- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 21:08:02.45 ID:uty12pI20
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Ammo→Re!! .のようです .r'\ _,,.. r‐'"´:ハ 【終章】
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- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 21:13:03.18 ID:uty12pI20
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【AM 06:00】
自然の猛威である嵐がオセアンを襲った夜、嵐と比喩されるもう一つの脅威がオセアンに残した爪痕は、嵐が去った翌朝になっても全貌が明らかにならなかった。
街の貢献に発展したロバート・サンジェルマンの所有するログーラン・ビルの爆破、そしてロバートの遂げた非業の死。
シモノフ・ファミリー首領、ニコライ・シモノフの死と組織の壊滅。
そして、事件の首謀者とされるディーダン・ブランケットは死体となって発見され、
彼の協力者とされる殺し屋レオン≠フ死体は未だ発見されていないが、生存者の証言からその死は確定的なものとされている。
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 21:18:15.19 ID:uty12pI20
謎は深まるばかりだった。
現場に派遣されていた消防関係者は、自分達が至らないばかりに多くの死傷者を出してしまった事を悔い、警察は棺桶による更なる戦力の増強を提案した。
その背景には、事件の早期解決の切り札として投入された執行部がトレイラー内で作戦の打ち合わせをしている時に、
突如としてビルから落下してきたエイブラハムにトレイラーごと押し潰され、予備執行部が導入されるまでの間、消防関係者も手出しが出来なかった問題がある。
しかし、武力の増強に対して消防各員が強く反対し、戦闘に特化した棺桶ではなく、より安上がりな強化外骨格アンドリュー≠購入する事で合意した。
アンドリューを使えば瓦礫の撤去、不安定な足場の走破、負傷者の素早い保護が可能となる。
斯くして警察及び消防はロバートの会社から、即金で百機のアンドリューを購入し、ログーラン・ビルでの救助、真相究明に活用した。
しかし、真相が究明される事は永遠になかった。
ロバートから多額の寄付金を受け取っていた警察の各関係者は、余計な事が明るみに出ない内に真相の解明を早々に打ち切ることを決定し、
事件の迷宮入りは確実なものとなった。
ロバートとの繋がりを隠ぺいした警察は、ある事を危惧していた。
それは、マフィアを巧みに操っていたロバートの糸が切れ、マフィア達が暴走するのではないかと云う事だ。
ロバートの残した莫大な金の実る木を奪い合いでもすれば、オセアンは世紀末都市になる事を避けられない。
崩壊すると思われたオセアンの治安は、だがしかし、寸前でそれを免れることとなった。
偶然オセアンを訪れていた内藤財団の重役が、この未曽有の事件によって与えられた経済的な打撃の修復に全面協力する事を発表し、
ロバート無きオーシャン・トランスポート社は内藤財団の傘下に入ることとなったのである。
それに伴い、ロバートの遺産も内藤財団の一部として取り込まれ、奪い取られる心配はなくなった。
臨時収入を失った代わりに治安が維持されたのだと思えば、安い物だと警察は内藤財団に深い感謝の意を示した。
ロバートの死と同時にスポンサーとの繋がりが断たれたマフィア達は、両者が同一人物であることをいち早く察した。
彼らも馬鹿ではない。
内藤財団が動いた時点で、全ての組織がこれまでのように振る舞う事が出来なくなることを理解し、鳴りを潜めた。
皮肉な事にこの事件の影響によって、マフィアが昼間から我が物顔で好き放題する事はなくなり、警察が本来の職務に励んだ事によって治安は僅かに回復した。
こうして、オセアンは新たな一歩を踏み出す事となるのであった。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 21:23:05.03 ID:uty12pI20
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【AM 06:13】
オセアン西部にあるオセアン最大の病院に運ばれた事件の被害者は、十人にも満たなかった。
ほとんどの被害者は死亡が確認されており、今頃、火葬場は死体焼却で大忙しだろう。
忙しくなると思われた医療関係者は安堵していいのか、それとも悲しむべきなのか、非常に難しい状況に在った。
連日のように銃で撃たれ、ナイフで刺されたマフィア関係者の治療にあたっていた人間達は、拍子抜けする思いだった。
(ΞιΞ)「……この患者は何処にいったんだ?」
医師の一人が、リノリウムの床を歩きながらカルテを片手に、看護師にそう質問した。
λ’>’)「それが、回診――朝二時四十五分――に向かった時にはもう姿がなくて……」
(ΞιΞ)「攫われたのかそれとも自主退院したのか、それが分からんことにはなぁ……」
λ’>’)「あ、枕元に入院費が置いてありました」
(ΞιΞ)「金の問題は……まぁ、重要だが、患者の命の方が大事だろ」
窘める様な言葉に、看護師が申し訳なさそうに謝罪した。
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 21:28:03.06 ID:uty12pI20
λ’>’)「す、すみません」
(ΞιΞ)「それで、目撃者は? 監視カメラに映っていなかったのか?」
λ’>’)「それが全く。警察に知らせますか?」
医師は逡巡し、小声で答えた。
(ΞιΞ)「…………まぁ、警察も忙しいだろうから、今回は内密に処理しておこう」
λ’>’)「分かりました。それで、あの、話は変わるのですが」
(ΞιΞ)「うん?」
λ’>’)「東部の方に、新しいレストランが出来たそうなんですが、今夜いかがでしょうか?」
(ΞιΞ)「……悪くなさそうだな」
今一度、医師はカルテに書かれた患者――今はもういない――の名を見た。
そこには、アメリア・ブルックリン・C・マートと書かれていたが、あまりにも長くややこしい名前だったため、
五分後にカルテを生ごみと共に焼却炉で燃やす頃には、もう、その医師は女性の名前を覚えていなかった。
果たしてどんな顔であったかなど、執刀医さえ思い出せないほど希薄な存在であった。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 21:33:29.12 ID:uty12pI20
- * * *
【AM 10:23】
(=゚д゚)「……」
よれたスーツに身を包む虎≠ニ呼ばれる男が、乾いた血と硝煙の匂いが漂うログーラン・ビルの中を見て回っていた。
見れば見るほどに、事件の荒々しさが伝わるとともに、実行者の手際の良さが窺い知れる。
(=゚д゚)「おい」
四十代後半に差し掛かった歳は貫録となり、トラギコ・マウンテンライトの地鳴りのような声に迫力を持たせていた。
二十年前は見事なブロンドだった髪も、今や白髪だらけのみすぼらしい物になっている。
しかし、眼力は年々強まる一方で、漂わせる雰囲気は年経た重厚な剣を思わせた。
(;,,゚,_ア゚)「は、はい」
(=゚д゚)「監視カメラの映像は、まだ復元できないのか?」
(;,,゚,_ア゚)「そ、それが全て消失していて……」
(=゚д゚)「薬莢から指紋は? 証拠品の鑑定は? 目撃者、証言者は?」
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 21:38:04.88 ID:uty12pI20
(=゚д゚)「先月だったか、手前らの上司が、俺んとこにこう言いに来た。
おい、我々の縄張りに入り込むんじゃない、そんな暇があればその薄汚い靴を磨くか、服をクリーニングに出せってな。
縄張りの管理も出来ないくせに、よくもまぁ言ってくれたもんだな。
無能が」
オセアンを含む西側沿岸部を管轄とする警察本部の中でも、難事件解決の最前線に立つ部署から派遣されたトラギコは、
謝罪と言い訳しか口にしない男の胸ぐらを掴み、壁に押し付けた。
(=゚д゚)「……もう、この事件は喰えねぇ。
いいか、証言も証拠も鮮度が命なんだよ。
次からはこんな事が起こらないように、靴と服を汚して仕事しろ」
そう恫喝してから、トラギコは手を放し、損壊の激しい一階ロビーを見に階段を下った。
怒りをぶつけても意味がない事を、トラギコはよく知っている。
若い頃はと思うようになってから、彼は自分が年老いた事を自覚せざるを得なかった。
(=゚д゚)「……デザートイーグルとショットガンで棺桶を倒す、か」
生身の人間の所業ではない。
しかし、心のどこかで、その可能性がある事を信じている自分もいた。
トラギコは頭を振って、己の感を頼りに、独自にこの事件の犯人を捜す事に決めた。
何時消えてもおかしくない命をつぎ込むには、遣り甲斐のありそうな仕事だった。
(=゚д゚)「……へ」
残り少ない人生を有意義に過ごすため、トラギコはその日の内にオセアンを発った。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 21:43:35.20 ID:uty12pI20
* * *
【AM 11:27】
遠く離れたフィリカの地で発掘現場の休憩所で寛いでいたイーディン・S・ジョーンズは、
オセアンで起きた事件を聞いて、皺だらけの顔に笑みを浮かべた。
図面に落としていた目を細め、ジョーンズは思わず口に出して感嘆する。
(’e’)「ほぅ……」
棺桶の保存状態の良さなら、オセアンはあの近郊でも随一の土地だ。
そこから仕入れた棺桶の研究を進めるジョーンズにとって、その知らせは実に興味深いものだった。
何者が如何なる棺桶を用いて、大量の棺桶を屠り去ったのか。
(’e’)「それで、目撃者は?」
ハンズフリー・モードに切り替えた固定電話の向こうから、鈴を転がすような声で答えが返ってきた。
『それがぁ、今のところいないんですよぉ。
車で突っ込んだところまでしか見ていないんですねぇ』
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 21:48:13.70 ID:uty12pI20
(’e’)「なるほどっ、なるほどぉ、なるほどぅ。
実にいい知らせだ。
謎は多ければ多いほど、解けた時の快感が増すからね。
ところで、私の息子は無事なのかね?」
『博士ぇ、あれはハート・ロッカーですよぉ。
電源ケーブルが切れただけでぇ、損傷はないそうですぅ』
(’e’)「ん? ならば私の息子だろう。
研究対象として、あれほど魅力的な物も珍しい。
しかし、電源ケーブルがなぜ……」
『予備のバッテリーが底をついていてぇ、蓋が開かなくて困ってるんですよぉ』
(’e’)「……!! そうか、なるほど、バッテリーの残量が少なくなっていたのか!!
これは迂闊、あぁ、なるほど。
あの巨体を動かすのにそれほどの電力が必要だったとは、いやぁ知らなかった。
これで次の課題が出来た。
五年ぶりに耳かきをした時の感動が今甦った、ありがとう」
『きったねぇ……』
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 21:53:08.84 ID:uty12pI20
* * *
【AM 04:01】
嵐が去ったのは、日付が変わって四時間後の事だった。
朝の気配が迫る中、オセアンの夜空は磨き上げられた様に澄み渡り、宝石の輝きさえ霞んで見える星の海が広がっていた。
灰色の雲が名残雪のように浮かび、風に流れてどこかへ向かう。
生ぬるい夜風が吹く、過ごしやすい気温の夜だった。
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間もなく夜が明ける事を、薄らと瑠璃色に染まり始めた水平線の彼方が静かに告げる。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 21:58:11.63 ID:uty12pI20
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c c_ノ ̄ 〔_〕
o 〇/  ̄`ヽ _ ,―-´、/
/ 「/o 、_ ヽ|⌒`  ̄丿 ̄ヽっ
/ ̄// ミ||〉ooo〉〉っ ̄/\|二 ̄V
く⌒ `// ヽ ミ||/θθ_ /y Vξヽ ヽ
/ / // 、」 ミ||))__))二二二二二二l
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北に向かって海沿いに伸びるアスファルトの道路を、サイドカーを付けた一台の電動バイクが颯爽と走る。
風に目を細め運転するのは、円熟した魅力を持つ、若く美しい女性だった。
ボロボロに草臥れたカーキ色のローブを風に靡かせ、黄金色の髪が風を孕んで稲穂のように揺れ、夜空と夜道を見据える瞳は蒼穹の色をしている。
彼女こそ、オセアンに於けるロバートの時代を終わらせ、多くの人の夢を踏み躙り、そして、強引な手法で再始動を促した流浪の旅人。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 22:03:31.52 ID:uty12pI20
その名は、デレシア。
ζ(゚ー゚*ζ
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. / ィ伝≠=z_/ `ヽ .! ー≠z__ .| |∨ .| |.∧ .| |
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ノ ∨ | . ∨{ 乂_ノ:} 〉 .∨ ! | y─==≠z_ | .i { 八 .:| .:::| |
_,イ∨ { 弋乂_ノソ ∨\ イ ,ィ { ./ > / | | イ | ,/| ′|
/ハ. \\ /. \ 乂{ `一' /∨ / x-──‐z_ .{/.::| ,/ 、
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彼女が引導を渡さなくとも、遅かれ早かれ、ロバートの世界進出と云う下らない夢が現実に蹂躙されるのと同時に、
彼に頼り切ったオセアンもその影響を受け、復興が絶望的になるほどの被害を受けていた事は想像に易い。
そう考えると、デレシアの方法はかなり荒っぽかったが、将来的にはオセアンのためになったとも言える。
将来的な結果がどうあれ、デレシアは自分の行為に変化がない事を自覚しており、それを受け入れていた。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 22:08:31.68 ID:uty12pI20
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殺しは殺しだ。
どれだけ豪奢な装飾でその身を装うとも、それが人間である事に変わりがないように、物事の本質はそれ以上もそれ以下にもならない。
サイドカーの揺篭の中、傷つき疲れた体を毛布に包んで眠るのは、赤茶色の髪をしたアメリア・ブルックリン・C・マート。
――搬送先の病院では、それが女性の名だった。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 22:13:23.50 ID:uty12pI20
本名は、ヒート・オロラ・レッドウィング。
毛布の中で抱き合って眠っている耳付きの少年、ブーンを庇って負った彼女の背中の傷は二、三日も経てば完全に消えるだろう。
心労で寝入ってから、ブーンはヒートの体に抱きついたまま離れようとはせず、ヒートもまた、ブーンの背に回した手を解こうとはしなかった。
それは仲の良い姉弟か、親子のようにも見えた。
ノハ´凵M)
(∪´ω`)
――あの一瞬。
シィがヒート達に榴弾を雨のように浴びせかけようとした時、デレシアは最適なタイミングでその初弾目掛けて手榴弾を投げ、全ての弾を誘爆させていた。
棺桶の中でも防御力の高い背中を向けていた事が幸いし、ヒートは軽傷で済み、ブーンは無傷で済んだ。
爆煙が煙幕の役割を果たしている中、デレシアは二人を連れてエレベーターのあった場所に連れて行き、そこに二人を横たえ、シィに引導を渡した。
あの時、ブーンには何も指示をしていなかったが、ヒートの手を引いて逃げようとしていた。
それはつまり、生きようとしていたという事。
喜ぶべき事だった。
かなり強引な手段で引き出したとはいえ、ブーンは生きる道を自分で選ぶ事が出来たのだ。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 22:18:34.79 ID:uty12pI20
行動を遅らせた最大の理由は、シィの言葉にあった。
何度も口にしていた、私達≠ニいう言葉。
それはつまり、シィの思惑ではなく更に上の存在がある事を示していた。
さらなる情報を手に入れるために生かしておいた結果、幾つかの事が分かった。
目的は世界平和であり、オセアンはその第一歩。
ハート・ロッカーの存在と機能を知っていながらも、その欠点を知らなかったという事は、そこまで脅威と呼べるような存在ではないという事。
しかし、興味深い存在だ。
おそらく、オセアン以外の都市にもシィのような誇大妄想を持った人間がいる事だろう。
これだから旅は止められないと、デレシアは得た情報に満足していた。
ζ(゚ー゚*ζ
以上が、ログーラン・ビルの最下層で起こった出来事の推移と結末、そして得た情報である。
その後、巨大な棺桶の内部に閉じ込められた哀れなシィの存在を利用して、デレシアとヒートは偽りの死を作り上げる事にした。
シィの死体が発見されるまでの間、ヒートとシィは入れ替わる事となり、それは無事に成功した。
そして誰かが気付いた時にはもう手遅れ、後の祭りと云うわけだ。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 22:24:03.24 ID:uty12pI20
右手の空が、徐々に明るさを増し、黒炭のような夜空はその帳を静かに朝のそれへと譲渡す。
群青色と瑠璃色、そしてコバルトブルーの織りなす幻想色を横目で見て、デレシアは一つまみの憂いを含んだ微笑を浮かべる。
水平線の彼方に太陽が姿を見せた、その一瞬。
ζ(゚、゚*ζ「……」
デレシアの美貌に憂いの色を浮かばせた原因が、姿を見せる。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 22:29:16.51 ID:uty12pI20
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- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 22:34:44.58 ID:uty12pI20
それは、昼に見える白銀の月のようにおぼろげで、蜃気楼のように遠く、水彩画のように淡い色で空に溶け込み、
だが確かな存在感を持った、空の彼方に浮かぶ幻影の都市。
立ち並ぶのは尖塔でも城壁でもなく、より高みを目指して競い合う高層ビルの群れ。
ひしめき合う近代文明の群像。
今にも声が、匂いが、そこに住まう人々の息遣いが聞こえてきそうなほど精巧で緻密で、水面に映る影のように儚げな都。
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 22:39:12.86 ID:uty12pI20
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水平線がオレンジ色を含んだ時には、もう、その都市の姿は消えていた。
だが確かに実像があり、存在があり、名があった。
それを知るのは、世界でただ一人。
最果ての都を目指して、果てしのない旅を続ける、デレシアだけなのだ。
彼女の旅は新たな同行人を加えて、今、再出発したばかり。
(*∪´ω`)「ぉー……」
幸せそうな声をしたブーンの寝言を聞いて、デレシアは思わず笑んだのであった。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 22:44:18.41 ID:uty12pI20
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l!八. 丶 ソ ::::::: / // イ l |
\ く // / / l i |
終章 |>丶 、 フ ./// / l |l }
} \ ((_/ / ^ト、 l |i 八
/ i \ .ィフ′/ 【Ammo for Restart!!】編 終
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- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 22:48:15.44 ID:uty12pI20
【???】
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 22:53:07.28 ID:uty12pI20
大きな天窓から差し込む太陽の光は、部屋中を明るく照らしていた。
背の高い本棚が壁一面に並び、床には緻密で繊細な刺繍の施された絨毯が敷かれていた。
その絨毯の中心には、天に向けて枝を広げる大樹が金色の糸を使って描かれている。
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f´tァ 厶フ ヽ! fj |/厶7厶-‐¬
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ヽ`ー--、____| | / /
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黒いスーツに身を固めた五人の偉丈夫に混じって、一人の小柄な女性がその大樹を囲むように立っていた。
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 22:58:07.28 ID:uty12pI20
( ゚д゚ )「同志キュート・ウルヴァリン、戦果はどうだ?」
彫りの深い顔立ちをした禿頭の偉丈夫は、群青色の瞳を小柄な女性に向ける。
浅黒い肌と引きしまった肉体からは、軍人独特の剣呑な雰囲気が漂っている。
o川*゚−゚)o「全て予定通りです、同志ミルナ・G・ホーキンス。
一歩目≠ヘ完了、二歩目≠ヨの移行も開始しました」
これまで一度も櫛を通した事がないかのように、キュートと呼ばれた女の金髪はボサボサだった。
濁った色をした碧眼でミルナと呼んだ男を一瞥し、視線を正面に戻して無言になる。
予期せぬ複数の問題に見舞われたが、キュートに与えられた任務は無事に達成する事が出来ていた。
一歩目≠ニ呼ばれる作戦内容は、オセアンの支配権をロバートから分離させる事だった。
アメリア・ブルックリン・C・マートが行う予定だったのは、ロバート・サンジェルマンを秘密裏に殺害し、
その力だけをそっくりそのまま移行するお膳立てをする事にあった。
力の中には、無論、ハート・ロッカー≠ニレオン≠フ存在も含まれている。
それはつまり、事実上の支配権を彼らが誰にも気付かれることなく奪うと云う事で、長期に渡る大任でもあった。
搬送されたとされるシィの姿は病院にはなく、ハート・ロッカーの内部で息絶えているのが発見された。
様々な状況証拠から導き出されたのは、シィの名を借りてとある殺し屋がオセアンから逃れたという事だけだった。
レオンの入手は失敗したが、シィは命を賭してそれ以外の任務を果たしただけ、成功と言える。
彼女の意思は無駄にはならなかったのである。
何者かは未だに不明なのだが、ロバートの築いた何もかもを破壊し、崩壊させ、大きな穴を穿ったその功績は称賛に値する。
再生へと繋がる大穴は、同時に、彼らが芽を植え付けるのに格好の穴でもあったのだ。
そして二歩目≠ニは、オセアンを彼らの手で支配する事だった。
( `ハ´)「同志シィを失ったのも、全て予定通りだと言うつもりアルか、同志キュート」
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 23:03:12.20 ID:uty12pI20
口を開いたのは、オールバックにした長い黒髪を頭の後ろで三つ編みにした、如何にも東洋人らしい顔立ちの男だった。
非難がましい口調と共に、切れ長の目が、軽蔑の眼差しをキュートに向ける。
o川*゚ー゚)o「同志シナー・クラークス、経過報告の書類に目を通した上でその様な事を訊いているのかな?」
キュートは怯むどころか、相手の神経を逆撫でする様な口調でシナーにその言葉を送った。
一ミリだけ眉を動かし、シナーは言った。
( `ハ´)「書類は読んだアル。ですが、だからと言って、同志シィが殺される様な事態は許容できる物ではないアルよ」
o川*゚ー゚)o「いつから私の上官になったんだ、同志シナー。
そして、私がいつ批評を求めた。
人の行動を批評する前に、結果を残せない自らの行動と行儀を振り返る事を推奨するよ」
( ゚∋゚)「仲がいいのは結構だが」
第三者が、二人の会話に割り込んだ。
角刈りにした黒髪と、ブラウンの瞳を持つ熊の様な巨躯の男を見て、シナーは不服そうに押し黙った。
両者の力関係は明らかだった。
( ゚∋゚)「同志キュート、挑発するような口調は感心しないな」
o川*゚ー゚)o「次からは気を付けよう、同志クックル・タンカーブーツ」
キュートの態度からは、反省の色が窺えなかったが、クックルはそれ以上言及する事はしなかった。
( ゚∋゚)「提出した書類の通り、私の方も予定通りに終わりました、同志西川・リーガル・ホライゾン」
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 23:08:07.09 ID:uty12pI20
クックルの声と視線は、六人の中で最も背の高い男に向けられていた。
まるで鉄から削り出して作られた様な顔は瞬きどころか、表情一つ浮かべない。
色素を失った髪は短く刈り込まれ、血の様に赤い瞳を動かす事もなく、西川はその言葉を聞いていた。
元より反応は期待しておらず、クックルは事務的報告したに過ぎない。
( ><)「その事に関してですが、同志クックル。
一つ気になった点があります」
( ゚∋゚)「どうした、同志ビロード・コンバース」
六人の中で一番若いビロードは、クックルの目を見て尋ねた。
( ><)「ニクラメンに対して暫くの干渉は不要と云う報告に関して、詳細な報告を望みます」
ベージュ色の縮れ毛と土色の瞳を持つビロードが口にした疑問を聞いて、キュートが興味深そうにクックルを見た。
o川*゚−゚)o「それは初耳だな、同志クックル」
( ゚д゚ )「書類を読んでいないのか、同志キュート」
o川*゚−゚)o「同志ミルナ、ラジオを切り上げてまでここに駆けつけたと云うのに、どうやって書類を読めとおっしゃるのですか?
堅苦しい報告書は葉書と違って気軽に読めないのでね。
尤も、報告書の内容が愉快なものであれば、次からはすぐにでも読むように改善するが」
肩を竦めたキュートに対し、ミルナは済まなそうに謝罪した。
( ゚д゚ )「そうだったな、済まない、同志キュート」
二人のやり取りが終わったのを見てから、クックルは言った。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 23:13:21.73 ID:uty12pI20
( ゚∋゚)「我々の思想に共感する、勇猛な同志を発見した為です。
彼らが一週間以内に三歩目≠フ代案を実行すると聞き、その時まで待った方がいいと」
( ><)「共感したと云うだけでその人物を信用するのですか、同志クックル」
( ゚д゚ )「いや、それは違うぞ、同志ビロード」
答えたのは、クックルではなくミルナだった。
( ゚д゚ )「その代案、相当に魅力的なものだったのだろう、同志クックル」
( ゚∋゚)「その通りです、同志ミルナ」
( `ハ´)「……その者の素性は調べたアルか?」
シナーが訝しげに問う。
首を横に振って、クックルは答えた。
( ゚∋゚)「同志シナー、彼らの眼は本物だった。
彼らがこの世界に抱いている不満は、我々の理想に通じるものがあった。
そして、彼らにはそれを実行するに足る理由と情熱があった」
その答えに不服だったのか、シナーは語気を荒げて追及する様に言った。
( `ハ´)「せめてその代案の詳細を報告書に記すぐらいは――」
クックルは不快感をその顔の下に押し隠し、何事かを言おうとした。それを遮ったのは、キュートの言葉だった。
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 23:18:03.91 ID:uty12pI20
- o川*゚ー゚)o「ところで、同志シナー。
三週間後には君が担当する四歩目≠ェ完了する予定となっているが、それはどうなっているのかな?
随分と梃子摺っているようだが」
目をより一層細め、シナーは平静を装って返答した。
( `ハ´)「……問題はないアル、同志キュート」
o川*゚ー゚)o「私は何度でも言うが、人の事よりもまずは自分の仕事を果たせ、同志シナー。
君のゴミ屑同然の株が暴落を起こすような事態が起きれば、心底腹立たしいことだが我々の足並みが乱れる。
そうなる前に、私が君の眉間に鉛の退職祝いをくれてやる」
悔しそうに歯噛みして、シナーは押し黙った。
o川*゚ー゚)o「そこで、だ。同志シナー。
君のテラコッタ≠フ一部を、私に寄越してもらおう」
その言葉を聞いて、シナーは怒りを露わにした。
今にも暴れ出しそうな剣幕でキュートを睨み、怒鳴りつけるようにして言った。
(#`ハ´)「どうして私のテラコッタ≠貸さなければならないアルか、同志キュート」
o川*゚ー゚)o「勘違いするな、同志シナー。私は貸せとは一言も言っていない。
寄越せと言ったのだ。君の仕事を少しでも早く片付ける為だ。
一ヵ月半で終了する作戦が一ヵ月を過ぎても三割しか進行できていないとなると、これ以上君に任せるのは馬鹿のすることだ」
( `ハ´)「ならば、自分のサウザンド・マイル≠使えばいいアル」
o川*゚ー゚)o「たかがジュスティア程度の町に、私の部隊を動かす必要はない。
兎に角、君のテラコッタ≠フ一部は私が指揮する。いいな?」
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 23:23:18.18 ID:uty12pI20
有無を言わせぬ口調で言い放ち、キュートはシナーを睨んだ。
蛇に睨まれた蛙の様に体を凍りつかせたシナーは、それ以上何も言えなかった。
o川*゚ー゚)o「いいですね、同志ミルナ?」
自信に満ちたキュートの言葉に、ミルナは小さく頷いた。
( ゚д゚ )「……いいだろう、同志キュート。
ただし、同志クックルと一緒に行動してもらう」
o川*゚ー゚)o「勿論、私は一向に構いません、同志ミルナ」
( ゚∋゚)「私も構いません、同志ミルナ」
クックルとキュートは、一拍の間も置かずにそう返事をした。
( ^ω^)「……では、引き続き正義の歩み≠ェ止まる事のない様に」
沈黙を守っていた西川がその言葉を口にした途端、水を打ったような静けさが部屋を支配した。
あのキュートでさえ、表情を強張らせ、瞬き一つしない。
次の瞬間、六人の声が一つに重なった。
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2012/03/18(日) 23:26:28.06 ID:uty12pI20
『全ては、世界が大樹となる為に』
世界が音もなく再び¢蛯ォく動き出そうとしている事を、オセアンを出発した旅人達は知らない。
しかし、それは驚くべき事でも憐れむべき事でもない。
何故ならこれは――
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――― これは .. .,..::,:,:,,;:;::,,:;.:,,;:;:.:;:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
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力が世界を動かす時代の物語 ―――..,,.::.:;:;;:.:;,;;:;;;;;;;;;;;;;;;
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