- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 08:00:30.20 ID:47tuZ+kNO
- 『アクアリウムフィッシュ、選手の交代をお知らせします。
バッター、早良に代わりまして、毒田。背番号、7』
閑散とした球場にウグイス嬢の声が鳴り響く。
もはや聞き慣れた俺のテーマ曲が流れる。
閑散としているスタンドからはそれでも歓声が聞こえる。
ツーアウトランナー二塁。
ピッチャーの代打で俺が告げられた。
( ´ー`)「……」
マウンドでは47歳を迎えた貫禄のおじいちゃん、白根が立っている。
かつての大投手ももはや球のキレも球威も見る影もない。
('A`)「……」
今は消化試合で登板するだけの穀潰しだ。
こんなピッチャー簡単に打てる。
打席に入って数回バットを振る。そして白根を睨みつけた。
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 08:07:13.25 ID:47tuZ+kNO
- ( ´ー`)「……」
一球目。
ぎこちないフォームから投げ込まれたボールは力なくまんなかへ入ってくる。
('A`)「一球目を見る必要もねえや」
思い切りバットを振り切る。
そしてバットがボールを捉える瞬間――ボールが、微妙に変化した。
('A`)「!?」
しかし、バットは止まらない。
ボールを捉えきれず、上っ面を叩いてしまった。
転々とショートに転がっていき――ファーストに転送された。
('A`)「……」
ゲームセット。
スタンドからは相変わらず閑散としたため息が起こる。
こうして我がアクアリウムフィッシュ、及びそこに属する毒田剛の2009年シーズンは終わりを告げた。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 08:08:12.46 ID:47tuZ+kNO
('A`)は野球選手のようです
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 08:13:53.77 ID:47tuZ+kNO
- ('A`)「ふぃー」
アクアリウムフィッシュ。
球団の歴史は古いが、大した実績を残していない不人気球団だ。
特に最近の弱小っぷりは折り紙付き。
チームは音の速さで指定席の最下位を確定した。
当然そんなチームに金があるはずもなく。
('A`)「……はぁ」
契約更改でもらった紙をピラピラとたなびかせる。
その紙には前年度の年俸より20%ほどOFFされた金額が並んでいた。
一足早い俺だけの新春バーゲンセールだ。
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 08:21:11.84 ID:47tuZ+kNO
- しょうがないことではあった。
前半戦、俺は怪我で開幕から出遅れた。
そして開幕から1ヶ月遅れてチームに合流すると、早くも最下位にいた。
('A`)「……そんなんでモチベーション上がるかっつーの」
結局最後までやる気が起きなかった俺は打率.287、本塁打8、打点37で2009シーズンを終えた。
前年度3割15本を打った俺からすると低い数字だ。
('A`)「……ふぁー」
考える。俺は高卒でプロに入って6年。来シーズンは7年目だ。
一応成績はどこに出しても恥ずかしくない。
しかしチームはどこに出しても恥ずかしい。
弱すぎる。――ここでは自分の力を発揮できない。
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 08:26:19.74 ID:47tuZ+kNO
- ('A`)「……」
ベッドにごろんと寝転がる。
俺には高校から夢があった。一つはプロになること。これは叶った。
もう一つ。日本シリーズで超満員のスタンドを俺のプレーで沸かせること。
('A`)「……」
しかし実際はどうだ。
ドラフトで3球団競合されたまではよかった。
しかしくじを当てたのは超弱小球団アクアリウムだった。
拒否、という考えはなかった。時間をムダにしたくなかったからだ。
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 08:35:09.90 ID:47tuZ+kNO
- アクアリウムに入団した俺。
そこでの生活は俺が思い浮かべていた華々しいプロ生活とはかけ離れていた。
やる気の無い練習をダラダラ続ける先輩方。
GWの試合でも閑散としたスタジアム。
ポツポツといる観客からも聞こえてくるのはヤジばかり。
('A`)「……内藤、どうしてんのかな」
同じ高校からプロに入った親友を思い出す。
やつは人気球団ニュー速ヴィッパーズに入団した。
が、内藤の目立った活躍は聞かない。
('A`)「ああ―やだやだ。おらこんなチームいやだぁ」
ベッドの上で駄々をこねる。
それは決して叶わない夢だ。せめて、FA資格を取るまでがんばろう……
(^o^)v-~~~「君、トレードね」
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 08:41:34.87 ID:47tuZ+kNO
- ('A`)「へ?」
間の抜けた声を出す。
いきなりオフに呼び出されたかと思うと球団幹部からトレードの通告があった。
つーかタバコ吸うな。
(^o^)v-~~~「相手はニュー速。手続きやらなんやらは追って連絡するから。
じゃ、新天地でも頑張ってね」
('A`)「はあ……わかりました」
車で家に帰る。
運転中はまだトレードを通告されたのがわからずボーっとしていた。
('A`)「……」
自宅に帰ってベッドに座ってもなんの感慨も沸かなかった。
やはり、チームを出たい出たいと思っていてもいざ出ていくとなると寂しい。
俺もプロの端くれだ。俺の力でこのチームを盛り立てたいという気持ちはあった。
その気持ちが実を結ぶことは無かったが。
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 08:46:02.09 ID:47tuZ+kNO
- ('A`)「……」
結局気持ちの整理はつかなかった。
毒田剛、プロ野球選手7年目。
所属、ニュー速ヴィッパーズ。背番号、37。
- 17 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 08:49:12.42 ID:47tuZ+kNO
- ※注意書き
・ながらです。投下の遅さはご勘弁
・俺の野球知識は野球ch、パワプロで構成されています。ちゃんとした知識はありません。ご勘弁
・今から飯食ってきます。落ちたらご縁がなかったということで
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 08:56:34.53 ID:47tuZ+kNO
- ('A`)毒田剛
二塁手 25歳 7年目
通算成績
483試合 打率.274 本塁打24本 打点176
年俸
5400万
( ^ω^)内藤地平線
投手 25歳 7年目
通算成績
32試合 5勝4敗 防3.57
年俸
1200万
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 09:19:27.21 ID:47tuZ+kNO
- ('A`)「……」
今日は自主トレの日だ。
集まるのは3人。全員同じ高校出身だ。
セッティングはほとんど俺がした。
同学年ながら間抜けと後輩だ。ここは俺がしなければならないだろう。
( ^ω^)ノシ「おいすー」
( ゚∀゚)ノシ「お久しぶりでーす!」
('A`)「……」
('A`)ノシ
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 09:23:11.21 ID:47tuZ+kNO
- ( ゚∀゚)長岡譲二
遊撃手 右投げ右打ち
24歳 2年目
所属 シベリアレールウェイズ
通算成績
一軍出場なし
イースタンリーグ首位打者・盗塁王
年俸 700万
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 09:31:26.08 ID:47tuZ+kNO
- 3人揃ったところで借りた球場に入る。
小さい市民球場だが1月のこの時期には相応だろう。
柔軟やランニングをする間世間話に花を咲かせる。
( ^ω^)「それにしてもびっくりしたお。ドクオがヴィッパーズに来るなんて」
('A`)「ああ、俺もびっくりだよ」
( ゚∀゚)「じゃあこれで3人みんな同じリーグなんですね!」
('A`)「ああ、そうだな」
俺のトレードの相手はヴィッパーズの先発投手だった。
俺と同じく高卒7年で35を挙げた投手だ。
投手陣崩壊していたアクアリウムにはきっと救世主となるだろう。
対してヴィッパーズは去年までセカンドを守っていた選手がFA移籍。
目立った若手もおらず俺に白羽の矢が立ったと言うわけだ。
- 32 名前:訂正 投稿日:2009/04/25(土) 09:33:38.68 ID:47tuZ+kNO
- 3人揃ったところで借りた球場に入る。
小さい市民球場だが1月のこの時期には相応だろう。
柔軟やランニングをする間世間話に花を咲かせる。
( ^ω^)「それにしてもびっくりしたお。ドクオがヴィッパーズに来るなんて」
('A`)「ああ、俺もびっくりだよ」
( ゚∀゚)「じゃあこれで3人みんな同じリーグなんですね!」
('A`)「ああ、そうだな」
俺のトレードの相手はヴィッパーズの先発投手だった。
俺と同じく高卒7年で35勝を挙げた投手だ。
投手陣が崩壊していたアクアリウムにはきっと救世主となるだろう。
対してヴィッパーズは去年までセカンドを守っていた選手がFA移籍。
目立った若手もおらず俺に白羽の矢が立ったと言うわけだ。
( ^ω^)「おかげでチャンスが回ってきたお」
('A`)「チャンス?」
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 09:42:18.51 ID:47tuZ+kNO
- ( ^ω^)「そうだお。トレードされた選手の他にもFAで出た人もいるお」
('A`)「……」
( ^ω^)「今年こそは一軍定着するお」
確かな気持ちが、そこには宿っていた。
それは俺がアクアリウムに所属していた時になくしてしまったものかもしれない。
( ゚∀゚)「俺も今年は一軍いきますよ!」
長岡は万年二位と三位をうろうろしているシベリアレールウェイズの期待の若手だ。
『一年目はファームで育てる』という方針らしく去年は一軍出場はなかった。
が、高校時代甲子園を沸かせたバッティングセンスは大学で更に伸びたらしい。
イースタンリーグで首位打者と盗塁王を穫った。
一軍定着も時間の問題だろう。
問題は。
( ^ω^)
こいつだ。
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 09:48:14.03 ID:47tuZ+kNO
- 内藤はMAX155キロの速球と大きく曲がるカーブ、そして胸元にくいこむシュートを持っている。
この文章を見れば一流投手のように見えるだろう。
しかしこいつには一流を二流にしてしまうマイナスポイントがあった。
チキンなのだ。
('A`)「……」
あれはいつだったろうか、交流戦で一度だけ内藤と対戦したことがあった。
当時の俺はスランプに陥り、何を振ってもバットに当たらない日々が続いた。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 09:56:07.11 ID:47tuZ+kNO
- その日先発していた内藤は4回をパーフェクト。
誰もが内藤の素質の片鱗を見たはずだ。
しかし5回。フォアボールでランナーを得点圏に送ると途端に崩れた。
ストライクが入らず、入っても甘いボールを痛打される。
そして一点差満塁のところで俺に回ってきた。
('A`)(内藤……どうした?)
当時の俺は自分がスランプにも関わらずそんな心配をしていた。
素人が見てもあの崩れ方は異常だ。
(;^ω^)
緊張したフォームで投げられた球はカーブすっぽ抜けの中速球。
真ん中に来たそのボールを思い切り叩くとボールはライトスタンドに消えた。
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 10:00:44.83 ID:47tuZ+kNO
- ('A`)「……」
ダイヤモンドを周りながら内藤を見た。
内藤は虚ろな顔でボールが消えたライトスタンドを見続けていた。
('A`)「……」
結局内藤はそれ以降敗戦処理を任され、そこでもピンチに弱い面を見せた。
ランナーがいなければ素晴らしい投球をするのに、と思う。
対して俺はそこからスランプを抜けブレイク。
その年キャリアハイの成績を残した。
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 10:06:16.96 ID:47tuZ+kNO
- そしてアップが終わり、各々練習に入る。
こうして3人で練習するとひたすら甲子園を目指した高校時代を思い出す。
( ^ω^)「ドクオ。打席に立ってくれお」
('A`)「おう」
内藤に促されるまま打席に入る。
まだ投手は肩はあまりできていないはずだが。
長岡も自分の練習を中断してキャッチャーの準備をする。
( ^ω^)「本気で打ってくれお」
('A`)「……ああ、わかった」
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 10:15:25.95 ID:47tuZ+kNO
- ( ^ω^)「……」
内藤がしなやかなフォームからボールを投げる。
ストレートだ。しかし球筋を見るため一球目は見逃す。
( ゚∀゚)「ストライクです」
キャッチャーをしている長岡がストライクを宣告する。
コースは外角低め、球速は130そこそこだろうか。
('A`)「……」
2球目。内藤の得意球であるカーブ。
またも外角に落ちるカーブをカットする。
これでツーストライク。追い込まれた。
('A`)(何がくる? 一球ボールを見せるか一気に来るか……)
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 10:24:43.59 ID:47tuZ+kNO
- 3球目、内藤の右腕から投じられたボールは真ん中低めへ。
打てる。そのコースは毒田が得意としているコースだ。
親友とはいえ容赦はしない。バットをコンパクトに、力強く振る。
乾いた音が鳴り響いた。
( ゚∀゚)「……三振です」
内藤の放ったボールは長岡のミットに吸い込まれた。
自分があのコースの130キロを逃すはずはない。
だとすれば。
('A`)「変化球……フォークか?」
( ^ω^)「当たりだお」
( ゚∀゚)「すげーフォークでしたよ。急に落ちてきましたもん」
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 10:32:58.07 ID:47tuZ+kNO
- ('A`)「……新球種か」
高校でも、プロでもフォークを投げる内藤は見たことがなかった。
その内藤がこれほどの質のフォークを投げるということはよっぽど練習してきたのだろう。
( ^ω^)「そうだお。これが、僕の切り札だお」
メンタル的な問題はまだ残されている。
それがわかっているからこそ俺に勝負を挑んだのだろう。
フォークでも勝負ができると自信をつけるために。
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 10:43:18.25 ID:47tuZ+kNO
- 日が経つのは早いものだ。
野球ばかりやっている俺たちは時間の流れが特に早い。
あっという間にキャンプインの日が来た。
球春到来というものだ。
('A`)「あばば」
( ^ω^)「大丈夫だお。みんないい人たちだから」
俺にとっては新しいチームへ初めて飛び込む日だ。
内藤と一緒にチームの集合場所に向かう。
( ^ω^)「ちわっーす」
('A`)「おお……ちわっす」
集合場所にはチームの先輩であるスタープレイヤーが並んでいた。
ヴィッパーズとはリーグが違ったので面識どころか対戦もしたことが無い人がほとんどだ。
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 10:50:19.53 ID:47tuZ+kNO
- ('A`)「元三冠王の諸本に、20勝投手高岡……ヴィッパーズすげー」
( ^ω^)「いい人たちだお。諸本さーん!」
('A`)「ちょ」
内藤の声に気づきこちらに歩いてくる諸本。
その大柄な体はプロ野球選手の中でも特にでかい。
(´・ω・`)「やあ、内藤。久しぶりだね」
( ^ω^)「お久しぶりですお!」
(´・ω・`)「今年こそは内藤に期待してるから。ガンバってね」
( ^ω^)「はいですお!」
(´・ω・`)「それでこちらが……毒田くん?」
('A`)「は、ひゃい!」
突然話題を振られたので焦って噛んでしまった。
- 53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 10:55:57.75 ID:47tuZ+kNO
- (´・ω・`)「噂は聞いてるよ。いいバッターってね」
('A`)「い、いえそんな……」
(´・ω・`)「謙遜しなくていい。それに言うじゃないか」
('A`)「?」
(´・ω・`)「バッターは、いばったー方がいい。ってね」
('A`)
( ^ω^)
(´・ω・`)
何この人。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 11:00:54.58 ID:47tuZ+kNO
- (´・ω・`)諸本信彦
外野手 36歳 13年目
右投左打
通算成績
1371試合 率.304 本302 点908
MVP2回 首位打者2回 最多安打1回 本塁打王2回 打点王3回 三冠王1回
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 11:07:45.19 ID:47tuZ+kNO
- (´・ω・`)「なんちゃって」
('A`)
( ^ω^)
('A`)
( ^ω^)「ははは」
(´;ω;`)「ちくしょう……」
諸本さんは滑ったことがよっぽど悔しかったのか、泣きながらどこかへ消えてしまった。
( ^ω^)「まあ、あういう人だお」
('A`)「驚いたな……もっとストイックな人かと思ってたけど」
( ^ω^)「野球に関してはストイックだお。それ以外はギャグ親父だけど」
<聞こえてるぞ内藤ー! 泣くぞー!
( ^ω^)「ははは」
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 11:15:09.58 ID:47tuZ+kNO
- ( ^ω^)「えーと後は……」
『ニュー速ヴィッパーズの皆様、お時間ですのでバスへどうぞ』
( ^ω^)「ありゃ、時間だお。ダジャレを聞いてたらこんな時間になっちゃったお」
(;'A`)「仮にも先輩だろ?」
( ・∀・)「いいのいいの。あいつはそういうキャラだから」
('A`)「あ……」
内藤と話していると見慣れた(自分が一方的に知っているだけだが)顔の人が話しかけてきた。
ヴィッパーズが誇る不動のショートストップ、茂等選手だ。
( ・∀・)「いよ。内藤、毒田」
( ^ω^)「こんにちはですお、茂等さん」
(;'A`)「ちわっす」
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 11:19:31.96 ID:47tuZ+kNO
- ( ・∀・)茂等和宏
遊撃手 36歳 14年目
右投右打
通算成績
1415試合 率.289 本53 点388 盗235
盗塁王1回 ゴールデングラブ8回
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 11:25:49.62 ID:47tuZ+kNO
- ( ・∀・)「新しく入ってきたセカンドがどんなんか気になってたけど」
なんだか艶めかしい視線を茂等さんから感じる。
端正な顔立ちは男というよりもむしろ中性的だ。
しかし時刻はまだ朝。そんな時間から薔薇族的な行いは……!
('A`)「アッー」
茂等さんにケツを触られた。
嫌だ! でも茂等さんなら……いいかも!
( ・∀・)「うん、よく鍛えてるな。感心感心。じゃ、後で」
('A`)「……あれ?」
俺は今、何を考えていたのだろうか。
- 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 11:38:32.68 ID:47tuZ+kNO
- >>70おおざっぱに
ドクオ
CDDCC
内藤
155km/h カーブ4 フォーク3 シュート3
ピンチ1 ランナー2 クイック2
諸本
CBDDD
PH チャンス4
茂等
DDABA
AH 盗塁4
飯食ってきます
- 99 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 12:56:37.55 ID:RIaurTil0
- そして、バスに乗り飛行機に乗り歓迎のセレモニーを受けてホテルで一泊した次の日。
俺はもちろんキャンプに参加するためにグラウンドへ繰り出した。
('A`) 「……」
今、俺は圧倒されている。
何に? ヴィッパーズの練習にだ。
(´・ω・`) 「おら、てめーらちゃんと声出せ!!」
『うぃーい!!』
内藤が諸本さんのことを「野球に関してはストイック」と言ったのは本当だったらしい。
今、ランニングの先頭に立ってみんなを鼓舞しているのはダジャレ親父ではなく三冠王の姿だ。
- 102 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 13:02:19.87 ID:RIaurTil0
- 違う。アクアリウムの練習とは質が全く異なるのだ。
逆に俺とトレードされた選手は今頃あまりの怠惰さにびっくりしているのではないだろうか。
全体練習が済むと、今度は個別の練習に入る。
( ・∀・) 「お前、俺と守備練な」
茂等さんの鶴の一言で俺の今日のメニューは決定された。
俺もちょうど茂等さんとの連携を確かめておきたかったからちょうどいいと思った。
('A`) (それに、俺の弱点は守備だからな)
去年の俺の守備率は.959。
トンネルしたり悪送球だったりポロリだったり去年はとにかくいろんなエラーをやらかした。
それゆえ守備固めを出されることが多かった。ファーストへのコンバートの話も出ていたこともあった。
- 103 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 13:06:45.28 ID:RIaurTil0
- (;'A`) 「はぁーっ、はぁーっ」
息が切れている。なぜか。ずっと茂等さんの練習につきあっているからだ。
朝の10時に始まって1時間の昼休憩をはさんでまた練習。
人並みのスタミナはあると自負していたが茂等さんについていくだけでやっとだった。
/ ,' 3 「こりゃ毒田、足が動いてないぞ」
(;'A`) 「す、はぁーっ、すいません!!」
( ・∀・) 「おいおい、アクアリウムの正二塁手もこんなもんか?」
野手コーチに怒られる。
茂等さんは額に汗を浮かべてはいるがまだ余裕がある様子だ。
- 107 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 13:14:36.58 ID:RIaurTil0
- / ,' 3 「よーし、そろそろ終わりだ」
コーチがそう言ったのはもうそろそろ陽が傾きかけた時間だった。
疲れた。久しぶりにそんな感情を抱いた。アクアリウムのキャンプ一回分をこなした気分だ。
( ・∀・) 「おー、お疲れ。疲れたか?」
(;'A`) 「……ええ、まあ」
( ・∀・) 「ま、そりゃそうだな。俺も疲れたし」
そう言いながら宿舎に戻ろうとする。
……が、その帰り道。
(;'A`) 「なんじゃこりゃあ……」
道いっぱいに、ファンがいた。
みんながみんな手を上げている。その手にはマジックとサイン色紙が用意されている。
出待ちというやつだ。アクアリウムでもいることはいたがこんなに大勢のファンを見るのは初めてだ。
( ・∀・) 「んじゃ、とっととサインして帰るか」
(;'A`) 「……そうっすね」
疲れたし、無視して帰ってシャワーでも浴びたいのが本音だが先輩がしている以上サインをしないわけにはいかない。
結局ファンの波がひと段落したのはそれから30分ぽど経ったときだった。
- 112 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 13:23:51.03 ID:RIaurTil0
- キャンプ中は特に時がたつのが速い。
文字通り、一日中白球を追っているからだ。
程度に違いさえ有れど、プロまで来ている人間は相当の野球狂だ。
/ ,' 3 「よし、終わり」
(;'A`) 「ありがとうございました」
( ・∀・) 「あしたー」
それでも茂等さんとの特守はまだしんどい。
このあとファンにサインをしなければならないかと思うとさらにしんどい。
( ・∀・) 「まだ疲れてんのかいな」
(;'A`) 「いや、あの特守はさすがに……」
( ・∀・) 「かー、弱いねえ。俺がお前ぐらいの時はもっとやったけどな」
(;'A`) 「嘘!?」
あれ以上とは……あの量の特守でも一回吐きそうになったのに。
やはり守備の人は違うな……と思っていたその時。
- 114 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 13:28:19.68 ID:RIaurTil0
- ('、`*川 「あの、少しいいですか?」
( ・∀・) 「はいはい、なんですか?」
女性が話しかけてきた。
グラウンドのすぐ外で待って、さらに首から下げたカードを見ると記者か何からしい。
('、`*川 「週刊野球の伊藤です。今、『新天地で活躍する男たち』という特集の取材をしているのですが……」
('A`) 「え、俺ですか」
茂等さんは14年ヴィッパーズ一筋の生え抜き選手だ。
とするとその特集に当てはまるのはトレードされた俺だろう。
( ・∀・) 「ちぇー、なんだ。俺じゃないのか。毒田、明日オフだし取材受けろよ」
('A`) 「え、はあ」
('、`*川 「受けてくれますか?」
('A`) 「ええ、まあ」
- 117 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 13:36:15.38 ID:RIaurTil0
- ('、`*川 「よかった。では、早速」
そう言って伊藤さんはボイスレコーダーを取りだした。
取材なんて受けるのは久しぶりなので緊張する。
( ・∀・) 「あ、ちょっと待って。毒田、来い」
('A`) 「?」
茂等さんは俺を呼び寄せて耳元で囁いた。
正直何かに目覚めそうになるからやめてほしいのだが。
( ・∀・) 「俺の今の嫁さんは元週刊プロ野球の記者だった」
(゚A゚) 「!」
( ・∀・) 「がんばれ」
(゚A゚) 「イエス! ボス!」
( ・∀・) 「じゃあ先帰っとくから」
そう言って茂等さんは宿舎へ帰っていった。
- 118 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 13:42:12.87 ID:RIaurTil0
- ('、`*川 「よろしいですか?」
('A`) 「はい」
伊藤さんはそれを聞くとボイスレコーダーのスイッチをオンにした。
('、`*川 「新天地であるヴィッパーズの居心地はどうですか?」
('A`) 「そうですね。同級生の内藤がいろいろと世話してくれて助かりました。皆さんいい人達で安心です」
('、`*川 「チーム全体の雰囲気はどうでしょうか?」
('A`) 「そうですね。諸本さんを中心にとても熱気が溢れているチームだと思います」
('、`*川 「毒田さんは二塁手ですが現在ヴィッパーズは不動のセカンドはいません。これはどう思いますか?」
('A`) 「誰がいるかいないかは関係ありません。どんな状況でも全てにおいて認められるレギュラーとなりたいです」
('、`*川 「そうですか。では、最後にファンの皆さんへのメッセージをお願いします」
('A`) 「君が好きだ」
- 123 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 13:46:39.54 ID:RIaurTil0
- (゚、゚*川 「!?」
(゚A゚) 「!!??」
なんだ。今俺は何を口走った。
なんだそれは。なんだそれは。そんなところから始まる恋なんてねーよ。
こんなんだからプロになっても女が寄り付かなくてあ、でもそれは顔のせいあばばばばばばばば
('、`*川 「え、えっと……」
(゚A゚) 「すいません! ファンの方にですね! がんばりますので応援よろしくお願いします! 終わり!」
そう言って記者の伊藤さんを置いて宿舎へとダッシュした。
茂等さんを見て満足したのかもうファンの人はいなかった。
この時、俺はきっとシーズン中よりも速く走っていたと思う。
- 126 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 13:51:41.70 ID:RIaurTil0
- (A) 「あばばばばばばばばばばばばばばばっばばばばばばばばばば」
宿舎のロビーで奇声を発しながら号泣する男が一人。
毒田剛、25歳。さめざめと、泣いた。
(;^Д^) 「……なにしてんだ、ありゃ」
<;ヽ`∀´> 「……アクアリウム式の、精神統一法?」
(´<_`;) 「アクアリウム……謎だな……」
新しいチームメイトである人たちの奇異のが気にならないくらい。
俺はこの日涙を流した。
- 129 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 14:00:12.64 ID:RIaurTil0
- ( ^Д^) 宝笑児
一塁手 27歳 10年目
592試合 率.297 本98 点346
本塁打王1回
CAEEF チャンス4 PH
<ヽ`∀´> 朴荷駄
三塁手 33歳 6年目
542試合 率.276 本123 点341
DADDD PH
(´<_` ) 流石弟者
投手 24歳 6年目
146試合 14勝 13敗 1S
147km/h スタE コンB
フォーク3 スライダー2 チェンジアップ3 シュート2
- 130 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 14:01:21.53 ID:RIaurTil0
- ( ^Д^) 宝笑児
一塁手 27歳 10年目
592試合 率.297 本98 点346
本塁打王1回
CAEEF チャンス4 PH
<ヽ`∀´> 朴荷駄
三塁手 33歳 6年目
542試合 率.276 本123 点341
DADDD PH
(´<_` ) 流石弟者
投手 24歳 6年目
146試合 14勝 13敗 1S 防4.17
147km/h スタE コンB
フォーク3 スライダー2 チェンジアップ3 シュート2
- 131 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 14:04:59.39 ID:RIaurTil0
- ('A`) 「さー今日も練習がんばりましょー」
翌日、すっかり出るものも出切った。
なんだか今日は晴れ晴れとした気分だ。
こんな気分なら4割だろうが5割だろうが打てそうな気がする。
( ^ω^) 「おー、今日はドクオ気合いがはいってるおー」
ダッシュなど走るメニューを多くした今日。
頬がなぜかいつもより濡れたが、気にしない。
('、`*川 「……」
- 132 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 14:07:18.78 ID:RIaurTil0
- ('A`) 「あー、今日はオフなのに気合入っちゃったなー」
( ^ω^) 「びっくりしたお。練習嫌いなドクオがオフ返上で練習なんて」
('A`) 「まあな。意識変革だよ意識変革」
( ^ω^) 「あ」
('A`) 「?」
( ^ω^) 「茂等さんが言ってたけど週刊プロ野球の記者さんとはどうなったんだお?」
- 135 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 14:08:20.55 ID:RIaurTil0
- _ _ .' , .. ∧_∧
∧ _ - ― = ̄  ̄`:, .∴ ' ( )
, -'' ̄ __――=', ・,‘ r⌒> _/ /
/ -―  ̄ ̄  ̄"'" . ’ | y'⌒ ⌒i
/ ノ | / ノ |
/ , イ ) , ー' /´ヾ_ノ
/ _, \ / , ノ
| / \ `、 / / /
j / ヽ | / / ,'
/ ノ { | / /| |
/ / | (_ !、_/ / 〉
`、_〉 ー‐‐` |_/
↑ドクオ ↑内藤
- 137 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 14:12:19.04 ID:RIaurTil0
- (;A;) 「うわあああああああああああああああああああああああん!!」
( ゚ω゚) 「ちょ・・おま・・殴るのは・・反則・・」
なんなのだ。なんなんだあの空気の読めない25歳は。
ちょっと考えたら練習嫌いな俺がオフに練習するかどうかわかるはずじゃないか。
そんなんだからチキンなんだ。そんなんだからチキンなんだ!
(;A;) 「うわあああああああああああああああああああああああん!!」
('、`*川 「あっ」
道行く人を全て遮って走る。
速く、速く帰りたい。安息の地へと。
- 140 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 14:19:10.10 ID:RIaurTil0
- (A) 「あばばばばばばばばばばばばばばばっばばばばばばばばばば」
宿舎のロビーで奇声を発しながら号泣する男が一人。
毒田剛、25歳。さめざめと、泣いた。
(;´∀`) 「……何あれ」
/ ,' 3 「選手によるとアクアリウム式の精神安定法だとか」
(;´∀`) 「しばらく見ないうちにアクアリウムもすごいことになってるな……」
( ´∀`) 喪名栄治
監督 62歳 24年目
389試合 164勝 110敗 27S 防3.67
最多勝1回 最優秀防御率2回 沢村賞1回
座右の銘「なせばなる」
/ ,' 3 荒巻徳春
守備走塁コーチ 61歳 22年目
1552試合 率.245 本93 点479
ベストナイン2回 ゴールデングラブ7回
- 144 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 14:30:12.58 ID:RIaurTil0
- 時は流れて第3クール。ここからは選手にとってまさに競争と言われる。
開幕時1軍に登録されるのはわずか28名。今1軍キャンプに帯同しているのは約40名。
ここからの仕上がりしだいで12名もの選手が開幕2軍を余儀なくされるのだ。
( ^ω^) 「……」シュッ
( <●><●>) 「いい球着てますよ!」
ブルペンで己の球を磨く者。
(;'A`) 「くっ……ああっ! もいっちょこい!!」
/ ,' 3 「足が動いてないぞ!」
グラウンドで弱点を必死で修正する者。
(´・ω・`) 「必ず……復活してみせる」
( ・∀・) 「できるだろ、お前なら」
今年に、かける者。
全てを飲み込んで、紅白戦が始まる。
- 149 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 14:35:18.56 ID:RIaurTil0
- ( <●><●>) 和手枡一郎
捕手 25歳 3年目
210試合 率.201 本2 点35
FFDCD
(´・ω・`) 諸本信彦
昨シーズン成績
39試合 率.276 本3 点15
- 150 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 14:40:25.37 ID:RIaurTil0
- ( ´∀`) 「皆様お疲れ様です。キャンプもいよいよ終盤に差し掛かります」
練習後、喪名監督の挨拶が始まる。
選手たちの表情は、硬い。
( ´∀`) 「明日から紅白戦を執り行います。メンバー分けはあす発表します。
現在ここにいる選手は42人。1軍枠は28人」
('A`) 「……」
( ´∀`) 「今まで積み重ねてきたものを私達に見せてください」
( ^ω^) 「……」
( ´∀`) 「去年の成績は、関係ありません。レギュラーも全て白紙と思うこと」
(´・ω・`) 「……」
( ´∀`) 「以上、解散」
監督のその言葉で三々五々選手たちが散っていく。
だがそこにとどまったまま動かない選手が2人いた。
- 153 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 14:43:11.29 ID:RIaurTil0
- ('A`) 「……」
( ^ω^) 「……」
毒田と内藤。
一方は新天地で活躍を虎視眈々と狙う者。
一方は背水の陣を敷き、この年に懸ける者。
('A`) 「……どっちが残っても、恨みっこなしだぜ」
( ^ω^) 「当たり前だお」
内藤が拳を突き出す。
毒田も、それに呼応する。
ごつん、と2人の拳が夕陽の中でぶつかり合った。
- 172 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 14:59:28.22 ID:RIaurTil0
- ※野球はいっぱい人が出てくるため野球板のAAを使用します。ご了承あれ。
紅軍
1 遊 茂等 ( ・∀・)
Av.245 HR4
2 二 毒田 ('A`)
Av.287 HR8
3 左 擬古 (,,゚Д゚)
Av.274 HR17
4 一 諸本 (´・ω・`)
Av.276 HR3
5 右 濱中 ( ‘ 〜‘)
Av.287 HR13
6 三 朴荷駄 <ヽ`∀´>
Av.248 HR8
7 中 吉野 (´゚ぺ`)
Av.279 HR7
8 捕 和手枡 ( <●><●>)
Av.179 HR0
9 投 高岡 从 ゚∀从
20勝7敗 防2.37
- 177 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 15:08:00.52 ID:RIaurTil0
- 白軍
1 中 川島 (K‘ー`)
Av.287 HR9
2 左 魔将 J( ゚_ゝ゚)し
Av.299 HR23
3 一 宝 ( ^Д^)
Av.312 HR33
4 右 戸田 (  ̄・・ ̄)
Av.200 HR12
5 三 松田 (゛ー゛)
Av.245 HR17
6 捕 比木 (-_-)
Av.278 HR21
7 遊 海埼 ( ”ー”)
Av.231 HR2
8 二 布佐 ミ,,゚Д゚彡
Av.500 HR0
9 投 内藤 ( ^ω^)
0勝1敗 防27.0
- 178 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 15:11:05.44 ID:RIaurTil0
- ('A`) 「内藤が先発……」
/ ,' 3 「それほど期待をしている、ということだ」
('A`) 「コーチ……」
(´・ω・`) 「裏を返せば今年期待を裏切れば……ということだ」
('A`) 「……」
先攻は紅軍。俺たちだ。
マウンド上では内藤がピッチング練習をしている。
キャンプでの投げ込みが効いたのだろう、球は自主トレのときより格段に良くなっている。
きっと今日はフォークも使ってくるだろう。
- 182 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 15:16:03.49 ID:RIaurTil0
- ( ´∀`) 「さて……いよいよこの日が来てしまいましたね」
N| "゚'` {"゚`lリ 「選手たちのモチベーションも上々です」
( ´∀`) 「そうですか。……毎年ですが、やはり選手をふるいにかけるのは辛い」
N| "゚'` {"゚`lリ 阿部高和
打撃コーチ 43歳 5年目
2189試合 率.270 本437 点1312
首位打者2回 本塁打王2回 打点王2回
座右の銘 「俺は夜の方が高打率なんだぜ」
- 189 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 15:21:33.04 ID:RIaurTil0
- ( ´∀`) 「白の先発は内藤ですか……そろそろ開花してほしいころですね」
N| "゚'` {"゚`lリ 「有り余る才能を持ちながらメンタル面でそれを潰してきた選手ですからね」
( ´∀`) 「毒田が入ってきたことが予想以上にプラスに働いているようです。去年までのあがりがなくなった」
N| "゚'` {"゚`lリ 「新球種も覚えて自信をつけたようです」
( ´∀`) 「今回赤は少し打線を弱くしてあります……内藤に自信がつけばいいのですが」
N| "゚'` {"゚`lリ 「お言葉ですが」
( ´∀`) 「?」
N| "゚'` {"゚`lリ 「私が一か月かけて調k……育てた選手たちです。弱くは、ないですよ」
( ´∀`) 「……失礼しました」
- 192 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 15:30:00.69 ID:RIaurTil0
- ( ^ω^) 「……」
内藤は、緊張していた。
しかし、いわゆる『あがり』ではなく心地のいい緊張感だ。
これなら、自分の力をいかんなく発揮できるかもしれない……そう考えた。
( ・∀・) 「さーて、内藤のピッチングはどうかね」
打席にはヴィッパーズ不動のショート茂等が入る。
やはりベテランの人間には不思議な凄味がある。
しかし負けてはいけない。負けたら、どうなるかは考えたくもない。
( ^ω^) (初球……フォークで行きますお)
(-_-) 「……」コクリ
正捕手である比木が頷いた。
それを見てセットポジションに入る。
ランナーがいなくてもセットポジションから入るのが自分のスタイルだ。
指にボールを挟んで、渾身の球を投げ込む。
- 193 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 15:34:07.91 ID:RIaurTil0
- (-_-) 「!」
比木は、ぎょっとした。
内藤はフォークを投げることを要求した。
紅白戦のため、できるだけ投手の言う通りの配球を組み立てようと考えた。
内藤から投げ込まれたボールはベースのはるか前でバウンドするボールだった。
「ボール!」
当然ながらボールの宣言がなされる。
ボールを服で拭って、内藤に返す。
- 196 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 15:39:39.80 ID:RIaurTil0
- ( ・∀・) (今のは……フォークが落ち過ぎたか)
( ^ω^) 「……」
( ・∀・) (もうフォークは使いづらいだろ……となればストレートか)
第2球が投げ込まれる。
外角低めへのボール。ハーフスピードのストレート。
( ・∀・) (いける!)
茂等は手を出す。
しかしボールは鋭く落ちてバットをかわした。
「ストライク!」
( ・∀・) (また、フォークか)
- 197 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 15:43:56.47 ID:RIaurTil0
- ( ・∀・) (チキンの内藤ならフォークは投げづらいと思ったが……)
( ^ω^) 「……」
ちらりと内藤を見る。
顔はいつもと変わらない。
( ・∀・) (涼しい顔しやがって……)
そして投げ込まれる、第3球。
インハイへのストレート。
思わず少しのけぞる。
「ストライク!」
電光掲示板を見る。146km/h。
その表示よりも速く見える。
- 201 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 15:52:08.16 ID:RIaurTil0
- 2ストライク1ボール。
あっさりと追い込まれた。
( ・∀・) (勝負にくるか?)
4球目は外角に逃げていくカーブ。
誘い球だが難なく見送る。2ストライク2ボール。
( ^ω^) 「……」
内藤がセットポジションから5球目を投げる。
内角低めへのハーフスピード。
( ・∀・) (フォークだ!)
しかしボールは落ちなかった。
内角低めにズバッと決まる三振。電光掲示板は130キロを表示していた。
(;・∀・) (ちっ……)
内藤は自分が見逃すとわかっていてあの半速球を投げたのだろう。
つまりフォークを見るのをわかっていたのだ。
- 208 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 16:09:21.09 ID:RIaurTil0
- ( ・∀・) 「おい」
('A`) 「?」
打席に向かおうとする毒田を呼びとめた。
一言二言言うためだ。
( ・∀・) 「内藤は去年までとは違うぞ」
('A`) 「……わかってますよ」
素振りを何回か繰り返し、打席に入る。
マウンドに立っている内藤は、いつもより大きく見えた。
- 212 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 16:14:09.23 ID:RIaurTil0
- 内藤が1球目を投げる。
インコースへのストレート。144キロ。この時期にしてはいい球を投げてくる。
2球目はシュートが外れてボール。
3球目はまたもインハイへのストレート。
内藤はこんなにも強気な投球をしてくる投手だっただろうか。
( ・∀・) 「去年とは、違うぞ」
先ほどの茂等の言葉が頭をかすめる。
なるほど、そう言うことか。
- 214 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 16:17:51.02 ID:RIaurTil0
- ('A`) (……次はフォークだ)
茂等への配球と自分への投球内容を見ると内藤は早いカウントで決めたいらしい。
とすると次はストライクからボールへ逃げるフォークを使ってくるはずだ。
内藤がしなやかなフォームから5球目を投げる。
インハイへの超速球。
('A`) 「!」
その球威に思わずバットを出してしまう。
力なく上がったボールはこれまた力なくセカンドのグラブにおさまった。
- 216 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 16:20:36.30 ID:RIaurTil0
- ('A`) 「……やられた」
内藤が磨いたのはフォークだけではなかった。
ストレートや、2球目に投げたシュートもレベルアップしていた。
フォークしかない、と内藤を侮った自分の負けだった。
('A`) 「次は捉えるぞ、内藤」
内藤は続く擬古も三振に取り、スリーアウト。
2010年の内藤は素晴らしいスタートを切った。
- 220 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 16:25:03.05 ID:RIaurTil0
- ( ´∀`) 「……素晴らしいですね」
N| "゚'` {"゚`lリ 「ええ、しかし去年までもランナーがいない場面では内藤は無敵でした」
( ´∀`) 「ええ……いくら調子が良くても、ランナーを出さないという試合はなかなか無い」
N| "゚'` {"゚`lリ 「しかし持ち球それぞれがレベルアップしているのは事実です」
( ´∀`) 「それを自信に思ってくれればいいのですが……」
( ´∀`) 「さて、今度は高岡ですか」
N| "゚'` {"゚`lリ 「今年も万全に仕上げてくれたようです」
( ´∀`) 「彼を上回る投手は日本どころか世界を回っても探すのは難しいでしょうね」
- 222 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 16:30:18.36 ID:RIaurTil0
- 从 ゚∀从 「さて、いよいよ俺の出番だな」
マウンドでは内野手と捕手が集まって輪を作っている。
その中心には昨年20勝をあげた高岡がいる。
高岡は内野手に向けて話し出す。
从 ゚∀从 「俺は三振を取るのはなかなかできねえ」
長髪をたなびかせながら話す高岡は街で見かけたら女性にも間違われるような容姿だ。
しかしユニフォームの下にはもちろん筋骨隆々の男が存在しているのだが。
从 ゚∀从 「だから内野ゴロばっか出ると思う。その時はよろしく」
「「「うぃっす!!」」」
从 ゚∀从 「……お前も」
( <●><●>) 「ひゃい!?」
高岡はバッテリーを組む若手の捕手である和手枡に話しかける。
若手同士でのバッテリーは組んだことは何回かあるが高岡のような大投手をリードするのは初めてだ。
- 225 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 16:38:30.66 ID:RIaurTil0
- 从 ゚∀从 「……頼んだぜ」
( <●><●>) 「……はい」
そのやり取りが終わると内野手陣が三々五々散っていく。
打席には去年規定打席には到達しないながらもAv.287を記録した期待の若手だ。
从 ゚∀从 「若手は早めに潰さないと……なっ!」
しなやかなフォームから投げ出されたボールは和手枡が構えたミットに寸分たがわず吸い込まれる。
インローいっぱい、ストライクだ。
(K‘ー`)「やっぱすごいな……」
続く2球目もアウトローいっぱいにスライダーが投げ込まれる。
一級品の曲がりに加えて精密機械と称されるコントロール。
それが高岡の武器だ。
从 ゚∀从 「おらっ!」
(K‘ー`)(! 真ん中!)
やはり開幕前はコントロールも狂うのか。
川島は思い切り振りぬいた。
- 226 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 16:44:20.16 ID:RIaurTil0
- 从 ゚∀从 「……計算通り」
真ん中のボールを振りぬいたはずが転々とセカンドに転がる。
毒田が難なくさばき、一塁へ。ワンアウトだ。
(;K‘ー`) 「……なんで、捉えられなかった?」
( ^Д^) 「ツーシームよ」
(K‘ー`) 「ツーシーム……」
ネクストサークルに入っている宝は自分の独り言を聞き逃さなかったらしい。
宝のツーシームという言葉は川島にとってなじみのある言葉だった。
( ^Д^) 「おう。わずかに動いて芯を外す……あいつの得意技だよ」
(K‘ー`) 「……」
( ^Д^) 「ま、あいつを1打席でどうこうは無理だ。次にどうするか考えとけよ」
(K‘ー`) 「……はい」
- 228 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 16:50:06.14 ID:RIaurTil0
- J( ゚_ゝ゚)し 「次はミーのターンで―す! がんばりまーす!」
2番、ガイエル。「魔将」というファンからのあだ名が気に入ったらしく登録名も「魔将」にしてしまった。
左打席に入って高岡のボールを待つ。
从 ゚∀从 「おらっ!」
高岡の右腕から投じられたスライダーは、人知を超えた曲がりを持って魔将に激突した。
从;゚∀从 「うわっ、わりー」
J(;゚_ゝ゚)し 「アウチ! ……デッドボールもベースボールの一部で―す……」
そう言うと魔将はとぼとぼと1塁へ向かう。
両チーム合わせて初めてのランナーは魔将だった。
从 ゚∀从 「なんかあいつに投げると全部あいつの方向に飛んでいくんだよな……」
※魔将ガイエルについてはhttp://blog.livedoor.jp/hae10230/archives/51324314.html
- 231 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 16:55:20.90 ID:RIaurTil0
- ワンアウトランナー一塁。
右打席にはヴィッパーズの主軸、宝を迎える。
从 ゚∀从 「宝か、真剣勝負するのは久々だな」
( ^Д^) 「……」
1球目、ストレートが高めに外れてボール。
ワンアウトランナー2塁。
2球目、フォークを宝が空振って1ストライク1ボール。
- 234 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 16:59:45.27 ID:RIaurTil0
- 从 ゚∀从 「……」
3球目、インローへの速球。
そのコースは宝の得意コースであった。
( ^Д^) (絶好球……! でも!)
宝は見逃す。ボールは大きく落ちてボール。
フォークボールだ。
( ^Д^) (やっぱりか……あんな得意コースに高岡が投げるわけねーべ)
从 ゚∀从 「……チッ」
5球目、高岡には珍しくスライダーがすっぽ抜ける。
その球を今度は見逃さない。
- 239 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 17:07:18.81 ID:RIaurTil0
- 真ん中に流れてくる球を思い切り引っ張る。
川島に投げた狙った真中へのボールではない、失投の末のボールだ。
強く打った打球は低い弾道で力強く左中間へ向かう。
魔将は足が遅いがツーベースなら十分帰ってこれる。
(#・∀・) 「うらぁ!!」
しかしその考えは甘かった。
ゴールデングラブの常連である鉄壁の遊撃手がいたのだ。
強烈なライナーを横っとびでキャッチ。そして魔将が飛び出していたセカンドに転送。
あっという間に1点がダブルプレー。これには宝もただただ敬服するしかなかった。
- 246 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 17:19:21.06 ID:RIaurTil0
- ( ´∀`) 「ガイエルはいつも通りですね」
N| "゚'` {"゚`lリ 「ええ。そうですね」
( ´∀`) 「しかし……高岡があんなにすっぽ抜けるとは……」
N| "゚'` {"゚`lリ 「茂等に助けられましたが、普通なら1点ですからね」
( ´∀`) 「まだ1回だけでは何とも言えませんが……」
/ ,' 3 「茂等はいい守備を見せましたね」
N| "゚'` {"゚`lリ 「荒巻コーチ。ベンチの采配はいいので?」
/ ,' 3 「構わんよ。どうせ茂等がさい配するわ」
( ´∀`) 「そうですか。……あの守備なら、今年もショートは茂等ですね」
N| "゚'` {"゚`lリ 「打率1割でもあの守備なら置くことができる。大した奴です」
- 247 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 17:24:31.50 ID:RIaurTil0
- 『4番、ファースト、諸本』
(´・ω・`) (俺は……もう、落ち目だ)
自覚はしていた。
3冠王を獲った時と比べて、自分の能力は明らかに低下している。
しかし、まだプロの世界で生きていくことはできる。そう考えていた。あのときまでは。
(´-ω-`) 「……」
バットを立てて、昔を思い出す。とは言ってもまだ1年と立ってはいないが。
去年のシーズンが始まってすぐ、顔にデッドボールを食らった。
投手が軟投派だったのが幸いしてか、ほほの骨の骨折ですんだ。
しかし、その死球は諸本に暗い影を落とした。内角に、うまく反応することができなくなってしまったのだ。
- 249 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 17:29:09.81 ID:RIaurTil0
- ( ^ω^) 「やっ!」
マウンドには25歳の内藤が投球練習をしている。
自分は36歳。10以上の差がある。若さをうらやましいと思ったときもあった。
怖いもの知らずの、若さが。
(´・ω・`) 「よし」
素振りを終え、左打席に入る。
マウンド上の内藤を睨みつける。
しかし内藤に気遅れている気配はない。
内藤が1球目を投げる。
アウトローに決まるスライダー。今日は初球ストライクをよく取っている。
きっと調子がいいのだろう。
- 250 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 17:33:07.89 ID:RIaurTil0
- 2球目。インコース高めに入るストレート。
しかしコースギリギリではなく少し真ん中に寄ったボールだ。
(;´-ω-`) 「うっ!」
そのボールを捉えようとした瞬間、あの死球がフラッシュバックした。
バットを振らないどころか、目を瞑ってしまった。
(;´・ω・`) 「……」
当然、ストライク。
いとも簡単に追い込まれた。
3球目はフォーク。
打ち気にはやった諸本はいとも簡単に三振してしまった。
(´・ω・`) 「……っ!」
唇を悔しそうに噛み、ベンチに戻る。
その背中に、元三冠王の風格はなかった。
- 255 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 17:49:16.56 ID:47tuZ+kNO
- ( ´∀`)「……諸本は厳しいですね」
N| "゚'` {"゚`lリ 「インコースに目を瞑ってしまっていますね」
( ´∀`)「実績を考えると一軍枠から外れる筈が無いのですが……」
/ ,' 3 「諸本は選手を束ねるキャプテンだし、いかんともしがたいのう」
はあ、と初老2人中年1人の溜め息が部屋に充満する。
果たして、その溜め息を諸本が吹き飛ばせるのはいつの日か。
- 260 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 17:55:35.26 ID:47tuZ+kNO
- ( ^ω^)「……っ!」
調子が出てきた内藤は続く濱中・朴ともに三振。
これで2回を投げて内藤は5三振。
ドクオの打席以外は全て三振に抑えた。
( ・∀・)「内藤を調子付かせるとやっかいだ」
守備につく前、茂等がみんなを集める。
荒巻コーチがどこかに行ったので現在は茂等が指揮を執っている。
( ・∀・)「次の回からは揺さぶるぞ」
「「「おうっ!!」」」
- 266 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 18:03:17.75 ID:47tuZ+kNO
- 対する高岡も茂等のファインプレーに助けられ、持ち直し戸田・松田を内野ゴロに抑える。
ツーアウト、ランナーなしで相対するはいつもはバッテリーを組む、比木。
从 ゚∀从「比木よ。俺の球が打てるのか?」
(-_-)「いつもお前の球を見ているからな。打てるさ」
パチパチと火花を散らす両者。
そしてそれに気後れしている人間が1人。
- 269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 18:08:00.16 ID:47tuZ+kNO
- (;<●><●>)「……」
現在高岡のパートナーである和手枡だ。
高岡のようなコントロールのいいピッチャーの場合、キャッチャーのリードが重要になる。
先ほどから高岡は一球も首を振っていない。
つまり、配球を全て自分に任せているのだ。
(;<●><●>)(責任重大ぃぃぃぃぃぃ!!)
- 274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 18:12:24.65 ID:47tuZ+kNO
- ( <●><●>)「……」
右打席に立つ比木の足元を見る。
正直何も読み取れない。
比木は捕手ながら21本のホームランを放つバッターだ。
甘い球ではすぐにスタンドへ持っていかれる。
( <●><●>)(アウトロー……)
となれば当たっても長打にはなりにくいアウトローを要求する。
球種はストレート。アウトローにミットを構える。
从 ゚∀从「……」
高岡が頷く。
第1球が高岡から放たれた――瞬間、比木が足をアウトコース狙いで踏み出してきた。
- 276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 18:15:14.62 ID:47tuZ+kNO
- (;<●><●>)「!」
読まれていた。
自分が一発を恐れてアウトコースを要求するのを。
球は文句なしのコースに来たが、読まれていては話が別だ。
( <●><●>)「やられた……」
比木は無理に振り切らず、おっつけてライトへ持っていった。
ライトへのクリーンヒットだ。
- 278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 18:20:30.31 ID:47tuZ+kNO
- 从 ゚∀从「……」
しかし高岡は落ち着いていた。
なおも首を振らず和手枡の要求通りに投げる。
続く海崎は高めのつり球に手を出しレフトフライに倒れた。
( <●><●>)「高岡さん……すいません」
从 ゚∀从「ん? ああ、気にすんな。ヒットくらい打たれるさ」
( <●><●>)「でも……」
从 ゚∀从「あの場面は一発が怖い。だったらあの配球はセオリーだ。実際シングルで済んだしな」
( <●><●>)「……」
从 ゚∀从「野球は点を取られなきゃ負けない。だからあれはあれでいいんだ」
- 279 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 18:26:20.39 ID:47tuZ+kNO
- 从 ゚∀从「それに」
( <●><●>)「……」
从 ゚∀从「お前もちゃんと海崎を抑えたじゃないか」
( <●><●>)「いえ、それは……」
从 ゚∀从「いや、お前のおかげだ! お前は偉い!」
(*<●><●>)「……」
年間20勝を挙げる大投手に誉められて悪い気はしなかった。
しかしやはり配球を読まれたのは悪い傾向だ。きをつけなければならない。
从 ゚∀从「それに比木亡き後、次の正捕手はお前だからな」
( <●><●>)「亡き……」
从 ゚∀从「そ。亡き後」
白軍ベンチ
(-_-)「……」ブルッ
( ^ω^)「……大丈夫ですかお?」
(-_-)「……問題ない」
- 283 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 18:31:20.02 ID:47tuZ+kNO
- 3回の表、紅軍の攻撃。
( ・∀・)「和手枡、ちょっとこい」
( <●><●>)「?」
参謀役である茂等が今のバッターの次に回ってくる和手枡に耳打ちする。
何か作戦があるのだろう。
( <●><●>)「……わかりました」
( ・∀・)「頼んだぞ」
2人が話しているうちに7番吉野はサードゴロ。
そしてバッターは8番和手枡を迎える。
- 286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 18:35:54.13 ID:47tuZ+kNO
- 和手枡が左ボックスに入る。
比木はその足元を見た。
(-_-)(……さっき茂等さんと話をしていた。何か作戦があるはずだ)
茂等は頭も回る男だ。
次期監督に最も近いとも言われている。
(-_-)(とりあえず、一球様子を見よう。ボール球だ)
( ^ω^)(わかりましたお)
内藤は外角高めに直球を投げ込む。
ボールは要求通りにストライクゾーンから外れた。
- 288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 18:39:00.15 ID:47tuZ+kNO
- (-_-)(微動だにしない……狙いはなんだ?)
昨シーズン和手枡は打撃がネックとなっていた。
打率1割台ではピッチャーとともに自動アウト同然だった。
そんな相手に警戒し過ぎるのもよくない。
(-_-)(フォークだ。振らせるぞ)
( ^ω^)「……」コクリ
- 289 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 18:42:55.36 ID:47tuZ+kNO
- 2球目、内藤はストライクからボールになる最高のフォークを投じた。
(-_-)(ナイスコース!)
これは3割バッターでも振るだろう。
比木の頭は1‐1カウントでの配球に考えを巡らした。
「ボール」
(-_-)(……振らない、だと)
- 293 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 18:46:35.62 ID:47tuZ+kNO
- (-_-)(またも微動だにせず、か)
これでカウントは0‐2。
これ以上カウントを悪くはできない。
(-_-)(ストレートだ。カウントを稼ぐ)
( ^ω^)(はいですお)
3球目、内藤の腕から豪速球が繰り出される。
その球に和手枡が取った行動は意外なものだった。
(;-_-)(バント!?)
和手枡はボールが腕から離れる一瞬前にバントの構えを取った。
- 304 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/04/25(土) 19:17:55.59 ID:47tuZ+kNO
- バントの態勢に焦ったのは内藤だった。
低めに要求していた直球が、動揺からか少し浮いて真ん中に入ってきた。
(;-_-)(甘い!)
そしてそれを見た和手枡は素早くバットを引く。
(;^ω^)(バスター!)
一閃。
バント処理のために前に出た内藤を強襲するヒット。
ボールは転々とセンターに転がる。
(;-_-)「くそっ……!」
- 305 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 19:20:44.56 ID:47tuZ+kNO
- 今まで完璧なピッチングを続けた内藤が初めてランナーを許した。
9番の高岡が確実に送りバントを決める。
ツーアウトランナー2塁。
N| "゚'` {"゚`lリ 「内藤の真価が問われますね」
( ´∀`)「ああ。そしてバッターは……」
『一番、ショート、茂等』
( ・∀・)「やっちゃうよーん」
- 307 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 19:24:37.77 ID:47tuZ+kNO
- (;-_-)(くっ……ここで茂等さんか……歩かせる手もあるにはあるが……)
(;^ω^)(まだ序盤ですお。それに歩かせても結局ドクオですお)
(-_-)(……わかった。ねじ伏せよう)
右打席に茂等が入る。
昨シーズンの打点こそ40だがその40点はいずれも大事な場面での打点だ。
勝負強いバッターは怖い。
- 308 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 19:29:05.52 ID:47tuZ+kNO
- (-_-)(まず様子を見る。ボールになるスライダーだ)
( ・∀・)「……」
不気味な雰囲気を漂わせる茂等。
嫌な予感を振り払いながらミットを構える。
一球目、内藤は要求通りストライクからボールになるスライダーを投げる。
しかしあっさり見送られる。
(-_-)(見られた……? 嫌にあっさりしていたな……)
先ほどの和手枡の打席を思い出す。
そうだ。逃げていては袋小路に追い詰められる。
状況を打破しなくてはいけない。
そのための武器は、内藤にはある。
- 310 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 19:36:29.66 ID:47tuZ+kNO
- (-_-)(インハイだ。ねじ伏せるぞ)
(;^ω^)(……はい)
セットポジションからボールが放たれる。
インハイへの今日一番の直球。
振らなくても、残像には焼き付く――!
( ・∀・)「ここだ!」
サッと比木の顔が青ざめる。
(;-_-)(狙っていたのか!?)
ガツン、と真芯でとらえた音がした。
ボールは、高々とレフトへ飛んでいく。
- 311 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 19:39:59.27 ID:47tuZ+kNO
- ( ・∀・)「……チッ」
ボールはやがて失速し、魔将のグラブに収まった。
紅軍はチャンスを逃すこととなった。
N| "゚'` {"゚`lリ 「危なかったですね」
( ´∀`)「そうですね。完全に芯で捉えていました。しかし」
N| "゚'` {"゚`lリ 「?」
( ´∀`)「あのボールがあそこで失速したのは偶然ではありません」
N| "゚'` {"゚`lリ 「……」
( ´∀`)「あのストレートの球威。……ついに開花したかもしれませんよ。内藤地平線」
- 313 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 19:47:09.53 ID:47tuZ+kNO
- その裏、高岡は下位打線を三者凡退に打ち取る。
4回の表、紅軍の攻撃。
先頭打者はドクオだ。
('A`)「内藤と2回目の対戦だ……」
( ・∀・)「え? 2回目の対戦はないよ?」
('A`)「……へ?」
『白軍、選手の交代をお知らせします。ピッチャー、内藤に代わりまして、藤井。背番号、47』
(;'A`)「え―!?」
( ・∀・)「なんだ。そんなに対戦したかったなら尚更回すべきだったな」
(;'A`)「なんで? なんで3回ぽっちで交代?」
( ・∀・)「そりゃ紅白戦で怪我したらなあ」
('A`)「……なるほど」
- 314 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 19:52:11.70 ID:47tuZ+kNO
- 結局その日俺は3打数1安打1四球。
まずまずの成績で今日の紅白戦を終えた。
試合は白軍が宝さんのスリーランなどで4‐2で勝利した。
( ・∀・)「あー疲れた。早く風呂入って寝ようぜ」
('A`)「そうですね」
初めてのチームで初めての試合。
俺は、まあまあなスタートを切った。
- 337 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 20:51:44.88 ID:47tuZ+kNO
- キャンプが終わり、オープン戦もこなした。
俺と内藤はどちらも一軍に残ることが出来た。
しかし、予想外に二軍スタートが決定した人物がいた。
(´・ω・`)「しょうがないな。結果を出せない奴はプロじゃないさ」
元三冠王、諸本信彦。
一軍枠の28人から外れた。
- 342 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 20:55:51.42 ID:47tuZ+kNO
- ついに明日は開幕だ。
球場はニュー速スタジアム。
横浜に建てられた両翼98m・センター123mの屋外型球場だ。
対戦相手は前年4位のシベリアレールウェイズ。
後輩の長岡がいるチームだ。
風の噂では長岡も開幕一軍を果たしたらしい。
明日の試合に出てくる可能性は高い。
- 347 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 21:00:27.92 ID:47tuZ+kNO
- ('A`)「……」
なかなか寝付けない俺は寮のロビーに出てきた。
そこには、恐らく俺と同じ理由だろう。内藤がいた。
背中をこちらにむけてるため俺には気づいていない。
('A`)(脅かしてやるか)
そう思いそろそろと近づく。
- 351 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 21:05:21.69 ID:47tuZ+kNO
- ( ^ω^)「うん……うん……ありがとう」
('A`)(なんだ……?電話?)
どうやら携帯で誰かと通話しているようだ。
時間は既に夜の2時。
こんな時間に誰と会話しているのだろうか。
( ^ω^)「うん……うーん……僕は先発だから明日は投げないお」
('A`)「……」
会話の内容から見るとあまり野球が詳しくない人物らしい。
( ^ω^)「うん……愛してるお、ツン」
('A`)
- 358 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 21:11:30.15 ID:47tuZ+kNO
- ピ
(;^ω^)「ふぅ……さて、寝るかお……わぁ!!」
(゚A゚)「この世で一番重い罪……『てめーは俺を怒らせた』」
(;^ω^)「松尾! いや待つお!」
(゚A゚)「金属バットで死ぬか? アオダモで死ぬか? メープルで死ぬか? 選べよ」
( ^ω^)「落ち着けって」
内藤にこめかみを握られる。
ピッチャーの握力はゆうに80kgを超える。
脳がキリキリ言い出したところで俺は正気に戻った。
- 363 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 21:19:17.99 ID:47tuZ+kNO
- ('A`)「で? ツンって誰よ」
キリキリと痛むこめかみを抑えながら問いただす。
この一軍半チキンへちゃむくれに彼女などあってはならない。
宇宙のバランスが崩れる。殺してでも奪い取る。
( ^ω^)「あれ? ドクオも知ってるはずだお」
('A`)「……まさか」
( ^ω^)「……」
('A`)「津村?」
( ^ω^)「そうです」
('A`)「殺す」
( ^ω^)「落ち着けって」
今度はヘッドロックをきめられる。
内藤の筋肉質な腕が頭をガンガンと締め付ける。
頭がちぎれそうな所でタップした。
- 368 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 21:25:47.96 ID:47tuZ+kNO
- ('A`)「いやいや津村って。釣り合ってねーよ。ねーよ!?」
( ^ω^)「つーか高校の時から付き合ってますが」
(゚A゚)「マジで!?」
( ^ω^)「マジで。今年で8年目」
(゚A゚)「中堅選手じゃねえか……」
ツンこと津村とは、俺達が高校のときの同級生だ。
俺達の母校はスポーツと一般に別れていて、一般は大層頭が良かった。
その頭がいい一般クラスの中で最強の美貌を保っていたのが津村だった。
('A`)「スポーツと一般とか接点なかったと思うんだけど」
( ^ω^)「そんなことないお? 長岡とかも付き合ってた筈だお」
('A`)「あいつ明日殺すわ」
- 372 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 21:29:48.43 ID:47tuZ+kNO
- ( ^ω^)「ほら、県大会の決勝」
('A`)「お前がサヨナラツーラン打った奴か?」
( ^ω^)「それぞれ。あの後告白されたんだお」
('A`)「しかもあっちからかよ」
(゚A゚)「つーかツーランのきっかけを作ったのは俺ですが。ランナーは俺ですが!?」
( ^ω^)「人徳の差だお」
納得がいかない。
まあ、きっかけはどうあれ内藤が付き合ってる女の子を裏切ることはないだろう。
- 374 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 21:33:59.53 ID:47tuZ+kNO
- ( ^ω^)「実は目標があって」
('A`)「んだよ」
( ^ω^)「10勝したらプロポーズしようかなって」
('A`)「ごめん俺お前先発の時メンバー外れるわ」
( ^ω^)「真剣だお」
('A`)「もう無理それ俺もうヴィッパーズのために働けない」
- 379 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 21:39:52.93 ID:47tuZ+kNO
- ( ^ω^)「……そういえば」
('A`)「んだよ」
あからさまに不機嫌な声で返事をする。
いくら親友といえど結婚なんて悔しい。
( ^ω^)「週刊プロ野球の伊藤さんは」
('A`)「結婚前に死にたくなかったら今すぐその口を閉じろ豚」
- 385 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 21:47:05.17 ID:47tuZ+kNO
- ( ^ω^)「違うお、聞けお」
('A`)「んだよ」
伊藤、という名前を聞いただけであの事件(>>118)を思い出す。
あの時はなんだか茂等さんに言われたのと久しぶりの取材で舞い上がったことが原因だ。
素ではない。けしてない。
( ^ω^)「この前取材されたの。週プロに。伊藤さんに」
('A`)「……」
( ^ω^)「彼女アクアリウム時代のドクオのストラップつけてたお」
少し考える。
('A`)「……」
(゚A゚)「マジで!?」
( ^ω^)「マジ。ファンじゃなかったらドクオのグッズなんて買わないお」
- 388 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 21:50:34.87 ID:47tuZ+kNO
- ( ^ω^)「だから今度会ったら食事にでも誘えば?」
('A`)「内藤……お前いい奴だな」
( ^ω^)「じゃあ僕の10勝に貢献してくれるかな?」
('∀`)「いいともー!」
こうしてなんだかランラン気分になった俺は浮かれて部屋に戻りベッドに入ってすぐに寝た。
- 394 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 21:59:36.06 ID:47tuZ+kNO
- 翌日。ニュー速スタジアムに向かうバスの中。
俺はゴキゲンだった。
今なら道行く人片っ端から「幸せですか?」と問いたい気分だ。
('∀`)「うふふ」
J( ゚_ゝ゚)し「なんだかドクオゴキゲンねー」
('∀`)「あ、わかる?アーロン、わかっちゃう?」
J( ゚_ゝ゚)し「あーまたボールがケツについとるわーほんま魔空間制御むずいでー」
('∀`)「ついに俺にも球春じゃない春到来よ」
J( ゚_ゝ゚)し「あれ? でもそれってファン1人なくしたってことじゃね?」
('A`)
- 397 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 22:06:41.62 ID:47tuZ+kNO
- グラウンドに入る。
今日は午後6時からプレイボール。
天気も快晴、雨の心配はない。
人気球団のヴィッパーズらしく既にスタジアムは一杯になり始めている。
( ^ω^)「おっドクオー開幕スタメンおめだおー」
先ほどのミーティングで今日のスタメンが発表された。
2番セカンド。それが俺に今日与えられた仕事場だ。
('A`)「おー」
(;^ω^)「どうしたお? なんか元気ないお」
('A`)「気のせいじゃね? それよりさ」
( ^ω^)「?」
('A`)「ホモビデってどうしたら出れるかな?」
(;^ω^)「ドクオ!? 本当にどうしたお!?」
- 401 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 22:11:23.98 ID:47tuZ+kNO
- ( ゚∀゚)ノシ「毒田さん! 内藤さん!」
( ^ω^)ノシ「おっ、長岡。おいすー」
('A`)ノシ「よく見たら長岡も美男子だよね……」
(;゚∀゚)「な、なんですか? なんだか身の危険を感じるんですが」
('A`)「いや、なんでも? それよりさ、お前彼女いるの?」
( ゚∀゚)「え? いますよ? 今日も来てます」
あそこ、と言って長岡が指差した先には。
- 404 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 22:16:42.92 ID:47tuZ+kNO
- ミセ*゚ー゚)リ「ながおかくーん! ファイトー!」
美少女がいた。
(*゚∀゚)「可愛いでしょう? いやーもう家だと甘えてきて困っちゃいますよ」
(;^ω^)
('A`)「へえ……」
ポン、と長岡の肩に手を置く。
そして静かな声で話しかける。
('A`)「おまえさ、ポジションどこだっけ」
- 409 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 22:27:38.98 ID:47tuZ+kNO
- ( ゚∀゚)「え……ショート、ですけど」
('A`)「うんうん、そうだよね。高校時代二遊間組んだもんね」
(;^ω^)
('A`)「二遊間ってさ、信頼関係が大事って言うよね」
( ゚∀゚)「はあ……」
('A`)「信頼関係できてるよね、俺達」
( ゚∀゚)「え? はあ、まあ」
('A`)「じゃあさあ!! なにてめー彼女いるの!? なんなのあの可愛い彼女!?
するの!? 浅草観光するの!? 夜はベッドで生でして
ミセ*゚ー゚)リ『へへ……救援失敗したかも』とかするの!? ああーん!?」
- 415 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 22:32:03.84 ID:47tuZ+kNO
- (;^ω^)「ごめん長岡! 今ドクオは情緒不安定なんだお!」
('A`)「やめろ! こめかみを抑えるんじゃねえ!」
( ゚∀゚)「え、はあ」
(;^ω^)「じゃ! いい試合をするお!」
( ゚∀゚)「は、はあ」
('A`)「やめろー! 俺は長岡をSATSUGAIするまで死ねねえー!」
そうして俺はベンチ裏までズルズルと引きずられた。
余談だが、この会話が一部のファンに録音されていたらしく、俺のネット上の愛称は「独男」になった。
- 426 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 22:46:51.55 ID:47tuZ+kNO
- スターティングメンバー
ニュー速ヴィッパーズ
1 遊 茂等 ( ・∀・)
2 二 毒田 ('A`)
3 左 魔将 J( ゚_ゝ゚)し
4 一 宝 ( ^Д^)
5 捕 比木 (-_-)
6 三 朴 <ヽ`∀´>
7 右 川島 (K‘ー`)
8 中 擬古 (,,゚Д゚)
9 投 高岡 从 ゚∀从
シベリアレールウェイズ
1 遊 長岡 ( ゚∀゚)
2 三 京橋
3 一 玉造
4 左 放出
5 右 小和田 (^o^)
6 中 我孫子
7 捕 天王寺
8 二 十三
9 投 渡辺 从'ー'从
- 435 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 22:54:17.53 ID:47tuZ+kNO
- N| "゚'` {"゚`lリ 「ふむ、やはり大方の予想通り先発は渡辺だな」
(;'A`)「あのーコーチ?」
N| "゚'` {"゚`lリ 「ん? なんだい? ホモビデに出たいのかい?」
('A`)「違います。えーと、ピッチャーの渡辺って……」
俺は見たままを口にしてよいのか迷う。
もし触れてはいけないタブーな話題だったら……
('A`)「女じゃないんですか?」
N| "゚'` {"゚`lリ 「……違う。と、思う。多分」
('A`)「多分なんですか」
N| "゚'` {"゚`lリ 「誰も渡辺さんの着替えをみた者はいないらしいよ」
- 440 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 23:00:52.23 ID:47tuZ+kNO
- N| "゚'` {"゚`lリ 「まあ実力は折り紙付き。前年は緩急をつけたピッチングで14勝だ」
('A`)「へー」
知らなかった。レールウェイズはあまり人気のある球団ではない。
だからメディアへの露出も少ない。さらに交流戦でも渡辺と当たったことはなかった。
N| "゚'` {"゚`lリ 「いい投手さ。なあ高岡?」
从 ゚∀从「……しらねっすよ」
珍しく高岡さんがふてくされた顔で応対する。
なんでだろうと思っていると阿部コーチが説明してくれた。
- 442 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 23:06:38.27 ID:47tuZ+kNO
- N| "゚'` {"゚`lリ 「高岡と渡辺はね。ライバルなんだよ。昔っから」
('A`)「昔から……」
N| "゚'` {"゚`lリ 「高校どころか小学校のリトルリーグからずっとライバルだ」
('A`)「へえ……」
从 ゚∀从「チッ」
なんだろう。腐れ縁とでも言うのだろうか。
こんなに途切れない縁も珍しい。
从 ゚∀从「おい……毒田」
('A`)「はい?」
从 ゚∀从「お前、エラー多かったよな……?」
('A`)「ま、まあ。改善したつもりですが」
从 ^∀从「そう。渡辺との試合でエラーしたら〇すから」
('A`)
- 447 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 23:13:35.22 ID:47tuZ+kNO
- そんなこんなでプレーボールの時間が近づいてくる。
開幕戦の一勝はただの一勝ではない、と言われる。
オフシーズンに積み重ねた物を発揮するこの舞台。
最高のパフォーマンスを見せなければ負ける。
この試合は、今年の流れを決める大事な試合だ。
( ´∀`)「皆さん、集合してください」
喪名監督の前に選手が集まる。
ベンチ外の選手も合わせて28人だ。
( ´∀`)「いよいよ開幕です。見なさいこの集まってくれたファンの方を」
('A`)「……」
( ´∀`)「決してこの試合は144分の1ではありません」
( ・∀・)「……」
( ´∀`)「月並みですが、がんばりましょう!」
「「「おう!!」」」
- 451 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 23:22:02.24 ID:47tuZ+kNO
- ( ><)『全国一億人の野球ファンの皆様こんばんは!
今日この日を待ち望んでいた方も多いのではないでしょうか!』
( ゚∋゚)『いやー今日は快晴ですね。まさに野球日和と言っていい』
( ><)『そうですね! ニュー速ヴィッパーズ対シベリアレールウェイズ 第1回戦の模様をお伝えして参ります!』
( ><)『実況は私、稚内弘人、解説は阪神ジャガースのショートを勤めた鳥谷敬さんです』
( ゚∋゚)『こんばんは』
- 456 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 23:26:57.25 ID:47tuZ+kNO
- ( ><)『さあ鳥谷さん、プレーボールの前に両チームの見所を教えてください』
( ゚∋゚)『そうですね。やはりヴィッパーズは20勝投手の高岡ですね。
彼はちょっとやそっとじゃ崩れませんよ』
( ><)『なるほど! ではレールウェイズはどうでしょうか?』
( ゚∋゚)『はい、私は一軍定着を狙う長岡くんを推したいですね。
去年の一軍出場はありませんでしたが、二軍で首位打者と盗塁王を穫った期待の星です』
( ><)『はい、ありがとうございます! 始球式が終わってヴィッパーズの面々が守備につきます!』
- 460 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 23:33:37.57 ID:47tuZ+kNO
- 『先攻、シベリアレールウェイズの攻撃は、一番、ショート、長岡。背番号3』
( ゚∀゚)(うう……緊張するよー)
実質プロ初打席。
やはり二軍でタイトルを穫ったとはいえ所詮は二軍だ。
やはり一軍は格が違う。まず自分はこんなに大勢の人に囲まれたことはない。
( ゚∋゚)『緊張してますねー素振りがぎこちないですよ』
( ><)『やはり二軍でタイトルを穫っても緊張しますか?』
( ゚∋゚)『しますね。やはり一軍と二軍には越えがたい壁がありますからね』
- 461 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 23:37:36.25 ID:47tuZ+kNO
- 長岡が緊張しながら右打席に入る。
それを確認して審判が右手をあげる。
今、2010年シーズンが開幕する。
「プレーボール!」
わあっと、観客席から歓声が上がった。
- 467 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 23:41:57.56 ID:47tuZ+kNO
- 从 ゚∀从(さーて、第1球は何にするか)
(-_-)(……好きにしろ)
从 ゚∀从(んじゃ、ストレートで)
高岡の左足が上がる。
そして体をしなやかに躍動させ、一気に力を解放する。
ボールはアウトローに構えられた比木のミットに収まった。
「ストライク!」
( ゚∋゚)『いいストレートでしたねぇ』
( ><)『球速は143キロを表示しています』
( ゚∋゚)『きっと体感速度はもっと速いですよ。長岡くんが気後れしなければいいですが』
- 471 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 23:48:23.09 ID:47tuZ+kNO
- ( ゚∀゚)(……143キロ? 嘘だろ?)
自分の目には150キロを越えているように見えたのだが。
動体視力に自信がある自分でもボールを追うことが出来なかった。
2球目。チェンジアップでタイミングを外され空振り。
球速は117キロ。
しかし長岡には50キロ以上の差があるように見えた。
( ゚∋゚)『……見えてませんね』
3球目、アウトローに半速球が投げ込まれる。
その緩いボールに思わずバットを出す。その時長岡には見えた。
(;゚∀゚)(曲がる……! スライダー!!)
必死で回りかけたスイングを止めようとする。
しかし。
- 473 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 23:52:49.06 ID:47tuZ+kNO
- ( ><)『スイングスイング!! スイングを取られました長岡! 三振です!』
( ゚∋゚)『バットを止めようとしましたが間に合いませんでしたね』
( ><)『三振! 高岡の2010年シーズンは三振からスタートです!』
(;゚∀゚)(くっ……)
唇を噛んでベンチに下がる。
二軍で磨いた筈の努力がまったく実を結ばなかった。
( ゚∀゚)「くそっ」
(^o^)「怒るな怒るな。まだたった一打席だ」
( ゚∀゚)「小和田さん……!」
- 475 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/25(土) 23:57:13.72 ID:47tuZ+kNO
- (^o^)「気にすんな。まだ俺たちは……始まったばかりだろ?」
( ゚∀゚)「……はい」
結局一回表は高岡の独壇場。
2番京橋を三振、3番玉造は8球粘ったがサードゴロに打ち取られた。
『一回の裏、ニュー速ヴィッパーズの攻撃は、一番、ショート、茂等。背番号6』
大歓声が上がる。
これがホームゲームの強みだろう。
- 479 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/26(日) 00:04:54.74 ID:4Xo9dxQGO
- 从'ー'从
( ・∀・)(チッ……相変わらず何考えてるかわからん面だな)
茂等は昨シーズン渡辺に対して16打数1安打とかなり苦手にしている。
茂等は渡辺の緩急の付け方が嫌いだった。
从'ー'从
第1球。
左腕から繰り出される球はとにかく遅い。
ボールはかなり遠いところに投げられたと思いきや曲がってストライクゾーンに入ってきた。
スローカーブ。これが茂等が渡辺に苦しんでいる原因だ。
( ><)『相変わらず遅くてよく曲がるスローカーブ。球速表示は86キロです』
- 483 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/26(日) 00:10:07.87 ID:4Xo9dxQGO
- 続いて第2球。
インハイの顔近くに攻めてくるストレート。
130キロほどだが先ほどのスローカーブを見ているためやけに速く見える。
( ・∀・)(女みたいな面してんのにエグい投球しやがって……)
3球目、今度はインローへのストレート。
これは決まってカウント2‐1。
( ゚∋゚)『追い込まれましたね』
( ><)『渡辺も高岡に負けず劣らずの投球をしそうです』
- 485 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/26(日) 00:13:07.98 ID:4Xo9dxQGO
- 4球目、スローカーブ。真ん中に入ってきているように見えるが。
( ・∀・)(これは、ボールだ)
茂等の判断通りボールは大きく曲がってボールゾーンへ。
カウント2‐2。
( ゚∋゚)『今のはよく見ましたね』
( ><)『ええ。あのストライクからボールになるカーブは振ってしまいそうですが』
- 491 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/26(日) 00:18:36.54 ID:4Xo9dxQGO
- ( ><)『さあカウント22から5球目。何を投げるのか』
渡辺の左腕から繰り出されるボール。
ストレート。のように見える。
( ・∀・)(スクリュー!)
去年散々苦しめられた渡辺のもう一つの武器。
芯を外してゴロを量産する。
去年はその配球に全く対応できなかった。しかし。
( ><)『打った! 茂等、スクリューをおっつけて右へ! ライト前ヒットです!』
- 494 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/26(日) 00:22:57.87 ID:4Xo9dxQGO
- 『2番、セカンド、毒田。背番号37』
('A`)(……)
ベンチから出ているサインはバント。
茂等さんを走らせる気は無いらしい。
从'ー'从(バントねえ。させないよ)
バントの構えの毒田に投じた一球目。
大きく曲がるスローカーブ。
(;'A`)(っ!)
空振り。バントの体制でも、あまりの変化に当てることができなかった。
('A`)(バケモンかよ……)
- 497 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/26(日) 00:26:29.92 ID:4Xo9dxQGO
- 2球目、今度はストレート。
バットの上っ面に当て、キャッチャーへの小フライになる。
(;'A`)(やべっ)
しかしキャッチャーが追いつくことは出来なかった。
だがカウントは圧倒的不利な2‐0。
( ゚∋゚)『これは厳しい……スリーバントは少し怖いでしょう』
- 498 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/26(日) 00:30:47.67 ID:4Xo9dxQGO
- 追い込まれてしまった。
ベンチを見る。
ゴーのサインが出た。『好きに打て』ということだ。
( ><)『毒田は、バントの構えを……しませんね。ヒッティングです』
( ゚∋゚)『まあ、そうでしょうね』
3球目4球目はどちらもストレートのボール。
次は5球目。恐らく次で決めてくる。
- 501 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/26(日) 00:35:46.15 ID:4Xo9dxQGO
- ( ><)『次はどんな球を投げるでしょうか』
( ゚∋゚)『そうですね。スクリューかカーブでしょう』
( ><)『そうですか。ありがとうございます。……さあ5球目』
('A`)(渡辺の決め球は2つ……スクリューかカーブ……)
('A`)(スクリューはさっき茂等さんに持っていかれたイメージがあるはず。だったら……カーブだ)
5球目、渡辺がモーションに入った瞬間、一塁の茂等が駆け出した。
( ><)『一塁ランナー茂等がスタートした!』
- 507 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/26(日) 00:41:04.94 ID:4Xo9dxQGO
- ( ><)『バッテリーウェスト――! 茂等のスチールを読んでいたか!』
( ゚∋゚)『このウェストは素晴らしい』
( ><)『俊足の茂等、強肩の天王寺、勝つのはどちらだ!?』
ボールがセカンドベース上でやり取りされる。
ボールの到達が早いか、茂等が早いか……視線が2塁審に注がれる。
「アウトォ!!」
( ><)『アウト! アウトです! 茂等スチール失敗!』
- 509 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/26(日) 00:45:26.70 ID:4Xo9dxQGO
- (;・∀・)(チッ……)
うなだれてベンチに帰る茂等。
その足で向かうのは監督のところだ。
( ´∀`)「茂等……」
( ・∀・)「すいませんでした」
( ´∀`)「……なぜ、ノーサインのスチールを?」
( ・∀・)「……渡辺の決め球がスローカーブと読みました」
( ´∀`)「それが外れた。と」
( ・∀・)「……そうです」
( ´∀`)「仕方ありません。次に期待していらすよ、茂等」
- 513 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/26(日) 00:51:50.64 ID:4Xo9dxQGO
- ( ><)『さあフルカウントの6球目』
渡辺の左腕から投げられたのは今度こそスローカーブ。
バントでも当てられないボールをスイングで捉えられる筈もなく。
( ><)『三振!! 毒田三振です!』
( ゚∋゚)『やはり最初の2球でバントを決めたかったですね。
ちゃんとすれば今頃ワンアウト2塁でしたから』
- 518 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/26(日) 01:00:50.44 ID:4Xo9dxQGO
- 『3番、レフト、魔将。背番号5』
J( ゚_ゝ゚)し(魔空間で四球にしたるで!)
( ><)『渡辺際どいコースにズバズバ決まります! 魔将見逃し三振! スリーアウトチェンジ!』
J( ゚_ゝ゚)し(やっぱ魔空間制御むずいわー)
- 521 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/26(日) 01:07:06.48 ID:4Xo9dxQGO
- ( ><)『さあ二回の表の攻撃です』
高岡はこの回も絶好調。
先頭打者をセカンドゴロに打ち取り5番打者を迎える。
(^o^)「わたしです」
( ><)『さあ左バッターボックスに入るのは小和田。走攻守で非常に高いレベルのプレーを見せます』
( ゚∋゚)『しかしね……素質は問題ないんですが』
( ><)『前年度はケガの連続で出場試合はわずか27。しかし出場試合全てでヒットを放っています』
- 525 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/26(日) 01:11:37.19 ID:4Xo9dxQGO
- ( ゚∋゚)『出れば結果を出すんですよ。大事なのはでる状態にあるかということです』
( ><)『インタビューで小和田は「今年は万全。走攻守全てでチームを引っ張る」ということです』
( ゚∋゚)『7年ぐらいそんなこと言ってますけどね』
( ><)『さあ小和田を迎えて高岡第一球ストライク。内角高めのストレート』
- 528 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/26(日) 01:16:15.08 ID:4Xo9dxQGO
- ( ><)『高岡第二球。内角へのスライダー……打った! っとこれは自打球』
( ゚∋゚)『……小和田くん足を押さえていますよ』
(^o^)「痛いよー痛いよー」
( ><)『トレーナーが治療に向かいます。これは大変なことになりました』
( ゚∋゚)『春の代名詞ですね』
- 535 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/26(日) 01:21:49.27 ID:4Xo9dxQGO
- ( ゚∋゚)『あ、監督が出てきましたね』
( ><)『どうやら小和田は自打球を受けて交代するようです』
( ゚∋゚)『早速さっきの宣言守れませんでしたね』
( ><)『そうですね。せめて一打席は持って欲しかった』
( ゚∋゚)『まあ春の代名詞ですし』
( ><)『小和田に代打を送ります。バッターは池沼。背番号は99です』
(^q^)「うぃくwwwwwwwぱしへろんだすwwwwwww」
- 538 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/26(日) 01:25:50.67 ID:4Xo9dxQGO
- ( ><)『ツーストライクに追い込まれてからの代打池沼は空振り三振です』
( ゚∋゚)『高岡くんの手からボールが離れる前にバットを振ってましたよ』
( ><)『ランナーがいるときの打率は.312。さらに得点圏打率は.405。
しかしランナーなしの打率は.071。極端な数字の池沼選手です』
- 545 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/26(日) 01:33:05.38 ID:4Xo9dxQGO
- ( ><)『さあバッターは我孫子。昨年21HRを放った和製大砲です』
(-_-)(……こいつはやっかいだ。スライダーから入るぞ)
从 ゚∀从(オッケー)
( ><)『第一球目ストライク。右打者の膝元をなめるようなスライダー』
(-_-)(次はフォーク)
( ><)『第二球……投げた!』
(;-_-)(!)
完全に失投。薄く抜けた球は力なく真ん中に入ってくる。
( ><)『打ったぁ――! 打球はレフトへ! 大きい―!』
- 548 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/04/26(日) 01:40:05.07 ID:4Xo9dxQGO
- 打球はグングンと伸びていく。
ここ、ニュー速スタジアムは広い球場ではある。
しかし我孫子のパワーはそのハンデをも覆した。
( ><)『レフト魔将完全に見送った――!!
ホームラン!! 天王寺第1号ソロホームラン!!』
(;-_-)(くっ……)
ここまで完璧と言っていいピッチングだった。
しかしたった一つの失投を逃してくれなかった。
開幕戦先制点、レールウェイズ。
V 0ー1 RW
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