ζ(゚ー゚*ζは天使でも悪魔でもないようです

136 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/07/07(木) 20:37:28 ID:/MB6j8p20
VIP高校にやって来てから二週間。
九月も終わる寸前である。

この十数日の間は大きな波乱もなく、平穏な日々をデレは送っていた。

从 ゚∀从「なあ、ちょっと聞いてくれよ」

体育の授業中のことだ。
バレーコートの脇で他のチームの試合を観戦していた時に、ハインが耳打ちしてきた。

ζ(゚ー゚*ζ「なあに? 私たちの出番、次の次だよ」

从 ゚∀从「いやそんな話じゃねぇ」

ζ(゚ー゚*ζ「違うの? さっきの試合、凄く楽しそうにスパイク打ちこんでたから
        てっきり試合が待ちきれなくなったのかと思ったよ」

从 ゚∀从「バカ、アタシはそこまでせっかちじゃないっての。そうじゃなくてだな」

ハインは愉快そうな顔をして、

从 ゚∀从「面白い噂を聞いたんだよ」

137 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/07/07(木) 20:38:12 ID:/MB6j8p20
ζ(゚ー゚*ζ「噂?」

きょとんとするデレの反応が気に入ったのかハインは一層にやける。

从 ゚∀从「おう、う・わ・さ。うちのクラスメイトの!」

ζ(゚ー゚*ζ「私たちのクラスメイトの?」

从 ゚∀从「そうさ! いやさ、同じ、陸上部の奴に聞いたんだけど、
      やーまさか、あいつがとはねぇ。いやはや」

ζ(゚ー゚*ζ「なになに、どんな噂なの」

从 ゚∀从「知りたい?」

ハインはふふんと悪戯っぽい笑みを見せた。

様子を見る限り、というより前々からなんとなくそんな気はしていたが、
このハインという少女はそういった真偽定かではない噂話を好む性質のようである。

そしてそれはデレも嫌いなほうではない。

ζ(゚、゚*ζ「もう、自分から持ちかけておいてもったいぶらないでよ」

唇を尖らせる。

138 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/07/07(木) 20:52:46 ID:/MB6j8p20
从 ゚∀从「そんな急かすなって、ほら、あれ」

言って、ハインは体育館の隅を、あまり目立たないような所作で指差した。
示した先には制服姿の女子が三人ほど膝を抱えて座っている。

ζ(゚ー゚*ζ「見学中の子?」

从 ゚∀从「そうそう。なあ、しぃって知ってるよな?」

ζ(゚ー゚*ζ「うん、椎名しぃさんでしょ。あのショートカットの人」

椎名しぃ。
クラスメイトの一人。
深い関わりがあったわけではないが、何度か会話は交わしたことがある。

ただその時の印象はというと、どこか夢見がちというか、心ここにあらずというか、
とにかくふわふわとした雰囲気の少女のように感じた。

会話の途中で、それまで受け答えはしっかりしていたのに、
突然空想に耽る瞬間が訪れて自分の世界から出てこなくなってしまう。

安定していないのだ。

139 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/07/07(木) 21:05:02 ID:/MB6j8p20
ζ(゚ー゚*ζ「しぃさんに関する噂なの? どんな?」

从 ゚∀从「実はさ、しぃ、ホント意外なんだけど、
      どうやらうちの部長と夏休み前から付き合ってるみたいなんだよね」

ζ(゚ー゚*ζ「えっ、そうなの?」

从 ゚∀从「噂な、噂。ま、限りなく真実っぽいけどな。
      なんかさ、うちの部員が町で二人で歩いてるところ見ちゃったらしいんだよ」

ハインは人差し指と中指をニスの効いた床板に立てて、
それを男女に見立ててとことこと動かす。

从 ゚∀从「びっくりしたよマジで。しぃもあんなだけど、うちの部長、
      あ、二年のギコ先輩っていうんだけど、あの人すげーお堅い人だからさ、
      よく言っちゃえば硬派な男なんだけどミスマッチでさぁ」

デレは頭の中で、均整のとれた体型の厳めしい面をした男子を思い浮かべた。
その男子としぃが並んでいるところを想像する。

ζ(゚ー゚;ζ「うーん、確かにイメージと合わないかもしれない」

だが、しぃが誰かと交際しているという話自体はそこまで意外ではない。
恋に恋するようなタイプだとデレは勝手に思っていたからだ。
どうやらハインも同じらしかった。

141 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/07/07(木) 21:19:16 ID:/MB6j8p20
从 ゚∀从「しぃはまあ、恋愛だとか先輩だとかに憧れてそうだから、
      別におかしな噂ってわけじゃないけどさ。
      デレもなんとなくそんなイメージ抱いてたろ? 正直に言ってみ」

ζ(゚ー゚;ζ「ぶっちゃけるとね」

从 ゚∀从「だろ? でも部長はそんなイメージなかったから驚いたよ。
      あの人勉強もできるし、陸上でも顧問から一目置かれてるくらいだけど、
      色恋沙汰とかにはてんで疎そうだったもん」

ζ(゚ー゚*ζ「そんなに真面目な人なんだ」

从 ゚∀从「クソ真面目だよ。くう、デレにも会わせてやりたいぜ」

ハインは顔をしかめて、悔しそうな、面白そうな、どちらとも取れるような表情を作る。
デレはしぃに目をやった。

(*゚ー゚)「……」

ちょこんと小さく体育座りをして、ぼんやりとバレーの試合を眺めている。

厳格な陸上部部長と、夢の世界から出てきたような少女。

デレ自身に恋愛経験がないから、
それが本当に不釣り合いなカップルなのかは、よく判らなかった。

142 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/07/07(木) 21:31:37 ID:/MB6j8p20
从 ゚∀从「たださ」

隣でハインが呟く。

从 ゚∀从「学校内じゃあんまり目立たないようにしないとな。
      天使委員会なら平気で不純異性交遊とか難癖つけてくるぜ」

ζ(゚ー゚*ζ「……」

体育の授業は定刻を少しだけ回って終わった。
着替え終わって教室に戻ると、
先に授業を終えていた男子一同が、疲れ切った顔で下敷きやノートを団扇代わりに涼んでいた。
ブーンもまたその一人で、机にへばりついている。

(;^ω^)「ダルかったお……思いつきで50分間延々グラウンドを走らせるとかやめてくれお」

从 ゚∀从「そんくらいでバテてんじゃねぇよ、情けないな」

着席するなりハインが叱咤する。

从 ゚∀从「日頃から鍛えてりゃそんな腐った蛸みたいにはならないぜ」

(;^ω^)「写真部の僕にそんなことまで期待すんなお。
     毎日体を動かしてる運動部の連中でさえグロッキーなんだから」

143 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/07/07(木) 21:44:11 ID:/MB6j8p20
ζ(゚ー゚*ζ「あはは、でも確かに一時間前より痩せたね」

(;^ω^)「消費した水分とカロリーをさっさと補給しないと死ぬお」

从 ゚∀从「腹減ってるだけじゃん。カロリーの摂取は昼まで待てよな」

( ^ω^)「昼がここからここまでとか誰が決めたんだお。
     本当はもしかしたら今からが昼なのかも知れないお」

从 ゚∀从「んなもん昔っからだろ。
      大体アタシら人間って生活の周期みたいなのが元々体に刻みこまれてるんだろ」

( ^ω^)「うむ」

从 ゚∀从「じゃあ大人しく従っとけ」

( ^ω^)「ああ! 時という概念はなんて残酷なんだお!
     なぜ人間が絶えず流動し続けるものなんかに縛られなきゃならないのか……。
     ヒトに宿るサーカディアンリズムからは逃げられないのかお……」

从 ゚∀从「アタシに言われてもなぁ……」

デレはくすくす笑いながら二人の友人の掛け合いを聞いていた。

144 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/07/07(木) 22:01:53 ID:/MB6j8p20
やがて時は流れて、放課の鐘が鳴る。

ζ(゚ー゚*ζ「それじゃ、二人とも部活がんばってね!」

教室を出ると、そのまま駆けるように北校舎へと向かった。

この頃デレは放課後を北校舎の教員準備室で過ごす。
周りが何かしらの活動に打ち込む中、
自分だけのうのうと家まで直帰するのはどうにも居心地がよくない。

他の学生たちと同じように、『学校』という空間の中に自分を残していたかった。

(´・ω・`)「だったら早いとこどの委員会に入るか決めちゃえばいいのに」

ζ(゚ー゚;ζ「まだ悩んでるんだよぉ」

ショボンの嘆息混じりのぼやきは正論としか言いようがなかった。

デレがこの部屋に来る一番の理由は、兄と普段通りに接することができるからである。
ショボンもまた、最近はデレの頼みで放課後準備室に来ている。

学校で会う時はお互いに他人の仮面を被っていて、行き場のない寂しさを覚える。
実の兄に対して敬語を使うことも、敬語を使われることもデレは嫌だった。
ここでだけ素直なままで口を利ける。
だからひどく落ち着いた。

145 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/07/07(木) 22:13:42 ID:/MB6j8p20
ζ(゚ー゚*ζ「それより兄さん、ポットのお湯が沸いたよ。
       コーヒーでいいよね?」

(´・ω・`)「うん、砂糖は多目ね。具体的には底がじゃりじゃり鳴るくらい」

ζ(゚ー゚;ζ「溶け切ってないってことじゃん、それ」

(´・ω・`)「飲み物は暖かいほうが甘みを感じやすいんだよ。
      だったら、どうせなら限界まで甘くして飲みたいじゃない。
      今日の僕は極限状態を知りたいのさ」

ζ(゚ー゚*ζ「変なの」

そう返しながらも、デレは匙でありったけの砂糖をコーヒーの注がれたカップへと投入する。
兄の趣意はいつまで経ってもデレにはわからない。

ζ(゚ー゚;ζ「糖尿確定……兄さん、まだ若いんだから無茶しないでよ」

デレは自分のマグカップにはミルクチョコレートココアの粉末と、
ほんの少しだけ追加の砂糖を加えて、熱湯を注いだ。
湯気が鼻先をくすぐった。

146 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/07/07(木) 22:24:14 ID:/MB6j8p20
ポットを持ちこんだのはショボンからの提案だった。
インスタントコーヒーやティーバッグは、デレが買い揃えておいた。

発案者であるショボンが言うには、
他の社会科教師からも授業と授業の合間にのんびりできるということで好評らしい。

実際、これまたこっそり運んでおいたエスサイズの食器陳列棚には、
デレの知らない銘柄の紅茶や緑茶が並んでいた。
各自で持ち寄ったものだろう。

ζ(゚ー゚*ζ「はい、召し上がれ」

カップの片方をショボンに手渡す。

(´・ω・`)「ありがとう。
      しかしまあ、学校の電力を勝手に使うとは、中々の悪だよね僕ら」

コーヒーをちびちびすすりながら言った。
砂糖だけでミルクは入っていないから、綺麗な琥珀色をしている。

ζ(゚ー゚;ζ「そういえば正式な許可は取ってないもんね」

(´・ω・`)「まあ校長や密告者になり得る生徒なんかは来ないからね。
      電力消費量なんて微々たるものだし。
      ポットの存在を知ってるのは僕ら社会科の教員たちと、デレだけさ」

148 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/07/07(木) 22:40:05 ID:/MB6j8p20
デレもココアに口をつける。

ζ(゚ー゚*ζ「……ん」

ほんの僅かにとろりとした液体を口に含むと、
鼻から抜けていく独特の濃い香りとグラニュー糖の癖のない甘味の後に、ほろ苦さが来る。

ζ(´ー`*ζ「おいし。ほっとするなぁ」

デレはカカオの薫香は好きだが苦いという味覚はあまり好みではない。
それゆえに少しでも甘さを感じる時間帯が持続するよう砂糖を足しているのだ。

(´・ω・`)「子供っぽいよね」

ζ(゚ー゚;ζ「もっと甘いものを飲んでる兄さんにだけは言われたくないよ」

(´・ω・`)「それよりさ、デレ、今日は準備室の到達する前に渡り廊下で合流したでしょ。
      あれはよくないよ。何度も忠告するけど君の青春時代が崩落してしまうじゃないか!」

ζ(゚ー゚*ζ「だから気にしすぎだってば……」

(´・ω・`)「警戒して損することはないよ。少し過剰なくらいがちょうどいいのさ」

ショボンはカップをぐいと傾ける。

149 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/07/07(木) 22:50:23 ID:/MB6j8p20
(´・ω・`)「それはともかく、僕はまだ仕事が残ってるから、
      いい加減そっちに着手しなくちゃいけない。ああ、なんたる大儀だ」

ショボンは卓上にそびえ立つプリントの山を恨めしそうな目で見つつ、
心底億劫そうに漏らした。

(´・ω・`)「まったく小テストを気合入れて作りすぎた。
      記述式で考察または解説問題三問はいくらなんでもボリューム過多だったか……。
      一応キーワード十五個から選ばせるようにはしたんだけどな……。
      これ解かせてるだけで授業終わっちゃったし」

ζ(゚ー゚;ζ「それって期末テストより絶対に手込んでるよね。
       後先考えようよ……」

(´・ω・`)「あ、これ来週デレのクラスでもやるから」

ζ(゚ー゚;ζ「ちょっ……」

軽く絶望する。

(´・ω・`)「とにかく、僕はこれから採点に取りかかるから、
      デレも宿題済ませておくんだよ。自宅だとすぐ寝ちゃうだろ」

ζ(゚ー゚*ζ「はぁい」

150 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/07/07(木) 23:02:53 ID:/MB6j8p20
通学鞄からノートと、数学の参考書を取り出す。
ぺらぺらとページをめくり、課題として出された問題を確認する。

ζ(゚ー゚*ζ「ええと、今日の範囲は……ああ、やっぱり多いなぁ。
       でもミルナ先生、怒ると怖いからなぁ……ちゃんとやっておかないと……」

数学教師胡内ミルナの大きく見開かれた目で睨まれると魂が抜けそうになる。

ζ(゚ー゚*ζ「……よし、やるぞ!」

デレは両頬を二回叩いて意気を張ってから臨む。
シャーペンを握る指にも自然と力が入る。

ζ(゚ー゚;ζ「なっ……何これ……せつげんてーり……?
       そんなの習ってたっけ……?」

が、即座に挫折を味わう。

ζ(゚ー゚*ζ「……兄さん」

(´・ω・`)「早すぎるだろ……すぐに人に頼る前に一度自分の力でやってみなよ」

ζ(゚ー゚;ζ「だって全然わかんないんだもん……」

151 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/07/07(木) 23:15:23 ID:/MB6j8p20
(´・ω・`)「そもそも僕は世界史担当なわけで……。
      社会科の先生に数学の問題を訊いてどうするのさ」

ζ(゚ー゚*ζ「『先生』としてじゃなくて『兄さん』としてだよぉ」

デレは瞳を潤ませる。

(´・ω・`)「猫撫で声出してもダメなものはダメ。
      たとえ血を分けた妹であっても、僕は教育に携わる者として、
      そういうところはしっかりしていくからね」

ζ(゚ー゚*ζ「……ケチ。吝嗇」

(´・ω・`)「女子高生らしからぬ無駄な語彙力発揮しないでいいから。
      さあさあ、がんばったがんばった」

ζ(゚ー゚;ζ「ふええん、文系人間には辛いよ……」

結局、全ての問題に一応の解答を導き出すまでに二時間以上要した。

ζ(゚ー゚;ζ「疲れちゃった……もう図形はいいよ……しばらく見たくない……。
       六時も過ぎちゃったし、そろそろ帰ろうかな」

ちらりと窓の外を見やる。太陽はとっくに姿を消していた。
あるのは明度が緩やかに減少していく景色だけだ。

152 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/07/07(木) 23:24:50 ID:/MB6j8p20
ショボンは未だ黙々と作業を続けている。

ζ(゚ー゚*ζ「兄さん。私、先に帰るね」

(´・ω・`)「ああ、うん、お疲れさま。ごはんよろしくね。
      これは独り言だけど僕は今日は麻婆豆腐が食べたい気分なんだ。
      それもとびきり辛いやつが」

ζ(゚ー゚*ζ「はいはい、材料買って帰るよ。
       それより兄さん、さっきは甘いコーヒーが飲みたいって言ってたのに、
       今度は辛いのがいいなんて矛盾してないかな」

(´・ω・`)「矛盾してないよ。ベクトルの向きが違うだけで、実態は同じことさ」

ζ(゚ー゚*ζ「そうかなあ。まあいいや。
       兄さんもあまり根詰めないで早めに帰ってきてね」

(´・ω・`)「そうするよ」

ζ(゚ー゚*ζ「約束だよ。じゃあね」

準備室を出る。
北校舎の塗装が剥がれた廊下には、当然だが人気は一切ない。


なのに――なんだか。

誰かに見られているような気がした。

153 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします 投稿日:2011/07/07(木) 23:39:04 ID:/MB6j8p20
ζ(゚ー゚*ζ「……あれ?」

デレは困惑する。
きょろきょろとせわしなく首を動かす。
やはり誰もいない。

訝しみながらも渡り廊下の手前まで来たところで、壁に設置された電源スイッチを発見し、
天井に据えられた蛍光灯を点ける。
廊下がさあっと照らされる。全てが白日の下に晒される。

やはり――誰もいない。

ζ(゚ー゚*ζ(……おかしいなあ……さっき確かに……)

視線を感じた。
あれは錯覚か。

ζ(゚ー゚*ζ「気のせい……だよね、うん。そんなはずないし」

第一普通の女子生徒に過ぎない自分など見張って何の利得があるというのか。

ζ(゚ー゚;ζ「兄さんのこと笑えないや。私も自意識過剰になっちゃってたよ……」

即刻粘りついていた雑念を頭から追い出す。そしてデレはまた歩き出した。

それでも渡り廊下を通過するペースは、
焦燥からか少し早かった。


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