- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 19:54:20.59 ID:h692dBIK0
- 年の瀬のある民家に、五人の男女が集まっていた。
僕もその中の一人だ。
川 ゚ -゚)「では諸君、持ち寄った食材を出してもらおうか」
僕らが囲むのは四角いこたつの中心の鍋。
( ^ω^)「実家から届いたにんじんだお!」
ξ゚听)ξ「私のはしらたき。ここのメーカーのは特においしいのよ」
('A`)「俺はレタスとまいたけを持ってきた」
川 ゚ -゚)「ふむ……ショボンは?」
(´・ω・`)「僕は……これ」
ξ;゚听)ξ川;゚ -゚)「「「「な、なんと……!」」」」(^ω^;)('A`;)
四人の目の色が変わった。
それもそうだ。
なんせ、僕が持ってきたのは……。
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 19:55:15.14 ID:h692dBIK0
- 川;゚ -゚)「最高級地鶏……だと?」
(´・ω・`)「うん。見ての通り、鶏肉だよ」
(;'A`)「どうしたんだよ……」
(´・ω・`)「いろいろあってね。手に入れるの大変だったよ」
なんていうのはまぁ嘘だ。
本当は商店街の福引きで偶然当てた代物だったりする。
(*^ω^)「み、見てるだけでヨダレが止まらんお」
ξ;゚听)ξ「やだ、汚い!」
川 ゚ -゚)「ティッシュ、いるか?」
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 19:56:32.02 ID:h692dBIK0
- ('A`)「鶏肉か……」
(´・ω・`)「まだ僕も口をつけてないから味の保証はできないけどね」
とにかく今は、少しでも鍋の具材に貢献したことをアピールすることが大事だ。
謙虚に、しかし積極的に。
それが、この戦いで勝利するための術なのだ。
川 ゚ -゚)「ちなみに私が持ってきたのは、きりたんぽと豆腐だ。崩さないように丁寧に扱ってくれ」
クーが全員の食材を鍋に並べた。
川 ゚ -゚)「さあ、楽しい鍋パーティーを始めよう」
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 19:57:26.79 ID:h692dBIK0
(´・ω・`)年越しのようです
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 19:58:20.41 ID:h692dBIK0
- (´・ω・`)「ところで」
('A`)「なんだ?」
(;´・ω・`)「高級食材持ってきたのが僕だけって、おかしくない!?」
僕は激昂した。
それはもうドン引きされそうなくらいの勢いで。
ξ゚听)ξ「何よ。私のしらたきに文句でも?」
(;´・ω・`)「そりゃあるよ! というかそれ、駅前のスーパーの特売品だろ!?」
ξ゚听)ξ「いいじゃない。ここのメーカーのが一番おいしいんだから」
ξ゚ー゚)ξ「『しらたきマイスターツン』の名を忘れたとは言わせないわよ」
(;´・ω・`)「そんなの聞いたことないよ……」
ツンのしたり顔に腹が立つ。
それはもうはらわたが煮えくり返りそうなくらいに……というのはさすがに言い過ぎだけど、この胸のどす黒い感情はどう表現すればいいんだろう。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 19:59:06.92 ID:h692dBIK0
- ( ^ω^)「そんなことより早く食べるお」
('A`)「まだ火が通ってねーよ」
(;´・ω・`)「しかも一番まともな具材持ってきてないの、ブーンだよね!?」
( ^ω^)「母ちゃんと父ちゃんが丹精込めて作ったにんじんに文句でも?」
(´・ω・`)「にんじんそのものじゃなくて、君に文句があるんだよ」
川 ゚ -゚)「確かに、にんじんだけというのは酷いな」
( ^ω^)「おいしいにんじん、プライスレス、だお」
('A`)「プライスレスの使い方おかしくね?」
ξ゚听)ξ「ほっときましょ。その豚には何言ってもムダよ」
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 19:59:48.01 ID:h692dBIK0
- (;^ω^)「ツンさん!?」
ξ゚听)ξ「私、あんたの顔も見たくないの」
( ;ω;)
(´・ω・`)「ツン、そのくらいにしてあげよう」
川 ゚ -゚)「収拾がつかなくなる」
('A`)「だな」
( ;ω;)「僕は放置かお?」
情けない泣き顔を見せるブーンを放置して、僕らは話を進めることにする。
僕がわざわざ高級地鶏を持ってきたのは、他のみんなもいいものを持ってきてくれると思ったからだ。
その期待を裏切られたことだけはよーく覚えておくことにしよう。
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:00:40.41 ID:h692dBIK0
ξ゚听)ξ「ねぇ、席決め直しましょうよ」
('A`)「なんで?」
ξ゚听)ξ「ブーンの隣、暑苦しいのよ」
('A`)「ああ……」
(;^ω^)「ツンとドクオが痩せてるだけだお。僕は決して太ってなんかいないお」
(´・ω・`)「認めてるね」
川 ゚ -゚)「まさか自覚していたとは」
( ^ω^)「君ら、本当に僕のこと友達だと思ってる?」
川 ゚ -゚)「ツン、席はちゃんと決めよう。くじでな」
( ^ω^)「あれ、スルー?」
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:01:26.05 ID:h692dBIK0
- 川 ゚ -゚)「さあ諸君、くじを引きたまえ」
クーは手元のメモ帳を使い素早く、くじを用意した。
(´・ω・`)「!」
そこで僕は、ある重要かつ自分に利することに気付いてしまった。
(´・ω・`)「クー」
川 ゚ -゚)「なんだ、ショボン?」
(´・ω・`)「僕、左利きだろう?」
ξ;゚听)ξ「……!」
ツンは気付いたらしい。
川 ゚ -゚)「それがどうした」
(´・ω・`)「僕が二人用の席の右側に座ったら、二人が苦労することになるよ」
例えばレストランで誰かの右側に座ってしまった時、二人して腕があたって互いに食べにくいというのはありがちだ。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:02:23.73 ID:h692dBIK0
- 川 ゚ -゚)「なるほど……」
('A`)「ショボン、お前……」
僕を卑怯者と言いたければ言えばいい!
もとはと言えば、ろくな食材を持ってくることもせず、僕に本気を出させた君らが悪いのだから。
川 ゚ -゚)「ショボンは四つのくじから引いてもらう、構わないか?」
( ^ω^)「いいお」
('A`)「俺もいいと思う」
ξ゚听)ξ「……仕方ないわね」
(´・ω・`)「ありがとう、みんな」
一度件のくじを抜いてシャッフルし直したものから一枚を引く。
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:03:32.88 ID:h692dBIK0
- 川 ゚ -゚)「どんどん引いてくれ」
ξ゚听)ξ「私一番!」
('A`)「じゃあ俺二番」
( ^ω^)「三番はもらったお!」
川 ゚ -゚)「では私が四番だ。残り物には福があると相場が決まっている」
折り畳まれた紙をみんなで一斉に開く。
その紙には数字が書かれていて、事前に割り当てられた数字に対応した席に座ることになる。
【4】
僕が引き当てたのは四番。
こたつは正方形になっていて、僕らは五人。
運が悪いと二人で一つの辺に座らないといけないが、幸運にも四番は一人用の席だった。
(´・ω・`)「席、着こうか」
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:04:19.25 ID:h692dBIK0
川 ゚ -゚)「……」
( ^ω^)「……」
ξ゚听)ξ「頑張れクー」
('A`)「負けるなクー」
川 ゚ -゚)「同情とかいらない」
見事一番のハズレを引いたのはクーだった。
二人で一つの辺、しかも右隣はブーンだ。
(´・ω・`)「見てるだけで暑苦しい」
ξ゚听)ξ「結局ブーンの隣か……」
( ^ω^)「ツン、そんなに僕が嫌いかお?」
ξ゚听)ξ「別に。ただ太ってる奴が嫌いなだけよ」
( ^ω^)「……泣いていい?」
ブーンの右隣の辺にはツン、さらにその隣が僕の席だ。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:05:16.33 ID:h692dBIK0
- ξ゚听)ξ(ねぇ、ショボン)
席に着いた僕に、ツンが小声で話しかけてきた。
(´・ω・`)(なんだい?)
ξ゚听)ξ(この配置……誰が一番有利か分かる?)
(´・ω・`)(……)
( ^ω^)川 ゚ -゚)
クーとブーンは二人でぴったりとくっついて座らざるをえない。
動きは当然、制限されている。
(´・ω・`)ξ゚听)ξ
一方僕は左隣にツン。
ツンは右利き。
つまり……。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:05:57.18 ID:h692dBIK0
('A`)
(´・ω・`)(ドクオか……)
ξ゚听)ξ(そうよ)
ξ--)ξ(だから、ショボン)
(´・ω・`)(ん?)
ξ゚听)ξ(協定を結びましょう)
(´・ω・`)(……)
たしかに配置だけを見るなら、ここはツンと協力するのもいいかもしれない。
鍋の中身を確認する。
僕の持ってきた鶏肉の位置は……。
(´・ω・`)(……ツン、協力しよう)
愛しい愛しい鶏肉は、
( ^ω^)
食欲魔人の目の前にあったのだ。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:06:58.17 ID:h692dBIK0
川 ゚ -゚)「さて、そろそろ鍋も火が通ってきた頃だが」
川 ゚ -゚)「平等に、私が小皿に取り分けようと思う」
なるほど。
クーはくじ運の悪さを、自分が鍋奉行になることでカバーしようというわけか。
ξ;゚听)ξ「ちょっと待った!!」
川 ゚ -゚)「どうした、ツン?」
ξ゚听)ξ「みんなが同じ具を同じだけ食べたいとは限らないじゃない」
('A`)「そうだな。俺はツンの意見に賛成だ」
( ^ω^)「僕もだお」
ξ゚听)ξ「「!?」」('・ω・`)
ブーンが賛成するとは思わなかった。
だってブーンは動きにくい位置にいるし、量を食べたいならクーに任せる方が賢明なはずだ。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:08:34.12 ID:h692dBIK0
- ξ゚听)ξ「ブーン……あんたも賛成するの?」
( ^ω^)「当たり前だお。僕は肉さえ食べられれば他はいらんお!」
(´・ω・`)「そういうことか……」
なんだ、ブーンは何も考えていないからこそ賛成したわけか。
彼はクーに任せるより自分で取り分ける方が好きな具材を多く食べられると思っている。
甘い、甘すぎる!
以前みんなで集まってチーズフォンデュを食べた時のことを忘れたのか!?
(´・ω・`)「僕もツンの意見に賛成だ。四対一だよ」
川 ゚ -゚)「……分かった」
川 ゚ -゚)「菜箸とお玉は二つずつある。好きに取り分けるといい」
クーの言葉が終わるか終わらないかのうちに、僕らは一斉に菜箸に手を伸ばした。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:09:48.59 ID:h692dBIK0
- ('A`)「まずは俺から」
一番にそれを掴んだのはドクオだった。
よく確認すると、もうひとつの菜箸はクーがちゃっかりキープしている。
ξ゚听)ξ(これは厄介な……)
(´・ω・`)(たぶん大丈夫だと思うけどなぁ)
心配するツンとは対照的に、僕はそれほど危機感を感じていない。
('A`)「まずはしらたき……」
ξ゚听)ξ「私のしらたき……」
('A`)「にんじん……」
( ^ω^)「どんどん取れお」
('A`)「豆腐、きりたんぽ……」
川 ゚ -゚)「お玉も使えよ」
('A`)「レタスにまいたけ……そして肉……」
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:10:46.72 ID:h692dBIK0
- ('A`)「ほれ、ショボン」
ドクオが僕に菜箸を渡した。
隣だからか。
(´・ω・`)「ありがとう」
ξ゚听)ξ「ドクオ」
('A`)「ん?」
ξ゚听)ξ「それで、いいの?」
('A`)「え、ああ……」
川 ゚ -゚)「ツンよ、ドクオは昔から少食だっただろう」
( ^ω^)「よく腹がすかないもんだお」
ξ゚听)ξ「……すっかり忘れてたわ。人の食べる量なんて普段は意識しないもん」
(*^ω^)「ツンのうっかりやさん!」
ξ゚听)ξ「ちょ、近寄らないでよ、豚」
( ;ω;)
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:11:32.71 ID:h692dBIK0
- (´・ω・`)「クーがつがないなら僕がお先にいかせてもらおうか」
川 ゚ -゚)「くっ……ブーンの横幅のせいで右手が動かせん……」
ξ゚听)ξ(ショボン、私のも頼むわよ)
(´・ω・`)(分かってるよ)
この状況で協定などもはやあってないようなものだけど、一応ツンの言うことは聞いてあげる。
まずは自分の分だ。
(;^ω^)「肉……!」
川 ゚ -゚)「内藤、お前のせいだ」
('A`)「あだ名を使わないくらい怒ってるな」
焦るブーンや静かに怒るクーは見なかったことにして、僕は自分の分を確保した。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:13:12.55 ID:h692dBIK0
- (´・ω・`)「ツンは何を食べたいの?」
ξ*゚听)ξ「しらたき!」
ξ*゚听)ξ「ドクオの方にたくさんあるの、出来るだけよそってよ」
(´・ω・`)「了解」
しらたき多め。
あと他の具を少しずつ。
というか、しらたきって争ってまで食べるものではないよね。
ξ゚听)ξ「ありがと」
(´・ω・`)「どういたしまして。あとはブーンとクーだね」
川 ゚ -゚)「今更だが、食べる時以外は席移動してもいいよな」
クーは立ち上がるとドクオの隣で自分の分の確保を始めた。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:14:07.91 ID:h692dBIK0
( ^ω^)「レタスしかない……」
ξ゚听)ξ「嘘おっしゃい。ちゃんと鶏肉も入ってるじゃない」
('A`)「まいたけもにんじんもきりたんぽも豆腐も、ちゃんと入ってるだろ」
(´・ω・`)「だね。じゃあ食べようか」
川 ゚ -゚)「そうだな。激しく食べにくいが」
(;^ω^)「ちょ、恵んでくれたりしないのかお!?」
('A`)「俺の買ってきたちょっとお高めのレタスに文句でも?」
(;^ω^)「ちげーお! レタス以外一口分しかないのはおかしいお!!」
ξ゚听)ξ「あんた……鏡、見たことある?」
(´・ω・`)「そういうことだよ」
( ;ω;)「ちくしょう!」
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:15:02.67 ID:h692dBIK0
('A`)「はー……食った食った」
川 ゚ -゚)「きりたんぽが案外腹にたまったな」
ξ*゚听)ξ「しらたき最高!」
(´・ω・`)「さすが高級地鶏……」
( ^ω^)「僕はまだ腹五分目もいってませんお」
ξ゚听)ξ「ダイエットになって良かったわね、豚」
( ^ω^)「……もう泣かねーお」
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:16:03.44 ID:h692dBIK0
- 川 ゚ -゚)「残った汁は何にする?」
( ^ω^)「雑炊!」
('A`)「俺も」
ξ゚听)ξ「私もよ」
(´・ω・`)「僕もだ」
川 ゚ -゚)「全員一致とは……珍しいこともあるもんだ」
鍋を持ったクーは台所に消えた。
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:17:02.73 ID:h692dBIK0
戻ってきたクーは、鍋の代わりに箱を抱えていた。
川 ゚ -゚)「雑炊は明日にするとして、だ」
川 ゚ー゚)「年越し人生ゲームと洒落込まないか」
(´・ω・`)「人生ゲーム?」
川 ゚ -゚)「ああ。この間の親戚同士の忘年会にビンゴゲームをやって、賞品として貰ったんだ」
( ^ω^)「『楽しい人生ゲームEx/3rd〜地獄の沙汰も金次第〜』……凄まじいタイトルだお」
('A`)「ほんとに嫌なタイトルだな……」
(´・ω・`)「パッケージからしておぞましいよね」
真っ黒の背景に赤い字で書かれたタイトル。
ξ゚听)ξ「どこのホラーよ」
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:18:27.58 ID:h692dBIK0
- 川 ゚ -゚)「私も初めて開けるんだ」
クーは手際良く箱を開けて、中身を取り出した。
ξ゚听)ξ「コマとか結構凝ってるじゃない。この白に赤のドットとか、かわいい」
ξ゚听)ξ
(´・ω・`)「どうしたの?」
ξ;゚听)ξ「よく見たら血だった……」
('A`)「……本当だ」
川 ゚ -゚)「趣味が悪いな」
ツンがドットと勘違いしたのは、血痕の模様だった。
食後にはあまり見たくない。
( ^ω^)「クー、間違いなく売れ残り商品押し付けられたおね」
川 ゚ -゚)「……」
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:19:20.36 ID:h692dBIK0
- ('A`)「ところでさ」
ξ゚听)ξ「何よ?」
('A`)「コマは青が男、ピンクが女……だよな?」
青とピンクのコマにもやっぱり赤い斑点がついている。
子供には絶対にやらせたくないゲームだ。
( ^ω^)「そうだと思うお」
('A`)「なら、その白いコマは何なんだ?」
ξ゚听)ξ「……中性?」
川 ゚ -゚)「れず?」
(´・ω・`)「ほも?」
(;^ω^)「君らがそういうこと言うとシャレにならなさそうだから、やめて!」
川 ゚ -゚)「まあ気にしないことにしよう。血塗れに比べたらたいしたことのない疑問だ」
(´・ω・`)「そうだね」
とにもかくにも、僕らはゲームを始めることにした。
銀行はクーが兼ねることになったが、クーなら不正はしないだろうから安心だ。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:20:44.52 ID:h692dBIK0
( ^ω^)「僕からだお」
ルーレットで順番を決めた結果、一番になったのはブーンだ。
( ^ω^)「そーれ!」
くるくる、ルーレットが回る。
【10】
(*^ω^)「いきなり10かお。これで僕が優勝だお」
('A`)「気が早いだろ」
ブーンが車に乗ったコマを進める。
盤も黒と赤を基調とした、それはおぞましいデザインだ。
見てるだけで気が滅入りそうだというのは、たぶん全員共通の感情だろう。
( ^ω^)
川 ゚ -゚)「どうした?」
ξ゚听)ξ「どれどれ……」
ξ゚听)ξ「腹筋50回で銀行から一万レス。失敗したら罰金二万レス……」
( ^ω^)「……やらなきゃダメ?」
(´・ω・`)「ルールはルールだよね」
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:21:27.38 ID:h692dBIK0
(;^ω^)「7……8……」
ξ゚听)ξ「次は私ね」
【6】
ξ゚听)ξ「微妙な……」
文句を言いながらツンはコマを動かす。
ξ゚听)ξ
川 ゚ -゚)「痴漢で捕まる。罰金一万レス」
ξ;゚听)ξ「なんで、私が!」
(;^ω^)「今時は……痴女もいるらしいし……はぁ……気にすんなお……はぁ」
川 ゚ -゚)「はい二万レス」
('A`)「ブーンはまず息を調えてから喋れよ」
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:22:59.98 ID:h692dBIK0
(´・ω・`)「三番目は僕だ」
【7】
車に乗ったコマを指定のマスまで進める。
(*´・ω・`)「宝くじで当たる。五万レス」
川 ゚ -゚)「つまらんな」
ξ゚听)ξ「人の不幸は蜜の味、人の幸福なんか食えたものじゃないわ」
(;´・ω・`)「やっとまともなマスに止まったらダメ出しなんて、不条理な!」
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:25:23.44 ID:h692dBIK0
('A`)「はいはい。次俺だな」
【5】
コマを五つ進めて、ドクオの動きが止まった。
('A`)
( ^ω^)「痴漢にあう。慰謝料三万レス」
(´・ω・`)「結構良くできてるね」
ξ#゚听)ξ「私はドクオなんかに痴漢しないわよ!」
(;'A`)「俺もツンなんかに痴漢されねーよ」
(;´・ω・`)「いや、そういうことじゃなくて、繋がりのある設定がね」
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:26:15.32 ID:h692dBIK0
川 ゚ -゚)「さて、みんなお待ちかね、私のターンだ。静かにしろ」
川 ゚ -゚)「宝くじ当てたい宝くじ当てたい……」
【1】
川 ゚ -゚)
クーは残念そうな顔をしながら、コマを進めた。
川 ゚ -゚)「父が死んだ。遺産として20万レス貰う」
川*゚ -゚)「よっしゃ!」
ξ゚听)ξ「不謹慎だわ……」
('A`)「全体的に酷いよな」
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:27:28.86 ID:h692dBIK0
川 ゚ -゚)「で、一巡終わったわけだが」
(´・ω・`)「そういえば、普通の人生ゲームって、最初に職業決めるマスがあったりするよね」
ξ゚听)ξ「たしかに……」
( ^ω^)「これ、収入源が一部のマスしかないお」
('A`)「なんという運ゲー……」
(´・ω・`)「いや、普通のも運ゲーだと思うけど」
川 ゚ -゚)「まあとにかく、続けてみようか。まだ夜は長いぞ」
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:29:47.79 ID:h692dBIK0
ξ゚听)ξ「部下に対するセクハラで訴えられる。示談金で五万レス払う」
( ^ω^)「縄跳び100回、引っ掛からずに飛べたら賞金三万レス、失敗したら参加料三千レス」
('A`)「旅行先でスリにあう。六万レスを失う」
川 ゚ -゚)「カジノで一発当てた。30万レスを手に入れる」
(´・ω・`)「道に落ちていた100万レスを交番に届けた。後日お礼で10万レス貰う」
川 ゚ -゚)「はっはっはっ!」
川 ゚ -゚)「紙幣でうちわを作れるぞ!」
ξ゚听)ξ「借金まみれ……無一文……」
(;^ω^)「ぜー……はー……。疲れた……お……」
(; ω )「レタスが、逆流しそう……」
ξ;゚听)ξ「ちょっと、トイレ行ってきなさいよ」
('A`)「俺、犯罪に巻き込まれすぎだろ」
(´・ω・`)「僕だけ地味な人生だ」
そんなこんなで人生ゲームは進み、そして。
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:32:04.45 ID:h692dBIK0
( ^ω^)「あと少しだお」
('A`)「これ、人生ゲームじゃないだろ。結婚マスすらないのかよ」
川 ゚ -゚)「進み具合だけなら接戦だな」
ξ゚听)ξ「……」
(´・ω・`)「まあ、これ以上酷い内容は出てこないよ。……たぶん」
ブーンがルーレットを回した。
【9】
( ^ω^)「あと一歩だお」
( ^ω^)「えーと……交通事故で意識不明に。ルーレットで1が出れば意識が戻るが、それ以外は死亡」
( ^ω^)「死亡した場合はスタートに戻る……」
( ^ω^)「……」
ブーンは再びルーレットを回す。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:33:06.71 ID:h692dBIK0
【2】
( ^ω^)
(#゜ω゜)「あー! やってらんねー、やってらんねーお!!」
(;´・ω・`)「ブーン、落ち着いて」
(#^ω^)「さんざん人に体力使わせてこの仕打ち、あんまりだお!」
ξ゚听)ξ「でもこれで、私にも勝機が見えたわ」
('A`)「だが失敗したら本当の即死だ」
川 ゚ -゚)「大丈夫、私ならいける。不幸は鍋の席決めでブーンの隣になった時に使い果たしたさ」
(´・ω・`)「その理屈でいくとドクオが危ないね」
('A`)「やめろ。不吉なこと言うな」
ξ゚听)ξ「……」
二番手のツンが無言でルーレットに手を伸ばした。
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:35:03.26 ID:h692dBIK0
いつの間にか、夜は明けていた。
川 - )「ふふ……勝った……勝ったぞ!」
川*゚ -゚)「私が一番だ!!」
クーのテンションはおかしかった。
('A`)「まさかあそこでクーが大事業に成功するとはなぁ……」
川 ゚ -゚)「今なら神を信じるよ」
ξ゚听)ξ「クーはまぁ……一回しか死ななかったもんね」
(´・ω・`)「僕らは五回は死んだよね」
( ^ω^)「筋肉痛になったお……」
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:37:35.61 ID:h692dBIK0
- 川 ゚ -゚)「徹夜したらやけに気分が乗っているんだが、このまま初詣にいかないか?」
ξ゚听)ξ「いいわね。私は賛成」
( ^ω^)「僕はもう動きたくないお」
ξ゚听)ξ「ドクオとショボンは?」
('A`)「神社なら近いし行く」
(´・ω・`)「みんなが行くなら行こうかな」
ξ゚听)ξ「よし、決まり」
ξ゚听)ξ「ブーン、留守番頼んだわよ」
(;^ω^)「えぇ!?」
川 ゚ -゚)「なんだ?」
('A`)「もしかして、来るのか?」
(;^ω^)「い、行く行く、行くお!」
(*^ω^)「ちゃんとお参りして今年こそは彼女を作るんだお!」
ξ゚听)ξ「……できるといいわね」
川 ゚ -゚)「なら五人で行くか」
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:38:37.93 ID:h692dBIK0
- 川 ゚ -゚)「ちゃんとこたつ消せよ。この前つけっぱなしだったせいで、電気代が大変なことになっていたからな」
(´・ω・`)「はい、ちゃんと消したよ」
('A`)「財布も持ったぞ」
ξ゚听)ξ「あ、ドクオのおかげで忘れずにすんだわ」
最低限の荷物を持って、僕らはクーの家を出た。
ξ゚听)ξ「……雪」
(´・ω・`)「ほんとだ……」
外に出ると、雪が降っていた。
地面には積もっていないけど、駐車場の車のボンネットには薄らと積もっている。
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:39:53.04 ID:h692dBIK0
- ('A`)「どうりで寒いわけだ」
(*^ω^)「テンション上がるお」
川 ゚ -゚)「たぶん昼頃には止んでしまうだろうなぁ」
(´・ω・`)「……積もったら、雪合戦とかしたいな」
ξ゚听)ξ「あ、それ採用」
('A`)「えー……この雪でできるのか?」
川 ゚ -゚)「今は無理だな。だから積もったら、だ」
( ^ω^)「ちょいと皆さん、僕が筋肉痛なの忘れてません?」
ξ゚听)ξ「ブーンなんか私がぼこぼこにしてやるわよ」
( ^ω^)「返事になってないお」
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:40:48.65 ID:h692dBIK0
(´・ω・`)「来年も、みんなで集まれるといいね」
川 ゚ -゚)「どうした、急に」
(´・ω・`)「雪を見てるとなんとなく感傷的になっちゃうんだよね」
('A`)「そうか? 俺は外出が億劫になるだけだけど」
ξ゚听)ξ「私はテンション上がるわ。雪合戦したくなる」
( ^ω^)「僕も僕も」
ξ゚听)ξ「……」
神社までは徒歩十分。
みんなで歩けば寒さは気にならない。
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:41:32.15 ID:h692dBIK0
- (´・ω・`)「今年の願い事、決めた?」
(*^ω^)「「彼女が欲しい!!」」('A`*)
川 ゚ -゚)「息ぴったりだな」
川 ゚ -゚)「私は今年一年健康に過ごせますように、だ」
ξ゚听)ξ「私は……」
ξ*゚听)ξ「……やっぱ言わない!」
( ^ω^)「そう言われると気になるお」
ξ゚听)ξ「豚なんかに教えないんだからね!」
川 ゚ -゚)「素直じゃないなぁ」
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:42:20.80 ID:h692dBIK0
- ('A`)「ショボンはどうなんだ?」
(´・ω・`)「僕は少し奮発して、ずっとみんなと仲良くできますように」
川 ゚ -゚)「願わなくても叶うだろ」
(´・ω・`)「……そうだね。で、もう一つ」
(´・ω・`)「雪合戦で勝てますように」
ξ゚听)ξ「あ、ずるい! 私も十円追加でお願いしなきゃ」
('A`)「じゃあ俺は五十円追加」
( ^ω^)「じゃあ百円」
川 ゚ -゚)「なら私は100万レスだ」
('A`)「勝てたのがよっぽど嬉しいんだな」
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:44:04.43 ID:h692dBIK0
(´・ω・`)
本当は、もう一つ願い事がある。
それは……。
(´-ω-`)(去年最後の隠し事がバレませんように)
なんてったって、バレたらせっかく売った恩がムダになってしまうから。
川 ゚ -゚)「ショボン、何か言ったか」
(´・ω・`)「なんにも言ってないよ」
少し前を歩くみんなに追い付くため、僕は歩く速度を上げた。
終わり
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