ζ(゚ー゚*ζは天使でも悪魔でもないようです

253 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/07/19(火) 00:39:38 ID:HnxrA0P.0


翌日のことだ。

从 ゚∀从「よう、緒本さん!」

( ^ω^)「おお……本当に名札が変わっている……」

ζ(゚ー゚;ζ「からかわないでよ」

カミングアウトした以上覚悟はしていたが、
実際にクラスメイト達から苗字の変化を弄られると恥ずかしくなる。

ただ、こうして胸に堂々と『緒本』と刻印された名札を付けていると、
理由もなく誇らしい気持ちになる。

新しい名札は今朝渡されたばかりだ。

兄が昨日、デレが生徒会室に行っている間に事情を説明していてくれたらしい。
なんでも廊下での一件の後すぐに職員室に特報が届けられたようで、
教師一同から槍玉に挙げられたとか。

校長には転校するより前に母方の姓を名乗ることを伝えていたからよかったが、
他の教員はデレとショボンが血縁関係にあることさえも知らされていなかったから、
それはもう驚愕したそうだ。

254 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/07/19(火) 00:57:27 ID:HnxrA0P.0
从 ゚∀从「やー、それにしてもだ。デレ!」

にやけ面でハインはデレの背中を叩く。

ζ(゚ー゚;ζ「痛い、痛いってばっ! 加減を覚えてよ」

从 ゚∀从「わりい。でもさー、アタシらがテンション上がっちゃうのもわかるっしょ?
      転校生が突然もう一枚のベールを脱いだんだぜ。
      こいつは刺激的ってもんだ」

ζ(゚ー゚*ζ「そんな面白いことでもないと思うけど……」

ハインは心から楽しそうだ。

从 ゚∀从「しっかしまあ、ショボン先生がお前の兄貴だなんてな。
      その上違う苗字を名乗らせた理由がこんなくだんねーこととは……。
      あの人相当シスコンだな。ぷくく、なんか笑えてきたぜ」

从'ー'从「でもいいお兄さんじゃないかな〜。妹思いで」

ζ(゚ー゚*ζ「行きすぎだけどね……それに兄さんって、
       どこまで本気で物事を考えてるかわかんないし」

255 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/07/19(火) 01:03:32 ID:HnxrA0P.0
从 ゚∀从「おっ、そうだ」

調子よく少女が指をぱちんと鳴らす。
教室のほぼ全員がデレに注目を送っている。

从 ゚∀从「せっかくだし、みんなに挨拶し直しとこうぜ。
      今日からはなんの隠し事もなくなったんだからさ、腹割っておこう」

ζ(゚ー゚;ζ「ええ、いいよ別に」

从 ゚∀从「やっとけって。自己紹介のリテイクだ!」

ハインがあまりにも強く勧めるから、やむをえず、

ζ(゚ー゚*ζ「……まあ、そういうわけで……。
       今更かしこまって言うことじゃないと思いますけど、
       本日から緒本デレとして、改めてよろしくお願いします」

一礼するデレ。
どこからともなく拍手が沸き起こった。
察するに天使と悪魔に一泡吹かせたことへの称賛の意味合いもあるのだろう。

男子がぴゅうと指笛を鳴らす。
デレは照れ臭くなり、白い頬を紅潮させる。

本名を秘密ごと晒したことで、よりクラスの中に入っていけたような気がした。

256 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/07/19(火) 01:21:55 ID:HnxrA0P.0
ただデレにはまだやるべきことがある。
クラスにおける立ち回りは存外に盛況を博して終わらせたが、
委員会活動が残されている。

悪魔委員会との接触。

ζ(゚ー゚*ζ(放課後か……)

引き金となったのは唐突なスカウトであったが、
いざ真剣に取り組むとなると不思議と使命感というやつは滾るものだ。

デレは決心を固めていた。

そしてその時間に至る。

ζ(゚ー゚*ζ「早く行かなきゃ。じゃあね、ハイン。また明日」

从 ゚∀从「おっ、噂の準備室でのお茶会かい?」

ζ(゚ー゚*ζ「違うよ。私、もう調査委員会に決まったから、その仕事」

隣席のハインの冷やかしに、デレは落ち着いて釈明する。

257 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/07/19(火) 01:33:35 ID:HnxrA0P.0
从 ゚∀从「へ? お前あれに入れたの?
      調査委員会ってめちゃくちゃ人数少ないんだろ?」

ζ(゚ー゚*ζ「人数が少ないから入れたんだよ」

もちろん真相ではない。
さすがに内訳までは明かさないでいいだろうと、デレは考える。

ζ(゚ー゚*ζ「とにかく忙しくなるんだよ。それじゃあね!」

だから、これからは兄の世話になることはあまりないだろう。

友人に別れを告げて教室を離れる。
デレの脇をかすめていく学生たちは皆似たような顔をしている。
その表情はきっと、デレも変わらない。
自分も同じなのだ。疎外感はすっかり消失していた。

胸に手を当て、一呼吸。

ζ(゚ー゚*ζ「……よし、行こう」

調査委員としての第一歩をデレは踏み出した。

書類は昨晩のうちに作成しておいた。
あとは出向するだけだ。


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