ξ゚⊿゚)ξ前世では恋人だったようです(^ω^ )
1 名前: ◆k2M/82NBVE 投稿日:2017/08/26(土) 20:54:30 ID:n8Zo1NI.0

( ^ω^)「今日もお仕事だおー。
      大変だけど頑張ってやっていくお!」

ξ゚⊿゚)ξ「見つけたわよ!」

( ^ω^)「おっ?」

ξ゚⊿゚)ξ「あぁ、間違いないわ!
      後姿だったから自信がなかったけど、
      私が貴方を間違えるはずないもの!」

(;^ω^)「ど、どちら様でしょうか……?」

ξ;゚⊿゚)ξ「えっ!
      まさか、私のこと、覚えてないの?」

(;^ω^)「し、知らないお……。
     何処かでお会いになりましたかお?」

ξ#゚⊿゚)ξ「本当に忘れたの? 嘘でしょ!?」

(;^ω^)「ご、ごめんなさい、だお」

ξ#゚⊿゚)ξ「信じられない!
      熱烈に愛し合った日々のことを忘れるなんて!」

(;^ω^)そ「いつの話だお?!
      ボクの記憶にキミはいないお!」

ξ#゚⊿゚)ξ「前世よ!」

2 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 20:57:13 ID:n8Zo1NI.0
  _,
( ^ω^)「…………」

ξ゚⊿゚)ξ「何よ、その顔」

( ^ω^)「いや、だって……」

ξ#゚⊿゚)ξ「私との大切な約束を忘れたくせにー!
      何だっていうのよー! この馬鹿ー!」

(;^ω^)「いたたたた、ポコポコ殴るのやめるお」

ξ#>⊿<)ξ「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ー!
       この薄情者!」

(;^ω^)「あの、本当に、ボク、もう仕事なんで。
     やめ、やめてえええええ!」

ξ#゚⊿゚)ξ「来世を約束した恋人との再会と、
      世の中に溢れかえっている仕事のどっちが大切なのよ!」

(;^ω^)「この日本には仕事がなくて死を選ぶ人間がごまんといるんだおー!」

ξ#>⊿<)ξ「私はこの世界でたった一人なのよ!
       希少価値なのよ!」

(;^ω^)「オンリーワンって素晴らしいおね!
      でも、ボクにとってのキミはその他大勢なんだお!」

3 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 20:58:12 ID:n8Zo1NI.0

ξ;゚⊿゚)ξ ガーン

(;^ω^)「そんなショック、って顔されても……・。
      ま、まあ、ボクは仕事へ行くお」

ξ;゚⊿゚)ξ「ま、待って。
       あなた、ブーンじゃ、ないの?」

(;^ω^)「……」

ξ;゚⊿゚)ξ「それだけは、教えて」

(嘘^ω^)+「違います!!」

ξ#゚⊿゚)ξ「はい! 嘘!
       顔にでかでかと書いてるわよ!!」

(;^ω^)「ハッ! 正直者の顔がこんなところであだになるとは」

ξ#゚⊿゚)ξ「どーして嘘なんてつくのよ! 馬鹿!」

(;^ω^)「いや、マジのマで仕事がヤベーッス」

ξ゚⊿゚)ξ「……私だって、鬼じゃないし。
      今の生活があることだって、わかってるし……」

( ^ω^)「その心は?」

ξ゚⊿゚)ξ「ご帰宅はいつかしら?」

4 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 20:58:54 ID:n8Zo1NI.0

(;^ω^)「それ待ち伏せするやつぅ!」

ξ゚⊿゚)ξ「人聞きが悪いわね。
      いつ、いつまでもお待ちしております、ってやつよ」

(;^ω^)「あの、ホント、勘弁してください。
     良い病院とか調べますんで。はい」

ξ#゚⊿゚)ξ「妄想じゃなーい!」

(;^ω^)「360度、上下左右どこから見ても、
      頭のおかしい人としか言いようがなお」

ξ#゚⊿゚)ξ「あなた、騎士のくせに王女である私にそんな口を聞くの?」

(;^ω^)「中世ヨーロッパ設定かお?
      やだ……すごく、厨二臭い……」

ξ;゚⊿゚)ξ「う、うるさいわね!
      仕方ないじゃない、前世が中世だったんだから」

( ^ω^)「ボクは騎士ってガラじゃないですし、
     どう間違っても王女と関わる人間じゃありませんので。
     この辺りでお暇させていただきますお」

ξ;゚⊿゚)ξ「あっ! こら!
      逃げるなー!!」

5 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:00:06 ID:n8Zo1NI.0

( ^ω^)「……定時退社にうっきうきして帰ってきたらこれだよ」

ξ゚⊿゚)ξ「おかえりなさい」

( ^ω^)「ただいま」

(;^ω^)「っじゃねーんだおおお?!」

ξ゚⊿゚)ξ「挨拶は大事よ」

(;^ω^)「きちんとしたお家に育ったのね、ってか!
     そこじゃないんだおー。
     挨拶よりも重要な部分があるんだおー」

ξ゚⊿゚)ξ+「前世の記憶……ね?」

(;^ω^)「意味深な顔してもダメー!
     あとハズレー!
     正解は、見知らぬ女がボクの家の前にいる事案でしたー!」

ξ゚⊿゚)ξ「それは大変ね。
      話し合いで解決しましょう。
      とりあえず上がってもいいかしら?」

(;^ω^)「何をどうしたらいいかも、って思えるんだお?」

ξ゚⊿゚)ξ「私とあなたの仲じゃない」

( ^ω^)「トータル会話時間が十分程度なんですが、それは」

6 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:01:58 ID:n8Zo1NI.0

ξ゚⊿゚)ξ「運命で繋がれた私達よ?
      時間なんて瑣末なものだわ」

( ^ω^)「いや、めっちゃ大事だと思いますお。
      互いを知るため、治療のため、
      時間はいくらあっても損はないお」

ξ゚⊿゚)ξ「よく知るためにも、おじゃまし、ま、す!」

(;^ω^)「や、め、る、お!」

ξ#゚⊿゚)ξ「もう! 硬いこと言わないの!
       前世でだって一緒に寝たのなんて数えるほどしかないんだから!」

(;^ω^)「泊まる気しかねーお?!」

ξ#゚⊿゚)ξ「ブーンが変なことしないならそれでいいじゃない!」

(;^ω^)「できるかボケェ!
     ヤったら最期、何処までも付きまとわれてバッドエンドまっしぐらだお!」

ξ*゚⊿゚)ξ「嬉恥ずかしハッピーエンドでしょ!」

( ^ω^)「あの、とりあえず帰ってもらっていいですか。
     今日一日の疲れがすっごいんですけど」

ξ゚⊿゚)ξ「……わかったわ。
      私もちょっと焦りすぎたみたい。
      ブーンには記憶がないんだものね」

7 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:03:40 ID:n8Zo1NI.0

( ^ω^)「記憶がないというか……。
     まあ、とりあえず、そういうことにしておくんで、
     帰ってください」

ξ*゚⊿゚)ξ「また明日もくるわね!」

(;^ω^)「こなくていいお」

ξ゚ー゚)ξ「照れちゃって」

( ^ω^)「女を殴る趣味はないんで。はい」

ξ゚⊿゚)ξ「知ってるわよ。
     昔っから、あなたは真面目で、優しい人だったもの」

( ^ω^)「それでめちゃクソ強い、って設定かお」

ξ゚⊿゚)ξ「夢を見るのはやめておきなさい。
      思い出したときショックを受けるわよ」

( ^ω^)「夢を見てるのはそっちのほうだお」

ξ-⊿-)ξ「あなたは強い人じゃなかった。
      大勢の騎士の中に簡単に紛れてしまって、
      素晴らしい武勲を挙げることもなく、
      生き延びるだけの……」

( ^ω^)「いやなリアリティ出すのやめろ」

8 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:04:52 ID:n8Zo1NI.0

ξ゚⊿゚)ξ「とにかく! ふっつーの騎士さんだったわよ」

(;^ω^)「もうこの人よくわかんないお。
     前世設定にするならやっぱり強い騎士様が相手なんじゃないのかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「私は強いあなたを愛したわけじゃないもの」

( ^ω^)「優しさかお?」

ξ゚ー゚)ξ「えぇ」

( ^ω^)「見たところ、三十路間近だお?
      人の優しさに夢見る時期はとうに過ぎてるお」

ξ゚⊿゚)ξ「ずいぶんと夢のないことを言うようになったのね。
      昔はあんなに大きな夢を持ってたのに」

( ^ω^)「魔王でも倒すのかお」

ξ゚⊿゚)ξ「ファンタジーじゃないんだから、
      そんなのいないわ」

( ^ω^)「そこの判断はできるのか……」

ξ゚⊿゚)ξ「もう、ブーンが色々と信じてくれてないのはよーっくわかったわ。
      私もそれを受け止めて、行動するからね!」

(;^ω^)「あっ! 待って! もうこないで!!」

9 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:05:19 ID:n8Zo1NI.0

ξ゚⊿゚)ξ「と、いうわけで、今日はお弁当を作ってきたわよ!」

( ^ω^)「えぇ……こわっ……。
      憂鬱な出勤がおぞましさで上書きされるお……」

ξ゚⊿゚)ξ「思い出の料理で無くした記憶を取り戻す!
      定番でしょ!」

( ^ω^)「それどこ情報だお?」

ξ゚⊿゚)ξ「少女漫画」

(;^ω^)「フィクションなんだよなー。
     現実とは違うんだよなあー!!」

ξ゚ー゚)ξ「まあまあ」

(;^ω^)「あ、お弁当押し付けるのやめて……」

ξ゚ワ゚)ξ「いいじゃない。
     記憶が戻らなかったとしても、
     私の手作りお弁当が食べられるのよ?」

( ^ω^)「何が入ってるかわからんもんを口にするのはちょっと……」

ξ゚⊿゚)ξ「メニュー?
      卵焼きとウインナー、プチトマト、に塩シャケ、ポテトサラダよ」

10 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:07:00 ID:n8Zo1NI.0

( ^ω^)「わぁ美味しそう!」

(#^ω^)「でもダメー!
      ポテトサラダに爪とか、卵焼きに髪の毛とか入ってると怖いお」

ξ;゚⊿゚)ξ「そんなことしないわよ!気持ち悪い!」

( ´ω`)「信用できないお……。
      女子はそういうことをするもんだお……」
 _,
ξ゚⊿゚)ξ「あなたも大概フィクションに毒されてるんじゃない……?」

(;^ω^)「と、とにかく! 断固拒否! だお!」

ξ゚⊿゚)ξ「毒見しましょうか?
      昔はしてもらう側だったけど、
      今は身分も何もないわけだし」

( ^ω^)「身分って……」

ξ゚⊿゚)ξ「王族と平民が同じ立ち位置にいると思って?」

( ^ω^)「個人の妄想は自由かもしれないけど、
      ボクを巻き込むのは本当にやめてほしいお……」

ξ゚⊿゚)ξ「前世が平民だったことがショックなの?」

( ^ω^)「ヤッター! とはならないおね」

11 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:07:27 ID:n8Zo1NI.0

ξ゚⊿゚)ξ「でも現実は残酷なものよ」

( ^ω^)「現実見てない人に言われましても」

ξ#゚⊿゚)ξ「違うものも見えてるだけよ!」

( ^ω^)「もしかして、幻覚」

ξ#゚⊿゚)ξ「そうね、そうよね。
       覚えてない人間にいくら言ったって仕方ないわよね。
       ほら、私が一口食べるから、
       そしたらあなたもこれを食べて!」

(;^ω^)「毒見されたって、いらないものはいらないんだお!
     見ず知らずの人間が渡した飲食物を口にするなんて、
     今日日、配達のおっちゃんでもしないお!」

ξ゚⊿゚)ξ「せっかく前の晩から下ごしらえをして、
      腐らないように、食べあわせが悪くないように、
      お腹がいっぱいになるように考えて作ったのに?」

(;^ω^)「頼んでないお!」

ξ゚⊿゚)ξ「……」

( ^ω^)「……」

12 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:07:49 ID:n8Zo1NI.0

(;^ω^)「ま、まあ、どうしてもって――」

ξ゚⊿゚)ξ「あ、やぱり駄目」

( ^ω^)「は?」

ξ゚⊿゚)ξ「よく考えたら、
      前世の私って王女だったから、
      料理なんてしたことなかったわ」

( ^ω^)「……そりゃ、そうだろうおね」

ξ゚⊿゚)ξ「だから、私の手料理を食べたところで、
      こ、この味は――! とはならないでしょ?」

( ^ω^)「そんな漫画みたいなこと、
      この地球上で一度だって起きてると思うのかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「世界は広いから」

( ^ω^)「良い風の言葉をそんな風に使うのはやめるお」

ξ;゚⊿゚)ξ「ブーンに再会したら、
      今度こそ手料理を、と思って練習してたのがアダになっちゃったかー」

( ^ω^)「へたくその料理を口に詰め込まれなくて本当によかった」

13 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:08:42 ID:n8Zo1NI.0

ξ゚⊿゚)ξ「おっかえりー」

(;^ω^)「うわ、いる……。
      またお弁当かお?」

ξ゚⊿゚)ξ「もう帰宅してきてる相手に、
      お弁当は渡さないわよ」

( ^ω^)「そりゃ良かったお」

ξ゚⊿゚)ξ「結局、せめて気持ちだけでも、って
      渡そうとしたのに貰ってくれなかったし」

( ^ω^)「当然の危機管理だと思うお」

ξ゚⊿゚)ξ「まぁ、料理で記憶を取り戻させるのは無理そうだったので」

( ^ω^)「で?」

ξ゚⊿゚)ξ「ジャーン」

( ^ω^)「……バッジ、かお?」

ξ゚ー゚)ξ「マーガレットで作った勲章よ。
      私の力が及ばなかったせいで、
      正式なものはあげられなかったから」

( ^ω^)「わざわざ作ってきたのかお?」

14 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:09:11 ID:n8Zo1NI.0

ξ゚ー゚)ξ「そうよ。
     陰日なたと私を支えてくれたあなただもの。
     章の一つや二つ必要でしょ?」

( ^ω^)「器用なもんだおね。
      紐も手編みかお?」

ξ*゚⊿゚)ξ「ご明察!」

( ^ω^)「既製品と違って、所々の作りが甘いからすぐにわかったお」

ξ゚⊿゚)ξ「小さい頃から散々、練習したのよ。
      不器用な私がにここまでこれたのは、愛の賜物」

( ^ω^)「創作物は素直に凄いお。
      妄想してるより、これを売るほうがよっぽど有意義だと思うお」

ξ゚⊿゚)ξ「それは駄目よ。
      だって、この技術は、ブーンに会ったとき、
      勲章を渡すためだけに磨いてきたんだもの」

( ^ω^)「思い込みも突き抜けると技術に昇華されるのかお……」

ξ゚ー゚)ξ「昔のお礼に、と思ってたけど、
      ブーンの記憶を呼び起こす助けになるなら、
      これ以上の喜びはないわ」

( ^ω^)「このマーガレット、キミの家で育ててたのかお?」

15 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:09:37 ID:n8Zo1NI.0

ξ゚⊿゚)ξ「え、あ、そのお花?」

( ^ω^)「これ、本物のマーガレットを加工してるんだお?」

ξ゚ー゚)ξ「一から全部、私の力作!」

ξ゚⊿゚)ξ「……って言えたらよかったんだけど、
      今から育てても間に合わないでしょ?
      公園の花よ」

( ^ω^)「それ市の所有物だから、勝手にとるとまずいんじゃ」

ξ゚⊿゚)ξ「あっ」

( ^ω^)「罰しようと思えばいくらでも案件じゃ……」

ξ;゚⊿゚)ξ「ど、どどどうしよう!」

( ^ω^)「花屋で買えばよかったのでは?」

ξ;゚⊿゚)ξ「私、こっちに引っ越してきたばかりで、
      花屋の場所とか知らなくて」

( ^ω^)「今時、スーパーでも生花店が入ってるもんだお」

ξ゚⊿゚)ξ「しまった……」

(;^ω^)「前世妄想ばっかりしてるから、
     そういうミスをするんだお」

16 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:10:01 ID:n8Zo1NI.0

(;^ω^)「毎日、毎日、飽きもせず……」

ξ゚⊿゚)ξ「仕事場が近くて良かったわ」

( ^ω^)「何処で働いてるんだお?」

ξ*゚⊿゚)ξ「きてくれるの?」

( ^ω^)「いや、その辺りには近づかない」

ξ゚⊿゚)ξ「何よそれ」

( ^ω^)「自己防衛だお」

ξ゚⊿゚)ξ「流石に公衆の面前で前世がどうのとは言わないわよ」

( ^ω^)「うちの前で言うのもやめてほしいんですが……」

ξ゚⊿゚)ξ「家の中でなら言ってもいいかしら?」

( ^ω^)「入れるわけないんだよなぁ」

ξ゚⊿゚)ξ「ケチッ」

( ^ω^)「ここでどうぞ、どうぞ、って言ってくる男に、
      碌な奴はいないと思うけど、それでいいのかお」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーンは違うでしょ?」

17 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:10:50 ID:n8Zo1NI.0

(;^ω^)「大前提として、他人を家に入れたりしないお。
     何かあってからじゃ遅いんだお」

ξ゚⊿゚)ξ「元王女よ?
      はしたないマネはしないわ」

( ^ω^)「待ち伏せははしたないに入らないのかお」

ξ゚⊿゚)ξ「一途でしょ?」

(;^ω^)「ものは言いようだおね……」

ξ゚⊿゚)ξ「さえない日常に可愛いヒロインがきたんだから、
      諸手を挙げて歓迎しなさいよ」

( ^ω^)「ボクの人生はハーレム系漫画じゃねーんだお」

ξ゚⊿゚)ξ「でも憧れるでしょ?」

( ^ω^)「あ、ボク知ってるお。
      ここで肯定したら、そんな人だと思わなかったわ! って言われるんだお」

ξ゚⊿゚)ξ「……まあ、ムッ、とは、する、わよね」

(;^ω^)「だったら聞いてこないでほしいお。
      そんなので怒られるなんて理不尽だお……」

18 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:11:28 ID:n8Zo1NI.0

( ^ω^)「そういえば、前にくれた勲章」

ξ*゚⊿゚)ξ「何か思い出したの?!」

( ^ω^)「いや、ブンカリに出してたんだけど」

ξ#゚⊿゚)ξ「は?」

( ^ω^)つ【千円】「そこそこの値で売れたんで返すお」

ξ゚⊿゚)ξ「え、何で」

( ^ω^)「これで創作に目覚めてくれ。
      金になる才能を有効に使ってくれ」

ξ゚⊿゚)ξ「……あれは、あなたのために」

( ^ω^)「子供へのご褒美にしました! ってメッセージがきてたお。
      かなり喜んでくれていたらしいお」

ξ゚⊿゚)ξ「……まあ、喜んでもらえたなら、いいけど」

( ^ω^)「ほらほら、ボクに付きまとってる暇があるなら、
      もっと色々作って、売り出せばいいんだお」

ξ゚⊿゚)ξ「私とブーンが結婚すれば、
      製作、私。販売、ブーン、で商売ができるんじゃない?」

( ^ω^)「頼むから諦めてくれ。切実に」

19 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:12:39 ID:n8Zo1NI.0

(;^ω^)そ「ぎゃー!
       とうとう、ボクを殺しにきたのかお?!」

ξ;゚⊿゚)ξ「そんなことするわけないでしょ!」

(;^ω^)「じゃ、じゃあ、その木刀は……」

ξ゚⊿゚)ξ「記憶を思い出してもらうための小道具よ」

(;^ω^)「殴って直るのはブラウン管テレビだけだお!」

ξ;゚⊿゚)ξ「ちっがーう!」

(;^ω^)「まさか、殴るのは頭ではなく……ケツ?」

ξ゚⊿゚)ξ「どうしてそうなった」

( ^ω^)「いや、他に叩く場所なんて」

ξ゚⊿゚)ξ「叩くから離れなさいよ。
     これは騎士として剣術に励んでいた時の記憶を蘇させるためのものよ!
     ほら、持って、持って」

(;^ω^)「えぇ……。
      ボク、剣道すら碌にしたことないお……」

ξ゚⊿゚)ξ「流派とかは私もよく知らないし、
      現代まで残ってるかすら定かじゃないから、
      とりあえず持ってくれたらそれでいいから」

20 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:13:02 ID:n8Zo1NI.0

( ^ω^)「……」

ξ゚⊿゚)ξ「どう?」

( ^ω^)「いや、さっぱり」

ξ゚⊿゚)ξ「やっぱりダメ?」

( ^ω^)「少年時代の無邪気な気持ちが蘇るばかりだお」

ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと振ってみてよ」

( ^ω^)「ほい」

ξ゚⊿゚)ξ「どう?」

(;^ω^)「木刀を振るだけで思い出すとか、
     ちょっとした魔法かお?」

ξ゚⊿゚)ξ「希望は捨てない性格なの」

( ^ω^)「大体からして、本物の剣と木刀なんて、
     握った感触も重さも、何もかも違うんじゃないのかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「私、持ったことなかったらわかんない」

( ^ω^)「常識的に考えればわかることだと思うお」

21 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:13:39 ID:n8Zo1NI.0

ξ゚⊿゚)ξ「はい」

( ^ω^)「今日も今日とて待ち伏せ……。
      残業とかないのかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「努力の賜物よ。
      褒め称えなさいな」

( ^ω^)「ワー、スッゴイ」

ξ#゚⊿゚)ξ「感情を! こめて!」

( ^ω^)「で、これは?」

ξ゚⊿゚)ξ「急に話を戻すのね」

( ^ω^)「さっさと帰ってほしくて……」

ξ゚⊿゚)ξ「無理やり追い出さないあなたが好きよ」

( ^ω^)「毎日、玄関前で仁王立ちされてりゃ、そらね……」

ξ゚⊿゚)ξ「これは私達が生きてた時代のことが書かれてる本よ」

( ^ω^)「図書館のバーコードが張ってるお」

ξ゚⊿゚)ξ「二週間借りてられるから、
      読んでみて」

22 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:14:35 ID:n8Zo1NI.0
  _,
( ^ω^)「えー……」

ξ#゚⊿゚)ξ「嫌そうな顔をしない!」
  _,
( ^ω^)「面倒だお。ブーンはラノベと漫画しか読まないお」

ξ゚⊿゚)ξ「活字は社会人の嗜みよ」

( ^ω^)「ラノベで補うからいいんだお」

ξ#゚⊿゚)ξつ【本】「つべこべ言わず、
           軽く目を通す程度でいいから読みなさい!」

(;^ω^)つ【本】「おっと」

ξ゚⊿゚)ξ「あなたが参加した戦いのことも載ってるわ」

( ^ω^)「キミの名前も?」

ξ゚⊿゚)ξ「……」

ξ-⊿-)ξ「私の名前はないわ。
       王族の恥部として、歴史から消されちゃったんでしょ」

( ^ω^)「恥部?」

ξ゚⊿゚)ξ「あなたと駆け落ちしたから」

23 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:15:01 ID:n8Zo1NI.0

( ^ω^)「えっ」

ξ゚⊿゚)ξ「言わなかったっけ。
      私はあなたと駆け落ちをして、
      心中したのよ」

(;^ω^)「やだ……重い……」

ξ゚⊿゚)ξ「そうね、良い機会だし、ちょっと昔話でも」

( ^ω^)「ごめん。キミの「そうね」がどこにかかってるのか、
      さっぱりわからないお。
      何が良い機会なんだお?」

ξ゚⊿゚)ξ「あれは、あなたが今年の新兵として、
      城にやってきたときのことだったわ」

( ^ω^)「ボクの話を聞いてほしいお」

ξ゚⊿゚)ξ「私とあなたは運命的な出会いを果たし、
      ひと目で恋に落ちたの」

( ^ω^)「おーい」

ξ*゚⊿゚)ξ「顔を合わせる時間はそう多くなかったけれど、
      甘やかで幸せな日々だったわ」

( ^ω^)「ヤヴェ、トリップしていらっしゃる」

24 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:16:03 ID:n8Zo1NI.0

ξ-⊿-)ξ「でも、お父様は大反対。
       姉様が隣国へ嫁いでいたし、
       弟も立派に時期、王として成長していたのだから、
       私の恋愛に口出しは無用だ、って突っぱねたのだけれど」

( ^ω^)「歴史に疎いボクでもわかる。
      王族の結婚は政略結婚が基本だって」

ξ゚⊿゚)ξ「結局、どうやっても説得はできなかったわ」

( ^ω^)「あのね、夢のある話だとは思うお?
     小説とかにしたら売れるかもしれないし」

ξ゚⊿゚)ξ「だから、私とあなたは城を飛び出した」

( ^ω^)「そろそろ、家に入れてもらってもいいかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「私も一緒に?」

(;^ω^)「急に帰ってくるなお」

ξ゚⊿゚)ξ「私はずっとここにいたでしょ」

(;^ω^)「物理的な話じゃなくて、
     心象的な話だお……」

25 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:16:43 ID:n8Zo1NI.0

ξ゚⊿゚)ξ「こんばんは。
      はい。手、出して」

( ^ω^)「お?」

ξ゚⊿゚)ξ「早く」

( ^ω^)つ「……」

ξ゚⊿゚)ξ「では、踊りましょ?」

(;^ω^)「いやいやいやいや。
      ボク、フォークダンスすらしたことないお」

ξ゚ー゚)ξ「ダンスなんて直感よ」

(;^ω^)「初心者にはハードルが高いっす」

ξ*゚ー゚)ξ「ふふ……」

( ^ω^)「何だお?」

ξ*゚ー゚)ξ「前世でも似たようなこと、言ってたから」

( ^ω^)「ふーん」

ξ*゚⊿゚)ξ「あら、興味なさそうな顔」

( ^ω^)「前世、前世って、毎晩聞かされてりゃ、
      飽きもしてくるお」

26 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:17:44 ID:n8Zo1NI.0

ξ*゚⊿゚)ξ「あなたは平民育ちの騎士だったから、
       ダンスも歌もダメダメでね」

(;^ω^)「設定的に、それはボクのことになるんだお?
     ならもうちょっと格好良い感じにしてほしいお……」

ξ*^ー^)ξ「でもね、踊ってくれたわ」

( ^ω^)「お?」

ξ*゚⊿゚)ξ「月明かりの下でね。
       あの頃は街灯なんてなかったから」

( ^ω^)「レベルに差があり過ぎると面白くないもんじゃないのかお」

ξ゚⊿゚)ξ「まさか!」

( ^ω^)「何事も、同レベルが一番だお」

ξ*゚ー゚)ξ「好きな人と踊るダンスより楽しいことはないのよ。
      ほら! いち、にー、さん!」

(;^ω^)「ふぉ?!」

ξ*^ー^)ξ「私に合わせてー」

(;^ω^)「ご、ご近所さんに見られちゃうお!」

ξ*゚⊿゚)ξ「見せ付けるのよ!」

27 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:18:20 ID:n8Zo1NI.0

(;^ω^)「離してほしいお」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーンが本気になれば、
     私の手なんていつだって払えるでしょ」

(;^ω^)「女性に乱暴はちょっと……」

ξ゚ー゚)ξ「なら、私はそこに付け入るわよ」

(;^ω^)「許してー」

ξ゚ー゚)ξ「何か悪いことでもしたの?」

(;^ω^)「記憶にはございませんとも」

ξ゚ー゚)ξ「なら堂々としてなさい」

(;^ω^)「お助けー」

ξ゚ー゚)ξ「この辺りって、あまり人が通らないわよね」

(;^ω^)「まあ、時間も時間だし」

ξ゚ー゚)ξ「なら恥ずかしがらずに踊りましょう!」

(;^ω^)「ギャー。マジかー。
     この遊びっていつ間で続くんだお?」

ξ゚ー゚)ξ「それはブーン次第よ!」

28 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:18:47 ID:n8Zo1NI.0

(;^ω^)「まーたいる」

ξ゚⊿゚)ξ「再会の日から、
      私がいなかったことが一日でもあった?」

(;^ω^)「残念ながらないおね……」

ξ゚⊿゚)ξ「もう一ヶ月くらいになる?」

(;-ω-)「そこそこ長い付き合いになってしまったお」

ξ゚ー゚)ξ「喜んでもいいのよ?」

(;^ω^)「ノーサンキュッ」

ξ゚⊿゚)ξ「何が不満なのかしら」

( ^ω^)「不満じゃない部分がないんだおー」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーンが欲しいっていうなら、
      料理だって洗濯だって、掃除だってするのに」

( ^ω^)「そこじゃない。嫁にきたときの話じゃない」

ξ//⊿/)ξ「よ、よめなんて!
       気が早いわよ!」

( ^ω^)「そこで照れる意味がわからない……」

29 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:19:28 ID:n8Zo1NI.0

( ^ω^)「しっかし、毎日この時間に待ち伏せ……。
      結構、暇だったりするのかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「ここにいないときは普通に働いてるわよ。
      家に帰ったら家事も一通りやってるし」

( ^ω^)「あぁ、一人暮らししてるのかお」

ξ゚⊿゚)ξ「親と住んでたら、こんなマネできないでしょ」

( ^ω^)「ヤバイことやってる自覚があるなら、
     そろそろやめてもらってもいいんだお?
     潮時だと思うおー」

ξ゚⊿゚)ξ「お馬鹿ね。潮時とかないのよ。
      私が諦めるか、ブーンが思い出すか。
      二つに一つ」

(;^ω^)「前世なんて、インチキ占い師のための言葉だお。
     信じることもなければ、
     思い出すなんてありえるわけが……」

ξ ⊿ )ξ「あるもん!」

(;^ω^)「おっ」

ξ ⊿ )ξ「ブーンは、ブーンは……」

30 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:19:56 ID:n8Zo1NI.0

ξう⊿゚)ξ「……ごめんなさい」

( ^ω^)「いや、何か、ボクも、ごめん?」

ξ゚ー゚)ξ「そこで謝っちゃうの?」

( ^ω^)「女の子の涙は、あまり好きじゃないお」

ξ゚⊿゚)ξ「私を誑かそうとしてる?」

( ^ω^)「それはむしろキミなのでは?」

ξ゚ー゚)ξ「そうよ」

(;^ω^)「そんなキッパリと」

ξ゚⊿゚)ξ「正確には、思い出したら確実に堕ちる、だけどね」

(;^ω^)「う、うーん?」

ξ゚⊿゚)ξ「そうだ、私、一つ良いことを思い出したの」

( ^ω^)「何だお?」

ξ゚ー゚)ξ「愛する人からのキス。
      悪い魔法も、悲しい記憶喪失も、
      全てこれが解決してくれるでしょ?」

31 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:20:33 ID:n8Zo1NI.0

(;^ω^)「ま、まーた、少女漫画かお」

ξ゚⊿゚)ξ「真実は小説よりも奇なり。
      漫画が現実にならないと断言できないわ」

(;^ω^)「酷い屁理屈をみたお」

ξ゚ー゚)ξ「で? どうかしら?」

(;^ω^)「どうって……」

ξ゚ー゚)ξ「今なら、私のファーストキスをプレゼント」

(;^ω^)「重っ」

ξ゚⊿゚)ξ「そういうこと言うもんじゃないわよ。
      女の子のハジメテを貰うんだから」

(;^ω^)「え、貰うなんて一言も……」

ξ゚ー゚)ξ「いいじゃない。
      最終的には全てをあげるんだから」

(;^ω^)「そっちを貰う予定もないお!」

ξ゚ー゚)ξ「静かに……」

(;^ω^)「ちょっ」

33 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:22:10 ID:n8Zo1NI.0

(;^ω^)「だ、ダメだお!」

ξ゚⊿゚)ξ「……なんで」

(;^ω^)「良いわけがないお?
      ファーストキスは大事にするもんだお。
      妄想でほいほい散らすもんじゃないお!」

ξ゚⊿゚)ξ「本音は?」

(;^ω^)「このまま転がり落ちるように結婚まで運ばれると困るお!
     三十路を目前(推定)、まだファーストキスも済ませてないような、
     くっそ重い女に捕まったら最後、
     どう足掻いても人生の墓場は不可避。
     ここで諦めたら試合終了!
     確実に回避するお!」

ξ゚⊿゚)ξ「…………」

(;^ω^)「はっ!」

ξ゚⊿゚)ξ「……ブーンの気持ちはよーっくわかりましたぁ」

(;^ω^)「いや、でもしかたないよね?」

ξう⊿;)ξ「全てを思い出して、
      精々後悔するといいわー!」

(;^ω^)「そろそろ諦めてぇええ!」

34 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:22:40 ID:n8Zo1NI.0

( ^ω^)「あ」

ξ゚⊿゚)ξ「あ」

川 ゚ -゚)「ん?」

ξ゚⊿゚)ξ「……町中で会うなんて、奇遇ね。
      おでかけ、かしら」

( ^ω^)「今日は……デート、だお」

ξ゚⊿゚)ξ「デート?」

川 ゚ -゚)「ブーン、こちらの方は?」

(;^ω^)「何と説明したらいいものか」

ξ゚⊿゚)ξ「古い、知り合い、みたいな……。
      恋人、みたいな……」

(;^ω^)「ちょっ! やめるお!」

川 ゚ -゚)「恋人……・?」

(;^ω^)「クー、違うんだお」

川 ゚ー゚)「わかってるさ。
     キミが二股をかけられるタイプでないことくらいな」

35 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:23:39 ID:n8Zo1NI.0

ξ゚⊿゚)ξ「ということは」

川 ゚ -゚)「始めまして。
     正真正銘、ブーンの恋人、
     素直クールと申します」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン?」

( ^ω^)「半年くらい、お付き合いしてまして……」

川 ゚ -゚)「片思いでもしていたのかい?
     すまないな。しかし、こういうのは早い者勝ちだろ?」

ξ゚⊿゚)ξ「どうして……」

川 ゚ -゚)「そうだぞ。どうしてもっと早く教えてやらないんだ。
    気を持たせるようなことをするのは、
    あまり良くないことだぞ」

(;^ω^)「そ、それは……。
     ごめんなさい、だお」

ξ゚⊿゚)ξ「……言いにくかった?」

(;^ω^)「ぶっちゃけ」

川 ゚ -゚)「何事も穏便に済ませようとするのは、
     キミの良いところであり、悪いところでもある」

36 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:25:24 ID:n8Zo1NI.0

(;^ω^)「逆上とかされたら、怖いし……。
     クーに万が一があったら」

川 ゚ー゚)「私のことを心配してくれていたのか?
     ありがとう。でも大丈夫だぞ。
     合気道を嗜んでるからな」

( ^ω^)「それは初耳!」

川 ゚ー゚)「女には秘密がつきものさ」

(;^ω^)「え、それはもっと綺麗めな秘密の方がいいんじゃ」

川 ゚ -゚)「秘密を抱える。
     それだけで、女はいつだってミステリアスになれる」

( ^ω^)「その理論はおかしい」

ξ゚⊿゚)ξ「……仲、いいのね」

川 ゚ー゚)「そう見えるか?」

ξ゚⊿゚)ξ「えぇ。
      ブーンも、失礼な人ね」

( ^ω^)「え」

37 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:26:37 ID:n8Zo1NI.0

ξう⊿゚)ξ「私、そこまで馬鹿な女じゃないのよ」

( ^ω^)「そうは思えない……」

川 ゚ -゚)「こら」

ξ゚⊿゚)ξ「今生で、もう心に決めた人がいるなら、
      仕方ないわよ。
      私が、お、そすぎ、たんだ、から」

川 ゚ -゚)「わかってくれたか」

ξう⊿゚)ξ「略奪は好みじゃないの」

川 ゚ -゚)「こういう出会いじゃなければ、
     キミとも良い友人になれてたかもな」

ξ゚⊿゚)ξ「それは、光栄ね」

( ^ω^)「なら、もうキミは」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーンの前には現れないわ」

( ^ω^)「そうかお……」

ξ゚ー゚)ξ「寂しい?」

( ^ω^)「正直、全然」

38 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:27:22 ID:n8Zo1NI.0

川;゚ -゚)「ブーン」

ξ゚ー゚)ξ「いいのよ。こういう感じだったから、いつも」

川 ゚ -゚)「そうか。気心の知れた仲ではあったんだな」

ξ゚ー゚)ξ「だから、もう少しで恋人になれると思ってたの」

( ^ω^)「それはない。
      言動的に、ない」

ξ゚⊿゚)ξ「……ブーン」

(;^ω^)「何だお?」

ξ゚⊿゚)ξ「最期に、お願いしてもいい?」

( ^ω^)「内容によるお」

ξ゚⊿゚)ξ「名前、呼んでくれない?
      前も、今も、一度だって呼んでもらえなかったから。
      最期の思い出に」

( ^ω^)「……悪いけど、
      ボクはキミの名前を知らないお」

ξ゚⊿゚)ξ

ξ゚ー゚)ξ「そう、だったわね」



ξ*^ー^)ξ「さようなら。ブーン。
       次こそ、私の運命になってね」

39 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:28:10 ID:n8Zo1NI.0

<プロローグ>



ξ゚⊿゚)ξ「よい、しょっと」

(;^ω^)「何してるんですかお!!」

ξ;゚⊿゚)ξ「キャッ!」

(;^ω^)「あぁ!」

ξ;>⊿<)ξ「いたた……」

(;^ω^)「って、王女様?」

ξ;゚⊿゚)ξ「え? 誰?」

(;^ω^)「お初にお目にかかります!
     今年より、騎士団に入団いたしました、
     内藤ブーンと申します!」

ξ゚⊿゚)ξ「……」

ξ;゚⊿゚)ξ「騎士! しまった!!」

(;^ω^)「王女様! お待ちください!」

40 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:28:39 ID:n8Zo1NI.0

ξ;゚⊿゚)ξ「少しくらい外で遊びたいのよ!
       お城の中はつまんないの!」

( ^ω^)「でしたら!」

ξ゚⊿゚)ξ「え?」

( ^ω^)「でしたら、ボクが外を持って行きますお。
      王女は自室でお待ちください」

ξ゚⊿゚)ξ「外を?
      どういうこと?」

( ^ω^)「この内藤にお任せを。
      必ずや、王女を満足させてみせます」

ξ゚⊿゚)ξ「適当なこと言って……」

( ^ω^)「嘘偽りございません。
     ささ、城へお戻りください。
     王族が護衛もつけずに外へ出ては、
     危険が多すぎます故」

ξ゚⊿゚)ξ「……わかったわよ。
      その代わり、絶対に、外を持ってきてよね!」

( ^ω^)「はい!」

41 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:29:12 ID:n8Zo1NI.0

( ^ω^)「王女様」

ξ;゚⊿゚)ξ「あなたどこから……!」

(;^ω^)「しがない新兵の私が、
     どうして正面から貴方様にお会いできましょうか」

ξ;゚⊿゚)ξ「だからって、窓から来ることないでしょ」

( ^ω^)「警備の者が来ては大変ですからね。
     私も着任早々、クビが飛ぶのは勘弁願いたいです」

ξ;゚⊿゚)ξ「なら、どうして」

( ^ω^)「約束でしたから」

ξ゚⊿゚)ξ「これ……」

( ^ω^)「外、でございます」

ξ*゚⊿゚)ξ「……綺麗、ね」

( ^ω^)「野花でございます。
      無知ゆえ、名前は知りませんが、
      城に植えられている美しい花々とはまた違った、
      力強い美しさがございますでしょ?」

ξ*゚⊿゚)ξ「えぇ、そうね。
      とても気に入ったわ!」

42 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:29:55 ID:n8Zo1NI.0

ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ、ブーン」

( ^ω^)「何ですか?」

ξ゚⊿゚)ξ「貴方、相変わらず、窓からくるのね。
      私からお父様に貴方を通すように言ってもいいのよ」

(;^ω^)「大事になってしまいます。
     ご容赦ください」

ξ゚⊿゚)ξ「私は貴方に感謝しているのよ。
     みーんな、外に行くな、アレをするな、コレをするな、って言うだけなのに、
     貴方はこうして「外」を持ってきてくれるのだから」

( ^ω^)「王女様のためですから」

ξ゚ー゚)ξ「本物の優しさを私は始めてみたわ」

( ^ω^)「またまた、ご冗談を」

ξ゚⊿゚)ξ「冗談なんかじゃないわ。
      王族、貴族なんて、上っ面だけよ?」

( ^ω^)「……聞かなかったことにしておきますね」

ξ゚ー゚)ξ「それがいいかも」

43 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:30:22 ID:n8Zo1NI.0

ξ゚ワ゚)ξ「ブーン! ちょっと、庭で待ってて?」

(;^ω^)「え?」

ξ゚ワ゚)ξ「すぐ行くからー!」

(;^ω^)「王女! 王女! もう夜ですよ!
     暗い中、敷地内とはいえ、外に出るのは――」



ξ゚ワ゚)ξ「待った?」

(;^ω^)「ひやひやしながら」

ξ゚ワ゚)ξ「ごめんなさいね。
      でも、ほら見て」

( ^ω^)「――満月」

ξ*゚ー゚)ξ「綺麗でしょ?」

( ^ω^)「とても」

ξ*゚⊿゚)ξ「貴方は素敵なものをたくさんくれたから。
      私も何かをあげたくて」

( ^ω^)「そのお言葉だけで、胸が張り裂けそうです」

44 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:31:19 ID:n8Zo1NI.0

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン」

( ^ω^)「はい」

ξ゚ー゚)ξ「踊りましょう?」

(;^ω^)「い、いや、自分は、
     教養もない平民ですので。
     共に踊れるような技量は――」

ξ*゚ー゚)ξ「いいのよ! こういうのは、
       気持ちのままにすれば!」

(;^ω^)「お、王女様」

ξ*゚ワ゚)ξ「ヘタねぇ」

(;^ω^)「なら、やめましょう」

ξ*゚ワ゚)ξ「ダメよ!
      ほら、月明かりが私達を祝福してるわ!」

( ^ω^)「……むしろ嫉妬では?」

ξ゚⊿゚)ξ「え」

( ^ω^)「ボクの傍には、こんなに美しい王女がいる。
     でも、月の周りには、小さな星があるだけ」

45 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:32:12 ID:n8Zo1NI.0

ξ*゚⊿゚)ξ「ブーン?」

( ^ω^)「身分違い、重々承知しております。
     罰をお与えになるのでしたら、好きになさってください」

ξ*゚⊿゚)ξ「……言って」

( ^ω^)「内藤ブーンは、
      王女のことを好きになってしまいました」

ξ*゚ー゚)ξ「嬉しい……」

( ^ω^)「本来なら、このような気持ち、
      胸の奥に潜めておかなければならなかったというのに……」

ξ*゚⊿゚)ξ「ダメよ! ブーンが言ってくれたから、
      私、こんなに嬉しいのに!」

( ^ω^)「ですが、共にあることはできません」

ξ*゚⊿゚)ξ「お父様に言うわ!
      大丈夫よ! 隣国に姉様が嫁いでくれたおかげで、
      この国はとても安定してるし、跡継ぎには弟もいるわ」

( ^ω^)「しかし」

ξ*゚⊿゚)ξ「なら、こうしましょ!
       今度の戦いで武勲をたてるの。
       そして、その褒美に私をもらって!」

46 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:33:04 ID:n8Zo1NI.0

( ´ω`)「……王女」

ξ;゚⊿゚)ξ「ブーン」

( ´ω`)「ごめんなさいだお。
      ボク、武勲を……」

ξ゚⊿゚)ξ「いいの。生きて帰ってきてくれた。
      それだけで、私は嬉しい」

( ´ω`)「でも、それだと、ボクは貴方と」

ξ゚⊿゚)ξ「……逃げましょう」

( ^ω^)「え?」

ξ゚⊿゚)ξ「私と、この国を出て、
      どこか、遠くで一緒になりましょ」

(;^ω^)「ご自身が何を言っているか、
      お分かりですか?」

ξ゚⊿゚)ξ「勿論。
      そうしなければ、一緒になれないのだから、
      仕方のないことよ」

(;^ω^)「しかし、王族たる貴方様が」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン」

48 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:33:27 ID:n8Zo1NI.0

ξ゚ー゚)ξ「私は王族じゃない。
      ただのツンよ」

( ^ω^)「……」

ξ゚⊿゚)ξ「そうと決まれば、早く行きましょう。
      お父様に気づかれる前に。
      この夜の闇に紛れて」

( ^ω^)「王女、貴方は本当にわかっておられるのですか?」

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン」

( ^ω^)「いいえ、言わせてください。
      貴方が思うよりも、平民の暮らしはずっと貧しい。
      針仕事一つしたことのない貴方が、
      どうして下々の者と生活できるのですか」

ξ゚⊿゚)ξ「愛してるから」

(;^ω^)「――!」

ξ゚⊿゚)ξ「私が、ブーンを愛してるから」

ξ゚ー゚)ξ「慣れないことばかりで、迷惑をかけるかもしれない。
      でも、少しずつ慣れるわ。
      貴方と一緒にいられるなら、そのくらい、構わないの」

49 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:35:11 ID:n8Zo1NI.0

(メ:^ω^)「王女様」

ξヽ゚⊿゚)ξ「なぁに?」

(メ:^ω^)「王様は凄いおねぇ……」

ξヽ゚⊿゚)ξ「我が父ながら、恐ろしい人だったわ。
       王族を捨てた女なんて、
       放っておけばいいのに」

(メ:^ω^)「何処までも、何処までも、
      昼も夜も追いかけられ、
      とうとう食料も尽きたお」

ξヽ゚⊿゚)ξ「隣の国にすら行けなかったわね……」

(メ:^ω^)「一緒に、お店したり、作物を育てたり」

ξヽ-⊿-)ξ「子供と遊んだり、したかったわ」

(メ:^ω^)「……本当にいいのかお?
      もしかしたら、王女様は戻れるかもしれないお」

ξヽ゚⊿゚)ξ「馬鹿、私は覚悟を決めてるのよ。
       貴方もちゃんと覚悟して」

(メ:^ω^)「それなら、いいんだお。
      王女様がいいなら、ボクは」

ξヽ-⊿-)ξ「ブーン。また、来世で」

(メ:-ω-)「次こそは、一緒に」

50 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:36:38 ID:n8Zo1NI.0

<エピローグ>




( ^ω^)「あ、思い出した」

( ^ω^)ヾ「……ま、いっか」

           『昨夜、xxx湾にて、水死体が発見されました』

( ^ω^)「もしもし、ミセリかお?」

           『首に大きな傷があり、死因は出血多量とのことです』

( ^ω^)「結婚の前にお願いしたいことがあって……」

           『近くの崖には遺書と思われる手紙と、鞄が置かれており』

( ^ω^)「実は、兼ねてより起業を目指してて」

           『鞄の中から発見された私物によって』

( ^ω^)「三百万、たりなくて」

           『遺体はxx市に在住の』

( ^ω^)「結婚してからだと迷惑がかかるから、それより前にと思ったんだお」

           『津出ツンさん、と判明しております』

( ^ω^)「事業に失敗したらボクを捨ててほしいんだお!」

           『遺書には「来世こそは」と書かれており、警察は自殺と断定』

( ^ω^)「成功したら、ミセリの望むままの結婚式をあげるお!」

51 名前:名無しさん 投稿日:2017/08/26(土) 21:37:10 ID:n8Zo1NI.0

(*^ω^)「そうかお!
      ありがとうだお!
      絶対にミセリの期待に応えてみせるお!」

( ^ω^)「……ふう」





( ^ω^)「――もしもし? クーかお?」



    「結婚を前に、お願いしたいことがあるんだお」








ξ゚⊿゚)ξ前世では恋人だったようです(^ω^ )



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