- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 20:08:31.53 ID:uHmol1AU0
- 夢の内側から夢を観測している。
自分ではない誰かが
自分のフリをして外界へと手を伸ばす。
私が消えてしまう。
私が死んでしまう。
そういった感覚が背骨の上を走る。
瞼の裏側が熱い。
眼底が軋む。
お腹が
子宮が
疼いている。
私にしか聞こえないか細い声で、あの腕は私に囁いた。
――――お前は人間ではありえない。
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 20:09:18.15 ID:uHmol1AU0
/ ゚、。 /「Hello! AnotherAbyss! のようです」从 ゚∀从
第三話『非日常(が/へ)侵入』
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 20:11:38.12 ID:uHmol1AU0
/ ゚、。 /「ん……」
背中側から発せられる軋みの音でダイオードは目を覚ました。
体全体を倦怠感が包む。
薄いシーツを上にかけてるだけにも関わらず体が熱い。
どうやらベッドの上にいるらしい。
月明かりに薄暗く照らされているこの部屋は自分の記憶にない。
頭の隅々まで靄が掛かっているようで、何も考えたくない。
天井のシミの数をぼんやりと数えてしまう。
一。
二。
三。
死。
――――ズキン。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 20:13:45.49 ID:uHmol1AU0
/ 、 /「痛ッ」
右眼の奥が痛む。
無数の小さな針で突かれているように。
思わず掌でその部分を覆った。
从 ゚∀从「起きたか」
自分の視界の外から声を掛けられて、ダイオードは体を起こしてそちらを向く。
窓から入る月明かりが、椅子に腰掛けるショートカットの女を照らしている。
女は手にした本をパタリと閉じると、ダイオードの寝ているベッドへと歩み寄った。
从 -∀从「まぁ、なんだ、もうすこし休んどけ」
言いながらダイオードの頭をぽんぽんと叩いた。
顔左半分は髪に覆われて見えないが、中性的な顔立ちの麗人といった風で
少し見つめられるだけでカッと頬が熱くなる。
こんな風に『優しく』されたのは初めてのことかもしれない。
そう思うと途端に何かが満たされていくのを感じた。
心地がいい、ぬるま湯の中でまどろんでる様な。
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 20:15:47.89 ID:uHmol1AU0
――――ズキンッ!
/ 、 /「ガッ!」
また右目の奥が痛んだ。
今度はより強く。
まるで私のこの感情を苛むように。
痛みが己のどこかを刺す度に、頭に掛かっていた靄が消えていく。
ここは、どこなんだ。
この女は……誰だ。私は……。
頭がぎしりと痛む。
/ ゚、。 /「痛……」
从 -∀从「無理をするな。仮とはいえ契約した直前に戦闘を行ったんだ、あまり動かないほうがいいぜ」
女は私のいるベッドに腰掛けると、その一言をかけてすぐに再度本を読み始めた。
本を持つ彼女の手には痛々しく包帯が巻かれており、何らかの怪我を負っているらしかった。
私は、その怪我の原因を知っている……?
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 20:21:10.16 ID:uHmol1AU0
- / 、 /「うぅ……」
右目を覆っている掌に力が入る。
己の意思とは関係なく痛みの原因である右目を抉り出してしまいそうになる。
从 ゚∀从「ダイジョブか? やべえなら医療スタッフ呼ぶぞ?」
女はまた本を閉じると、私の額に手を当てた。
/ ゚、。 /「つめたっ」
从 ゚∀从「あ、わりぃ。ウチのこれがあたったんだわ」
彼女は私の言葉にサッと手を引いて、中指にはまっている指輪を見せた。
/ ゚、。 /「あ」
あの指輪。
あの指は
――――ギシンッ!
/ 、 ;/「ギッ! アァア!!」
从;゚∀从「お、おい」
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 20:22:13.09 ID:uHmol1AU0
- 殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪
殺怨呪 『殺した』殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪
殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪
殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺『パラドックス』殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪
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殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪 『殺された』怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪
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殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪殺怨呪縛煉疑怪
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 20:25:57.23 ID:uHmol1AU0
――――思い出した。
確か家の前の自販機でカタワさんに襲われて
このベッドに腰掛け、心配そうに私を見つめるこの女に助けられて。
それから、私が、カタワさんを。
/ 、 /「殺した」
私が殺した。
カタワさんの頭を、砕いた。
どす黒い塊が喉の奥にツッかえている。
あの時の自分は化け物だった。
と同時に自分の居場所があそこにあったと、そうも思う。
怪異を『力』として使役し、何かを壊す快楽。
己の奥に快い暗闇が広がる、あの時間。
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 20:30:31.75 ID:uHmol1AU0
――――欲しいものがあった。
自分を迎え入れてくれる環境。
小さい頃に失った、誰もが当然のように笑顔でいられる空間。
その輪を外側からしか眺めることが出来なかった。
あの笑顔を自分が見せることも、誰かに向けられることもない。
だが、今日私は笑顔を出した。
――――これから殺す、獲物に向けて?
そして私は笑顔を貰った。
――――名も知らない血塗れた女に?
私は、今、どっちだ。
人か? 怪物か?
あの暗い愉悦は私のものか?
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 20:33:21.80 ID:uHmol1AU0
/ 、 /「うぅっ……」
頭が痛い。
脳髄が沸騰している。
頭蓋の中心が、渦を巻いて私の外に飛び出ようとしている。
そういえば、ここはどこなのだろう。
ダイオードは片手で眼をを押さえながら、女に質問をすることにする。
/ ゚、。 /「……ここは、どこなんですか?」
从 ゚∀从「ウチの割り当てられている部屋だ。あの後お前もぶっ倒れたから仲間に連絡して連れてこさせた」
軽く部屋を見渡す。部屋の隅には冷蔵庫と本棚が並んで配置してある。
私のベッドの横には小型の机が置かれている。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 20:36:45.67 ID:uHmol1AU0
/ ゚、。 /「私は、どれくらい寝ていたんですか?」
从 ゚∀从「お前がどこまで覚えてるかしんねーけど、大体アレから丸一日経つぜ」
丸一日。
嗚呼出席がやばい講義が今日あったはずなのに。
いや、そんなことを悩んでもしょうがないか。
今はこの状況をより多くの情報を持って色づけていかなければ。
女は静かな顔をして私を見つめる。
表情からは何を考えているか読み取れない。
/ ゚、。 /「……貴女は、誰なんですか」
そう質問した時、部屋の扉が勢いよく開く。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 20:37:27.24 ID:uHmol1AU0
_ ∩
( ゚∀゚)彡 <ヒャッフウウウウウウウー!!!!!!
( ⊂彡
| |
し ⌒J
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 20:39:04.99 ID:uHmol1AU0
- _
( ゚∀゚)「イヤッフオオオオオー!!! 新入りおっぱいちゃんコンニチワワ!!」
更にその扉の勢いにも負けないくらいのテンションの持ち主が入ってきた。
_
( ゚∀゚)「ターゲットロックオン! ジョルジュ隊員突撃します!」
見た目は私と同じくらいと言ったところか。ピシッとスーツを着てはいるがあまり似合っていない。
_
( ゚∀゚)「うひょお! でけぇ! 身長もデカイがおっぱいも中々だ!」
短く刈った髪は真紅に燃え、耳にはジャラジャラとピアスを付けている。
_
( ゚∀゚)「ねぇねぇ。身長と3サイズ教えて。ねぇねぇ。減らないジャン教えてもさ。な、ええやろ? あ?」
目鼻立ちがよく十分に美形と言えるだろう。
だがその顔の半分以上に刺青が入れてありどこと無く不気味な雰囲気を湛えている。
_
( ゚∀゚)「クンカクンカ。あ、このベッドから良い匂いするよう。やっぱ女の子が使ってるからかなぁ。フヒッ」
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 20:44:21.24 ID:uHmol1AU0
異様な人物であることは姿もさることながら
部屋に入ってから片時もお喋りを止めていない所からも見て取れる。
_
( ゚∀゚)「ハインは臭いからなぁ。もう女じゃねぇよ。やっぱ女の子はこうじゃなきゃいけないぜ!」
というかウザイ。
_
( ゚∀゚)「ねぇねぇ、名前なんていうの?」
/ ゚、。;/「ダ、ダイオードでs」
_
( ゚∀゚)「じゃあイオちゃんね! なーイオちゃん。おっぱい触っていい?」
ていうかキモイ。
物凄い勢いでベッドに顔をうずめて深く呼吸をしている。
単純な嫌悪感が半端ない。
思わず何か鋭利なものの鋭利な部分で刺してしまいたい衝動に駆られる。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 20:47:40.28 ID:uHmol1AU0
引き笑いを繰り返してる私と変態男が異変に気付いたのはそれからすぐのことだった。
部屋を殺意が満たしている。
私に向けられているものではない事は分かるが、それでもなお冷や汗が止まらない。
憎悪、そう憎悪から来る殺意。
そしてその殺意の矛先である変態は、先程までの顔色とはうって変わって
奥歯を打ち鳴らしながらガタガタと震えていた。
変態はゆっくりと首を後ろに回す。
もしかしたらこれが今生最後の景色になるかもしれない。
なのでどうか後ろを振り向いたらおっぱい畑でありますように。
そう、心から願う。
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 20:50:02.31 ID:uHmol1AU0
::从`゚益从::
_ ⊂ヽ
(゚∀゚ )ノ <ですよねー
| ⊃|
| |
⊂ノ
∪
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 20:55:05.32 ID:uHmol1AU0
椅子を頭上高く振り上げる鬼が、そこにはいた。
从`゚益从「死ぬ準備は済んだかゴミクズ」
_
( ゚∀゚)「せめて最後にお前の貧乳でいいから触らせてくれ。後生だ。頼む」
――――ビュン! ゴッガッメチャッゴキュッグチュッミシメシメリメリゴリギュルルルルルチュイーンズドオオオ!!!
<あ、もう、そこはぁ゛! やめ゛、冗談じゃ済まな゛! ギッ、俺の、男性自身が! あ、イ゛ヤ゛アアアアアア!!!!!!
変態のありとあらゆる骨が肉が液が爆ぜる。
女は彼の男性自身を初撃で潰し、二撃目で喉を潰す。
悲鳴を上げられなくなった豚を椅子の角で嬲る、屠る、粉砕する。
豚の原型が崩れ、肉の塊になってもなお彼女の椅子の勢いは緩まない。
椅子の破片と豚の肉とが混ざり合い、何がなんだか分からなくなったあたりでやっと女は手を止めた。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 20:59:37.54 ID:uHmol1AU0
从 ゚∀从「……ふぅ。今日も地球は平和だ」
_ _
(#)∀(;;,)「……」
目標、完全に沈黙。
ダイオードはあまりの恐怖に今の今まで黙りこくっていたが、はっと我に返る。
/ ゚、。;/「さ、殺人だー!」
思わず叫ぶ。
確かに変態が変態行為に及んだことは大罪だが、しかしその罪はしっかりと司法のもと裁かれるべきであって
勝手に一般人が独断で死刑を敢行していいものではない。
いや、この女が一般人かどうかは知らないが、ともかく大変なことになった。
ただでさえ、あの夜のことを思い出した矢先の変態登場の矢先の殺人だ。
もう頭がどうにかなりそうだった。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 21:03:38.08 ID:uHmol1AU0
从 ゚∀从「おー。なんかそのリアクション新鮮だわ」
/ ゚、。;/「なにいってんすか!? これもうホント大変ですよ!」
从 ゚∀从「ダイジョブ、ダイジョブ。日常茶飯事」
/ ゚、。;/「貴女日常茶飯事に誰かを肉団子にしてるんですか!?」
从 ゚∀从「ちげーよ。こいつが肉団子になるのが日常茶飯事なんだよ」
/ ゚、。;/「もう、訳が分かりませんよ! 日常茶飯事に肉団子になんてなれるわけ無いでしょ!
一回なっただけで死にますよ!」
_ _
(#)∀(;;,)「なれちゃうんだな、これが」
/ ゚、。;/「ゴミが喋った!」
_ _
(#)∀(;;,)「……ゴミって……」
/ ゚、。;/「あ、ごめんなさい。ってチッガーウ!!!!」
从 ゚∀从「お前中々愉快だな」
/ ゚、。;/「あーもー! 何なんですか貴方達は!」
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 21:07:33.48 ID:uHmol1AU0
自分自身でもびっくりするくらいに激しくツッコミを入れる。
眼の奥の痛みはどこかへ消えたようだが、今はまた違った意味で色々なところが痛くなっている。
私は肩で息をしながら、一人と一個を睨んだ。
从 ゚∀从「そんな怖い顔すんなよ。安心しろ、ウチらはお前らの味方だ」
_ _
(#)∀(;;,)「そーそー」
/ ゚、。 /「もうよくわかりません……。泣きそうですよ……」
从 ゚∀从「とりあえずジョル、戻れ」
_ _
(#)∀(;;,)「あいよ」
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 21:09:01.66 ID:uHmol1AU0
w,,.,(#)∀(;;,) ;.゚ξ
υ,.':'。,.;:ゝ;.,、メ;:,,. グググ……
* +
+ ∩_ _∩
バアァ━━━━━━( ゚∀゚)━━━━━━ン!!!
+ ノ /
+ (つ ノ +
(ノ *
+ * +
+
* +
+
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 21:13:14.79 ID:uHmol1AU0
_
( ゚∀゚)「完全復活!」
/ ゚、。;/「うわああああああああ!!!!!!!!」
从 ゚∀从「なんだよデカイ声だして」
/ ゚、。;/「肉団子が蘇った!」
从 ゚∀从「いいじゃん、生き返ったんなら」
/ ゚、。;/「そ、そりゃそうですけど!」
从 ゚∀从「まぁコイツ人間じゃないから」
_
( ゚∀゚)「正確には『辞めた』んだけどな」
/ ゚、。;/「……」
そうだ。
ここは日常じゃない。
私はまだ非日常の中に居るんだ。
知らない部屋、知らない人たち、知らない知識。
そういったものに一々驚いていては身が持たない。
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 21:17:52.86 ID:uHmol1AU0
一度深い呼吸をして、頭をニュートラルに戻す。
……よし。少し冷静になれた。
が、そんなダイオードを置いて見知らぬ二人の会話が進んでいる。
_
( ゚∀゚)「ハインさぁ、独男を自由にしとくの良くないぜ。ああ見えてパラドックス共はお喋りだし」
从 ゚∀从「五月蝿いボケ。ウチ指図するなゴミカス」
_
( ゚∀゚)「口悪っ! 相変わらず口悪っ! 新入りちゃんはこんな風にならないでね」
从 ゚∀从「ぶっ殺す。それと、こいつは新入りじゃない」
_
( ゚∀゚)「え、そうなん? じゃあなんでここにいるん?」
从 ゚∀从「『巻き込んだ』責任がある」
_
( ゚∀゚)「でも『適合体』なんだろ? なら入っちゃった方が安全とちゃうのん?」
从 -∀从「はぁ、ジョルジュよぉ。なんも知らない癖にあんま語ってんじゃねーぞ」
完全にダイオードを置いて話は進んでいく。
自分の置かれている状況がますます良く分からなくなる。
判明したのは、女がハイン、男がジョルジュと呼ばれている事くらいだ。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 21:21:28.45 ID:uHmol1AU0
この二人の話に割り込むべきか否か。
未だやむ気配のない罵り合いなのか情報開示なのか分からないやり取りを見つつ、長考する。
_
( ゚∀゚)「ハインちゃん知ってる? 怒るとおっぱいちっちゃくなるんやで?」
从 ゚∀从「よし、殺す。シューに頼んで研究棟の多重擬似深淵牢獄に放り込んでやるよカス」
_
( ゚∀゚)「流石にあんな化け物だらけの空間嫌やぁ。なあイオちゃん」
うむむと顎に手を当てて考え事をしていたダイオードに
予想外のボールが投げられる。
もちろん話など欠片も聞いていないので何も答えることが出来ない。
考えあぐねた結果、先の質問をこの男にも投げかけてみることにする。
/ ゚、。 /「あの、ここはどこなんですか?」
_
( ゚∀゚)「ここ?ニュー速。AAニュー速支部」
从 -∀从「おいゴミクズ。そこまで教えるんじゃねェ」
_
( ゚∀゚)「ええやん、いずれにせよそれを言わんと話も進まないし」
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 21:24:54.84 ID:uHmol1AU0
ニュー速……。
大都会じゃないか。
随分と遠くに連れてこられたものだ。
県を五、六個跨いでいるではないか。
それにAAという、恐らく支部とつくあたりなんらかの組織名と考えられるソレ。
気になることは増える一方な気がしないでもない。
が、とりあえず自分の大まかな居場所の把握という目的は達成した。
次は一個ずつ謎を潰していこう。
なるべく核心的な部分に近づけそうなものを選んで。
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 21:29:09.55 ID:uHmol1AU0
/ ゚、。 /「あの、AAってなんですか?」
_
( ゚∀゚)「お、やっぱ気になる?」
从 ゚∀从「ボケカス、教えんな」
_
( ゚∀゚)「えー、なんでなん? けちんぼさんやな君はホンマに」
从 ゚∀从「こいつはこのまま日常に戻ったほうがいいんだよ」
_
( ゚∀゚)「なんでよ。『適合体』なんだから協力してもらった方がいいじゃん」
从 -∀从「……」
_
( ゚∀゚)「だんまりは卑怯だろ、おい」
从 -∀从「……」
_
( ゚∀゚)「……貧乳(ボソッ」
从`゚益从「あ゛?」
_
( ゚∀゚)「これには反応すんのかよ!?」
从 ゚∀从「ッチ。とにかくコイツはウチらの仲間には出来ん」
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 21:34:29.72 ID:uHmol1AU0
( )「アレを見たからか?」
いつの間にか例の獣の腕がぷかぷかと扉の前に浮いていた。
ダイオードの心臓がゾクリと跳ねた。
あの時の、カタワさんの頭を吹き飛ばした時の感覚が蘇る。
と、同時に右足首が痛むことに気がつく。
じくじくと熱を持ってそれが主張する。
表情はなくともあの獣の腕の持ち主が楽しそうに笑っているのが分かる。
从 -∀从「……ハァ。初めはただの上級適合体かと思った。けど、『アレ』はあり得ねェ。あり得ちゃいけねェ範疇だ」
_
( ゚∀゚)「おいおい、穏やかじゃないなぁ。何を見たん?」
从 -∀从「……」
黙ってしまったハインに変わって獣の腕が答える。
( )「消去した」
_
( ゚∀゚)「消去? 何を?」
( )「矛盾、いや還元していたから『エーテル』というべきか」
_
(;゚∀゚)「ふ、ふはは、冗談キツいぜ独男ちゃん。そんなん無理じゃん」
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 21:38:13.32 ID:uHmol1AU0
ジョルジュが一気に苦笑いを浮かべる。それに対しハインはいらついた様子で応答した。
从 ゚∀从「理論上は可能だろ。無理矢理情報を変換して全く別のものにする」
_
(;゚∀゚)「高機能干渉……」
( )「しかもその間意識が無い」
_
(;゚∀゚)「天敵じゃねーか」
从 ゚∀从「パラドックスに対してもウチらにとってもな」
ジョルジュは額にじっとりと汗をかき
ハインは腕を組んで黙ってしまった。
獣の腕も言葉を発さず。静寂が部屋を満たした。
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 21:42:12.74 ID:uHmol1AU0
ダイオードは恐らく己に関する発言の数々を反芻するが一つも理解できない。
完全に置いてけぼりを食らってしまった。
今更何を話していいかわからず周りと一緒に黙るほか無い。
今まで把握し切れていたと思っていた自分という存在。
その自分が異様な集団に異様と称される不安感。
私という存在に対しての懐疑が大きく己の中で膨らむ。
――――知りたい。
知らなければならない。
拠り所を無くした自分だからこそ
さらに己を失う訳には行かない。
痛む右足。
軋む頭。
こうなった原因を。
この静寂の理由を。
私は知らなければ。
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 21:47:12.70 ID:uHmol1AU0
ダイオードは自分の下半身を覆うシーツをぎゅうと握り締め口を開く。
/ ゚、。 /「あの、教えてください。貴方たちのこと、あの化け物のこと、それに、私のことを」
全員がこちらに意識を向ける。
男は苦笑いをし、女は飽きれ、腕は笑う。
この主張が受け入れて貰えるか分からない。
そうなったときに私は食い下がるのか、それとも諦めるのか。
はぁ、とため息を付きハインが口を開く。
从 ゚∀从「二つ約束しろ。一つ、今から聞くことを他言しない事。二つ、この話を聞いたら『選択』すること」
/ ゚、。 /「はい、約束します」
_
( ゚∀゚)「イオちゃん。後悔しなさんなや」
/ ゚、。 /「大丈夫です。私、知りたいんです。嫌なんです、自分を疑うのだけは」
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 21:52:54.30 ID:uHmol1AU0
ダイオードは過去の出来事によって
ある種の閉塞的な自己嫌悪を抱えている。
その嫌悪に相対していたのが過剰なまでの自己愛と他者への拒絶である。
その自己愛の部分が懐疑によって崩落すれば、残るのは自己嫌悪のみとなる。
そうなればきっと、自分は消えてしまう。
ソレが怖い。
歩んできた道が全て虚構によるものだと考えてしまうのが嫌だ。
だから少なくとももてる限りの情報は得ておきたい。
それから全てを判断すればいい。
己は、人か、怪物か、ゴミクズか。
从 -∀从「――――おーけー。とりあえず開示できる範疇だけは全部教えてやる」
ハインは自分の座っていた椅子から立ち上がると
部屋の隅に付属していた冷蔵庫から缶ジュースを三つ取り出す。
そしてソレを、自分、ジョルジュ、ダイオードに配る。
長くなりそうだからな、そういってプルタブを開けた。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 21:56:47.16 ID:uHmol1AU0
ニュー速郊外の更に外れ。
静寂と漆黒で満たされている森の中を三人の子供が歩いている。
いや、正確に言えば『子供に見える』というだけで、実際の年齢は誰にも分からない。
迷子という風でもなく、淡々と歩を進めている。
( ><)「あ」
三人の中で一番背の低い少年が小さく声を上げる。
(*><)「ありました! あの明りがそうなんです!」
歓喜を含んだ声で残り二人の袖を引っ張るが、うっとうしそうに引っぺがされた。
頭頂部で髪を結っている女の子がうるさいという意を込めて、小さな少年の頭をはたく。
(*‘ω‘ *)「ここで計画を台無しにしたいっぽか?」
少女の声はとても平坦で、感情の篭っていない機械のようだった。
しかしながらその表情はとてつもなく迷惑という風を表しており
少年は慌てて謝りだす。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 22:02:08.91 ID:uHmol1AU0
(;><)「ご、ごめんなんです……」
(*‘ω‘ *)「まったく、ビロードはこれだから連れて来たくなかったっぽ。足手まといだっぽ」
ぷりぷりと怒って早歩きになった女の子の後ろで
ビロードと呼ばれた少年はがっくり肩を落とす。
そんな少年の頭を後ろから優しくなでながら
大人びた雰囲気を醸し出している少年が優しく囁く。
( <●><●>)「ビロ、ちんぽっぽは君が怪我をするのが嫌だから連れて行くのは止めようと何度も私に言っていたんですよ」
( ><)「え?」
( <●><●>)「口では足手まといだなんて言っていますけど、その実、君を大切に思っているのは分かってます」
(*><)「ワカッテマス君……」
( <●><●>)「さぁ、暗いですからちんぽっぽが迷子にならないように手をつないであげなさい」
(*><)「は、はいなんです!」
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 22:07:38.04 ID:uHmol1AU0
ビロードは嬉しそうに駆け出すと、後ろからちんぽっぽの掌を掴んだ。
それに対し、初めはワーギャー騒いでいたちんぽっぽも、
しょうがない奴だとか、お前が迷子にならないようにとか
顔を真っ赤にして言い訳しながらその小さな掌を甘んじて受け入れた。
( <●><●>)「やれやれ」
ワカッテマスという名の少年は軽く頭を振りながらも歩を早め、二人に追いつこうとした。
が、眼の端に人工の光が動き回ってるのを捕らえ、すぐさま警戒態勢に入る。
( <●><●>)「懐中電灯……ですね」
ワカッテマスの緊張が前の二人にも伝わったのか
同じように周囲に警戒の糸を張り巡らせる。
そしてすぐさま近くの茂みの中へと姿を潜めた。
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 22:12:12.92 ID:uHmol1AU0
(*‘ω‘ *)「AAのやつらっぽ?」
( <●><●>)「おそらくは」
(;><)「け、『契約者』ですか?」
( <●><●>)「いや、『契約者』なら懐中電灯なんて使わなくても夜は行動できます」
(*‘ω‘ *)「じゃあ警備員っぽか?」
( <●><●>)「十中八九そうでしょう。ここ一帯が定期巡回ルートなのか、私たちの騒ぎに気付いたのかはわかりませんが」
(*‘ω‘ *)「ほら、ビロが騒ぐからっぽ!」
(;><)「ち、ちんぽっぽちゃんだって大声だしたんです」
( <●><●>)「言い合いは後にしましょう。ともかく我々の存在を誰かに連絡されるのだけは不味いです」
(;><)「ずっと隠れてるんです?」
(*‘ω‘ *)「殺った方が速いっぽ」
( <●><●>)「……そうですね。ここはちんぽっぽの『外法(アウトロウ)』を使ってしまいましょう」
了解、とちんぽっぽは短く答える。
そして一人で茂みから飛び出した。大層嬉しそうな顔をしながら。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 22:19:58.93 ID:uHmol1AU0
(警備)。o(暗いなぁ。でもオレらは少しでも『契約者』達をサポートしないと。うん)
(警備)。o(おっかぁ。オレ頑張るよ)
――――ガサッ
(警備)。o(ん?)
懐中電灯の光がギリギリ届かないあたりの茂みから何かが飛び出してきた。
警備員は少しの恐怖を感じつつも、ゆっくりとその茂み近くへ歩み寄る。
……何かがうずくまっているようだ。
ぼんやりとしていたソレは警備員のもつ人工の光を浴びて徐々に輪郭を取り戻す。
ニュー速といえどここは郊外の森の中だ。
狸や狐くらいでるだろうとは思っていたが、どうやら違うらしい。
猿? いや……
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 22:21:33.34 ID:uHmol1AU0
V
∧∞∧
(*‘ω‘ *)
( )
v v
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 22:26:28.95 ID:uHmol1AU0
少女だ。明らかにこの場に不釣合いな少女がそこにはいた。
薄手のワンピースの上から
モコモコしたカーディガンを羽織っている。
首にはもう春だというのにマフラーが巻かれていて
少し暑苦しい印象を受ける。
生ぬるい風が吹くたびに、彼女の頭上の結った髪がふらふらと揺れる。
警備員の警戒は解かれない。
いや、より一層の警戒をもって少女に接触を試みる。
こんな郊外の森に、女の子が、一人で、いるはずが無い。
迷い込んだにしても、泣き声も上げずにじっとこちらを見つめているのが不気味だ。
(警備)「き、君。どうしてこんなところにいるのかな」
警備員の問いかけに少女は答えない。
時折警備員の持つ懐中電灯の光が瞳を刺すのか、うっとおしそうに片手で眼前を覆う。
とにかく警備室に連絡を入れておこうか。
警備員は腰にぶら下げたトランシーバーに手を伸ばす。
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 22:30:59.19 ID:uHmol1AU0
――――テン……2……コテ……ルール。
手が、止まる。
少女が何かを喋っているのを感じた。
連絡を入れる前にもう一度呼掛けを行ってみよう。
警備員は懐中電灯の光を少し弱め、もう一度彼女に話しかけた。
(警備)「ね……」
ビシィッ!!!
瞬間、警備員の左腕に亀裂が走った。鮮血が光に照らされながら周りの木々に飛び散る。
(警備)「ぐ(ああああああああああああああああ!!!!!!!!)」
次に喉が裂ける。彼の叫びは掠れた空気の漏れる音になり、誰の耳にも届かない。
懐中電灯が彼の手から落ち、地に堕ちる。そしてたたらを踏んだ際に踏み砕いてしまう。
完全な深淵。月明かりも木の天井に覆われ届かない。
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 22:33:51.87 ID:uHmol1AU0
腹が裂け腸が腹圧で飛び出る。眼球が十字に裂け眼房水が流れ出す。
指先が間接ごとに細切れになる。耳が、鼻が、口が見えない何かにそぎ落とされていく。
膝を折り、崩れ落ち、のた打ち回る。
上がりもしない悲鳴を上げるように、何度も何度も喉の穴から空気と血液を噴出させる。
細く硬いワイヤーが多重に張り巡らされた牢獄の中を無理矢理進むように
警備員の体は細かく細かく裂かれていく。
(*‘ω‘ *)「……」
少女は光の無い瞳でそれを見つめ続ける。
口の端だけを吊り上げながら。
警備員が完全にミンチになったのを確認し、少女はその薄い唇で事の終了を告げる。
(*‘ω‘ *)「『外法(アウトロウ)』『消音(ミュート)』『8立法自律制御』展開終了。治外法圏の消滅を確認」
『外法』
理(ことわり)の外の法。
己の中の真実を、現実へと引きずり出す魔性の力。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 22:39:21.89 ID:uHmol1AU0
少女は自分の部屋が欲しかった。
狭いボロアパート。彼女と彼女の両親は一つしかない部屋の中で生活していた。
貧困から来る両親の争い。母は口汚く父をなじり、父は母に暴力を振るう。
(* ω *)「うるさいなぁ」
部屋のどこへ逃げても、その罵詈雑言や悲鳴が消えることはなかった。
毎日毎日毎日毎日。
今より更に幼かった少女の心を歪めるには十分すぎるほど。
耳を塞いでも、布団を被っても、風呂の湯の中に沈んでも、消えない音。
親だろうがなんだろうがもううんざりだ。
死んでくれ。
音が、溢れかえるなら、ソレを死の箱の中に押し込めてしまいたい。
クソが。クソが。クソガッ!!!
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 22:43:53.94 ID:uHmol1AU0
(* ω *)「うるさい五月蝿い煩いウルサイうるさい五月蝿い煩いウルサイうるさい五月蝿い煩いウルサイ
うるさい五月蝿い煩いウルサイうるさい五月蝿い煩いウルサイうるさい五月蝿い煩いウルサイ
うるさい五月蝿い煩いウルサイうるさい五月蝿い煩いウルサイうるさい五月蝿い煩いウルサイ
うるさい五月蝿い煩いウルサイうるさい五月蝿い煩いウルサイうるさい五月蝿い煩いウルサイ
うるさい五月蝿い煩いウルサイうるさい五月蝿い煩いウルサイうるさい五月蝿い煩いウルサイ
うるさい五月蝿い煩いウルサイうるさい五月蝿い煩いウルサイうるさい五月蝿い煩いウルサイ
うるさい五月蝿い煩いウルサイうるさい五月蝿い煩いウルサイうるさい五月蝿い煩いウルサイ
うるさい五月蝿い煩いウルサイうるさい五月蝿い煩いウルサイうるさい五月蝿い煩いウルサイ」
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 22:46:27.76 ID:uHmol1AU0
――――コレイジョウオトヲダスナ。
真紅の月が女帝のように夜空を支配していた。
星々はその女帝の足元に跪き、本来の輝きを潜めている。
少女はその日、『生まれ変わった』
気が付けば血塗れた部屋でぼんやりと座っていた。
耳障りの原因は薄切りのバラ肉みたいにスライスされて部屋中あちこちにへばり付いていた。
無音の世界が広がっていた。私だけの場所。私だけの現実。
これを望んでいた。
強く。何よりも強く。
何を犠牲にしてもこの無音の世界が欲しかった。
静寂。
嗚呼素晴らしい。
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 22:49:10.29 ID:uHmol1AU0
――――コレイジョウオトヲダスナ。
真紅の月が女帝のように夜空を支配していた。
星々はその女帝の足元に跪き、本来の輝きを潜めている。
少女はその日、『生まれ変わった』
気が付けば血塗れた部屋でぼんやりと座っていた。
耳障りの原因は薄切りのバラ肉みたいにスライスされて部屋中あちこちにへばり付いていた。
無音の世界が広がっていた。私だけの場所。私だけの現実。
これを望んでいた。
強く。何よりも強く。
何を犠牲にしてもこの無音の世界が欲しかった。
静寂。
嗚呼素晴らしい。
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 22:50:03.69 ID:uHmol1AU0
(* ω *)「ウヘ」
笑いが、漏れた。
音が、零れた。
自分の口から、喉から、体から。
ダメじゃん。まだ残ってるジャン。音が。
ゆっくりと立ち上がる。そのまま小さな小さな可愛い小汚いキッチンへ。
流しの下の扉を開ければホラ、鈍く光る包丁さんが。
掌の上でくるくると回す。この部屋唯一の窓から入るブラッディムーンの輝きを写して踊る。
そしてそのまま、己の喉へと
突き立てた。
ミュートの世界、完成。
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 22:52:48.12 ID:uHmol1AU0
血塗れた部屋に
人を外れた子供が一人
他の肉片に紛れて横たわる。
人生初の幸福をかみ締めながら死に至ろうとしている。
「おやおや、いけませんねぇ」
そこに土足で踏み込む者が。蹂躙。幸福の消滅。
出て行け! 死にかけの少女は焦点の合わなくなった瞳で自分だけの世界に侵入してきた侵略者(プレデター)を睨む。
「あはは、嫌われたものですね。でも、大丈夫ですよ。私達は『味方』ですから」
ゆっくりと血溜りの中の少女に近づくソレは、彼女と同い年くらいの少年だった。
( <●><●>)「さぁ、いきましょう。私たちの還るべき場所へ」
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 22:55:12.44 ID:uHmol1AU0
( ><)「おわったんですか?」
ビロードに声を掛けられてちんぽっぽはハッと我に返る。
また少しぼんやりしていたらしい。
外法の使用回数に比例してこの時間が長くなっている気がする。
だが、それも問題にするほどのものでもないだろう。
(*‘ω‘ *)「私に掛かればこんなもんだっぽ」
無い胸をエッヘンと張り、少女は踏ん反り返った。
あの時包丁を突き立てた喉には人工声帯が埋まっている。
マフラーの下にあるスピーカーから人工声帯の振動数を読み取り声を発している。
故に常に合成音声のように平坦な声しか出すことが出来ない。
( <●><●>)「さ、二人とも。いきますよ」
ワカッテマスはちんぽっぽの足元に転がる警備員の死体を一瞥もせず、二人の手を取って歩き出した。
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/12/28(月) 23:03:38.47 ID:uHmol1AU0
( ><)「えへへ、僕らいつまでもいっしょなんです!」
(*‘ω‘ *)「あったりめぇだっぽ!『邪魔者(ソフィスト)』を皆殺しにして私たちの世界をつくるんだっぽ!」
( <●><●>)「そのための材料の一つが、あそこにありますよ。AAニュー速支部研究棟。」
(*‘ω‘ *)「全部殺していいんだっぽ?」
( <●><●>)「ダメです。あそこでは戦闘は極力避けますよ。面倒ですからね色々と」
( ><)「外法はこっちではあんまり強くないから仕方ないんです」
(*‘ω‘ *)「あーあー早く『お母様』に会いたいっぽ」
( <●><●>)「もうすぐですよ。もうすぐ終わりが始まります。そうすればきっと会えますよ」
少年少女は楽しそうに語り合う。自分達が地獄の死者だと理解しながら。
……To Be Continued
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