ロストマンズアルカディアのようです
- 1 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/19(土) 09:11:41 ID:F3ntED6A0
※エログロ描写があります
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- 2 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/19(土) 09:12:31 ID:F3ntED6A0
パソコンのデスクトップ画面を何をするでもなく眺めていた僕は、ふと誰かの声が聞こえた気がした。
それは、胃の内容物がせり上がって来るのを抑えなければならないほどの、あまりにグロテスクな内容だった。
「お前の人生がクソなのは、オチンチンに骨がないからだよ」
全身VR機器のように僕を完全に覆ったこの思想は、僕の思考能力を遥かに超えている。
まさにペニスそのものの要塞、ペニスでできた文化、あるいはペニスに関する笑えないジョークめいていた。
どこからか次々と押し出される涙を止められず、僕ただ泣くしかなかった。
ペニスに骨が無いことを知った僕の細胞が、まるで僕から逃げようとしているように思えた。
いずれ涙が乾こうとも、こんなに虚しい感情があったことを僕は忘れないだろう。
( ;∀;)「……はっううっ、ううう」
( ;∀;)「はっあああっ、うぅ……」
- 3 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/19(土) 09:13:28 ID:F3ntED6A0
( ∀ )「……」
( ∀ )「……だけど」
( つ∀・)「オチンチンに骨がないのは、誰でも一緒だ」
( ・∀・)「みんな……」
( ・∀・)「世の中の全員、クソみたいな人生なのか?」
陰茎骨なる野生の存在。
そう、オチンチンに骨さえあれば、人類の半分は生臭き擬製愛の地獄から救われるのだろう。
けれど人類のペニスは、骨のある野生のペニスから退化し、誰もが骨を持っていない。
あるいは僕以外の人々は、本当はオチンチンに骨を隠し持っているのだろうか。
- 4 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/19(土) 09:14:40 ID:F3ntED6A0
( ・∀・)「……」
落ち着きを取り戻した僕は、それでもあまり深く考えることが出来ずにいた。
パソコンの電源を落とし、いくらか見えるようになった視界に思考を委ねる。
黒光りするパソコンの画面、その横のヨーグルトの空き容器とスプーン、箱ティッシュ。
目の前に存在するあらゆる人生の消費物が、僕にペニスの存在を匂わせる。
( ・∀・)「……なにが」
(# ・∀・)「何が甘栗むいちゃいましただよ! むく前に骨をつけろよ」
ゴミ箱から顔を覗かせる、レトルトパウチの袋が僕の目を釘付けにする。
アルミとプラスチックでできた包材が、その開け口をパクパクと震わせ、何かを語りかけている。
やはりそれは、ペニスに関することだった。
彼は大げさなほど元気な声で、甘栗に潜むペニスの影を僕に伝えようとしているのだ。
( ・∀・)「……ああっ、これは!」
( ・∀・)「甘栗……、栗だ! クリ、クリクリクリクリ……」
なんてペニス度の高い商品なのだろうか。
形状こそ異なれど、その精神はほとんどペニスの類似形だ。
- 5 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/19(土) 09:15:49 ID:F3ntED6A0
思わず関心してしまった僕は敬意を表し、甘栗の袋に恐る恐る挨拶を返す。
( ・∀・)「こ、こんにちは……」
「はい」
( ・∀・)「君は本当に見事な性器表現してるね」
「そうだよ」
( ・∀・)「だけど僕は、本当は嫌なんだ」
「人間は誰しも無意識にペニスを求め、また、ペニスには逆らえないんだ」
( ・∀・)「そうなんだ……」
( ・∀・)「……」
僕は今、あらゆるものにペニスティックを見出すことが出来る。
それほど世界は、ペニスなるもので蔓延しているのだ。
一歩外に出れば、おびただしいほどの陰茎が姿を現すに違いない。
今頃ペニスの森では、ペニスの木々がペニスの葉を爽やかに揺らしているのだろう。
- 6 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/19(土) 09:16:46 ID:F3ntED6A0
ふと、疑問に思う。
その中で一体誰が、本物の愛を見つけられるのだろうか?
( ・∀・)「無理だ、無理に決まってる。悔しいけど無理だろ……」
( ∀ )「……」
( ∀ )「今の僕には……」
諦めかけてそのまま眠ってしまおうとしたときだった。
ストレートで単純明快な解決策が、降り始めた雨のように少しずつ確実に頭を濡らしてゆく。
( ・∀・)「……そうか」
( ・∀・)「これはきっと、ある種のゲームなんだ」
( ・∀・)「僕とペニス化した世界との……」
座椅子から立ち上がり、ほこりの被った衣類やガラクタをどかし、クローゼットのドアを開く。
- 7 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/19(土) 09:19:15 ID:F3ntED6A0
一般的なひきこもりの大半は、いざというときのためのエマージェンシーキットを所持している。
それは、強制退去が執行されるときのためのキャンプセットであったり、あるいは最後の手段であるナイフや丈夫な麻縄だ。
僕がクローゼットの中で眠らせていたのは、電動丸ノコだった。
アルミベースの小型なボディから覗くチップソーの刃先が、蛍光灯を鋭く反射する。
ペニスを根元から切断する。
それが世界のペニス度をゼロに戻し、あらゆるペニス感をなくす、ただ1つの方法なのかもしれない。
( ・∀・)「……」
試しにコンセントに電源ケーブルを差込み、ロックを解除して丸ノコのトリガーを引いた。
工事現場を思わせる騒音と共に、凄まじい勢いで刃が回転する。
思想の豪雨は一生乾くことがないほど降りしきり、地面を水面へと変えてしまった。
回転する刃の濃密な悲鳴の続く中、僕はレトルトパウチの空き袋に向かって語りかける。
( ・∀・)「なあ……」
( ・∀・)「いったい何でこんなことになってる?」
( ・∀・)「僕の周りをペニスだらけにしたのは誰なんだ?」
- 8 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/19(土) 09:20:15 ID:F3ntED6A0
( ・∀・)「オチンチンに全身を押し潰される息苦しさが分かるのか?」
( ・∀・)「無限に響く結晶と、それを簡単に失くしてしまえる虚しさが、お前に分かるのか?」
「……」
甘栗の袋はもう何も言わない。
誰に向かって話しているのか、あるいは独り言なのか、僕はもはや判断できなくなっていた。
( ・∀・)「皮を切る割礼なんてものを、世界中でやってるんだろ」
( ・∀・)「これも似たようなものだよな?」
( ・∀・)「……甘栗君はそういうの、詳しい?」
( ・∀・)「……」
ペニスを切り落とすことは、きっと何かの通過儀礼なのだ。
ますますその考えは強迫観念めいて、トリガーを握り締める手に力が入る。
回転を保ったままの電動丸ノコを持つ反対の手で、ペニスの先を掴む。
- 9 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/19(土) 09:21:33 ID:F3ntED6A0
( ・∀・)「僕はただ、ほんのちょっと多く切るだけなんだ……」
( ∀ )「1、2、3で切る……! 3で切る、3で切る……」
僕は目をつぶって想像した。
タキシードを着た自分と、鮮烈な赤いドレスを着た彼女を。
彼女とは、誰でもない愛すべき誰かだ。
彼女は僕よりも幾分か背が低く、その顔はリボンの付いたフォーマルな帽子のつばに覆われていて見えない。
彼女と僕は手を取り、どちらからともなくステップを踏み出す。
後ろへ下がっては脚を優しく絡め、また一歩前へと体を押し倒す。
慣れないダンスに、思わず僕はサイドステップの途中でよろめいた。
彼女の手を離してしまい、そのまま僕の腕は地面へと振り落とされる。
そのときだった。
確かに彼女の声が聞こえた気がした。
「1、2、3」、と。
- 16 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/20(日) 20:48:08 ID:YS5/ybws0
気づけば僕は、心で満たされた大きな水槽の中を漂っていた。
藻のような水草や小さなゴミが浮かんでは沈み、時折ネオンカラーの熱帯魚が目の前を横切る。
眠りに落ちる寸前のような、何もかもがバラバラの状態だった。
考えをまとめることも省みることもなく、脳が考えるままに身を任せる。
( ∀ )(……)
( ∀ )(……ん)
( ∀ )(……なんか、腰が痺れてるな)
気ままに流れてゆく考えをやっと追えるようになった時、すぐさま僕の意識は下腹部にかかる重みに向かった。
明らかに普段とは異なる感覚が股間の周囲にある。
それは急速に、深いまどろみから僕を引き上げようとしていた。
( ∀ )(なんだろう、これ)
( ∀ )(なんというか、ああ……)
(* ∀ )(オチンチンが気持ちいい)
- 17 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/20(日) 20:49:42 ID:YS5/ybws0
頭にかかっていたもやが晴れ始め、周囲の音が次第にクリアになってゆく。
誰かの荒い息遣いが近くに聞こえ、僕は恐る恐る瞼を開いた。
すぐ目の前に人影が見え、その向こうには洋風の高い天井が広がっている。
ココナッツのような甘い匂いが辺りに漂っている。
从* ∀从「っつはあぁ……」
横たわる僕の上で、誰かが腰を振っているようだった。
僕の胸に両手を乗せて、見下ろすような視線で彼女は虚ろにこちらを見ている。
月のようにきらめく白銀の髪で覆われていて、彼女の顔は片側しか見えない。
その頬は紅潮し、燃えるような吐息が彼女のピンクの唇から漏れている。
肌が透けて見える白いブラウスが、目の前で華やかに揺れている。
ブラウスの隙間から流れる汗が艶めかしい。
女の太ももは磁気を帯びた果実のように吸い付き、僕の下半身を捕まえて離さない。
そのまま彼女は、しなやかに腰を上下に動かす。
- 18 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/20(日) 20:50:48 ID:YS5/ybws0
(; ・∀・)「え……?」
从 ゚∀从「……あ、起きた?」
( ・∀・)「いや、……は?」
从* ∀从「ねえ、君も腰を動かしてよ……」
それは不思議に落ち着く声だった。
現実性の欠けたこの状況を補うような優しさと、友好的な雰囲気があった。
ゆったりとした動作で彼女は腰を動かし続けている。
僕は言われた通りに、いきりたったイチモツを彼女の膣に打ちつける。
肉付きの良い彼女の尻が股間に触れては離れ、その度に甘い快感が走る。
潤滑油を注したかのように内部はグチョグチョに濡れており、余りの気持ちよさにすぐ果ててしまいそうだ。
(; ・∀・)「うっ……」
从 ゚∀从「あれ? もうイきそうなの?」
- 19 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/20(日) 20:52:25 ID:YS5/ybws0
从 ゚∀从「何も分からないまま精液お漏らししちゃうの?」
从 ゚∀从「子作りじゃない無駄精子になっても構わないならさ」
从*゚∀从「びゅーって好きなだけ出していいよ?」
繋がったまま彼女は体をこちらへと寄せ、耳元で媚びるような声でささやく。
从 ゚∀从「……ねえ、出したい?」
そう言いながら彼女は、うねる肉壁を締め上げる。
ほど良い圧迫だった生温かい肉壺が狭まり、亀頭に感じる圧力が強まる。
更に彼女は、奥深くまでペニスで埋もれた膣を、リズミカルに捻らせ始めた。
肉棒全体をぎちぎちのマンコにしごかれ、どこまでも射精を求められる。
从*゚∀从「なんにも我慢しなくていいんだよ」
从*゚∀从「……一緒にイこ?」
意識が飛ぶような快感が押し寄せ、ついに僕は射精した。
(* ・∀・)「うう……、あっはああ」
- 20 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/20(日) 20:53:38 ID:YS5/ybws0
僕の上で腰を振っていた銀髪の女は、動きを止めて呼吸を整えている。
髪に隠れて片方しか見えない彼女の瞳は、見る者を吸い寄せるような魔力に満ち、口元は僅かにほころんでいる。
しばらくして彼女は僕の上から退き、ペニスが彼女から抜ける感触があった。
横になりながら黙ってそれを見ていた僕は、目を疑った。
僕の下半身のあるべき場所に、オチンチンがない。
まるで去勢された雄猫のように睾丸だけが残り、肝心の竿も亀頭も見当たらない。
陰茎のあった場所へ思わず手を伸ばす。
火傷のような痕が皮膚を染め、その中央に尿道の小さな割れ目がある。
いくら探しても、あの盛り上がった牙に指先が触れることはなかった。
確かに僕は、僕のペニスは、彼女の中で快感に溺れ、そして果てたのだ。
鋭い暗闇の群れが脳内を走り、血液が狂ったような勢いで全身を駆け巡る。
从 ゚∀从「童貞だったのかな? ずいぶん早かったね」
从 ゚∀从「私はハイン。よろしく」
( ∀ )(童貞だったのかな、だと……?)
- 21 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/20(日) 20:56:13 ID:YS5/ybws0
気付けば見知らぬ場所でロストチンポセックス、おまけに童貞だったのかな、の一言。
予期せぬことの連続に疲弊しきっていた僕は、ついに自分を失った。
何か言いかけていた彼女を押し倒し、その柔らかな肢体の上に馬乗りになる。
新雪のようにきめ細かい肌に密着しているだけで、見えないペニスは再び怒張し始める。
僕はそのまま彼女を押さえつけ、彼女の愛液だけが垂れる膣に再びペニスを挿入した。
(# ∀ )「何だよ、これは! 何なんだよ!」
从;゚∀从「えっ、……ちょっと」
(# ∀ )「勝手に終わって……、勝手に始まって、勝手に終わりやがって!」
(# ・∀・)「どうすりゃいいんだよ! 僕にどうかさせてくれよ!」
トロトロになった彼女のオマンコ肉の隅々に、肉棒をグリグリと押し付ける。
痙攣する何百ものヒダが、亀頭に巻き付くように絡む。
自らの怒りと混乱を外部へ漏らすためだけの、荒れ狂った抽送を続ける。
あるのかないのか分からない不可視のペニスは、それでも確かに僕に快感を伝えていた。
- 22 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/20(日) 20:57:16 ID:YS5/ybws0
ふと僕は、ペニスのピストンを止めた。
銀髪の彼女が悦楽の吐息を漏らし始めていることに気付いたからだ。
彼女は、涙で潤んだ切ない目をこちらへと向けて懇願する。
从* ∀从「何で止めるの? 続けてよ……」
( ・∀・)「……」
从* ∀从「お願いだから!」
( ・∀・)「だったら、ピースしながら、おまんこしてって言ってください」
从;゚∀从「それは……」
リクエストを無視して勝手に腰を動かそうとするのを、ひしと捕まえる。
ここで妥協して後に残るのは、変態的な要求をして飲まれなかったという苦い記憶だけだ。
( ・∀・)「僕は満足しましたから」
从 ゚∀从「……え」
- 23 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/20(日) 20:58:15 ID:YS5/ybws0
( ・∀・)「もう、止めますね」
そう言ってファントムペニスを引き抜こうとしたときだった。
か細い声で彼女が呟いた。
从 ゚∀从「オ……、して……」
( ・∀・)「えっ? なに?」
从 ゚∀从「……オマンコ、……して」
( ・∀・)「もっと大きな声で!」
从 ∀从「……早くっ」
v从///从v「早くオチンチンめちゃくちゃに擦りつけて、オマンコしてえええ!!!」
(# ・∀・)「言われなくてもそうするんだよ!」
从* ∀从「あはぁっ!!」
- 24 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/20(日) 20:59:28 ID:YS5/ybws0
やがて事は終わり、僕らは重なったまま寝そべる。
彼女は終始黙ったままで、僕は何となく気まずさを感じる。
何か彼女の機嫌を損ねるようなことをしてしまったのだろうか。
可能性の粒は汗となって大量に吹き出たが、確実にこれだと思い当たる節は何もない。
(; ・∀・)(ダブルピースは不味くない、よな……?)
確かハインと名乗っていた彼女は、どうやら普段はもの静かなタイプの人なのだろう。
それからしばらく経ち、こちらから語り掛けようかと思っていたときだった。
从 ゚∀从「……ねえ、君」
(; ・∀・)「は、はい」
从 ゚∀从「君はオチンチンを失くしたんでしょ?」
( ・∀・)「……」
- 25 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/20(日) 21:00:39 ID:YS5/ybws0
从 ゚∀从「ここは失いし者のいばらの丘」
从 ゚∀从「オチンチンを失くした人は、一度はここに呼ばれるんだ」
あの電動丸ノコを振り落とし、やはり僕はペニスを切断してしまったのだろう。
けれどそれは、あるいはもう遠い昔の出来事のように思えた。
ペニスを失ったという事実だけが、現在の僕と過去の自分を繋げている。
そう思うと、まるで他人事のように彼女の話を聞いていたが、僕は急に心細くなる。
从 ゚∀从「君が思うよりも、ここは遥かに神聖なんだよ」
从 ゚∀从「願いをなんでも一つ叶えてあげる」
( ・∀・)「……えっ」
从 ゚∀从「ここで永久の命を擬似的に真似することもできるし」
从 ゚∀从「君のもといた場所に戻ることもできる」
- 26 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/20(日) 21:01:54 ID:YS5/ybws0
( ・∀・)「……すこし、考えてもいいですか?」
从 ゚∀从「わかった。誰も急いでいないから、ゆっくり決めて」
( ・∀・)「はい」
从 ゚∀从「おーい、でぃ君」
ハインはベッドから立ち上がり、部屋の奥に向かって声をかける。
装飾の施された柱の裏から、すぐに人影が現れた。
触れれば壊れてしまいそうなほど細い手足を振り、俯き気味にこちらへと向かってくる。
足もとまでぴったりと張り付いたスキニーパンツに、翠緑色のタートルネック。
中性的な雰囲気を纏っているために分かり辛いが、どうやら15、6歳くらいの男の子のようだった。
从 ゚∀从「この子はでぃ」
从 ゚∀从「彼もオチンチンを失くしてここにいるんだ」
(#゚;;-゚)「……」
- 27 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/20(日) 21:02:48 ID:YS5/ybws0
( ・∀・)「……」
ハインの言葉を聞いて、僕ははっと気がつく。
大抵の人間は自らのオチンチンを、好き好んで切断しようとは思わないだろう。
でぃと呼ばれたこの子は、不遇なチンポロストを経験しているのかもしれない。
何故彼は、それを失くしてしまわなければならなかったのだろうか。
そして紺のスキニーパンツに包まれた彼の股間は、僕と同じような状態なのだろうか。
聞きたいことはいくつかあったが、彼の放つどこか暗い影に、問うのが憚られる。
結局僕は、一言だけを伝えるのが精一杯だった。
( ・∀・)「よろしくね」
(#゚;;-゚)「……ん」
- 35 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/23(水) 22:52:04 ID:mDuJTJzQ0
ハインとベッドの部屋を抜け、でぃの後ろに付いて屋敷の出口へと向かう。
願い事が決まるまでこの近くに滞在するようにとハインに言われ、でぃはその案内役をしてくれるらしい。
ちょこちょこと進むでぃの小さな歩幅は、きょろきょろと辺りを見渡しながら歩くのにちょうどよかった。
廊下の天井は吹き抜けのアーチ状になっており、高い位置にある窓から光が差し込んでいる。
建物全体を支える柱にはレリーフ彫刻が施されており、そこには積年の陰が沈殿していた。
失いし者のいばらの丘。
ここは恐らく僕のいた場所とはほど遠いのだろうと、漠然と思う。
玄関と思わしきホールに着き、重厚な木製のドアをでぃはゆっくりと開ける。
少しづつ飛び込んでくる外の新鮮な風景に、僕は思わず目を見開く。
( ・∀・)「……」
(#゚;;-゚)「……」
地平線まで遮るものが無い、なだらかな丘陵地帯の壮大な景観が広がっていた。
- 36 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/23(水) 22:53:32 ID:mDuJTJzQ0
一面に広がる芝生の柔らかな絨毯が、したたるような緑の芳香を放っている。
ところどころに散らばる樹木は、溢れた自らの雫を吸って成長した芝自身であるように思えた。
( ・∀・)「……」
(#゚;;-゚)「こっち」
僕が景色を受け入れるまでの充分な間を置いて、でぃは左を指差した。
丘の下方に点在する民家らしき赤い屋根の建物の一帯まで、細長い道が続いている。
それからでぃは、自分の履いていたサンダルを脱いで、僕の足もとに置いた。
ほんのちょっとしたしぐさの延長のように行われたその動きは、僕を驚かせた。
(; ・∀・)「いやいや、でぃは?」
(#゚;;-゚)「靴下履いてるから」
( ・∀・)「そういう問題? ほら、ハインに貸してもらうよ」
- 37 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/23(水) 22:55:06 ID:mDuJTJzQ0
(#゚;;-゚)「ハインは靴を持ってない」
( ・∀・)「持ってない?」
(#゚;;-゚)「うん。モララーの家にモララーの靴があるから」
(#゚;;-゚)「それまで貸すだけ……」
(; ・∀・)「あっ、ちょっと待っ」
館の外の、砂を敷いただけの簡素な道を、でぃはなんでもないことかのように靴下のまま歩き始める。
かかとまでおさまらない革の小さなサンダルを履いて、僕は仕方なく彼女の後を追う。
涼しげに揺らぐ草に心を撫でられながら、二人で丘を下る。
幸福の季節を閉じて枯れた花の茎が、芝生の上に横たえている。
民家の一帯に差し掛かったところで、目の前を華麗な女性が通り過ぎようとしていた。
さらさらの金髪に小ぶりな胸、そして先の尖った耳。
こんなにも綺麗な人がいるなんて、驚愕のあまり僕は目が離せなかった。
でぃが言うには、どうやら彼女はもともと男であり、女のエルフになりたいと願ったらしい。
彼女にとってその願いは、どれほどの価値を持って輝いていたのだろうか。
- 38 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/23(水) 22:57:23 ID:mDuJTJzQ0
ξ゚⊿゚)ξ「……」
エルフ耳の女性は、目の前を優雅に通り過ぎようとする。
自然との調和を保ちながら歩く未知の存在に、僕は本当にこれが現実なのかと訝しく思える。
ξ゚⊿゚)ξ「……何よ?」
ジロジロと見ていた僕の視線を不快に思ったのか、意外にも彼女から声を掛けてきた。
グリーンの瞳に不審感を宿らせ、いかにも不機嫌そうな顔だった。
あるいはこれらの現実は、昏睡状態になった僕の妄想なのかもしれない。
訊ねてみる価値はあるように思えた。
( ・∀・)「あの」
ξ゚⊿゚)ξ「ん?」
( ・∀・)「やらせてください」
ξ゚⊿゚)ξ「……は?」
( ・∀・)「おまんこです。おまんこさせてくださいよ」
ξ゚⊿゚)ξ「……死ねよ、クズ」
そう言うと彼女は地面に唾を吐き、おまけに中指を立てながら去っていった。
オチンチンを失ったことは紛れもない現実で、それから願いごとは確かに実現するのだろう。
- 39 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/23(水) 22:58:29 ID:mDuJTJzQ0
案内された家の内外には、貝をモチーフにしたレリーフがはめ込まれていた。
何度もモルタルで修繕した跡の残る壁は、それだけで温かみがあった。
部屋の中は簡素ではあったが、必要なものは揃っているように見えた。
テーブルの上に編みパンを置いたり、ロウソクに火を付けたりと、でぃは部屋中を歩き回っている。
( ・∀・)「……」
(#゚;;-゚)「……」
( ・∀・)「あっ、あのさ」
(#゚;;-゚)「……」
( ・∀・)「今日はありがとう」
(#゚;;-゚)「……ううん。分からないことがあったら聞いて」
- 40 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/23(水) 22:59:10 ID:mDuJTJzQ0
ほとんど何もかも分からないようなものだった。
真剣に訊くにはやや疲れていたが、会話の糸口を手放すのも惜しい。
代わりに僕は、どうでもいいようなことを訊ねる。
( ・∀・)「ところでなんだけど……、見てた?」
(#゚;;-゚)「見てた……?」
( ・∀・)「うん」
(#゚;;-゚)「……」
( ・∀・)「……」
(#゚;;-゚)「……あっ」
- 41 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/23(水) 23:00:31 ID:mDuJTJzQ0
(#゚;;-゚)「えっと……」
( ・∀・)「えっと?」
(#゚;;-゚)「……」
言葉を濁して聞いたのだが、彼には何のことか伝わったようだった。
でぃはその中性的な顔を赤く染めて、じっと黙る。
丘の上の館での出来事は、どうやら見られていたらしい。
そう思うと、羞恥心を刺激され、冷や汗が出る。
けれど、何故男相手に僕までも動揺しているのだろう。
僕は改めてでぃを見つめる。
あるいはそれは、彼が初めて見せた感情らしい感情のせいかもしれなかった。
でぃの内面を踏みにじったような気がして、僕は何故か嬉しくなる。
と同時に、理由の分からない薄暗い嗜虐心に捕らわれていたことに困惑する。
でぃが帰ってからも、精神的な錯乱はしばらく椅子に腰掛けていた。
やがてロウソクの火だけが明かりとなった部屋の中を、まだ彼がせわしなく動き回っているように感じた。
- 42 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/23(水) 23:01:53 ID:mDuJTJzQ0
それから二日が過ぎた。
从* ∀从「あっ、イく! イくイくイくううううう!!!!」
(; ・∀・)「くっ! ハアハア……」
行けば迎えてくれるハインと、僕は愛の無いセックスを繰り返していた。
目には見えないチンポを、射精を迎えた気になるまで打ち据える。
置かれた状況が変われば、人の考えなんてあっさりと変わってしまうのだろう。
あれほどペニス化した世界を拒んでいたのに、今ではそれだけが僕を充足させていた。
オチンチンを切断したところで、結局僕には本物の愛など見つけられなかったのだ。
チンポ切りゲームの敗北者として、なおもベッドで腰を振り続けるしかなかった。
从 ゚∀从「ねえ、願いごとは決まった?」
汗が沈みシーツに薄暗い秘跡を残すベッドの上で、ハインはそう言った。
ここ数日の間、様々な欲望を思い描いてきたが、僕はまだ決めかねている。
不老不死になりたい、一生困らない快楽を手にしたい、空を飛べる翼が欲しい。
あらゆる誘惑に思いを馳せ、その優劣を認めては訂正していた。
- 43 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/23(水) 23:03:16 ID:mDuJTJzQ0
从 ゚∀从「なんでもいいんだよ?」
( ・∀・)「……」
从 ゚∀从「動物と喋れるようになりたいとか」
从 ゚∀从「死んだ人を蘇らすとか」
( ・∀・)「……」
ふと僕は、どうしようもなく一人であることに気付く。
人が誰もいない世界の中の、自分自身で完結する願いばかり考えていた。
しだいに優しさが胸いっぱいに広がり、僕は泣きそうになる。
それは諦めと突き放された境地から生じる、敗北者の優しさだった。
願いごとはどこかで他者へと通じる祈りであるべきだ、という思いがよぎる。
- 44 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/23(水) 23:04:16 ID:mDuJTJzQ0
从 ゚∀从「別の何かにだってなれるし……、あっ、ツンには会った?」
( ・∀・)「……本物の愛ってあるのか?」
( ・∀・)「それが知りたい」
从 ゚∀从「……は?」
( ・∀・)「何でも、叶えられるんだろ」
从*゚∀从「ふふっ……、あっはっははは!!!」
从*゚∀从「本物の愛? そんなもの、どこにでもあるに決まってるじゃん」
( ・∀・)「どこにでも……」
从 ゚∀从「君も愛に気付いているよ」
从 ゚∀从「ただ君自身が臆病で、クズ野郎なだけ」
( ・∀・)「……」
- 45 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/23(水) 23:05:13 ID:mDuJTJzQ0
从 ゚∀从「はーい! 愛の存在を教えたから、願いごとはもうできないよ」
从 ゚∀从「こんなにバカな願いは久しぶりに聞いたなあ」
笑い過ぎて涙まで見せるハインの横で、僕は衣服を着て立ち上がる。
( ・∀・)「ありがとう。もう行くよ」
从 ∀从ノシ「あはははは! ほんとバカなクズ野郎……」
'
ハインはベッドの上で笑いながら手を振っている。
その笑顔が悲しく見える理由が、僕にはわからなかった。
- 46 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/23(水) 23:06:16 ID:mDuJTJzQ0
館の外は日が暮れかけていて、外灯の無いここは、じきに星と月の茂みとなる。
民家の一帯まで続く下り道を辿りながら僕は考える。
( ・∀・)「……」
思い当たる節はあった。気になる人はいた。
けれど僕は、その人物のことを何一つ知らない。
ほとんど知りもしないような人を、愛し始めるなんてことがあるのだろうか。
確かに聞きたいことはいくつもあるのに、それは胸の内に留めている。
本当は、彼が自分と同じ性別だということを認めたくなかったのだ。
( ・∀・)「……」
(; ・∀・)「っ……」
気がついたときには、僕は走っていた。
もはや本物の愛など知ったこっちゃ無いが、僕はただ、彼と話がしたかった。
- 47 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/23(水) 23:07:21 ID:mDuJTJzQ0
すぐに呼吸は乱れ始め、月の茂みに脚がもつれて何度もよろけそうになる。
誰かのために走るなんて、いつ以来だろうか。
酸欠状態の脳は理性の網の隙間を広げ、小さな熱帯魚を逆流させる。
一匹の記憶が姿を見せたのは、思推や妄想の大群が突き抜けていった後だった。
「人間は誰しも無意識にペニスを求め、また、ペニスには逆らえないんだ」
( ・∀・)(……)
( ・∀・)(……あっ)
( ・∀・)(そういうことだったのか)
社会と断絶し、引きこもっていた僕の周囲がペニスそのものとなってしまったこと。
失われたペニスだけが過去と現在を結んでいることに感じた心細さ。
全ての答えはオチンチンにあったのだ。
人が不連続を恐れ、繋がりや連続性に安心感を見出すのも、きっと同じ理由なのだろう。
- 48 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/23(水) 23:08:24 ID:mDuJTJzQ0
( ・∀・)(やっぱりみんな)
( ・∀・)(オチンチンに骨を隠し持ってたんだ……)
ペニスを切断してからそれに気付いた僕は、世間からすれば大馬鹿者なのかもしれない。
けれどそうしなければ、オチンチンの骨に気付くことはなかっただろう。
不思議とペニスの感覚が強まる。
切り落とす前よりも、生き生きと脈打っているようにすら感じる。
海綿体の単なる膨張ではないほどの走り辛さがあった。
僕はやがて走るのを止め、無くなったペニスの幻影を味わうように、ゆっくりと歩き出す。
心の中でオチンチンに謝る。
きっと許してはくれないだろう。もう彼は去ってしまったのだから。
そう思っていた瞬間だった。
ペニスのぬくもりを肌で感じるような、静かに湿った風が吹いたように感じた。
( ・∀・)(許してくれた、のか……?)
- 49 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/23(水) 23:09:22 ID:mDuJTJzQ0
ここに住んでいる、と彼が言っていた家の前で立ち止まり、息を整える。
充分待ったのにも関わらず、心臓の鼓動は高鳴ったままだった。
ただ話しかけることが、何故こんなにも恐いと感じるのだろう。
これまでしたことがないほどの深い呼吸をし、こわばった腕でドアをノックする。
ほとんど誰にも届かないような、確かに臆病なノック音だった。
「開いてる」と部屋の中から聞こえ、僕は抱きしめるようにドアをこちらへと寄せる。
椅子に座って何か手作業をしていたでぃは一瞬驚いたような表情を見せ、首を傾げた。
( ・∀・)「……なあ、でぃ」
(#゚;;-゚)「モララー、どうしたの?」
( ・∀・)「知りたいことがあるんだ」
- 50 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/23(水) 23:09:55 ID:mDuJTJzQ0
(#゚;;-゚)「ここで何か分からないことがあった?」
( ・∀・)「いや、違う」
(#゚;;-゚)「え?」
( ・∀・)「……でぃ」
(#゚;;-゚)「……」
( ・∀・)「……」
(#゚;;-゚)「……」
( ・∀・)「君のことを、もっと教えてくれないか?」
(#゚;;-゚)
- 51 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/23(水) 23:10:24 ID:mDuJTJzQ0
(#゚;;-゚)「……うん」
.
- 52 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/23(水) 23:11:08 ID:mDuJTJzQ0
それから僕は、もう失ってしまわないように、優しく彼の首に手をかけた。
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- 53 名前: ◆pkE8JARe2o 投稿日:2017/08/23(水) 23:11:45 ID:mDuJTJzQ0
ロストマンズアルカディアのようです
終わり
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