貘の王
2 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 22:11:53 ID:hW9v6RD60


1.貘の王



( ^ω^) ( ^ω^) ( ^ω^)

貘は目を離すと直に増える。

                   きゃあ~
                 .・
( ^ω^) ( ^ω^) ( ^/ /ω^)
                ,

従って、合間を見て間引いていく必要がある。
それを放っておけば、この世界が幻想に塗れてしまうからである。

      きゃあ~
    .・
( ^/ /ω^) ( ^ω^)


私はそれを制御せねばならないように思う。
そうあれ、と現状が語るからである。

.

3 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 22:14:28 ID:hW9v6RD60

貘は撫でてもらうのが好きだ。


川 ゚ -゚)”   うっとり
 っ( ´ω`)


度々、私に撫でてもらおうと近くに寄って来ることがある。
撫でてやると間抜けた顔となって、やがて眠る。


( ^ω^ )


撫でてやらない事もある。
私とて、いつでも暇というわけではない。

             
     ( ^ω^ )o   ;'⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ 、_ 
           O  )    川 ゚ -゚)”   うっとり
              (      っ( ´ω`)   
              ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒~

撫でてもらえない時、貘は妄想の中で私に撫でてもらう。
そうすると、間抜けた顔になって、やがて眠る。

.

5 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 22:16:07 ID:hW9v6RD60
眠った貘は、時の夢を見る。
時の夢は私の知を超えるものであるから、多くは語れない。
ただ、琥珀色の夢であることは確かである。


ξ゚⊿゚)ξ「おはよー」

ζ(゚ー゚*ζ「一緒にいこー」

( ^ω^) ♪


私が学校に行くと、貘は必ずついてくる。
ついては来るが、何をするわけでもない。


           ♪
     ♪
      ((( ^ω^)        川 ゚ -゚)


のたりのたり、と後をつけたり、気ままに浮いてみたり、それが行き過ぎて時には逸れてしまう事もある。
目をつむると、いつの間にか戻って居る。
すると、またのたりのたり、と後をつけたり、気ままに浮いてみたりする。

.

6 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 22:17:59 ID:hW9v6RD60


( ^ω^ )

窓際からぼうっと青空を見上げていると、貘は物欲しそうに私を見つめてくる。
夢を欲しているのだ。
頬撫でる五月の縷縷なる風も、貘にとっておよそ価値はない。


川 ゚ -゚)

ただ、私が風に煽られて眠るのを待つのみである。


  ( ^ω^)”
     川 - -)

私がうたた寝をすると、貘は肩に乗ってくる。
恐らくは、夢の羽翼から頬張るつもりだろう。
私は貘に身を任せる。それ以外に私が出来ることは何もないからである。


.

7 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 22:19:26 ID:hW9v6RD60

ある日、貘は私に物申した。


( ^ω^)” 

私の夢に現れた女を好いてしまったというのだ。
金輪の何処かに居るという事は確かである。だが、金輪は広すぎる。

   ぐいぐい

( ^ω^)川 ゚ -゚)
   っ”

貘はもう一度女に会わせろと言う。
無理である。私には同じ夢を見ることが出来ない。


      しゅん
( ´ω`)


貘にその旨を伝えると、ひどく悲しんだ。
そして貘は、仰向けになって無常を転がした。

.

8 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 22:20:33 ID:hW9v6RD60


貘は私の元から離れることにした。
待てど暮らせど、私の夢から、あの女が出てこないからである。

ならば、自分の手で見つけようと思ったのだ。


((( ^ω^)”


健気な貘は、風呂敷を背負って旅に出た。
二階の窓からしじまの風に乗って、遠き彼方まで潜って行ったのだ。



川 ゚ -゚)


私の部屋には静寂が戻った。
そうして、私は一切の思考を止めた。

.

9 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 22:23:55 ID:hW9v6RD60

長い静寂の中で、住劫から壊劫へと成った朝、受像機が世界の崩壊を告げた。
遠い地から破壊が迫ってきているのだと、それは言う。

やがて、この日本も破壊の波に飲まれよう。

私は窓から外を見た。
見知った景色は何もない。
瓦礫となった家屋や、半壊の摩天楼、あまりにも黒く厚い雲が、ただそこにあるだけである。




( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)


そして、地に蠢くものは貘である。
無数の貘が渦となり、波となり、人理や文明を抉り取っているのである。

私はひどく懐かしくなった。
まるで燻した香木であった。

この悍しい程に神々しい光景を眺めているだけでも良いのだが、少しの時が経ち、結局思いあぐねて貘の上に立つことにした。

.

10 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 22:25:33 ID:hW9v6RD60

貘共は私を運ぶ。
脳を劈く獣の臭いも、大地を揺るがす轟音も、それは私の為に在ることを証明した。



( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)


私が歩み始めると、足の下の貘は撫でられる事を妄想して、やがて眠った。


川;;;;;-゚)


私は歩み進める。どこまででも行こう。



                   わあわあ
   わあわあ       ( ^ω^)
( ^ω^)     わあわあ
        ( ^ω^)

貘は撫でられようと私の前に高く積み上がる。
それはやがて山となって、天高くそびえ立つものである。

.

11 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 22:28:56 ID:hW9v6RD60

金輪を抜け、七つの山脈をも超えた先、光さえも届かぬ貘の山を登った時、私は裸となって宣言した。




”我、貘の王なり。”




          ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 (( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))         ヴボオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))
       (( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))

(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))
       (( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))

ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!



雷鳴が祝福し、それに応えるように貘共は吠えた。
此れここにあり。それを否定するものはどこにもなく、疑問に思うものすら無い。
何故なら、現実としてここにあるからである。

そうあれ、と現状が語るからである。


.

12 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 22:30:58 ID:hW9v6RD60
2.幻日元年


私は貘の王である。
因果をも越えて君臨した、絶対主である。


川 ゚ -゚)

力を持つものであるから、この星において意味が果てようとしている人類にとっては眉唾ものである。


  ザッ……
       ザッ……
                          (;;;;;;;◎器◎)(;;;;;;;◎器◎)(;;;;;;;◎器◎)
(;;;;;;;◎器◎)(;;;;;;;◎器◎)
    (;;;;;;;◎器◎)(;;;;;;;◎器◎)(;;;;;;;◎器◎)    ザッ……
                           ザッ……

価値の薄れていく中で、人類は抗うことを思い出した。
現状が生み出した貘の王たる私に抗い始めたのである。


                           きゅらきゅら
              __ rェ=ェi=ェュ__         きゅらきゅらきゅら
            r‐l´ ̄  ̄ ´rlヽ` ̄,二 ̄ヽ
            | _|      ,|l ,〕_ o ',(´(二(,ニニニニニO
          __l__l __ ___,li ソ____`-'_ノ____
           |  ̄ ̄ ̄  ̄ l'='l_| |L==_l__lL==_l|
            /  r──ュ‐‐ュ ̄  \二\ ̄ ̄ ̄\
           ,/__ , |     | (ニiニ)   \_______\
        ,/ ̄ヽ__ヽ|___|_/ ̄ヘ二二二ヽ  ̄  ̄  ̄  ̄ヘ二二二ヽ
    ::'⌒ ,  r'`r、r_,、_,、_,、_,、_,、_,、7'ヽ='='ヘ |        |i'ヽ='='ヘ
    "⌒) {i ,i r'ヘ ,rヘ ,r'ヘ ,r'ヘ{i''T,i},='='i},l_____ ,|i ,i},='='i}
   ;;') "⌒')マノ |‐,l l|‐,l l|‐,l l|‐,llヾ-7,='='7l ,l|‐,l l|‐,l l|‐,llヾ-7,='='7
   ;; ゙⌒) ⌒ ''),, _ソヘソソヘソソヘノノ,イ,='='イ 、ヘソソヘソソヘノノ,イ,='='イ

しかし、如何なる戦闘機を持ち出し、如何なる兵器で私を木っ端微塵に吹き飛ばそうとしても、それは無駄な事である。

13 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 22:33:20 ID:hW9v6RD60

私が目を剥けば、この世界に光が降り注ごう。
物質ごときではこの光を止める事は出来ない。

私に刃向かう全ては、光によって熱と嵐に変えられていくものである。
誰も疑問に思うものは居まい。
私がそうあれ、と望むのであるから、そうあるべきなのである。


長い時が過ぎた。

幾千幾億の光が雨の如く降り注ぎ、太陽が月が蝕された時、人類から抗いの文字は消えた。
どれだけの旧支配者が消滅しただろうか。
竜巻が起きても身構えるものはいない。地が揺れようと嘆くものもいない。世界が灼けても嘆くものもいない。

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即ち、幻日元年である。


.

14 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 22:34:53 ID:hW9v6RD60


        もそもそ
          ((( ^ω^)
((( ^ω^)          もそもそ
        ((( ^ω^)

僅かながら残った人類を、貘共は餌として貪る。
体を食すのではない。夢を喰らうのである。




(;;;;::;;;;,,;;;;)(;;;;::;;;;,,;;;;)(;;;;::;;;;,,;;;;)(;;;;::;;;;,,;;;;)(;;;;::;;;;,,;;;;)


空前の灯火の中、人は宇宙の夢を見る。
貘にとって、それはどのような味であろうか。
全てを知りうる私を以てしても、それだけは分からない。



  ちゅるちゅる
      ちゅるちゅる
( )^ω^)”


貘は人の夢が無くては貘であることが出来ない。
貘は貘として此処に在るために、人を必要とする。

.

15 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 22:36:40 ID:hW9v6RD60

残された僅かな人類は貘によって管理された。
人は最低限の営みの中、夢だけを提供する。
貘は僅かな夢を有難がって食べた。


 ちゅるちゅる              ちゅるちゅる
        ちゅるちゅる  ちゅるちゅる  ちゅるちゅる
  ちゅるちゅる    ちゅるちゅる  ちゅるちゅる   ちゅるちゅる
      ちゅるちゅる   ちゅるちゅる ちゅるちゅる   ちゅるちゅる

( )´ω`)”( )´ω`)”( )´ω`)”( )´ω`)”( )´ω`)”( )´ω`)”( )´ω`)”


貘には序列がない。
当然のように僅かな夢を、それぞれ僅かに分配した。
そして貘共は、その夢に舌鼓をうち、目には涙を浮かべる。


( ^ω^ )

まだ雲も晴れぬ、九月の寧静の風の中。
ついに貘共はより多くの夢を求めるようになった。

             
     ( ^ω^ )o   ;'⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ 、_ 
           O  )   ちゅるちゅる
              (     ( )´ω`)” ちゅるちゅる
              ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒~

だが、夢は限られる。人は多くの夢は産めない。

.

16 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 22:39:18 ID:hW9v6RD60
従って、私は貘に祈ることを教えた。



  かんじーざいぼーさー
            ぎょうじんはんにゃーはーらーみーたーじー

( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)
   人    人    人    人    人    人

 しょーけん ごーかいくーどー



貘と祈るという行為は、元は同じであったかの様に、美事と言う他なく嵌った。

貘はただひたすらに祈り続けた。
夢が食べれるように、太平であるように、四苦も無く八苦も無い世であるように、目覚めたものとなるように、
貘はありとあらゆる願望を祈りに注いだ。


         (()()ノr゙ソ非:Nr,===、|/l:非ミ、(()゙ヘ
         (()ヽ())l非l"::|)|lミ尚:=l|(|:::゙l非lY()ノlr,
         (ヽ)=彡l非l:::::;|)|l(バハ)||(|;::::::l非lぅ(ブノ
        ((),()ヾl非l::::::{ ,r''‐''‐''‐''‐、 }::::::l非l彡 (ノ)r,
       Z=、ぅ)}l非l:::::::V-‐-、 ,r‐-V:::::::l非l"(フ(ノ }
       ゝ、(),r=l非l::rn| --  -- |::::::l非l(r'7 (ニ′
       ヽ(ヽ(r='l非l|| |l   r l:、  l::::l非lミ、(米)(ノ)
       从()ヽ()l非l:::l=| ',\ = = /:l非l:::l非l.「l (ノ レ,r、
    r,(()ヽ=ミl非l:::,r'"´ヽ lヽ`_― '´ ̄l77ッ、:ヾ「l 「「r、(.) )
    (())()rl非l::::::/l   |=|       // ∧ハ:::l.` ""1(r,リハ
   ヾY゙(r,l非l:::::::/ ', __.l  │     // (  )ハ::|  Aミ/ノ(.).)
  (()ソ(rl非l::::::/   〈r"!  |      ///|| 「|゙l、!==|lEl((9()/
  (()r゙(l非l:::::/=、、 ハ l   |    /´//{゙)C|.|.|.|  .l非l()(()ノ)
  r)) }))l非l:::ノ  ,r'"⌒ヽ   | r'"゙ヽ7´///l ||   |l  |非| ()7ノ(ノl
 J()ニ=゙l非l/  f     l_ノ┴っノ//// 〃.__ / l |l非l(人(ノ./
 ゝ ()ハ.}F/  /|       l|」_三⊇ノ/|| 〈ヽ..__ノ  リl非l )>ノノl
  ヾ,()彡/  /::|l     ll|二 -‐ニ゙ /l || |:::::::ハ  ll非lソ(ノ/ノ

やがて、空には観音菩薩が浮かび、魂を明るく照らした。

.

17 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 22:42:41 ID:hW9v6RD60

観音菩薩が現れてからは、空に晴れ間が覗き、王たる私のものとは違う光が降り注いだ。
その額から放たれる光は温かみを持ち、臓の底から力を齎す。
また千の手から生み出される乳海は、淀んだ大地を緑の下へ均していく事だろう。


  うんかいくーどーいっさいくーやく
                     しゃーりーしー

( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)
   人    人    人    人    人    人

 しきふーいーくうくうふー


天と地は見下ろすものを手に入れた。

星は見下される事で輝きを増すものである。
貘が祈り続ける事で、金輪乃至は水輪までも輝き続けるだろう。



  ちゅるちゅる    ちゅるちゅる  ちゅるちゅる   ちゅるちゅる
      ちゅるちゅる   ちゅるちゅる ちゅるちゅる   ちゅるちゅる

( )´ω`)”( )´ω`)”( )´ω`)”( )´ω`)”( )´ω`)”( )´ω`)”( )´ω`)”



貘共にとって、それは喜びである。
至福の光に包まれて、貘はひたすらに細い夢を食べる。
貘共は太平を手に入れたのである。

18 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 22:44:34 ID:hW9v6RD60

太平成って、私の背に光輪が現れる時、貘共はそれを慈悲を知らぬ王の慈悲と知る。
七つの山脈と須弥山は祝福の砂塵に包まれる。
砂埃の合間から漏れる、僅かなる真王の光を求め、貘共は盲目となり念仏を唱える。



  かんじーざいぼーさー
            ぎょうじんはんにゃーはーらーみーたーじー
 しょーけん ごーかいくーどー

( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)
   人    人    人    人    人    人
( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)
   人    人    人    人    人    人
( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)
   人    人    人    人    人    人
( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)
   人    人    人    人    人    人

  うんかいくーどーいっさいくーやく
                     しゃーりーしー
 しきふーいーくうくうふー



ただひたすらに、他所の空劫まで響くかの如く低い念仏を唱え続けるのである。
そして貘共は、観音菩薩の指は決して動かぬものと知る。

.

19 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 22:46:39 ID:hW9v6RD60

3.旅人



(;;;;::;;;;,,;;;;)(;;;;::;;;;,,;;;;)(;;;;::;;;;,,;;;;)(;;;;::;;;;,,;;;;)(;;;;::;;;;,,;;;;)


祝福を知らぬ人類は、貘共の存在を意味させる事でしか此処に在ることが出来ない。
星の陰たる人類は、念仏も唱えはしない。
ただ貘共に夢を喰われるのを待つのみである。


幾つの陽が蝕されたろう。
やがて、私は旅人を知る。

( ´・ω・)


遠く、金輪の際まで行く所であろうか。
人の群れの中から、希望の残り香を探し求めて歩き出した男がいた。


( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)

貘共はそれに興味を示さない。
男も貘共に興味を示す事はない。


(  ´・ω)


旅人は夢を食べられるだけの人達に短い別れを告げ、この金輪を往くと決めた。
男は知っておかなければならないものを知るために、ただひたすらに歩くことを始めたのだ。

.

20 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 22:48:20 ID:hW9v6RD60



       。
  ’
      .・  ビュウー
(  ´・ω)        ビュウーー



男は私を臓の部分で知っている。
この世に在るということは、そうあらなければ道理ではない。
観音菩薩が見下ろす元で、総ての王たる私が持つ知を求めようというのである。

それは、命を忘れた人類にとって、あまりにも長い旅路であろう。


     
      ざっ……
( ;´・ω)”   ざっ…


旅人は祈りの鐘が聞こえる方へ、歩く。


千の丘を越え、数多の星々の下に晒される事もあった。
西の陽が崩壊した人智を照らし、そのあまりの荘厳さに目に涙を蓄える事もあった。
指先すら見えぬ砂塵の中、僅かな鐘の音に心安らぐ朝もあった。

.

21 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 22:50:00 ID:hW9v6RD60

二月の玄奥の空の下。
一点の曇のない澄んだ氷の上を、遙かなる時の呼び声を頼りに歩み続けた時、
旅人は太古の人理を受け止める。


( ;´>ω<)


やがて足の裏は刳れ、膝は鉄となり、腰は音を立てて崩れる。
疲れ果てて動けなくなった旅人は、空を仰ぎ世界の始まりに想いを馳せる。


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月が生まれ変わる頃、遠き金色の海原を眺め、宇宙の広さの一片を悟った時、
旅人はまた歩き始める。

貘共によって齎される永遠の命の下で、延々と歩き始める。

.

22 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 22:51:19 ID:hW9v6RD60
私の元に辿り着くまで、幾千幾億の出会いと別れがあった。



(;;;;::;;;;,,;;;;)(;;;;::;;;;,,;;;;)(;;;;::;;;;,,;;;;)(;;;;::;;;;,,;;;;)(;;;;::;;;;,,;;;;)
  っy== っy== っy== っy== っy==


未だ抗うことを辞めない人達の群れ。
それには勇気でその人達に別れを告げた。



(;;;;::;;;;,,;;;;)(;;;;::;;;;,,;;;;)(;;;;::;;;;,,;;;;)(;;;;::;;;;,,;;;;)(;;;;::;;;;,,;;;;)
  っ†    っ†    っ†    っ†    っ†


悲しみに暮れる人達の群れ。
それには慈愛でその人達に別れを告げた。



(;;;;::;;;;,,;;;;)(;;;;::;;;;,,;;;;)(;;;;::;;;;,,;;;;)(;;;;::;;;;,,;;;;)(;;;;::;;;;,,;;;;)
  っ     っ     っ    っ     っ


貘共に支配され、幸福を得る人達の群れ。
それには愁傷をもってその人達に別れを告げた。

.

23 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 22:52:59 ID:hW9v6RD60


/ ,' 3


旅人は老人に出会う。
永遠の命の中、その老人の肉体は枯れ果て、目には輝きもなく、
その眼差しでは観音菩薩の柔らかな手にも触れることは出来ない。

だが、老人は貘共に夢を食わせなかった。
幻夢をも凌駕する意思で、夢を守り抜いていたのだ。


                   わあわあ
   わあわあ       ( ^ω^)
( ^ω^)     わあわあ
        ( ^ω^)

あの汁滴る芳醇な夢を、貘共が束で齧り付こうとも、老人は夢を渡さない。


                  えーーん
     えーーん     ( 。´ω`)
( 。´ω`)       えーーん
        ( 。´ω`)

泣いて喚こうとも夢を渡すことはない。
生けるものが知り得ぬ時の彼方まで、貘共はこの夢の味を語らう事を憧れ続ける事だろう。

.

24 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 22:54:30 ID:hW9v6RD60

旅人は老人を介して、永遠の孤独を形として知った。


( ´・ω・)
  っ○

そして、老人に摩訶色の果実を渡し、無言の別れを告げた。


私は旅人の到着を待つことにした。
旅路の終わりに私が在るというならば、喜んで光輪を潜らせよう。
祝福を齎す事は出来ないが、その知を敬う事は出来よう。


    もそもそ
            ((( ^ω^)           もそもそ
((( ^ω^)                ((( ^ω^)           (  ´・ω)
       ((( ^ω^) もそもそ
                  ((( ^ω^)


旅人の杖が地の加護を受けようという頃、貘共は旅人の後を追い始めた。
貘共は旅人に興味を覚えたのである。

旅人は拒むことを知らないから、あるがままにそれを受け入れた。

.

25 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 22:55:57 ID:hW9v6RD60
       。
  ’
      .・  ザク
(  ´・ω)      ザク


旅人はまだ見ぬ希望の残り香だけを力に変えて、地を踏む。


      ちゅるちゅる
          ちゅりゅちゅりゅ
((( )^ω^)”

貘はその旅人の持つ、鈍色の夢を食い、旅人についていく。


月の満ちる夜。
旅人と貘共は、七つの山脈を越えて須弥山を見上げるに至った。

                 . .   .  . . .. .: . . .  .
              .  . .: .:.: .:. .: . .: .: .:. . : .: .:.. : . . .
          . . ..:..:.:.::;:;;';:;';';.: '"´    '  ;.:.. : . .
           . . ..:.:.:;:;';;';'.''´                ;.:. . .
        . . ..:.::;';':''                    :.:. : .
         . . ..::;'′                      ,:.:.. .
            . . .:.;'                      :.:. .
            . ..:.;                           ;.: . .
           . ..:;                       :.:. . .
         ..:.:;                       ;.: : .
         . .:.:,                     .:.:. . .
           . .::,                       ,:.: . .
             . . :.,                   ,.:.: : .
               . . .:...                    ,..: .: . .
              . .: :': . ..             ,. .:.: . : .
              . . : .: ' : . ...,. .,... . : ' :. : . .
                 . : . .: . . : . : .

須弥山の向こう、桃色の月は人の王の誕生を告げるものである。

.

26 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 22:57:14 ID:hW9v6RD60

4.円


         ちゅるり
((( )^ω^)”
              (((  ´・ω)
 ちゅるり
    ((( )^ω^)”


人の王は貘共と共に須弥山を登る。
大いなる旅路が知を齎そうとも、乳海を越える雄健の両足があろうとも、過酷な道程である。


   .
      .・
(  ´>ω)   ビューー


風が吹けば色を失い、大地が揺れれば行を失う。
やがて受も想も奪われ、識を持って須弥山を登ろうとするも、意識なき意識の中で、
人の王は自ら識を手放して行く。



川 ゚ -゚)


世が朝を忘れた頃、苦を失くした人の王は遂に私の前に現れる。

.

27 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 22:59:02 ID:hW9v6RD60

( ´・ω・)


手は罅割れて血が滲み、足は管の渡るのが目に見えるようで、その顔は淀みのない
蓮池の様である。



( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)


沈黙は長く続いた。
千の夜を越えた。
貘共は未だ静寂を貫く。念仏を唱える様子はない。




人の王は、遂に求めていた知を知ることは出来なかった。
旅人は遂に終着点にたどり着いたのである。




(   ´・)

人の王は、元来た道を辿り始める。貘共はついて行かない。
ただ、静寂の中で人の王を見守るのみである。
その中で貘共は、観音菩薩の指が僅かに動くことを知る。

28 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:01:26 ID:hW9v6RD60

    こね
      こね
( ´・ω・)
  っ”


人の王は旅の証に、知を捏ねる事にした。
天と地を渡る須弥山の中、米粒ほどの無を見つけ、そこに土と水で捏ね上げた知を入れた。



              ?            ?
                         ?           ?

( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)


貘共に捏ねられた知を知る術は無かった。
空間に違和感を感じたが、気には止めなかった。
祈りの中に無があるから、無は二つも取り入れられない。


リliリ ゚ー゚)


知はやがて少女と成って、風に打たれる。

.

29 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:03:14 ID:hW9v6RD60

立つことを知らぬ、あどけない顔の少女は人の王を親と知る。
五月の縷々たる風の中に人の王の香りを感じ、そのまだ見ぬ人の王が胸を締め付けた。


リliリ - -)
   人

無から覗く世界には祈りがあった。
少女は祈りを知らない。貘共を真似て、ただ手を合せる。
無垢の祈りとは、時の流れに輝くものである。


     ( ^ω^ )o 
           O ;'⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ 、_ 
              (         (´・ω・`)
              ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒~

貘共は人の王の夢がひどく懐かしくなった。



  むしゃむしゃ          むしゃむしゃ         むしゃむしゃ
   むしゃむしゃ            むしゃむしゃ         むしゃむしゃ
             むしゃむしゃ                むしゃむしゃ

( )^ω^)”( )^ω^)”( )^ω^)”( )^ω^)”( )^ω^)”( )^ω^)”( )^ω^)”


夢に帰りたくなった貘共は、それを紛らわすために他の夢を食い漁った。

30 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:04:28 ID:hW9v6RD60


     うふふ
(  ゚ω゚)


やがて、幻夢を逸脱し、狂う貘も現れ始める。


                   きゃあ~
                 .・
( ^ω^) ( ^ω^) ( ゚/ /ω゚)
                ,


そういう貘は間引くか、取って食うかをしているが、恒河沙ほど経を唱えてからは、
後者の方が多い。
私は貘の王であるから、外から生を取り入れる必要は全く無い。
それでも貘を食べるのは、咀嚼が新たなる天を造るからである。


      うっとり
( ´ω`)


貘共は私に喰われる事に憧れを抱いている。

星々を生む歯に、すり潰される憧れがある。
永久に堕ち行く管を通る憧れがある。
私と一体となり、第二の太平を魂として成すことに憧れがある。

.

31 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:06:00 ID:hW9v6RD60

憧れは祈りによって円やかとなる。


                _jI二ニニ冬,
           x㌻        `゙汝
         ×                 刈i个i|
       Ⅸ                     寸弌
        ,:′                  Ⅵ!
       φ                       Ⅶ
    ゜W                           筏㌃
      _{i{                        }}‐=
     ,:{                           ?瓶
       ‘,                          ,小
     _,圦                      勺、
      '⌒込、                   在⌒
         'うx、                坏'´
          __〕iト .,       牝升(
                ⌒~¨¨¨~⌒

幾億の星がぶつかり、砕け、真円となるように、貘共の祈りと憧れは、ついに虹色の輪となり
天に浮かんだ。

その輪からは汎ゆる物が出でる。

一日目には金色の象が出た。
二日目には両翼を失った蝉が出た。
三日目には緋色に輝く本が出た。
四日目は何も出ることがなく、五日目に営みのない街が出た。



リliリ ゚ー゚)


そして六日目に、貘がいつか恋をした少女が出た。

.

32 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:07:18 ID:hW9v6RD60


         うっ                           うっ
   うっ                               うっ
                         うっ
( ;ω;)( ;ω;)( ;ω;)( ;ω;)( ;ω;)( ;ω;)( ;ω;)( ;ω;)( ;ω;)( ;ω;)


総ての貘共は涙を流した。

王とも神とも違う、鮮やかなる光を放つ少女を貘は直視出来ない。
少女に近寄る事無く、距離を取ってそれに見惚れるのみである。
見惚れる事の出来る、須弥山の貘はまだ良い。
少女を見ることが出来ない、感じることしか出来ない、金輪際に至るまでの総ての貘共は
その少女を一目見ることを望んだ。



( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)


終いには貘共は食欲を失い、夢を食べる事をしなくなった。
夢を食べなくなった貘は、貘とは言えない。


                            スー…              スー…
( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´;;;,, ,,   ( ´ω`)( ´ω`)( ;;;;,,, ,,,   ,,     ..


貘である必要性を欠いた貘から、現によって弾かれ、消えていった。
観音菩薩は祈ることを忘れた貘共を、同じ表情のまま見下ろしている。


そうしているうちに、須弥山の蓮は見事な果托と成った。


.

33 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:09:14 ID:hW9v6RD60

5.人の王


五十九太陽年振りに月は桃色と成って闇を照らした。
人の王がこの須弥山を再びその足で登りきったのだ。


                  ブウウウウウウン
∵ 。・ ;:::;.・            ・ ;:::;.・
          ・ ;:::;.・.・               ブウウウウン
  ・,・∵ 。 ・         ・;・
          リliリ ゚・;;,゚・.・       (  ´・ω)
     ,。・∵ ・ ;:::;.・
∵ ・ ;:::;.


しかし、その傍らに貘はない。
在るのは無から這い出た少女と、無から生まれた無数の蟲である。



  およよ
      およよ
(; ´ω`)”


蟲は貘の脳を貪るため貘共は嫌がったが、蟲に囲まれる少女を見て、
貘共は混乱した。
恋い焦がれた少女が二人此処に在るのである。
瓜二つとも違う。同じ少女が在る。

.

34 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:10:36 ID:hW9v6RD60


            およよ
                およよ                およよ
 およよ          およよ          およよ     およよ
      およよ                 およよ
(; ´ω`)”(; ´ω`)”(; ´ω`)”(; ´ω`)”(; ´ω`)”(; ´ω`)”(; ´ω`)”


貘共には理解出来ぬだろう。


      しく
( ;ω;)  しく


この不可思議な光景に、涙を流す貘も、


  ・    ブシュッ
( ^ω^),・   ブシュッ
   


自傷に駆られる貘も生まれた。
その瞬間、確かに貘には個性があった。


.

35 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:11:59 ID:hW9v6RD60

             ブウウウウウウン
        ・
  ・
・ ;:::;.・ ´・ω)


私は人の王が再び現れる因果を知っていた。
知らなくてはならない事を知るために此処に来たのである。
それが達せられぬ限り、因果は果まで続き、体が朽ち果てようと再びこの須弥山に
舞い戻ってくるものである。


遥か太古に失われた人語を用いて、人の王は私に言った。


        ・
  ・
・ ;:::;.・ ´・ω)「この幼子、三位にて一体と成る」


私はそれにこう答えた。



川 ゚ -゚)「然り。だがそれは出来ぬ」


翳りの風が吹き、人の王はこう返す。


        ・
  ・
・ ;:::;.・ ´・ω)「一体こそ、真の世なり」


.

36 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:13:06 ID:hW9v6RD60

私は言う。



川 ゚ -゚)「此処に在る故、此れ此処こそ真の世なり」


桃色の月は輝きを増す。
須弥山が神秘の色として輝くのを観音菩薩は見下ろした。


  およよ
      およよ
(; ´ω`)”o 
           O ;'⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ 、_ 
              (         リliリ ゚ー゚)
              ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒~


貘共は阿呆であるから、人の王が開悟の境地を見たと言うのに、
女のことばかりを考えている。


        ・            ブウウウウウウウウウン
  ・          ・ ;:::;.・
・ ;:::;.・ ´・ω)  ・ ;:::;.・   ・,・∵ 。 ・
  ・,・∵ 。 ・

 
人の王は円を見る。
やがて、全ての蟲が円を覆い、羽を休めた。

人の王はその様子を見ているだけである。

.

37 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:14:50 ID:hW9v6RD60


リliリ ゚ー゚)


少女は蟲に導かれる因果である。



   すやぁ                        すやぁ
         すやぁ                      すやぁ
( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)( ´ω`)


蟲円から現れた少女は貘共の上を歩き、人の王へと向かった。
その柔らかな足に触れられた貘は、撫でられる夢を見て、穏やかな
眠りにつくものである。


            ぴとり
リliリ ゚ー゚) (゚ー゚ リliリ
    っ⊂

少女と少女が手を合わせた時、近隣における乳海は引いていった。
眠りについていた貘共は目を覚まし、恋い焦がれる女の異常を察した。

三位成るには私の器が必要である。
だが、私は貘の王なり。貘の王として此処に在るものであるから、
この世から解脱する事は許されないのであろう。
それを責と知る。

.

38 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:15:50 ID:hW9v6RD60

我が器の宇宙は古を知らず、我が蓋の宇宙にその先は無い。
汁を吸うは、私も知らぬ。


人の王は言う。


(  ´・ω)「三位にて劫を成すなり」


少女が光るよりも先に、貘共は槍と成って人の王を貫いた。


         ・
            ;;,’
        ./
        /,・   ドシュッ!
    (  ´゚'ω)
    /’


一つは死を知らぬ心臓を貫き、もう一つは老いを知らぬ脊椎を貫いた。
残りの貘共も槍となって人の王に飛び込んだ。

五百の槍が刺さった時、血溜まりは須弥山を流れ、乳海に取って代わった。

.

39 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:17:30 ID:hW9v6RD60


                       ヴォオオオオオオオオオオオオオオオ!!
ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!

(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))


貘共が幻夢を超越し、ただ吠えるだけのものと成った時、少女は眩い光を放った。
貘共にはそれを止めることは出来ないだろう。


リliリ - -) (- - リliリ
    っ⊂

知と知が重なり合う時、本来であれば日輪は新たなる輪を付ける。



                  .::::::::::。/:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;, -=ー-....、二 _..-‐=、 
             ::.::;:;:;:;:;:;: ..::......:::/:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;/*:_ -‐=、::::::::::::::::::::::\ 
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         .. ヽ ::;;:.:..:.:.::;:;;';:;';';.: '"´    '  ;.:.. : . . ::_ -─-、::::::::`ー-..  
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          ..ヘ:;:;:;:;:.;'   .,犇:ji戀戀鑾鑾戀戀i:犇,  .....:.:.:;:;..:.:.:.:.:.:.:.:.:`ヽ
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                    淡:戀戀鑾鬱鬱鑾戀戀:淡
         :;:;:;\::.:;   ‘黍:i戀戀鑾鬱鑾戀戀i:淡’   ;.: : .:;:;:;:;:;:. . .:::
         、:;:;:;:;:;::.:,    ''淡:i戀:戀鑾鑾戀:戀i:淡'   ...:.:. . ....:;:;:;:;:;:;:;:.:::
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          ::::::oへ. .:.,    ‘'%:戀戀戀戀:沙'゙    .,.:.: : .::_ノ:;:;:;:;:;:;:..:.:.:::
          \::::::::::へ :...      `¨“““““¨´     .,..: .: . ..'':;:;:;:;:;:;:;:.. . .:.:.:.:.

しかし、日輪は黒き焔となり、劫を崩壊させる程の轟音を伴って七つの山脈に堕ちる
ものと知る。

.

40 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:19:42 ID:hW9v6RD60

黒き焔と王の血は、光の少女と世の全てを飲み込んだ。
無数の貘は灼熱に舞い、それを逃れた貘は血の海に飲まれていった。
主を失った蟲は、空を支配して貘の脳を貪り食うが、やがて貘と共に焔に舞う。

我が光も、焔や血は滅することは出来ない。
王として、焼ける世界をただただ眺めるのみである。



          ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 (( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))         ヴボオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))
       (( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))

(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))
       (( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))

ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!



狂った貘共だけは、焔からも海からも逃れ、此処にあった。
目を剥き、牙を生やした貘共は焔の中を行く。

人の味を知った貘共は、人の夢に回顧する。
貘は人の味が我慢ならぬ。
人の味を覚えて、人の夢に溺れていくのである。

.

41 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:20:45 ID:hW9v6RD60


ゴオオオオオオオオオ!!
        ・
  .                   。
        ;,・
               ヴボオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
            ,;;.
(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚)).・
                         

だが、貘共が如何に人の夢を欲しようとも、殆どの夢を生むものは焔と海のに飲まれてしまった。
貘共は吠え、藻掻き、苦しみながら成れの果てを突き進むのである。





(  ´・ω),,,.
   ;;;;;...;;;...
       ;;;;;,,,,


人の王は貘共を哀れんで、遂に死を知り、地が溶けていくのを横目に、
川の向こう側へと渡っていった。

.

42 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:23:01 ID:hW9v6RD60

6.媚毒


私の光にて、全てを無しにすることも考えぬ訳ではない。
黒煙の空から、観音菩薩諸共、光柱にて更地にすることは容易である。
王の威光にて理を破滅させるのにも劫程の時は必要ない。

私がここに在る限り、無となって何もが止まってしまっても、王たる私の体が
大地となり、その垢は生けるものとなり、新たなる神秘が誕生しよう。


川 ゚ -゚)”   

だが、人の王の呪いはそうはさせぬ。
彼奴の臓物は我が体を食い込み、離れることはない。
不完全な真世を生み出しておいて、ようも此処までやるか。阿呆である。


三三三三三三三三三三ニニ==―;:;. :;. ;:;::;:;:;' ,:;:;:;:;:' ,:;:' ;:―==ニニ三三三三三三三三
三三三三三三三三ニニ==―:;., ';:;:;:,. ';  ';: ;:;:  ':' ;' ,:;' ,;:;' ,:;―==ニニ三三三三三三三
三三三三三三ニニ==―;:;:' :;:;., '  ':;: ':;.  ';: ;  ; :' ;:' ' ,.;:;:―==ニニ三三三三三三三三
三三三三三三三ニニ==―;., ';:;:,. ;:, ':;.  _;__ ;  :' ,:;' ,:;':;―==ニニ三三三三三三三三
三三三三ニニ==―;:,.,.,''' :;:;::;:,.,. .,.,   ,ィ7///7ヽ   ,.,.,. ''' :;:;―==ニニ三三三三三三三
三三三三三三ニニ==―:;:;.,.,.,''       l////////ハ    ,.,.;:;:'―==ニニ三三三三三三三
三三三三三三三ニニ==―;:;:;.,.,.,.,.,.  {/////////j  ,.,.,.,.,.,.,..,.;:;:―==ニニ三三三三三三
三三三三三三三ニニ==―:;:;:;.,.,:;''   ヾ///////ノ   .,., ''':;:;―==ニニ三三三三三三三
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三三三三三三三ニニ==―:;:;'' .,.,'   ,:' :; . :;.  , ':;., ';:;.,.:;:;―==ニニ三三三三三三三
三三三三三三ニニ==―:;:;:;:;:;:;:'' ,:;' ,.;:  ,: ; ;:;:,. ':;:. :;:;:,., '':;:;―==ニニ三三三三三三三
三三三三三三三ニニ==―'' ,.;:'' ;:;:;:;:  .,:; : :; ;:,. ';:;.,. :;:;:―==ニニ三三三三三三三三三


光の少女は黒の焔に飲まれ、世界線を乗り越えた。
こうなればもう引き戻せはしない。

.

43 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:24:25 ID:hW9v6RD60

人の王が見ようとした真世は葬られた。
否、此れこの末世こそ真世となろうとしているか。



          ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 (( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))         ヴボオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))
       (( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))


狂った貘共は全てを破壊しながら人の夢を求める。
僅かに生き残った人を見つけようとも、その狂った目では器ごと貪ってしまうであろう。
そして、より明確となった人の味を嫌い、再び人の夢を求める。

梵世のみならず、三千世界までも広がった焔と海の中、貘共はついに理想の夢を見つけた。



/ ,' 3


その汁滴る芳醇な夢は、狂った貘共にでさえ大いなる魅力と感じた。
五百の貘が鬼獣となり、それを産む老人に襲いかかるが、その夢にはまるで歯が立たない。

.

44 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:25:58 ID:hW9v6RD60

         。
    .       ギャアアアアアアアアアアアアアア!!
(( ゚゚W゚゚)).・


老人の意思は現をも凌駕し続け、その夢は梵天の域に達していたのであるから、
貘共のそれとは次元が違うのである。


::;;ヽヽ:;;;ヽヾゞ;::;:; ヾ; ;.:ゞ;"ゞ ;;;;;ヾ゛ミゞ;;゙;:ヾ; ;ヾ)
⌒ゞ;ゞゞ;ヾゞ;ゞヾゞ;;;,.ヾゞヾ;::;:; ヾ;;ミ; :.ヾヾ;::;:ゞ          _                                     `   :
ゞ;ゞ゚ ゞ; ヾ ; ; ヾゝヾゞ。゙;;;ゞ;;:::゛;;ゞ; ;ヾ;゛; ヾ
ゞゞ::;;ゝ;;゛ゝ;::;:ヾヾ:/;;゚::;;ヾゝ;;;::;:゙ヽヽゞ;;ゞゞ                   `                                   `  .
;;''ヾ;;ゞ;;ゝゞ;;ミミ::ヾヾヽ;;;ゞ;;ソ;;゛:.:;;.ゝ
ゝ;;ゞ::ヽ;;゚ヽヾ::;;ソィ;;ヽヾゞ                                          '  .
::(,ゝ;;ゞ:::ヾゞ::ソ;;ミ`             'ー                                   `   ,
:!i::{
ヾヾ゚;;ヽ':;;ミミヾ;ヾヾヽ:.,
;;ヽ::;ヽ::;:ヽ::ヽミ;ゝ;;;::;:ヽヾツ;.:..                    ´   `  .
;';;ゝヽ:::;: ;;), ' ヾゝ'::ゞ;;゛;::ヽ;;ッ 、       . .   . ´         `   .
⌒;;ヾヾゝヾゞ:;;⌒ヾ;';;ゝヽ::ヾ;;ゝ;;ソィ,,   .        .              `  .
 ;; ::;:;;ヾゝ;;ヽ;.::ヽ; ;:⌒ヽ゛ ヽ ;::ミヽヾ;;ゞ。.:,           ' ,                                    '
 ;ゝ /;;ゞヽ::ゞ;;;゛::ゞ:ゞ::;"ゞ ; ; ;ゞ゛ ゛:: ;;ソ         .                    `
ii:::..ヽ;; ::;:;;ヾゝ;;ヽ;.::ヽ;;ゝヽ;; ::;:;;ヾゝ;;ヽ;.ヽミ;;ン    ´   `
;;|:ヾゞ;;::; ;;ヾゝ:.:.゛;; ;:ゝゝヾ::⌒ミ゛;;⌒;;;;へ゛;;::;::;;ヾゝ ;;゛ン;.,   `         `        ,
ヾ|i ゝ;` ; ;;゛::ヾゞ;;::゚;;/;: ; ; ;ゞ::;::: ;;::⌒ヾ゚;;ヽ':;;ミ゛..゛:: ;;ソゝゞ,;.,,                     (丶
::;::,゛ゞ.ヾ;ツヽヾ;;ゝゞ:ヾゞ;;::ゝ;::ヽ;;ゝヽ::;: ゞ;ゞ゚ ゞ; ヾ ; ; ヾゝヾゞ。゙;;;ゞ                      `
;;|i ;;;ヾ(;;ヾヾゝ;:;::ヽ;;ゝ;` ;ゝゞ; ;;ヾヾゝ;;ゞ:ゞ::ゞ;;/.::⌒;;ヾ::;:;;ヽ::;ヽ)゛::).;、 ,         -               '         i)
 |i;:;;;i:ii;;.;;; ;ゝ;;).:ゞ:,゛ゞ.ヾ;: ; ;ヾ;;;ヽヾ.ヾ;;;ヾゞ;;;,.ヾゞヾ::;:; ヾ;;ミ;:.ヾヾ:ゞ  、
イ-=' ̄¨ー、;ィr==`゙ "ゞ ; ;"/" ヾ ;ゞ ;" "       ~       ,                               、
__、===≧=ィ'イ⌒゙                         `            、        、                       ,
、r-''ー' ̄-‐'´`                              `  .   、                          ,

老人は遙かなる命の中で、この瞬間を待っていた。
そして、三千世界の焔までも耐え忍んだ夢の汁は、狂った貘共を溺れさせるには十分過ぎた。

.

45 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:28:56 ID:hW9v6RD60

貘共の体は乾ききっている。
毛根から染み入るほどの濃厚な夢は、阿片よりも危険な毒であった。

                     ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
                                    ああああああああああああああああああああああああ
上二本与半卉亠十士廿卞广下广卞:(・)廿士十亠∵∴∵∴                  ああああああああああああああ
下广卞廿士十亠卉半与本:(・)二上旦上二本与半卉亠十士∵∴∵∴∵∴
         ∵∴∵∴      广卞廿士十亠卉半与本二上旦上:(・)二本与半卉
     ∵∴∵∴         上旦上二:(・)本与半,.==-    =;卞广:(・):(・)下下广卞廿士十亠卉半与本二
              ∵∴ 卞:(・)广卞廿士:(・)十 ーo 、  ,..of二上旦上二本:(・)与半卉亠十士廿卞广下
               与本二本与半卉亠十士廿 ̄   i∵∴∵∴・ ゚゚W゚゚廿士十亠卉半与本二
         ∵∴∵∴   十士廿卞廿士十亠卉   .r _ j /上:(・)旦上二本与:(・)半卉亠十士
            卉半与本二本与半卉亠十士:(・) 'ー-=ゝ/ 下
          亠十士廿卞∵∴∵∴士十亠卉半与\  ∵∴∵∴ノ上二:(・)本与半卉亠十士廿卞广下
         十亠:(・)卉:(・)半与本半卉∵∴亠十士廿卞广下
       ri亠十士廿:(・)卞广下广卞廿士十亠卉半与本二上旦上二本与



毒に侵された貘は人面となって、感染する憤怒に達した。
焔と海の中で、消滅した貘を含め、全ての貘共は憤怒した。
竜巻が起こり、憤怒の妖獣共は怒りのままにその全てを破壊した。

               :(・)廿士十亠
          :(・)卞广下广卞廿士十亠卉半与本二上旦上二本与
∴∵∴ノ上二:(・)本与;  :・ 卞广:(・):(・)
      :(・):(・):  / ,' 3  ∵∴∵∴卉:(・)半与本半卉
士十亠卉半与本二上    旦上二本与
            十士廿卞广下∴∵∴

老人は決して屈さぬ夢で貘共を操った。
怒りの貘共は破壊の化身となって須弥山へ向かった。
怒りの咆哮は空を割り、観音菩薩をも押し出した。

.

46 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:30:14 ID:hW9v6RD60

私は目を剥き、天空から光を降らせた。
おおよそ一億の貘が肉片となって跳ねたが、怒りの貘共は在りし日の韋駄天の速さで
私の元へ向かってくる。


 あああああああああああああああああ
      
     ∵∴∵∴∴∵∴∵∴∵∴(●)∴∵∴∵
      ∵(●) ∴(●)∴∵∴∵∴∵∴
   ∵∴ ( ●)∵∴∵∴∵∴∵∴(●)∴
∵∴(●)∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵     あああああああああああああああああ
    ∵∴∵∴∵∴∵(●)∵∴∵∴∵∴∵
    ∵∴(●)∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴(●)∴
    ∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴    ∵(●)∴∵∴∵∴∵
  ∴∵∴∵∴∵∴(●)∴∵ ゚゚W゚゚ ∴∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵
 ∴(●)∴∵∴∵(●)∴∵ ∴∵  ∴∵∴(●)∵∴∵(●)∵∴∵∴∵(●)∵
∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵(●)∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴
∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴(●)∵∴∵∴∵
 ∵(●)∵∴(●)∵∴∵(●)∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵
    ∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵
 ∵∴∵∴∵(●)∴∵∴∵∴∵∴(●)∴∵∴
     ∵∴∵∴∵∴∵(●)∵∴∵∴∵∴∵
              ∵∴∵∴∵∴∵
                  ∵∴∵(●)∵

そして、大那由他の肉片は憤怒により再生した。

怒りの力は幻想を狂わせるものだ。
私とて知らない訳ではない。

愚か貘共は、完膚無きまで怒りに支配されたか。
最も醜き妖獣と成り果てたか。
此処に在るなら良きではあるが、これはあまりにも愚かである。

.

47 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:31:39 ID:hW9v6RD60

上二本与半卉亠十士廿卞广下广卞廿士十亠卉半与本二上旦上二本与半卉
下广卞廿士十亠卉半与本二上旦上二本与半卉亠十士廿卞广下下广卞廿士十亠
上二本与半卉亠十士廿卞广下广卞廿士十亠卉半与本
下广卞廿士十亠卉半与本二上旦上二本与半
上二本与半卉亠十士廿卞广下
下广卞廿士十亠卉半与本二上旦上二本与半
上二本与半卉亠十士廿卞广下广卞廿士十亠
下广卞廿士十亠卉半与本二上旦上二本与半卉亠十士廿卞广下下广卞
上二本与半卉亠十士廿卞广下广卞廿士十亠卉半与本二上旦上二
            二上旦上二本与半卉亠十士廿
               卞广下广卞廿士十
          亠卉半与本二上旦
        半卉亠十士廿卞广下广卞
        士十亠卉半与本



やがて貘は、老人を含む全ての生を破壊した。
破壊の化身は摩訶色の果実を踏み砕き、三千世界は私と貘共のみとなったのだ。



詰みである。

憤怒こそ王の理を破壊する真なる力であるから、我が威光をもってしても再生には繋がらぬ。
観音菩薩が緑となって、錆びて朽ち落ちることをもって、真の壊劫の到来を告げた。

.

48 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:33:25 ID:hW9v6RD60


                       ベシャリ
                                _,ィ(。
                               `'''´⌒'・      あああああああああああああ
     ,ィ圭|゚゚W゚゚ア '’    __       ’         ,ィ(____,ィ∵               ,ィ(_   あああああああああ
     炸圭(       ,ィ升彡      ..・ξ ゚川    ノ圭圭圭゚゚W゚゚そ          。  佳圭゚゚W゚゚、_
      ⌒`寸ト、   ,{抄'⌒    ノ斧ミ、 o    ∴炸圭圭圭|iて ',∴ ・         _ノ佳佳佳て。
       ゜     ノ/        ⌒∴   ・ ノ(_ノ圭斥⌒',寸ミ、        ',.:,:・'`¨∵¨¨⌒´
     ,,、    //   ノ(      .・    /少'⌒ `       ..,, _,.。x≦少"・       ,ィ(_∴_,:・・
  π_ノ心、_ノ(,炸||(   ,,.,⌒ ・っ (゚-∴ ・                 ;,,ィ炒⌒;.    c=≠二,ィ゚゚W゚゚圭圭(;''
   )圭圭圭圭圭ア  ∴:¨'`   `                     ',∴ ・     ⌒ 寸筵τ'⌒``
 τ`Ⅷ:圭圭゚゚W゚゚圭(_ノ廴 τミx。、∴__            ノ廴_,ィ゚゚W゚゚廴ィ
   )}圭圭圭圭圭そ `⌒'・    __,ィ圭掛x、∵      ,ィ炸圭少⌒'・
 _,ィ炸圭圭才寸圭廴。x:≦少"´⌒''''⌒¨∵¨´      ⌒¨¨∵:・
   ⌒`寸ト、∴`寸ミ、 ∵:・
      `寸そ:¨'`沁っ


轟音の後、貘共の波は私を飲み込んだ。
瞬間、耐えたが、私は粉砕した。

体は少しの形を残し、他は擦られたように伸び、粉となった。
脊椎は腐敗した赤茄子の様に潰れ、汚泥となった。
終いに、脳は爆ぜ広がり、地の染みとなった。


王を失った事に貘共は気づかない。

怒りに満ちた妖獣は、怒りのままに王なき世を蹂躙するのである。


.

49 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:40:47 ID:hW9v6RD60

7.敗と知る


星は貘共のみのものとなった。
もはや誰も怒りを邪魔するものなどいない。
全てが怒りによって消えるまで、怒り狂う事が出来よう。


( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)( ^ω^)

貘共の怒りは幾億という歳月の果てに、ようやく終わりを迎えた。


         うっ                           うっ
   うっ                               うっ
                         うっ
( ;ω;)( ;ω;)( ;ω;)( ;ω;)( ;ω;)( ;ω;)( ;ω;)( ;ω;)


そして貘共は王である私が居ないことを初めて知り、絶望した。


 ええーん
          ええーん
。・゚゚ '゜(。´ω`) '゜゚゚・。


貘共はその後、幾千幾億を涙だけで過ごした。
血の海は引き、代わりに貘の涙がそれを満たした。
それは非常に澄んだ海であった。

また、この世界に夢が無くなった為に、貘共は泡のみを食すようにもなった。

.

50 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:43:17 ID:hW9v6RD60


   ぽふぽふ           ぽふぽふ         ぽふぽふ
ぽふぽふ          ぽふぽふ        ぽふぽふ
   ぽふぽふ                ぽふぽふ   ぽふぽふ

( )^ω^)”( )^ω^)”( )^ω^)”( )^ω^)”( )^ω^)”( )^ω^)”
( )^ω^)”( )^ω^)”( )^ω^)”( )^ω^)”( )^ω^)”( )^ω^)”
( )^ω^)”( )^ω^)”( )^ω^)”( )^ω^)”( )^ω^)”( )^ω^)”


夢を食えぬ貘は、貘である意味を失う。だが、泡のみの源でも貘は良く良く増えた。
貘は油断をすると、すぐに増え始めるものであるから、適度に間引かなくてはならない。
しかし、貘は貘を無碍に殺せはしまい。


( ´ω`) o 
       O ;'⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ 、_ 
          (         川 ゚ -゚)
          ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒ヽ、_ノ⌒~


貘共は太平の世を思い出した。
あの、王の居て、祈りがあり、天から光の降り注ぐ、あの頃を渇望した。


.

51 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:44:14 ID:hW9v6RD60

  。。
  MM
( ^ω^)


やがて貘共は王を産んだ。
貘に選ばれた貘は、実に王らしく振る舞った。



          ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!

 (( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))         ヴボオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))
       (( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))(( ゚゚W゚゚))


貘は王の誕生を至極喜んだのだが、やがて怒りと人の味を思い出すと、
貘共は波となって王を踏み潰した。






( ^ω^)

貘共はそれを何千回も繰り返し、果てに貘では王になれぬという事を理解した。

.

52 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:47:17 ID:hW9v6RD60



                   みちみち
   みちみち

( ^ω^ )) ^ω^ (( ^ω^ )) ^ω^ (( ^ω^ )) ^ω^ (( ^ω^ )) ^ω^ ((
( ^ω^ )) ^ω^ (( ^ω^ )) ^ω^ (( ^ω^ )) ^ω^ (( ^ω^ )) ^ω^ ((
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その長きに渡る勉強の中でも、貘共は増えに増えていた。
ついに貘同士が付き、身動きも取れなくなった頃、貘自身、貘であることを忘れ始めた。



リliリ ゚ー゚)

ただ、恋い焦がれた少女の姿ははっきりと覚えている。
風に香る檸檬の飛沫。眼に移る時の凪。鐘の音は今や聞こえない。
あの暖かき少女の手を、額に寄せる妄想をし、身動きの取れぬままに、幾億の歳月が過ぎた。


貘共は増え続ける。

月が無色にて輝く夜、星は貘を支えきれなくなった。


幻想に潰された星は、次第に星である価値を失い、此処にあることが出来なくなっていった。

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53 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:48:51 ID:hW9v6RD60

風のない朝、遂に星は幻想に飲まれた。
これは現の敗北を意味する。
なれば新たなる劫を始める事も出来ぬ。この時に滅するものなり。


貘はまだ増え続ける。
だが、増え続ける意味はない。
星を超えて、ただただ永遠に増え続ける。無の空間で、ただ肥大する。


その肥大は誰にも知られること無く、無意味な膨張を永遠に続けるものである。
それは価値のない幻想という他ない。



吁、こうなった責は私が取らねばならない。
臓物を散らし、脳をも風に晒した私では命をもって責を取ることは出来ぬ。

故に私は、我が庭の蓮の花を切り落とした。


淡赤の花弁がしぼみ行く中で、私はとある夢を思い出していた。


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54 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 23:50:55 ID:hW9v6RD60

私がまだ王となる前の遠き夢。




从'ー'从「一つ一つ丁寧に描きましょうね」

リliリ ゚ー゚)  
    φ...


幼子の頃の私が、大きな紙に動物の絵を描く。

あの夏の日。
父母に連れられて来た祈りの島。
祈りの鐘の鳴る寺院。極彩色の輝き。微かな香辛料の残り香を感じる。


釈迦の座る所白くある動物の、その愛らしさたるや、他の何にも変えられぬ。
私はそれが愛おしかったのだ。

ただ、愛おしかったのだ。







― 了 ―

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