(,,゚Д゚)はギコのようです

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 21:34:53.12 ID:klzOgXTR0

(,,゚Д゚)「ありがとうございましたー」


今日も休日だというのにコンビニのアルバイト。

接客という仕事である以上、客とは必ず顔を合わせる。

こちらは客の顔を覚えておく事はあるが、
店員の顔を覚えておく客なんてそうそういないだろう。

もしいるとすれば、どんな物好きなのか。





     (,,゚Д゚)はギコのようです





8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 21:36:31.50 ID:klzOgXTR0

今の時刻は…12時。お昼時。

コンビニの中は老若男女の客でごった返しており、
レジを打って袋に商品を詰め込むこの手も休む暇がない。

バイトを始めて6ヶ月くらいだが、ようやくこの量にも慣れてきたところ。
この時間帯は気を引き締めていかなければならない。

(´・ω・`)「あーっと…ギコ君、だったかな」

(,,゚Д゚)「そうですよ」

牛乳を袋に詰めていると、しょぼくれた顔の店長が話しかけてきた。

雇っている店員の名前を忘れるとは、とうとう健忘症が始まったか。
それとも認知症か、まだ30代後半の筈だが。

(´・ω・`)「そろそろ上がっていいよ。今日は昼までだろう?」

(,,゚Д゚)「分かりました。お先に失礼します」

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 21:38:05.86 ID:klzOgXTR0

そっけない挨拶と態度で返し、着替えを終えて裏口から出る。

外は、朝と同様に冷え込んでいた。
底冷えするような寒さではないけれども、手袋をしていない為か指先が悴む。

雪が降っていない事がせめてもの救いか。


『近年多発している健忘症について、全国医師会は先程――』

コンビニの真正面にある電気屋、
店先に並んでいるテレビから声が聞こえた。

そうだ。最近全国で、老若男女問わず健忘症が多発しているらしい。
始まったのは数週間前からだったか。

どこかの会社の社長や、ある省の大臣なんかが、
健忘症でマスコミに叩かれていた事は記憶に新しい。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 21:39:54.78 ID:klzOgXTR0

健忘症の原因は、依然として分からない。

大学生の友人からも「気を付けろよ」とも言われたが、
「発症」したとしても健忘症になった事さえ気が付かないようだし、
気を付けてもどうにもならないだろう。

ある日突然発症してしまうというのだから、恐ろしい。


健忘症…さっきの店長もそうなんだろうか。
店長が発症してはマズい、雇われている方からすれば死活問題だ。

  _
( ゚∀゚)ノ「うぃーっす。おう、今日もバイトか?」

考えながら歩いていると、目の前に友人のジョルジュが現れた。

相変わらずニヤけた顔をしている。
始めて会った時は、バカにしてんのか?と思ったが、今はもう慣れている。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 21:41:31.08 ID:klzOgXTR0

(,,゚Д゚)「ああ。お前、今日の講義はもう終わったのか」
  _
( ゚∀゚)「いやー、教授が健忘症になっちまってな、文字通り話にならなくてさ」

(,,゚Д゚)「マジか」
  _
( ゚∀゚)「大マジだ。今日は、もう呆れて帰ってきちまった」

(,,゚Д゚)「教授も発症するんだな」
  _
( ゚∀゚)「みてーだな…医師も発症するくらいだからな」

(,,゚Д゚)「お前も気を付けろよ」
  _
( ゚∀゚)「同じ事を言われるとはな。ま、注意しねーと」

(,,゚Д゚)「ああ」
  _
( ゚∀゚)「あーそうそう、今日大学で面白いこと言う奴がいてさー」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 21:43:10.29 ID:klzOgXTR0

(,,゚Д゚)「何だよ」
  _
( ゚∀゚)「もし俺達の事が人に忘れ去られたら、俺達はどうなるのかっつー事をな」

(,,゚Д゚)「さあな。ま、一人暮らしでもしない限りは大丈夫だろ」
  _
( ゚∀゚)「じゃあ、一人暮らしのお前に身をもって体感してもらおうか。で、報告よろしく」

(,,゚Д゚)「気が向いたらな」
  _
( ゚∀゚)「まーまー。
     …そうだ、どうしても頼みたい事があるんだけどな、いいか?」

ジョルジュは、いつになく真剣な顔で俺を見据えていた。
何かあるんだろうか。まさか、何かやらかしたか。



  _
( ゚∀゚)「150円貸してくれ」

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 21:44:46.06 ID:klzOgXTR0

(,,゚Д゚)「…は?そんな事か」

肩すかしをくらった。
たかがそんな事を仰々しく言わなくても良いだろう。

溜息をついて財布から小銭を取り出し、差し伸べられた手に置く。
そのまま小銭を縦にしてぐりぐりと押しつけた。
 _
(;゚∀゚)「痛っ!痛あっ!ありがとうございますギコさん!」

(,,゚Д゚)「いちいち大袈裟過ぎるだろ」
  _
( ゚∀゚)ノシ「いやーキャッシュカードも金も持ってなくてね、これでジュースが買えるぜ!
       じゃあな!」

(,,゚Д゚)ノ「おう」

手を振り、俺とは逆方向に走り去っていく。
こちらも手を振って見送り、いつも通り家路に就いた。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 21:46:34.98 ID:klzOgXTR0

◇   ◇   ◇


白い外壁に覆われた、二階建ての一軒家。
屋根と同じ、黒い扉に手をかけ、ガラッと左に滑らせる。

(,,゚Д゚)「ただいましたーっと」

返事はない。
帰宅した時の口癖のようなもので、今更直すつもりはない。


一年前、両親は死んだ。

高卒での就職に失敗してから大学に行こうと思い立ち、
バイトを転々として金を稼いでいた、その時に死んだ。

そして受け継いだのがこの家だった。
三人で暮らしている時でも「広い」と感じていたが、正直、今でも持て余している。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 21:48:13.04 ID:klzOgXTR0

(,,゚Д゚)「さーて」

昼食にしようかと思い台所にある棚を見ると、いくつかカップ麺が。

(,,゚Д゚)「これでいいか」

昼食はいつもカップ麺で済ませている。
時々、不健康だなと感じる事もあるが、こちらも今更治すつもりはない。

やかんにお湯を入れ、コンロの上に置いて湧かし始めると、
携帯が鳴った。

サブディスプレイには「ドクオ」と表示されている。
友人だ。

(,,゚Д゚)】「おうどうした」

 ('A`)『おー、暇か?今から飯食いにいこうぜ』

(,,゚Д゚)】「丁度、食おうと準備をしてたんだけどな」

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 21:49:53.52 ID:klzOgXTR0

言い、やかんに目をやる。まだ沸騰はしていないようだ。

(,,゚Д゚)】「まあいいか。どこで食うんだ?」

 ('A`)『いつものラーメン屋で』

(,,゚Д゚)】「分かった、じゃあな」

こちらから携帯を切り、ポケットに仕舞い込む。

コンロの火が消えた事をしっかりと確認して、また家を出た。


◇   ◇   ◇


(,,゚Д゚)「おう」

('A`)ノ「おーっす」

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 21:51:34.36 ID:klzOgXTR0

ラーメン屋の前。

高校時代から全く変わっていない、
細い腕を上げたドクオが呼び掛けてきた。

二人でラーメン屋に入り、カウンター席に座る。注文は、『いつもの』でお願いした。

('A`)「最近調子はどうだ?大学へは行けそうか?」

(,,゚Д゚)「まあ普通だ。金もそれなりに溜まってきたし、来年ぐらいには行こうと思う」

('A`)「おー、頑張れよ。俺はまだまだフリーターを続けるぜ」

高卒後、就活や進学が面倒臭いという理由で、ドクオはフリーターになっていた。
人付き合いも苦手な方で、人見知りでもある。

('A`)「そういえば、あの学校ってどうなるんだろうな」

(,,゚Д゚)「あー、少し離れたとこの小学校?だったか?」

('A`)「ああ、確か」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 21:53:16.55 ID:klzOgXTR0

この街から数キロ離れた所にある、山間部の小学校。
かつては500人程通っていたが、少子化が進み、今では30人程しか生徒がいない。

6年生がその大半を占めており、もう来年でなくなってしまうだろう、と言われている。

(,,゚Д゚)「さあな。今の6年が卒業したら無くなるんじゃないか」

('A`)「そうか。俺の父さんの母校だから、ちょっと気になってな」

(,,゚Д゚)「あの学校のねぇ…」

('A`)「ああ」

「へいおまち!」

カウンターの向こうからラーメンが差し出される。
白濁のスープが特徴の、豚骨ラーメン。

(,,゚Д゚)「…あれ?すいません、『いつもの』って…」

「ん?豚骨ラーメンだろ?違うのか?」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 21:55:16.11 ID:klzOgXTR0

店主は困惑を顔に浮かべた。

俺はいつも醤油ラーメンを頼んでいる。
最近になって『いつもの』で通じるようになったが、何故今日に限って。

せっかく作ってもらったラーメンを食べずにいるのも悪いと思い、
引き下がる事にする。

(,,゚Д゚)「いや…すいません。頂きます」


「おう!」

店主は気立てのいい声を上げ、またラーメンを作り始めた。


◇   ◇   ◇

昼食を終えてからは街中をゆっくり歩いてみたり、ボウリングをしたり。
気が付くと、街はすっかり夕焼けに染まっていた。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 21:57:06.37 ID:klzOgXTR0

('A`)ノ「じゃーな」

(,,゚Д゚)ノ「おう、またな」

いつも通りの挨拶を交わした後、いつも通り家路に就く。
電気屋の前を通ると、テレビから声が聞こえてきた。


『えーでは…次の問題です!現在の総理大臣の名前は?』

どうやら、クイズ番組らしい。
問題の下らなさに興味が湧き、少しだけ見る事にした。

『総理大臣は――あれ?…えっと…』

番組の回答者が、何か考え始めた。
総理大臣の名前でも忘れたのか。

確か今の総理大臣は――

(,,゚Д゚)「あれ?」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 21:58:42.04 ID:klzOgXTR0

誰だった?

(,,゚Д゚)「えーっと…待てよ?あーっと…」

記憶の引き出しをいくつも開けてみるが、その名前は見つからない。

そもそも、総理大臣なんていたのか?

(,,゚Д゚)「帰るか」

テレビから視線を外す。

いつも通りの歩き方で、いつも通りの道に沿って、
また家へと歩き出した。


◇   ◇   ◇

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 22:00:37.78 ID:klzOgXTR0

   次の日


◆   ◆   ◆


月曜日の午前。
いつもなら気分は落ち込んでいるが、不思議と今日はそうでもなかった。

外に風はなく、空からは、昨日と同じように雪がしんしんと降り注いでいる。

(,,゚Д゚)「いらっしゃいませ」

「タバコ。セブンスターを一つお願い」

(,,゚Д゚)「はい」

振り向き、タバコを取り出そうとする。

(,,゚Д゚)(ん?)

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 22:02:17.67 ID:klzOgXTR0

また忘れてしまった。さっき、この人は何を頼んだのだろうか。

(,,゚Д゚)「すみません、もう一度お願いしてもよろしいでしょうか」

「全く、さっき言っただろ?マルボロだよ」

そうだった、この人はマルボロを頼んだんだ。
思い出し、タバコを取り出す。

会計もすぐに終わった。

時計を見ると時刻はそろそろ12時、昼休憩の時間。


◆   ◆   ◆


(´・_ゝ・`)「休憩しようか」

(,,゚Д゚)「はい」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 22:03:50.62 ID:klzOgXTR0

きちんと整理整頓された休憩室の中に入ると、開放感に包まれた。

本当にしょぼくれた顔をしている店長だ、と改めて思いながら、
家から持ってきた弁当に手を付ける。

(´・_ゝ・`)「そうだ。あの山間部の中学校、今年度で無くなるらしいよ。
      少子化のせいでね」

(,,゚Д゚)「もう10人しかいないんですよね。まあ、仕方ないことですよ」

(´・_ゝ・`)「そうだな。少し寂しいけど」

しょぼくれた顔を更にしょげさせ、項垂れている。
確かあの中学校は店長の母校だった、だから相当落ち込んでいるのだろう。

俺は母校に対する気持ちなどは何も無い、中学校の事なんて殆ど覚えていない。


(,,゚Д゚)「ごちそうさまでした」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 22:05:30.78 ID:klzOgXTR0

空になった弁当箱を鞄に入れ、財布を取り出し中身を見る。

(,,゚Д゚)「あ」

小銭が無い。
ジュースを買うくらいの金はあるだろうと思っていたが、僅か56円しか無い。

これも仕方がない事だな。

落ち込んだままの気持ちで、家へ急いだ。


◆   ◆   ◆


家の扉を開け、二階の部屋へ駆け上がる。
板の間である自分の部屋に入り、机の引き出しを開ける。

スペアの財布に小銭をたくさん入れておいた筈だ、と思い。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 22:07:06.46 ID:klzOgXTR0

(,,゚Д゚)「あれ、俺何忘れたんだっけ?」


忘れてしまった。何を取りに、家に戻ったのか。

(,,゚Д゚)「まあいいか」

早くしないと、開始時間に遅れてしまう。

今まで一度だけ遅刻をしてしまった事があるが、
それ以降は真面目に働いて来たはずだ。

ここにきて評価を下げるのは、自分にとっても良くないだろう。


◆   ◆   ◆


コンビニに帰る途中の道で、見慣れた人影が目についた。ジョルジュだ。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 22:08:34.26 ID:klzOgXTR0

(,,゚Д゚)「おーい、ジョルジュ」

呼び、肩に手を掛けると、ジョルジュが振り向いた。
  _
( ゚∀゚)「あ?」

(,,゚Д゚)「おいおい、なんだよ」

何を怒っているのか、いつもと違う口調だ。
苛立ちの込められた声に、思わずたじろぐ。

(,,゚Д゚)「そうだお前、あの時に貸した金、返してくれないか」
  _
( ゚∀゚)「は?知らねーよ。つか、てめー誰だ?うぜーな、消えろよ」

(,,゚Д゚)「おいおい…」

ジョルジュはこんな奴じゃない筈だ。
俺の知っているジョルジュは――

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 22:11:31.63 ID:klzOgXTR0

――誰だ?

ジョルジュとは、誰だ。

目を閉じて考え込むが、何も、思い出せない。

瞼を開ける。


(,,゚Д゚)「?」

目の前には誰もいない。
雪が降り出し、道路に積もっていくのが見えるだけ。

さっきまで、誰かいた筈だが。

ん、待てよ。本当に誰かいたのか?
そういえば、誰もいなかった気がする。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 22:13:08.20 ID:klzOgXTR0

(,,゚Д゚)「うお」

はっとして腕時計を見ると、開始時間まであと5分だ。
しっかりしないとな、と言い聞かせてまた走った。


◆   ◆   ◆


(;゚Д゚)「すみません、遅れました!」

裏口から飛び込む。

結局、間に合わなかった。
バイトで三度目の遅刻だ、もうこれ以上はやらかしたくない。

そう思い慌てて着替えをする。

着替えを終え、帽子を付け、店内に急ぐ。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 22:15:08.44 ID:klzOgXTR0

(,,゚Д゚)「すみません!次からは遅れないようにします!」

(´・_ゝ・`)「…?」

店長は困惑している様子だった。

(,,゚Д゚)「?」

仕事では一度のミスは許されるが、二度目のミスは許されない、
と誰かが言っていたのを思い出す。

仕事に取り掛かろうとレジに着く。
店長はまだ、訝しげな顔をしている。


(´・_ゝ・`)「君、誰だったっけ」


何なんだ、と思っていると、想定外の言葉を口にした。

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 22:16:34.19 ID:klzOgXTR0

(,,゚Д゚)「…はい?俺ですよ?ギコですよ?」

俺の名前を忘れられるなんて夢にも思わなかった。

(´・_ゝ・`)「そうだっけ?ギコなんて人、ここでは働いてないけど」

(;゚Д゚)「何言ってるんですか!?ちゃんとここに…」


(´・_ゝ・`)「ともかく、部外者は出ていってもらおうか」

(;゚Д゚)「な…!?」

他の店員にも身体を抑えられ、どうすることも出来ないまま、裏口からつまみ出される。
バタン、とドアが閉じる。

しかし、このままでいるわけにはいかない。

(;゚Д゚)「開けてください!俺ですよ!忘れたんですか!?」

閉じた裏口のドアを叩きながら、叫ぶ。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 22:18:17.04 ID:klzOgXTR0

「知らないな。これ以上つきまとうなら、警察を呼ぶよ」

返ってくる言葉は同じ。

(;゚Д゚)「そんな…」

バカな話があるか。一方的に忘れられ、クビにされるなんてことがあってたまるか。
挙句の果てに、警察を呼ぶなど。

でも、どうにもならない。どうすればいいのか、全く分からない。
とりあえずコンビニから遠ざかり、吹雪く街の中で歩きながら考える。


(,,゚Д゚)「そうだ」

こんな時こそ頼りになるのが友だ。
携帯を開き、アドレス帳を見る。

いくつか知らない電話番号がある事が不思議だったが、気にしてはいられず、
慌ててドクオの番号に掛けた。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 22:19:57.43 ID:klzOgXTR0

(;゚Д゚)「ドクオ!俺だ!助けてくれ!」

最後の希望だった。
この状況を打破する、最後の――


『誰ですか?』


――希望の筈だった。


(;゚Д゚)「おいおいお前まで、いい加減にしろよ。ギコだよ」

『いや、知らないです』

そのまま、ぷつりと電話は切れる。

(;゚Д゚)「何でだよ!?俺だぞ!?俺は」

俺は――

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 22:21:20.12 ID:klzOgXTR0

(,,゚Д゚)(…?あれ)


俺は、誰だったっけ?

思い出せない。

俺の名前は?年齢は?家族は、友人は、仕事は――


何も、思い出せない。



そもそも、そんなもの、あったのか?

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 22:23:17.05 ID:klzOgXTR0

いや、ない。

なにも、ない。



自分のいる場所がどこなのかも、

自分の持っているものが何なのかも、



自分が何なのかも、


何も分からない。


42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/29(木) 22:25:24.27 ID:klzOgXTR0

(,, Д )


頭の中が、空っぽになったような感覚。


どことなく感じる、浮遊感。



いつの間にか自分の視界は、真っ白に染まっていた。








     (,,゚Д゚)は   のようです

          おわり

44 名前: ◆W2TpQvQ40s 投稿日:2011/12/29(木) 22:27:09.01 ID:klzOgXTR0
おわりです

紅白の提供でお送りしました


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