- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 19:46:57.78 ID:V3JZNmmmO
( ^ω^)「ハア、猫娘」
( ・∀・)「エエ、エエ。恐ろしいことで」
モララーという痩せっぽちの青年は、ぴしゃりと頭を叩き、
その薄い唇の間から細長い息を吐き出した。
溜め息だろうか。
私は絵筆を置くと、縁側にいる彼の隣へ移動した。
秋風が頬を擽り、私の着物の襟元をなぞる。
( ・∀・)「今日は、もう、絵を描かないのですか」
( ^ω^)「君が面白そうな話題を出すから」
( ・∀・)「ややっ。なら、話さなければ良かった。
先生はいつもそうだ。何か理由を見付けると、すぐに仕事を放っぽりだす」
良くない癖ですよとモララーが言う。
やかましい男だ。
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 19:48:14.93 ID:V3JZNmmmO
( ^ω^)「いいから、続きを話したまえお」
( ・∀・)「話したら仕事に戻ってくれますかね」
( ^ω^)「考えようじゃないか」
( ・∀・)「ああ、コリャ今日は期待出来そうにありませんな」
肩を竦め、彼は話し始めた。
この男は一つのことを話すのに、彼方へ此方へとふらふら寄り道をする。
たとえば野良犬に追われた体験を説明するならば、まず朝起きたところから始まり、
やれ朝餉の献立が気に食わないだのやれ便所の紙が切れただのと、無駄な情報をふんだんに盛り込むのだ。
故に、私ほど暇ではない諸君のため、不肖内藤ホライゾンが彼の話を要約しておこう。
何とも奇妙な話である。
私が住むこの家の裏手には、ちょっとした山がある。
どうやらそこに物の怪が現れるのだという。
物の怪というと、私は河童やら唐傘お化けやらを思い浮かべるのだが、
山に現れるのは所謂――猫娘だそうだ。
かの漫画に出てくるような可愛らしいものではなく、
もっと化け物らしい不気味な姿をしているらしいが。
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 19:49:56.82 ID:V3JZNmmmO
( ・∀・)「お隣の伊藤さんも見たと言っていましたよ。
干していた魚を盗られたとか何とか。
民家に平気で近付いてくるんですよ。恐ろしいですねェ。先生もお気を付けください」
( ・∀・)「そうだ、干物と言えばですね、先日、鯵なんぞを頂いたのですが――」
また脱線した。
鯵の小骨を取り除くのに苦労したと一言で済む話を、どうして何分間も話し続けられるのだろう。
最近、聞き流して良い箇所の見分けがつくようになった。
よく通る声を意識の外に置きながら、私は、隣人が伊藤という名であることについて考えていた。
近所の住人などに、これといって興味を持てない。名などすぐに忘れてしまう。
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 19:51:42.35 ID:V3JZNmmmO
( ・∀・)「――だもんでね、猫娘も魚の骨に泣いたりするのかなと気になりましたよ。
ハハ、妖怪がちまちま丹念に骨ェ取ってたら笑っちまいますね」
( ^ω^)「それは結構だがね。君、そろそろ時間じゃないかお」
うんざりしながら教えてやると、モララーは
エッ、と頓狂な声をあげ、腕時計を見下ろした。
午後五時にもなろうという頃合いだ。
(;・∀・)「や、や。今日も碌に取材出来ませんでしたな」
( ^ω^)「僕を責めるなお。君の無駄話が多すぎるのが悪いんだから」
(;・∀・)「参ったなァ。また編集長に怒られますよ」
モララーは冷めてしまった煎茶を飲み干すと、
昼に一度シャッターを切ったきり出番がなかったカメラを鞄に突っ込み、腰を上げた。
( ・∀・)「それじゃ、奥様によろしくお伝えください」
( ^ω^)「次はいつだお」
( ・∀・)「明日の昼にでも」
庭から玄関へと歩いていき、モララーは我が家を後にした。
これから日に数本しかないバスに乗って駅まで行き、電車に揺られ、
何駅も向こうにある彼の勤務先へ戻って、そして上司に叱られて家に帰るのだろう。
他人事ながら、考えただけで疲れる。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 19:54:27.28 ID:V3JZNmmmO
私の取材なんてもののために、毎度ご苦労なことだ。
しかも大した結果を得られていないというのだから、彼も不憫な人である。
そもそも、世間の皆々様は私などにそれほど興味を持っているものなのであろうか。
私の描いた絵が、最年少でナントカ賞を受賞しただとかいうニュースが流れて以来、
よく分からない人から評価をいただいたり、よく分からない場所に招待されたりと
無闇矢鱈に持て囃されてきたが。
だからといって私が絵を描いている姿を写真に収めて記事にしたところで、何になる。
そりゃあ私の絵にそれなりの値段が付くようになったのは嬉しいし、
こうして取材やインタビューなどの仕事が来るのも喜ばしい。
ただそれは、収入が増えて生活がしやすくなったことが嬉しいだけであって、
過剰なほど私に関心を示す(ように振る舞っている)マスメディアについては、未だ理解出来ない。
モララーだって、多分そうなのだろう。
価値も分からぬ男が描く絵を撮影し、面白くもない取材をするためだけに
こんな僻地に出向かせられるとは、何ともまあ哀れな。
ξ゚听)ξ「あなた」
( ^ω^)「やあ、ツン」
モララーが使った湯呑みを持ち上げると、割烹着姿の妻がやって来た。
妻が持つ盆に湯呑みを乗せ、私は部屋と縁側を仕切る障子を閉めた。
妻は体が弱い。冷たい風は当てぬに越したことはない。
彼女が病弱でなければ、私は今頃都会に住んでいただろう。
そうしたら、きっと、モララーも行き来が楽だったかもしれない。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 19:56:10.30 ID:V3JZNmmmO
ξ゚听)ξ「モララーさんは帰られたのね」
( ^ω^)「うん」
ξ゚听)ξ「今日はどれほど進んだの?」
( ^ω^)「進んだと言えるかも怪しいお」
下塗りのままの絵を見て、まあ、と妻が声をあげる。
そういった声が、割合好きだ。
ξ゚听)ξ「あなたが絵を仕上げるまで、モララーさんは取材しないといけないんでしょう?」
( ^ω^)「そうらしいね」
ξ゚听)ξ「遠路はるばる来てくれてるのに、全然進まないんじゃモララーさんが可哀想よ」
( ^ω^)「気が乗らなければ無理に描くもんじゃないお」
ξ゚听)ξ「嫌だわ、こんなときばっかり芸術家ぶって」
意地の悪いことを言って、妻は私の額を指先で突いた。
それから盆を抱え直し、踵を返す。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 19:57:09.42 ID:V3JZNmmmO
ξ゚ー゚)ξ「今晩は焼き魚ですからね」
( ^ω^)「ああ、楽しみにしておくお」
焼き魚。
ふと、下らぬことを思いついた。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 19:59:19.42 ID:V3JZNmmmO
−・・・ ・・ −・−− −−・− −−−− −・−・
( ^ω^)「おやおや、まあ」
あくる朝、庭に出た私は縁の下を覗き込み、間の抜けた声を漏らした。
昨晩の内に焼き魚をほぐして縁側に出しておいたのだが、どうやら「猫娘」が掛かったらしい。
恐る恐る、威嚇するように喚いているそいつを引きずり出してみる。
ノハ#゚::ミ「ア゙ア゙ッ、アア、アア!」
体つきから、十歳になるかならないかの幼い娘であることが分かる。
顔の左側に灰色の毛がびっしり生えており、左目の在り処が分からない。
右側は人間の子供と変わらぬ顔立ちをしていた。
金色の右目が、伸びきった前髪の間からちらちら覗く。
熊女とかいう片輪者かと思ったが、どうやら違うようだ。
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:01:34.87 ID:V3JZNmmmO
( ^ω^)「お前が猫娘かお」
ノハ#゚::ミ「ア゙アアア!」
濁った奇声をあげるために大きく開かれた口からは、凶悪な牙が見える。
ぼろぼろ、魚の身が零れ落ちた。
危うく噛まれそうになったので手を離す。
娘は後ろに飛び退き、じりじりと距離をとった。
彼女の頭に、犬猫のような三角形の耳がついている。
これが猫娘か。なるほど、たしかに化け物らしい。
この生き物に対して恐怖を覚えぬわけでもないが、それよりも好奇心が勝った。
私は懐から絵筆を取り出し、娘に向けて左右に振ってみせた。
ノパ::ミ「ア゙……」
( ^ω^)「ほれ」
ノハ*゚::ミ「アー」
きっと中身は人間より猫に近いのだろう。
私の振る筆を目で追い、四つん這いのまま近付いてくると、ついには筆先を手で構い始めた。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:03:17.97 ID:V3JZNmmmO
ノハ*゚::ミ「ンアー」
( ^ω^)「ハハハ、何だお、可愛いじゃないかお」
ノハ*゚::ミ「ンー。ンー」
じゃれている間に娘の全身を観察する。
裸だ。体の所々に毛が生え、また、所々は肌を晒している。不規則な生え方が気持ち悪い。
一方で、手足は付け根から指まで毛に覆われていた。
指先には鋭く長い爪。
尻の辺りから伸びる長い毛の固まりは、尻尾であろうか。
揺れる尻尾に手を伸ばしかけた瞬間、絹を裂くような叫び声が耳に突き刺さった。
娘が跳ねる。私と娘は、同時に縁側の方を見た。
ξ;゚听)ξ「な、何なの、その子……」
妻が、がたがた震えながら娘を指差していた。
これはどうしたものか。
唸りだした娘の背中を撫で、私は、顎をしゃくった。
( ^ω^)「ツン、魚か何か残ってないかお」
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:05:52.22 ID:V3JZNmmmO
ξ;゚听)ξ「猫娘だなんて……」
( ^ω^)「妖怪とは居るものなのだね」
皿の上の魚に、必死に齧りつく猫娘。
私の後ろに隠れた妻が、顔だけを横から出して娘の様子を窺っている。
半分ほど食べたところで娘は顔を上げた。
ノハ*゚::ミ「ンー」
ξ;゚听)ξ「キャッ! 来た、来たわよあなた」
そして、先のように四つん這いでこちらに寄ってきた。
妻がキャアキャアと喚き、私の背中を叩く。
娘は私の足に首や頬を擦りつけた。
まさに猫が甘えるような仕草で、思わず笑みが漏れる。
( ^ω^)「本当に猫だお」
ξ;゚听)ξ「でも、お、おばけなんでしょう」
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:07:09.68 ID:V3JZNmmmO
私は床に膝をついて、娘の頭を撫でてみた。
硬い髪に指を通す。じゃりじゃりと砂の感触がした。
( ^ω^)「後で風呂に入れてやるかお」
言って振り返ると、口を開け放った妻と目が合う。
きっと彼女は夫の奇行に驚き呆れているのだ。
私だって、自身の行動がおかしいことは分かっている。
妖怪を前にしておきながら、私の行動はまるで野良猫を拾ったかのようなそれである。
しかし得も言われぬ愛嬌をこの娘に感じてしまったのだから、仕方あるまい。
( ^ω^)「もういらないのかお?」
ノパ::ミ「アーアー」
皿を引き寄せる。娘は私の掌を一舐めすると、再び魚に取りかかった。
かと思うと、顔を顰め――右半分でしか確認出来ぬのだが――、魚から口を離す。
しばらく口をもごもごと動かし、それから、何かを吐き出した。
白いものが皿にぶつかる。どうやら魚の骨らしかった。
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:08:07.25 ID:V3JZNmmmO
ノハ;::ミ「アー」
一連の行動の意味を理解して、私は吹き出した。
手の甲で頬を撫でてやる。
( ^ω^)「ツン、箸を貸してくれお。骨を取るから」
ξ;゚听)ξ「……もう、好きにしてくださいな」
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:10:25.82 ID:V3JZNmmmO
・−・−− ・−−− −・ ・・ −−・−・ −・
( ・∀・)「先生、何だか変な臭いがしますね」
昼になり訪ねてきたモララーは、縁側に腰掛けるや否や、鼻をひくひく動かしてそう言った。
身を乗り出させ、私に顔を近付ける。
( ・∀・)「先生の臭いじゃないなァ。なんというか、獣臭いです」
( ^ω^)「野良猫を拾ったんだお」
( ・∀・)「ほう、猫! 先生は、そういう、生き物にゃ情を持たない人だと思ってましたが」
( ^ω^)「君ね」
( ・∀・)「どこにいるんですか? 僕ァ猫が好きなんですよ、是非見せていただきたい」
( ^ω^)「風呂に入れたら眠ってしまったお」
何だ、といかにも興醒めした様子で彼は退いた。
カメラを弄くり、私にレンズを向ける。
腕組みをして彼を睨んでやると、モララーは肩を竦め、首を振った。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:12:49.28 ID:V3JZNmmmO
( ・∀・)「せめて、何か描いてるポーズだけでもしちゃくれませんか」
( ^ω^)「モララー君、絵が完成したら呼ぶって方法じゃ駄目なのかお。
君だっていつも大変だろうし」
( ・∀・)「いえいえ、いいんですよ。途中経過の写真も欲しいですし、
そりゃ、行き来は面倒だけれども、何だ彼だ言って先生との話は楽しいのでね」
( ^ω^)「そうかお」
( ・∀・)「それに、ここら辺は静かで綺麗で、心地がよいですから」
と言って、彼は庭に一本立っている樹を見遣った。
紅葉がひらひら舞い落ちる。
( ・∀・)「初めて来たときより、随分と葉が減りましたね」
( ^ω^)「そうかもしれないね」
( ・∀・)「いくら心地よいとは言っても、
降ってくるものが紅葉から雪に変わる前には完成させていただきたいものです」
襖の向こうで、笑い声が聞こえた。おや、とモララーが半身を捻る。
むっとしながらも私は襖に眼差しを送り、口を開いた。
( ^ω^)「何だお、ツン」
襖が滑って、盆を抱えた妻が現れる。
盆には湯呑みと皿が二つずつ乗っていた。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:14:33.90 ID:V3JZNmmmO
ξ゚听)ξ「いえね、お茶を持ってきたら、あなたが嫌味を言われていたものだから」
( ・∀・)「や、や、これはこれは奥様。今日もお美しい。四十を前にしているとは思えません」
ξ*゚听)ξ「やだわ、モララーさんったら」
私の隣に腰を下ろし、妻が湯呑みと皿を縁側に置いた。
次いで、傍にある文机に私の分を移動させる。
( ^ω^)「夫の前で妻を口説くでないよ。ツン、お前も世辞を本気にしない」
( ・∀・)「世辞なんかじゃありませんて。……やあ、ありがとうございます、羊羹ですかな」
ξ゚听)ξ「栗蒸し羊羹ですのよ。モララーさん、栗はお好きでしたかしら」
(*・∀・)「わたくし、羊羹も栗も大好物でございます。いただきますね」
モララーが菓子楊枝で羊羹を切り、口に運ぶ。
殊更ゆっくりと咀嚼して、茶を啜ると、幸せそうに息をついた。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:15:13.90 ID:V3JZNmmmO
(*・∀・)「ああ、美味しい」
文机に肘をついた私は、ふと、昨日のモララーの言葉を思い出した。
( ^ω^)「モララー君」
(*・∀・)「はい?」
( ^ω^)「どうやら猫娘も、魚の骨に泣くようだお」
きょとんとする彼の顔は、予想の範疇内である。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:17:24.77 ID:V3JZNmmmO
モララーが帰った後、私が下塗りを進めていると、奥の部屋から猫娘がやって来た。
私の横に寝転がり、眠そうに目を擦る。
ノハ*-::ミ「ンー」
( ^ω^)「一体どうしたお」
頭を撫でてみたところ、私の膝に頭を乗せ、そのまま寝入ってしまった。
すっかり懐かれたらしい。
見た目は不気味だが、振る舞いは猫そのもの。然程悪い気はしない。
しかしこうなっては絵が描けないので、筆を置き、溜め息をついた。
ξ゚听)ξ「あら」
食器の回収に来た妻が、寝ている娘を見て、口に手を当てた。
そろそろと歩き、静かに湯呑みと皿を拾い上げる。
彼女も十年以上私の妻をやっているせいか、既に順応し始めているようだった。
( ^ω^)「すまないね」
何とはなしに、謝罪の言葉が漏れていた。
妻が怯えるのにも構わず得体の知れぬ化け物を招き入れるなど、何と酷い夫であろう。
けれども、彼女は娘を見下ろして、優しく微笑んだ。
ξ゚ー゚)ξ「いいのよ。慣れたら、なかなか可愛いものだわ」
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:19:11.38 ID:V3JZNmmmO
−・・・ ・・ ・−・・ ・−・
その日から、名もなき猫娘は我が家に居着いた。
客人がいるときには奥の部屋でおとなしくしていろと言えば、しっかりとそうしてくれたし、
外に出たがることがあっても、夜の内に出掛けて朝になる前に帰ってきてくれたので、
人目につくということはなかった。
多少やんちゃなところはあるが、人語を解するのか聞き分けがいい。
ただ、どうにも、妻を苦手としているらしかった。
( ^ω^)「ほれほれ」
ノハ*゚::ミ「アー」
たとえばこうして私が猫娘を猫じゃらしであやしているところに、妻が
ξ*゚听)ξ「私にもやらせて」
と言って仲間に入りたがるとしよう。
私は当然猫じゃらしを妻に渡すのであるが、
すると、娘はたちまちそっぽを向いて、傍を離れていってしまうのだ。
他にも、私の近くでは昼寝をするのに、妻の前では横になるどころか警戒する素振りを見せたり、
私が風呂に入れてやればおとなしいのに妻の場合だと散々暴れたり。
娘から妻に近付くのなど、飯を用意したときくらいなもの。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:20:56.56 ID:V3JZNmmmO
ξ;゚听)ξ「嫌われているのかしら」
( ^ω^)「初めて会ったときに叫んだからじゃないかお」
真剣に悩む妻を見ていると、何だか愛しい気持ちになった。
娘の気を引くためにあれやこれやと試行錯誤する姿が可笑しくて。
モララーの真似ではないが、四十歳を目前に控えているにしては妙に可愛らしい人だと思う。
娘に服を着せようとしては逃げられ、玩具で遊ばせようとしては玩具だけを奪われ。
落ち込む妻を、私が慰めてやる。
そういうときばかりは奴も気配を読んで別の部屋に篭るものだから、それもまた可笑しい。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:22:03.96 ID:V3JZNmmmO
( ・∀・)「こいつァ何の絵です」
( ^ω^)「君が以前言っていた猫娘の――想像図だお」
それまで描きかけていた絵を捨て、私は娘がモデルの絵を描き始めた。
何度見ても薄気味悪く、なのに可愛げのあるあの姿を、無性に描き写したくなったのだ。
不思議なもので、彼女を題材にした途端、するすると作業は進んでいった。
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:24:13.35 ID:V3JZNmmmO
・−・・・ ・・−・・ −−−− ・・−−
岩絵の具を指で溶き、筆につけ、和紙へ置く。
幾度か筆先を滑らせ、絵の具の入った皿と和紙を往復し、そして。
絵が完成した。
庭の樹には、未だ葉が残っていた。
暗い色調の猫娘が紙の中からこちらを睨んでいる。
私は縁側のモララーに絵を見せた。モララーがまじまじと眺め、拍手する。
( ・∀・)「お見事です。今までの先生の作風とは違いますね。
けれど僕は、この作品が一番好きかもしれない」
( ^ω^)「調子のいいことを」
( ・∀・)「何を仰る、本心ですよ。先生が描く美しい風景も好きでしたが、
いや、まさか、こんな絵も描けるとは思いませんでした。
まるで本当に存在しているみたいだ」
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:25:17.35 ID:V3JZNmmmO
いかにもおどろおどろしい――と付け足し、彼はしばらく絵に見入っていた。
はっとすると、急いでカメラを構え、私と絵を何度も撮っていく。
いくつかの質問に答え、「取材」は終了した。
( ・∀・)「ありがとうございました。記事は、出来次第こちらに送らせてもらいます」
( ^ω^)「妙なことを書くんじゃないお」
( ・∀・)「さァて、どうでしょうね」
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:27:57.76 ID:V3JZNmmmO
ノハ*゚::ミ「アー」
その日の夜、酒を飲んでいると、矢鱈と娘がまとわりついてきた。
興味深そうに絵を覗き、匂いを嗅いで首を傾げる。
私を見上げてきたので、特に意味はないが、頷いておいた。
( ^ω^)「お前だお」
ノハ*゚::ミ「ンー?」
( ^ω^)「そらそら」
ノハ*-::ミ「ンーンー」
首の辺りを擽ってやる。
娘は目を細め、ごろごろと喉を鳴らした。
見れば見るほど化け物だ。猫でも人間でもない化け物。けれど、いやに心引かれる。
彼女の親はいないのだろうか。いるとしたら親も化け物なのか。
いつ生まれたのだろう。どうやって暮らしてきたのだ。果たして、ここにいていいのか。
疑問は尽きぬが、今こうして徒に戯れることの気楽さに、ただ甘えた。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:29:14.38 ID:V3JZNmmmO
−−・−− −・− −−− ・−・
ξ )ξ
( ^ω^)
妻が亡くなった。
庭に雪化粧が施される季節だった。
冬の始め頃から体調が芳しくなかったが、毎年のことであったため、布団に寝かせて
家事はほとんど私が行っていた。
ごめんなさいね。調子が戻ったら、また私がやりますから。
弱々しい声で妻が言い、気にするなと返したのを覚えている。
てっきり、いつものように、すぐ治ると思っていたのだ。
妻が入院する前の一週間、猫娘は常に妻に寄り添っていた。
彼女は死期を悟っていたのかもしれない。
傍にいてくれるの、と嬉しそうに笑う妻の顔が今も脳裏に浮かぶ。
妻の死は思いの外、多大なショックを私にもたらした。
葬儀の間も、終わった後も、二週間経ってからも、ずっとぼんやりしたまま頭が碌に働かなかった。
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:31:25.18 ID:V3JZNmmmO
愛していたのだ。
他に言葉が見付からぬほど、私は妻を想い、慕っていた。
あんなにも見た目が美しくてあんなにも内面が可愛らしい女性は、他にいない。
彼女は私の心の大部分を持って、遠いところに行ってしまった。
ノパ::ミ「アー……」
私を慰めているつもりなのか、娘は生前の妻にしていたように、私の傍にいてくれた。
しかし私には娘に構ってやれるほどの余裕はなく、日がな一日妻の絵を描いてばかりいた。
何枚描こうと、本物の妻に会えない。
私の中にいる妻だけでは、彼女そのものを表現することが出来ない。
だから世間の評判など当てにならないのだ。何が天才だ。愛しいひと一人描けぬくせに。
日に日に、抜け殻だった心に苛立ちが詰め込まれていく。
その怒りは己の安定を求めて粘土のように様々に形を変え、段々と取り返しがつかなくなり、
醜く歪みきったまま固定された。
そこに新たな怒りが投げ込まれ、絡め取られて一層歪む。
それはたとえば、狂気と言われるものなのだろう。
私はおかしくなっていた。分かっている。おかしかった。
狂っていたのだ。
溢れ出た狂気が向かう先は、「彼女」しかいなかった。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:34:41.22 ID:V3JZNmmmO
ノパ::ミ「ンー……」
ある夜、冷えた布団に潜り込むと、猫娘が擦り寄ってきた。
いつものことだ。なのに、狂った私には、もっと別の、淫猥な行為にしか思えなかった。
ああ、この先は、口にしたくもない。
だけれども諸君には私の仕出かした、おぞましい過ちを知ってもらわねばならない。
でなければ私が救われぬ。
私は娘の毛むくじゃらの腕を引いて、布団の中で組み敷いた。
生臭い口に唇を寄せ、すぐに顔を離す。
きょとんとする娘の顔に煽られ、足の先から腰へ熱が染み渡った。
( ^ω^)「お前は僕が好きなのだね」
ノパ::ミ「アー?」
( ^ω^)「だからツンに懐かなかったんだお。化け物のくせに、一丁前に嫉妬などして」
私の思考は当然ながら狂っており、何も彼もを捩じ曲がった解釈でもって消化していた。
様子がおかしいのを察したか、娘は逃れようともがく。
その体を引っくり返し、私は彼女を押さえ込んだ。
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:37:30.16 ID:V3JZNmmmO
( ^ω^)「愛してやろうじゃないか。
嬉しいだろう。だって逃げないんだから。ねえ。
お前なら僕を引き裂いて逃げることだって出来るだろうに、そうしないんだから」
妖怪といえども子供であるということを忘れ――あるいは無視して――私は囁いた。
恐ろしい話だ。私は本当にそう思い込んでいたのである。
そうなると目の前の娘が、女が、ひどく淫らな生き物に見えた。
堪らなくなって、満足に愛撫もせぬまま、己の欲望を突き立てる。
女の悲鳴ときたら、凄まじいものであった。
隣家とは距離があるといっても、さすがに叫び声ともなれば聞こえてしまう。
私は彼女の頭を鷲掴みにし、枕に顔を押しつけさせた。
何、化け物なのだから、ちょっとやそっとでは死にはしない。
それよりも、気味の悪い人外を犯していることへの興奮が私の頭を痺れさせていた。
嫌悪と背徳と征服欲と、他にもたくさんの感情がごた混ぜになって、
ぞくぞくと背中を駆け抜けては、腰に溜まっていく。
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:40:26.36 ID:V3JZNmmmO
(;* ω )「愛しているお、愛しているんだお、だからいいじゃないか、そうだろう」
斑に毛が生えた背中を見つめながら、弾む息の合間に言葉を落とした。
きっと彼女には聞こえていなかったし、聞こえていても理解出来なかったろう。
にも関わらず、私は自分の考えが正しいと信じて疑わなかった。
彼女は私を愛しているのだから、私も愛していると言ってやれば喜ぶ筈だと。
それで全てが許されるのだと。
狂気によるものなのか、それとも、僅かに残った正気が作り上げた逃避だったのか。
今となっては、もはや、分からないことなのだが。
ノハ ::ミ
事が終わり、娘が失神しているのを確認すると、私はすぐに画材を用意した。
どうさを和紙に引く時間も惜しい。
下書き用の紙に鉛筆で線を引き、そこに直接着色する。
先程まで娘がどのような顔をしていたのか想像し、それを描いた。
痛みに泣いていただろう。だが喜びに笑っていたかもしれない。
笑顔で涙を流し、今にも私に愛を告げそうな、そんな顔。
十分足らずで出来上がった絵を掲げ、私は悦に入った。
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:43:36.77 ID:V3JZNmmmO
それから毎日のように私は娘を犯した。
ほら、やはり逃げないではないか。
ほら、やはり喜んでいたのではないか。
当時はそう信じていたのだが、恐らく、彼女は見切りをつけていたのだろう。
じわじわと――何か、呪いとでもいうのか。
そういったものをかけながら、終わりを待っていたのだ。彼女の終わりと、私の終わりを。
そんなことも知らないで、私の行いは酷くなっていくばかりだった。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:46:15.94 ID:V3JZNmmmO
ノハ;::ミ「ア゙アー! ア゙ー!」
この日、女の性器は、私が絵の具を塗りたくったおかげで不気味な色に染まっていた。
人体に害のあるものも混じっていたように思うが、相手が化け物なのに何を気にすることがあろうか。
だが私は人間なので、興奮に形を変えているものを下着に収めたまま、手だけで娘を凌辱していた。
(;* ω )「ああ、ああ、汚いね、醜いね。
お前は化け物なのだから、こんな色であってもおかしくないお。
人間のように、いやらしく赤い色をさせている方がおかしいのだから」
(;* ω )「なんて醜いんだお。汚い、汚いお、汚い。
こんなに汚いお前を愛してやれるのは僕だけだお」
尻尾を握り、その先端で擽ってみせる。もっと硬さがあれば突っ込んでやるのに、勿体ない。
女は泣き声を激しくさせ、何度も首を振った。
尾を離した私は、今度は筆を取り、柄の部分を彼女の中に入れた。
何本入るか試そうか。楽しそうだ。
行為が終わったら、ここから取り出した筆で絵を描こう。それがいい。
(;* ω )「愛しているお……」
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:49:27.94 ID:V3JZNmmmO
その一週間後。
最後の日が訪れる。
女の泥濘に腰を打ちつけながら、私の興奮は最高潮を迎えていた。
彼女の口に舌を捩じ込み、吸い上げ、離す。たったそれだけの動きが、泣けるほど気持ちいい。
ノハ;::ミ「ア゙、ア……」
(;* ω )「お前は子を作れないのかお? 僕の子を産めないのかお?」
高まりを覚えつつ、私は女の頭についている耳に唇を触れさせた。
荒い息を吹き掛け、声を低めて囁く。
(;* ω )「『あれ』は駄目だったお。体が弱いから、すぐに流れてしまうんだお。
だから、ほら、お前が僕の子を孕んでくれたら、そしたら」
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:51:04.10 ID:V3JZNmmmO
(;* ω )「ツンよりもお前を愛してやれるお」
恐らくこのとき、私は「人間」を捨てた。
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:54:18.24 ID:V3JZNmmmO
翌朝、揺り動かされて目を覚ました。
明るさに顔を顰めながら、ゆっくりと体を起こす。
隣を見た私は、初め、そこにいた人物が誰なのか把握出来なかった。
ノパ听)
小綺麗な少女である。服は着ていない。
金色の瞳と視線が絡み合う。その目には覚えがあった。
あの、猫娘と同じ。
不自然な箇所に毛など生えておらず、耳も普通で、どこからどう見ても人間だった。
何故、どうして、という疑問は欠片も抱かない。
どことなく妻に似た顔だな、とだけ思った。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:56:33.41 ID:V3JZNmmmO
嫌悪感も何もない、純粋な愛しさが沸いてきて、私は彼女に触れようとした。
しかし彼女は小さく笑むと、すっくと立ち上がり、庭へ出ていってしまった。
( ^ω^)「待ってくれお」
後を追う。裸足のまま庭に下りる。さくりと雪を踏む感触が足裏に広がった。
彼女は山に駆けていく。私も続く。
雪の積もる山の中、見失うまいと必死に背中を睨んだ。
走っても走っても追いつけない。
腕を伸ばす。
指の先まで灰色の毛に包まれていた。
徐々に視点が下がる。
二本の足で立っていられなくなって、地に手をついた。
ああ良かった、これなら走りやすい。
彼女に追いついたらどうしようか。
昨晩のように、組み敷いて貫いてやろう。
舌舐めずりをする。ざらりとした。
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:59:55.13 ID:V3JZNmmmO
彼女が猫と人間の狭間の化け物だというのなら、私は、獣そのものなのだろう。
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 21:02:15.42 ID:V3JZNmmmO
・−・・・ −・・・ ・−・ −−・−・ ・・−−
いなくなっちゃったんですよ、と、伊藤という婦人は言った。
( ・∀・)「いなくなった?」
('、`*川「ええ、突然。……雪の上にね、足跡が残ってたんですって。山に向かって。
奥さん亡くなられてから籠りっぱなしだったでしょう。
だから、山に自殺でもしに行ったんじゃないかって、みんな言ってますよ」
一ヶ月ほど前に、モララーの顔馴染みだった画家の妻が亡くなった。
葬式で画家と会った際の、ひどく憔悴した様子は鮮明に思い出せる。
よもや自殺でも考えやしないだろうかと不安を覚えて彼を訪ねにきたのだが、
どうやら一歩遅かったようだ。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 21:05:13.01 ID:V3JZNmmmO
( ・∀・)「先生は見付かったんですか。その、遺体とかで」
('、`*川「いいえ、まだ。
……でもね、私、自殺じゃないと思うのよ」
( ・∀・)「というと?」
('、`*川「化け猫に連れていかれたんじゃないかしら」
また、突拍子もないことを言う人だ。
とはいえ好奇心が刺激されたので、モララーは話の続きをせがんだ。
('、`*川「秋ぐらいに、あなたに猫娘の話をしたでしょう」
( ・∀・)「エエ、しましたね」
('、`*川「あれって所謂化け猫ってやつよ、きっと。
で、猫は祟るって言うじゃない。昔から」
( ・∀・)「じいさんから聞いたことはありますよ」
('、`*川「それでね、内藤さんの家、警察が見に行ったら」
一呼吸あけ、伊藤はわざとらしく声を潜めた。
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 21:09:20.19 ID:V3JZNmmmO
('、`*川「……ぼろぼろの猫の死体が、寝室にあったんですって」
俄には信じられなかった。
三ヶ月かそこらの付き合いしかないが、少なくとも、モララーからすれば
内藤が虐待などをするような人間には思えない。
しかし考え直す。
妻の死に、耐えがたい悲しみを受けたのならば。
それなら、何かに八つ当たりする可能性はなきにしもあらず。
('、`*川「でもねえ」
( ・∀・)「まだ何か?」
('、`*川「内藤さんの部屋、変な絵がいっぱいあったって聞くし、
頭がおかしくなっちゃっただけなのかしら」
( ・∀・)「……変な絵?」
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 21:11:22.62 ID:V3JZNmmmO
('、`*川「内藤さんって綺麗な絵を描く人よね。すごく上手に。
なのに、部屋にあった絵のほとんどが、
何描いてるか分かんないくらいめちゃくちゃだったんですって」
( ・∀・)「めちゃくちゃですか」
('、`*川「幼児がクレヨンで描いた方が、よっぽどましなくらい」
ああ気持ち悪い。そう呟き、伊藤は身震いした。
すっかり恐くなったのか、一方的に話を切り上げて家に引っ込んでいってしまう。
玄関の戸が閉められるのを見届けて、モララーは数メートル先の内藤家に顔を向けた。
最後に見た、彼の作品を思い返す。
猫娘の絵。
素晴らしい絵だった。不可思議な存在を描いた筈なのに、リアリティがあって。
まるで、実際にモデルを前にして描いているかのような。
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 21:13:11.81 ID:V3JZNmmmO
( ・∀・)
( ・∀・)「……まさかねえ」
自嘲し、モララーは踵を返した。
どこからか、猫の鳴き声が聞こえた気がした。
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 21:15:17.90 ID:V3JZNmmmO
−− ・・− ・−・−− ・・ −−−・−
終
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