ξ゚听)ξ名前の横に★がつくお仕事です!(^ω^) )


1 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 03:38:39









どるる!! どるどる!! どるるるるるる!!

  (    /⌒ヽ
ξ-■凵。)ξ( (^ω^)

どる!! どるるるるる!! どるるるるるるる!!









       .

2 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 03:40:11
爆音が、その空間に響きわたっていた。
音源は空間のなかを走りぬける、やたら濃ゆい二人の乗った大型のバイク。
  (
ξ-■凵。)ξ<<だぁー!! もうっ、"スレの検索"にどんだけ時間かけてんのよ!!

運転している男を、後部座席に乗った少女が怒鳴りつける。
こちらの少女の濃ゆポイントは、まず服装。
スパッツの上にはいた激短のスカートに、
わりと残念な感じの胸部と肩だけを覆うぴっちりした服、いわゆる「ヘソ出しルック」。
あと頭の上の髪の毛でできた巨大な触角。いわゆる「アホ毛」。
 /⌒ヽ
( (^ω^)<おー……『運営』側からちゃんと"スレタイ"聞いてこなかったの、ツンだおー?

怒る少女に、しかしこちらは正反対の呑気な声。
運転席に座る若い男。濃ゆポイントは全身を覆う、真っ青なフード付きの服。
雨ガッパのような材質の服の下から覗くのは、毛のないまっしろな肌と、
"ヒタヒタ種"特有のアザラシのような形の口。
  !ピンッ
ξ-■凵。)ξ<<なッ!!? いや、ま、まあそれは悪かったっていうか……
 /⌒ヽ
( (^ω^)<ぼくだって、まさかこんなことに"モリタポ"使うとは思ってなかったおー
       どうするお? 向こうに着くまでにモリタポ使い切っちゃったら。
  (ヽタレッ
ξ-■凵。)ξ<む……むぅ……

触覚をうつむかせ、うなだれる少女。
ちゃんと反省してるみたいだし、そろそろフォローしようかな、
とか、青年が考えたとき、少女は元気よく叫んだのだった。
  !ピンッ
ξ-■凵。)ξ<<気、気合いでなんとかするわッ!!

ああ、こいつまったく反省してないな。
青年がため息を吐くとともに、
二人が乗るバイク―――『P2』のタンクに装備された、
リボルバー式拳銃のシリンダーのような機構が、「かちゃり」と音を立てて左側に動いた。

3 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 03:40:54










     ★1









         .

4 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 03:42:02
崩壊したビル群。
割れた道路。
その中を一人の少女が走っていた。
∧ ∧
(*;゚ー゚)<はぁ……はぁ……!

小さな体に身に纏うのは、フードのついたダークセピアのマント。
走るときにとれたものか、それとも元から付けない主義なのか。
フードを被っていない彼女の頭には、"しぃ種"の特徴である、ピンク色の大きな耳が見えている。

小さなしぃ種の少女は、逃げていた。

(●冊●)<シネバー?

―――自分の後を追いかけてくる、死神の姿をした大型AAから。
∧ ∧
(*;゚ー゚)<! きゃあ!!

ふぉん、という風を切る音と共に、死神AAの巨大な鎌が少女の頭の上を通過する。
少女の身長の三倍はあるかと思われる死神AA、
"ディクショナリーネーム"は……たしか、『シネバー』。
∧ ∧
(*;0;)<<な……なんなの、こいつ!!

わけがわからない、と少女は思った。
なんなのだ、この『シネバー』は。突然現れたと思ったら、"スレ"をめちゃくちゃにして。
しかも、今、こいつは自分をだけ執拗に追いかけて来ている。
一体……なぜ?
∧ ∧
(*; -;)(ほんと、わけわかんないよ、もう……!)

走る少女は、ビルとビルの狭い隙間に逃げ込む。
あの巨体だ。こんな狭い場所には入りこめないだろう。

5 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 03:42:52
∧ ∧
(*;゚ー゚)<はぁ、はぁ……ッ!!

狭く薄暗い細道を走りながら、少女はときどき後ろを振り返る。
幸いそこに死神の姿は無い。
やはりこの細道までは入りこめなかったか。
すこしほっとしながら、少女はそのまま細道を走る。
∧ ∧
(*;゚ー゚)<はぁ、はぁ……はぁ……

すこし走ると、ビルに囲まれた広い空間に出た。
∧ ∧
(*;゚ー゚)<……はぁ、はぁ

恐る恐る、といった様子で少女は後ろに顔を向ける。
死神の姿は、無い。
∧ ∧
(*;-0-)=3<……はぁー……

やっと巻いたか。
一体なんだったのだ、さっきのAAは。
安心した少女は、その場にへなへなとへたり込む。
∧ ∧
(*;-0-)<なんだったんだろ……ほんとに

緊張から解放され、少女は頭をぐったりとうなだれた。
見えるのは、自分の影。
小さな少女の、小さな影。
∧ ∧
(*;゚ー゚)?

―――違和感を覚えた。

地面に落ちる自分の影。
自分でいうのもなんだが、いつも通り小さなそれが、
なぜだかだんだん大きくなってきている気がするのである。
    ∧
<(*; ゚ ^)?

不思議に思った少女が、恐る恐る頭上を見上げると―――

6 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 03:43:42










(●冊●)<シネバー?

―――今まさに鎌をこちらに振りおろそうとしている死神と、目があった。









       .

7 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 03:44:33
    ∧
<(*; > ^)!!

―――殺される。

少女が自分の死を覚悟した、そのときだった。

<<ぶううううううううううううううん!!!
    ∧
<(*; ゚ ^)?<へ?

突然あたりに響き渡る叫び声。そして爆音。

(●冊●)<シネ……?

何事かとそちらを見た死神の横っ面を、

(冊●(#<<ブワハアアアアアア!!?

突然現れた大型二輪車の車輪が吹き飛ばした。

ぎゅぎゃぎゃぎゃ、という不協和音を響かせながら、
着地したバイクはドリフト走行で地面を滑ると、
ちょうど少女の真横あたりでその動きを止める。
 /⌒ヽ
( (^ω^)<おっしゃ、到着だおー
  ?クネッ
ξ-■凵。)ξ<ん? 今なんかぶっ飛ばさなかった?

バイクに乗っていたのは、なんだか濃ゆい男女二人組。
ハンドルを握っている、雨ガッパのような服を着たヒタヒタ種の男性が、
向こうの方で倒れてぴくぴくしている死神の姿に気付き、指をさした。
それを見て、後部座席に乗っていた"有髪種"の女性がにやりと微笑む。
  (
ξ-■ー■)ξ+<なるなる。「一石二鳥」ってトコかしら?

なぜかドヤ顔の女性に、のんびりした口調で男性は訂正した。
 /⌒ヽ
( (^ω^)<おー……「結果オーライ」ってトコだおー?

8 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 03:45:43
「どっちでもいいでしょ、そんなの!」と、
金髪アホ毛の女性はバイクから飛び降りて、死神の元へ歩き出す。
∧ ∧
(*;゚ー゚)<え? あ、あの……

突然のできごとに混乱するしかない少女。
女性は、そこで初めて少女の存在に気付いたらしく、
彼女の方を一瞥すると、そっけない口調で言った。
  (
ξ-■凵。)ξ<あら、一般人? ちょっと待ってて、すぐ終わらすから。
       あ、事情聴取するから、まだ帰っちゃだめだからね?

ぴくぴく、と動く死神の背中は、ぱっと見たところではただの黒いボロ布にしか見えない。
女性は黒いボロ切れに近づきながら、後方へ向けて訊ねる。
  (
ξ-■凵。)ξ<ブーン! 今日はあと"何発"いける?
 /⌒ヽ
( (^ω^)<そうだおね……できれば帰りも『P2』使いたいし、四発くらいなら

女性の向かう先で、シネバーがゆっくりと起き上がり始めている。
しかし、女性はそんなことはおかまいなしといった様子で、にんまりと、笑った。
  (     チョージョー
ξ-■ー■)ξ<重畳♪ じゃ、こいつはなるべくモリタポ使わない方向で
 /⌒ヽ
( (^ω^)<そうしてくれると助かりますおー

ぽきぽき、と指を鳴らす女性の前で、ふわりと浮きあがるシネバー。

(#●冊●)<シネバー!?

目の前で大鎌を振りかざす化け物の姿を、しかし女性は鼻で笑って見せた。
  (
ξ-■凵。)ξ<……ふん

彼女は、サングラスに手をかけると、掴んだそれを思い切り後方へ投げ捨てた。
 (
ξ゚ー゚)ξノシ<残念。"あぼーん"されるのはアンタのほうよ

9 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 03:47:53
 /⌒ヽ
( (^ω^)ノ■-■-彡゜パシッ<おっお!

こちらに飛んできたサングラスを、さきほど「ブーン」と呼ばれていた男性がキャッチする。
小さなしぃ種の少女の頭の中は、やっぱり混乱していて、
だから手元のサングラスを見ながら、何かぶつぶつと言っている男性を、彼女はぼーっと眺めていた。
 /⌒ヽ
( (^ω^)ノ■-■-<おー……お気に入りなら、もっと大事にしたほうがいいと思うんだけど
             僕がキャッチしそこねて、泣くことになるのはツンなんだおー?
∧ ∧
(*;゚ー゚)<<あ、あの!!
 /⌒ヽ
( (^ω^)<お?

いいかげんこの状況を説明して欲しい。と、耐えられなくなった少女が声をあげて、
そしてやっと男性は少女のほうに顔を向けた。
 /⌒ヽ
( (^ω^)<おっお、ごめんだお。ちょっと考え事してて……
       えっと、きみは……とりあえず「しぃちゃん」でいいかお?

自分よりずいぶん背の高い男性は、腰をかがめて目線をあわせた。
やさしそうな表情。
……よかった、少なくとも悪い人ではなさそうだ。
∧ ∧
(*;゚ー゚)<あ、ぇと……いちおう"コテハン"はあります。『シルク』っていいます。
 /⌒ヽ
( (^ω^)<おっお、失礼しましたお。じゃあシルクちゃん、
        今からちょっと危なくなるお。僕の後ろに隠れてて欲しいおー

言いながら、男性はシルクとシネバーの間に移動する。
両手を広げて立ちはだかる背中を見て、シルクは、
どうやら彼が、自分をあの化け物の攻撃から守ってくれるつもりらしい、ということを理解する。
そして、ようやく彼女は一番訊きたかった疑問を口にした。
∧ ∧
(*;゚ー゚)<あ、あなたたちはいったい……?

10 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 03:48:46
男性の背中の向こうでは、金髪有髪種の女性が臨戦態勢に入っている。
シルクの質問に、男性は少しだけ顔をこちらに向け、答えた。
 /⌒ヽ
(  (^)<おっお、申し遅れましたお。僕は『内藤ホライゾン★』。
        あっちにいるのは、同僚の『ツン★』だお。
∧ ∧
(*;゚ー゚)<なまえのよこに、くろいほし……じゃ、じゃあ、あなたたちは……!

シルクの質問に内藤は「おっお」と、軽く笑って答えた。





「お察しの通り、僕たちは"削除人"ですおー」




       .

11 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 03:49:45
――――
―――
――

  !
ξ#゚听)ξ<<ちょっとブーン、なに幼女と話こんでんの!!
        ハインに言いつけるよ!?

金髪有髪種の削除人、ツンは後ろにいる緊張感の足りない相棒に向かって叫ぶ。
 /⌒ヽ
(∩(^ω^)∩<おっおー、ごめんだお! だからハインに変なこと吹き込むのは勘弁だおー!

しかし相棒は相も変わらず緊張感のない口調。
気合いを入れようと脅しをかけたというのに、まったく……
ツンはひとつため息をつくと、
改めてこちらに向かって鎌を振りおろそうとしているシネバーに目を向ける。

(#●冊●)<シネバー!?

うぉん、という音を立てながらこちらに振るわれる死神の鎌。
しかし、少女はそれに対してにやりと笑ってみせた。
 (
ξ゚ー゚)ξ<……遅い!

(;#●冊●) !?

突然消える、少女の姿。それと共に大鎌はむなしく宙を裂いた。
 (
ξ゚听)ξ<ふむ、機動力はなかなかのもんね

(#●冊●) !!
  (
⊂ξ゚ー゚)ξ9m<でもざーんねん。あたしのほうが断ッ然速いんだからねっ!

左手でシネバーを指さしながら、少女は右手を宙にかざす。

12 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 03:52:47
――――
―――
――

  !
ξ#゚听)ξ<<ちょっとブーン、なに幼女と話こんでんの!!
        ハインに言いつけるよ!?

金髪有髪種の削除人、ツンは後ろにいる緊張感の足りない相棒に向かって叫ぶ。
 /⌒ヽ
(∩(^ω^)∩<おっおー、ごめんだお! だからハインに変なこと吹き込むのは勘弁だおー!

しかし相棒は相も変わらず緊張感のない口調。
気合いを入れようと脅しをかけたというのに、まったく……
ツンはひとつため息をつくと、
改めてこちらに向かって鎌を振りおろそうとしているシネバーに目を向ける。

(#●冊●)<シネバー!?

うぉん、という音を立てながらこちらに振るわれる死神の鎌。
しかし、少女はそれに対してにやりと笑ってみせた。
 (
ξ゚ー゚)ξ<……遅い!

(;#●冊●) !?

突然消える、少女の姿。それと共に大鎌はむなしく宙を裂いた。
 (
ξ゚听)ξ<ふむ、機動力はなかなかのもんね

(#●冊●) !!
  (
⊂ξ゚ー゚)ξ9m<でもざーんねん。あたしのほうが断ッ然速いんだからねっ!

左手でシネバーを指さしながら、少女は右手を宙にかざす。

13 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 03:56:31
   (
⊂ξ゚听)ξ<―Call Itadaki……

かざされた手のひらに、集まる薄緑色の光。
集束した光が棒状に伸び、やがて光の中からあらわれるのは削除人専用の"ツール"。
ツール名『頂』。この世界―――"2ちゃんねる"の平和を脅かす"荒らし"を倒すための武器。
         (
  <ニニニ二(ξ゚听)ξ<<「ディバイスマッシャー!!」―

少女の右手に表れたのは、巨大な両刃剣型の『頂』。
自分の身の丈ほどもあろうかという刀身をもつそれを、少女は片手で持ったまま、飛ぶ。

(#●冊●)<シネ……

自分に向かって飛んでくるツンに応戦しようと、シネバーは鎌を振り上げ、
そして再び少女は不敵に笑った。
         (
  <ニニニ二(ξ゚ー゚)ξ9m<<だから遅いっつーの!!
               (
ジャ(冊●#)<ニニニ二⊂ξ゚ー)○キン!!

(冊●#)<<バ……

(冊/●#)<<アアアアアアアア!!!?

(冊/∵/
     /●#)ズルッ

ぼとり、という音と共に、斬り落とされたシネバーの顔の右半分が地面に落ちる。

(#●冊/∴<<ガアアアアアアアアアアアア!!!!

白骨のような手で斬り落とされた断面を抑え、叫ぶシネバー。

14 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 03:57:16
 (
ξ゚听)ξ<あらら、まだ生きてんの? ゴキブリみたいな生命力ね

とんとん、と、両刃の大剣で軽く肩を叩きながら、呑気な声で少女は言った。

(#●冊/∴<<シネバアアアアアアア!!!

対するシネバーは、この世のものとも思えないような怒声をあげて、
目の前で余裕ぶっている小娘に掴みかからんとする。
 (
ξ--)ξ<ま、安心しなさいよ

(#●冊/∴ !?

再び空振るシネバーの手。
 (
ξ-听)ξ<すぐ、楽にしたげるからさ

いつのまにか、ツンはシネバーの背後を取っていた。
敵に剣先を突き付け、自分の勝ちを確信する少女。
その耳に、相棒の叫び声が届く。
 /⌒ヽ
(;(^ω^)!<<ツン!! 体!
  ?
ξ;゚听)ξ<ふぇ? ……あ!

言われてツンは、その事実に気がついた。
自分の体に、いつのまにか何か太い紐のようなものが巻きついている。
  !
ξ;゚听)ξ<な、何よ……これ!!

攻撃や移動に使う手足ではなく、胴体。
胸の前でクロスするように巻きついている、その紐の先にあるものは―――

(#●冊/∴<<シネエエエエエエエエエエエエ!!!

―――顔を半分無くした死神AAの、鎌。

15 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 03:57:55
くん、とツンの華奢な身体が、紐の巻きついている胸を中心に上空にひっぱりあげられる。
少女はしばらく宙空でじたばたとしていたが、
やがて自分の右手に大剣が握られているということを思い出し、
  (
ξ;゚听)ξ<<な、なによ! こんな紐!!

この生意気な紐をとっととぶった斬ろうと、
大剣型『頂』「ディバイスマッシャー」を右手でぶん回すツン。
 !
ξ;゚听)ξ<<き、斬れない!!?

驚きにアホ毛を立てながら、少女は気付いた。
ここは空中である。足の踏ん張りが利かず、体の自由もないこの状況では、
剣をまともに振りまわしたところで、
自分を拘束している頑丈な紐を斬るのは困難である、と。
       串ヒョイ
(#●冊/∴ノ<シネバー?

あたふたとするこちらを嘲笑うかのように見下ろすシネバー。
気付けば、その左手には淀んだ色をした、『串』のような物体が……
  ?
ξ;゚听)ξ(……ん? 『串』って、まさか……!)

先端の尖った棒に、四角い装置の刺さっているようなあの形状……
どう見ても食品には見えないその外見。
と、すればあの『串』は―――
 /⌒ヽ
(;(^ω^)!<<ツン、それガチで『串』だおー!!

相棒の叫ぶ声を聞いて、ツンは思った。
ああ、やっぱり。と。
        ===串ポイ
(#●冊/∴ノシ<シネバー!

左手で手に持つ『串』を投げるシネバー。
尖った『串』の先端が"空間に突き刺さる"。
ばりばり、という大きな音がして、そして出現するのは空間に空いた『穴』。

16 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 03:59:06
          スレ    イタ
『串』。荒らしが"町"や"世界"に潜入する際に使用する器具。イタ
『プロキシ』と呼ばれる、特殊な通路を開き、使用者を他の世界に飛ばす効果を持つ。
  ?
ξ;゚听)ξ(で、でも何で今……『串』?)

意味が分からない、とツンは思った。
損傷を負ったこのシネバーが、他のイタに逃亡を図るというのはわからない理屈ではないが、
しかし、自分から逃げようとしているこのシネバーが、今なお自分を捕まえている理由が分からない。
自分をどこかに連れていこうとしている……? しかし、一体どこへ―――
 /⌒ヽ
(;(^ω^)<<やばいおツン、そいつ、たぶん自爆する気だおー!
  ?
ξ;゚听)ξ<へ!? ど、どういうこと……?
 /⌒ヽ
(;(^ω^)<<そのプロキシがつながってる先、『DAT』だお!
         そいつ、自分ごとツンを『DAT』に引きずり込むつもりだおー!
  !
ξ;゚听)ξ!?
                   スレッド
『DAT』と言えば、人のいなくなった町の死骸と言われる場所である。
一度『DAT』にされたスレッドは"記録"としての性質だけを残し、
時間を奪われた状態、つまり完全に"動きのない"過去の遺物となってしまうのだ。
また、『DAT』は『倉庫』と呼ばれるいう特殊な空間に保存され、
専用のツールを使って変換処理をしなければ元の状態に戻すことはできない。
  !
ξ;゚听)ξ(冗談じゃないわ!! そんな、『DAT』になんて落とされたら……!!)

名前の分かっている『DAT』ならともかく、
今自分が連れていかれようとしているのはスレタイ不明の、どことも知れぬ『DAT』である。
そんなところに落とされたら、生きて帰れる可能性は万に一つもない。

(#●冊/∴ニヤリ

こちらを見下ろすシネバーの、
表情のないはずの顔が、不気味な笑みをたたえているように見える。

ツンはその表情を見て、頭の奥で何かがぶちり、と音を立てるのを感じた。

17 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:00:55
  (
ξ 凵@)ξ<こん……のォ……!!

ぶるぶる、と怒りに身を震わせながら、
ツンはぶん、と右手にもったディバイスマッシャーを投げ捨てる。

( ●冊/∴?
  (
ξ#゚听)ξ<<なめんな、死神もどき!! Call Itadaki―!!

(;●冊/∴!?

左手に集束する、緑色の光。
まずいと思ったのか、シネバーはあわてて『DAT』に通じる穴に飛びこもうとするが、
その前に、ばごん、という爆発音があたりに響き渡った。
             ∬
  (  zЁョ===]  
ξ#゚ー゚)ξつ'┘<「リボルブラスター」―……ってね!

ツンの左手に握られているのは、大人の拳三つ分ほどはあろうかというサイズの、
巨大なシリンダーを装備した、真っ黒なリボルバー式拳銃型の『頂』。

(;●冊/∴!<アアアアアアアアアア!!?

そこから発射された弾丸は、鎌の握られたシネバーの右腕を吹き飛ばし、
鎌につながる紐に拘束されていたツンは、シネバーの右腕と共に地上に向けて落下する。
戦闘なれした彼女は、空中で身を捻り、足からの着地を試みる。が、
   !
ベ⊂ξ;><)ξつチャ<<あだッ……!!

見事に失敗した。
   (
くξ;゚<)ξつ<つったた……あーもう

地面にまともに打ちつけた腹から、じわじわと痛みが広がる。
しかし、そんなものにも構っていられない。
ツンは立ち上がり、シネバーの方へ向き直る。

18 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:02:39
  (  zЁョ===]  
ξ#゚ー゚)ξつ'┘<<さぁ、年貢の納め時よ!

大口径のリボルバーを敵のいるはずの方向へむけ、得意げに微笑む少女。
しかし、彼女が頬笑みを向けるそのさきに敵の姿は無かった。
  ? zЁョ===]  
ξ;゚ー゚)ξつ'┘<……あるぇ?

頭上のアホ毛をクエスチョンマークの形に変えながら、
あわてて辺りを見回す少女。
  !
ξ;゚听)ξ<<あ!!

見えたのは空中を滑るように飛んでいく、黒いボロ布。
自分の後方。彼女はシネバーの姿を見つけた。
  (  zЁョ===]  
ξ#゚ー゚)ξつ'┘<<……逃げようったってそうはいかないんだから!!

再びリボルバーを目標に向かって構えるツン。
しかしすぐさま彼女は気付いた。
あのシネバーは、自分から逃げているわけではない、と。
  /⌒ヽ
⊂(;(^ω^)つ<おー……!?

(冊/∵/<<シネバアアアアアアアアア!!!
  !  zЁョ===]  
ξ;゚听)ξつ'┘<<ぶ、ブーン!!

黒い死神の向かう先、そこには両手を広げて後ろの少女を守っている相棒の姿があった。
  (   zЁョ===]  
ξ;゚听)ξつ'┘(ま、まずい……リボルブラスターじゃ、
         あのボロ布貫通してブーンに当たっちゃうし……)

ツンはとっさにリボルブラスターを投げ捨て、
地面に刺さっていたディバイスマッシャーを引き抜くと、
相棒に手を向けて突進している死神に向かって走り出した。
       (
<ニニニ二(ξ;゚ -゚)ξ(……間に合え!!)

19 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:03:38

――
―――
――――
(冊/∵/<<ガアアアアアアアアアアアアア!!!

残った左手を伸ばして、こちらに突撃してくる死神。
半分顔を斬り落とされているというのもあってか、その迫力は鬼気迫るものがあった。
∧ ∧
(*;゚0゚)<<あわわ……!! こっちきた!!
  /⌒ヽ
⊂(;(^ω^)つ<もう、ツンってば……余裕ぶっこいてるからこういうことになるんだおー?

内藤が何事か呟いている間にも、シネバーの姿はみるみる内に近づいてきている。
∧ ∧
(*;゚0゚)<<な、ないとうさん! つべこべいってないで、はやくなんとかしてください!!
  /⌒ヽ
⊂(;(^ω^)つ<おっお、ごもっともですおー……Code Moritapo―

(冊/∵/<<アアアアアアアアアアアアア!!!

迫ってくる巨大な左手。
∧ ∧
(*;>0<) !!

もうだめだ。シルクは恐怖に目を閉じ、頭を抱え込んでうずくまる。
  /⌒ヽ
⊂(;(^ω^)つ<<「保守」―!!
 ∧ ∧
:(*;>-<)::

身を小さくして震える少女。
しかし、いつまでたっても攻撃らしいものはやってこない。
かわりに耳に届く、ばちばち、という激しい音。
∧ ∧
(*;> -゚) ……?

おそるおそる目を開いてみる、すると

20 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:04:41
青く光る粒子が、空間を満たしていた。
  /⌒ヽ
⊂(;(^ω^)つ ―――ッ!!

球状に広がる青い輝きの中心にいるのは、
その空間の中で、もっとも美しい輝きを両手にたたえた内藤。

(冊/∵/<<ア……アア?

こちらに延ばされたシネバーの掌は、内藤を中心に広がる青い粒子のドームに遮られ、
中にいるシルクたちには届かない。
∧ ∧
(*;゚ー゚)<す、すごい。……すごいよ、ないとうさん!!
  /⌒ヽ
⊂(;(^ω^)つ<お褒めにあずかり光栄ですおー。
         ……おー、でも、これそんなに長くは持たないんだお
∧ ∧
(*;゚0゚)<<え!?

内藤の不穏な発言に、シルクは驚いてシネバーのほうを見た。
光の壁を突き破らんと、こちらに延ばされる死神の掌は、
内藤の言葉通り、少しずつ、少しずつこちらに近づいてきているように見える。
まずい、とシルクは思った。このままでは、突き破られるのも時間の問題だ。
そんなシルクの不安を知ってか知らずか、呑気な声で内藤は言う。
  /⌒ヽ
⊂(;( ω )つ<おっお、だから、頼んだおー? 『相棒』ー
∧ ∧
(*;゚ー゚) ……?

怪訝な表情で、内藤の目線を追ってみて、そしてシルクは発見する。
         (
  <ニニニ二(ξ#゚听)ξ<<合点承知の助ッ!!!

―――巨大な剣を持って、シネバーの後ろから斬りかかる、内藤の『相棒』の姿を。
       (
<ニニニ二(ξ#゚听)ξ<<うおおおおおりゃあああああ!!!

振り上げられた、ツンの大剣が、残っていたシネバーの左腕を切断する。

21 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:05:46

(冊/∵/<<ジネバアアアアアアアアア!!!?

響く絶叫。
それと時を同じくして、斬り落とされた左腕がぼとりと地面に落ちる。
白骨そのものといった様相をしたそれは、
地面に落ちた瞬間砂のようになって宙空に気化していく。
       (
<ニニニ二(ξ#゚听)ξ !!

とん。という音と共に、シルクたちの目の前にツンが降り立った。
  /⌒ヽ
⊂(;(^ω^)つ<おー……油断しすぎだお?

言われてツンは、目を逸らしつつシネバーの方に向き直る。
  !
ζ(Δ゚;ξつ]二二二><<う、うっさいわね!! これはその……あれよ!
           昔から言うでしょ! 「負け犬も沼に沈む」って!!
∧ ∧
(*;゚ー゚) ?

はて、そんなことわざあっただろうか。と、シルクは首をかしげる。
  /⌒ヽ
⊂(;(^ω^)つ<おっおー、色々混ざりすぎて分からないですお。
          状況的に「サルも木から落ちる」とか「河童の川流れ」って
          言いたいのかおー?
  ?
ζ(Δ゚;ξつ]二二二><<え!? ……そ、そうよ! たぶん。
           あ、あれよ! 全部いっぺんに言いたかったから混ぜたの!!
  /⌒ヽ
⊂(;(^ω^)つ<それはそれは、ずいぶん前衛的な手法だおー
  )
ζ(Δ゚*ξつ]二二二><<え? い、いや、それほどでも……
∧ ∧
(*;゚ー゚)(たぶん、それはほめてないんじゃないかなあ……)

っていうか、混ぜたにしてもどこも被ってないし……
とか、シルクに思われていることなど、ツンは知る由もなく。
相変わらずちょっと機嫌のよさそうな彼女は、
緩んだ表情を直すと、相棒に向かって叫んだ。

22 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:06:28
  )
ζ(Δ゚#ξつ]二二二><<ブーン、速攻で終わらせるよ!! "リロード"お願い!
  /⌒ヽ
⊂( (^ω^)つ<お、把握だおー。Code Moritapo―

内藤の両手に、再び青い光が集束を始める。
この光はどこから出ているのだろう、とシルクがなんとなく光の軌跡を追ってみると、
それはどうやら彼らが乗っていたバイクの、
タンク部分にある拳銃のシリンダーのような機構から出ているようだった。
  /⌒ヽ
⊂( (^ω^)つ<「支援」―!!

かちゃり、という音と共に、P2のシリンダーが左に回転する。
続いて、ぶううううううん、という不思議な音が辺りに響き、
内藤の両手から発生する青い光が、稲妻のような形をもってツンの持つ大剣に注ぎこまれる。
青く輝き出す大剣の刀身。それを確認したツンは微笑む。
  )
ζ(ー゚#ξつ]二二二><<本日も重畳♪ これならいけるわ!!

(冊/∵/ !?

これはまずい、と判断したのか、あわてて踵を返し逃げるシネバー。
  )
ζ(ー゚#ξつ]二二二><<逃がしゃしないって! いくわよ! 一刀両断―――

剣先が自分の後方に来るように、
最大限振りかぶったディバイスマッシャーを、ツンは思い切り振るった。




  )
ζ(Δ゚#ξつ]二二二><<―――「ディバイディング・ツンデレーション」!!!




       .

23 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:07:25
振りぬかれた、大剣。
その青い軌跡から、すさまじいエネルギー量を持った光が、前方に向かって放たれる。
飛んでいく、青い三日月型の光。それが向かう先には逃げようとするシネバーの背中があった。

ザシュ::.(冊/∵/ !!?

青く巨大な光の刃は、一瞬にしてシネバーの体を両断する。

(冊/∵/<ぁ……ぁぁ

斬られたシネバーの体から、じわじわとあふれだす、青い輝き。
それはシネバーの黒い体を徐々に包み込んでいき、そして

:(冊/∵/::<ぁ……あああああああアアアア!!!!

  \(((从巛⌒√  $从*)/
\日从  ;\从ζ:从 《从⌒)/
》≪ζ从% :; * %))从)/
;从・ζ、あぼーん人:⌒》%*从─
Σ巛`从&; ):从)){+从#
/≪从”` 从:ζ∪∪ 从)\
 /巛⌒∫ 从ζ从《《))\

爆散し、粉々になって宙空に消えるシネバー。
少し離れた場所で、大剣を持った少女は満足そうな微笑みをその顔に湛え、言った。





       (
<ニニニ二(ξ゚ー゚)ξ<"あぼーんしますた"……なんてね!



       .

24 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:08:35










     ★2









         .

25 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:09:11
ドクドルフ・ナハトファルターは、他に恥じることなき"荒らし"である。
いままでに落としたスレは数知れず、
彼の名は、一部の人間にとって恐怖の代名詞となっているほどである。
好みの手法は『F5アタック』。
スレのみならず"板"や"鯖"まで落としてしまうその豪快さが、
"荒らし"としての彼の心をどうしようもなくくすぐるのである。

y==-('∀`)

本棚に囲まれた、書斎のような空間。
その中心で、机の上に腰かけ、
自分のこめかみにリボルバーの発射口を突き付けてニヤニヤと笑うこの男こそが、
ドクドルフ・ナハトファルターその人である。

y==-('∀`)(うっはwwやっべww超楽しいwwww)

ちなみに彼がこめかみに突き付けている拳銃には、ちゃんと弾が込められている。
最大装填数である6発全部、きちんとすべて込められ、さらに撃鉄まで上げてられている始末だ。
ようするに、いつでも発射できる拳銃の銃口を自分の急所に押し付けているのである。
危険である。いや、危険すぎる。

y==-('∀`)(死と隣合わせのこのスリルwwwうっはwwwたまんねえwwwww)

―――彼はイカれているのである、それはもういろんな意味で。

川;дと<<うわあああああああああん、ドッくうううううううううん!!!

突然、ばん、という大きな音がして扉が開く。
続けてどかん、という大きな音が室内に轟き渡った。

川;д川て<<うひゃあ!! び、びっくりしたあ……

どかん、という大きな音とは、言うまでもなくドクドルフの拳銃が火を噴いた音である。
半泣きの長髪少女、"荒らしAA職人"の貞子が部屋に入ってきた音に驚き、
哀れなドクドルフは、自分の急所に押し当てていた銃の引き金を引いてしまったのである。

26 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:11:07

川;д川<もう、ドッくんったらまたMJDS5MG(マジで死ぬ5秒前ゲームの略だけどまったく略せてない)
     やってたんですか? 危ないからやめてって、いっつも言ってるじゃないですか……

腰かけていた木製の机の上に、仰向けに倒れ、ぴくりとも動かないドクドルフ。
両腕をだらりとたらし、右手に未だ握られたままの銃口からは煙。
どう見たって死んでいるとしか思えない、その光景。
か、しかし、貞子はそれについて特に気にするそぶりもみせなかった。

川;д川<それより聞いてください! 私の中型シネバーちゃん3号がやられちゃったんですー!

('A`)<あん?

べそをかきながら泣きつく貞子に、机に倒れたままだった死体がむくりと起き上がった。
いや、よく見ると、そのこめかみには傷一つ付いていない。
そしてさらによく見れば、ドクドルフとは随分離れた場所の壁に、大きな銃痕がある。
貞子の発した音に驚き、反射神経に促された指が引き金を引くその一瞬。
ドクドルフは意図的に、自分の急所から銃口をはずしていたのだった。
つまり、先ほどまでのは死んだフリで、おちゃめな彼なりの遊び心だったのである。

('A`)<中型の3号っていやあ、さっき送り出したヤツじゃねえか。
   必要ねーって言ってんのに、秘密兵器としてDAT行きの『串』まで装備させたアレだろ?
   自信作だっつってたのに、それが、あんなロリ幼女一人に倒されたってのか?

:川;д;川::<そんなわけないでしょ!! 途中までは予定通りに進んでたんです!
      で、でも……途中からなんか、なんか、削除人の人たちが出てきて!!

わーん、と泣きだす貞子の頭を、"ドクオ種"特有の黒い棒のような腕でぽんぽんと撫で、
ドクドルフは、子どもをあやすときのような優しい声で貞子に言った。

('A`)<ふむ、『黒星』どもが? 貞子、詳しく話してみな

川;д;川<ぅ……ひっぐ……はい

嗚咽交じりに、貞子は先ほどまでの状況をドクドルフに伝える。
話を聞き終わり、ドクドルフはふむ、と自らの顎に手をあてた。

27 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:11:53

('A`)(運営の反応が早すぎるな……F5アタックしようとしたわけでもねーのに、
    たかが一人のコテを潰してくれって依頼に、『黒星』が二人も動くだと?)

この世界『2ちゃんねる』を管理している機関、
『運営』は、はっきり言って"荒らし"に対しての対応が遅い。
そのため、いつもならスレの一つや二つめちゃくちゃにしようとしても邪魔など入らないのだ。
なのに今回の対応は、貞子がシネバーを放ってわずか数十分のうちに行われた。

―――不自然である。

('A`)(考えてみりゃ、依頼の内容も不自然っちゃあ不自然だったか。
    あんな"しぃ種"のロリ幼女、わざわざ俺たちみたいなプロに任すまでもないだろうに)

何かキナ臭いな、とドクドルフは考える。
この依頼の裏には、何かあるのではないか、と。

川д川<ドッくん……?

('A`)<ん、ああ、すまんすまん

気がつけば、いつの間にか泣きやんだ貞子がこちらを見ていた。

川д川<何考えてたんです?

('A`)<いや、なんでもない。気にすんな

川д川 ?

貞子に余計なことを吹き込むべきではない、というのがドクドルフの考えだった。
余計なことを吹き込んで、彼女の"芸術活動"がおろそかになるようでは困るのだ。
それに、正直なところ依頼の裏に何があろうが自分たちには関係ない、ともドクドルフは思っていた。

('A`)<それで? "さっき作ってたヤツ"はどこまでできたんだ?

川;д川<え? あ、うん。最後の仕上げがすめば、後は普通に投下できますよ?

28 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:12:45

('∀`)<よし、じゃ、なるべく早く準備しとけ。
    黒星のやつらに、ちょっとした"お返し"をしてやろーぜ

その顔に、トチ狂った凶悪極まりない笑みを浮かべると、
ドクドルフは再び銃を自らのこめかみに押し付けた。

川д川?<お、お返しって……?

y==-('∀`)<ウチの貞子を泣かしてくれやがったんだ、ただじゃおかねえよ。
       そりゃあもう、ひっでえ目にあわせてやる

川*д川!!<<ほ、ほんとですか!?

嬉しそうに聞き返す貞子に、ふひひひ、とドクドルフは気味の悪い声をあげて笑う。

y==-('∀`)<おうよ、そうだな……『田代砲』でも使おうか

川*д川<田代砲? 『鯖』ごと落としちゃうつもりなんですか?

『田代砲』、2ちゃんねるの根底をなす『鯖』とよばれるシステムに大量の負荷を欠け、
世界を一時的に停止させる。あるいは破壊してしまう、最強の兵器。
彼はたった一人のしぃ種の少女を倒すためだけに、それを使用しようというのである。

y==-('∀`)<<ふひひひ!! サイコーにクレイジーだろ?

川*д川<<はい……はい! ドッくんサイコーです!!

机に座って不気味に笑うドクオ種の青年と、
ぴょんぴょんとび跳ねながら無邪気に喜ぶ有髪種の少女。

y==-('∀`)<じゃ、俺が田代砲の準備してる間、たのんだぜ?

川*д川<はい! 敵の注意を引きつけとけばいいんでしょ? まかせてください!

かくして、ここに削除人コンビvs荒らしコンビの、
全面戦争の火ぶたが切って落とされたのである。

29 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:13:26

――
―――
――――
瓦礫の散らばる広場で、シルクは群衆の中心にいた。

(,#゚Д゚)<おい、シルクタソは無事なのかゴルァ!!

( ´∀`)<さっきのシネバーはなんだったのかモナ? 説明を要求するモナ!!

<; `Д´><ファ、ファッビョーン!! ウリと微妙にかぶってるニダ!!

( ´∀`)<うるさいモナ、もともとパクりキャラのくせに!!

わいわいとざわめく群衆、その中心でシルクはおどおどしながら、
目の前にいる削除人の事情聴取を受けようとしていた。
∧ ∧
(*;゚ー゚)<あ、あの……みんな、しずかに……
  !
ξ#゚听)ξ<<てめえらうっせえ!!!

(,;゚Д゚)(;´∀`) <; `Д´>ビク

ツンの一括によって、急に静まり返る群衆たち。
それを確認した内藤は、すかさずシルクに訊ねる。
 /⌒ヽ
( (^ω^)<おー、じゃあ確認するお? キミのコテは『シルク・クレイドル』
       酉は◆YaInxlGFtw、これで間違いないかおー?
∧ ∧
(*;゚ー゚)<は、はい……まちがいないです

若干ツンの声に怯えながらも、シルクはしっかりと質問に応じた。
 /⌒ヽ
( (^ω^)<おっお、把握ですおー。まったくキミも災難だったおー。
       怖かったお? ちっさいのによく頑張ったおー

にこにこ、とやわらかい笑みを浮かべながら、シルクの小さな頭をなでる内藤。
くすぐったそうに、シルクは顔をうつむかせ、
それと同時に周囲の群衆から、「ああー……!!」という羨ましげな声が上がる。

30 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:14:11
 (
ξ-听)ξ<それにしてもアンタ、その年で荒らし依頼スレに名前さらされるなんて
     ……いったい何したのよ?

両手首の上に顔をのせ、呆れたような表情で聞くツンに、シルクは驚愕した。
∧ ∧
(*;゚ー゚)<え!? あ、あらしスレに……わたしが、ですか!?

本当に? と、視線で訊ねるシルクに、内藤は答えにくそうに言う。
 /⌒ヽ
(;(^ω^)<おっお、残念ながら事実らしいですお……さっき運営から来た連絡によれば、
       キミの名前と酉が荒らし依頼スレに晒されてて、それが原因で……

そこまで言って、内藤は言いにくそうに口を閉じた。
そんな、じゃあこの事態を引き起こした直接の原因は、自分だというのか?
信じたくない、とシルクは思った。
∧ ∧
(*;゚ー゚)<<わ、わたし、なにもしてません!

強い口調で反発する少女。それに対しツンは、どうだか、と笑った。
 (
ξ゚听)ξ<そーいう連中ってのはね、案外どうでもいいことを深く根に持ってたりするもんよ?
     思いだしてみなさいよ、自分のこれまでの行動とかさ
∧ ∧
(*; - ) !!

言われて黙りこむシルク。それみなさいよ、とツンは鼻で笑う。
 (
ξ゚听)ξ<ほらね、自分が何もしてないなんて、言いきれないでしょ?
     あんたもこの2ちゃんねるで生きるAAなら、
     もっとその辺の覚悟というか、肝の太さみたいなものをね……
 /⌒ヽ
(;(^ω^)<おー、ツンー

ツンに対し何事か言おうとする内藤。そのときシルクはぼそり、と呟いた。
∧ ∧
(*; ー )ボソッ<……ぃんです
 /⌒ヽ
(;(^ω^)<お?

31 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:16:15
少女の小さな声が聞き取れず、訊き返す内藤。
対象的にその相棒は、少女の行為を自分に対する反抗と捉えたらしい。
 (
ξ#゚听)ξ<何? まだなんか口答えするつもり?
∧ ∧
(*; ー )<ち、ちがいます! わたし……その、わたし、ないんです!
  ?
ξ#゚听)ξ<無い? 無いって、何がよ?

聞かれて少しだけ震えだすシルク。
少しの沈黙の後、彼女は言った。




 ∧ ∧
:(*; -;)::<その……わ、わたし、ないんです。このスレにくるまでの"きおく"が




ぽろぽろと涙を流しながら言うシルクに、二人の削除人は顔を見合わせた。
  ?
ξ;゚听)ξ<ど、どういうこと?
∧ ∧
(*; -;)<わからないんです、なにも、きがついたらこのスレにいて、
    ……じぶんのなまえとトリップいがいなにもわからなくて!!

泣きじゃくるシルク。それを見る群衆たちから、
殺気だったオーラが立ち上る。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
(,#゚Д゚)(#´∀`) <# `Д´>シルクタソナカシテンジャネエ
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
 /⌒ヽ
(;(^ω^)<お、おー……し、シルクちゃん、
       それ、僕たちならなんとかできるかもしれないおー
∧ ∧
(*; -;)<……え?

32 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:17:24
どうやって、と視線で訊ねるシルク。
それに対して削除人の青年はにこりと笑って言った。
 /⌒ヽ
( (^ω^)<おー、シルクちゃん、『fusianasan』って知ってるかお?

「ふしあなさん」という言葉に、シルクは聞き覚えがあった。
たしか、AA個人が持っている情報を他者へ公開する、とかなんとか。
∧ ∧
(*; -;)<あの、しょしんしゃのひとをイジメるときによくつかわれるっていう……?
 /⌒ヽ
(;(^ω^)<お、おー……それは確かに間違ってないけど、
       あれは、そもそも個人を特定するために開発されたものなんだお。
       僕たちなら……"削除人"なら、
       権限を使って本人も忘れてしまった記憶を読み取ることができるかもしれないおー
∧ ∧
(*;゚ー゚)<ほ、ほんとですか?
 (
ξ-听)ξ<あくまで、可能性はあるって話よ。
     いくら削除人だからって、
     そこまで『運営』から権限を委任されてるわけじゃないんだからねっ

言いながら、ツンは立ち上がると、シルクの目の前まで移動する。
 (
ξ゚听)ξ<よし、私がやるわ
∧ ∧
(*;゚ー゚)<え!?

33 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:18:25
ツンの突然の申し出に、シルクはたじろき、
それを両手を腰にあて、仁王立ちしている削除人の少女が見下ろす。
  ?
ξ#゚听)ξ<なによ! 私じゃ不満だっての!?
∧ ∧
(*;゚ー゚)<え? い、いや、そういうわけじゃない……です
 (
ξ゚听)ξ<ん、よろしー。んじゃ『fusianasan』やって。やり方はわかる?
∧ ∧
(*;゚ー゚)<は、はい。なんとなく、きいたことはありますから

シルクは記憶にある、特定の手順を踏んで『fusianasan』を発動させた。
シルクの胸が淡く、緑色に輝き、やがてその光の中からぼうっ、と浮き上がってくるのは
四角い半透明の『窓』。
ツンはそれを手に取ると、真剣な面持ちでそれをいじりはじめた。
∧ ∧
(*;゚ー゚)

それをシルクは、どこか不安げに眺めている。
当然だ。先ほどまでこの女性は、自分に対してそこまで友好的というわけでもなかったのだから。
少女の視線を知ってから知らずか、ツンは『窓』から目を話さないまま、言った。
 )
(Δ゚ξξ<ねえ、シルク・クレイドル。
∧ ∧
(*;゚ー゚)<え? ……え、あ、はい?
 )
(Δ ξξ<その……悪かったわ。さっき。
     あんたのことロクに知ってるわけでもないのに、偉そうなこと言っちゃって。
     ……ごめん。
∧ ∧
(*;゚ー゚)<え? え? ……えと

混乱しているシルクの肩を、内藤がぽん、と叩いた。
にこにこ顔の彼は、ツンの方を指さしながら、シルクの耳元で小さく囁いた。
 /⌒ヽ
( (^ω^)<口調はキツいけど、性根は悪いヤツじゃないんだお。
       ……だからあの子のこと、嫌いにならないであげてほしいお。
∧ ∧
(*゚ー゚)

34 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:19:11
少女は、にこにこしている内藤の顔と、目の前で作業しているツンの姿を見比べる。
 ?
(Δ ;ξξエット、コレガコウナッテ

首を傾げながら作業をする彼女の姿は、正直言って頼りにしていいのか不安になる。
けど、でも……その真剣な表情は、嫌いになれなかった。
だから、シルクは元気よく、内藤に返事したのである。
∧ ∧
(*^ー^)<はいっ!!
 !
(Δ゚;ξξ<<わひゃあ!!? な、何よいきなり、びっくりするじゃない!!
 /⌒ヽ
( (^ω^)<おっおー、こっちの話、こっちの話だお。ね?
∧ ∧
(*^ー^)<はいっ!
 ?
(Δ゚;ξξ<ん? なんか急に仲良くなったわね、あんたら
 /⌒ヽ
( (^ω^)<べつにーだお
∧ ∧
(*^ー^)<べつにー、です
 ?
(Δ゚;ξξ ……?

アホ毛でハテナマークを描くツンをよそに、
内藤とシルクは顔を見合わせて笑った。
――――
―――
――


35 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:23:26
白いワンピースに、顔を蔽い隠す、長く黒い髪。
年頃は、おそらくツンと同じくらい。

川*д川<うっふふー。呪まーす♪

コンクリート製の建物の屋根の上。スレ内のレス番号72と呼ばれる場所で、
荒らしAA職人の少女、貞子は、一人でなんだか楽しそうに笑っていた。

川*д川<ドッくん、『田代砲』の準備順調かなー、
      えへへー、私のシネバーちゃん3号の仇ー!

鼻歌まじりに、手元に浮かぶ、緑色の光で構成されたキーボードをかたかたと操作する貞子。
彼女の目の前の空間には、同じく緑色の光でできた画面があり、
彼女が両手を動かすたびに、その画面に文字だけで構成された絵が、
―――『アスキーアート』が、描かれていく。

川*д川<はーい、『コリンズ』ちゃんのできあがりー!

楽しそうに言いながら、貞子は人差し指でエンターキーを元気よく叩いた。
転瞬、輝きだす画面。そこから、ぽん、と音を立てて、緑色の光の玉が飛び出す。
それはぐにゃぐにゃと形を変え、やがて光の中から貞子の作ったAAが姿を現した。

川*д川<貞子ちゃんの豆知識ー。
      『コリンズ』は2000年夏、顔文字板から広まった荒らしAAですー。
      当時の2ちゃんねるは、今より規制が甘くて、
      そのせいで顔文字板は一月近くコリンズの脅威にさらされました!
      ちなみに、オリジナルのコリンズを作ったのはネカマちゃんらしいですー
      あ、って言っても私はちゃんと女の子ですからねー!
      なーんちゃってー、何一人ごといってるんだろ私!

一人で恥ずかしそうに悶えながら、うっふふー、と笑う少女。
その眼前で形を成した緑色の、角ばっているのに材質はゼリー状という妙なAA
―――荒らしAA『コリンズ』は、産みの親に向かって一言、言った。

| ゚ ∀ ゚ |<氏ね

川д川

コンクリート製の建物の屋根の上。
「orz」の形になって落ち込んでいる少女の姿が、そこにはあった。

36 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:24:03

――
―――
――――
 (
ξ゚听)ξ<つまりね、普通の"削除人"は『頂』と『モリタポ』を使って"荒らし"と戦うわけ
∧ ∧
(*゚ー゚)<へえ、じゃあさっきツンさんがふりまわしてた、おっきなけんは?
 (
ξ-听)ξ<あれは、『頂』。対"荒らし"を想定して作られた武器よ。
     その名も、「ディバイスマッシャー」! どう? かっこよかったでしょ?
∧ ∧
(*^ー^)<うん、すっごいかっこよかった!
 (
ξ*-听)ξ<ふふーん、あれのかっこよさが分かるなんて、なかなか見どころのある幼女ね
∧ ∧
(*゚ー゚)<そ、そっかなあ……えへへー。あ、じゃあツンさんも『モリタポ』つかえるの?
  !
ξ;゚听)ξ<ふぇ!? あ、いやその……それは内藤の担当っていうか……
 /⌒ヽ
( (^ω^) ……。

楽しそうに話す少女たち、その様子を少し離れた場所から頬杖をついた内藤が眺めている。
ちょっと目を離したすきに、いつの間にか仲良くなっていた二人。
自分もあの輪の中に入りたいところではあるが、
しかし内藤には考えなければならないことがあった。
∧ ∧
(*゚ー゚)<えっとえっと、じゃあ、さっきツンさんがいってた「ハイン」ってだれ?

この少女―――シルク・クレイドルについて。

先ほど、ツンが『fusianasan』を使って調べてみた結果、判明したのは、
このしぃ種の少女に関するデータが、削除人の権限を持ってしても閲覧できないらしいということ。
そしてそれより内藤が気になったのは、「クレイドル」という彼女の名前。
 /⌒ヽ
( (^ω^)(シルク・クレイドル……『絹のゆりかご』……まさか)

37 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:25:00
 (
ξ-听)ξ<あー、それ? 彼女よ、内藤の
∧ ∧
(*;゚ー゚)<え、えー!? ツンさんじゃないの、内藤さんのカノジョって
  !
ξ;*゚听)ξ<<ばっ、え? いや、なんでそうなるのよ!!
∧ ∧
(*;゚ー゚)<え? だってだって、
     おとこのひとと、おんなのひとがいつもいっしょにいるのが、"けっこん"なんでしょ?
  (
ξ;*-听)ξ<あ、ああ、そういうこと? まあそんなもんよね、子どもの認識なんて

『ゆりかご計画』……過去にそうよばれる大規模なプロジェクトが、秘密裏に進行していたことがあった。
―――しかし、それは。
あの計画は、内藤自身が過去に関わった『鮫島事件』によって終結したはずなのだ。
 /⌒ヽ
( (^ω^)(僕の考え過ぎ、かお……? いや、それにしては……)

シルクを襲っていた、あのシネバー。
よく見なければわからないが、
体を覆う黒い布の端々に、通常のシネバーには用いられるはずのない文字列が使われていた。
それにあの『串』の存在―――
あれは、ただのコピペ荒らしの所業ではない。
この事件の裏には、相当な腕を持った"AA職人"がいると見てまず間違いないだろう。
  (
ξ;*-听)ξヒソヒソ<じ、実はね? 私とハインで内藤を取り合ってたことがあってね?
∧ ∧
(*;゚ー゚)ヒソヒソ<えー、なんでツンさんまけちゃったの? きれーなのに
 /⌒ヽ
( (^ω^)(そんなAA職人が、『串』を持たせたシネバーを使ってまで
       シルクちゃんを抹殺しようとしている……なんなんだお、この子は)

38 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:26:04
  (
ξ;*--)ξヒソヒソ<残念なことにね、向こうはあるのよ、コレが
∧ ∧
(*;゚ー゚)ヒソヒソ<お、おっぱい!? おとこのひとって、おおきいのすきだってきいたけど……

―――まさか。まさか、まだ水面下で進行しているというのか。
しかもこんな小さな少女を使って。
あの、一人のAAを『2ちゃんねるのゆりかご』にしてしまおうという、おぞましい計画が。
 /⌒ヽ
( (-ω-)(だとしたら、許せることではないお……)

内藤は、自分の両手を見た。
もうすでに、『頂』を使うことのできない、自分の両手。
ふたりの少女を守るために失った、戦うための力。
あのときの自分の判断を悔いてはいないが、
しかし、もし、もう一度あの計画を止めなければならないとなると……
 /⌒ヽ
( (^ω^)(僕は……)
∧ ∧
(*゚ー゚)<な、内藤さん!
 /⌒ヽ
(;(^ω^)<お、お? なんですかおー?

気がつくと、シルクが目の前まで来ていた。
真剣なまなざしで、こちらを見上げてくる少女。
少しだけ目をうるませて、沈黙していた少女は、やがて意を決したように、言った。
∧ ∧
(#*゚ー゚)<<け、けだもの!! おっぱいせいじん!!
 /⌒ヽ
( (^ω^)
 /⌒ヽ
(;(^ω^)?

首を傾げて、少し離れたところにいる相棒に目をやると、
  (
ξ*゚ー゚)ξ+

何か悪い笑顔で、「やりとげた」みたいな顔をしていた。

39 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:27:19










     ★3









         .

40 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:29:33
レス番号78。
コンクリートの屋根の上にいつのまにか用意されているのは、
唐草模様の座布団と、昭和の匂いがするちゃぶ台、その上には湯気のたつ湯のみが一つ。
座布団の上に座り、目の前に展開した半透明の画面を見ながら、
貞子はうれしそうに笑っていた。

川*д川<うっふふー♪ きました、きちゃいましたよおー

画面に映っているのは、街中で暴れまわる無数のコリンズたちの姿。
それらは、さきほど創ったコリンズをもとに、
貞子が『コピペ』と呼ばれる技術で増やしたものである。

川*д川<コピペなんて本来"芸術家"であるところのわたしのポリシーに反しますけどー
      向こうには、あの馬鹿力女がいますからねえ。
      "質"には"量"で対抗するに限ります。ね? コリンズちゃん?

ずずず、とお茶を一口啜ってから、後ろにいるオリジナルのコリンズに話を振る貞子。
返ってきた答えはシンプルだった。

| ゚ ∀ ゚ |<氏ね

:く川Tд川>::<イキテテゴメンナサイ

数秒間、貞子は頭を抱えてぶるぶるしていたが、
やがて復活すると、改めてお茶に口をつけた。

川;д川<う、うっふふー。私にまで効果を発揮するなんて、
     さすがですーコリンズちゃん。でもちょっと手加減して欲しいでs

| ゚ ∀ ゚ |<氏ね

:く川Tд川>::<ウマレテキテテゴメンナサイ

自称"芸術家"、貞子がこのコリンズを制作する際に与えた特殊な能力。
それは、「氏ね」の一言で相手の精神に大ダメージを与えるという恐ろしいものだった。

41 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:30:31

川Tд川<うう、一度ならまだしも二度までも、コリンズちゃんひどいですー

言いながら、貞子は急いで耳をふさぐ。
この能力はコリンズの声さえ聞かなければ意味がないので、それが最良の対処法なのである。
危ないのが分かってるなら、なんでそいつを傍に置いておくんだ、とか言ってはいけない。
彼女は"芸術家"であり、彼女にとっての作品はわが子にも等しい存在なのである。

川д川<さてと、削除人さんたちは、コリンズちゃんたちにどう対処するんでしょう。
     私の"芸術"相手にどこまでできるのか……うっふふー、たのしみですー。

貞子は姿勢を正すと、再び画面に視線を戻した。

川*д川<もしコリンズちゃんたちがやられちゃっても、
      まだまだあとに、『この子』がいますからねー

コリンズたちの映る画面の隣には、それと同じサイズの画面が浮かんでいる。
そこに表示されているのは、一体の、巨大なAA。

川*д川<この子の出番があるのかどうか、うっふふー、それも楽しみですー

"荒らしAA職人"山村貞子。
彼女の自らの"芸術"に対する探求心は、
ドクドルフ・ナハトファルターの相方を務めるだけあって、
それなりにイカれているのだった。

42 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:31:21

――
―――
――――
ビルに挟まれた大きな道路を、大型バイクが爆走している。
       (
<ニニニ二(ξ#■凵。)ξ<<だぁああああ!! どっから湧いてくんのよ、こいつら!!

後部座席で大剣を振りまわすのは、アホ毛貧乳削除人、ツン。
彼女が斬り裂いているのは、緑色のゲル状AA―――貞子の創ったコリンズである。

| ゚ ∀ ゚ |<氏ね

ツンの剣が届かないバイクの正面から、一体のコリンズが飛びかかる。
  /⌒ヽ
⊂( (^ω^)つ<Code Moritapo―「保守」―

| ∀ | !!?

しかし、それはバイクを覆う青い光にはじかれ、そのままどこかへ飛んでいく。
はじいたのは、大型バイク『P2』を、手放し運転してモリタポを展開した削除人、内藤。
 /⌒ヽ
( (^ω^)<おっお、シルクちゃん。ちゃんと耳は塞いでるかおー?
∧ ∧
(*; ー )

そして、二人の削除人に挟まれるように、
頭をかかえて縮こまっているのは、しぃ種の少女、シルク・クレイドル。
保護の対象は近くにいた方がいい、という理由から、彼女は今、ツンのひざの上に乗っている。
 /⌒ヽ
( (^ω^)<おっおー、ちゃんと聞こえてないみたいだおねー
       ?
<ニニニ二(ξ-■凵。)ξ<さっきからよく分かんないんだけどさ、
           なんでシルクに耳塞がせてんの?

不思議そうに訊ねるツン。内藤はいつも通りの呑気な口調で返す。
 /⌒ヽ
( (^ω^)<シルクちゃんは繊細だからだおー。
       子どもに「死ね」なんて言葉、聞かせるもんじゃないおー

43 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:32:33
       (
<ニニニ二(ξ-■凵。)ξ<何それ……
            そんな風に子どもを甘やかすから、人間が弱くなっていくのよ!!

そういう問題でもないんだけどな、と内藤は苦笑する。
それと同時に疑問にも思う。
自分でも正直キツいこの『精神攻撃』に、なぜこいつは平然としているのか。
強がっているだけなのか、あるいは―――

| ゚ ∀ ゚ |<氏ね
       !
<ニニニ二(ξ#■凵。)ξ<<うっせえてめえが死ね! 氏ねじゃなくて死ねえええ!!

―――馬鹿だからなのか?

まさかなあ、と思いながらも否定しきれないなと内藤は心の中で苦笑した。
       ?
<ニニニ二(ξ-■凵。)ξ<何笑ってんの?
 /⌒ヽ
( (^ω^)<おっお、なんでもないですおー

飛びかかってくるコリンズたちを駆逐しながら、『P2』は道路を進む。

(,, Д )<ウマレカワッタラタニシニナリタイ……

(  ∀ )<モナダッテタマニハギロンスレッドデ……

<  Д ><イチゴプリンガタベタイ……

所々でorz状態になっている人々を見ながら、ツンは言った。
       (
<ニニニ二(ξ-■凵。)ξ<なあに、あれ。道路であんな恰好してさ。冬バテ?
            だらしないわねえ、みんな鍛え方がたりないのよ!
 /⌒ヽ
( (^ω^)(普通はみんなこうなると思うおー)ツーカフユバテッテナンダオ

44 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:34:22
ぶろろろ、と爆音を響かせ進むバイク。
 /⌒ヽ
( (^ω^)<おー、『レス検索』の結果はたしかこの辺のはずだお?

言いながら、内藤はきょろきょろと周りを見回す。
       !
<ニニニ二(ξ-■凵。)ξ<いた、あれじゃない? 『オリジナル』ってさ

ツンの指さす先を見れば、わりと低い建物の、平らな屋根の上に
     ∬
川*д川旦

| ゚ ∀ ゚ |

なぜだかちゃぶ台を用意してお茶をすすっている、有髪種の少女と、コリンズがいた。
 /⌒ヽ
(;(^ω^)<おー、っぽいおー ナンテワカリヤスイ
       (
<ニニニ二(ξ-■凵。)ξ<とりあえず、あれブっ飛ばせば、石版ゼリーどもはこれ以上増殖しないんでしょ?
 /⌒ヽ
( (^ω^)<おっお、まああれが『オリジナル』だったらの話だおー。
        あのコリンズが、
        実は荒らしとは全然関係ない普通のコリンズって可能性もあるんだし……
 (
ξ゚ー゚)ξノ-■-■カチャ
∧ ∧
(*;゚ー゚) ?
 /⌒ヽ
( (^ω^)<一応確認してみるおー。間違ってまったく関係ないAAをあぼーんしたりしたら……
∧ ∧
(*;゚ー゚)つ■-■-
∧ ∧
(゚ー゚;*)つ■-■- ??
 (
ξ゚听)ξ<Call Itadaki―「リボルブラスター」―!!
 /⌒ヽ
( (^ω^)<それこそ取り返しのつかないことに……お?

45 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:35:00
  (    zЁョ===]  
ξ#゚听)ξつ'┘<<死にさらせええええええええええ!!!

ばごん
 /⌒ヽ
( (^ω^)
 /⌒ヽ ヽ
(^ω^) )彡クルッ
             ∬シュー
 (    zЁョ===]  
ξ゚ー゚)ξつ'┘ ?
∧ ∧
(*■ー■)+
 /⌒ヽ ヽ
(^ω^) ) ……。
 /⌒ヽ
( (^ω^)ミクルッ

| ゚ (∵∴グッ
    ∴..∵...)。|チャー:川;○д○川::ガクガクブルブル

  \(((从巛⌒√  $从*)/
\日从  ;\从ζ:从 《从⌒)/
》≪ζ从% :; * %))从)/
;从・ζ、あぼーん人:⌒》%*从─
Σ巛`从&; ):从)){+从#
/≪从”` 从:ζ∪∪ 从)\
 /巛⌒∫ 从ζ从《《))\て川○Д○;川コリンズチャアアアアアアン!!
 (
ξ゚ー゚)ξq+グッ
 /⌒ヽ
( (^ω^)
 /⌒ヽ
( (^ω^)
 /⌒ヽ
( (^ω^)(あちゃー)

46 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:36:21

川#TдT川<<あ、あなたたちは鬼です!! 悪魔ですー!!

屋根の上で、じたばたしながら泣き叫ぶ白いワンピースの少女。
 /⌒ヽ
(;(^ω^)<え、えっと……ご愁傷様ですおー?
 (    zЁョ===] カチャリ
ξ゚ー゚)ξつ'┘ 
 /⌒ヽ
(;(^ω^)<ストップー、ストップだおーツン。とりあえず素数とか数えてもちつくお
  ?    zЁョ===]
ξ゚听)ξつ'┘<なんで? あいつブっ飛ばせば、
        とりあえず今回の仕事は終わりなんじゃないの?
 /⌒ヽ
(;(^ω^)<そうかもしれないけどー、でも、まだ彼女は容疑者だおー?
        とりあえず事情聴取を……

川Tд川<<いくら私が"荒らし"で敵だからって、コリンズちゃんをやっつけるの早過ぎます!
      せめてまずお互いに名乗りをあげて、それから適度な長さの戦闘をして、
      それから倒される、みたいな過程があるべきじゃないですかー!
 (    zЁョ===] カチャリ
ξ゚ー゚)ξつ'┘ 
 /⌒ヽ
(;(^ω^)<ストップだおー、ツン。
        例え犯人だってことが確定したとしても、
        僕はこの事件の犯人さんには訊きたいことが……
∧ ∧
(*■ー■)+<かまわん。ツンさん、やっておしまい
 /⌒ヽ ヽ
(^ω^);)<シルクちゃん、そのグラサン……気に入ったのかおー?
 (    zЁョ===]
ξ゚ー゚)ξつ'┘<重畳よ、シルク。サングラスの似合う女は将来有望なんだからねっ!
∧ ∧
(*■ー■)<え? えへへー。わたし、ちょーじょーですか?
 /⌒ヽ
(;(^ω^)<……お願いだから話を聞いて欲しいおー

47 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:37:13

川Tд川<<ま、またそうやって、魅せ場もなく私をあぼーんしようとするなんて!!
     血も涙もないです! そんな黒星さんたちは私の"芸術"で叩きのめしてやります!
     コテンパンなんですからね!!
     出でよ! 『大型シネバーちゃん1号&2号』!!!

少女の両手に、緑色の光で構成された画面がそれぞれ展開する。
それは一瞬でバレーボール大の丸い光になり、巨大化する。
中から現れたのは……
  /'⌒'ヽ         /'⌒'ヽ
 (●.●)        (●.●)
  >冊/ <シネバー?>>冊/

―――二体の、巨大な『シネバー』。

先ほど相手をしたシネバーの、有に二倍はありそうなその体に、
その全長よりも大きな鎌を握った二体のシネバーが、
少女の壁となるように内藤たちの前に立ちはだかった。

川ぅд川<そういえば、まだ名乗りをあげていませんでしたね。
     私は貞子……"AA職人"の山村貞子です。

涙をぬぐって、有髪種の少女―――貞子は笑う。

川*ー川<偉大なる荒らし、ドクドルフ・ナハトファルターの右腕です。
     ……私のAAは"芸術"なんですよ?

どこか誇らしげな笑顔を浮かべ、少女は削除人たちに対し、そう言い放った。
 (
ξ-听)ξ<ドクドルフ……ね。なるほど、こりゃ結構大事かもしれないわ
 /⌒ヽ
( (^ω^)<『Dosテロリスト』とか、『鯖落としの毒蛾』とか呼ばれてる人だおねー
        そんな有名人の右腕なんて、貞子さんはすごいですおー

ぱちぱち、と手を叩く内藤。それに気を良くしたのか、貞子はさらにふんぞり返って言った。

川*ー川<うっふふー、今さらおだてたっておそいですー。
     あ、でもでもー、
     さっさとシルク・クレイドルちゃんをこちらに渡すというなら、
     あぼーんの仕方は考えてあげてもいいですよお?

48 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:38:43
∧ ∧
(*;■ー■)<わ、わたし……ですか?
  ?
ξ-听)ξ<そこよ、よく分かんないのは。
      なんだって『毒蛾』みたいな大物荒らしが、こんなロリ幼女の命狙ってるの?

川*д川<それは依頼主さんに頼まれたからですよー。

即答した貞子の「依頼主」という言葉に、内藤の笑顔がわずかに歪んだ。
普段の呑気な声の、トーンを少し下げて彼は屋根の上にいる少女に訊ねる。
 /⌒ヽ
( (^ω^)<……もしよければ、教えてくれないかおー?
        その依頼主とやらについて。誰なのか、とか。
        なんでシルクちゃんの命を狙っているのか、とか。

それに対し貞子は「うっふふー」と笑った。

川*д川< 依頼主の意図ー? そんなの知るわけないじゃないですかー。
     私たちは、好きなときに好きなだけ大暴れできればそれでいいんですからー

そんなわけで、と彼女は続けた。

川*Д川9m<<いきなさい、シネバーちゃんたち! 焼き払えー!
  /'⌒'ヽ         /'⌒'ヽ
 (●.●;)        (●.●;)
  >冊/ <シネバー?>>冊/

少女の言葉に、シネバーたちは戸惑いながらもそれぞれ手に持つ大鎌を構え、
内藤たちに襲いかかった。
ちなみに、このシネバーたちに火をはいたりする機能は搭載されていない。
つまり今のセリフは、貞子がただ言ってみたかっただけである。
 /⌒ヽ
( (^ω^)<暴れたいだけ、かお。まあ荒らしさんだし、しょうがないかおー

結局、彼らを倒したところで、あの『計画』の存在の有無は確認できないということか。
期待に反する貞子の言葉に、ため息を吐く内藤。

49 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:40:05
       (
<ニニニ二(ξ#゚听)ξ<なにしてんの? 行くよ、ブーン

少しイラついた感じの相棒の声に内藤が振り向くと、
ディバイスマッシャーを右手に、リボルブラスターを左手に握るツンが、
準備万端とばかりにシネバーの方に駆け出して行くところだった。
∧ ∧
(*■ー■)<ブーンさん、がんばれー

サングラスをかけたまま応援してくれるシルクの声を聞き、
内藤は、先ほどの失望のため息とは、また違ったため息を付き、両手を広げる。
  /⌒ヽ
⊂( (^ω^)つ<おっお、把握ですおー。Code Moritapo―

開かれた両手に、集まっていく青い光。
  /⌒ヽ
⊂( (^ω^)つ<「加速」―!!

内藤の両手から、雷のような形を成した青いエネルギー―――『モリタポ』が、
ツンに向かって発射される。
  /'⌒'ヽ         /'⌒'ヽ
 (●.●#)       (●.●#)
  >冊/ <シネバー?>>冊/

走るツンの向かう先、宙に浮かぶ巨大なシネバーたちは、
まったく同じタイミングで、各々の手に持つ大鎌を、ツンに向かって振り下ろす。
シルクを襲っていた中型とは比べ物にならない速さと質量を持った一撃、
しかし、ツンは怯まない。
       !
<ニニニ二(ξ#゚听)ξ<<どっけええええデカブツどもおおおおおお!!!

叫ぶツンの体が、ブーンから送られるモリタポの青い光に包まれ、そして

―――ツンの姿が、消えた。

50 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:40:44
  /'⌒'ヽ         /'⌒'ヽ
 (●.●;)        (●.●;)
  >冊/ <シネバー?>>冊/

突然消えた少女の姿を探し、きょろきょろする二体のシネバー。

川;д川<<危ない! シネバーちゃん後ろ!!
 (  zЁョ===]
ξ゚ー゚)ξつ'┘<遅いっつーのよ

青い光に包まれ、宙空に舞う少女。
左手に持つ巨大な拳銃の銃口は、シネバーたちに向けられている。

ばごん、ばごん。

二つの巨大な銃声が轟き渡り、
そしてシネバーたちが持っていた鎌の刃の部分が、
リボルブラスターの巨大な銃弾に撃ち抜かれ、ぼろぼろと崩れ落ちていった。

川;д川<<あああああ!! ひどいですー!
      その鎌、結構頑張って描いたんですよー!?
      もう許さないですー! シネバーちゃん、『紐』使って!!
  /'⌒'ヽ         /'⌒'ヽ
 (●.●#)       (●.●#)
  >冊/ <シネバー!>>冊/

刃の部分が砕かれ、棒だけになった大鎌から、
黒い極太の紐がツンに向かって放たれる。
モリタポによる加速効果が消えたツンは、後ろで待機している相棒に向けて叫んだ。
  (  zЁョ===]
ξ゚听)ξつ'┘<ブーン、リロード!
  /⌒ヽ
⊂( (^ω^)つ<おー、シネバーたちの魅せ場なしかおー?
         あの子、きっと泣いちゃうおー?
  (  zЁョ===]
ξ#゚听)ξつ'┘<知るか、リロード! 早く!

「はいはいおー」という声と共に両手に青い光を集束させる内藤。
  /⌒ヽ
⊂( (^ω^)つ<Code Moritapo―「支援」―

51 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:41:50
内藤の両手から青い光が、シネバーたちの『紐』を避けているツンの頂に注がれる。
リボルブラスターが青い光に包まれると同時に、P2のシリンダーがかちゃり、と左に回転した。
  (  zЁョ===]
ξ#゚听)ξつ'┘<狙いが定まらないなあもう!
        残弾あと2発しかないんだから、てこずらせるんじゃないわよ!

襲い来る巨大な紐。ツンはそれにひょいと飛び乗ると、
  (  zЁョ===]
ξ#゚ー゚)ξつ'┘<おっけー、これで全て重畳モーマンタイ!!
         いくわよ! 見敵必殺―――

極太であるとはいえ不安定なそれを足場に、シネバーたちに向かって引き金を引いた。




  (  zЁョ===]
ξ#゚听)ξつ'┘<<―――「ブラスティング・ツンデレーション」!!!




銃声は、全くしなかった。
ただ一瞬、ツンのリボルブラスターから延びる青い輝きが目に留まっただけだった。
それが、二体のシネバーを貫き、
 /'⌒'ヽ             /'⌒'ヽ
 (○.○;)           (○.○;)
  >冊/ <シ、シネバー?>>冊/

体に大きな風穴が空き、青い光に包まれた二体のシネバーたちは、

  \(((从巛⌒√  $从*)/  \(((从巛⌒√  $从*
\日从  ;\从ζ:从 《从⌒)/\日从  ;\从ζ:从 《从⌒)/
》≪ζ从% :; * %))从)/》≪ζ从% :; * %))从)/
;从・ζ、あぼーん人:⌒》%*从─ ;从・ζ、あぼーん人:⌒》%*从─
Σ巛`从&; ):从)){+从#Σ巛`从&; ):从)){+从#
/≪从”` 从:ζ∪∪ 从)\/≪从”` 从:ζ∪∪ 从)\
 /巛⌒∫ 从ζ从《《))\ /巛⌒∫ 从ζ从《《))\

本当に魅せ場も何もなく、爆散した。

52 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:42:59

川;Tд川<<シネバーちゃあああああああああああん!!!

屋根の上で泣く貞子。その眉間に冗談みたいに巨大な銃口が眉間に突き付けられる。
 (  zЁョ===]
ξ-听)ξつ'┘<はいはい、ご愁傷さん。っつーわけで、次はあんたね?

:川;○д川::<<ほ、ほんとに正義の味方なんですか、あなた!!!

震えながらツンを見上げる貞子。それを見て、ツンは笑った。
 (  zЁョ===]
ξ-ー゚)ξつ'┘<ざーんねん、私はただの"削除人"。正義になんて興味はないわ

容赦なく引き金を引こうとするツン。まさに鬼の所業、しかし―――
  ?
ξ;゚听)ξつ<ふえ?

ばこん、という大きな音と共に、砕かれる足場。
下から正体不明の攻撃を受けたツンは、なすすべもなく空中に放り出される。
  (
ξ;゚听)ξ<<っと、と。

空中でうまく身を翻し、着地するツン。
彼女が見上げる屋根の上。
そこにいるのは、うつむいて長い髪で顔を隠している貞子。
そしてその傍らにあるのは、先ほどツンを屋根から突き落とした張本人。
うねうねと動く、屋根から"生えている"巨大な物体。
黒く、鋼のような光沢を放つそれの先端には赤く、禍々しく輝いている巨大なハサミがあった。
  ?
ξ;゚听)ξ<<な、なによ、それ!!

叫ぶツンに対し、貞子はそれには答えず、言った。

:川 д川::<そうですか……そうですね、あなたが"削除人"だというなら、
       私だって"荒らし"のはしくれ。多少チートじみた強さをもった『作品』を
       序盤からいきなり投下しちゃっても、よかったってことだったんですね……

手を、ばっ、と前に付き出すと、貞子は顔をあげ、叫んだ。

川#Tд川<<やっちゃって! 『キチーリ』ちゃん!!

53 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:43:45
きちきちきち、という不気味な音が、辺りにこだまする。
  ?
ξ;゚听)ξ<な、なに!? なんだっての!?

屋根に生えているモノの黒く、細長い体に生える、無数の真っ赤な『足』。
それがたえまなく動き、きちきちきちという不気味な音を立てている。
がらがらがら、と崩れ落ちる白いコンクリート製の建物。
中から現れたのは……
            λ   λ
           〈〈^  ^〉〉
             ))_((
          └(, ´∀`)┘ キチキチ
           ‐(   /
          ‐((癶^^/癶 キチキチ
        ‐((癶^^/癶               λ  λ
        ‐((癶^^/癶                 ハ  ハ
   /⌒((‐((癶^^(癶))⌒))⌒))\       )〉 / )
 ≦(⌒((≧‐((癶^^\癶^^≧-≧))\    ノ レ ノ
≦‐((⌒\≧ ‐((癶^^\癶 ≦^^≧))⌒))⌒))_ノ キチキチ
  ≦‐((⌒\___(癶(^^^^)癶     ≦^^^≧^^≧
    ≦‐(‐((‐((‐((癶^^)癶
     ≦^≦^≦^≦^^^≧

―――黒と赤で構成された、不気味なAA。
∧ ∧
(*;■ー■)<ぶ、ブーンさん、あれ、なに!?
  /⌒ヽ
⊂( (^ω^)つ<『キチーリ』かおー、また懐かしいもんを……
          っていうか、あれってもともと"こっち側"の代物じゃないかおー

『キチーリ』は、"荒らし"や"厨房"と呼ばれる、
2ちゃんねるの平和を乱す存在を駆逐することを目的に生成されたAAだ。
全身のあらゆる部位に毒を持ち、その毒に侵された荒らしや厨房を捕食する。
性質的には『頂』に近いが、しかし、日向より日陰を好むという性質から、
あまり表立った活躍はしないまま、今日では忘れ去られてしまったAAのひとつである。

54 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:44:41
 〈〈^  ^〉〉
└(, ´∀`)┘<キーチキチキチ!!
 ‐(   /
川*ー川<うっふふー、どうですか、私の『キチーリ』ちゃんは。
     美しいでしょう? 強そうでしょう? 私の自信作なんですよー?

まだ残っている屋根の残骸の上で、キチーリの体を愛おしげに撫でる貞子。
それを見たツンは、率直な感情を言葉にして述べた。
  (
ξ;゚听)ξ<<き、気持ち悪ッ!!

川д川

川д川

:川д川::

ぶるぶると震えだす貞子の体。
しばらくしてその震えが、ぴたり、と止まり、そして彼女は叫んだ。

川#Tд川<き、キチーリちゃん、食べちゃえ! そんな貧乳女!!
 〈〈^  ^〉〉
└(, ´∀`)┘<キッチーリ!!
 ‐(   /
無数の足をきちきちと動かしながら、キチーリはツンに突撃する。
  !
ξ#゚听)ξ<<うわ、こっち来た……じゃなくて! 誰が貧乳だって!!?

怒りながらも、上空に高く飛び上がるツン。
直前まで彼女が立っていた空間を、キチーリの頭のハサミが斬り裂いた。
       (
<ニニニ二(ξ;゚听)ξ<わーお……さすがにアレくらったらひとたまりもないわね
 〈〈^  ^〉〉
└(, ´∀`)┘<キチキチキチ!!
 ‐(   /
       !
<ニニニ二(ξ;゚听)ξ<うお!?

空中で油断していたツンに向かって、高速で体を伸ばすキチーリ。
眼前に赤く不気味に輝くハサミが肉薄し、そして

55 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:45:37
       (
<ニニニ二(ξ;゚听)ξ<ちっ!!

がきぃん、という高い音が響き渡る。
それと同時に、地面に向かって落下するツンの体。
       (
<ニニニ二(ξ;゚听)ξ(硬い……ディバイスマッシャーでも斬れないなんて)

どうする、とツンは考える。
あの手の巨大節足動物なら、大抵は外殻の間に覗く関節部分が弱点であることが多いが、
しかし、このレベルのAA職人になると、その弱点をカバーしていることも多い。
 〈〈^  ^〉〉
└(, ´∀`)┘<キチ!!
 ‐(   /
鎌首をもたげたキチーリが、一気にツンに向かって突っ込んでくる。
間一髪、それを避けたツンは、今しがた自分が立っていた地面が粉々に砕かれるのを見た。
―――いや、それだけではない。
キチーリによって砕かれた地面をよく見てみると、所々が"溶けている"ことがわかる。
       (
<ニニニ二(ξ;゚听)ξ(頑丈さにパワー、それに加えて地面を溶かすほどの猛毒……
          完全に舐めてたわ、あのサダコって子のこと。)

リボルブラスターなら、あるいはあの頑丈な外殻を破壊できるかもしれない。
しかし残弾はたった一発。
       (
<ニニニ二(ξ゚听)ξ(もし砕けなかったときのことを考えて、
          相手の戦力をできるだけ削っておく必要があるか……)

キチーリの攻撃を横に避けたツンの体を、右横から巨大なしっぽが追撃する。
しかたなくディバイスマッシャーで受けるツン。
当然その恐るべき重量を受け止めることなどできず、ツンは思い切り左方向へ吹き飛ばされた。
       (
<ニニニ二(ξ;゚<)ξ(あいつの戦力……猛毒と、
           体の長さ。せめてそれだけでもなんとかできれば……!)

地面に受け身をとりながら、ツンは立ち上がると、後方の相棒に向かって叫んだ。

56 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:46:13
       (
<ニニニ二(ξ#゚听)ξ<<ブーン、今日の分のモリタポ、使えるだけ全部リロードして!

我ながら無茶な注文をしているな、とツンは思った。
削除人が使えるモリタポの量は、運営によって一日の量を決められている。
『P2』のシリンダーに空いている穴の数、それが自分たちが一日に使えるモリタポの限界。
それを全て使い切るということは、モリタポ無しの、
丸腰の状態でそれからの一日を過ごさなければならないということ。
危険な賭けだ。しかし、それをしなければ目の前の相手には勝てないと、ツンは確信していた。
  /⌒ヽ
⊂( (^ω^)つ<……把握だおー。信じてるお、相棒ー

ツンの心中を知ってか知らずか、内藤はいつも通りの呑気な声でそんなことを言うと、
両手に青い光を集め始める。
       (
<ニニニ二(ξ#゚ー゚)ξ<合点。絶対倒してみせるんだからね!

強く言い放ち、剣と銃をそれぞれ構えてツンはキチーリの巨体に向き合う。
  /⌒ヽ
⊂( (^ω^)つ<Code Moritapo―「支援」―
 〈〈^  ^〉〉
└(, ´∀`)┘<キチキチ!!
 ‐(   /
内藤がツンに向かって青い光を放つのと、
キチーリがツンに向かって突撃したのは、ほぼ同時だった。

57 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:46:53
砕かれるコンクリート。飛び散る破片―――そして、
 〈〈^  ^〉〉
└(, ´∀`)┘<キチ……!?
 ‐(   /
地面に突っ込んだ頭を上げ、辺りを見回すキチーリ。
ふと、頭上を見上げた怪物の目が捉えたのは、
       (
<ニニニ二(ξ#゚听)ξ<<うらあああああああああ!!

大剣を片手に、宙を舞う少女。
その右手に持つ大剣に、青い輝きを湛えながら、
空中でくるくると回転する彼女は、
叫び声と共にその輝きをキチーリに向けて解き放った。
       (
<ニニニ二(ξ#゚听)ξ<<「ディバイディング・ツンデレーション」!!

青く輝く、三日月型の刃が、キチーリの長い胴体を二分する。
 〈〈^  ^〉〉
└(, ´∀`)┘<キッチーリ!!
 ‐(   /
しかしキチーリは、自分の体長が半分にされたことなどものともせず、
ツンに頭の上のハサミを向けた。

川*д川<うっふふー、狙いを外しましたね貧乳さん。
     私のキチーリちゃんは、
     モリタポ最大出力の攻撃でも、一発や二発なら耐えきりますよー

ツンに迫るキチーリのハサミ。
赤く怪しい輝きを放つそれが、ツンの体を両断しようとする、が、しかし……
 〈〈^  ^〉〉
└(, ´∀`)┘<キ、キチ……?
 ‐(   /
空中へと延ばされるキチーリの体が、急に停止した。
ツンはキチーリのハサミが届かない上空で、
リボルブラスターの銃口を眼下のキチーリに向けて微笑んでいる。
  (  zЁョ===]
ξ#゚ー゚)ξつ'┘<はずしたんじゃなくて、狙ったんだからねっ!

リボルブラスターの銃身は、内藤から供給されるモリタポによって青く輝いていた。

58 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:48:11
キチーリの最大の武器、それは、大剣をも跳ね返す頑丈な外殻でも、
コンクリートで舗装された地面をも溶かす猛毒でもない。
それは、上空に飛んでも威力の高い攻撃をしかけることのできるリーチの長さ。
つまり、ムカデのような長い体そのものなのである。
ツンは最初の一撃でその長い攻撃範囲を半減させ、
上空の自分に対してのキチーリの攻撃を、届かなくさせた。
  (  zЁョ===]
ξ#゚ー゚)ξつ'┘<吹っ飛びなさいよっ! 見敵必殺―――
 〈〈^  ^〉〉
└(, ´Д`)┘<キ、キチキチ!!
 ‐(   /
あわててツンの射線上から離脱しようとするキチーリ。
しかし、なにもかも遅すぎた。
  (  zЁョ===]
ξ#゚听)ξつ'┘<<―――「ブラスティング・ツンデレーション」!!!

青い光に貫かれたキチーリの上半身が、大きな音を立てて爆発する。
すた、と音を立てて地面に降り立ったツンは、
こちらを見下ろす貞子に、剣を向けて言った。
  (
ξ#゚ー)ξ<どーよ、あんたの"芸術"とやらは私が完全に破壊したわ!
      モリタポフルバーストの一撃に耐えきったところまでは評価してあげるけど、
      さすがに二発となると難しかったみたいね?
      ―――詰めが甘いわ!!

「次はあんたの番よ」と、高らかに宣言するツン。
それに対し、貞子は恐怖におびえるかと思いきや、以外にも不敵に笑ってみせた。

川*ー川<うっふふー
  ?」
ξ#゚Δ)ξ<<な、何よ、その妙な笑みは……

59 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:49:30

川*ー川<かつて、偉大な芸術家は言いました。「芸術は爆発だ」と。
     "芸術"は、破壊というプロセスを加えることで、
     更なる変化をとげ、新たなる形を生み出します。
     ……貧乳さん、あなたがしたことは、その"プロセス"に過ぎないんですよー?

うっふふー、と笑う貞子。
ツンは彼女の言っている言葉の意味が理解できず、首をかしげる。
  ?」
ξ#゚Δ)ξ<<は!? 意味わかんない!! つまりどういうことよ!?

くすくす、と笑う貞子。その態度がさらにツンの怒りを大きなものへと変えるが、
しかし貞子は気にせず、言った。




川*ー川<詰めが甘いのは、あなたの方だということです



  ?
ξ ゚Δ)ξ<へ……?

貞子の言葉が飲み込めないツンは、間抜けな声をあげて首をさらに傾げるが、
∧ ∧
(*;■ー■)<<きゃああああああああ!!!

響くシルクの悲鳴に、後ろを振り向いて、
ようやくツンは貞子の言った言葉の意味を理解したのだった。

60 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:50:15
ツンの目が捉えたのは、シルクたちの元へ走り寄る、黒い物体。
先端に赤いハサミを持つそれは、先ほど倒したはずのキチーリそのものであるが、
しかし、大きく異なるのはそれの先端には顔が無いということ。
λ  λギチギチ
ハ  ハ
/ )ギチギチ
  !
ξ;゚听)ξ<<し、しっぽ!!?

先ほどツンが両断した、キチーリの半身。
先端に頭にあったのと同じハサミを付けたキチーリの尻尾部分が、
今、まさに自分の相棒たちに襲いかかろうとしていた。

川*ー川<うっふふー、見たところ、
     さっきの青い男の人、モリタポの扱いが異様にうまいみたいですけどー。
     わたしのキチーリちゃんのハサミにかかれば、
     あの人のモリタポの壁なんて紙の盾みたいなものですよー?
     あ、そういえばさっきモリタポ全部使い切っちゃったんでしたっけ?

貞子の話を聞くまでもなく、ツンは行動に出ていた。
左手に持っていたリボルブラスターを構え、引き金を引く。
  !  zЁョ===]
ξ;゚听)ξつ'┘<<た、弾切れ……!!

左手に持った巨大拳銃が役に立たないと見るや否やそれを投げ捨て、ツンは走る。
しかし、速さが足りない。
この速度だと、自分がたどり着くより早くキチーリのハサミが内藤とシルクを斬り裂くだろう。
  !
ξ;゚听)ξ<<これも邪魔!!

右手に握る大剣も投げ捨て、さらに身軽になるツン。
しかしいくらスピードが上がるといっても、これは自殺行為である。
当然だ。兵器を持ってしても苦戦する敵に、あろうことか丸腰で挑もうとしているのだから。
  !
ξ;゚听)ξ(大丈夫……ブーンなら、きっと……!!)

61 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:50:58
――――
―――
――

 ∧ ∧
(*;■ー■)<<ぶ、ブーンさん! どうしよ、あれ、こっちくる!!

  /⌒ヽ
⊂( (^ω^)つ ……。

 ∧ ∧
(*;■ー■)<ブーンさん……?

こちらに向かってくるキチーリの尻尾部分を、内藤は黙って眺めていた。
尻尾の先端に輝く赤いハサミ。
先ほどの戦闘で見たところでは、あれにはかなり強力な毒が仕込まれているらしい。
 ∧ ∧
(*;■ー■)<<ブーンさん? ブーンさん!!

こちらに叫んでいるシルクの顔を、内藤は見る。
まだ幼い、彼女の顔。
サングラスをかけているから分かりにくいが、
声色から察するに、彼女は今にも泣きそうな状態なのだろう。

  /⌒ヽ
⊂( (^ω^)つ ……。

 /⌒ヽ
<( (-ω-)(……しかたない、かお)

右手を、そっと前に出す。

 /⌒ヽ
( (-ω-)<Call Itadaki―

右手に集束するのは、モリタポのものではない緑色の輝き。
太く、長く、内藤の身の丈ほどに膨張したその光は、
やがて荒らしを倒すための武器―――『頂』へと変貌をとげる。

 /⌒ヽ
( (^ω^)<「シベリアン・モンキー」―


62 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:51:55
現れた『頂』。その形状はまるで工具の"モンキーレンチ"そのものだ。
しかし、異常なのはその大きさ。そして、その色。
内藤の身の丈ほどもある、その巨大なモンキーレンチは、
内藤の着ている雨合羽のような服と同じ、真っ青な色をしていた。
 /⌒ヽ
( (^ω^)<おー……ほんっと久々だおー。頼むから言うこと聞いてくれおー?
λ  λギチギチ
ハ  ハ
/ )ギチギチ
眼前に襲い来る、キチーリの尻尾。
内藤はそれに向けて、『頂』の先端を突き出す。
λ  λギチギチ
ハ  ハ  !!?
/ )ギチギチ
がちゃん、という硬い音と共に、モンキーレンチの先端がキチーリの胴体を拘束する。
その拘束から逃れようとじたばた、と動く尻尾。
しかし、いくら暴れても内藤の『頂』の拘束から、尻尾は逃れることができない。
無駄な抵抗を続ける尻尾を、どこか冷淡に見ながら、内藤は口にする。
 /⌒ヽ
( (^ω^)<Code Moritapo―「規制」―

―――自らが使える、最強のモリタポスキル。
   それを発動するための、鍵言葉を。
λ  λギチ……
ハ  ハ  !?
/ )ギチギ……
『頂』の先端からあふれ出す、青い光。
それがキチーリの尻尾全体を覆い、それとほぼ同時にキチーリの尾の動きが鈍くなっていく。
λ  λギ……
ハ  ハ  !?
/ )ギギギ……
徐々に鈍くなっていく、尻尾の動き。
よく見れば、何がキチーリの尻尾を拘束しているのか、その正体を見つけることができる。
青い光に包まれる尾の黒い外殻。その表面に降りている、白い霜を。
λ  λ
ハ  ハ
/ )
やがて尻尾は完全に動くことをやめ、その体は透明な氷の結晶に覆われ始める。

63 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:52:40
∧ ∧
(*■ー■)<やった! ブーンさんすっごい! そのままやっつけちゃえー!

形勢逆転にはしゃぎ、とび跳ねるシルク。
 /⌒ヽ
( (^ω^) ……

しかし、それに対し内藤は何の反応も見せない。
∧ ∧
(*■ー■)<ブーンさん……?

そして、少女はそれに気付いた。
∧ ∧
(*;■ー■)<え? ブーンさんのうで……こおってる?

巨大なモンキーレンチ型の『頂』―――シベリアン・モンキーを握る内藤の右腕が、
目の前の禍々しい尻尾を拘束しているものと同じ、透明な氷の結晶に覆われているのを。
  !
ξ;゚听)ξ<<―――間に合わなかった!!
∧ ∧
(*;■ー■)<<うわ!! つ、ツンさん!?

突然現れたツンに驚き飛びのくシルク。
ツンはそれに目もくれず内藤に駆け寄ると、その横っ面を思いきりぶん殴った。
2、3メートル吹っ飛んだ内藤は、殴られた頬をなでながら、よろよろと立ちあがる。
 /⌒ヽ ヽ
(×ω×) )<あだだ……おー、ツン、起こすならもっと優しくお願いするおー

相も変わらず呑気な様子の内藤。
ツンは呆れていいのか怒っていいのか分かっていないという面持ちで訊ねる。
  (
ξ;゚听)ξ<なんて無茶してんのブーン。
       あんた『それ』、二度と使えないって自分で……

64 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:53:21
なんだか泣きそうにも見えるツンの顔を見て、内藤は気まずそうに頬をぽりぽりとかいた。
 /⌒ヽ
( (^ω^)ヽポリポリ<おー……まあその

ちらり、と横目でシルクの方を見やる。
∧ ∧
(*;■ー■) ?

なぜ自分が見られているのか分からない、といった顔をしているシルク。
それから目を離すと、内藤は一言、こう言った。
 /⌒ヽ
( (^ω^)<……未来ある若者を、守りたいって思っただけだお

それを聞いて、ツンは呆れたように微笑む。

ξ゚ー゚)ξ<……何かっこ付けてんのよ、まったくさ
 /⌒ヽ
( (^ω^)<おー、僕にだってかっこつけたいときはありますおー

少しだけ、なごやかな空気が場に流れた。
しかしそれを崩すように、彼らのすぐ近くからぎちぎち、という嫌な音が響き始める。
λ  λギチギチ
ハ  ハ
/ )ギチギチ
見ればそこには、内藤の氷の束縛を逃れたキチーリの尻尾の姿。
ぶるぶる、と水に濡れた犬のように身を震わせると、
それは一気に内藤たちに向かって襲いかかってきた。
  (
ξ#--)ξ<まったく……空気読めない化け物だこと。
      ブーン、リロードお願い

呆れてため息を吐くツン。内藤は『頂』を緑色の光に変換して消すと、
両手を広げ、その掌に集束させた青い光を、ツンに向けて放った。
  /⌒ヽ
⊂( (^ω^)つ<Code Moritapo―「支援」―

65 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:56:02
λ  λギチギチ
ハ  ハ
/ )ギチギチ
丸腰のヘソ出し少女に、襲いかかる巨大な化け物。
一見すれば絶対絶命に見える、この状況だが、実は特にピンチでもなんでもない。
なぜなら少女の右拳が、青白い輝きを放っているからだ。
  (
○ξ#゚听)ξ<鉄・拳・制・裁 ! ! !

ツンというこの削除人の恐ろしい所はなにかと問われれば、
大体の人は、それは大剣と巨大拳銃をあやつる技術力だと答えるだろう。
しかし、それ以上に恐ろしいのは、その技術の根幹をつかさどっているもの―――
自分の身の丈ほどもある大剣を軽々と振りまわし、
常人であれば引き金を引くだけで腕が吹き飛ぶレベルの、巨大拳銃の反動でさえも無効化する。


    (
(⌒)ξ#゚听)ξ<<「あぼおおおおおおおおおおおおおん・ブリットオオオオオオオオオオ」!!!


―――つまりその脅威的な腕力こそが、彼女の一番恐ろしい武器なのだった。
λ  λギチギチ
ハ  ハ ―――!!?
/ )ギチギチ
モリタポを纏ったツンの右拳が、キチーリのハサミと正面から激突する。
その拳は禍々しく輝く赤いハサミを軽々と打ち砕き、そして
  \(((从巛⌒√  $从*)/
\日从  ;\从ζ:从 《从⌒)/
》≪ζ从% :; * %))从)/
;从・ζ、あぼーん人:⌒》%*从─
Σ巛`从&; ):从)){+从#
/≪从”` 从:ζ∪∪ 从)\
 /巛⌒∫ 从ζ从《《))\て

キチーリもまた、彼の兄弟たちと同じ運命をたどったのだった。

ξ-ー゚)ξ<我らの前に敵なし、うん。本日も重畳ね!

爆炎が立ち上る最中、
少女は満足気に笑って、自らの拳から立ち上る煙を吹き消した。

66 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:56:54










     ★4









         .

67 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 04:59:46

:川;TД川::<ちょ、ちょっと待ってくださいよおー

コンクリートの建物の残骸に囲まれ、ちょうど壁に追い詰められる形で震えている貞子。
       (
<ニニニ二(ξ#゚ー゚)ξ<選ばせてあげる♪
          痛い消されかたと、痛くない消されかた、どっちがいい?

その前に仁王立ちするのは、大剣を持った削除人、ツン。

:川;TД川::<ど、どっちもいやですー!!
       っていうかどっちにしろあぼーんされるしか道はないじゃないですか!?
       (
<ニニニ二(ξ#^ー^)ξ<へー、消されるのは嫌、と。
          この私の胸のこと、あんだけバカにしといて、消される覚悟はなかったと。
          へえ……ふふふふ

:川;TД川::<<だ、だからそれについては謝ってるじゃないですかあ……!!
        お、お願いですから、その剣を下ろして! 落ち着いてくださいー!!

笑顔で剣を振り上げるツン。貞子はひっ、と小さな悲鳴をあげて身を縮ませる。

:川;TД川::<だ、大体おかしいじゃないですか! なんですか最後の攻撃!
       あなたたちが使えるモリタポチャージ攻撃って、
       中型シネバーちゃんに使ったのも含めて四発だったはずでしょう!?
       だったらキチーリちゃんの頭を壊したので最後だったはずじゃないですかあ……!!

身を縮こませながらも、必死にわめき散らす貞子。
それに対し、内藤が呑気な声で答える。
 /⌒ヽ
( (^ω^)<おっお、あのシネバーに盗聴機能もつけてたのかおー。
        さすが『毒蛾』の右腕さん、しっかりしてるおー。
        ……でも、僕あのときちゃんと言ったおー?

ぴっ、と内藤は自分のまたがっていた『P2』を指さす。
 /⌒ヽ
( (^ω^)<「帰りに『P2』使いたいから」って

68 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 05:00:21
内藤たちの乗るバイク『P2』は、削除人の武器であるモリタポの運搬手段であると同時に、
モリタポそのものを動力として走る乗り物でもある。
つまり、帰りに『P2』を使いたくても、
動力たるモリタポがなくなってしまっては動くことができないのである。

ゆえに内藤は言ったのだ。「……できれば帰りも『P2』使いたいし、四発くらいなら」と。

:川;TД川::<そ、そんなあ……ひ、卑怯ですよお!!

内藤に向けて叫ぶ貞子。内藤は「そんなこと言われても」と苦笑するしかない。
       (
<ニニニ二(ξ#^ー^)ξ<さて、最期のお話はすんだかしら?

:川;TД川::<ひ、ひぃぃぃぃ!!!!

顔に悪人そのものの笑みを浮かべ、剣を振りかぶるツン。

:川;TД川::<ちょ、ちょっと待っt……
       (
<ニニニ二(ξ#^ー^)ξ<問 答 無 用 ! !

巨大な剣が、貞子に向かって振り下ろされる。

:川; Д川::<た、助けて……

殺される、そう実感して、貞子は思わず叫んでいた。




:川;TД川::<<助けてドッくううううううううううん!!!




     .

69 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 05:01:42
       (
<ニニニ二(ξ#゚听)ξ !?

ぱぱぱん、という乾いた音。
それを聞くか聞かないかのうちに、ツンは大剣を地面に突き刺し、
盾にすることでその"攻撃"から身を守った。
  (
ξ#゚听)ξ<何……誰よ!?

ツンが攻撃の来たであろう方向に目をやると 、
自らのこめかみに拳銃を押し付けているドクオ種の青年が、
顔に気味の悪い笑みを浮かべてこちらを見ているのが目に映った。
       ∬
y==-('∀`{ ・ G=<ふひひひ、どーした貞子ォ、いじめられてたのか?

川;Tд川<ど……ドッくん!? どうして!!? 『田代砲』はどうしたんです!?

ドクドルフ・ナハトファルター。
左手に持つ『97式アラファトマシンガン』から出る煙を吹き消しながら、
彼はゆっくりと、貞子のもとに歩いてくる。

y==-('∀`)<ふひひひ! もう設置し終わったよ。
       俺様にかかりゃ、こんなもん朝飯前だぜ

==川ノTД川ノ<ど、ドッくううううううううん!!

泣きながらドクドルフの元に走り出す貞子。
それを見たツンは改めて剣を構えなおし、貞子を静止しようとする。
       (
<ニニニ二(ξ#゚听)ξ<! ま、待ちなさい!!

y==-('∀`{・ G=パパパパパパン
  (
ξ#゚听)ξ<くッ……!!

ドクドルフが左手に持つマシンガンが、再びツンに向かって発射された。
的確な射撃の嵐に、ツンは剣を盾にして防ぐことしかできない。


70 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 05:02:41

川ДT川<<わああああああああん!! 怖かったよう!!!

飛びつき、抱きつく貞子を受け止めながら、
ドクドルフは改めて削除人たちに顔を向けた。

y==-('∀`{・ G=<さぁて、ウチの貞子を随分可愛がってくれたみてーだなあ……?
         落とし前つけさせてもらうぜ、黒星さんよお

ふひひひひ、と笑う青年。
と、共に大地がぐらり、と大きく揺れる。
∧ ∧
(*;゚ー゚)!?<きゃあ!!!
  !
ξ;゚听)ξ<何これ、地震!!?
 /⌒ヽ
(;(^ω^)<違うお……これは……

ぐらぐら、ぐらぐら、と、揺れはどんどん激しくなっていく。
内藤はこの揺れを、何度か経験したことがあった。
 /⌒ヽ
(;(^ω^)<これは、『Dos攻撃』を受けたときの揺れだおー……
        揺れの連続性から推測すると、たぶん『田代砲』をつかってるおー
  !
ξ;゚听)ξ<<た、田代砲!? じゃ、じゃあこのスレ、落ちるの!?
∧ ∧
(*;゚ー゚)<スレがおちるって……え? えええ!!?

71 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 05:03:38
ぐらぐら、ぐらぐら、と揺れる地面。
慌てふためく削除人たちを、ドクドルフはにやにやしながら眺めている。

y==-('∀`)<ふひひひ、ま、せーぜー慌てふためくこったな

左手に持っていたマシンガンを投げ捨て、ドクドルフが取り出したのは一本の『串』。
シルクを襲ったシネバーが持っていたものとは違い、
こちらは綺麗な銀色をしている。

y==-('∀`)<一応言っとくが、逃げるのは勝手だぜー? 削除人さんよお。
       ただしこのスレには、
       貞子のコリンズのせいでorz状態になってる住民どもがうじゃうじゃいるがね。
       はたしてそいつらが、このスレから逃げ出せるのかどーか、
       ふひひひひひ!!

一際大きく、愉快そうに笑うと、ドクドルフは『串』を使って空間に空けた穴に飛びこんだ。
あわてて貞子がそれに続く。

川*д川<やーいやーい、貧乳ー! ナイチチー!! 陥没乳房ー!!

自分の思いつく、ありったけの罵詈雑言を吐くだけ吐いて、彼女もまた穴の中へ消えて言った。
  !
ブξ#゚∀゚)ξチッ<か、かんぼ……うふふふふふふふ!!!
∧ ∧
(*;゚ー゚)<<つ、ツンさんおちついてー!!

荒らしたちの消え去った、その空間を、一際大きな揺れが襲った。

――
―――
――――

72 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 05:04:42
――――
―――
――

それからしばらく時間が経った。
数十分間続いた揺れはようやくおさまり、
休む間もなくスレッド内のコリンズ掃除に追われていた内藤たちは、
やっと一息ついていた。
∧ ∧
(*゚ー゚)<それにしても、すごいんだね、『たしろほう』って
  (
ξ;-听)ξ<まあ、本来はスレッドどころか、板すら落としかねない力を持った兵器だからね。
      この程度のことですんだのは、正直ラッキーだとしかいいようがないわ

広場にある噴水に腰かけ、ツンとシルクは話をしていた。
∧ ∧
(*゚ー゚)<……ラッキーかあ、そっかなあ
  ?
ξ゚听)ξ<ん? なんか引っかかることでもあんの?

口に人差し指を当て、考える仕草を見せるシルクに、ツンはアホ毛でハテナマークを作る。
∧ ∧
(*゚ー゚)<ううん、えっとね……よくわかんないけど、
     あのドクドルフってひと、すごうでの"あらし"さんなんでしょ?
  (
ξ-听)ξ<うん、まあ……削除人の間では知らない人間がいない程度には有名だわね

それがどうしたの? と訊ねるツン。
∧ ∧
(*゚ー゚)<ドクドルフさんはね、きっと貞子さんのことがしんぱいだったんじゃないかなあ

ξ-听)ξ<……仲間が心配だったから、田代砲のスクリプトが甘くなったって?
      それが本当だとしたら、あいつはプロとして失格だわ。
      目標の達成を無視して、仲間の命を優先するなんて……

73 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 05:05:24
∧ ∧
(*゚ー゚)<……じゃあ、ツンさんも、削除人しっかく?
  ?
ξ;゚听)ξ<へ?

くすくす、と、シルクは笑う。
∧ ∧
(*゚ー゚)<だってわたしとブーンさんがおそわれたとき、
     ツンさん、貞子さんのことほっといて、わたしたちのとこにとんできてくれたじゃない
 (
ξ*゚听)ξ<そ、それは……あ、あれよ!
      私の任務は、とりあえずあんたの安全確保だったわけだし、
      だからそれはセーフ!

そういうことにしておきましょう、と笑うシルクに、
何よ、とツンは頬を赤らめる。
∧ ∧
(*゚ー゚)
  (
ξ*゚听)ξ

しばらく二人は、無言で見つめ合っていたが、
∧ ∧
(*^ー^)
  (
ξ*^ー^)ξ

やがてどちらともなく、あははと声をあげて笑いだした。

74 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 05:06:25
 /⌒ヽ
( (^ω^)<おー、どしたんだおー?
        僕のいない間に、なんだか楽しそうだおー

そうしているうちに、『運営』との通信を行っていた内藤が戻ってくる。
  (
ξ*゚听)ξ<なっ、なんでもないわよ! こっちの話! ね? シルク
∧ ∧
(*^ー^)<はい、こっちのはなし、です

おー? と、内藤は不思議そうに首を傾げた。
 (
ξ゚听)ξ<あ、そうそう、それで? どーだったの、『運営』への報告
 /⌒ヽ
( (^ω^)<おー、そのことなんだけど、
        『運営』サイドもシルクちゃんのことに興味を持ったみたいで、
        シルクちゃん、悪いけど僕たちといっしょに『運営』まで来てくれないかおー?

内藤の言葉に、シルクは目を輝かせて、答えた。
∧ ∧
(*゚ー゚)<うんえい? よくわからないけど、まだブーンさんたちといっしょにいられるの?
 /⌒ヽ
( (^ω^)<おっお、それはもちろん。保障しますおー
∧ ∧
(*^ー^)<じゃ、いきます! わたしのきおくについても、なにかわかるかも、ですし
  (
ξ*-听)ξ<ふ、ふん。ついてくるのはいいけど、足手まといになるんじゃないわよ、シルク
∧ ∧
(*^ー^)<はい!

75 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 05:07:48
にこやかに笑いながら話している女性陣を見ながら、内藤は考えていた。
 /⌒ヽ
( (^ω^)(もし……もし『あの計画』が水面下で動いているのだとすれば、
        『運営』側もこちらの味方だとは言いきれない)
 /⌒ヽ
( (^ω^)(そのときは、僕は全力でこの娘を守るお。
        『あの計画』に対しての私怨もあるけど……でも、それだけじゃなくて)
∧ ∧
(*^ー^)
 /⌒ヽ
( (-ω-)(この笑顔を、絶やしたくはないから)

――
―――
――――

y==-('∀`)<ふひひひ、こいつぁすげえな

薄暗い部屋の中、緑色の画面をドクドルフと貞子は眺めていた。

川д川<『鮫島事件』……ですか。単なる都市伝説だと思ってましたけど、
     まさか実際にあったなんて……

y==-('∀`)<『シベリアの猿回し』内藤ホライゾン、か。
       なるほどな、オレも名前くらいは聞いたことあるぜ

画面を見ながら、ドクドルフは笑う。
その口元に、凶暴さと凶悪さをむき出しにして、
まるで、獲物を見つけた肉食獣のような目をして、
笑う。

y==-('∀`)<ふひひひひひ!!
       こりゃあ、しばらくあいつらに"粘着"してみるのも面白れえかもなあ?

川д川<"粘着"ですか? めずらしいですね、ドッくんが一人のコテに執着するなんて

y==-('∀`)<まあな、これも暇潰しさ……それに、『ゆりかご計画』ってのも気になるし、な

76 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 05:31:49

―――それぞれの思惑は交錯し、新たな『未来』へと繋がっていく。
∧ ∧
(*゚ー゚)<そういえば、『うんえい』ってどうやっていくんですか?

―――しかし、『今』を生きる彼らは、もちろんそんなことを知る由もない。
 /⌒ヽ
( (^ω^)<今日のモリタポ使い終っちゃったから、
        とりあえず今日は休んで、明日『P2』が使えるようになったら出発だおー

―――これから彼らはどう生き、どこを歩き、何を見、知ることになるのだろう?
 (
ξ-听)ξ<とりあえずは、『ラウンジ』を経由することになると思うわ。
      今日のうちにしっかり休んどきなさいよね

―――それは誰にも分からないが、とりあえずここで、この物語は幕を閉じる。

川*ー川<うっふふー

y==-('∀`)<ふひひひひ……

―――幕を下ろしてしまう前に、ひとつ、言えることがあるのだとすれば、
――――それは、彼らには我々の知ることのできない『未来』が確実に待っているのだということ。

―――ただ、それだけである。

77 名前: ◆YaInxlGFtw:2011/12/30(金) 05:32:26





     ξ゚听)ξ名前の横に★がつくお仕事です!(^ω^) )
     
              おしまい


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