Corrupted Fractal
1 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 00:04:15 ID:F/4n3V320




………すると、道化師の男は不規則な笑いを交えてこう答えた。

\(^o^)/「wwwそんなのwwどうでもwwwよwくwねwwww」

lw´‐ _‐ノv「……」

炊飯器を愛する女は何も言わない、いや、言えない。

\(^o^)/「wwww」

男の顔にはいつものように色鮮やかなメイクが笑みを描いている。
その赤と青と白は、公園の街灯に照らされぬらぬらと照り輝いていた。


男がだぶだぶのズボンのポケットに手を入れ、何かを取り出した。

\(^o^)/「ここにボールがありマスwww」

蛍光ピンクの塗料が塗られたそれは、見た目以上に重量がありそうである。

\(^o^)/「これを投げマスww」ヒョイ

右手から放たれたボールは放物線を描き、左手に収まった。

\(^o^)/「1個ならそれでいいんだよ」

そう言うと、男はもう一つボールを取り出した。今度は蛍光緑だ。

\(^o^)/「今度はこいつを投げると……」ヒョイ

先ほどと同様に、右手から放たれたボールは左手に向かって落ちていく。
だが、左手にはピンク色のボールがある。男はこなれた手つきでそれを右手に移す。
そして緑色のボールは無事、左手に収まった。

2 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 00:05:45 ID:F/4n3V320

\(^o^)/「要は、緑のボールを受け取るにはピンクをどかさないといけないのwwww」

\(^o^)/「で、オレはこのピンクのボールだったってワケwwww」

ケラケラと嗤う道化師の声が闇夜に溶け込んでいる。

lw´‐ _‐ノv「……全然、わかんない」

女がぽつりと、しかし、ある程度の強さを伴って呟いた。

\(^o^)/「そりゃそーだろwww」

\(^o^)/「オレだって、よくわかんねーしww」

女には、道化師の男の冷ややかな笑顔の下の表情を見ることはできない。
おそらく道化師本人も忘れてしまっているのだろう。

3 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 00:09:21 ID:F/4n3V320

* * *


台所の窓から差し込む朝陽は、ステンレス製の流し台やコンロの上の鍋に反射して、幻想的な空間を作り出していた。


lw´ _ ノv「……」

炊飯器を愛する女は、炊飯器の蓋を開いた。
まず目に飛び込んでくるのは勢いよく昇る湯気。

数回まばたきをすれば、艶やか(つややか)に光る米粒がその炊飯器の性能の良さを実感させてくれる。


lw´ _ ノv「……」

湿らせたしゃもじでかき混ぜると、米特有の豊かな香りが鼻孔を抜けていく。

手元のボウルに米を移した女は、湿らせた手に塩を付けてその上に米をのせた。


ぎゅ…、ぎゅ…


まだ熱を保ったそれを両手で包んで形を整える。中身は何も入れない。


ぎゅう…


lw´ _ ノv「……」

本来ならば、力まかせに握るのはよくないとされている。
しかし、女は米粒が潰れるのも気にせず、押さえつけるように、一つにまとめている。


ぎゅ…、ぎゅ…


ぎゅ…


lw´ _ ノv「……」

火傷を恐れることなく、次々とボウルの米を塊にくっつけては同化させる―――。

4 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 00:11:33 ID:F/4n3V320

ぎゅう…


ぎゅ…、ぎゅう…


ぎゅ…


力のあまり、何度も爪が肌に食い込み、血が滲み始める。


ぎゅう…、ぎゅうう…


ぎゅ…


残酷なまでに光に満ちた空間で、女はその作業をしばらく繰り返した。
流れ出た血がじわじわと米粒に染み込んでいく。


ぎゅ…


ぎゅ…


塩分が真新しい傷を刺激する。それを気にせず、女は握り続けた。

5 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 00:13:33 ID:F/4n3V320

ぎゅ…


ぎゅう…


ぎゅ…、ぎゅう…


ぎゅ…


ぎゅう…


ぎゅ…

6 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 00:15:12 ID:F/4n3V320


lw´ _ ノv「……」

女の手には、いわゆる“おにぎり”とは似ても似つかぬものが収まっていた。

炊飯器の中で目がくらむような白さで光っていたはずの米粒は、血で赤黒く染まっている。


lw´ _ ノv「……」

普段の自分からは考えられない出来だ。


でも仕方ない。


指の表面に薄く伸びて固まった澱粉の塊を、歯で削ぎ落とすようにして食べる。


全てはあの男のためだ―――。


女は心の中でそう呟くと、ふふり、と嗤った。

7 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 00:17:54 ID:F/4n3V320

* * *

\(^o^)/「さあさあwwよってらっしゃいw見てらっしゃいwww」

道化師の男はいつもの公園でいつもの時間にいつものセリフで始めた。


見物人は相変わらず少ない。が、いつものことである。
そんなことで気に病んでいたのはとっくに昔の話だ。


いつものようにボールを取り出し、ジャグリングを始める。

一番前に座っていた男の子が「うわぁ、すごい!」と歓声をあげる。
それと同時に、後ろで見ていた何人かは何事もなかったかのようにその場を立ち去った。


それもいつものことだ。


\(^o^)/(ん?)

道化師の男は何かに気づいた。


lw´‐ _‐ノv「……」

炊飯器を愛する女が木々に隠れるように立っているのである。


\(^o^)/「そこのwwおねえさんwww」

道化師はお道化た(おどけた)口調で女に声をかけた。

\(^o^)/「そんな離れたとこで見てないでwwwもっとこっちに来なさいよwwww」

8 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 00:19:53 ID:F/4n3V320

lw´‐ _‐ノv「……」

こっちに来なさい、と言われたなら仕方ない。

女は黙って近づいた。


\(^o^)/「よっww」

\(^o^)/「ほっw」

\(^o^)/「はっwww」

男は大袈裟な仕草で、宙に浮かんだピンを受け取っては、また、宙へ放っている。


―――いったい、いつからこうなってしまったのだろうか。


lw´‐ _‐ノv「……」

炊飯器を愛する女は手提げから、今朝作った塊を取り出した。

色は時間がたったせいか、より一層黒ずんで見える。

lw´‐ _‐ノv「……」

愛おしげにそれを見つめる女の姿は、どんな芸術作品よりも美しく見えただろう。

9 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 00:21:57 ID:F/4n3V320


どくん


心臓が脈打つ。

それに呼応するように塊が脈打つ。


lw´‐ _‐ノv「……」

女は塊を口元に近づけた。
そして、固く閉ざされた口を静かに開いて、



がぶり



赤黒いそれを食べ始めた。

10 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 00:26:50 ID:F/4n3V320

\(; o )/ゴフッ

胸元に激痛が走った。
聡明な道化師はすぐに何が起きたかを悟った。


女が口にしているあの塊は、自分の“心臓”なのだ。


飛んでいたジャグリング用のナイフを何とか掴み取る。
多くはないがパラパラと拍手が聞こえた。


\(;^o^)/「あ、ありがとう、ございマスwww」

\(;^o^)/「さ、さあゴフッ、続いては……」


思うように体が動かない。
口からは血が溢れ出てきた。


lw´‐ _‐ノv「……」

男の視線の先では、女が黙々と食べている。
別にそれは構わないが、どうせならこっちも見てほしい。


道具入れから棒の両端に紐を巻いたもの数本とボトルを取り出す。
ボトルは薄黄色の液体で満たされていた。
その液体をバシャバシャと棒にかける。

そして置いてあったバーナーで火をつければ、たちまち赤い炎がごう、と音を立て燃え移った。

おお、と見物人の何人かが声を上げた。


\(;^o^)/「ではww皆さま……」


\(#゚o゚)/「とくとご覧あれ!!!!」

11 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 00:28:57 ID:F/4n3V320

がつ、むしゃ、もぐ……


lw´‐ _‐ノv「……」

自分は今、あの男の心臓を食べている。

手の中で、赤の塊は大きく拍動している。


ぶち、じゅる、どろ……


思った以上に大きくて食べ終わるのには時間がかかりそうだ。


\(#^o゚)/「ほいっ!ほいっ!!ほいっ!!!」

\(#^o゚)/「ほいっほいっほいっ!!!!」

男は器用に炎を操っている。


ぱく、もぐ、ぶちゅ……


lw´‐ _‐ノv「……」

当然だが、鉄臭い。帰ったらしっかり手を洗わないと、このにおいはとれないだろう。
とろり、と血が手のひらから手首、腕へと伝っていく。

ああ、勿体ない。

女は素早く赤い筋を舐め取った。

12 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 00:31:02 ID:F/4n3V320

\(# o )/「はい!ほい!ゴハッほほいのほいっ!!!」

痛みは体中に広がった、と思いきや、あっという間に消え去っていった。
しかし、どうにも腕に力が入らない。視界もだいぶ白んできた。

それでも、先ほどから男の子が食い入るように見ているのを、うっすらと感じ取ることができた。

\(# o )/「ゴホッよっ!」

咳き込むたびに口から血が出てくるため、白いはずの顎とシャツは真っ赤になっていた。

13 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 00:33:51 ID:F/4n3V320

がつ、がつ、がつ……


lw´‐ _‐ノv「……」

ああ、手も服も汚れてしまっている。きっと口の周りもひどいことになっているだろう。


\(# o )/「はいっ!」

\(# o )/「あらぁ!?」

\(# o )/「ぃよいせっ!」

道化師の男はわざと失敗する素振りを見せつつ、そつなく、ふらふらと、演じ続けている。


がつ、がつ、がつ……!


lw´‐ _‐ノv「……」

自分を駆り立てているのは一体何なのだろう。


がつがつ……っ!


憎しみというか、愛しさというか、同情というか……。
悲しみかもしれないし、恐怖かもしれない。


がつがつがつがつ!


端的に纏めれば、愛憎入り混じっている、とでもなるのだろうか。

14 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 00:37:16 ID:F/4n3V320

lw´‐ _‐ノv「……」

男は目を白黒させながら、炎の向こう側で嗤っている。
炎の熱のせいか、男がゆらいで見える。
それでも、血の色が炎の色より赤いことははっきりわかった。

それを見て、女は


lw´ _ ノv「ふふ」


嗤った。


そうだ。自分は興奮しているのだ。
この興奮を望んでいたのだ。


lw*´ _ ノv「ふふふ、ふひっ」


ああ、もう、止まらない。



lw*´ _ ノv「ひひっ、ぐひっwwww」




lw*´ ∀ ノv「ひゃはっ♪ひひひゃwww」





lw*´°∀°ノv「ぎゃひゃひゃひゃひゃはひゃははhyahyahyahyahyahyahyahyahyawwwwwwwwwwww」









.

15 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 00:40:07 ID:F/4n3V320


\(# o )/(……)


男はもはや何も考えていなかった。
考えなくても身体が勝手に反応するのだ。

女の甲高い声が聞こえた気がする。

余計なお世話だとは思ったが、やはり、ここは素直に感謝した方が良いだろう。
見物客もいつの間にか増えていた。全員、無意識のうちに涙を流していた。
妙にアンモニア臭がする。もしかしたら、誰かが失禁したのかもしれない。


\(# o )/「……オレはっ!!」

舌を動かすのも一苦労だ。

\(# o )/「何度も!終わりを求めてっ!!」

\(# o )/「誰が何と言おうと!オレはオレで!オレがオレであり続けるために!!演じ続けてっ!!!!」

\(# o )/「……でもっ!!」

\(# o゚)/「これでっ!!ようやくっ!!!終わる!!!!」

\(# o゚)/「ありがとうっ!!余計なお世話だけど、ありがとうっ!!!!!」


後悔はないのだから。
鳥の囀りや木の葉のさざめきが美しい。

16 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 00:42:16 ID:F/4n3V320

ああ、やっと終わらせることができる。


\(# o゚)/「終わる!終わった!!終わりっ!!ありがとっ!!!!」


\(# o゚)/「オワリっ!オワタっ!!おわっ、オワリ!!終わるオワリオレでおわおわっwwww!!」


やっと終わる。



\(# o゚)/「おわりゅっ!!オワルオワタオワリオワリオワルオワアリガトオワタオワッタオワルオワリオワタオワタオワタオワタオワタ」




\(°o°)/「オワタアアアアアアアアァァァァアアアアアああああああああああああぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!」





道化師の咆哮が、澄み切った青空に響き渡った―――

17 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 00:44:21 ID:F/4n3V320
――――――――
――――
――


ぐちゅぐちゅ、ぬちゃぬちゃ……


(*# ;;- )「……」ハァハァ

薄暗い部屋の中、傷だらけの女は自慰に耽っていた。

18 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 00:46:21 ID:F/4n3V320

右手を下半身に持っていき、指を性器の中へと惜しげもなく突っ込んでいる。

一方、左手には文庫本。
中身は小説で、女が道化師の心臓を食べる場面が描かれている。

それを読むことで性的興奮を高めているのである。


だが、それでも女は満足できなかったため、テレビの画面の中では、AV男優が女性に対し、陵辱の限りを尽くしていた。

19 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 00:48:11 ID:F/4n3V320

男優は女優の首に手をかけ締め上げながら、強引に下半身を動かしている。
シミ一つない女優の顔は蒼ざめ、焦点は定まっていない。
女性の声とは思えない、狂ったような喘ぎがテレビからこちらへ伝わってくる。

あ、今、AV女優が再び嘔吐した。撮影前に何を食べたか知らないが、吐瀉物は何故か緑色だ。
女優の口からは常に唾液だか胃液だかが垂れており、ぬるぬると光っていた。

20 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 00:50:56 ID:F/4n3V320

ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ……


(*# ;;- )「ぅ……」ハァハァ

指を限界まで入れ込んでは、抜き出し、また奥まで突っ込む。

かれこれ1時間はたっているだろうか。指はすでにふやけきっていた。


文庫本を投げ捨て、左手を尻の穴に差し込む。
体勢のせいか、手首が痛いがそんなことはどうでもよかった。

右手を下半身から離す。

何度も何度も穴の奥を引っ掻きまわしたせいか、指と爪の間には半透明の“何か”がぎっしり詰まっていた。


だが、満たされない。


左手を尻に入れたまま、戸棚を開いて取り出したのは、樹脂でつくられた男性器を模ったもの。


ずぶずぶ……


躊躇いもなく性器の奥までそれを差し込み、一気に引き抜く。

(*# ;;- )「ふぁっ、ぁん……」

指では得られなかった、腹の底から湧き上がってくるような快楽。



もっとだ。もっと欲しい。


.

21 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 00:53:18 ID:F/4n3V320

左手を尻の穴から抜き取り、近くにあったスプレー缶を勢いよく押し込む。

焼けつくような痛みが一瞬走ったが、腸壁はその冷たい金属をゆっくりと受け入れていった。


じゅぽっ、じゅぽっ、ずぽずぽずぽずぽ……


(*# ;;- )「ぁがっ!あっ、ああっ……」

がくがくと快感に身体を震わせる女の耳には、もはやテレビの音は届いてい。


(*# ;;- )「あっ、ぁん!ダメ、もっと……!」

やはり自分だけでは不十分だ。
だからといって、止めることもできない。

止めてしまっては、それこそどうなるか分からない。


満たされることのない快感を嘆きつつ、手は止まることを知らない。
決して小さくはない胸を顔に近づけ、乳首を噛み締める。
何度もそうしたせいで、両方とも赤黒くなってしまっている。

(*# ;;- )「いっ、ぎぃっ!ひゃっ……」


テレビの画面は部屋と女を静かに反射していた。

22 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 00:55:23 ID:F/4n3V320


ふと、部屋のドアが開いた。


(・∀ ・)「ただいま……」

男は先ほどまでテレビの向こうで女優を犯していたAV男優だ。

(・∀ ・)「……」

AV男優の視線の先には

(*# ;;- )「あ、はんっ!!あっ、あっ、あっ……」

一心不乱に自らを慰める傷だらけの女。


女が口を開いた。

(*# ;;-゚)「……なにつっ立ってんの。早く」

ディルドーを引き抜き、女性器を見せつける。


(‐∀ ‐)「……はぁ」

男は大げさにため息をつくと、



ぱぁん!!!!



傷だらけの女の頬を引っ叩いた。

23 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 00:57:20 ID:F/4n3V320

(・∀ ・)「……」

(*# ;;- )「グエッ、オエッ、ガハッ……!!」

AV男優は女の首を両手で押さえつけながら、自らの性器を出し入れしている。
存外、気絶しない程度に首を締め付けるのは難しいもので、そうならないように犯すのは非常に骨が折れる。


(*# ;;- )「ひゅう、あっ……」

女の顔が赤く染まっているのは、快楽からか、うっ血しているからか、はたまた単純に部屋が暑いからか。
まあ、いずれにせよ、女にとってはすべて快楽につながるのだが。

ぎりぎりと右手で首を押さえつつ、その辺にあったディルドーを女の尻の穴に入れておく。

(*# ;;- )「あがっ、ぎ、ぁん……」

そして、耳触りのよくない嬌声を漏らすその口に、指をねじ込んだ。

24 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:00:46 ID:F/4n3V320

(*# ;;д )「おえっ、んぁ、っ……」

唇が、歯が、舌が、AV男優の指を奥へと誘い込む。

それに応えるかのように人差し指と中指で舌を挟んだり、上顎の硬い部分と柔らかい部分の境界辺りを擦り上げたりしてやる。


(・∀ ・)「……」


どうしたらこいつは満たされるのだろうか。


どれだけ罵っても、傷つけても、愛しても、女は求め続けてきた。


舌の根元を無理やり押し付ける。
びくん、と女は身体をのけ反らせた。

男が素早く手を引き抜くと同時に


(*# ;;д )「うげえええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」ビチャビチャッ


盛大に胃の中身をぶちまける。

25 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:02:41 ID:F/4n3V320


(・∀ ・)「……」


どうしたらこいつは満たされるのだろうか。


先ほどの疑問が再び湧き上がってきた。

AV男優は、傷だらけの女の恋人である。



(*# ;;- )「もっと、もっと……」ギュッ

女が、男の袖を握りしめた。


自分が犯さなければ、女は何をしでかすか分からなかった。


恋人のために、やりたくもないAV男優にもなった。


.

26 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:04:45 ID:F/4n3V320


左手でVサインを作り、女の鼻の穴に差し込む。
血が出てこようが関係ない。


耳の穴には舌を入れてみた。唾液を耳道に流し込んでやると、少しだけ女の頬が緩んだ気がした。


傷だらけの女の傷をそっと撫でてみた。ざらざらとした感触のそれらは、全部AV男優がつけたものだ。


全ては愛する女のため。
決して満たされることのない女を満たすため、男は傷つき、傷つけてきた。



(*# ;;- )「あっ、あっ!いいっ!!もっと、もっと……っ!!」

AV男優の射精を促すため、膣内の圧力が高まってきた。

27 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:06:54 ID:F/4n3V320

(・∀ ・)「……」

男は黙って腰を動かすスピードを速めた。
ついでに女の首も絞めておく。

(*# ;;- )「ぁぐ!えぐっ!!がはっ……」


(*# ;;- )「……」ハァハァ


(*#゚;;-゚)「……」

(・∀ ・)「……」


ふと、女と目が合った。
トロンとした表情ではあるが、真っ黒な二つの瞳はしっかりとAV男優の顔を見つめている。


(・∀ ・)「……」

男は、女の唇に優しくキスをした。

28 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:08:44 ID:F/4n3V320

傷だらけの女の意識は朦朧としていた。
それでも膣壁は、一滴も精液を漏らすまいと、男の陰茎をきつく締めつける。


(*# ;;- )「……」ハァハァ

(・∀ ・)「……」

男はもう一度キスをすると、ゆっくりと身体を離した。
流石に疲れてしまった。軽く掃除してからシャワーを浴びようか。

そう考え、腰を持ち上げようとすると


(*# ;;- )「ん」


女が腕を掴んで離さない。


(*#゚;;-゚)「……」

女の双眸は、吸い込まれるかのように黒い。

29 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:11:33 ID:F/4n3V320


ぐちゃあ……


(・∀ ・)「……」

指で、精液やら愛液やらでべとべとになった女性器を広げる。ぱっくりと開いている
ありとあらゆるものを何度も挿し込まれて大きくなったその穴は、瞳に負けないくらいに真っ暗だ。
そして女性器の下にも、控えめながら、漆黒の宇宙が広がっている。


女の穴という穴が、満たされることを求めている。


.

31 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:12:33 ID:F/4n3V320


(*#゚;;-゚)「ほら」

女が、幼い子供に話しかけるように両手を広げる。


( ∀  )「……」

ゆらりとAV男優の身体が揺れた。


そして、傷だらけの女の性器が、尻の穴が、目が、耳が、鼻が、口が、すべてが、ブラックホールのように男の意識を飲み込んでいった―――

32 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:13:55 ID:F/4n3V320
――――――――
――――
――

アパートの一室に若い男が二人。

('A`)「……」

一人は痩せ型で病的なまでに色白で

(-_-)「……」

もう一人も痩せ型で、開いているのか判別の付かない細い目をしている。


('A`)「なあ」

色白の男が話しかける。

(-_-)「……ん?」

気怠そうに細目の男が反応した。

('A`)「なんなの、これ」

これ、と言って指さした先には今時珍しいブラウン管テレビ。
画面の中では男が傷だらけの女の首を締めながら犯している。

(-_-)「200x年に公開された成人向け映画。監督は―――」

淀みなく細目の男が語り始めた。

33 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:17:34 ID:F/4n3V320

('A`)「あっそ」

だが、色白の男の反応は素っ気ない。

(-_-)「人に聞いておきながらその反応はないんじゃないのか?」

('A`)「別にそういう意味で聞いたわけじゃねーし」

('A`)「しっかし、何食ったらこんな作品作ろうと考えるのかねー」

(-_-)「作品のほとんどが濡れ場だから、君は気にいると思ったんだけどね」

('A`)「にしてもマニアックすぎんだろ。ゲロ見ても興奮しねーよ」

(-_-)「でも前に先輩がロシア土産で買ってきたマトリョーシカでヌいたって言ってたじゃん」

('A`)「あれは酔ってただけだっつーの」

他愛ない会話を続ける二人。映画の中身には大して興味がないようだ。

34 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:19:56 ID:F/4n3V320

(-_と)「あー、きっつ」

細目の男が目元を擦った。


二人は朝5時から映画を見続けている。
最初はコメディ、次にSFのシリーズ物の3作目、数年前に話題になったアニメ映画、どこかの映画サークルの作った短編、そして今の成人向けで五つ目。

かれこれ7時間たっている。


('A`)「いい加減カンベンしてほしいよな」

色白の男も不満を漏らした。

(-_-)「……仕方ないよ。自分たちで蒔いた種なんだから」

('A`)「だからってよー……」

テレビに視線を向けるとスタッフクレジットが流れている。

('A`)「お、やっと終わったぜ」

色白の男の血色がほんの少しだけ良くなったように見えた。
ボタンを押してプレーヤーからDVDを抜き取る。

35 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:23:17 ID:F/4n3V320

('A`)「で、次は?」

(-_-)「これ」

男が差し出したのは昨年に公開された、恋愛小説を映画化したもので、パッケージでは桜の木の下で男女が抱き合っている。


(#'A゚)「けっ!俺が最も嫌うやつじゃねえか!」

(-_-)「それは僕も同感」

二人は何かしら通じ合うところがあるようだ。

('A`)「たく、こんなの見るくらいならさっきのやつの方がマシだってーの」

(-_-)「でも見ないわけにはいかないでしょ」

細目の男がBlu-rayプレーヤーにディスクを入れた。

('A`)「てか腹減った」

(-_-)「あそこにせんべいある」

男が指さす。自分では取りにいかないつもりのようだ。

('A`)「お前の方が近いんだから取ってくれりゃいいのに」

ぶつぶつと文句を言いながら立ち上がる。

('A`)「よっ、……ああもうっ!狭いんだよ!!」

周りにぶつからないように身をよじらせる姿は、傍から見るとなかなか滑稽だった。

36 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:25:20 ID:F/4n3V320

('A`)「おら、取ってきたぞ」

せんべいは一枚一枚小さな袋で小分けされているものだ。
色白の男は袋を開いて、そのうちの一つを差し出した。

(-_-)「ああ、その辺に置いといて」

細目の男は涼しい顔をして麦茶を飲んでいる。

('A`)「ったく……」

色白の男は腰を下ろすとさっそく小袋を開いて食べ始めた。


('~`)「……」

ぼりぼりと音を立ててせんべいを噛み砕く。
床にぽろぽろとカスが落ちた。

(-_-)「あーあ、こぼしてんじゃないよ……」

('~`)「へいへい」

男は面倒くさそうに手でカスを集める。
そしてベランダの窓を開け、ぱんぱん、と振り払った。

37 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:26:29 ID:F/4n3V320


しばらくするとベランダに一羽の雀が飛んできた。
雀はちゅんちゅんと囀りながら、男の捨てたせんべいのカスを啄んでいる。

('A`)「……」

ゆっくり手を差し出す。


ちゅんちゅん!


('∀`)「随分人懐っこい雀だな」

雀はぴょんと元気よく男の手に乗ってきた。

(-_-)「最近この辺では見かけない気がするよね、雀って」

('∀`)「田んぼとかが減ってるからだっけ?お、よく見ると結構イカツい顔つきだな」

(-_-)「あと、軒先のある家が減ってるのも原因らしいね」

38 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:28:04 ID:F/4n3V320

('∀`)「どういうことだ?おー、よしよし」

親指の腹で撫でてやると、雀はちち、と鳴いた。

(-_-)「巣を作れる場所が減ってるってことらしい」

('∀`)「ほーん。カッター」

色白の男が手を出す。

(-_-)「はい」

細目の男が、器械出しの看護師が医師にメスを渡すように、慣れた手つきでカッターを手渡す。

('∀`)「さんきゅ」



ざしゅっ



男は受け取ったカッターで、雀の首を切り落とした。



.

39 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:30:32 ID:F/4n3V320

雀だったものは、ばたばたと身体を大きく震わせる。

しかし、すぐに大人しくなった。

('∀`)「うわ、気持ちわりぃ」

血でぬるぬるしているため、手つきが危なっかしい。
腹の部分に刃を入れ、縦に割く。

その左半分を細目の男に渡す。

(-_-)「ん」

男は受け取ると


もぐ


それを食べた。


('~`)「なんか、変な病原菌とか持ってそうだよな」

色白の男も口に放り込んでいる。

(-_-)「気にしなけりゃ平気でしょ。今までも何ともなかったんだし」

('A`)「でも雀は今日が初めてだろ」

(-_-)「変わんないでしょ」

('A`)「それもそうだな」

40 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:32:39 ID:F/4n3V320


ふとテレビに目を向ける。
男女が桜の木の下で抱き合っている。パッケージとまったく同じ絵面だ。

すると突然、抱き合う二人の近くに隕石が落ちてきた。
途端、パニックで逃げ惑うシーンへと移り変わる。
つい先ほどまで頬を桜色に染めていた女が、目をぎらつかせて我先にと逃げ惑う姿が印象的だ。


('A`)「……」

(-_-)「……」

('A`)「……意外と面白いかも」

(-_-)「……同感」

男二人はいつの間にか、目まぐるしく展開していくストーリーにのめり込んでいた。

41 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:35:18 ID:F/4n3V320


それから10本以上の映画を見た。
外はすっかり闇に包まれている。

('A`)「あー、頭痛てえ……」

(-_-)「そろそろ寝るか」

二人とも疲れ切っていた。
しかし、明日も5時には起きて映画を見なければならない。

('A`)「ふわ~」

色白の男が大きく伸びをした。
伸ばした腕が、天井まで積まれたDVDの山にぶつかる。


ぐらっ


(;'A`)「げっ!!」

(;-_-)「馬鹿っ!!」

慌てて押さえようとするも、山が崩れるのを止める術はない。
しかも、ドミノ倒しのように周りの山も巻き込んでいく。

(;゚A゚)「うわあああああああああぁぁぁぁぁっぁ!!!!!!」

(;゚_゚)「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!」

どさどさと床に落ちていくDVD、Blu-ray、VHSテープ等。中には8ミリテープまである。

(;゚A゚)「いてっ!いででっ!」

(;゚_゚)「いたっ!あたっ!!」

男達の身体にもそれらは容赦なく降り注ぎ、情けない悲鳴はしばらく続いた。


.

42 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:37:20 ID:F/4n3V320



('A`)「うわー、やっちまった……」

床一面を覆い尽くす記録媒体類を眺め、色白の男が呟いた。

(-_-)「……どーすんの」

('A`)「どーするも何も、元に戻すしかねーだろ」

随分と投げやりな返事だ。


(-_-)「あーあ。戻す作業だけで明日一日終わっちゃうよ」

('A`)「仕方ねーだろ」

(-_-)「だけど一日でも早く全部見ないといけないんだよ」

(-_-)「……それが僕らのできる贖罪なんだから」

細目の男は窓の外を見つめて言った。

43 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:38:43 ID:F/4n3V320

('A`)「……それはわかってるよ」

色白の男も窓の外へ目を向ける。

('A`)「でも、過ぎたことはどーしようもねーし」

('A`)「明日は丸一日積みなおし作業だ」

(-_-)「しょうがないね」

細目の男は渋々納得したようだ。


(-_-)「とりあえず寝よっか。布団は……、出さなくていいよね?」

('A`)「今さらあってもなくても変わんねーだろ」

(-_-)「それもそうだね」

天井の電気の紐に手を伸ばす。
果たして、明日一日だけで元に戻せるだろうか。

そんなことを考え、ため息を漏らしながら男は部屋の明かりを消した―――

44 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:40:24 ID:F/4n3V320
――――――――
――――
――


どんどんどこどこ、ぴーひゃらら……


今年も一年に一度の祭りがやってきた。
とはいえ、昨年は大雨で中止になってしまったため、実質二年ぶりである。


頭上には赤い提灯(ちょうちん)がずらりと並ぶ。

祭りとなるとやはりいつも以上の賑わいを見せる。
とは言え、これといった名所も名物もない小さな町だ。訪れる数はたかが知れている。


綿あめ、たこ焼き、りんご飴、射的、ヨーヨーすくい……


公園内には色々な出店が並んでいた。

45 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:43:44 ID:F/4n3V320


(*゚∀゚)「おじさん!金魚すくいやる!」

赤い浴衣が可愛らしい元気な女の子が屋台の主人に声をかける。

(’e’)「はいよ。一回400円ね」

(*゚∀゚)「はい!」

男は小銭を受け取ると同時に、水の入った椀とポイを女の子に渡す。

(’e’)「紙が破けたら言ってくれ」

そう言うと、外していたイヤホンを再び耳に差した。
イヤホンはラジオに繋がっている。

ラジオドラマを聞いているのだが、途中から聞き始めたせいか、いまいちどういったストーリーか分からない。

なぜ、贖罪として男二人は映画を見ているのだろうか。


どんどんひゃらら、どんひゃらら……


イヤホン越しに祭囃子が聞こえる中、金魚すくいの屋台の主人はドラマのストーリーに集中するため、目を閉じた。


.

46 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:45:27 ID:F/4n3V320

(*゚∀゚)「おじさん!やぶけた!もっかいやる!」

だが、女の子の大きな声で男の集中は途切れた。


(’e’)「破けても1匹はあげるぞ?」

(*゚∀゚)「いいの!あたしがじぶんでとるの!」

女の子が再び小銭を渡す。

(’e’)「そうかい。……はい、どうぞ」

(*゚∀゚)「ありがとっ!」

新しいポイを受け取ると、水面を泳ぐ金魚をじっと見つめた。

47 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:48:12 ID:F/4n3V320

空気を入れて膨らますタイプの子供用プールで泳ぐ金魚は、ぱっと見た限りでも100は越していそうだ。
女の子の浴衣の赤とはまた違った赤色の金魚が8割を占め、残りは赤と黒の出目金がそれぞれ1割ずつ、といったところか。


(*゚∀゚)「むぅ~」


なるべく大人しくしている金魚を狙っているらしい。
そのひたむきな姿は、水面に映った自分とにらめっこをしているようにも見えた。


(*゚∀゚)「そこだ!」

ばしゃりと勢いよくポイを水面に突っ込む。
当然、狙っていた金魚はひらりと躱して(かわして)優雅に泳いでいく。

(*゚∀゚)「ちくしょー」

一回目もそうしてポイの紙を破いたくせに、性懲りもなくばしゃばしゃと何度も水に入れる。
結局また、1匹も取れずに終わってしまった。

48 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:50:40 ID:F/4n3V320


(*゚∀゚)「もっかい!」

随分と活発な子だ。
活発過ぎてさっきからドラマの内容がちっとも入ってきやしない。


(’e’)「いいのかい?たかが金魚すくいで1000円以上も使っちまうなんて」

他にも屋台がある中、ここだけでお金を使わせてしまうのは忍びない。

(*゚∀゚)「おかーさんからお金はたくさんもらってるからいーの!」

(’e’)「しょうがない。200円にまけとくよ」

(*゚∀゚)「ほんと!?ありがと!」パァァ

女の子の笑顔が、提灯の明かりの下、良く映える。


この娘は笑顔の似合う子だな。


そのようなことを、ふと、屋台の主人は感じた。

49 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:52:11 ID:F/4n3V320


(*゚∀゚)「こんどこそ!」

女の子がポイを構える。
すると、その横に何かの気配を感じた。


( ^Д^)「……」


中肉中背の男が屈んでプールを泳ぐ金魚を黙って見つめている。

顔の大きさに対し、口が妙に大きく見える。


(*゚∀゚)「こんにちは!いや、こんばんは!?」

元気よく口の大きな男に挨拶をする。
その拍子に、椀を持っている手が水面に触れ、波紋が生じた。
波紋に反応したのか、ほとんど動いていなかった金魚も一斉に動き出す。


( ^Д^)「……」

口の大きな男は女の子には興味を示していない。
ただただ、金魚の泳ぐ姿を目で追っている。

50 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:54:01 ID:F/4n3V320

(*゚∀゚)「ちぇっ、なんだよ。いーもんね。金魚とれてもあげないんだから!」

女の子は男に反応してもらえずご機嫌斜めのようだ。

(*゚∀゚)「……」

金魚すくいに集中する。
狙いは隅の方で漂っている赤い出目金だ。


(*゚∀゚)「えいっ!」

ポイにも椀にも金魚はいない。
また取り逃した。

ポイの紙の一部が破れかけている。

(*゚∀゚)「もー、なんでぇ!?」

女の子の小さな頭では、金魚が逃げる原因が自分にあることに気づくことができないようだ。

51 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:56:35 ID:F/4n3V320

ふと、横で何かが動く気配がした。

( ^Д^)「……」

口の大きな男がこちらを向きながら、顔を水面に近づけている。


(*゚∀゚)「……?」

( ^Д^)「……」

男はそのまま顔を水に入れ始めた。


(*゚∀゚)「なにやってんの?」

女の子の問いかけに

( ^Д^)「……」

口の大きな男は何も答えない。
顔の左半分はすでに水に浸っている。

鼻の穴からはこぽこぽと泡が出る。

数匹の金魚が男の顔に近づいた。



すると、口の大きな男はその大きな口を広げ、金魚を飲み込んだ。

52 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 01:58:38 ID:F/4n3V320

(;*゚∀゚)「あーっ!あたしの金魚が!」


( ^Д^)「……」

女の子の声を無視して、男は再び顔を水の中に入れる。
今度は3匹の金魚と1匹の黒い出目金が大きな口の中に入っていった。

(;*゚∀゚)「もー!やめてよ!」

(;*゚∀゚)「おじさーん!!」

女の子が屋台の主人に助けを求める。


うるさいな、と屋台の主人は思った。
もう、ラジオを聞くのは諦めた方が良さそうだ。


(’e’)「あー、今年も来たのか……」

(-e-)「しばらくすりゃ満足してどっか行くからほっといていいよ」

53 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:02:32 ID:F/4n3V320

( ^Д^)「……」

口の大きな男の髪の毛がプールの中で海藻のように揺れている。


いつからこの男が現れるようになったかは忘れたが、祭りの度に金魚を半分ほど胃の中に収めては勝手にいなくなるのだ。
聞いた話だと、中止になった昨年も土砂降りの中、この公園で一人佇んでいたらしい。


(;*゚∀゚)「えー、でもあたしのぶんもたべられちゃうよー」

(-e’)「半分は残るから平気だよ、多分」

(;*゚∀゚)「たぶんってなにさー」

(-e-)「全部食われちまったら、そん時はそん時だ」

(*゚∀゚)「もー」

屋台の主人に何を言っても無駄だと悟った女の子は、諦めて金魚すくいを再開する。

すると、屋台の主人が数本のポイを差し出してきた。

54 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:04:50 ID:F/4n3V320

(’e’)「金魚が取れたら言ってくれ。ほれ、予備のポイだ。代金はいいから」

(*゚∀゚)「え、いいの?」

(’e’)「この男のせいで儲けはないも同然だし、気にすんな」

( ^Д^)「……」

昨年に金魚を食べられなかったせいか、男は例年より多く食べているようにも見える。


(*゚∀゚)「ありがと!」

受け取った予備のポイを地面に置いて、女の子は水面を見つめる。
取りやすい金魚はいないだろうか。

(*゚∀゚)「だりゃっ!」

水面が波打ち、ポイが破ける。
新しいポイに持ち替えて再挑戦。


(*゚∀゚)「うりゃっ!」


(*゚∀゚)「せいやっ!」


大きな掛け声とともに、じゃぶじゃぶとポイを入れるが、金魚には掠りもしない。

55 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:07:30 ID:F/4n3V320

(*゚∀゚)「うー」

( ^Д^)「……」

金魚が減っていくのと同時に、女の子の持つポイも減っていく。

口の大きな男はニヤニヤ笑っている。


このままではきりがない。
一旦深呼吸をしよう。


(*゚∀゚)「すー」


大きく息を吸って


(*゚∀゚)「はーーー」


一気に吐く。

よし、今度こそ。

56 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:11:02 ID:F/4n3V320


女の子は未だかつてないほど集中していた。
ゆらゆらと泳ぐ金魚の動きを見極めるのだ。


軽く息を吸って、呼吸を止める。


流石に女の子も学習したようだ。
大声を出して乱暴に水に突っ込んでも逃げられてしまう。
静かに、それでも、素早く……。



さっ……



椀を覗いてみると


(*゚∀゚)「やった……!」


1匹の金魚が泳いでいた。


.

57 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:12:55 ID:F/4n3V320


(*゚∀゚)「おじさん!とれた!」

頬を紅潮させて女の子は屋台の主人に声をかける。

(’e’)「おー、おめっとさん」

主人は椀を受け取ると、手早く透明な袋に金魚を入れて、紐で縛った。

(’e’)「はいよ」

(*゚∀゚)「ありがと!」

手元で金魚の入った袋が揺れる。


(*゚∀゚)「……」

女の子はしばらくその金魚を見つめた。
そして


(*゚∀゚)「はい、どーぞ!」


( ^Д^)「……」

口の大きな男にそれを差し出した。

58 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:15:09 ID:F/4n3V320

( ^Д^)「……?」

男は何をされているかが分かっていないようだ。

(*゚∀゚)「これ、あげる」

女の子が、男の指に強引に袋の紐を引っ掛ける。

(*゚∀゚)「来年からはちゃんとお金はらわないとだめだからね!」


( ^Д^)「……」


(*^Д^)「……!!」


口の大きな男は黙ったままだったが、喜んでいる様子がこちらにも伝わってきた。
しきりに1匹の金魚が泳ぐ袋に、顔を近づけたり離したりしている。
提灯の明かりにかざして、金魚が泳いだり袋が揺れたりして生じる色の変化を楽しむ。


そのようなことをしているうちに、いつの間にか、口の大きな男は、祭りの雑踏の中に消えていった。


.

59 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:17:01 ID:F/4n3V320

(*゚∀゚)「ぶー。ありがとうって言ってくれなかったー」

女の子にとって感謝をすることは当たり前だった。

(’e’)「そういう奴なんだ。感謝はしているはずだから、許してやってくれ」

屋台の主人はそう言って女の子を宥めた。


(*゚∀゚)「あたしのぶんもほしいからさ、もっかいやっていい?」

(’e’)「ああ、いいよ」

主人は再びポイを渡す。
もはや何本渡したか覚えていない。


(*゚∀゚)「ありがと」

60 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:18:26 ID:F/4n3V320



(*゚∀゚)「おじさん、とれた」

(’e’)「お、早かったじゃないか」

先ほどので慣れたのか、ほんの数分で椀の中には2匹の金魚がいた。

(’e’)「ちょっと待っててね」

袋に移し替えても、金魚は元気に泳いでいる。

(’e’)「はいよ。ところで家には水槽、あるのかい?」

袋を渡しながら屋台の主人が聞いてきた。

(*゚∀゚)「ないよー」

女の子は嬉しそうに金魚を眺めながら答える。
そして、そのまま袋の紐をほどいていく。


どどんこぴーひゃら、どどんこどん……


祭囃子もだいぶ終盤に近付いていた。


.

61 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:21:39 ID:F/4n3V320

今年の祭りももうそろそろ終わりだな。
そんなことを主人は考える。


目を向けると、女の子が袋の口を口元に運んでいた。
顎を上げ、手を持ち上げる。


2匹の金魚は誘い込まれるように、口の中へと泳いでいく。


こくり、と女の子の喉元が小さく動く。


その頬の赤は、提灯の赤よりも、りんご飴の赤よりも、着ている浴衣の赤よりも、

そして、金魚の赤よりも美しく見えた。



妖艶な笑みを浮かべる女の子。



この娘は将来美人になるな、と屋台の主人は思った―――

62 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:24:21 ID:F/4n3V320
――――――――
――――
――

ミセ*゚ー゚)リ「ほえー」

絵描きを自称する女は絵を眺め、情けないため息を漏らした。

これまでに7枚の似たような絵を見ており、1枚目から絵の内容がつながっているようだ。
8枚目のこの絵では、赤い浴衣の女の子が空っぽになった袋を片手に、提灯の明かりの下、微笑んでいる。


(‘_L’)「これらは19xx年に描かれた作品です。当時50歳を迎えた―――」

ぴしっと制服を着こなした係員の男が丁寧に説明するも、女の耳には届いていない。

大胆な色遣いと繊細な筆さばきが作り出す独特な世界観が、女を魅了する。


ミセ*゚ー゚)リ「へえー。よくわかんないけどすげー」

63 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:26:25 ID:F/4n3V320

(‘_L’)「あのー、少しは聞いてくれませんかね」

係員の男が若干不満げに言った。

(‘_L’)「解説を頼んだのは貴女なんですから」

ミセ*゚ー゚)リ「いやー、まあ、そーなんだけど……」

ミセ*゚ー゚)リ「そういうサービスがあったからなんとなくで頼んだっていうか、そこまでガチだとは思わなかったっていうか……」

ミセ*゚ー゚)リ「なんていうか、眠くなるんすよね」


こつ……
きゅっ……


二人の鳴らす靴の音が館内に静かに響く。
絵の質を保つためなのか、全体的に薄暗い。
眠くなるのはそのせいなのかもしれない。


(‘_L’)「だからって人が話しているときに、何度も何度も間抜けな声を出されるのは気持ちのいいものではないんですよ」

ミセ*゚ー゚)リ「ふぇっ?間抜けな声なんて出してないっすよ」

(‘_L’)「今まさに出してますね」

64 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:28:05 ID:F/4n3V320

(‘_L’)「だいたい貴女、“自称”絵描きなら少しは他の人の作品を見て学ぼうという気概はないんですか」

ミセ*゚ー゚)リ「ちゃんと見てますー。聞いてないだけー」

(‘_L’)「やっぱり聞いてないじゃないですか」

ミセ*゚ー゚)リ「それに“自称”じゃなくってホントに絵描きですー」

(‘_L’)「無視すんな」

噛み合わない会話が続く。

65 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:29:54 ID:F/4n3V320

男が、男の背丈ほどの大きさのある裸婦像の前に立ち止まった。

(‘_L’)「この絵は19世紀後半、イタリアの画家―――」

ミセ*゚ー゚)リ「おお!いいケツしてんな。ドスケベ」

(‘_L’)「作品からエロスを感じるのは別に構いませんが、もう少し言い方考えてくれませんかね」

ミセ*゚ー゚)リ「いいじゃないっすか。どーせほかに人いないんだし」

(‘_L’)「私がいるんですが」

ミセ*゚ー゚)リ「はぇ?いたんだ」

(‘_L’)「なんですか、私は道路脇の石ですか」


長い廊下の左右の壁にずらりと絵が並んでいる。かれこれ何千メートルも歩いてきた。
もはや、自分たちがどこから来てどこへ向かっているのかも分からない。

66 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:32:20 ID:F/4n3V320

ミセ*゚ー゚)リ「絵がたくさんあるのはいいんだけどさ、他にはないんすか」

絵描きを自称する女は絵に、というより、絵ばかりの廊下に飽きてきたようだ。

(‘_L’)「彫刻とかも展示してますけどね、いかんせん辿り着けるかどうか……」

係員の男の答えは頼りないものだった。

ミセ*゚ー゚)リ「客を飽きさせない工夫がここには必要だと思いまーす」

(‘_L’)「一応ここも色々努力はしているんですよ。まあ、館長を見つけられれば伝えておきます」


ミセ*゚ー゚)リ「しっかし、考えてもみなかったなー。この齢で“喰われる”なんて」

(‘_L’)「貴女がここに愛されている証拠ですね」

ミセ*゚ー゚)リ「へっへーん」ドヤァ

(‘_L’)「もしくは、何にも知らない馬鹿な餓鬼だと思われているか、ですね」

ミセ*゚ー゚)リ「んなこたない」

(‘_L’)「どこから来るんですか、その自信は」

ミセ*゚ー゚)リ「そりゃあ、自分、天才っすから」

得意げに小さな胸を張る女の姿はどこか痛々しいものがある。

(‘_L’)「そーですか、そーですか」

ミセ*゚ー゚)リ「てめえ、信じてないな」

(‘_L’)「他人を“てめえ”呼ばわりするような人を信じる方が無理ありますって」

67 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:33:26 ID:F/4n3V320

ミセ*゚ー゚)リ「ちくしょー。スケッチブックさえあればあたしの溢れんばかりの才能を見せつけてやれるのに」

女はわざとらしく唇を噛んだ。

(‘_L’)「持ってくればよかったのに。一部の作品を除いて模写は許可されていますよ」

ミセ*゚ー゚)リ「モノを持って鑑賞したくないんすよ。ぶつからないように気を遣ったりするのがうっとーしくて」

(‘_L’)「あー、それはなんとなく理解できますね」

なるほど、この女には女なりのこだわりがあるようだ。


ミセ*゚ー゚)リ「おっ、分かってくれたー」

絵描きを自称する女は少し機嫌が良くなった。

68 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:35:21 ID:F/4n3V320


それからさらに数百メートルほど歩き、二人は50を超える絵を見てきた。
今二人の前には、版画が飾られている。
係員の男は、それがアメリカの前衛芸術家によるもので、現代の芸術家達に大きな影響を与えたことを説明し終えると、こう言った。

(‘_L’)「……すみません、ちょっと先に行っててもらえます?すぐ戻ってくるんで」

ミセ*゚ー゚)リ「ほぇ?どしたんすか」

(‘_L’)「いえ、大したことじゃないので気にしないでください」

ミセ*゚ー゚)リ「何?おしっこ?」

さらりと女は聞いてくる。


(‘_L’)「……図星ですが、少しは恥じらいを持ってください」

ミセ*゚ー゚)リ「まあまあ。あたしも出したいんで付きあいますよ」

ここまで歩いてきて、この長くなった廊下にトイレは1か所もなかった。

69 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:37:52 ID:F/4n3V320

絵と絵の間の壁に向かって、二人は立った。
係員の男はファスナーを開け、そこから陰茎を出す。

ミセ*゚ー゚)リ「男の人は楽でいいっすねー」

絵描きを自称する女はズボンと下着を下ろしてしゃがむところだ。


じょろろ……


男の尿道からは早速尿が放物線を描き始めていた。

(*´_L`)「ふ~」

身体から不要な老廃物が出ていくこの感覚は、他の何にも代え難いものだ。
尿はぴちゃぴちゃと壁や床に当たって音を立てる。

ミセ;゚д゚)リ「ちょっとぉ!おしっこが顔にはねてるんですけどぉ!!」

(*´_L`)「ん~?貴女が動けばいいでしょう」

ミセ;゚д゚)リ「いや、もう、あたしも、もう出ちゃうから……!!」


ぷしゃあ……


ダムが決壊するかのごとく、女の尿道から尿が勢いよく放たれる。脚にも黄色い液体が流れた。
慌てて指で小陰唇を広げる。そうすることで、尿の向かう方向を一点に集中することができる。

ミセ;´д`)リ「あう~、太もも濡れちゃった~」

ミセ*´ヮ`)リ「……でも、きもちぃ~」

女も排尿の快感に身を震わせた。

70 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:40:00 ID:F/4n3V320


(‘_L’)「よし」

陰茎を振るって尿を出し切り、ズボンの中に戻す。

(‘_L’)「では、先に行ってますね」

男はすたすたと進み始めた。
男もかなり勝手な性格をしている。

ミセ;゚ー゚)リ「え、ちょ、あたしももう終わりますからぁ!」

女が急いで立ち上がるも


ミセ;゚ー゚)リ「げっ!!」


足がもつれて転倒。尿でできた水溜まりに倒れてしまった。
しかも、女の下半身からはじょろじょろと、膀胱にまだ残っていた尿が止めどなく流れている。

71 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:41:09 ID:F/4n3V320

(‘_L’)「あーあ、何やってるんですか」

ミセ´д`)リ「うぅ~、おしっこくさーい……」

(‘_L’)「これからは私から半径10メートルの範囲には入らないでください」

ミセ´д`)リ「そんなこと言わないでぇ~」

女がのろのろと立ち上がり、男に向かって歩き始めた。


(;‘_L’)「なっ!?近づかないでください!!小便くさっ!!?」

係員の男が慌ててハンカチを取り出す。

(‘_L’)「これで拭いてください」

72 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:42:57 ID:F/4n3V320

ミセ´д`)リ「もういい、びしょ濡れだし脱ぐ」

女は躊躇なく服を脱ぎ捨てていく。そして受け取ったハンカチで身体を拭った。


ミセ´д`)リ「ありがとぉ」

素っ裸の状態でハンカチを返そうとするが

(;‘_L’)「いや、いいですよ」

尿の浸み込んだハンカチを受け取りたくないようだ。


男は制服の上着を脱いだ。

(‘_L’)「ほら、せめてこれでも着てください」

ミセ´д`)リ「うぅ~」

女が上着を羽織ったのを確認すると

(‘_L’)「さて、行きますか」

ミセ*´ー`)リ「ふゎーい」


こつ……
きゅっ……


二人は再び進み始めた。

73 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:45:04 ID:F/4n3V320



しばらく歩くと右手に扉が現れた。

(‘_L’)「どうしますか?」

廊下はまだまだ続いている。

ミセ*゚ー゚)リ「廊下歩くの飽きたから入る」

(‘_L’)「入ったら、たぶんこの廊下には戻れないと思いますが」

ミセ*゚ー゚)リ「ふぇ、マジで?」

(‘_L’)「マジです」

ミセ*゚ー゚)リ「……まあ、迷っちゃったらその時はその時で!」

女は楽観的だった。

74 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:47:07 ID:F/4n3V320

(‘_L’)「わかりました」


がちゃ


男が扉を開けると、光が差し込んできた。
入ってみるとそこはやはり廊下だった。
しかし、先ほどのとは異なり、窓があるため全体的に明るい。


がつがつ、と窓ガラスを叩いてみる。割れる気配は、ない。

(‘_L’)「ここから脱出するのは無理そうですね」

後ろを振り返ってみると、扉はなくなっており、無機質な壁があるだけだった。

(‘_L’)「ん?」

男の視界に何かが入った。
廊下の右側に開けた空間がある。

そこには台に積まれた箱や葉書などの入ったラックが置かれていた。


(‘_L’)「売店、ですね」

運が良い。売店には土産品としてクッキーやチョコレートなどの食料もある。
これで餓死する心配はなくなった。

75 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:48:40 ID:F/4n3V320

ミセ*゚ー゚)リ「うわぉ、けっこー色々ありますね」

絵描きを自称する女は、売り物のスケッチブックを手に取った。

ミセ*゚ー゚)リ「あ、そーだ。これであたしの天才っぷりを見せてやりましょう」

鉛筆を手にして、下半身丸出しの状態でさらさらと描き始める。
当然、鉛筆も売り物だ。


(‘_L’)「計1500円です」

ミセ*゚ー゚)リ「金取んのかよ」

(‘_L’)「こっちも商売ですからね」

ミセ*゚ー゚)リ「あ、動かないで……」

女は係員の男を描いているようだ。


静寂が二人を包み込む。


.

76 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:49:31 ID:F/4n3V320


それから1時間たった。

(‘_L’)「あの、まだですか?」

ミセ*゚ー゚)リ「まだ」

絵描きを自称する女はきっぱりと答える。

77 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:50:24 ID:F/4n3V320


さらに1時間たった。

(‘_L’)「じっとしてるのも疲れるんですけど」

ミセ*゚ー゚)リ「うっさい」

女は男と紙を何度も見比べながら、かりかりと描き続ける。

78 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:51:27 ID:F/4n3V320



さらに1時間たった。

(‘_L’)「用を足したいのですが」

ミセ*゚ー゚)リ「その辺ですればいいじゃないっすか」

目がぎらついていた。

女の足元にはすでに黄色い水溜まりができあがっている。
また、茶色い固形物も転がっていた。

79 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:53:25 ID:F/4n3V320

* * *

結局、絵描きを自称する女はクッキーを片手に、糞尿を垂れ流しながら一晩中描き続けた。

ミセ*゚ー゚)リ「うしっ、こんなもんでしょ」

女は満足げに呟いた。寝ていないはずなのに、顔は妙につやつやして見える。

(つ_L‐)「……見せてください」

眠そうに眼を擦りながら、係員の男がスケッチブックを覗き見る。


(‘_L’)「……」

(‘_L’)「これは……」


―――これは、“喰われても”仕方ない。
男は心の中で軽く微笑み、ちらり、と女の方を見る。


ミセ*゚ー゚)リ「?」


女は無邪気な表情で首を傾けた―――

80 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 02:58:05 ID:F/4n3V320
――――――――
――――
――

( ∵)「……」

ふと視線を感じ台本から顔を上げる。

|゚ノ ^∀^)「どう?アナタならやれるわよね!?」

部長が、その大きな胸を机に載せてこちらを見てきた。


( ^.^)「ええ、もちろん!」

大袈裟な笑みを浮かべて少年は答える。

( ^.^)「……また、“一人二役”ですか?」

台本には「係員の男」と「絵描きを自称する女」、二つの役があった。


|゚ノ ^∀^)「当ったり前じゃな~い」

|゚ノ ^∀^)「アナタは才能あるんだから」

( ^.^)「ありがとうございます!がんばります!」


部長が監督として指示を出して少年が一人で演じる。
部員が二人だけのこの演劇部は、そのようにして活動してきた。

81 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 03:00:03 ID:F/4n3V320


キーンコーンカーンコーン……


最終下校時刻が迫っていた。


|゚ノ ^∀^)「あら、もうこんな時間。じゃあ練習は明日からにしましょう」

( ^.^)「はい!よろしくお願いします!」

少年は笑顔を絶やさない。

|゚ノ*^∀^)「さあ、一緒に帰りましょう!」

部長が少年の腕に抱きついてくる。

( ^.^)「はい!」


二人は恋人同士だった。

83 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 22:58:04 ID:x7XZZQ620

* * *

翌日の放課後、少年は部室で練習を始めた。


(‘_L’)「『だいたい貴女、“自称”絵描きなら少しは他の人の作品を見て学ぼうという気概はないんですか』」


ミセ*゚-゚)リ「『ちゃんと見てますー。聞いてないだけー』」


ころころと声色や仕草、そして表情を変えて二つの対照的な役を演じ分ける。
少年には才能がある。
老若男女関係なしにどんな役でも演じることができるため、一人二役などお手の物だ。


|゚ノ*^∀^)「……」

部長は少年の練習風景をにこにこと眺めているだけだ。
これといった特徴のない少年の表情が、役を吸収することによって色づいていく。
その様を見るのが好きなのだ。


芸達者な少年が、指定されたシーンを演じ終えた。

( ^.^)「どうでしたか、部長?」

|゚ノ*^∀^)「最っ高よ!」

心からの称賛を少年に浴びせ、抱きしめる。

|゚ノ*^∀^)「この調子で演じ続けてね」

84 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 23:00:31 ID:x7XZZQ620

部長の言葉が呪文のように、頭に沁み付いていく。

( ^.^)「……もちろんです!」

少年は元気よく答えた。


|゚ノ ^∀^)「本当に?」

( ^.^)「本当ですって」

|゚ノ;^∀^)「本当に、本当?」

しつこく部長が聞いてくる。


( ^.^)「も~、何度も言わせないでくださいよ」

( ^.^)「……僕は、部長のために演じ続けます」

|゚ノ;^∀^)「本当……?」

目を潤ませながら尚も聞いてくる。

少年は力強く首を縦に振る。

|゚ノ*^∀^)「嬉しい……!!」


唇に何かが触れた、と思った時にはすでに舌がねじ込まれていた。

85 名前:仁志川(エログロ注意) 投稿日:2017/08/20(日) 23:05:27 ID:x7XZZQ620

外に出ると日はほとんど沈みかけていた。

|゚ノ ^∀^)「だいぶ日が短くなってきたわね」

西日に浮かび上がる部長のシルエットが少年の瞳に印象的に映る。


(*∵)「……」


―――きれいだな。


少年はつい、その姿に見とれてしまった。

部長はそこら辺の女優では敵わない美貌とスタイルを兼ね備えている。
声は天からの贈り物かと思うほど軽やかで、仕草の一つ一つがその美しさをより魅力的に引き立てている。
演劇部でも役を演じれば、きっと客は何倍にも増えているだろう。


そんな部長が愛してくれているのだ。演じるしか能のない自分を。

そんな部長が望んでいるのだ。自分が演じることを。

それならば、部長のために演じ続けようではないか。


演じ続けなければ―――



|゚ノ  ∀ )「……やめてよ、その顔」


( ^.^)「……いったい何を言っているんですか、部長?」

|゚ノ# ∀ )「とぼけないでっ!」

|゚ノ#゚∀゚)「アナタ、“演じてなかった”でしょ!!」

86 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 23:07:41 ID:x7XZZQ620

( ^.^)「まさか……」


ああ、やってしまった。また、やってしまった。
だいぶ演技も身に付いていたと思ったのに、まだ甘かったのか。


|゚ノ#゚∀゚)「アタシ、いつも言ってるわよね!?」

|゚ノ#゚∀゚)「“アタシのために演じて”って!!」

|゚ノ#゚∀゚)「アタシのこと、やっぱり愛してないんでしょ!?」

( ^.^)「そんなことないですよ、僕は部長を」

|゚ノ# ∀ )「嘘っ!だって、“演じてなかった”もん!」


|゚ノ# ∀;)「演じてよ……、愛してよ……」


|゚ノ#;∀;)「“演技”でもいいから愛してよ!!」



ああ、そんな悲しい顔をしないでください。そんな悲しいことを言わないでください。

87 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 23:09:39 ID:x7XZZQ620

|゚ノ#;∀;)「わかってるわよ、アタシなんかと付き合いたくないって思ってるんでしょ」


そんなこと、ありません。


|゚ノ ;∀;)「どうせアタシなんてブスで馬鹿でドジで性格悪くて何にもできないゴミ以下のうんこでしかなくて」

|゚ノ ;∀;)「友達なんてもちろんいなくて、ましてや恋人なんてできるわけないし、人を愛する資格もアタシにはないけど」

|゚ノ ;∀;)「せめて演じてる間だけでも愛してほしくて」

( ∵)「部長、僕は!」


たとえ演じていなくても変わらず部長のことを愛しています。

そう、伝えたかった。


.

88 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 23:11:58 ID:x7XZZQ620

|゚ノ ;∀;)「ほら!またその顔!」


でも、部長は自分を見てくれない。


|゚ノ ;∀;)「今も演じてないんでしょ!アタシのこと嫌いなんでしょ!?」


“演技していない”自分を見てくれない。




|゚ノ ;∀;)「ねえ、アタシどうすればいいの!?アナタのためなら何でもやります!!」

その鞄を持てばいいですか。それとも靴を磨きましょうか、犬のように這い蹲って舐めましょうか。あ、ボタンが取れかかっています。縫い直しましょうか。裁縫セットを持ってます。料理は正直自信はありませんが最近はフレンチのフルコースを再現できる程度にはなりました。お金や大学、就職もご心配なさらず。貧相なこの身体でも役立てることはできるんです。もちろん、性欲が溜まっているのであればいつでも発散させましょう。ここで裸にでもなりましょうか。こんなまんこですが、準備はできています。もしも肛門をご所望であれば少しだけお待ちいただきたいです。最近便秘気味で。ですが浣腸剤を持ち歩いているのでやろうと思えば今すぐにでもできなくはありません。ストレスが溜まっておられましたらいくらでも殴ったり蹴ったりしてくださって構いません。叫べと言われれば大いに叫びますし、黙れと言われれば永遠に口を閉ざします。いっそのことこの生意気な唇を釘で打ち付けるのもいいかもしれませんね。それとも―――

89 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 23:14:18 ID:x7XZZQ620

(;^.^)「部長!」ガバッ

少年は笑顔で部長を抱きしめた。

( ^.^)「大丈夫です。僕は部長のことを嫌いになってなんていませんよ」

( -.-)「だから、安心してください」ギュッ

|゚ノ*;∀;)「うぅ……」ギュッ

部長の涙が少年の胸元を濡らす。


( ^.^)「大丈夫、大丈夫……」ナデナデ

どうして自分は芸達者なのだろうか。
演技が下手くそだったら本来の自分を見てもらえただろうか。


いや、それはない。


演じることができなければ、部長から愛されることもない。

90 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 23:18:02 ID:x7XZZQ620


|゚ノ*;∀;)「……」

白くて綺麗な肌が涙でぐしゃぐしゃだ。自分のせいだ。


悲しい思いをさせてしまってごめんなさい。
寂しい思いをさせてしまってごめんなさい。

部長は愛されています。部長の前では、自分が演じ続けます。
今度こそ、自分を殺します。
まだまだ未熟ですが一生懸命頑張ります。だから、部長、指示をください。

空っぽの自分を満たす指示を。

抱きしめろと言われれば抱きしめます。泣けと言われればものの数秒で涙を流せます。女になりきるのも苦ではありません。出せる音域もだいぶ広がりました。静止し続けろと言われれば腕が折られても声も出しません。24時間しゃべりっぱなしというのは挑戦したことはありませんがたぶんできると思います。セリフがアフリカのどこかの小さな部族の言語であってもすぐにマスターしてイントネーションまで完璧に再現します。サウナで1時間筋トレしたり、エベレストのてっぺんで裸踊りしたりも言われればやります。役作りのためなら100キロ太ることも20キロまで減量することも厭いません。どんなに悲しくても笑顔になれと言われれば表情筋を壊してでも笑い続けます。



( ^.^)「ほら、部長、いえ、監督。僕はどう演じればいいですか?指示をください」


|゚ノ*;∀;)「……キスをして」


甘く、とろけてしまうような優しいキスを。



.

91 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 23:19:40 ID:x7XZZQ620


|゚ノ*^∀^)「ふふ……」

( ^.^)「いかがでしたでしょうか?次はどうしましょう?」

|゚ノ*^∀^)「もういっかい」

部長の体温が伝わってくる。


先ほどよりも激しく、唇を互いに挟み、舌を絡ませ、舐る(ねぶる)。

身体に走る快感で頭が真っ白になりそうだ。


|゚ノ* ∀ )「ん……」


部長のくねくねと肢体をよじらせるその様は、どんな男でも虜にしてしまうだろう。

92 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 23:22:19 ID:x7XZZQ620

5分以上たってから、二人はようやくキスを終えた。


|゚ノ*^∀^)「しあわせ」

部長の言葉がミルクのように少年の脳髄に染み渡る。

( ^.^)「ありがとうございます」

少年は心からの感謝を伝える、演技をした。


|゚ノ*^∀^)「違うわ。そういうときは、“僕も幸せです”って言うのよ」

|゚ノ*^∀^)「ぎゅって抱きしめて、ね」

部長の柔らかな身体。


( ^.^)「わかりました」


( ^_^)「『僕も幸せです』」


自分から抱きしめているはずなのに、自分が包み込まれているような錯覚を覚える。

93 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 23:25:35 ID:x7XZZQ620

さあ、次はどうすればいいですか。


|゚ノ ^∀^)「アタシがアナタの右腕に抱きつくから、そしたらアナタはまっすぐ進みなさい」

|゚ノ ^∀^)「いつものように、左足から歩き始めるのを忘れないでね」

( ^.^)「はい」

お安い御用だ。
右腕に確かな熱を感じながら歩き始める。


|゚ノ ^∀^)「目線は基本的には進行方向を見て、でも7~8秒に一回はアタシを見るの」

( ^.^)「はい」

そんなのもまだまだ朝飯前だ。


|゚ノ ^∀^)「歩くスピードは1分に55~60メートルくらいを目安に、平均よりゆっくり目で」

( ^.^)「はい」

言われたとおりに歩くペースを落とす。


|゚ノ ^∀^)「今から2分後に右腕のポジションを少しずらして」

( ^.^)「右肩を一瞬持ち上げて、すっと下ろす感じですか?」

|゚ノ ^∀^)「そうね。あ、あと、声のピッチをもう少し下げてくれる?声量は変えなくていいから」

( ^.^)「あー、ん、んー、あー……、このくらいでどうですか?」

|゚ノ*^∀^)「バッチリよ」

部長の笑顔が眩しい。

94 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 23:28:10 ID:x7XZZQ620

進行方向に横断歩道がある。
青信号が点滅しており、今のスピードだとそこに着いたときに丁度赤信号になる。

|゚ノ ^∀^)「信号待ちしてるときはやや右寄りに重心をかけて、止まってから約10秒後にアタシの頭を軽く撫でてね」

|゚ノ ^∀^)「信号が変わったら、その時だけ例外で右足から歩き始めて」

|゚ノ ^∀^)「100メートル歩いたら左手をズボンのポッケに入れて、おちんちんの位置を整えて」


ああ、良かった。


|゚ノ ^∀^)「まばたきは10秒に一回と、15秒に2回を繰り返して」

|゚ノ ^∀^)「170メートル先で躓きかけて、アタシが『大丈夫?』って聞くから、アナタは可愛らしく笑いながら『すみません、大丈夫です』って答えるの」


いつもの部長に戻った。こうしているときの部長が一番輝いているのだ。

95 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 23:44:57 ID:x7XZZQ620

|゚ノ ^∀^)「その時の声のピッチはやや高めで、少し早口に」

|゚ノ ^∀^)「そのあとはちょっと顔を赤くして、まばたきの頻度を常に15秒に2回に増やして」

|゚ノ ^∀^)「大げさすぎず、あくまで自然な態度で」


さあ、もっと、もっとだ。


ふつふつと心の奥底から湧き上がる興奮。
笑いだしそうになってしまうが、少年は決して表情にも仕草にも出さない。

96 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 23:48:57 ID:x7XZZQ620

|゚ノ ^∀^)「210メートルのところでは一瞬立ち止まって『すみません』って言ってからくしゃみをして」


もっと、もっと。


|゚ノ ^∀^)「そのとき、左腕で鼻と口は覆って」


さあ、さあ、さあ―――!!


.

97 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 23:53:17 ID:x7XZZQ620

|゚ノ ^∀^)「218メートルの地点で目に被った髪の毛を左手の人差し指で払って―――」


愛するための、指示を、指示をください―――!!!!!!



ふふっ、



ははははっ、




ハハハハハハハハハハハHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!




部長は幸せだった。


そして、少年も幸せだった。

98 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 23:55:16 ID:x7XZZQ620



世の中に“恋人”というラベルの付いた男女のペアは幾らでも存在する。


だが




|゚ノ*;∀;)(;.;*)




この二人ほど、互いを愛し合っている“恋人”は、いない―――

99 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 23:56:51 ID:x7XZZQ620
――――――――
――――
――

川*` ゥ´)「……」

病室での暮らしを退屈しないためには娯楽が不可欠だ。

もちろん病室にはテレビがあるが、いつも自分好みの番組を放送しているとも限らないし、何より思った以上にお金がかかってしまう。

マンガ雑誌も何冊か買ったが、すでに読み終えてしまっている。

ゲームでもできればいいのだが、生憎この身体でできるようなものはなかなか存在しない。

100 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/20(日) 23:58:57 ID:x7XZZQ620

というわけで、女はスマホでマンガを読んでいる。

最近は便利になったもので、無料でマンガが読めてしまうのだ。
スマホには幾つかの無料コミックアプリがインストールされている。
毎日何かしらの作品が更新されるため、読むものに困ることはほぼない。


川*` ゥ´)「……」

今読んでいるのは、廃部寸前の演劇部を舞台にした恋愛ものだ。
芸達者な少年と、容姿端麗眉目秀麗な部長の奇妙な関係が、この作品の大きな魅力である。


川*` ゥ´)「……次のページ行って」

女がポツリと言う。

(`ェ´)「……」

少年は黙って画面をスワイプした。
次のページが現れたことを確認すると、女に画面を向ける。

川*` ゥ´)「ありがと」

女は礼を言い、再び画面を眺めた。

101 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 00:00:57 ID:98mgcBj60


しばらく同じ作業を繰り返していた。が、ふと、少年の指が止まる。


(`ェ´)「あねき」

そう言いながら姉にスマホを見せる。

画面には、暗くなった背景に“次回は来週更新予定!”という文字が浮かんでいた。


川*` ゥ´)「だー!もう、いいトコで切るんだからー」

わざとらしく顔をしかめて不満を口にする。

(`ェ´)「どうする?他の読む?」

声変わり直後の不安定な声が、姉の耳をくすぐる。

川*` ゥ´)「んー、いいや。冷蔵庫にりんごあるから食べよ」

(`ェ´)「わかった」

弟は膝下にある小さな冷蔵庫を開けた。

102 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 00:04:43 ID:98mgcBj60

(`ェ´)「口開けて」

器用にナイフで皮を剥いて切り分けた後、弟はその内の一つをフォークで刺して姉の口元へと運ぶ。

川*` ゥ´)「あ~~ん」


口に入れれば、りんご特有の酸味とシャキシャキとした食感が口内を満たした。

川*` ゥ´)「……う~ん、やっぱ旬じゃないからかな。あんま甘くない」

弟もひょいと口に一欠けら放り込む。

(`ェ´)「……ホントだ。ハズレだ、これ」

確かに、極端に酸っぱいわけでもないが、甘みに欠けているため、おいしいと言えたものではない。

川*` ゥ´)「でもまあ、食べるんだけどねー。あ~ん」

口を大きく開けて二つ目を待つ。

(`ェ´)「……なんか、鳥の餌付けをしてるみたい」

川*` ゥ´)「お?じゃあ、あたしはかわいい子鳥ってこと?」

(`ェ´)「あねきみたいにうるさい鳥なんて飼いたくないよ」

川*` ゥ´)「ひっでー」



皿のりんごはいつの間にかなくなっていた。

103 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 00:06:15 ID:98mgcBj60



川*` ゥ´)「あーもう、ひまーー!!」


突然大きな声を出す姉。


(`ェ´)「いつもそう言ってんじゃん」

姉に対して弟はかなり冷めた態度だ。


川*` ゥ´)「ひまったらひまなのーー!!」

(`ェ´)「マンガ読めばいいじゃん」

まだ、未読の作品がいくつかあるはずだ。

川*` ゥ´)「飽きた。てか、目が痛い」

(`ェ´)「あっそ」

川*` ゥ´)「冷てーなぁ、ねーちゃんは悲しーよ」


川*` ゥ´)「……よし、外行こう」


(`ェ´)「やだ」

即答である。

104 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 00:08:32 ID:98mgcBj60

川*` ゥ´)「えー、なんでさ」

(`ェ´)「あねき持って歩くのだりーもん」

川*` ゥ´)「いーじゃん、外はいい天気だよー」

(`ェ´)「……今にも雨が降りそうなんだけど」

空は重い灰色の雲で覆い尽くされている。

川*` ゥ´)「雨降ってなけりゃいい天気だって」


川*` ゥ´)「言うこと聞かないと、あんたのエロ本の場所、バラしちゃうよ」

(;`ェ´)ピャッ!?


思わず変な声が出てしまった。

(;`ェ´)「な、あ、あねきが知ってるわけ……」

川*` ゥ´)「本棚の3段目のー、昔使ってた教科書が入ってるところのー、その教科書の裏じゃない?」

(;`ェ´)「な、なんで、わかんだよ!?」

川*` ゥ´)「ねーちゃん舐めんじゃないよ。あんたの考えそうなことはお見通しよ」

川*` ゥ´)「さ、行こ」

(;`ェ´)「たく、わかったよ……」



川*` ゥ´)「あ、性的な意味でだったらねーちゃんのこと舐めて(`ェ´)「うっせえ」」

まったく、冗談の通じない弟である。


ちなみに、エロ本の場所は弟の行動パターンから推理したもので、決して実際に隠されているのを見たわけではない。

105 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 00:12:59 ID:98mgcBj60


(`ェ´)「……」


姉に繋がっている数十本のチューブを、一本ずつ専用のクリップで丁寧に塞いでいく。
全部のチューブにクリップが取り付けられたのを確認すると、今度は接続部分を分離させる。

チューブは全て姉の生命維持に欠かせないものだが、外しても最低24時間は命に支障はないため、外出の時はいつもこうしている。

弟はこの煩雑な作業にも慣れたもので、目を閉じていても触っただけでどれがどのケーブルとつながっているかが分かる。


(`ェ´)「全部とれたよ」

川*` ゥ´)「よーし、じゃあ行こう!」

すでに外出届は出してある。天気が天気なので、看護師から怪訝な表情をされてしまった。
弟は、短くなった数十本のチューブを首から垂らす姉を持ち上げた。

106 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 00:15:43 ID:98mgcBj60

(;`ェ´)「重っ!」

だから外出は嫌なのだ。要は5キログラムの重りを持って歩きまわるのと変わらない。

川*` ゥ´)「失礼な!これでもダイエットしてんだよ!」

(;`ェ´)「顔だけのくせに何がダイエットだ!」

川*` ゥ´)「ほらほら、景色が低いよー。胸元まで持ち上げて!」

(;`ェ´)「無茶言うな!」

それに、調子に乗った姉がうるさくて仕方がない。


川*` ゥ´)「なっさけないなー。あんた、運動不足じゃないの?部活も入ってないんでしょ」

確かに、運動不足なのは否めない。実際、運動と言えるようなことは体育の授業と、こういった姉との散歩でしかしていない。

(;`ェ´)「いいんだよ、運動苦手だし。部活とかも興味なかったから……」

川*` ゥ´)「でもさ、部活とか楽しそーじゃん」


姉はマンガやテレビの中の部活しか知らない。


川*` ゥ´)「それとも、なに?学校終わったらすぐにねーちゃんに会いたいか(`ェ´)「落とすよ?」ひでえ」

弟なりの照れ隠しだと無理やり自分を納得させた。

107 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 00:17:48 ID:98mgcBj60

川*` ゥ´)「まあ、どっちにしても、あんたは運動した方がいいと思うよ。今もふらふらだし」

川*` ゥ´)「てか、あんた、小さいころはよくサッカーしてたじゃん」

(`ェ´)「昔の話だろ」

川*` ゥ´)「こまけぇこたいいんだよ」

小学生低学年くらいまでは、公園でしょっちゅう友達とサッカーをしていた。
が、いつの間にか外で遊ぶことが減っていた。


川*` ゥ´)「そういや、この辺にサッカー場あったよね」

(`ェ´)「サッカー場つーか、古びたゴールのある広場な」

今歩いている河川敷を数分進んだところにそれはある。

川*` ゥ´)「よし、そこ行こう」

(`ェ´)「えー、だりー」

弟は渋るが


川*` ゥ´)「エロ本(`ェ´)「今向かってます」よし、いい子だ」


姉の切り札には太刀打ちできなかった。

108 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 00:21:08 ID:98mgcBj60



(`ェ´)「……で、着いたはいいけど、ひでーな」

広場には一対のサッカーゴールと腐りかけのベンチしかなかった。
ゴールネットも穴が開いて、枠も錆やら土ぼこりやらで茶色く染まっている。
一応地面にはコートらしき線が引かれているが、均されておらず、ところどころ雑草も生えている。
とてもサッカーができるような空間ではないし、そもそもサッカーボールもない。

その旨を姉に伝えると

川*` ゥ´)「別に球蹴ってゴールに入れりゃいいっしょ」

という、サッカー選手やファンの反感を買うような返事が返ってきた。

(`ェ´)「でも、ボールがないと流石に話にならないし……」


川*` ゥ´)「弟よ……」


(`ェ´)「何さ」

無駄にもったいぶって姉は口を開いた。






川*` ゥ´)「サッカーしようぜ!あたしボールな!」








.

109 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 00:24:00 ID:98mgcBj60

(`ェ´)「なに、俺があねきをボールに見立てて蹴るの?」

川*` ゥ´)「そーゆーこと」

(`ェ´)「やだよ、ボウリング球蹴るようなもんじゃん」

5キログラムの球を蹴るスポーツなど、聞いたことがない。


川*` ゥ´)「いーじゃん。……あたしもサッカーやりたいんだよ」




姉の言葉に力がこもっている気がした。

110 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 00:26:51 ID:98mgcBj60

(`ェ´)「……ったく」


弟は姉を地面に置いた。
チューブは頑丈にできているため、乱暴に扱っても平気らしい。


左足を軸に右足を後ろに引き、一気に前へ振り上げる。



どかっ!



(;°ェ´)「痛ってぇ!!」

蹴った瞬間、痛みが身体を突き抜ける。もしかしたら、甲にヒビが入ったかもしれない。
姉は十数センチメートルほど転がって止まった。


川#)ゥ´)「あっははははは!!!たーのしー!!!!」ピャーーーーー

川#)ゥ´)「ね、もっかいやって!!」

頬を真っ赤に腫らせて姉は笑っている。

111 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 00:34:29 ID:98mgcBj60

(;`ェ´)「マジかよ……」

もう一度姉を蹴り上げる。


どかっ!!


ピキッと右足から嫌な音が聞こえた。

(;°ェ°)「ふおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」ピャーーーーーー

あまりの痛みに地面をのたうち回る。

川#);ゥ´メ)「ほらほら、まだまだゴールは遠いよ。頑張れ頑張れ」

これほど嬉しくない応援もないだろう。

(;°ェ´)「勘弁してくれよ……」

川#);ゥ´メ)「根性ないなー。こんなんじゃモテないよー」

(;`ェ´)「こうでもしないとモテないなら、一生彼女なんか作んねーよ」

川#);ゥ´メ)「いーからいーから。早くしないと雨降ってきちゃうよー」

姉の言う通り、空はさらに暗くなり雷の音も聞こえてきた。


(;`ェ´)「ちっくしょー」


どかっ!!


2回蹴って感覚が麻痺したのか、あまり痛みを感じない。
むしろ力いっぱい蹴る感覚が心地よく感じてきた。

112 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 00:35:31 ID:98mgcBj60


どかっ!!


どかっ!!


どかっ!!……


.

113 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 00:38:40 ID:98mgcBj60

何度も姉を蹴り飛ばして11発目。
ゴールまであと1メートルといったところか。


静かに右足に意識を集中させる。

まるで自分がプロサッカー選手になった気分だ。
国民の期待を背負い、優勝をかけたPKに臨むのだ。



どかっ!!



ふわりと姉が浮いた。
そのままゴールポストへふらふらと吸い込まれていく。


どさり、と姉が落ちた。

ゴールネットは揺れなかったが、ゴールには入っている。



(;`ェ´)「……やった」

(*`ェ´)「やったーーーーー!!!!!」

年甲斐もなくはしゃいでしまった。地面をぴょんぴょん跳ね回る。

(*`ェ´)「足痛てええええ!!!!!」

靴を脱いでいないため分からないが、きっと折れている。

(*`ェ´)「どーだ、あねき!!!」

嬉々とした表情で姉を見る。
が、姉はこちらを向いていない。

114 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 00:41:46 ID:98mgcBj60

(`ェ´)「んだよ、たく……」


立つのが辛いため、ゴールに向かって這って進む。
砂や小石が皮膚に食い込んで、足とは別の痛さを感じる。


(`ェ´)「おーい」

ようやくゴールにたどり着くと、弟は手を伸ばし、ごろりと姉をこちらに転がした。



ルノ#:。;※;;メ,,)「……」



返事はない。

何度も蹴られたせいか、内出血で赤紫色になっている。
整備されていない雑草まみれのグラウンドを転がったため、切り傷も多い。
小石が食い込んでいたり皮膚が剥がれ落ちていたりしている箇所もある。
ある程度整っていたはずの髪の毛はぼさぼさになって、鼻はねじ曲がり、右耳は千切れかけている。

115 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 00:43:06 ID:98mgcBj60

(`ェ´)「おーい?」

もう一度声をかけてみる。
ぽん、と頬を軽く叩いてもみる。



ルノ#:。;※;;メ,,)「……」



それでも反応がない。


……やりすぎてしまったか?

弟は念のため、ぼろぼろの姉の口元に耳を近づけてみた。

わずかながら呼吸音が聞こえる。
死んではいないようだ。

117 名前:仁志川(エログロ注意) 投稿日:2017/08/21(月) 21:50:49 ID:GqPJqir.0

(`ェ´)「……」

おもむろにスマホを取り出す。

この足では姉を持って歩けそうにない。ましてや病院に帰ることなど不可能だろう。
興奮が冷めてきたのか、右足にじわじわと侵蝕してくるような痛みがぶり返している。
それに、なぜか左足まで痛くなっている錯覚を覚えた。

アドレス帳から病院の番号を選んでタップする。

数回のコール音が聞こえた後、院内スタッフの声が聞こえてきた。

(`ェ´)「もしもし―――」



.

118 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 21:53:26 ID:GqPJqir.0

ぽつぽつと雨粒が肌に当たり始める。


(`ェ´)「―――わかりました、お願いします」

救急車はあと10分ほどで来てくれるようだ。


―――これ以上雨脚が強くならないといいのだが。
そんなことを考えるが、雨量は絶えず増えていく。

近くに雨宿りができそうなところはない。



(`ェ´)「……」


ルノ#:。;※;;メ,,)「……」


弟は姉が濡れないよう、両手で腹に抱え、背中を丸めて救急車が来るのを待った―――

119 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 21:55:07 ID:GqPJqir.0
――――――――
――――
――


('、`*川「……」


性別:女
年齢:26歳
学歴:四年制私大中退
職歴:イベント派遣のバイトを複数回
恋人:未だゼロ
趣味:コンビニでの立ち読み

120 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 21:57:25 ID:GqPJqir.0

というわけで、ここは深夜のコンビニエンスストア。

寂しい女の手には一冊の雑誌。
開かれたページには首から下が欠損している女とその弟の入院生活が書かれている。


女はその雑誌を買うつもりはない。
しかし、何もせずに立ち読みだけするのは流石に申し訳ないと思っているのか、必ず食べ物を購入している。

そのせいで、日頃の悩みは体重が日に日に増えていることだ。肌荒れも深刻である。

それでも、だらしない女はこの趣味をやめることができなかった。

121 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 22:04:14 ID:GqPJqir.0

('、`*川「……」

あらかた読み終え、女は適当に菓子パンを手に取りレジに向かう。

('、`*川「あら?」

女はほぼ毎日このコンビニに来ているため、店員の顔をなんとなく把握していた。
が、今いる店員は初めて見る。


Σz ゚ー )リ「こちらにどーぞ」


若い店員だ。中性的な顔立ちをしており、声を聞いても性別がいまいちわからない。
身長はおそらく180センチメートルを超えており、手足もすらりと細長く、ファッション雑誌のモデルをやっていてもおかしくないスリムな体型をしている。



そして何より特徴的なのが頬や首、腕に見られるぎっしりと並んだ緑色の鱗。

122 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 22:05:28 ID:GqPJqir.0


('、`*川「……龍?」

思わず出てしまった声を店員は聞き逃さなかった。

Σz ゚ー )リ「そっすね。人間の血の混じってない正統な龍族っす」

バーコードリーダーを商品にかざしながら店員は言った。


('、`*川「でも珍しいわね。龍がこんなとこで働くなんて」

少なくとも女は龍族がコンビニやスーパーのレジに立っているのを見たことがない。

Σz ゚ー )リ「まー、龍族プライド高いっすからね。でも最近は不況でゼータク言ってらんないんすよ」

('、`*川「不況」

Σz ゚ー )リ「そっす。こないだ親父がリストラされちゃって」

('、`*川「リストラ」

まったく世知辛い世の中である。

123 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 22:10:40 ID:GqPJqir.0

レジに値段が表示される。

Σz ゚ー )リ「312円っす」

('、`*川「はい」

500円玉を差し出す。

Σz ゚ー )リ「500円お預かりします」

500円玉をレジに入れ、菓子パンをレジ袋に入れた。


Σz ゚ー )リ「先に商品の方、お渡ししまっす」

('、`*川「ども」

Σz ゚ー )リ「それと、188円のお返しっす」

('、`*川「あ、レシートはいいわ」

Σz ゚ー )リ「はい」

龍族であろうがやっていることは普通のコンビニ店員と何ら変わりはなかった。

袋を片手に女が店を出る。

Σz ゚ー )リ「ありがとございましたー」


気の抜けた挨拶が自動ドアの音に重なって聞こえてきた。

124 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 22:13:54 ID:GqPJqir.0

* * *

次の日も龍族の店員がいた。

立ち読みが趣味の女は、1時間ほど立ち読みをしたのち、おにぎりとカップ麺をレジへと持っていった。


('、`*川「これって聞いてもいいのかしら……」

レジに着いた途端、女はこう言った。

Σz ゚ー )リ「?」

何を聞きたいのだろうか。


('、`*川「……男?女?」

女は二つの対照的な単語を口にする。

Σz ゚ー )リ「あ、自分の性別っすか?」

('、`*川「そう」

店員は昨晩と同じように、器械でバーコードを読み取る。

Σz ゚ー )リ「いちおー、女っす」

125 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 22:23:17 ID:GqPJqir.0

('、`*川「一応?」

随分と曖昧な答えだ。

Σz ゚ー )リ「戸籍にはそっちで登録してるんすよ」

('、`*川「戸籍」

Σz ゚ー )リ「でも、龍族ってそんなに性別の概念ないんすよね」

('、`*川「そうなんだ」

女はトレイに小銭を置いた。


Σz ゚ー )リ「だから、生やそうと思えば生やせますよ、ちんちん」

店員が商品と釣銭を渡す。

126 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 22:25:54 ID:GqPJqir.0

('、`*川「ちんちん」

Σz ゚ー )リ「ちんちん」

('、`*川「ちんちんってあのちんちん?」

Σz ゚ー )リ「はい、ちんちんぶらぶらのちんちんっす」

深夜のコンビニで、(少なくとも戸籍上では)女二人がちんちん談議に花を咲かせる。


('、`*川「……その、ちんちんは一度生やしたらそのままなの?」

Σz ゚ー )リ「いや、ひっこめられますよ、ちんちん」

('、`*川「ひっこめる?ちんちんを?」

Σz ゚ー )リ「ええ、何て言えばいいかな」


Σz ゚ー )リ「……ベロみたいな感じっすかね」


('、`*川「こんな感じ?」

女はそう言うと、紅い舌を口から出して蛇のように前後に動かした。

Σz ゚ー )リ「そうっすね。それが一番近い感覚だと思います」

('、`*川「へぇ~、全然知らなかったわ」

20年以上生きてきたが、まだまだ知らないことも多いようだ。

外気に触れて少し乾いてしまった舌を唾液で潤わせてから、女は店を出た。

127 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 22:37:12 ID:GqPJqir.0

* * *

数日後。
立ち読みが趣味の女がコンビニに入ると、龍族の女(戸籍上)がつまみの陳列棚に商品を補充していた。

Σz ゚ー )リ「いらっしゃいあせー」

('、`*川「ども」

軽く会釈をしてから雑誌コーナーへ。今晩は2時間ほど読むつもりだ。


('、`*川「あら?」

だが、女の足が止まった。

店員のズボンの下に一本の脚しか見えないのである。

('、`*川「……右脚、どうしたの?」

Σz ゚ー )リ「ああ、それなら……」

店員が松葉杖をついてレジに向かう。女もそれに付いていく。


Σz ゚ー )リ「ほら、ここに」


指さした先には銀色の箱のようなもの。そこから白い湯気が昇っている。

おでんだ。

128 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 22:39:46 ID:GqPJqir.0

('、`*川「もうおでん売り出してるのね」

Σz ゚ー )リ「そっすね。意外とこの時期でも需要はあるらしいっす」

大根、ジャガイモ、竹輪、こんにゃく、卵など定番の具から、ロールキャベツやトマトなどの変わり種。



その中に混じってそれはあった。



('、`*川「『龍肉』……?」

厳密にはその後に「(すね)」と書かれている。

129 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 22:50:41 ID:GqPJqir.0

('、`*川「あなたの脚?」

Σz ゚ー )リ「はい」

店員はさらりと答えた。

Σz ゚ー )リ「税抜きで315円なんで他のと比べるとちょっと高いっすけど、
       数量限定なんでたぶん明日、てか今日のお昼過ぎには売り切れてると思いますよ」

('、`*川「……どんな味なの?」

興味はあるが味が駄目だったら意味がない。

Σz ゚ー )リ「うーん、自分で言うのもアレっすけど、出汁が染みててけっこー美味いっすよ」

('、`*川「ふーん」


('、`*川「……てか自分の肉、自分で食べたの?」

Σz ゚ー )リ「はい、店長が『1本どう?』って」

('、`*川「そう……」

女は顎のニキビを抓みながら(つまみながら)しばらく迷っていたが、“限定”という言葉の響きに負け、結局買うことにした。

130 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 22:55:42 ID:GqPJqir.0



('、`*川「あ」

コンビニを出てから気づいたが、立ち読みをするのを忘れていた。
戻ることも考えはしたが面倒くさいし、何よりおでんが冷めてしまっては困る。


向かいの公園のベンチに腰掛け、さっそく串に刺さった龍肉(すね)を口に入れた。

しっかり火を通したのか、舌だけで肉を潰せてしまう。
そして潰した途端、じゅわっと昆布と鰹節から取ったであろう出汁が口中に広がった。
同時に出汁とは明らかに異なる存在感の強い味が味蕾を刺激する。

これが龍肉由来の味なのだろう。牛すじ串に似ているが、牛ほどクセがあるわけでもないため飽きが来ない。

あっという間に一口目が口内から消え、二口、三口目と進む。

さて、四口目を食べようといったところで、刺さっていた肉がすでに全部飲み込まれていることに気づく。


こんなに早く食べ終わってしまうとは思わなかった。

舌にはまだ肉の味が残っている。



ベンチから立ち上がり、コンビニへと駆ける。

('、`*川「……」

女がコンビニから出たとき、おでん売り場からは龍肉の串が無くなっていた。

131 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 23:02:03 ID:GqPJqir.0

* * *

('、`*川「あら」

Σz ゚ー )リ「どっすか、龍肉」

銀の容器には昨晩同様、龍肉の刺さった串が沈んでいた。
しかし今回は「(もも)」と書かれている。


('、`*川「あなたの?」

Σz ゚ー )リ「自分のっす」

('、`*川「じゃあ、立ち読みしたら買うわ」

Σz ゚ー )リ「うわ、店員の前で堂々と立ち読み宣言しやがった」

('、`*川「いーじゃない、別に。客入り良くなるんでしょ」

Σz ゚ー )リ「んなの昔の話っすよ。ぶっちゃけ今やられてもメーワクなだけっす」

('、`*川「マジ?」

Σz ゚ー )リ「マジ」



その日、立ち読みが趣味の女は立ち読みの時間を20分以内に抑えた。

132 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 23:08:43 ID:GqPJqir.0



('、`*川「あなたの脚って元に戻るの?」

Σz ゚ー )リ「トカゲじゃないんだし、戻りませんよ」

おでん用の白い容器を袋に入れる。中には龍肉串が5本。

('、`*川「でもちんちんは戻るんでしょ?」

Σz ゚ー )リ「ちんちんは出したりひっこめたりできるだけっすよ」

('、`*川「もし、ちんちんを切っちゃったら?」

Σz ゚ー )リ「たぶん戻んないんじゃないっすかね」


('、`*川「……切るときってやっぱ痛い?」

龍族にも痛覚はあるのだろうか。
少なくとも自分だったら耐えられそうにない。

Σz li゚ー )リ「痛いどころの話じゃないっすよ~」

店員の顔が蒼ざめている。

133 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 23:20:48 ID:GqPJqir.0

('、`*川「あ、やっぱり」

Σz li゚ー )リ「あー、思い出しただけでぞわぞわしてきた」

Σz li゚ー )リ「てか、明日も切るんすよ。今度は左腕」

腕は鱗が覆い尽くしている。
見るからに硬そうなそれらは、蛍光灯の光を受けて鈍く照っている。


そんな腕を見た女は

('、`*川「まずそう」

と、思ったことを正直に口にした。


Σz ゚ー )リ「いや、さすがに鱗は剥がしてますから」

('、`*川「そうなの。ま、考えとくわ」

Σz ゚ー )リ「ども。多分明後日からは売られると思います」

134 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 23:26:25 ID:GqPJqir.0

('、`*川「……あとさ、もう一つだけいい?」

一番聞きたかったことを聞いていなかった。

Σz ゚ー )リ「なんすか?」


('、`*川「……なんであなたは自分の肉を売るの?」


Σzσ゚ー )リ「あー……。まー、いろいろ理由はあるんすけど……」

店員はポリポリと頬を掻きながら続けた。



Σzσ゚ー )リ「やっぱ、不況っすからねー」



('、`*川「不況ねー」

聞いていて悲しくなってきた。

135 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 23:32:59 ID:GqPJqir.0


容器から串を取り出し、口に入れる。レジの前で、だ。

行儀悪いのかもしれないがどうせ客は自分しかいない。


弾力のある肉特有の食感、そして噛むたびにジューシーな肉汁が溢れ出てくる。
出汁と混ざったそれは、ほんのりと甘い。

昨日食べたすね肉よりも自分はこっちの方が好みだ。



3本目の串を手にした時点で、女は明後日に販売されるであろう龍肉(うで)も食べることを心に決めた―――

136 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 23:35:47 ID:GqPJqir.0
――――――――
――――
――

(゜3゜)「……」

仕事で訪れた超高層ビル。いったいどれくらい費やして建てたのだろうか。

正面エントランスには10メートルは超える噴水付きオブジェ。
ずらりと並んだ受付嬢は、マネキンと見紛えるくらいに整った顔立ちを持った者だけ。
壁の一面は巨大なガラス板がはめ込まれており、外の光を存分に取り込んでいる。
見上げれば都会の地下鉄のように複雑に入り組んだ通路が張り巡らされている。角度によってはスカートの中が見えてしまいそうだ。

エレベーターホールも無駄に広く、テニスの試合ならば余裕でできそうだ。
全てのエレベーターの両脇には自分の背丈を超える観葉植物が設置されている。


ゆとりのある空間のはずなのになぜか息苦しさを感じてしまう。

137 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 23:41:48 ID:GqPJqir.0

(゜3゜)「……」

読んでいた朝刊を折りたたみ鞄に入れる。それに連載されている小説を読むのが最近の習慣だ。
しかし、よくもまあ、こんな作品を全国紙に載せようと考えたものだ。

個人的には楽しめているから構わないのだが。


ともかく、サラリーマンの男はエレベーター横の「↑」ボタンを押す。

すると、ちん、という少々古さを感じさせる音を鳴らして扉がゆっくりと開いた。

中には女が一人。厚く塗られたファンデーションに真っ赤な口紅。
大きなボタンの付いた灰色のジャケットを羽織り、下のスカートも同じ素材から作られているようだ。
頭に乗っている帽子もやはり灰色で重量感がある。手には白手袋がはめられ、膝から下は黒いタイツと底の低い革の靴。



エレベーターガールとでも言うのだろうか。今時にしては珍しい。

||‘‐‘||レ「いらっしゃいませ。何階をご利用ですか?」

深々と頭を下げた後、女は男に尋ねた。

138 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 23:44:53 ID:GqPJqir.0

(゜3゜)「51階で」

||‘‐‘||レ「かしこまりました」

いつの間に押したのか、エレベーターガールの背後にずらりと並んだボタンのうちの、「51」のボタンがオレンジ色に点灯していた。


||‘‐‘||レ「所要時間は3時間14分を予定しております」

||‘‐‘||レ「途中、5階、17階、31.5階に止まりますが準備はよろしいでしょうか?」

(゜3゜)「別に平気さ。食料は持ってきている」

事前にコンビニでサンドイッチとゼリー飲料を購入している。
そういえば、朝刊の小説もコンビニが舞台だった。


||‘‐‘||レ「かしこまりました。扉が閉まりますのでお気を付けください」

女が流れるような手つきでボタンを押し、扉を閉める。
すると、ガタガタと音が聞こえてくると同時に足の裏に圧を感じた。

後ろの壁はガラス張りになっており、街路樹はすでに遥か下方へと遠ざかっている。

139 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 23:46:25 ID:GqPJqir.0


||‘‐‘||レ「お客様、今日はどうしてこちらに?」

エレベーターガールの女が姿勢を崩さずに尋ねた。

(゜3゜)「別に大したことはないよ。ただの仕事だ」

||‘-‘||レ「そうは言ってもこんなところに来るのですから、何かあるのでしょう?」

女はくすくす笑う。

(゜3゜)「それを言うなら、あんただって相当なモノ好きじゃあないか。こんなところで働くなんて」

男がそう言った途端、


ちん、と音がした。

140 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 23:50:11 ID:GqPJqir.0

||‘‐‘||レ「5階、児童公園でございます」


開かれた扉の向こうには小さな公園が広がっている。
ペンキの剥げた滑り台や鎖のよじれたブランコ、ピエロの形をした小型のジャングルジム。

姿は見えないが子供の声も聞こえてくる。

穏やかな風が嬉しい。

141 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/21(月) 23:59:30 ID:GqPJqir.0

砂場に取り残されたピンク色のスコップを拾うと、スーツの男は

(゜3゜)「小さいときは泥団子を作るのが上手かったんだ」

と、得意げに言った。

||‘‐‘||レ「私はあまり砂場では遊びませんでしたね。追いかけっことかばかりしていました」

空にはひとすじの飛行機雲が、消えずに横に広がっている。

雨が降るのかもしれない。






||‘‐‘||レ「では、上へ参りましょう」

(゜3゜)「わかったよ」

男の手にはピカピカに磨かれた泥団子。

それを鞄に丁寧に仕舞い込んだ。

142 名前:仁志川(エログロ注意)[sage] 投稿日:2017/08/22(火) 00:01:20 ID:E3sG/SRA0

ごうごうと音を立て、猛スピードでエレベーターは上昇する。

||‘‐‘||レ「次に止まる階、17階はどこかの紛争地帯ですので、十二分にお気を付けください」

しれっと女は告げた。

(゜3゜)「どこかって、どこだよ?」

||‘‐‘||レ「多分、中東かアフリカだと思いますけど……」

女の背筋は相変わらずぴしっとしている。

||‘‐‘||レ「どこであろうと危険なのには変わりません。地雷を踏み抜いて脚を失ってしまうことのないよう、細心の注意をお払いください」

(゜3゜)「はいはい、気を付けるよ」

||‘‐‘||レ「万が一のことがあると私の責任になってしまうので、本当にお願いいたします」

(゜3‐)「はいはい」


エレベーターガールの忠告を聞き流しながら男は鞄からサンドイッチを取り出し………





143 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 00:03:20 ID:E3sG/SRA0



(; ω )「……」



薄暗い部屋の中、背中を丸めコンピュータの画面に向かう一人の男。
彼の名は西川。ネット上では「仁志川」と名乗り、自身が執筆した作品を公開している。


カタカタとキーボードを叩く音と小蝿の飛び交う音。

西川の目は真っ赤に充血し、空になった目薬の容器が床に散らばっている。

ここ数日食事は摂っておらず、風呂にも数カ月は入っていない。



彼は執筆を終えることができずにいた。

144 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 00:05:39 ID:E3sG/SRA0

さて、これまでに読者諸兄が目にしてきたもの(道化師と炊飯器を愛する女等)は、この西川が今まさに執筆している作品の、ほんの一部に過ぎない。

そもそも彼がこの作品を書こうとしたのは、劇中劇を何重にも重ねてみたい、といった些細な好奇心からだった。


作中の人物がある作品を創ったり、見たりして、その作品の中でも登場人物が何らかの形で創作物と関わる。それをひたすら繰り返すのみ。


別に西川は劇中劇を重ねることで何らかの効果を狙ったわけではない。
ただ純粋に面白そうだと思って始めたことである。


執筆に取り掛かった当初は順調にストーリーが展開していった。



まずは魔王に攫われた姫を救いに旅に出る勇者の冒険小説を描く小説家から始まり、その小説家の日常を描いたアニメーション会社のスタッフの恋愛模様をコメディ漫画家が描いた。その漫画家が衝動的に起こしてしまった殺人事件を描いたドラマをとある兄弟が見ている。彼らは漫才師であり、彼らの漫才をカーラジオから聞いているのは若いカップルであった―――



客観的に見れば、この時点ですでに展開には無理があった。が、西川は諦めなかった。

145 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 00:07:21 ID:E3sG/SRA0



根本的なことに気付いたのは、警察官がひったくり犯を追いかけている場面を描いているときだった。


どうすればこの物語を終わらせることができるのだろうか。


ただただひたすらにストーリーを入れ子状に重ねてきたが、果たしてこの纏まりのない作品を仕上げることは可能か。
そもそもどうすれば終わりになるのか。


西川はしばらく考えたが良いアイデアが浮かばなかったため、とりあえず飽きるまでは続けてみることにした。
もしかしたら、書き続ければ上手い纏め方が思いつくかもしれない。そう考えたのである。

仮に終わらせられなくても、未完、ということにしてしまえばいいのだから。

146 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 00:10:22 ID:E3sG/SRA0

それから西川は様々なストーリー、キャラクターを描き続けた。
話を重ねていくたびに、彼は執筆作業へと没入していく。

彼は、ここまで集中して物事に取り組んだことはなかった。
時々息詰まることもあるが、多少の時間を置けばまたすらすらと文章が流れ出た。
その感覚は非常に心地よいものだった。


それが、他者からすると読むに堪えないものであったとしても、だ。


いつしか、西川はその快感を追い求めて他の時間を蔑ろにし始めた。

まず、瞬きの回数が減った。少しでも長く画面と向き合うためである。
次に、風呂に入らなくなった。外出をしないため、ほとんど苦にはならなかった。
当然、着替えもしない。臭いは多少気になるが、すっかり慣れてしまっている。
食事は日に日に量が減っていった。執筆に集中する目的もあるが、そもそも食料を買い足すことができないのである。
睡眠もとらないようにしている。以前1時間ほどうたた寝してしまった時は、後悔の念に苛まされた。

147 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 00:13:06 ID:E3sG/SRA0

このように徹底して書き続ける西川だが、時々、ふと、我に返ることがある。


なぜ自分はそこまでして執筆を続けるのだろうか。


確かに、自身でキャラクターを生み出し、彼らを思い通りにストーリーに組み込ませる作業は楽しい。

が、果たして自らの時間、ましてや生命維持に必要な時間まで犠牲にして取り組む必要があるのか。


目蓋が重い。
首が重い。
肩が重い。
下半身の感覚がない。
臭い。
頭がぐらぐらする。


だのに、震えあがるほど美麗な文章が浮かび上がり、それを文字としてディスプレイに反映させる。
させたくなる。
させねばならぬ。


今の西川を駆り立てているのは一体何か。
良い作品を創りたいという欲望か、それとも義務感か。

148 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 00:15:47 ID:E3sG/SRA0

無理やり作品を終わらせようとしたこともある。

しかし、西川はその手を止めることはできなかった。

読者諸兄も見ただろう。彼の足掻きを。

どれだけ理不尽に終わらせても、どれだけ不条理で埋め尽くしても、彼らは、キャラクターは、ストーリーは求めてくるのだ。


西川にしか聞こえない声。脳内に響き続ける声。


警察官の男がOLの女がニートの兄弟が西部劇のガンマンが占い師の老婆が喫茶店のオーナーが宇宙人がレイプ魔とその被害者が環境保全活動団体が女教師が看護師が科学者がキチガイがサムライが年に2度人語を喋る猫が蝿が乳母車の赤ちゃんがミジンコが記者の男がバイの男女が和太鼓サークルの会計担当が最新テクノロジーを駆使して開発されたAIがガラス細工職人の老人がライフセーバーの女がゲーム実況者が虫取り大好き少年が魂を持ったうさぎのぬいぐるみがあやとりで世界を目指す少女が俳人の中年の女が吸血鬼の男が、この作品の全てが「書け」「書け」と言っている。



「何をしている、ぼさっとするな」「メシなんか食ってる場合か」「この表現は美しくない」「寝るんじゃない」「お前はただ書いていればいいんだ」「書け」「書け」「書け」「書け!」「書け!」「書け!!」「書け!!」「書け!!!」「書け!!!!」「書け!!!!!」「書け!!!!!!」




「「「「「「「「「「書けっ!つべこべ言わずにとにかく書け!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」




自らの意思とは関係なしに湧き上がる声に縛られ、西川は書き続ける。

149 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 00:18:26 ID:E3sG/SRA0

西川は時々我に返る、と先ほど述べた。
しかし、実はその頻度が最近は増えている。


疲れているせいだろうか。だが、眠れそうになく、むしろ思考が冴え渡っている。


なぜ自分の生み出した作品に支配されているのだろうか。
その声は自らが創り出しているものなのか。


.

150 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 00:22:29 ID:E3sG/SRA0

いつもよりも考えられる時間が長い。



なぜ彼らは声を出すのか。
本当に自分で創り出しているのか。



まだ、声は聞こえてこない。



そもそもいつからこの作品を書き始めたのだろう。
思い出そうとするが思い出せない。まるで開始した時期を決めていないかのようだ。
仮に1カ月書き続けているとして、その間全く外に出なくて平気なのだろうか。
自分はニートなのだろうか。夏休み中の学生ということも考えられる。

どちらにせよ、なぜ自身のことなのに分からないのだろう。

自分はネット上に作品を公開しているが、この作品に取り掛かる前は何を書いていたのだろう。

思い出せない、というより、知らない。
なぜ知らないのか。



声が聞こえない。自身を追い詰める、あの、いつもの、忌まわしい声が聞こえてこない。


.

151 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 00:27:04 ID:E3sG/SRA0

おかしい。いつもならここまで考える余裕はない。
まるで誰かがその声をコントロールしているかのようだ。



……“誰か”、とは誰のことだろう。



まさか本当に自分の見えないところで“誰か”があの声を操っているとでもいうのか。

馬鹿馬鹿しい。あり得ない。

第一、今まさに自分で思考を続けているのだから、誰にも干渉のしようがない。


だが待ってほしい。今まさに“自身によってなされている”と認識しているこの思考も、その“誰か”によってもたらされているものだとしたら。

いや、考えすぎだ。疲れすぎている。

自分は自分だ。

薄暗いこの部屋でコンピュータに向かって劇中劇を何重にも重ねる試みに取り組んでいる。
集中しすぎて風呂や食事や睡眠を疎かにしてしまっているが、とにかく、取り組みに成功すれば、自身の名を少し変えた「仁志川」という名で、作品をネット上に公開するのだ。



そう、自分の名は西川。西川―――、……


.

152 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 00:29:51 ID:E3sG/SRA0

(;^ω^)「え……?」


おかしい。自分は西川だ。それは間違いない。
だが、それは苗字だけだ。ならば名前は―――。


必死で思い出そうとするも、全く思い出せない。思い出しようがない。













まるで初めから“名前を決められていなかった”かのように。

153 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 00:32:16 ID:E3sG/SRA0

(; ω )「そ、そんなはずはっ……!」

頭を押さえ、ありとあらゆる記憶を掘り返すも、手掛かりとなるものは見つからない。
そもそも掘り返すほどの記憶すらない。


母親の顔も父親の声も部屋の外に何があるのかも自分がどうやって生きてきたのかも全く分からない。


(; ω )「じゃ、じゃあ……」


自分は誰かに創られた、ということか。


そんなことはない、と否定しようとするも、すぐに思考が元に戻される。


(; ω )「あ、」

自分は誰かに創られ、名前さえ与えられなかった、ということか。

(; ω )「あぁぁ、」

自分を取り巻く世界すら創られたものなのか。
そんな世界でなぜ生きているのか。



自分はどうすればよいのだろうか。

154 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 00:33:36 ID:E3sG/SRA0



















.

155 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 00:36:17 ID:E3sG/SRA0

(; ω )「ぁ……?」

何だ、今の間は。
そしてはっきりと意識内に焼き付いたとある記号列。




◆GeFGPVrL2I




これは一体何なのか。

156 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 00:39:24 ID:E3sG/SRA0


(; ω )「―――っ!!」


それは突然現れた。
しかし、思い返せば自分の近くに常に存在していた気もする。


脳内だったか視界の片隅だったか。はたまたうたた寝最中の夢の中か。

それは分からない。


とにかく、この一見無意味な記号列の存在について考えてみることにする。

157 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 00:43:49 ID:E3sG/SRA0

自分に何らかの関係があると思われる記号列。
そして今の状態を踏まえると―――。



……まさか、このたった1つの図形と10の文字が自分をこのような状態にしたとでもいうのか。



仮にそうだとしても、それが今さら自分の脳内に表れた理由は何か。




ふと思い浮かんだ一つの可能性。

158 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 00:45:35 ID:E3sG/SRA0


(; ω )「……おちょくってんのか?」


自らの意思で生きてきたと思い込ませ、ボロボロになるまで追い詰め、完全に心を擦りきったところで、事実を押し付ける―――

その瞬間の反応を描いて楽しもうとしているのか。

無意味な記号の羅列が。



(  ω )「っざけんじゃねえよ……」



(#゚ω゚) 「っざけんじゃねえよ!!」



.

159 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 00:47:08 ID:E3sG/SRA0


(#゚ω゚)「おい!!どっから見てんだよ!!?隠れてんじゃねえぞ!!!」


(#゚ω゚)「なあ!!?笑ってんのか!!!?今もこの姿を見て笑ってんだろ!!!!?」


(#゚ω゚)「てめえの思い通りになんかなってたまるかよっ!!!!!」


西川は金属バットをあちこちに振り回す。
この動作も一見彼の意思によるものに思われるが、実は創られているものである。
そもそもこの部屋には金属バットなぞ無かったのだから。


(#゚ω゚)「うるせえ!!うるせえ!!!うるせえっ!!!!」ガンガン


(#゚ω゚)「ビビってんのかよ、オイ!!出て来いよ!!!」ガンガン


がつがつと机やコンピュータを叩くが、砕ける様子はない。
当然である。その描写をしていないのだから。

160 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 00:48:27 ID:E3sG/SRA0


(#゚ω゚)「畜生!!なんで壊れねえんだよ!!?」ガンガン


窓の外には何もない。


(#゚ω゚)「クソッたれ!!なんなんだよ!!!?」ガンガン


空腹を満たす快感や、性欲を発散させる快感を彼は知らない。


(#゚ω゚)「汚ねえぞ!!見てんだろ、どーせ!!!!こんなことして楽しいか!!!!?」ガン…


.

161 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 00:50:19 ID:E3sG/SRA0


(#゚ω゚)「なあ!!いい加減にしてくれよ!!!どうなってんだよ!!!」


(# ω )「なんでだよ!!創られてるってどういうことだよ!!」


(# ω )「なんなんだよ!こんな姿も見えない奴なんかに……」



ただの記号の集合体なんかに―――。



確かに、西川の困惑も尤もである。
一つ一つでは大した意味もなさない小さな記号が、実は自らの全てを支配していた、というのは到底信じることができない。




ただ、果たして彼がそんなことを言えるのだろうか。




(  ω )「え?」

162 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 00:51:29 ID:E3sG/SRA0








西川も“ただの記号の塊”でしかないのに。







.

163 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 00:53:46 ID:E3sG/SRA0

(;^ω^)「は?な、何を言って……」


半角括弧で、全角スペース、全角キャレット、小文字のオメガ、


(;^ω^)「いや、まさか……」


そしてもう一つ全角キャレットを括れば、西川はできあがる。


(;^ω^)「そ、そんなわけ……」


そこに適宜セミコロンやシャープを加えたり、


(; ω )「……嘘だ!」


キャレットを半角の半濁点に置き換えたりして、


(; ω )「嘘だ!!」


表情を変化させることもできる。


(; ω )「嘘だっ!!!!!!」


嘘ではない。
今、このように西川が西川として物語に登場しているのが何よりの証拠である。

164 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 00:55:59 ID:E3sG/SRA0

仮に括弧の片方を無くしてみよう。


(;^ω^ 「!?」


言うまでもなく、輪郭が欠けてしまっている。

たかが記号、されど記号。
一つ失うだけで西川というキャラクターは崩壊されかねない。


(;゚ω゚ 「や、やめてくれっ!元にっ……!」


なに、心配はいらない。


(;゚ω゚ 「で、でもっ」


別に、西川を死なせる描写はしないのだから。
とは言え、このままでは物語の進行に支障が出るため、元に戻しておこう。


(;゚ω゚)「!?」


(;゚ω゚)「も、戻った……?」


さて、納得いただけただろうか。

165 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 00:57:44 ID:E3sG/SRA0

(; ω )「……っ!!」

ちなみに、ここでは用いていなかったが、基本的には“ホライズン”という名が与えられることが多い。

(;^ω^)「!?」

苗字と組み合わせて、西川ホライズン。

( ^ω^)「西川、ホライズン……」

妙ちくりんな名前だが、なぜかしっくりくる。

まあ、その感情も西川自身が感じているのではなく、描写されているだけであるのだが。

ともかく、記号に支配される筋合いはない、という彼の主張は、彼自身も別の意味で記号の塊であることから、受け入れられるものではないのである。



( ^ω^)「……」

西川は落ち着きを取り戻していた。




.

166 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 00:59:54 ID:E3sG/SRA0



( ^ω^)「あんたは、何がしたいんだ?」

それは西川と同じだ。
劇中劇を重ねてみたかったのだ。

ただ、それだけでは内容が乏しいと感じたため、西川が書いていることにしたのだ。

( ^ω^)「じゃあ、これまで書いてきた……、つもりだった作品も……?」

彼が聞いているのは、要するに道化師と炊飯器を愛する女等の話のことだ。
西川が書いてきているという体だが、当然、本当に彼が書いたわけではない。

( ^ω^)「つまり、あんたが実際には書いていたわけか」

ふふ、と西川が笑った、いや、西川を笑わせた。


( ^ω^)「頭の中の声もあんたのせいか」

話の展開をいかようにも操ることができるのは、創作者の特権である。
だが、精神的に追い詰められるシーンを描くのはなかなか難しかった。

( ^ω^)「ほーん。で、うまく書けたか?」

……正直、技術不足が否めないため、出来には満足していない。

( ^ω^)「ヒトを好き勝手いじっておいてそれはひでえwww」

167 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 01:01:49 ID:E3sG/SRA0


( ^ω^)「もう一回聞くが、どうしてあんたは自分の姿、というか、あんたの存在を示唆させた?」

実は大して理由はない。

( ^ω^)「はあ!?」

しいて言うならば、劇中劇と同じ理由である。

( ^ω^)「てことはあれか」

そう。単純にそうした方が面白そうだったからである。

( ^ω^)「……ふー」

息を吐いて天井を仰ぐ。

( ^ω^)「振り回される身にもなってくれよ」

それこそ書く側の勝手だ。

それに、これでも西川への扱いは当初よりもマシになっている。

( ^ω^)「マジ?」


本来は発狂させたまま終わらせるつもりだった。
が、書き進めていくうちに気が変わって今の展開に至っているのである。

( ^ω^)「ちなみに展開を変えた理由は?」

発狂シーンをうまく描けなかったからである。


( ^ω^)「……おい」

168 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 01:04:28 ID:E3sG/SRA0


( ^ω^)「……で、結局この“物語”はどうやって終わらせるんだ?」

( ^ω^)「今さら発狂させても興ざめだろ。“劇中劇”も未完成だし、あんたは中途半端に関わって宙ぶらりんの状態だ」

そこは安心してほしい。しっかり考えている。

( ^ω^)「……そうか。それならいい」

( ^ω^)「しっかし、認めたくないものだな。今になってもあんたに描かれていると思うとただただむかむかする」

( ^ω^)「と、今話している内容もあんたが描いているんだがな」


西川はそう言うと、コンピュータに向かった。




( ^ω^)「お、終わりが近いのか」

ディスプレイに映った書きかけの原稿。
そこに描かれているものが彼を苦しめてきた。

( ^ω^)「本当に苦しめてたのはあんただけどな」


あの声は聞こえない。


かなり長く書いたが、これ以上続けられそうにない。
勿体ない気もするが元々決めていたことだ。この作品は未完ということにしよう。

169 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 01:06:17 ID:E3sG/SRA0


( ^ω^)「……」


思い通りに話を創っているつもりだった。
作品の中では様々な創作者を描いた。




……そして、実は彼も描かれている存在だった。

170 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 01:07:40 ID:E3sG/SRA0


認めたくなかった。


しかし、彼はそれを知ってしまった、いや、知らされてしまった。


カタカタカタ……


薄暗い部屋の中、キーボードが鳴り始める。

171 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 01:09:48 ID:E3sG/SRA0


作者を描く作者を描く作者。


西川が次に描くのは、そんな幾つもの世界が重なった複雑で歪な世界。



決して美しくない、むしろ醜い入れ子構造。



その名は、



                            ―――Corrupted Fractal

172 名前: ◆GeFGPVrL2I 投稿日:2017/08/22(火) 01:12:47 ID:E3sG/SRA0
あとがき

身の回りには、フラクタル構造をしたものは案外多く存在している。
例えば、枝分かれした樹木、海岸線、ブロッコリー(特にロマネスコ・ブロッコリー)、マトリョーシカ。
それは実は体内にも存在しており、血管の分岐構造や小腸の内壁、すなわち柔毛などがその代表であろう。

大きな構造の中に小さな構造その中にはさらに小さな構造が……、という単純な造りであるはずなのに、なぜか引き込まれてしまうのは私だけだろうか。


さて、この作品でそんな魅力的なフラクタルを描くことにした。
だが、ただシンプルに劇中劇を重ねるだけでも良かったが、どうにかしてもう一捻り欲しかった。
そこで思いついたのが重ねに重ねた劇中劇を、とある架空の物書きの作品にしてしまうことだった。
そして私も◆GeFGPVrL2Iとして、とある物書き(つまり西川)を描くことでもう一つの入れ子構造を創り出したのだ。
そしてこの大きく分けて二つの入れ子構造を無理やり組み合わせた結果が、タイトルにもある通りCorrupted Fractalなのである。


とまあ、このように仰々しく書いてきたが、私には大して文才があるわけではない。
また、ここまで字数の多い作品を書くことも少ないため、普段以上に誤字脱字、表現の重複やら説明不足やらで、きっと読みづらい箇所は多々あるだろう。
実際、書いている私自身も何度も混乱してしまったほどなのだから。
そこはしっかり反省して、次の作品をより良くするために生かしていく所存である。


こんな拙い作品ではあるが、その中のたった一文でも、読者諸兄に対して何かしら訴えたり影響を与えたりすることができたのであれば、筆者として冥利に尽きる、というものである。

173 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:03:04 ID:E3sG/SRA0
――――――――
――――
――

………と書いて、男は机から離れた。


彼は先ほどまで◆GeFGPVrL2Iという酉を用いて作品を投下していた。
作品の内容は、物語を描いている男(西川)が、実は他の人物に描かれていた、というものだ。


さて、彼は話を面白くするために西川を創り出した、とあとがきで語っていたがそれは違う。

彼が西川を創り出した理由はもっと単純である。

彼はただただ自分が書きたい短編を書いた。
そして、それらを西川による作品ということにして、文や表現が稚拙である理由を押し付けたかっただけなのだ。

174 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:04:48 ID:E3sG/SRA0

彼はどうしようもない男である。

物書きとして食っていくと宣言したはよいが、彼の創る作品はとても褒められたものではない。
それにもかかわらず彼は、自分の作品が認められないのは読む人間のセンスが悪いから、と決して自分の非を認めようとしない。


要するに、自分には才能があると思い込んでいる努力嫌いなのだ。


あとがきでは自分には文才がないだの反省して次に生かすだの、謙遜しているようにも見えなくはないが、本心ではそんなことは一切考えていない。

むしろ、そんなことはないですよ、といった意見を貰えることだけを期待しているのである。

175 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:06:36 ID:E3sG/SRA0

ところで、読者の皆の頭の中には一つの疑問が生じていることだろう。


それは、わたしは誰か、という問いである。


答えは簡単。
わたしが彼(◆GeFGPVrL2I)を描いているのである。

彼は自身の生み出した(と思っている)西川を思い通りに操っていると思いきや、実は私が彼を描いているだけなのだからお笑いだ。

176 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:09:07 ID:E3sG/SRA0

ここでもう一つの問いが生じる。


彼が西川にそうしたように、わたしが彼にこの事実を伝えるのか否か。


答えは否。
厳密には、今は伝えない。

もっと彼が多くの作品を書いて今よりも更に自尊心と傲慢さを高めたところで、

おまえはわたしに操られていたのだ

と告げるのだ。


その際彼がどのような表情をしてどのような言葉を発するかはすでに決めてある。

177 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:10:42 ID:E3sG/SRA0

正直なところ、今すぐにでもその場面に移りたいところだが、まだ描写が足りないため我慢が必要だ。


大丈夫。読者の皆の期待を裏切るようなことはしない。


とりあえず今はここまでにしておくが、近いうちに彼がどのようにその傲慢さを増していくかを描くつもりだ。
そのときはまたぜひ読者の皆にもお付き合いいただけたら幸いである。


では、また会おう。

178 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:11:49 ID:E3sG/SRA0
――――――――
――――
――

………と書いて、女はノートパソコンを閉じた。


彼女が書いていたのは複数の物語を何重にも重ねたもので、彼女にとって処女作である。


初めはそこまで大きくするつもりはなかった。
しかし、書き進めていくうちに話が広がってしまい、連載という形をとることになった。

179 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:12:52 ID:E3sG/SRA0

読者はそれなりにいて、その期待に応えようと頑張りすぎてしまうこともあるが、純粋に執筆を楽しむことができている。


これからもがんばるぞ、と小さく呟き布団に入る。
すーすーと寝息を立てている様が愛らしい。




―――実は僕に書かされているだけだとも知らずに。

180 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:13:34 ID:E3sG/SRA0
――――――――
――――
――

………と書いて、少年は物語を終わらせた。

181 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:14:17 ID:E3sG/SRA0
――――――――
――――
――

………と書いて、少女は物語を終わらせた。

182 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:14:47 ID:E3sG/SRA0
――――――――
――――
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………と書いて、小説家は物語を終わらせた。

183 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:15:30 ID:E3sG/SRA0
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………と書いて、物語を終わらせた。

184 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:15:57 ID:E3sG/SRA0
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………と書いて、物語を終わらせた。

185 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:16:31 ID:E3sG/SRA0
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………と書いて、物語を終わらせた。

186 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:16:54 ID:E3sG/SRA0
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………と書いて、物語を終わらせた。

187 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:17:46 ID:E3sG/SRA0
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………と書いて、物語を終わらせた。

………と書いて、物語を終わらせた。

………と書いて、物語を終わらせた。

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188 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:19:13 ID:E3sG/SRA0
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………と書いて、物語を終わらせた。

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189 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:20:14 ID:E3sG/SRA0
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190 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:20:39 ID:E3sG/SRA0
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191 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:21:38 ID:E3sG/SRA0
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192 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:22:34 ID:E3sG/SRA0
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193 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:24:12 ID:E3sG/SRA0
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( ^ω^)「………て話を紅白に投下してるんだけどどう思うお?」

ξ゚⊿゚)ξ「……正直に言っていいのね?」

( ^ω^)「もちろんだお!」

ξ゚⊿゚)ξ「あのね、」


ξ゚⊿゚)ξ「すっげえ読みづらい」


(;^ω^)「うっそ、まじで」

ξ゚⊿゚)ξ「自分で読んでてわかんないの?ブーン、あんたちゃんと推敲とかしてる?」

ξ゚⊿゚)ξ「なんというか、雰囲気出そうとして全部空回りしてる」

ξ゚⊿゚)ξ「それに、あんた中断するとき『今日はここまで』みたいなのも書いてないし」

ξ゚⊿゚)ξ「あんただって、読んでる作品でそういうのされると疲れちゃうでしょ」

( ^ω^)


( ^ω^)


( ^ω;)ポロッ

194 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:25:30 ID:E3sG/SRA0

ξ;゚⊿゚)ξ「ちょ、何泣いてんのよ!?」

( ;ω;)「だって、こんなに強く言われるとは思ってなかったお……」シクシク

ξ;゚⊿゚)ξ「いや、あんたが正直に言えって言うから」

ξ;゚⊿゚)ξ「てか、これでもオブラートに包んで言ったつもりなんだけど……」

( ;ω;)「おーーーーん!!!!」オーイオーイ


ξ;゚⊿゚)ξ「えぇ……」

ξ;゚⊿゚)ξ「いや、あの、うん」

ξ;゚⊿゚)ξ「設定は面白いと思ったわよ」


( ;ω;)「……」スン、


( ;ω;)「……本当?」ウワメヅカイ


ξ*゚⊿゚)ξ(か、可愛い!!)キュン

195 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:26:45 ID:E3sG/SRA0

( つω;)ゴシゴシ

( ^ω∩)ゴシゴシ


( ^ω^)「本当?」


ξ゚⊿゚)ξ「ええ、本当よ」

ξ゚⊿゚)ξ「劇中劇は珍しくないけど、そこまで複雑に重ね合わせると否が応でも力強くなるわね」

(*^ω^)「おっお~、まさに僕が狙っていた通りだお!」

ξ゚⊿゚)ξ「でも、そのせいで読みづらい」

( ;ω;)ブワッ

ξ;゚⊿゚)ξ「あー、もー、泣くな!!」

196 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:28:57 ID:E3sG/SRA0

ξ゚⊿゚)ξ「……それにしても、もし私たちも誰かに描かれているだけだったらと思うとぞっとするわね」

(*^ω^)「だお?」

ξ゚⊿゚)ξ「ま、実際にはそんなことないわよね」

ξ゚⊿゚)ξ「あたしはあたしだし」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーンはブーンだし」

( ^ω^)「おっお~」



( ^ω^)「……でも、もし操られていたとしても、それは僕らじゃわからないお」

197 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:32:29 ID:E3sG/SRA0

ξ;゚⊿゚)ξ「やだ!変なこと言わないでよ」

                                 ♪キーンコーンカーンコーン>

ξ゚⊿゚)ξ「あら、そろそろ行かなくちゃ。行きましょ、ブーン」

( ^ω^)「おっお~」


( ^ω^)「……」                "ξ゚⊿゚)ξ「急がないと……」

(^ω^ )チラ                           "ξ゚⊿゚)ξ

( ^ω^)「お」                   何してんの~、ブーン。置いてくわよ~>

( ^ω^)「……」

(^ω^ )チラ

( ^ω^)「……」

              "( ^ω^)「待ってくれお~」

198 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:34:01 ID:E3sG/SRA0
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199 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/22(火) 02:36:25 ID:E3sG/SRA0
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この物語は無限に重なるフラクタル構造のほんの一部を切り取ったものです。

読者の皆さまがこの作品で見てきた世界の内側にも外側にも、世界が広がっているのです。

そして、それは読者の皆さまの周りの現実世界でも同じことが言えるのではないでしょうか。

自分の意思で行動している、と思いきや、実は自分の意識を超えたところで動かされている。

そのようなことがないとは言い切れません。

わたくしは、この作品を自分の意思で書いているつもりでしたが、きっとわたくしも誰かに描かれている存在でしかないのでしょう。

丁度ブーンが外側の存在をなんとなく感じていたように、確信は持てませんが、自分の外に誰かがいる気がしてならないのです。


これで、この物語は本当に終わります。これ以上繰り返してもきりがないだけですから。

この判断も、わたくしが決めているようで、実はわたくしを超えた誰か、はたまたその外側の誰か、さらに外側の誰か……、とにかく、どこかの誰かさまが決めているのでしょう。

いずれにせよ、わたくしはその誰かさまに従って、物語を終わらせます。


複雑で読みづらい作品でしたが、ここまでお付き合いくださりありがとうございました。


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