川д川山村貞子を望むようです

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:37:34.02 ID:vbdUvQZR0

川-д川

川゚д川

川д川(・・・真っ白)

川д川

川д川(真っ白だ)

川д川





川д川

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:39:51.44 ID:vbdUvQZR0

視界に飛び込んで来たのは、眩い程の光と、見た事の無い白い天井。
その純白に感化される様に、ここに来る直前の記憶もまた、まっさらな状態だった。
意識がぼんやりとしてるせいか、脳は取り乱すという選択肢を与えない。

ここはどこ?分からない。
私は誰?私は山村貞子。
求めるべきは、自分が何故ここにいるかという事。

川д川「だ、え・・・」

喉の奥から漏れた掠れ声に思わず唇を強ばらせる。
長いこと話してなかったせいか、上手く声が出せない。

川д川(ここはどこ)

身を捻って起こそうとした上半身は、再び白いシーツに吸い込まれる。
見ると、数本の大きなベルトが体をベッドに拘束していた。

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:41:54.12 ID:vbdUvQZR0

そして私は理解した。

川д川

川д川(あ)

川д川(私、失敗しちゃったんだ)

山村貞子。
ヴィップ街・ブーン屋の用心棒。

ここ、ニチャン国にあるヴィップ街とラウンジ街。
ふたつの街は私達が生まれるずっと前から敵対し合っている。

ヴィップ街のハイン様と、ラウンジ街のモララー様。
街の頂点に君臨する絶対的な存在。
私がハイン様から課せられた使命はブーン屋の人達を守る事。

ブーン屋とは「俺(ハイン)様の決定は絶対!」がモットーのなんでも屋だ。
その破天荒さ故に、ラウンジ街とぶつかる事は多々ある。

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:43:59.11 ID:vbdUvQZR0

川д川(あーあ)

川д川(またラウンジ街に捕まっちゃったんだ)

川д川(私ってほんとドジだなぁ。ダメだなぁ)

川д川

川д川(・・・痛い)

逃亡を阻止する為か、両足を折られているらしい、
少し揺するだけで下半身に鋭い痛みが走った。
逃げてる時についたであろう擦り傷もあちらこちらについてる。

痛みが先程のマイナス思考を肯定している様だった。
お前は本当にドジだと、ダメだと、そう言っている。
それでも肝心の内容が入った記憶の引き出しは閉じたまま。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:46:25.49 ID:vbdUvQZR0

川д川(ここに来る前の事なんにも覚えてない)

川д川(ブーン屋の人達は、みんなは無事かな)

川д川(捕まったのは私だけ?)

川д川(そうであって欲し・・・あ、まさかまたダイオードの囮にされた?)

川д川

川д川(・・・有り得て嫌だ)

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:48:38.46 ID:vbdUvQZR0

ご丁寧にも両足は綺麗に治療されて、洋服は清潔な物に変えられている。
このまま売り飛ばされて奴隷にでもされてしまうんだろうか。

そんな物騒なIFの未来が浮かんでも
自我を保っていられるのは、信じられる仲間がいるからだ。
私と同じブーン屋を守る使命を与えられた者達。

パートナーのダイオード、オサム、エクスト、
血の繋がりより強い絆で結ばれた私の大切な家族。

そして、

川д川(もし)

川д川(もしみんながハイン様に止められて動けなくても)

川-д川(きっと・・・)

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:50:33.96 ID:vbdUvQZR0

川д川(真っ白)

私はただ呼吸をして、ただ瞬きをしていた。
心臓は勝手に鼓動を打っていた。

もう何十時間もこうして無機質な白を眺め続けている気がする。
この部屋には時間を示す物が何もない。
あるのは見た事もない不気味な機械と、沈黙を守ったままの扉。

川д川(誰か)

川д川(誰か・・・)

少しずつ胸に注がれ続けた不安がとうとう芽を出し始めた。
こうしてる今も足の痛みは和らぐ事なく存在を主張している。

それは自身の治癒能力が上手く働いていない証拠だった。
圧倒的な回復力を持ったヴィップの住人ならば、
この程度の擦り傷なら完治、骨折も痛みが和らぐはずだ。

まさか能力を消す薬でも打たれたのか。
自分はこれからどうなってしまうのか。
一度芽を出した不安は解消される所か、心の奥に深く深く食い込んでいく。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:52:10.47 ID:vbdUvQZR0

悔しいけれど。
心というものは他人だけではなく、自分のもコントロール出来ないらしい。
頭の中で私に手を差し伸べているのは、
大切な仲間ではなく、いつだって意地悪なあの人なんだ。

川д川(助けて)

川д川

川д川「フォックス・・・」

カラカラ。
呟きに応える様に扉が開く。

爪'ー`)y‐「おはよ」

我が目を疑う、今程この言葉が当てはまる瞬間はない。
入って来たのは服装と髪型は違うものの、とてもよく見知った人物だった。
張り詰めていた緊張の糸が切れて、がくりと全身から力が抜ける。

そして、私をこんな目に遭わせていたのは彼なのだと、理解した。
全ては意地悪なこの男のイタズラだったのだと。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:54:03.76 ID:vbdUvQZR0

怒りで体が震えるのは初めてだった。
ほんの数秒前まで会いたいと思っていた自分が馬鹿みたいだ。
湧き上がる熱を噛み殺しながら、彼に問いかける。

川д川「どういう事・・・?」

爪'ー`)y‐「体の調子はどうですか?」

川д川「こんなイタズラ・・・やりすぎだわ!」

爪'ー`)y‐「おっと。暴れないで」

川д川「ここはどこなの?」

爪'ー`)y‐「その前に私の話を聞いて下さい」

彼は悪びれる様子もなく宥めの言葉をかけて来る。
優しい口調とは裏腹に、見下ろして来る黒い瞳は恐ろしく冷たかった。
この人はその目で何を凍らせるつもりなんだろう。

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:56:00.99 ID:vbdUvQZR0

爪'ー`)y‐「これから私の質問に答えて下さい」

聞いた事のない口調。
記憶喪失?両足も貴方の仕業?
ああ、もう、どうでもいい。
そのほっぺた、引っ叩かせて。

爪'ー`)y‐「お名前は?」

川д川「山村貞子」

爪'ー`)y‐「年齢は?」

川д川「16」

爪'ー`)y‐「ご家族は?」

川д川「みんなはどこ?」

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 20:58:00.63 ID:vbdUvQZR0

爪'ー`)y‐「・・・ご家族は?」

川д川「いない。みんなラウンジ街に殺されてしまった」

爪'ー`)y‐「血液型は?」

川д川「S+」

爪'ー`)y‐「ご住所は?」

川д川「ヴィップ街・ブーン屋」

爪'ー`)y‐「職業は?」

川д川「ブーン屋の用心棒。
    ハイン様の義弟であるフォックスを守る事」

川д川「パートナーは鈴木ダイオード」

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 21:01:04.58 ID:vbdUvQZR0

爪'ー`)y‐「では」

爪'ー`)y‐「最後の質問です」

爪'ー`)y‐

爪'ー`)y‐「恋人は?」

川д川

夜みたいな目が、薄い板に載せた紙から、ゆっくりとこちらに向けられる。
そこでようやく、意地悪な彼の思惑に気付くのだ。

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2011/12/30(金) 21:03:05.49 ID:vbdUvQZR0

川д川「貴方よ、フォックス」

川д川「私の恋人は貴方」

爪'ー`)y‐

川д川「満足したかしら?なら早く解きなさい」

爪'ー`)y‐「・・・まだですよ」

川д川「フォックス、私は怒ってるのよ」

爪'ー`)y‐「落ち着いて下さい」

川д川「お願い、教えて」

川д川「ここはどこなの?」

爪'ー`)y‐

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 21:05:35.71 ID:vbdUvQZR0

川д川「何か言ってよ」

爪'ー`)y‐

川д川「ねぇ。フォックス」

爪'ー`)y‐

川д川「フォックス?」

爪'ー`)y‐「落ち着いて、聞いて下さいね」

爪'ー`)y‐「山村貞子さん」

川д川

私は彼に名前を呼ばれた事がない。
大切な瞬間まで取っておくのだと、フォックスが言ったからだ。

その誓いが今、いとも簡単に破られた。
それが何を意味するのか、頭の悪い私には分からない。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 21:07:40.21 ID:vbdUvQZR0

爪'ー`)y‐「ここは」

爪'ー`)y‐「病院です」

川д川

川д川「びょういん」

白い天井、白いベッド、
ベルトの拘束、両足のギプス、
白い服、白い包帯、
白い便器、白い壁、白い床、
白い扉、白い部屋、窓のない部屋。
鼻につく消毒液の匂い。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 21:11:19.48 ID:vbdUvQZR0

川д川「随分と風変わりな病院・・・ラウンジ街?」

川д川「でも足の怪我くらいで隔離なんて大袈裟ね」

川д川「いくら痛くったって暴れたりなんかしないわ」

川д川「今はちょっと回復能力が落ちてるけど・・・」

川д川「でも私、平気よ?腐ってもヴィップ住民だもの!」

爪'ー`)y‐「いいえ」

爪'ー`)y‐「この部屋に貴女を拘束したのは、足の骨折のせいではありません」

川д川「その話し方やめなさいよ」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 21:13:01.32 ID:vbdUvQZR0

川д川「どうしてこんな事するの?」

爪'ー`)y‐

川д川「何か怒らせる様な事しちゃったなら謝るから」

爪'ー`)y‐

川д川「返事をしてフォックス」

川д川「お願いだから・・・」

爪'ー`)y‐

震える手を握って、大丈夫だって、いつもみたいに笑って欲しい。
馬鹿みたいな臭いセリフ吐きながら、全部嘘だよって言って欲しい。
怒る私を宥めながら、ごめんって言って、好きだよって言って、
私の事を抱き締めて、いつもみたいに笑って、笑って欲しい。

爪'ー`)y‐「落ち着いて聞いて下さい、私は医者です」

爪'ー`)y‐「フォックスなんて名前じゃありませんし、貴女は貞子じゃありません」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 21:15:05.34 ID:vbdUvQZR0

川д川「貴方まさか、記憶が・・・?」

爪'ー`)y‐「貴女は私の目の前で窓から飛び降りたんです」

川д川

爪'ー`)y‐「幸い両足の骨折と掠り傷だけで命に別状はありませんでした」

フォックスの言葉と一緒に映像が蘇って来る。
家の窓に足をかけて飛び立った。ものすごい速さでコンクリートが迫ってくる映像。
まるで高いところから落ちたような、そんなイメージ。

                      「やだ、中学生が自殺?」

 「誰か救急車を呼んでー!」
                              違う
            「クーちゃん、まだ若いのにねぇ」

                            「素直さんの一番上の娘でしょ?」
    違う   
         「どうして自殺なんか・・・」
                         違うのよ・・・

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 21:17:32.38 ID:vbdUvQZR0

死にたかったわけじゃない。
いつもだったらあれくらいの高さ、普通に着地出来るはずなのに。
だって、私は用心棒だから。強いんだから。
いつもどおり窓から飛び降りて、会いに行こうと思っただけ。
道に貴方の・・・フォックスの姿が・・・見えた、か・・ら・・・・

ぱきんっ、と。
目の裏で何かが折れる音がした。

頭の中に知らない記憶が滝のように流れ込んで来る。

なに、これ。
もう嫌だやめて助けて。           学校
やめて。                                      ひとりぼっち
お願いだからやめて下さい。
いやだいやだ。                     コンプレックス
嫌だ。             いじめ
思い出したくない知りたくない、
クーって呼ばないで、私は貞子よ。                      
素直クールじゃないわ。                                     両親の失望
貞子、貞子、貞子。
さだ・・・あ、あ、ああそうそう、
分かった分かったわ。               両親の期待
あははっ。        さようなら
全部、分かっちゃった、                             平凡
壊れたぜんぶ、思い出した。


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 21:19:44.10 ID:vbdUvQZR0










                   私は、貞子じゃない。


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 21:21:46.22 ID:vbdUvQZR0

平均を貫いて普通の枠から抜け出せなかった私にも、ひとつだけ自慢出来ることがあった。
それは、前世の記憶が有る事。

私はヴィップ街ブーン屋の用心棒。
ニチャンネル国はこことは全く別の、冒険で溢れた世界。
今でも昨日の事みたいに思い出される。

あの頃は本当に楽しかった。
自由こそなかったけれど、毎日が輝いていた。
死を近くに感じるからこそ、心から生きたいと、生きていると思えた。
本当に楽しかった。

つい最近学校でダイオードの生まれ変わりと再会したのよ。
見れば分かる、あれは絶対にダイオード。
でも私がどれだけハイン様や仲間の説明をしても、
ダイオードは変な顔をするだけで、前世の事を思い出してはくれなかった。


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 21:23:33.08 ID:vbdUvQZR0

ねぇ。ダイオード、本当は覚えているんでしょう?
約束したわよね、いつでも対戦相手になる、って。
私達が育んで来たものは、生まれ変わったら折れてしまう様な、弱い絆だったの?
聞いて。オサムやエクストもきっと生まれ変わってるはずなの。
だから二人でみんなの事を探しに行きましょ。
また一緒にブーン屋をやりたいの。
この世界ではあの時みたいにはいかないと思うけど、でも、きっと楽しいわ。
だって前世であんなに楽しかったんですもの!
聞いてる?なんでそんな顔するの、どこに行くの。
待って行かないで、

・・・ダイオード!!



川゚д川

川-д川

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 21:25:08.97 ID:vbdUvQZR0

私は山村貞子。
ヴィップ街・ブーン屋の用心棒。

あの頃は、本当に楽しかった。
自由こそなかったけれど、仲間、修行、戦闘、毎日が輝いていた。
馬鹿みたいに私を愛してくれる意地悪な人もいた。
本当に、本当に、楽しかったんだ。

だからいけなかった。
今はどう?毎日が輝いている?
ここでは似たような日々を繰り返すだけ。
学校では苛められ、家族には蔑まれ、大っ嫌いこんな自分。
みんなみんな、大っ嫌い。

前世を求め現世を拒むあまり、次第に前世と現世が交ざり合った。
少しずつ、少しずつ。

川д川

私は、山村貞子になりたかった。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 21:26:59.91 ID:vbdUvQZR0

拘束具が外され、医者に上半身を起こされる。
もう私に暴れる気力など残っていなかった。
俯くとギプスした足が視界の隅に見えて、現実を突きつけられた気がして。
ぱたぱたと落ちた涙が、力なく握られた拳を次々と濡らした。

私は貞子だった。
貞子“だった”んだ。

川;д;川(どうして?)

川;д;川(どうして私だけ)

川;д;川(こんな・・・)

いっそなんにも知らなければ良かったんだ。
前世もなんも覚えてなければ良かったのに、どうして。
ねぇ、どうして。
どうして私だけこんな思いしないといけないの。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 21:29:06.36 ID:vbdUvQZR0

悔しいけど、それでも浮かぶんだ。
意地悪なあの人の、憎たらしいヘラヘラ笑った顔が。
あの人の言葉が、思い出が。

     爪'ー`)y‐『生まれ変わっても好きになってやるよ』

川д川(何を言ってるの)

     爪'ー`)y‐『何度でも恋をしようって言ったのさ』

川д川(そんなの無理よ)

     爪'ー`)y‐『約束するよ。探しに行くよ』

川д川(・・・馬鹿ね)

川ー川

   (信じられるわけないじゃない・・・そんな事・・・)

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 21:31:59.72 ID:vbdUvQZR0

あの時私はくだらない夢物語だと手を叩いて笑った。
そんな綺麗事は現実に有り得ない、って。

けれど心のどこかで思ってた。
貴方なら、貴方だったら、本当に私を見つけてくれるんじゃないかって。
例え別人になっても、愛してくれるんじゃないかって。

川д川「何が約束よ・・・」

川д川「生まれ変わってすっかり私の事を忘れて・・・」

川д川「貴方は!いつもそう!!」

川д川「いつだって、私に・・・都合の良い夢物語ばかりっ・・・」

私はもう貞子じゃない。

なのに、なんで。こんなのってないよ、酷いよ。
なんで貴方との思い出ばかり浮かんで来るんだろう。
こんなん見せるなんて酷い。酷い、ひどい。
私はもう貞子じゃない。誰も、過去に戻れない。

愛は、時の前では無力だった。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 21:33:07.04 ID:vbdUvQZR0

川;д;川

爪'ー`)y‐

爪'ー`)y‐「わた…」

爪'ー`)y‐

爪'ー`)y‐「俺には前世の記憶なんてない」

爪'ー`)y‐「そんなもん信じない」

爪'ー`)y‐「だから約束もしてないし、君の事だって知らない」

迷子の子供みたいに泣きじゃくる私の姿を、夜色の瞳だけが見下ろしていた。
本物の空はいまどうしているのだろう、
この世界の空はあの世界と同じ色をしていた気がするけれど。
天井には相変わらず染み一つない白が我が物顔で広がっている。

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 21:35:03.45 ID:vbdUvQZR0

爪'ー`)y‐「けれど、だ」

爪 ー )y‐「けれど」





爪 ∀ )y‐「・・・なんでだろうなぁ」

ぽたり。
夜が泣いている。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 21:36:03.39 ID:vbdUvQZR0

爪;ー;)y‐「君を見てると・・・」

川д川

川д川「フォックス」

爪 ー )y‐

爪 ー )y‐「ちがう」

川д川「フォックス」

爪 ー )y‐「ちがう。おれは」

爪 ー )y‐「おれは・・・」

川д川「フォックス」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/12/30(金) 21:37:18.70 ID:vbdUvQZR0





「フォックス」



呼ぶと、彼は違うと言う。
違うと言いながら、私を抱き締める。







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