かうと、すでに両親が食卓に着いて息子の登場を待っていた。
(´・ω・`)「ホライゾン、早くしないと冷めるぞ」
父がブーンを急かす。
ブーンの本名はホライゾンであるが、彼はあだ名か名字で呼ばれることが多いため、その呼び方は少し新鮮に感じる。
ブーンが席に着くと、家族は揃って食物に対する感謝の言葉を言う。
( ^ω^)「いただきます」J('ー` )し('・ω・`)
母が用意したのは白米に焼き魚に味噌汁に漬物、伝統的な日本の朝食ともいえるような献立であった。
一人暮らしで味気ない食事ばかりのブーンにとっては久しぶりの豪勢な朝食、
迷いながらも彼が最初に口に運んだのは味噌汁であった。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:29:22.29 ID:Lfv/cO5E0
(*^ω^)「美味いお!」
ほうと息を吐けば味噌の風味が口内に広がる。
幼い頃から、母の手料理で一番好きなものは味噌汁であった。
J( 'ー`)し「あらあら。お代わりもあるからね。今日は特別にデザートもあるわよ」
先程までの暗い気持ちなど吹き飛んでしまったかのように、ブーンは食事にがっついた。
J( 'ー`)し「そうだ、ホライゾン」
母の呼び掛けに、口いっぱいに白米を頬張りながらも答える。
( ^ω^)「お?」
J( 'ー`)し「お父さん、今度新しい本出すのよ」
( ^ω^)「どんな話なんだお?」
父は箸を右手に構えながら、楽しそうに話し始める。
小説家である父は普段はあまり口数の多い方ではないが、仕事のこととなると途端に饒舌になる。
(´・ω・`)「今度は雪に閉ざされた寒村が舞台のサスペンスなんだ」
( ^ω^)「父ちゃんがサスペンスって、珍しいおね」
(´・ω・`)「まあな。
そして肝心の内容だが、ある故郷の寒村に帰省した若者が事件に巻き込まれるという話でな」
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:30:09.67 ID:Lfv/cO5E0
時折朝食を口に運びながら、ブーンは父の話に耳を傾ける。
(´・ω・`)「かつて同じ学舎で過ごした友人や初恋の女の子、さらに家族なんかも消えていくんだ」
J( 'ー`)し「結局、大昔の怪しげな儀式を復活させようとしている宗教団体が犯人なのよね」
(;´・ω・`)「母さん、何で先に言っちゃうんだよ!?」
J( 'ー`)し「あ、私ったら、また……」
母は決して悪い人間ではないのだが、少々口の軽い面を持ち合わせていた。
(;^ω^)「父ちゃん、元気出せお……」
(´・ω・`)「……」
元から元気のない眉をさらに下げる父の姿は、哀れみを誘った。
J(;'ー`)し「あ、そうだわ」
母は自分の失態を誤魔化すように、大きな声を上げた。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:30:54.78 ID:Lfv/cO5E0
J( 'ー`)し「ドクオ君が入院してるの、知ってる?」
( ^ω^)「……昨日、モララーにバス停で会って、聞いたお」
J( 'ー`)し「そう。お見舞い、ちゃんと行ってあげなさいよ」
( ^ω^)「分かってるお」
本当なら、特にすることもないブーンは三が日の翌日にこの村を出るまではぐうたら過ごすつもりだった。
しかし親友が事故にあったと聞いては無視できないし、さらに気になることもできていた。
J( 'ー`)し「お金、ある? お花くらい買っていかなきゃダメよ」
( ^ω^)「……ありませんお。少し貸してください」
J( 'ー`)し「仕方ない子ねぇ」
そう言いながらも、母は笑顔で花代と交通費を出してくれた。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:31:38.74 ID:Lfv/cO5E0
朝食を終えたブーンは父の車に乗っていた。
出版社の人間と話があるらしく、一緒に町へ向かうことになったのだ。
村の車道はどこも雪かきがしてあり、チェーンを付ければ走行に困ることはない。
しばらく車に揺られれば、景色は林道から町に変わっていた。
駅前に近付くにつれて、若干だが人が増える。
(´・ω・`)「花屋に行くならこの辺りでいいな」
車のあまり通らない道の脇に、ゆっくりと停車する。
( ^ω^)「父ちゃん、ありがとう。助かったお」
(´・ω・`)「それは良かった。お前の携帯の電池さえあれば、昨日も助けられたんだけどな」
(;^ω^)「それは言うなお……」
車のドアを閉め、駅前に向かう車を見送る。
その姿が完全に見えなくなった頃、ブーンは商店街の一角に位置する花屋へ向かった。
ブーンが町にある花屋の位置を知っているのは、村に花屋というものが存在しないからである。
いつから始めたのかは覚えていないが、母の日にはその花屋でカーネーションを買うのが恒例となっていた。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:32:32.58 ID:Lfv/cO5E0
初めて行った時は、小学校からずっと同じクラスだった友人で、地主の息子でもあるジョルジュという男と一緒だった。
彼自身は花を好きというわけではなかったらしいが、
彼の母親はわざわざ都市の花屋まで行くほど大好きらしく、よく一緒に連れていかれていたという。
そんなわけで、ブーンはジョルジュにその花屋を教えてもらったのだ。
車を降りた場所から花屋までは遠くない。
少し過去を回想しながらあるけば、あっという間に着いてしまうような距離だった。
“フラワーショップ イトウ”
看板に書かれた名前は色褪せていない。
ブーンが上京してからまだ二年も経たないのだから当然であるのだが、彼にはそれが嬉しく感じられた。
( ^ω^)「ペニサスさん、こんにちはですお」
入り口から奥に向かって挨拶をすると、一人の三十に届くか届かないかといった年頃の女性が出てきた。
('、`*川「あら、ブーンじゃない。帰ってきてたの?」
手入れのされた髪を背中まで伸ばした彼女の手には、リボンが握られていた。
( ^ω^)「あ、作業中でしたかお……」
('、`*川「あと少しだから気にしないで。
……こんな時期に来るなんて初めてじゃない。今日はどんな花が欲しいの?」
ペニサスに続いてブーンは店内に入る。
様々な花の匂いが入り交じっているが、不思議とそれは不快ではない。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:33:18.32 ID:Lfv/cO5E0
( ^ω^)「……ドクオが入院してるんで、そのお見舞いに行くんですお」
('、`*川「それは大変じゃない! ……やっぱり、元気の出るような意味の花がいいよね」
( ^ω^)「お任せしますお」
ペニサスという女は花言葉というものが好きであった。
それが花屋に生まれたからなのか、それとも関係ないのか、知る者は誰もいない。
('、`*川「その前に、まずは予算を伺おうかな」
ブーンが母に渡された金額を教えると、ペニサスは早速店内の花を見繕う作業に移った。
数分して、戻ってきたペニサスが抱えていたのは黄色い花束だった。
( ^ω^)「それは何ですお?」
('、`*川「これは早咲きの福寿草。花言葉は、幸福を招く」
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:34:08.78 ID:Lfv/cO5E0
(;^ω^)「もっとこう……分かりやすい直接的なのはないんですかお?」
('、`*川「何よ。ドクオ君が早く退院して幸せになれるように、ってちゃんと考えて選んだんだから。
黄色い花は、見てて元気が出るしね」
そう言って、ペニサスは花を包む作業に入る。
ペニサスは手慣れた様子で、あっという間に花束を完成させた。
可愛らしいブーケを受け取り、ブーンは店を出る。
('、`*川「今度帰ってきた時も、うちの花屋をご贔屓に!」
店先まで見送りに出てきたペニサスが声を上げる。
( ^ω^)「もちろんですお!」
ブーンもそれに、元気な声で答えた。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:34:53.99 ID:Lfv/cO5E0
病院までは花屋のある商店街から徒歩で十分程の距離だ。
駅からも近く、むやみやたらに規模の大きいその病院は、入速町の名物のようになっていた。
広くスペースの取られたエントランスを抜けると待合室に入ることになる。
そこで受付の看護師に患者の病室を聞けば、彼女はいとも簡単にその場所を教えてくれる。
ブーンの住む都会ではプライバシーがどうのと言われ、きっと彼は友人に会えずじまいであっただろう。
病室の並ぶエリアのエレベーターで三階まで上がり最初の角を右に曲がった奥、そこがドクオの病室だ。
久しぶりに顔を合わせたら、まずは何を話そうか。
緊張を抑え、ブーンは病室のスライドドアを一気に引いた。
('A`)「……!?」
ベッドの上で本を読んでいたドクオは、突然のその音に驚いた。
( ^ω^)「ドクオ、お見舞いに来たお!」
花を持った右手を上に上げて挨拶をしたブーンの姿に、ドクオはやっと状況を理解した。
('A`)「ブーン……あんま驚かすなよ」
最後に会った時と変わらない冴えない顔に不健康な肌の色。
基本的な外見は以前と変わらないドクオを見て、ブーンは一安心する。
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:36:23.46 ID:Lfv/cO5E0
( ^ω^)「変わらないようで、良かったお」
('A`)「いや、俺、一応何針か縫ったんだけど」
( ^ω^)「そんなの、すぐ治るお」
('A`)「やたら丈夫なお前と一緒にすんな」
ドクオは手に持った本を閉じると、ブーンの右手に目を向けた。
('A`)「なんだ、それ?」
( ^ω^)「お? これかお?」
ブーンは福寿草の花束をドクオに渡す。黄色い花が鮮やかだ。
( ^ω^)「お見舞いの花だお」
('A`)「……お前が花を選ぶなんて……頭でも打ったか?」
(;^ω^)「違うお。母ちゃんがお見舞いといったら花だ、ってうるさかったんだお」
('A`)「まあ、昨日モララーに菓子折りを貰ったから、食べ物じゃなくて助かったんだがな」
ドクオはブーンから受け取った花を脇の机に置く。
( ^ω^)「ドクオの入院の話、村中に広まってたおね」
(;'A`)「恥ずかしいから、やめてほしいんだけどな……」
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:38:32.46 ID:Lfv/cO5E0
ドクオの入院の話を、彼と直接交流のないブーンの母親が知っていたのには理由がある。
美府村は小さな村であるうえに人同士の繋がりが強いから、当然誰かの不幸やなんかの話題はあっという間に広まってしまうのだ。
('A`)「そうだ、ブーンに聞きたいことがあるんだ」
( ^ω^)「なんだお?」
('A`)「ブーン、お前の携帯に、俺からのメールは届いてなかったのか?」
意味が分からなかった。
ブーンの携帯電話に最後にドクオからのメールが来たのは、ちょうど夏休みが終わる頃だった。
( ^ω^)「来てないけど……それが、どうかしたかお?」
('A`)「俺は、通り魔にあった次の日に、お前とモララーにメールを送ったんだよ」
(;^ω^)「でも、来てないものは来てないお……」
('A`)「嫌な予感がしたんだ。ギコの家が火事になって……それも放火の可能性が高いらしいんだ。
それから俺もこの様で、二人には帰ってきてほしくなかった」
ドクオは一気に喋ると疲れたのか、身体をベッドに凭れた。
('A`)「俺がこのことを言ったら、モララーは送信ミスだと言った。履歴もちゃんと残ってるのにな」
この辺りの病室は怪我人ばかりなので許されているらしい。
ドクオが机の上に乗せていた携帯電話を操作して、ブーンの前に突き出す。
そこには確かに、ブーンとモララーに宛てたメールの履歴が残っていた。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:39:20.64 ID:Lfv/cO5E0
( ^ω^)「送ったはずのメールが届かないなんて、聞いたことないお」
('A`)「俺もだ。まあ、モララーによれば、稀に起こる現象らしいが」
( ^ω^)「でも、続けて送ったメールが二通とも、っていうのは……」
('A`)「……普通はあり得ない、よな」
そう言って、ドクオは携帯電話を閉じた。
( ^ω^)「お……忘れるとこだったお。ドクオ」
沈黙に支配されそうになった病室に、ブーンの声が響いた。
ドクオは訝しげに彼に目を向ける。
( ^ω^)「ドクオ、通り魔のことと、ギコの家の火事のことを詳しく教えてほしいんだお」
('A`)「……ああ」
成る程、納得した様子で、彼は話を始めた。
('A`)「まずは先に起こったギコの家の火事の事を話そう。あれは丁度……一ヶ月前くらいか」
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:40:12.25 ID:Lfv/cO5E0
その日の午前二時頃、農業を営むギコとその家族達は眠りに就いていた。
しかしその家の最高齢であるギコの祖父は、年齢による瀕尿を悩みとしていた。
彼がほぼ毎日の日課になってしまっている深夜の排尿、その為に起きた時、鼻をつく異臭に気付いたのである。
それは、例えば焼き芋を作る時のような、つまり何かが燃えるような匂いだった。
慌てて匂いのする方へ向かうと目も開けられない程の煙が充満している。
状況を把握した彼はすぐに家族全員を叩き起こし、どうにか死者を出さずに済んだのである。
('A`)「俺が聞いた話は、大体こんな感じだったな。
後日警察が調べたら出火元は玄関先で、放火の可能性が高いらしい」
(;^ω^)「じゃあ、村は大騒ぎだったんじゃないかお?」
('A`)「ああ、かなり大変だったと聞いた」
美府村は犯罪などとは無縁の村で、今でも玄関に施錠して出掛ける者などいなかった。
それ程に、平和な村だったのである。
('A`)「中には村人の中に犯人がいると疑っている人もいてな……親父も大変らしい」
ドクオが溜め息を吐く。
彼の父は村長で、そのあたりの事情には詳しいらしい。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:40:55.86 ID:Lfv/cO5E0
('A`)「火事の話はこれでいいよな? 次は俺のこの怪我の話だ」
( ^ω^)「よろしく頼むお」
('A`)「一週間前、俺はいつも通り、学校から帰るために駅まで歩いてた」
まだ日も高い時間帯。
午前の講義を終えて暇となったドクオは、入速駅から一人暮らしをしているアパートへ帰ろうとしていた。
駅周辺は平日の朝と夕方のラッシュ時以外はあまり人通りも多くない。
ドクオはいつも近道として使っている細い道を、いつものように歩いていたのだ。
('A`)「そしたらいきなり、後ろから腰のあたりを刺されたんだよ。俺はその衝撃で顔面からすっ転んだ」
(;^ω^)「だから顔にガーゼを貼ってるんだおね。よく無事だったお」
('A`)「まあな。奇跡的に刃物は内臓を避けて刺さってたらしい。意識もあったから、自力で救急車も呼べた。
……さすがに振り返って犯人の顔を見る余裕はなかったけどな」
( ^ω^)「とにかくドクオが無事で、良かったお」
('A`)「……とりあえずは、な」
全てを話し終えたドクオは黙り込む。
ブーンはその横で、聞き逃したことがないかを考えていた。
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:41:38.99 ID:Lfv/cO5E0
('A`)「ブーン」
いまだ考え込むブーンに、ドクオが声を掛けた。
('A`)「……プギャーのこと、覚えてるよな?」
( ^ω^)「……忘れるはず、ないお」
昨日もモララーに言われた。
かつての友人、プギャーは電車にひかれてこの世を去った。
その遺体は、見るも無残なものだったという。
( ^ω^)「でも、プギャーの事は事故じゃ……」
('A`)「そう言われてるよな。……でも、葬式に来なかったお前は聞いてないだろうけど」
ブーンは全身に冷や汗をかくような感覚に襲われていた。
この病室は適温で汗をかくはずはないのにもかかわらず、だ。
('A`)「誰かにホームから突き落とされたんじゃないかって、噂があるんだ」
声は出なかった。
かつての同級生が死んだ。
家を燃やされた。
通り魔に刺された。
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:42:25.18 ID:Lfv/cO5E0
('A`)「警察は事故で処理したらしい。
なんせ自殺の動機なんてなかったし、落ちた、もしくは落とされたところを見た目撃者もいない」
( ^ω^)「……もし、もしもだお」
ブーンの声は震えていたが、ドクオは何も言わなかった。
(;^ω^)「プギャーが誰かに突き落とされたんだとして、それは誰だお?」
('A`)「モララーなら、あいつって言うだろうな」
(;^ω^)「そうじゃなかったら?」
('A`)「そうじゃなかったら……あの子じゃないのか?」
ブーンは否定してほしかった。犯人などいないと言ってほしかった。
しかしドクオは言った。
('A`)「俺達三人には共通点がある」
ドクオの表情はいつもと変わらなかった。
高校時代と同じように、やる気の感じられない顔で、ブーンを追い詰める。
('A`)「……俺は、幽霊の存在を認めるより、友達を信じられない方が怖いな」
ブーンから視線を逸らしたドクオは窓の向こうを見つめて、この日一番小さな声で言った。
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:43:09.61 ID:Lfv/cO5E0
今日は五時のバスに間に合った。
バスが来るまであと十分。
やはりバス停に人気はない。
ある人物を除いては。
( ・∀・)「ブーン、また会ったな」
ベンチに座って軽く手を振るのはモララーだった。
昨日と同じ大きめの鞄を持っているところを見るに、図書館に行った帰りなのだろう。
( ・∀・)「……そんな顔してるってことは、ドクオの見舞いに行ったんだな」
ブーンはモララーの隣に座って、無言で頷いた。
( ・∀・)「今からさ、飲みにでも行く? 帰りは父さんに車出してもらうからさ」
やけに明るい声色は、ブーンを元気付けようとしているらしい。
( ^ω^)「モララー、僕はまだ未成年だお」
( ・∀・)「……ごめん」
会話が途切れる。
無言になれば、ブーンの頭を満たすのはかつてのクラスメイト達に降り掛かる不幸についてだった。
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:43:56.72 ID:Lfv/cO5E0
( ・∀・)「僕は、犯人がいるとしたら、あいつしかいないと思ってる。……あの時の目、まだ忘れられないんだ」
( ^ω^)「……」
( ・∀・)「もちろん、全部ただの偶然だとも考えてるよ。
プギャーは本当にあいつのドジで、ギコのだって自然発火かなんかで、ドクオも見ず知らずの不審者に刺されただけ。
それが一番幸せな答えなのは、知ってるさ」
ブーンは何も言わない。
モララーの真意など分かっていた。
( ・∀・)「……でももし、あいつがやってるなら、止めるのも友達の務めで、僕達自身が罪を償うチャンスでもあると思うんだ」
( ^ω^)「……」
( ・∀・)「ほら」
モララーが立ち上がった。
バスの明かりが見えた。
( ・∀・)「帰ろう。僕達の村へ」
ブーンはモララーに続いてバスに乗り込む。
今日は数人、二人以外の客が前方を占めていた。
二人が最後列に着くと、バスはゆっくり走り出す。
耳障りなバスの運転手の鼻歌だけが、車内を満たしていた。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:44:44.91 ID:Lfv/cO5E0
――2――
バスの心地よい揺れに、ブーンは微睡みそうになる。
隣に座るモララーは相変わらず無言だ。
居心地の悪さを覚えながらも、ブーンは全ての発端であるかもしれない出来事に思いを馳せていた。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:45:45.71 ID:Lfv/cO5E0
去年の春、高校生活が終わった日。
ブーン達は男同士で集まって語り合っていた。
美府村唯一の高校のその年の卒業生は十三名。
その内の六人が男子生徒だが、全員幼い頃からの知り合いで、仲も良かった。
もちろん男女の仲が悪かったというわけではないのだが、やはり普段行動を共にするのに性別の壁は大きかったらしい。
( ^ω^)「これで母ちゃんの弁当ともおさらばかと思うと、寂しいお」
ブーンは母お手製の弁当に舌鼓を打った。
その隣のモララーは菓子パンをくわえながら、羨ましげにそれを見つめる。
( ・∀・)「いいなぁ。母さん料理下手だから、ずっと羨ましかった」
( ^Д^)「でも春から都会生活だろ? 俺からしたら、お前の方がよっぽど羨ましいぜ」
食事を終え、窓際の机に座るプギャーが言った。
髪をワックスで固める彼は一見不良のようだが、実際はそれなりに真面目な男である。
(,,゚Д゚)「お前だって無理言って町暮らしだろ? 村に残るの、俺だけじゃねえか」
プギャーの隣でスナック菓子を頬張るギコが口を挟む。
ギコは長身で逞しい体付きと長男ゆえの面倒見の良さから女性からの評判も良かったが、勉強は大の苦手だった。
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:46:48.31 ID:Lfv/cO5E0
( ^Д^)「なんだよ。お前んとこは農家だけど儲かってるからいいだろ。うちは傾いてんだよ。
だから都会で仕事したいっつってんのに親が反対するし……」
('A`)「まあ、結婚して身を固めるまでの数年間、入速町で頑張れよ」
ブーンの隣、丁度プギャーの正面でおにぎりを食べるドクオが言う。
( ^Д^)「うっせえ。黙れ、未来の公務員!」
( ^ω^)「それ、微妙に誉め言葉っぽいお」
いつの間にやら弁当を平らげたブーンが呟いた。
賑やかな教室。
女生徒達も教室の反対側に彼らと同じように集まって、昼食を取っている。
やはり皆、仲間達と過ごしたこの学校が名残惜しいのだろう。
特にこの年は進学者が多く、村を離れる者も多い。
むしろ家業を継ぐために村に残るギコのような存在は珍しかった。
いつもより温かい日差しが雪を溶かす。
その光は教室の中の温度も僅かに上げている。
まさに幸せを体現したような時間だった。
しかし、その輪から少々外れている男が一人。
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:47:50.13 ID:Lfv/cO5E0
( ・∀・)「ジョルジュ、どうしたんだ?」
モララーが声を掛ける。
小学校から高校までの通算十二年間、押し付けられたながらも委員長を務めた彼は、気配りの出来る男だった。
_
( ゚∀゚)「なんでもねぇよ」
整った顔立ちと凛々しい眉毛が印象的なジョルジュは、友人の顔も見ずに素っ気なく答えた。
('A`)「また、おっぱいのこと考えてんじゃないか?」
_
( ゚∀゚)「ちげーよ。むしろ年中脳内ピンクなのはお前の方だろ」
('A`)「……そこまで言う?」
ジョルジュに聞こえないと思って発した言葉ははっきり聞こえていて、
その彼に返された言葉にドクオは勝手にダメージを受けている。
(;^ω^)「なんか、用事でもあるのかお?」
_
( ゚∀゚)「……今日はちょっと、な」
ジョルジュは少し迷ってから、言った。
普段は思ったり考えたりしたことははっきり言うタイプの彼が、そうしないのは珍しい事であった。
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:48:33.71 ID:Lfv/cO5E0
( ・∀・)「なら、もう帰ったらどうだ?」
_
( ゚∀゚)「いや、でも……。お前らと遊べるのも今日で最後だろ?」
( ^Д^)「何言ってんだ? 別に三月いっぱいは皆大丈夫だろ」
プギャーがジョルジュを除く全員の顔を見渡す。
全員が首を縦に振った。
_
( ゚∀゚)「……そう、だな。俺、先に帰る」
( ・∀・)「そうそう。こういう時はちゃんと言わないと」
_
( ゚∀゚)「ごめん。また今度、今月中に遊ぼうぜ」
ジョルジュは鞄を掴み、慌ただしく教室を出ていった。
女生徒達が何事かと視線を向けるが、それすらも気にならないようだった。
( ・∀・)「……これから、どうするか」
ジョルジュの去った後、モララーが呟いた。
彼らの最後の放課後は、まだ始まったばかりだった。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:49:17.51 ID:Lfv/cO5E0
とりあえず、ジョルジュ抜きで遊ぼう。
そう提案したのはプギャーだった。
たしかに、ジョルジュがいないから遊ばなかったなどと言えば、ジョルジュは変な気を使われたようでいい気はしないだろう。
皆はその提案に従うことにした。
それから、何をするかを決めた。
誰かの家でゲーム三昧でいいじゃないかという意見に反対したのは、ギコだった。
彼は体力派で、ゲームより運動を得意としていたのだ。
そんな彼が代わりに提案したのは村内の散歩。
こんな天気の良い日に家に籠もっていられるか、というのが理由だった。
続いてどこに行くかという話題になった。
自分の意見をギコに却下されたドクオは、神社に行こうと提案した。
そこは荒れ果てた神社だが、夏休みにクラス全員で肝試しに行った思い出の場所でもあった。
そこまで決まって、五人は教室を出た。
外はまだ寒いが、それを春の日差しが緩和していた。
川 ゚ -゚)「もう帰るのか?」
昇降口を出たところで、背の高い黒髪の女に声を掛けられた。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:50:17.06 ID:Lfv/cO5E0
( ・∀・)「……クーか。帰んないよ。これから遊びに行くんだ」
川 ゚ -゚)「……そうか」
クーは一度黙って、再び言葉を紡いだ。
川 ゚ -゚)「春休み、都合が合えばもう一度クラスで集まりたいと話してたんだが、どうだろう?」
(,,゚Д゚)「お、楽しそうだな」
川 ゚ -゚)「女子は皆乗り気だよ。取り敢えず言っておくが、そのうち私から連絡することになると思う」
さらに二言三言交わして、クーは校舎へ戻っていった。
クーと別れ校門を出て、村の中では大きめの舗装道路を真っ直ぐ歩く。
昼過ぎの為、道を行くのは彼らだけだ。
しばらく歩き、町とは反対の山の近くに来れば土が剥き出しの小道に入る。
それからさらに少し歩けば、そこが目的地である神社だった。
(;'A`)「疲れた……」
境内へ続く階段の下で、ドクオが言った。
(,,゚Д゚)「自分で提案しといて泣き言か? だからいくら牛乳飲んでも背が伸びねぇんだ」
('A`)「それは関係ないだろ。だいたい、俺はお前と違って体力馬鹿じゃないんだよ」
(;^ω^)「二人とも、落ち着けお」
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:51:01.20 ID:Lfv/cO5E0
今日は快晴だが、数日前まで雪が降り続いていたために石造りの階段は凍り付いている。
( ・∀・)「あまり急ぐと危ないし、少し休んでからゆっくり上るか」
(,,゚Д゚)「お前もか。だらしねぇなぁ」
(;^Д^)「だから、そんなに元気なのはお前だけだって」
五分ほどの休憩を挟んで、彼らは階段をゆっくりと上り始める。
雪道用の靴を履いていても細心の注意が必要だった。
(;,,゚Д゚)「うぉっ?」
先頭を歩いていたギコが境内に着いた時、彼は何やら間の抜けた声を発した。
( ^ω^)「どうしたお?」
(,,゚Д゚)「……女の子が、いるんだが」
( ^ω^)「お?」
慎重に、しかし手早くらブーンは階段を上りきった。
ξ゚听)ξ「……」
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:51:50.72 ID:Lfv/cO5E0
そこには、小さな少女が一人で佇んでいた。
年はやっと小学校に上がったというくらいだろうか、雪のように白い肌に色素の薄い髪は外国人のようだ。
巻いたツインテールが風に揺れている。
彼女と目があったブーンは彼女に近付き、しゃがみ込んで目線を合わせた。
ξ゚听)ξ「……」
( ^ω^)「君は、どこの子だお?」
この辺鄙な村にこんな可愛らしい子がいて噂にならないはずがない。
しかしブーンはもちろん、ギコも知らないようだ。
後から境内にたどり着いた他の三人も、彼女を知らなかった。
( ^ω^)「お母さんとかお父さんとかは……いないのかお?」
ξ゚听)ξ「……いない。ひとりで、ここに来た」
( ^ω^)「名前は?」
ξ゚听)ξ「……」
少女はその大きな瞳でブーンを見つめ、そして答えた。
ξ゚听)ξ「……ツン。名前、ツンっていうの」
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:52:38.39 ID:Lfv/cO5E0
ブーンはツンに威圧感を与えないように優しく微笑む。
( ^ω^)「ツンちゃん、かお。ここで何をして……」
( ^Д^)「お前が何してんだよ」
(;^ω^)「うおっ!?」
急に聞こえた声に驚いたブーンが振り返ると、そこには四人の友人が立っていた。
('A`)「口説いてんの?」
親友の突拍子もない発言に、慌てて反論する。
(;^ω^)「なわけねーお! この子が一人で立ってたから、迷子なら送り届けてやらないとと思っただけだお」
ξ゚听)ξ「わたし、迷子なんかじゃないもん」
( ^ω^)「ツンちゃん、このタイミングでそういうこと言わないで。僕の立場が危ういお」
それから少し話をして、五人の高校生と一人の少女はすぐに打ち解けた。
ツンはわけあってこの村にはいなかったが、昨日の夜に戻ってきたという。
今日は一人で気儘に散歩をしていたら、偶然この神社に着いたらしい。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:53:42.69 ID:Lfv/cO5E0
( ^ω^)「ちゃんと、一人で道分かってるんだおね?」
ξ゚听)ξ「うん」
ツンは、ブーンの確認に力強く頷く。
( ^ω^)「なら大丈夫だお」
幸いなことに、この村に幼い少女に何かしようなどという不届き者はいない。
道さえ知っているのなら、たとえツンが一人で人気のない神社にいようとも問題はなかった。
ξ*゚听)ξ「この神社、巫女さんはいないの?」
ツンがふいに訊ねた。
それに答えたのはモララーだ。
ブーンのようにしゃがむことはしないが、身を屈め普段より柔らかい口調で話す。
( ・∀・)「十年前に管理してた神主さんが死んじゃったんだ。それ以来、この神社には誰もいないよ」
ξ゚听)ξ「えー……。わたし、巫女さん見てみたかったのに」
明らかに残念そうな顔をするツンに、今度はギコが言った。
(,,゚Д゚)「町にある神社に行けば、見られるぞ。特に正月なら確実に会える」
ξ*゚听)ξ「ほんとう?」
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:54:24.44 ID:Lfv/cO5E0
(,,゚Д゚)「ああ。兄ちゃんは嘘は言わないぞ」
ξ*^竸)ξ「やったあ! 今度、パパとママに連れてってもらう!」
ツンは無邪気に笑う。
それを見て、ブーン達も心が安らぐのを感じた。
( ^Д^)「さすがギコ。妹がいるだけあるな」
('A`)「俺達には、ああはいかないよな……」
( ・∀・)「そもそもプギャーもドクオも、子供嫌いじゃなかった?」
('A`)「三次元はな。でも目覚めそう」
( ^Д^)「俺は未来のツンちゃんに期待してるだけだよ」
(;・∀・)「ツンちゃん逃げて!」
モララーが叫ぶと、ツンの傍にいたブーンとギコが彼女を守るように立つ。
とにもかくにも、仲良くなった彼らは日が傾くまでの数時間、共に時間を過ごすことにしたのである。
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:55:10.51 ID:Lfv/cO5E0
( ^ω^)「ツンちゃん、何して遊ぶお?」
ξ*゚听)ξ「うーんとね……」
少女は思案する。
そして出した答えは。
ξ*゚听)ξ「かくれんぼ!」
(,,゚Д゚)「かくれんぼか……懐かしいなぁ」
( ^Д^)「昔はよくやったよな」
( ・∀・)「プギャーがやけに強かったのは覚えてる」
何をするかが決まったら、次は誰が鬼かを決める番だ。
ξ*゚听)ξ「最初はグー、ジャンケン……」
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:55:58.30 ID:Lfv/cO5E0
何回戦しただろうか。高校生達は小さな少女に翻弄されていた。
(;^Д^)「やっと見つけた……」
ξ*゚听)ξ「見つかっちゃった!」
二連続で鬼を担当したプギャーはくたくただった。
身体の小さなツンは隠れられる場所が多い上に、とても隠れるのが上手かった。
(;^Д^)「この鬼のプギャー様に本気を出させるとは、ツンちゃんやるな……」
('A`)「いや、ただたんにお前がジャンケン負けて鬼ばっかやってるうちについたあだ名だろ、それ」
( ・∀・)「……ああ、だからかくれんぼ強かったのか」
日はまだ沈まない。
しかし先程までの晴天が嘘のように、空には灰色の雲が垂れ込めていた。
ξ*゚听)ξ「お兄ちゃんたち、もう一回やろ!」
( ・∀・)「うーん……そろそろ天気危なくなってきたんだけど」
(;^ω^)「天気予報が大外れだお」
('A`)「だなぁ」
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:56:47.50 ID:Lfv/cO5E0
ただ曇っているだけではない。
厚い雲は、今にも雪を降らそうとしているように見えた。
ξ゚听)ξ「……もう一回……」
ツンに視線を向ければ、今にも泣き出しそうな目で皆を見つめている。
(,,゚Д゚)「……」
('A`)「……」
( ^Д^)「……」
( ・∀・)「……」
( ^ω^)「……もう一回だけ、やるかお」
ξ*^ー^)ξ「……うん!」
ブーンの言葉に、ツンははじけんばかりの笑顔で頷いた。
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:57:44.07 ID:Lfv/cO5E0
最後のかくれんぼが始まる頃には、すでに雪が舞っていた。
鬼のモララーはいとも容易く四人の男を見つけたが、しかし。
( ・∀・)「ツンちゃーん! もう君の勝ちだから出ておいでー!」
最後の一人が見つからない。
(;'A`)「寒くなってきたな」
(,,゚Д゚)「早く見つけないとまずいな……」
雪が降り始め、気温はどんどん下がってゆく。
まだ日の沈む時間ではないはずなのに、辺りはもう薄暗い。
(;・∀・)「降参するからー! 早く帰らないと、ご両親が心配するよー!」
モララーが必死に呼び掛けるが、返事はない。
(;^Д^)「まさか、神社の外にはいねぇよな?」
(;・∀・)「今までルール守ってたのに、最後に限ってそれは……」
(;^ω^)「心配なら僕が少し探してくるお」
ブーンの言葉に、モララーは頷く。
( ・∀・)「頼む。僕達は手分けして神社を隅々まで探そう」
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:58:26.87 ID:Lfv/cO5E0
ブーンは神社の階段を素早く駆け下りる。
彼は昔から、そのだらしない体型に似合わず動きは機敏だった。
周囲は山になっている。
奥深くにいるとしたら、もう山狩り以外の方法で見つけるのは不可能だろう。
ブーンは神社の周辺を細かく見て回ったが、結局ツンは見つからなかった。
小降りだった雪は、いつの間にか猛烈な吹雪に姿を変えていた。
( ・∀・)「駄目だ……これじゃあ声も届かない……」
吹雪の中、近くにいても雪が視界と音を遮って、相手の全てを観察することは叶わない。
('A`)「どうするんだよ……」
打つ手なし。
むしろ彼ら自身も、すぐに屋内に退避しなければ遭難しそうな程の雪だ。
少女を見つけるなど、至難の技と言える。
( ・∀・)「……もう、帰ろう」
沈黙を破って、モララーが言った。
( ^ω^)「でも」
( ・∀・)「見つからないものは見つからないんだ。僕達だって、精一杯探したんだ」
食い下がるブーンを軽く流して、彼は階段へ向かう。
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 20:59:13.59 ID:Lfv/cO5E0
( ・∀・)「そもそも、なんでこんな、村の中でも特に人の寄り付かないような場所に、あんな女の子がいたんだよ」
( ^Д^)「まさか、幽霊だったなんてことは……」
( ・∀・)「たとえそうだったとしても、僕に分かるわけないだろ」
('A`)「……本当に、帰るのか?」
ドクオの問いに、モララーは少し間を置いて答えた。
( ・∀・)「……僕は帰る。このままだと自分が凍死する」
皆が頼りにしていた男が、投げ出した。
(;^ω^)「……皆、帰るのかお?」
全員が顔を見合わせる。
正面を向けば、激しい雪が容赦なく顔面を叩いた。
( ^Д^)「俺は帰る。これだけ探してもいないんだ、仕方ないだろ」
(,,゚Д゚)「……俺も。こんな雪だ。もしかしたら、ツンちゃんもすでに自分で帰っただけかもしれない」
('A`)「そう、だよな。ツンちゃんなら大丈夫だよ。俺も帰る」
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:00:08.36 ID:Lfv/cO5E0
( ・∀・)「さあ、後はブーンだけだ」
突き付けられた選択。
このまま外に留まれば、自分は間違いなく凍死する。
しかしだからといって、ツンを放置することなど、ブーンにはできなかった。
だから、最終的に彼が出した答えは。
( ^ω^)「……一度、家に帰る。それからクーに連絡するお」
クーは警察官の娘だ。
彼女自身も正義感が強く、信頼できる人間であることは間違いなかった。
( ^ω^)「クーに言って、まずツンのことを確認する。その後に探すなりなんなりしてもらうお」
決して気持ちの良い別れ方ではなかったが、ブーンの言葉に納得した面々はそれぞれの家路に着いた。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:01:07.58 ID:Lfv/cO5E0
家に着いたブーンは、雪塗れの彼を心配する母の声すら無視して、自室に駆け込んだ。
携帯電話を鞄から取り出し、電話帳から素早くクーのアドレスを探す。
家族と携帯電話を持っているクラスメイトの番号しか記録されていないため、クーの番号を探すのは大変な作業ではなかった。
電話を繋ぐと耳障りな呼び出し音が聞こえる。
( ^ω^)「クー……早く出ろお……」
ブーンがそう呟いたその時、電話口から聞き慣れた声が聞こえた。
「もしもし。ブーン、何の用だ?」
( ^ω^)「クー、急ぎの用だお。探してほしい子がいるんだお!」
一瞬、クーが黙り込んだ。
「……名前は?」
( ^ω^)「ツン。ツンちゃんだお」
「……その子は私の知り合いだ。彼女をどこで見た?」
普段は抑揚のない、落ち着いた話し方をするクーだが、焦っているらしい。
平静を装っているらしいが語尾に異様に力が入っているのが、ブーンには分かった。
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:01:51.19 ID:Lfv/cO5E0
( ^ω^)「山の方の神社だお。いろいろあって遊んでたら、雪が降ってきて」
「すまない。詳しい話は後だ。後ほどこちらから電話する」
ブーンが言い切らないうちに、クーは電話を切ってしまった。
(;^ω^)「……ツンちゃん」
クーにとって、ツンは知り合いらしい。
とのような関係かは知らないが、あの焦りようからクーが彼女を大切にしていることだけは感じ取れた。
( ^ω^)「僕が、もっとちゃんと探してれば」
彼女は今頃クーと会えていたかもしれない。
クーはこれから、雪の中を神社に向かうのだろうか。
それとも彼女の父親か。
ブーンには分からない。
( ^ω^)「……どうするかお」
吹雪は窓に当たり、不快な音を立てている。
今から彼が外に出ても、まともに歩くことすらできないに違いなかった。
( ^ω^)「……」
ブーンには何も出来ない。
結局彼は一晩中クーからの電話を待ち続けたが、着信音が鳴ることはなかった。
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:02:55.30 ID:Lfv/cO5E0
それから二日後、クーからの連絡は最悪のものだった。
「ツンちゃんが見つかったよ」
( ^ω^)「本当かお!?」
「ああ。……神社の建物の下の空間で、眠るように横たわっていたらしい」
( ^ω^)「……」
クーの発した言葉は、ブーンから言葉を奪い取るには十分すぎるものだった。
クーとの電話を終えたブーンは、二日間全く連絡を取っていなかった四人の友人に事の終わりについてのメールをした。
そこに、ツンの正体も添えて。
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:04:00.12 ID:Lfv/cO5E0
美府村も三月の終わりになれば、だいぶ気温も上がり始めていた。
あまり暖かくない土地のため桜の蕾はまだ膨らまないが、それでも気持ちの良い気候だった。
('A`)「ブーン、これで全部か?」
( ^ω^)「全部だお」
('A`)「意外と少ないな。一人暮らしするんだろ?」
( ^ω^)「家具はこの前行った時に、向こうで揃えたから大丈夫だお」
ブーンは明日、都会へ行く。
ドクオがその荷造りの手伝いをしていた。
ドクオ自身も町に出て一人暮らしを始めるのだがバスで行ける距離である為、引っ越すのは入学式の前日の予定となっている。
( ^ω^)「モララーの方は終わったかお?」
その言葉にドクオが自分の携帯電話を確認すると、プギャーからメールが来ていた。
('A`)「今終わったってよ」
ブーンとモララーの通う大学は近いため、借りるアパートは同じだった。
そのため、荷物もまとめて送ることになっている。
それをブーンの家に近いドクオと、モララーの家に近いプギャーとギコが、それぞれ手伝っていた。
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:04:53.51 ID:Lfv/cO5E0
( ^ω^)「じゃあ行くかお」
荷物の整理が終わったブーンはドクオと共に、モララーの家へ向かう。
五人で集まって行きたい場所があったのだ。
モララーの家の前に集まった五人は、そのまま村の奥へ入る。
そちらには寺があり、墓地があった。
( ^ω^)「……」
ブーンをはじめとして、皆無言だった。
ブーンが右手に持った小さな花束が音を立てる。
カラフルなその花の名は、アイスランドポピー。
花言葉は慰めだとペニサスが言っていた。
民家の特に少ない地域に入った頃、前方の人影にギコが気付いた。
(,,゚Д゚)「誰だ?」
もともと人の少ない村だが、この辺りで日中に人を見かけるなんて特に珍しいことだった。
人影はゆっくりとこちらに向かってくる。
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:05:57.93 ID:Lfv/cO5E0
( ^ω^)「……ジョルジュ」
卒業式のあの日までが嘘のように、彼はやつれていた。
_
( ∀ )「……」
すれ違うまで近付く。
( ・∀・)「……!」
しかし、誰も声を掛けることなど出来なかった。
彼のあまりに鋭い眼光は意識してのものだったのか、そうでないのか。
妹を失った男は、ゆらりとブーン達の横を通り過ぎていった。
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:06:46.88 ID:Lfv/cO5E0
( ・∀・)「ブーン」
( ´ω`)「お?」
( ・∀・)「バス、着いたよ」
知らぬうちに眠ってしまっていたらしい。
気付けば一緒に乗っていたはずの乗客は皆降りていて、バスの中にはブーンとモララーと運転手しかいなかった。
慌てて降りると、寒い冬の風がブーン達を包んだ。
( ・∀・)「明日、ジョルジュに会いに行こうと思うんだ」
( ^ω^)「ジョルジュに?」
( ・∀・)「全部話すんだ。僕達が……僕がツンちゃんを見捨てたのは事実だからな」
モララーの瞳は、決意に満ちていた。
彼はジョルジュを疑っている。
それは、刺し違えてでも友人を止めるという決意に違いなかった。
( ^ω^)「僕も、一緒に行っていいかお?」
( ・∀・)「……ああ、もちろん」
バス停の正反対の方向に家のある二人は、そこで別れた。
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:07:36.30 ID:Lfv/cO5E0
――3――
吹雪の中、佇む少女の表情は分からない。
ξ )ξ「……」
( ^ω^)「……ツン、ちゃん」
ξ゚听)ξ「……」
少女は呼び掛けに応じない。
しかし一瞬、確かに合った目は、青年を責めているように見えた。
美府村に帰ってきて三日目の朝、やはりブーンの目覚めは最悪だった。
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:08:36.18 ID:Lfv/cO5E0
昼過ぎ、村唯一の小学校の前でブーンはモララーを待っていた。
小学校は、ちょうど二人がジョルジュの家へ向かうのに通る道の途中にあった。
(;・∀・)「ブーン! ごめん!」
モララーは息を切らしながら走ってくる。
地面はある程度雪かきがされているとはいえ、決して歩きやすい道ではない。
( ^ω^)「今来たばっかだから問題ないお」
( ・∀・)「そう言ってくれると助かるよ。……行こうか」
モララーが息を調えた頃、二人は並んで歩きだす。
年末の村内は、やけに静かだった。
( ^ω^)「今日は夕方から吹雪になるらしいおね」
( ・∀・)「天気予報で言ってたな。……はずれてくれると嬉しいんだけど」
( ^ω^)「一番当たる局で言ってたから、どうなるか分からないお」
話題は、決して本題に触れない。
今日の約束はモララーが取り付けたものだ。
ブーンはそれに同席する形となるため、あまり多くを語るつもりはない。
もちろん、ジョルジュが犯人なら止めたい気持ちもあったが、それ以上に彼を疑いたくないという気持ちが勝っていた。
ジョルジュの妹の存在は、彼の家の近所に住むクーに聞くまで知らなかったのだ。
だから彼が妹のためにどこまでするのかも、分からなかった。
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:09:31.08 ID:Lfv/cO5E0
しばらく道を行けば、ジョルジュの家が見えてくる。
( ^ω^)「相変わらずでかいお……」
( ・∀・)「地主だからなぁ」
二人の目の前には大きな日本家屋が建っている。
昔ながらの、といった様相で屋根には質の良い瓦が並んでいた。
建物の前には門があり、そこのインターホンを押せば、ジョルジュのものではない女性の声が聞こえた。
「どちら様でしょうか」
( ・∀・)「ジョルジュ君と会う約束をしていました、モララーです」
「……今開けるね」
しばし待つと、門の向こうに硬い足音が聞こえた。
ζ(゚ー゚*ζ「こんにちは、モララー君。……君は、ブーン君、だよね?」
現れたのは、柔らかな雰囲気を持つ小柄な女性だった。
彼女の問い掛けにブーンは笑顔で答える。
( ^ω^)「そうですお。お久し振りですお、おばさん」
ζ(゚ー゚*ζ「本当に、久しぶりねぇ……」
ジョルジュの母はどこか寂しげに微笑む。
その姿は若々しく、間違っても大学生の息子がいるようには見えない。
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:10:28.39 ID:Lfv/cO5E0
今考えれば、ツンはこの女に似ていたのだ。
日本人離れした美しさを持つ彼女は、あの日ブーンが目を奪われた少女の母に相応しかった。
彼女に連れられて屋敷に入るブーンとモララー。
外観は日本家屋なのに内装は西洋風となっている。
これはジョルジュの母親の趣味らしいが、詳しい事情はブーン達もよく知らない。
玄関にはやはり彼女の趣味か、百合の花を中心に据えた生花が飾られていた。
ζ(゚ー゚*ζ「ここで待っててね。今、ジョルジュを呼んでくるから」
二人の客人をよく片付けられたリビングに通した母は、息子を呼ぶためにその場を離れた。
( ^ω^)「おばさんも、変わってたおね」
( ・∀・)「ああ。クーによれば、可愛がってた娘だろ? ……過去に戻れるなら戻りたいよ」
( ^ω^)「……」
二人が沈黙していると、その空気を打ち壊すような明るい声が聞こえた。
_
( ゚∀゚)「よう! モララー、ブーン!」
( ^ω^)「ジョルジュ……」
少々明るい色の地毛は最後に会った時より伸びているが、それ以外は元気だった時と同じであるように見えた。
あの眼光を持った男は、そこにはいない。
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:11:15.48 ID:Lfv/cO5E0
- _
( ゚∀゚)「待たせて悪かったな。ちょうど課題やってたんだ。……で、話って?」
軽い口調は本当にブーン達が知るジョルジュと相違なかった。
しかしそれが、余計に違和感に思えるのだ。
( ・∀・)「今日は、ジョルジュに話しておきたいことがあるんだ」
_
( ゚∀゚)「いいぜ。お袋は今から車で町まで買い物行くらしいから、しばらく帰ってこない。気にせず話せよ」
( ・∀・)「分かった。……何を聞いても、驚くな」
_
( ゚∀゚)「……なんだ? よっぽど酷い話なのか?」
ジョルジュの問いに答えることもなく、モララーは話し始めた。
あの日、ジョルジュがいなくなった後の出来事。
ブーン達がツンと時間を共有したこと。
ツンを最後まで探し続けなかったこと。
全てを話し終えたモララー。
ブーンは相対するジョルジュに目を向けるが、何を考えているのかは読み取れない。
_
( ゚∀゚)「……で、結局お前らは何が言いたい?」
言葉は冷淡であった。感情は込められていない。
ただたんに疑問を口にしただけ、というような言い方だった。
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:12:11.32 ID:Lfv/cO5E0
( ・∀・)「僕達は、君の妹を見殺しにしたんだ」
_
( ゚∀゚)「何言ってんだよ。あれは事故だ。誰にも言わずに外に出たツンが運悪く遭難した、それだけのことだろ」
( ・∀・)「違う」
ブーンはただ二人のやり取りを見守っていた。
空気が張り詰めているのを痛感した。
( ・∀・)「……プギャーとギコとドクオのこと、知らないはずはないだろ?」
_
( ゚∀゚)「……なんだよ、急に」
今度は誰が見ても苛立たしさが伝わるような態度で、ジョルジュが言い放った。
( ・∀・)「はっきり言う。僕は、ジョルジュが三人に危害を加えたんだと思ってる」
(;^ω^)「モララー……!」
はっきり疑いを口にしたモララーに、ブーンは思わず声を上げてしまった。
( ・∀・)「クーから聞いた。君は、妹さんを可愛がってたんだろ。その妹を間接的にとはいえ、僕らは……殺した」
_
( ゚∀゚)「俺は、何もしてねぇよ。第一、プギャーとドクオは俺だとしても、ギコは?」
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:13:13.06 ID:Lfv/cO5E0
ジョルジュの言葉は鋭い。
確かにそうだった。
ジョルジュは大学に通うために町に出ているから、プギャーをホームから線路に落とすことはできた。
ドクオも入速駅の近くで被害にあったのだから可能だ。
しかし、ギコはどうだろうか。ギコは村に住んでいる。
町から村までの移動手段は基本的に車しかない。
しかしアパート暮らしのジョルジュが車を持っているとは思えなかった。
( ・∀・)「ギコの件は簡単だ。君は毎週末、ここに帰ってきてると聞いた。
それに、もしその日ここにいなかったとしても、バイクがあるだろ?」
(;^ω^)「あ……」
ブーンは高校時代を思い出す。
ジョルジュは十六の誕生日を迎えるとすぐに、バイクの運転免許を取得していたのだ。
_
( ゚∀゚)「それで? 物的証拠の一つも挙げられずに、友達を疑うのか?」
ジョルジュは怒っているようであった。
彼が一連の出来事に無関係ならば、当然とも言える反応である。
( ・∀・)「……物的証拠なんて、ない。ただ動機はあると思うし、君にはできたんだ」
_
( ゚∀゚)「……」
- 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:14:11.39 ID:Lfv/cO5E0
物的証拠はない、その言葉にジョルジュは呆れ果てているように見える。
_
( ゚∀゚)「くっ……」
(;^ω^)「ジョルジュ?」
_
( ;∀;)「っ、はは……はははは! なんだよ、それ! モララーは、そこまでして俺を犯人にしたいのかよ!?」
( ・∀・)「……そうだよ。僕は、偶然も幽霊も信じない」
モララーの態度がおかしいのか、ジョルジュは今までブーンが見たこともないくらい笑い転げていた。
_
( ;∀;)「はは……は……」
しばらくして、やっと笑いが治まったらしいジョルジュは真面目な顔をして二人に向き直った。
_
( ゚∀゚)「とにかく俺は、お前らのせいでツンが死んだなんて思ってない。……三人のことは、不幸な偶然だと思ってる」
それきり、ジョルジュは口を開かない。
( ・∀・)「……そう、か。ジョルジュがそう言うなら、そうなんだろうなぁ」
ジョルジュに返すモララーの言葉は、ブーンには本心には聞こえなかった。
しかしモララーも、もう言うことはないらしい。
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:15:08.49 ID:Lfv/cO5E0
( ・∀・)「今日は僕の話を聞いてくれてありがとう。帰ろう、ブーン」
( ^ω^)「いいのかお?」
( ・∀・)「言いたいことは言ったし、聞きたいことも聞いた。今日はこれで終わりだ」
モララーが立ち上がる。ブーンもそれに続いた。
( ・∀・)「ジョルジュ、今度、皆でまた集まろうな」
_
( ゚∀゚)「ああ。……それと」
三人で屋敷の外の門に着いた時、ジョルジュは言った。
_
( ゚∀゚)「これから吹雪になるらしいから、気を付けろよ」
( ・∀・)「……分かってる」
別れの挨拶を済ませ、ブーンとモララーは門を潜る。
( ・∀・)「ジョルジュ、全部知ってたよなぁ」
人気のない道を歩きながら、モララーが言った。
雪かきは朝にしたきりなのか、地面には薄らと雪が積もっている。
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:16:12.13 ID:Lfv/cO5E0
( ^ω^)「ツンちゃんのことかお?」
( ・∀・)「そう。やっぱりクーが教えたんだろうな」
( ^ω^)「その前に僕がクーに全部話しちゃったお。ツンちゃんが見つかった後、詳しいことを聞かれたから」
( ・∀・)「ブーンもクーも、悪くないけどな」
(;^ω^)「まだジョルジュを疑ってるのかお?」
ブーンの疑問に、モララーは立ち止まった。
( ・∀・)「……ブーン」
ともすれば聞き逃してしまいそうな程の小さな声。
ブーンはモララーの隣でそれを聞く。
( ・∀・)「もしも、村にいる間に僕に何かあったら、ブーンは三が日を待たないでアパートに帰ってほしいんだ」
それは予想もしていないような言葉だった。
( ^ω^)「それは」
( ・∀・)「全部僕が悪いんだ。ブーンは何もしてないし、できることはしたじゃないか」
モララーの瞳は真剣で、有無を言わせぬものであった。
思わず気圧されたブーンは、小さく頷く。
それを最後に、待ち合わせた小学校の前で別れるまで二人が言葉を交わすことはなかった。
- 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:17:04.94 ID:Lfv/cO5E0
窓の外の暗い世界は白い粒で覆われている。
天気予報は大当たりだった。
( ^ω^)「……」
ブーンはモララーのことが気になっていた。
嫌な予感がしたのだ。
彼はきっと答えてくれない。しかし連絡くらい取ってみよう、そう思った時、手に持った携帯電話が鳴った。
クーからの電話だった。
珍しいことに戸惑いながらもブーンは通話ボタンを押した。
( ^ω^)「もしもし」
「ブーンか、落ち着いて聞いてほしい」
(;^ω^)「……?」
クーの息遣いが荒いことが電話越しにも分かった。
それは、あの日のクーを連想させた。
「……モララーが、行方不明になったらしい」
- 83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:18:04.16 ID:Lfv/cO5E0
一瞬、意識が飛びそうになった。
ブーンにとっては、それ程の衝撃だったのだ。
「今日の昼過ぎに出掛けたきり家に帰ってないらしい。ブーンは何か知らないか?」
(;^ω^)「……昼過ぎ、モララーと一緒に、ジョルジュに会いにいったお」
震える口で、どうにか言葉を紡ぐ。
頭の中は何も考えられないくらいに混乱していた。
頭の中のあらゆる情報と感情が混ざり合って、なにがなんだか分からないのだ。
クーにも、きっとそれは伝わっているに違いなかった。
「そうか……詳しく聞かせてくれないか?」
( ^ω^)「分かったお」
今日の出来事を、大まかにクーに話す。
全て聞き終えた彼女は最後に言った。
「ありがとう。……だがブーン、決して君は外に出るな。この吹雪では間違いなく家に帰れなくなるからな」
( ^ω^)「分かってるお」
- 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:18:55.00 ID:Lfv/cO5E0
「できればモララーが見つかるまで外出も控えてもらいたいが……私にそこまでブーンの行動を制限する権利はない、か」
( ^ω^)「そう言ってくれるのは嬉しいお。でも……」
ブーンはそこで言い淀む。
「分かってるさ。君は昔から、融通がきかなかった」
( ^ω^)「分かってるならいいお」
「だが私は君が心配だ。……ギコも、ドクオも、他の皆も同じだ」
そこまで言って、クーは口を閉じた。
( ^ω^)「クー……モララーのこと、絶対に見つけてやってくれお」
「……ああ、きっと」
電話が途切れる。
最悪の出来事は起きてしまった。
それによって、ブーンにはやらねばならないことができた。
( ^ω^)「本当に、ジョルジュなのかお……?」
- 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:19:44.74 ID:Lfv/cO5E0
友人を疑いたくなどない。
それでもモララーがいなくなってしまった今、それは現実味を帯びていた。
手元の携帯電話が再び鳴る。
( ^ω^)「……メール」
ジョルジュからのメール。
明日、あの神社で会いたい。
用件はそれだけだった。
( ^ω^)「……」
携帯電話を閉じベッドに寝転んだブーンの意識は、すぐに微睡みに沈んだ。
- 87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:21:16.99 ID:Lfv/cO5E0
その少女の表情はやはり見えない。
( ^ω^)「ツンちゃん」
ξ )ξ「……」
( ^ω^)「君に、言いたいことがあるんだお」
雪が体に当たる。
しかし、それすら気にせずに声を発した。
( ^ω^)「ごめん」
ξ゚ー゚)ξ「……」
顔を上げたツン。彼女は笑顔だった。
( ^ω^)「ツンちゃん……」
ξ゚ー゚)ξ「あはは……はは……。ねえ、ブーンお兄ちゃん」
その笑い方は少し兄に似ていた。
ξ*^ー^)ξ「絶対に、許さない」
そしてブーンの眼前は白に染まった。
- 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:22:01.65 ID:Lfv/cO5E0
玄関には、言い争う親子の姿があった。
J(;'ー`)し「ホライゾン……こんな日に外出なんて許せるはずないでしょう!?」
( ^ω^)「……」
母の気持ちは分かる。
猛烈な吹雪は止まない、そんな中に息子が行くというのだ。
( ^ω^)「母ちゃん、分かってくれお」
J(;'ー`)し「駄目よ。第一、なんで外に行く必要があるの?」
( ^ω^)「……言えないお」
J(;'ー`)し「とにかく、お母さんは許さな」
( ω )「ごめんなさいだお」
必死に止める母を軽く突き飛ばし、ブーンは玄関の戸を開けた。
( ^ω^)「……いってきます」
J(;'ー`)し「ま、待ちなさい、ホライゾン……!」
尻餅をつきながらも、母は懸命に止めた。
- 89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:23:06.97 ID:Lfv/cO5E0
ブーンは雪に閉ざされた世界を進む。
やがて、叫ぶ母の声も耳に届かなくなった。
激しい雪で視界は悪い。
足元すらおぼつかない程であった。
それでもブーンは進むのだ。
( ^ω^)「……」
モララーがいなくなった。
彼の意志を尊重するなら、自分は今すぐにでも村を出るべきだ。それは分かっている。
しかしそれでもモララーの友人として、その真相に迫らないわけにはいかないと思った。
前もろくに見えない雪道をひたすら歩いた。
幸い、道の両端には積み上げられた雪があったので、迷子になるということはなかった。
( ^ω^)「……着いたお」
どれほどの時間歩いただろうか。
時間の感覚はとうに失われていたが、ブーンはやっとのことで目的地にたどり着いた。
境内へ続く階段には雪が積もっている。
しかし、そこには足跡があった。
ブーンも足跡をたどるように階段をゆっくりと、確実に上ってゆく。
階段を上り切ったところ、境内の賽銭箱の前に、彼はいた。
- 90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:24:03.50 ID:Lfv/cO5E0
( ^ω^)「ジョルジュ……」
昨日と同じ昔のような表情で、しかしなぜか両手を後ろに隠して、彼は立っていた。
_
( ゚∀゚)「ブーン、やっと来たか」
( ^ω^)「何の用だお?」
_
( ゚∀゚)「……分かってるんだろ?」
( ^ω^)「……」
ジョルジュの挑発するような笑みに、ブーンは全てを悟った。
_
( ゚∀゚)「教えてやるよ。お前が知りたい、本当のこと」
( ^ω^)「……全部」
_
( ゚∀゚)「全部? ……いいぜ。全部、最初から最後まで、答え合わせの時間だ!」
ブーンとジョルジュの距離は十メートル近く離れている。
それでも、互いの声ははっきりと聞こえた。
_
( ゚∀゚)「まずは……ツンのいなくなった日のことから話すぜ」
体温すら奪い取るような雪の中、ブーンはジョルジュの話に耳を傾けた。
- 91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:24:55.86 ID:Lfv/cO5E0
――4――
白で統一された清潔な部屋に、三人の姿があった。
_
( ゚∀゚)「今日はケーキを持ってきたぞー」
ジョルジュは小さな白い箱を差し出す。
ξ*゚听)ξ「やったぁ!」
喜色満面にその箱を受け取ったツンは、すぐにそれを開ける。
ξ*゚听)ξ「ショートケーキ!」
川 ゚ -゚)「駅の近くの店のものだ。この間、テレビでも紹介されていたんだよ」
ξ゚听)ξ「へぇ……。お兄ちゃんとクーお姉ちゃんは食べた?」
_
( ゚∀゚)「ツン、残念だが俺は甘いものが苦手なんだ……」
川 ゚ -゚)「実は私もだ。私の母さんは美味しいと言っていたがな」
ξ゚听)ξ「ふぅん……」
ツンはケーキとプラスチック製のフォークを取り出し、言った。
- 92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:25:52.14 ID:Lfv/cO5E0
ξ゚听)ξ「お兄ちゃんとクーお姉ちゃん、ほんとに似てるよね」
_
(;゚∀゚)「どこが!?」
素早く反応したのはジョルジュである。
ξ゚听)ξ「甘いもの好きじゃないとことか、運動が得意なとことか、あとわたしのお見舞いに来てくれるとことか」
口を閉じ、二人の年長者を見つめて、そして少女は言った。
ξ*゚听)ξ「……つきあっちゃえばいいのに」
_
(;゚∀゚)「!?」
爆弾発言。
ジョルジュは身体中に汗を流しながら動きを止めた。
川 ゚ -゚)「残念だがツンちゃん、私はジョルジュを親友だとは思っているが、恋人にしたいと思ったことはないぞ」
ジョルジュに対し、クーはいつもの調子を崩さずに言う。
- 94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:26:48.44 ID:Lfv/cO5E0
ξ゚听)ξ「えー」
_
( ゚∀゚)「そうだよ、クーの言う通り! 俺とクーは友達なんだぜ!」
ξ;゚听)ξ「お兄ちゃん、大丈夫?」
_
(;゚∀゚)「だ、大丈夫なんだぜ!」
川 ゚ -゚)「口調がおかしいぞ」
内心、ジョルジュは焦っていた。
クーに対して恋愛感情を持っていたわけではないが、そういった話題が妹の口から出たことには動揺したのである。
ずっと籠の中で過ごす少女が俗なことを言うというのが、ショックでないと言えば間違いなく嘘だった。
_
( ゚∀゚)「言っとくが、クー」
川 ゚ -゚)「なんだ」
_
( ゚∀゚)「俺はお前のこと、本当に友達としか思ってないからな」
川 ゚ー゚)「残念だが私も同じだよ」
クーは笑みを浮かべて、ジョルジュに同意を示した。
- 95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:28:16.74 ID:Lfv/cO5E0
卒業式の日の放課後、ブーン達と別れたジョルジュは帰宅していた。
ζ(゚ー゚;ζ「ジョルジュ!」
玄関に入った彼を真っ先に迎えたのは、顔を青ざめさせたジョルジュの母だった。
_
( ゚∀゚)「どうしたんだよ?」
普段おっとりした雰囲気を纏う彼女が慌てるというのは珍しいことだった。
ジョルジュも何か非常事態が起きているのだとすぐに気付く。
ζ(゚- ゚;ζ「ツンが、ツンがいなくなっちゃったのよ!」
_
( ゚∀゚)「え……」
ζ( - ;ζ「私が目を離した隙に、あの子、どこかにいっちゃったの……!」
崩れ落ちた母の身体を支え、ジョルジュはリビングに向かう。
_
(;゚∀゚)「どういうことだ? 落ち着いて、詳しく説明してくれ」
ζ(゚ー゚;ζ「……分かった」
母はいまだに落ち着かない様ながらも、ジョルジュの言葉に応じた。
- 96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:29:20.80 ID:Lfv/cO5E0
そもそも、ジョルジュの妹のツンは病弱で、生まれてからのほとんどの期間を病院で過ごしてきた。
その彼女はつい昨日、体調が落ち着いたために退院したばかりだったのである。
ツンの存在をジョルジュ達家族と、それにごく近しい者しか知らないのもそのためなのだ。
そのツンが、母が目を離した隙に失踪した。
過保護の節のあった母は退院した我が子に当然外出禁止を言い渡したが、ツンはそれが嫌だったのだろう。
なんせ彼女はジョルジュが見舞いに行く度に、外の世界で自由に遊びたいと言っていたのだから。
_
( ゚∀゚)「家は全部探したか?」
ζ(゚ー゚*ζ「探したよ。ここも、離れも、蔵も、庭も、全部探した」
_
( ゚∀゚)「……外か」
ζ(;ー;*ζ「どうしよう、どうしよう、私……」
母は泣き崩れた。
自分の過失で愛娘がいなくなってしまったのだ、それは当然とも言えた。
_
( ゚∀゚)「俺は外を探してくる。ツンが帰ってくるかもしれないから、お袋は家にいろ」
ζ(;ー;*ζ「うぅ……どうしよう……ツン……」
_
( ゚∀゚)「……」
着替えることもせず、ジョルジュは荷物を置いて駆け出した。
日のあるうちに見つけたかった。
- 99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:30:33.81 ID:Lfv/cO5E0
村の、人の集まるところを中心に探した。
ツンはあまり人見知りのない性格で、入院中は特に人の集まるところに行きたいと言っていた。
商店街、公園、村役場、診療所、学校。
様々な場所を回って最後に訪れたのが交番だった。
(´・_ゝ・`)「おや、どうしたんだい?」
息を切らして交番に駆け込んだジョルジュに心配そうに声を掛けたのは、クーの父だった。
_
(;゚∀゚)「……ツンが、いなくなって、それで……」
(´・_ゝ・`)「ツンちゃんが?」
彼はジョルジュの家の近くに住むうえに昔父と同級生で仲が良かったとかで、ツンのことは知っていた。
クーがツンを知っていて親しくしていたのも、そんな事情があったのだ。
(´・_ゝ・`)「まずは落ち着いて、それから事情を話してほしい。コーヒーでも煎れるからさ」
_
( ゚∀゚)「……はい」
- 100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:31:38.38 ID:Lfv/cO5E0
ジョルジュは彼に、母から聞いたことと自分がいくつもの場所を探したことを伝えた。
(´・_ゝ・`)「……分かった。ツンちゃんを探そう」
交番の外、空は灰色の雲に覆われていた。
さらに、すでにかなりの量の雪が降っていた。
_
( ゚∀゚)「いつの間に……」
(´・_ゝ・`)「君が来た頃にはもう降っていたよ」
ジョルジュは、それすら気付かない程に必死だったのだ。
いよいよ雪が本格的になった。
未成年のジョルジュは強制的に帰らされてしまい、大人達でもまともに動くのは不可能だった。
_
( ゚∀゚)「……ツン」
今日の捜索は打ち切り。それはつまり。
_
( ゚∀゚)「……」
その日、結局ジョルジュは眠りに就くこともできなかった。
- 102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:32:38.78 ID:Lfv/cO5E0
気付いたら窓から温かな光が差し込んでいる。
意識がはっきりしてきた頃、彼の携帯電話が鳴動した。
_
( ゚∀゚)「……なんだ?」
クーからの電話だった。
「ジョルジュ、ツンちゃんが見つかった」
クーの声に抑揚はなかった。
ジョルジュは、残酷な現実を突き付けられたのである。
- 103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:33:41.23 ID:Lfv/cO5E0
静まり返る部屋に、女の絶叫だけが響く。
ζ(;- ;*ζ「ツン! うそ、嘘よ! なんでなの、ツン!?」
それは小さな棺に縋って泣き叫ぶ母のものだった。
息子や、夫ですら彼女を止められはしなかった。
ζ(;- ;*ζ「あなたまで私を置いていくの? やだ……嫌よ……。やっと、やっと生まれた女の子なのに……」
彼女は、ジョルジュとツンの間に一度流産を経験していた。
それゆえに、彼女のツンに対する愛情は異常とも言える域にまで達していたのである。
川 ゚ -゚)「ジョルジュ……」
しかしクーにとってはそんな彼女より、長い時間を共に過ごした幼馴染の静けさの方が気になっていた。
_
( ∀ )「……クー、俺、もうダメかもな」
川 ゚ -゚)「ジョルジュ、君に大事な話がある」
弱音を吐く親友の姿に耐えられなかった。
だから、クーは。
川 - _-)「ツンがなぜ神社にいたか、教えよう」
ブーンから聞いた出来事を話したのだ。
- 104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:34:38.24 ID:Lfv/cO5E0
それから幾日、経ったか。
ジョルジュはクーから話を聞いても、特に何も感じなかった。
_
( ∀ )「……ツンは、帰ってこない」
自分の部屋の片隅で、ひとり呟いた。
父は悲しみを抱えながらも日常に帰っていった。
しかし母はいまだ塞ぎ込んでいる。
このままではいけないと知っていた。
だからジョルジュは、母のいるリビングに向かった。
_
( ゚∀゚)「……お袋」
ζ( - *ζ「ツン……ツン……私の、ツン……」
息子の声など聞こえていないのか、母はいつものようにぶつぶつと何かを呟いている。
_
( ゚∀゚)「お袋、ツンがなぜ神社にいたか、知りたくないか?」
ζ(゚- ゚*ζ「……ツン」
母は、数日ぶりにジョルジュと目を合わせた。
- 105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:35:32.05 ID:Lfv/cO5E0
彼のその行動は、完全なる善意からのものであった。
クーがジョルジュにあの話をした理由は薄々分かっていた。
失意に沈むジョルジュを、怒りを浮き袋にして引き揚げるつもりだったのだ。
ブーン達への八つ当たりの感情、それが原動力で良かった。
とにかくクーはジョルジュの悲しむ姿を見たくなかった、それだけだった。
だからジョルジュも母に同じことをした。
ζ(゚- ゚*ζ「……」
黙って自分の話を聞く母の表情は恐ろしく思えたが、それでもジョルジュは事実を告げた。
- 106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:36:28.09 ID:Lfv/cO5E0
いつの間にか母も立ち直り、ジョルジュが大学生になってから一年以上が経った。
ジョルジュが唯一連絡を取る友人はクーだけだったが、元が社交的な彼には新しい友人もできていた。
そんな彼はその日、午後から講義があった。
入速駅のホームで大学のある方面への電車を待つ。
_
( ゚∀゚)「あ……」
思わず声を上げていた。
ドクオは同じアパートに住んでいて、お互いに気まずかったものの、軽く挨拶程度はしていた。
しかし、他の人物を見掛けるのは初めてだった。
_
( ゚∀゚)「プギャー?」
(;^Д^)「ジョルジュ……!」
思わず駆け寄って話し掛けていた。
_
( ゚∀゚)「お前、本当に村を出てたんだな」
( ^Д^)「今更それかよ」
最初は驚いたような顔をしたプギャーだったが、ジョルジュの言葉にすぐに表情を崩した。
- 107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:37:22.96 ID:Lfv/cO5E0
- _
( ゚∀゚)「あ、もうすぐ電車来るな」
アナウンスが人の少ないホームに響いた。
( ^Д^)「俺、人待ってるんだよ」
_
( ゚∀゚)「誰?」
( ^Д^)「……彼女」
_
(;゚∀゚)「嘘、だろ……?」
(;^Д^)「嘘じゃねーよ! いいからお前は電車乗れ!」
電車は徐々に速度を落とし、ホームに停車した。
- 109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:38:21.55 ID:Lfv/cO5E0
翌日、ジョルジュはプギャーの死を知った。
クーが教えてくれた。
プギャーはジョルジュと会ったすぐ後に、駅を通過する特急電車にひかれたという。
_
( ゚∀゚)「……」
プギャーは、大切な友人の一人だった。
それが原形も留めないほどの肉塊になった。
悲しかった。
その日、ジョルジュは久し振りに夢を見た。
この夢が、彼を変えた。
- 110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:39:16.34 ID:Lfv/cO5E0
大切な妹だった。
その少女は一面に花の敷き詰められた場所に立っていた。
ξ*゚ー゚)ξ「お兄ちゃん」
彼女は愛らしく微笑む。
ξ*゚ー゚)ξ「お兄ちゃん、ありがとう」
_
( ゚∀゚)「え……?」
ξ*゚ー゚)ξ「だって、プギャーお兄ちゃんを殺したのは、お兄ちゃんなんでしょ?」
辺りを見渡せば花畑など存在せず、ただ深い闇だけが全てを支配していた。
_
(;゚∀゚)「俺、じゃない」
嘘ではない。
ジョルジュは本当に、プギャーを手に掛けてなどいない。
ξ゚听)ξ「じゃあ、だれ?」
ツンの顔から笑顔が消えた。
- 111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:40:14.42 ID:Lfv/cO5E0
- _
( ゚∀゚)「……事故、じゃないのか?」
ξ゚听)ξ「……なら、わたしがお兄ちゃんに会いにくる理由はないや」
ツンは何もない暗い地面を見つめている。
ジョルジュには、今の彼女の思考の一端すら読み取ることが出来ない。
ξ゚听)ξ「わたしを置いていった人をころしてくれたのがお兄ちゃんだと思ったから、会いにきたのに」
長い睫毛に縁取られた、美しい二つの瞳がジョルジュを射ぬく。
_
( ∀ )「……ツン、俺、は」
ξ゚听)ξ「お兄ちゃん。お兄ちゃんがまたわたしのためを思ってくれたら、またきっと会いにくるよ」
_
( ∀ )「……」
ツンは再び笑顔で。
ξ゚ー゚)ξ「お兄ちゃん」
_
( ゚∀゚)「……!」
ξ^ー^)ξ「わたしのこと、好きじゃないの?」
満面の笑みで、言った。
- 112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:41:14.25 ID:Lfv/cO5E0
馬鹿げた夢だ、そう思っていた。
ジョルジュの母はツンがいなくなって以来、彼女に向けていた愛情の一部をジョルジュに注ぐようになった。
彼女はジョルジュが自分から極端に離れることを嫌ったのである。
しかしジョルジュも暇ではないし、大学に通うには村はあまりに不便だった。
だからこその妥協案が、それだった。
ζ(゚ー゚*ζ「おかえりなさい、ジョルジュ」
_
( ゚∀゚)「……ただいま」
講義のない毎週末に、家へ帰ること。
それが母との約束だった。
ジョルジュとしても面倒ではあった。
しかし、せっかく立ち直った母の願いを拒絶できるほどに彼は冷酷ではなかったのだ。
- 113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:42:01.07 ID:Lfv/cO5E0
村の夜は早い。
テレビで見ることのできる局数は少ないし、他に娯楽があるわけでもない。
_
( ゚∀゚)「……」
そんなわけで特にするべきこともないジョルジュは村内を散歩していた。
月の綺麗な晩だった。
- 114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:42:55.92 ID:Lfv/cO5E0
あてもなく歩いていた彼は、偶然にもある友人の家の前にたどり着いていた。
_
( ゚∀゚)「ここ……ギコの家か……」
ジョルジュの家ほどではないが、村の中では立派な方だった。
先祖が真面目に働いたからこの家があるのだと、ギコがよく話していたのを思い出す。
_
( ゚∀゚)「……」
上着のポケットに入れていた手に、固いものが触れる。
_
( ∀ )「……ツン」
それはつい最近、余ってるからと友人に押し付けられたライターだった。
玄関先には積み上げられた古新聞が鎮座している。
_
( ∀ )「……」
魔が差した。
もし彼が警察に捕まっていたとしたら、きっとそう答えたであろう。
灰色の煙を排出しながら燃える新聞紙をまともに見ることもなく、彼は走ってその場を立ち去った。
- 115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:44:01.01 ID:Lfv/cO5E0
見渡すかぎりに広がる花畑、その中心に少女はいた。
ξ*゚ー゚)ξ「お兄ちゃん」
_
( ゚∀゚)「ツン……」
ツンはジョルジュに抱きついた。
ξ*゚ー゚)ξ「ありがとう。お兄ちゃん、頑張ったね」
_
( ゚∀゚)「……」
ツンは、やはり無邪気に笑っていた。
ξ*゚ー゚)ξ「ほら、一緒に遊ぼ!」
ジョルジュの手を取り駆け出すツン。
ジョルジュもそれについて行く。
- 116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:45:22.74 ID:Lfv/cO5E0
幸せな時間だった。
特に何をするわけでもないが、一度失ったはずの妹が目の前にいるという、ただそれだけでジョルジュは幸せだった。
恋い焦がれたものが、そこにあったのだ。
ξ*゚ー゚)ξ「お兄ちゃん」
目が覚める直前、ツンは相変わらずの笑顔で言った。
ξ*^ー^)ξ「また、わたしの怨みをはらしてね」
_
( ∀ )「……」
ジョルジュはただ、首を縦に振った。
- 118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:46:40.43 ID:Lfv/cO5E0
――5――
そこまで話し終えても、ジョルジュの表情は変わらなかった。
その表情は、まさにブーンのよく知る彼に相違なかった。
( ^ω^)「それで……ドクオとモララーは?」
_
( ゚∀゚)「ドクオの方は知らねぇよ。事件のあった時間、俺が大学にいたことは証言してくれる奴がいる。
……俺は、ただの偶然だと思ってる」
( ^ω^)「じゃあなんで、モララーと話した時には無実を証明してくれる人がいるって言わなかったんだお?」
_
( ゚∀゚)「ちゃんと理由はあるぜ」
一度大きく息を吸って、ジョルジュは続けた。
_
( ゚∀゚)「モララーは……俺がやった」
(;^ω^)「……」
ぴくり、ブーンの身体が強ばる。
予想はしていた、それでも聞きたくない言葉だったのだ。
- 119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:47:44.38 ID:Lfv/cO5E0
- _
( ゚∀゚)「まずは、モララーが村の中で一人になる状況を作らなきゃいけなかった」
( ^ω^)「……」
_
( ゚∀゚)「だから俺に疑いを向けさせた。……昨日、三人で話した後に二人で会うことは一昨日の時点で決めていたんだ。
モララーから会いたいという電話があった時に、俺は二人きりで話がしたいと言った」
( ^ω^)「どうして」
ブーンの問いに答えるように、ジョルジュは僅かに笑みを見せた。
_
( ゚∀゚)「モララーとブーン、二人は遠くに住んでるだろ。多少無理をしてでも、村にいるうちに始末したかった」
( ^ω^)「そうじゃない」
_
( ゚∀゚)「じゃあ、何が聞きたいんだ?」
ブーンの頭の中は、ジョルジュの言葉を信じたくないという気持ちでいっぱいだった。
大切な友人が、同じように大切な友人を手に掛けたという事実。
( ^ω^)「なんで、ジョルジュは」
ジョルジュの言葉次第では許せるような気がした。
だからブーンは、聞いたのだ。
( ^ω^)「僕達を殺すんだお?」
- 120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:49:03.80 ID:Lfv/cO5E0
耳に入るのは叩きつけるような雪の音だけ。
ごうごうと唸る風が、ひたすらに雪を運んでいる。
ジョルジュは息を吐いて、それから答えた。
_
( ゚∀゚)「俺はブーンのこと……他の奴らのことも、嫌いじゃなかったし今も嫌いじゃない」
ブーンは無言で耳を傾けている。
_
( ゚∀゚)「でも、ツンに会いたかった」
相変わらずジョルジュの体勢は変わらない。
両の手はいまだ彼の後ろだ。
しかし、今にも大きな身振り手振りを始めそうなくらいに勢いのある声だった。
_
( ゚∀゚)「プギャーが死んだことを知った日、ツンが教えてくれた。ギコの時は失敗したけど、ツンは俺に笑いかけてくれた。
昨日だって、きっとお前には想像もつかないくらい幸せな夢を見られた!」
_
( -∀-)「動機なんて、それで十分だろ?
あいにく俺はドラマや小説の犯人のように、万人の同情を誘えるようなものは持ってないさ」
ブーンには何も言えなかった。
正直に言ってしまえばブーンには妹がいないから、
それを失った悲しみや会いたいという感情を本当の意味で理解することなどできるはずもない。
しかし、それでも痛みを想像することはできた。
- 121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:50:15.75 ID:Lfv/cO5E0
- _
( ゚∀゚)「ブーン」
( ^ω^)「……なんだお?」
_
( ゚∀゚)「これ、受け取ってくれ」
そう言って、ジョルジュは左手に持っていた何かをブーンに投げてよこした。
( ^ω^)「花?」
ブーンが受け取ったのは、赤色の花。
_
( ゚∀゚)「クリスマスローズ……ツンが好きだった花だ」
小さな花には降り積もった雪が乗っている。
赤と白のコントラストは、花に特別な思い入れのないブーンにも美しく感じられた。
_
( ゚∀゚)「……やっぱり、ブーンは優しいな」
( ^ω^)「お?」
_
( ゚∀゚)「モララーは受け取ってくれなかったんだ」
( ^ω^)「ジョルジュ……」
- 122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:51:09.48 ID:Lfv/cO5E0
ジョルジュは一度俯いて、それから再び顔を上げた。
_
( ゚∀゚)「優しいお前だから頼む。……ツンに、その花を届けてやってくれ」
その言葉に、ブーンは改めて知った。
目の前の友人の決意は揺るがない。
誰も悪くない。
しかし、誰にも止められない。
( ω )「現実が、一番残酷なんだお」
ブーンは父の書いた小説を思い出していた。
昨日、気を紛らわそうと読んだのは例のサスペンス小説だった。
本当は、目の前の友人は自分に殺意を向けてなんかいなくて。
自分のいない間に村に根付いた怪しげな宗教の怪しげな教祖様が犯人だった。
そんな結末だったら、どんなに良かったであろうか。
_
( ゚∀゚)「……」
ジョルジュはただブーンを見据えている。
ブーンは、せめて最後の努力をすることを決めた。
- 123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:52:23.71 ID:Lfv/cO5E0
( ^ω^)「いいお。僕を殺したいなら、殺せばいい」
_
( ゚∀゚)「……」
( ^ω^)「でも、僕は全力で逃げるお。ジョルジュの証言を、警察に伝えるんだお」
_
( ゚∀゚)「……いいぜ。最後の鬼ごっこだ」
ブーンは駆け出した。
昔から、足の速さだけは誰にも負けなかった。
雪に足を取られる。
知らぬ間にさらに積もっていた雪は、一冬を都会で過ごしたブーンには大きな障害となった。
一方のジョルジュは、ブーンに比べたら足を取られていない。
ブーン程ではないが彼もまた足は早かったし、運動も得意であった。
_
( ∀ )「ツン、すぐに終わらせるから」
階段は凍ってこそいないものの降りる作業には時間がかかる。
ブーンが慎重に降りる様子を見下ろして、ジョルジュは言った。
_
( ゚∀゚)「ブーン!」
( ^ω^)「……!?」
名前を呼ばれたら思わず振り返ってしまうのが人の性というものである。
- 125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:54:18.72 ID:Lfv/cO5E0
ブーンは目を疑った。
_
( ∀ )「終わりだ」
ジョルジュは、ブーンに体当たりをしたのだ。
そのまま二人は縺れ合って一気に階段下まで転げ落ちる。
雪がクッションとなったため怪我はしなかったが、それでも多少の痛みはあった。
(;゜ω゜)「……っ!?」
刹那、ブーンを先程までとは違う激痛が襲った。
_
( ゚∀゚)「……」
仰向けのブーンに馬乗りになっていたジョルジュは立ち上がり、冷たい目を向ける。
逃げる最中ですら右手に握られていたクリスマスローズの花束が雪の上に散っている。
(; ω )「う……ジョル、ジュ……」
痛みに呻くブーンが焼けるように熱い左脇腹を確認すれば、そこには銀に煌めく凶器が突き刺さっていた。
_
( ∀ )「ありがとう、ブーン」
ジョルジュは呟いた。彼は一度しゃがみこむと、ブーンの腹のナイフを引き抜く。
栓がなくなったことで血液が流れだす。
命の紅は、雪の白を染め上げてゆく。
- 126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:55:41.40 ID:Lfv/cO5E0
ブーンは徐々に霞む視界の端にジョルジュをとらえた。
_
( ゚∀゚)「……」
彼は無言だ。
ブーンも、もうまともな言葉を発することは出来なかった。
ξ゚听)ξ「……」
とうとう自分は頭がおかしくなってしまったのだろうか。
ジョルジュの背後には、たしかにあの子が見えた。
ξ゚听)ξ「……」
ただ無言で立つ少女、しかし彼女の表情は。
ξ )ξ「……」
どこか物悲しげに見えた。
ブーンの意識は、そこで途切れた。
- 128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:57:19.45 ID:Lfv/cO5E0
――エピローグ――
適温に保たれたある一室に、二人の青年がいた。
(,,゚Д゚)「ドクオ、まだ退院できねぇのか?」
('A`)「怪我はだいぶ治ってるんだけどな。親父が許してくれない」
(,,゚Д゚)「お前も大変だな」
('A`)「お互い様だろ」
ギコとドクオは笑い合う。
といっても、それは感情のこもったものではなかった。
コンコン、病室の戸を軽くノックする音が聞こえる。
「クーだ。入るぞ」
(,,゚Д゚)「どーぞー」
('A`)「なんでギコが返事してんだよ」
- 129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:58:12.77 ID:Lfv/cO5E0
川 ゚ -゚)「こんにちは」
クーが病室に入る。
彼女はその腕に、大きな花束を抱えていた。
(,,゚Д゚)「なんだ、その趣味の悪い花」
川 ゚ -゚)「ああ、これは……」
クーが持っていたのは黒い百合の花であった。
川 ゚ -゚)「受付でドクオの病室を聞いた時に、看護師さんに持っていくよう頼まれたんだ。
なんでも、全身黒ずくめの人物がドクオにと言って持ってきたらしい。
その人物の詳しい特徴を聞いたら、守秘義務がどうのともっともらしいことを言われてしまったがな」
('A`)「……気持ち悪いな」
川 ゚ -゚)「捨てようか?」
('A`)「それは勿体ないだろ」
クーから花を受け取ったドクオは、それを福寿草の隣に並べた。
- 130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 21:59:03.91 ID:Lfv/cO5E0
川 ゚ -゚)「モララー、ブーン、それにジョルジュも……まだ見つからないよ」
(,,゚Д゚)「ほんと……どこに行ったんだろうな」
川 ゚ -゚)「さあな。しかし年を越しても見つからないとはなぁ……」
('A`)「……」
あの日以来、ブーンは行方不明となったままだ。
さらに同日、ジョルジュも消息を絶ったために村は大混乱に陥った。
川 ゚ -゚)「警察もまだ探しているよ」
(,,゚Д゚)「俺達も時間があれば捜索を手伝ってるんだが、手掛かりはない」
そして、一度会話が途切れた。
しかしギコが思い出したように口を開く。
(,,゚Д゚)「そういえば、クーはプギャーの事故現場に居合わせたんだったよな?」
川 ゚ -゚)「正確に言えば同じホームにいた、だな。直接現場を見たわけではない」
('A`)「え、俺、初耳なんだけど」
(,,゚Д゚)「村の情報網を嘗めんなよ」
- 131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 22:00:12.51 ID:Lfv/cO5E0
その話は、プギャーの葬儀の数日後には村中の知るところだったという。
ドクオが知らなかったのは村へ帰る機会が少なかったからに他ならない。
(,,゚Д゚)「なんで駅にいたんだ? 大学か?」
川 ゚ -゚)「ああ、その通りだ。アパートから歩いて、いつも通り駅に行って、ホームで電車を待っていたんだ」
(,,゚Д゚)「偶然って怖いよなぁ」
('A`)「……一連の出来事について、クーの意見が聞きたい」
ドクオはクーを見据えて、言った。
クーはまさかそんなことを言われるとは思わなかったのか、一瞬だけ表情を変える。
川 ゚ -゚)「……私の意見? 別に話してもいいが……確証は何一つとしてないぞ」
('A`)「それでいい」
その言葉に、クーは軽い咳払いをして話し始めた。
川 ゚ -゚)「なら、まずはプギャーだ。これは事故だろうな。私は同じホームにいたが、不審者は一切見ていない」
クーはしっかりした口調で、自分の意見を述べてゆく。
- 132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 22:01:37.69 ID:Lfv/cO5E0
川 ゚ -゚)「次にギコか。……言いにくいが、私はツンちゃんの母親を疑っている」
(,,゚Д゚)「ジョルジュの母親、ってことだよな?」
川 ゚ -゚)「ああ。おばさんはツンちゃんが亡くなって以来、明らかに様子がおかしかった。
事情を知っていたなら凶行に走ってもおかしくないように見えたな」
思い出すように目を伏せて、さらに続ける。
川 ゚ -゚)「そしてドクオか。これもおばさんかもしれない。
ジョルジュとドクオの身長差は結構あった。そして、ドクオは腰のあたりを刺されたと聞いた。
彼が犯人なら、もう少し上……背中を刺す方が妥当じゃないか?」
クーは立ち上がり、さらにギコを立たせる。
川 ゚ -゚)「私とドクオ、ギコとジョルジュの身長差はそれぞれ同じくらいだろう。
ギコ、私を背中から、最も自然な格好で刺してみてくれ」
ギコはクーの背後に立ち、腕を動かした。
(,,゚Д゚)「……あ」
思わず声を洩らした。
クーの言う通り、構えた拳は腰ではなく背中に触れたのだ。
しかしそれを見ていたドクオは言う。
- 133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 22:02:56.70 ID:Lfv/cO5E0
('A`)「……だからといって、おばさんで決まりなわけじゃないだろ。本当に、全く知らない奴の可能性だって十分あるんだ」
川 ゚ -゚)「もちろんだ。私達だって、互いに自分の無実を証明することはできないのだからな」
部屋の空気は次第に沈んでゆく。
話題が話題だけに仕方ないことではあったが、三人とも良い気分ではなかった。
その状況を打破しようと口を開いたのはクーだった。
川 ゚ -゚)「クロユリ、か……さらにプリザーブドフラワーときたもんだ」
('A`)「クロユリ?」
(,,゚Д゚)「プリザーブドフラワー?」
川 ゚ -゚)「クロユリはその花の名さ。たしか花言葉もどこかで聞いたんだが思い出せないな。
プリザーブドフラワーは花を長期間保存するために加工したものだな」
(,,゚Д゚)「へぇ……。だが不審者からのプレゼントだろ? 花言葉なんてどうせろくでもねぇよ」
川 ゚ -゚)「……そうだな」
('A`)「退院したらペニサスさんに聞きにいこう」
- 134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/26(月) 22:04:20.68 ID:Lfv/cO5E0
ドクオはクロユリの花に視線を向ける。
その毒々しい黒は、何か不吉なものを予感させた。
――( ^ω^)雪の花のようです・終――
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