- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/09(土) 20:56:19.38 ID:E4BtTlb3O
- PC再起動の間の人物紹介
('A`) 毒田剛 ドクタ・タケシ
25歳 二塁手
今作の一応主人公。
3割経験者。しかし最近は不調気味。
しかし弱小アクアリウムからのトレードを期に心機一転。
現在打率3割を上回り、不調の茂等に代わって1番を任されている。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/09(土) 21:01:11.21 ID:E4BtTlb3O
- ( ^ω^)内藤地平線 ナイトウ・ホライゾン
25歳 投手
7年目の右腕。
即戦力として期待されたがピンチになるとあがる性格で未完の大器に。
5月にプロ初先発勝利を上げてからは好調。
成績
6勝 4敗 防3.84
ドクオの成績
率.312 本 4 点 24
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/09(土) 21:04:37.97 ID:E4BtTlb3O
- (´・ω・`) 諸本信彦 モロモト・ノブヒコ
36歳 外野手
かつての三冠王を達成した主砲。
しかし顔面死球によるイップスでインコースに目を瞑るように。
チームをまとめるキャプテンだが、最近は荒れている。
妻子あり。ダジャレ親父。しかし最近はダジャレより暴言を吐くことが多い。
成績
一軍出場なし
- 20 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/05/09(土) 21:10:34.78 ID:cQLrkvQs0
- ( ・∀・) 茂等和弘
36歳 遊撃手
ヴィッパーズを諸本と共に支えてきた守備の人。
面倒見も良く守備に難を抱える毒田とキャンプ中行動を共にした。
打撃があまり良くなかったが近年はさらに悪化。
長年守ってきた1番打者を毒田に譲る。
守備はまだまだ一流だが本人は……?
成績
率.213 本1 点12
- 22 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/05/09(土) 21:13:05.15 ID:cQLrkvQs0
- ( ゚∀゚) 長岡譲二 ナガオカ・ジョウジ
24歳 遊撃手
シベリアレールウェイズ所属の期待の若手。
走攻守すべてで次元の高いプレーを見せる。
オールスターファン投票では茂等を抑えて遊撃手部門1位に。
成績も堂々たるものを現在残している。
めっちゃかわいい彼女がいる。毒田に妬まれたびたび闇討ちされる。
成績
率.378 本11 点51
- 24 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/05/09(土) 21:14:49.17 ID:cQLrkvQs0
- 从 ゚∀从 高岡理緋 タカオカ・リヒ
29歳 投手
昨年20勝を達成したニュー速ヴィッパーズの大投手。
渡辺とは小学校からの同級生でライバル。
精密なコントロールが武器だが最近はすっぽ抜けが多い。
そのため今年度は不調気味。
成績
4勝 6敗 防4.18
- 27 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/05/09(土) 21:16:06.39 ID:cQLrkvQs0
- 从'ー'从 渡辺綾 ワタナベ・リョウ
29歳 11年目 投手
安定したピッチングで5年連続2ケタ勝利を記録しているシベリアレールウェイズのエース。
高岡とはライバル関係だが本人はあまり気にしていない。
素手で掴めそうな球速のスローカーブが武器。
今年度も安定した投球を見せ、現在ハーラートップ。
成績
11勝 4敗 防2.71
- 31 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/05/09(土) 21:19:54.42 ID:cQLrkvQs0
- ( ^Д^) 宝笑児 タカラ・ショウジ
27歳 10年目 一塁手
不振の諸本に代わって4番を任されている。
諸本の影を追いかけ続けていたが自分の4番の形を模索中。
成績
率.299 本23 点89
<ヽ`∀´> 朴荷駄 パク・ニダ
33歳 6年目 三塁手
韓国から来た国民的打者。
最初こそいい成績を放つも最近はサッパリ。
性格はいい人。マッコリを馬鹿にされると切れる。酔うと脱ぐ。
成績
率.267 本17 点43
(K‘ー`) 川島慶三 カワシマ・ケイゾウ
22歳 4年目 外野手
実在の選手とは関係ない。
酔うと脱ぐ。
前スレで毒田たちより年上なことに気づき、今日年齢を変えたわけではない。
成績
率.280 本8 点 47
- 35 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/05/09(土) 21:24:01.46 ID:cQLrkvQs0
- J( ゚_ゝ゚)し アーロン・ガイエル あーろん・がいえる
37歳 3年目 外野手
登録名「魔将」。時空間とか魔空間とか磁界とか色々操る。
実在の選手とは関係ない。
流暢な日本語を喋る。この打者になると描写が激減するともっぱらな噂。
酔うとメチルアルコールを飲む。
成績
率.213 本33 点68
(,,゚Д゚) 擬古音子 ギコ・ネコ
31歳 9年目 外野手
女性ではない。
俊足好打・不動のセンターだったが持病の首痛で最近はめっきり出場機会が減る。
成績
率.244 本0 点22
- 39 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/05/09(土) 21:30:03.14 ID:cQLrkvQs0
- (;'A`) 「暑い!」
時は8月、猛暑の時期である。
世の皆様は夏休みに明け狂いセックスセックスする時期だ。
学生たちは海や山なんかでセックスセックスするのだろう。
そんな人はぜひ野球場に来てほしい。叩き殺してやるから。
(;^ω^) 「おおー、あっちい……」
この額から汗を垂らしているボンレスハムは内藤。
ここまで6勝を挙げているピッチャーだ。
俺の隣でジョグをしながら汗を流す姿はなんとも暑苦しい。
(;K‘ー`) 「あばばばばばばばばば」
さらにその隣では奇声を発する外野手川島。
( <☆><●>) 「ワカッテマス! ワカッテマス! 35℃以上あるのはワカッテマス!」
さらにさらにその隣では若手捕手の和手枡が煙を吹いていた。
- 43 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/05/09(土) 21:35:39.69 ID:cQLrkvQs0
- ('A`)ウボァー
思わず変な声を上げてしまうほどだ。
今俺達がいるのはヴィッパーズの室内練習場。
今日の夜からはニュー速スタジアムで試合がある。
それの調整で今俺達はジョギングをしているというわけだ。
从;゚∀从 「暑い! 熱い! ああ、もう髪の毛邪魔だ! くっそ!」
(-_-) 「ごちゃごちゃ言うな。剃るぞ」
从;゚∀从 「お前坊主だからって! ああ、もう邪魔! 切ってもいいよ! あ、やっぱダメ!」
あそこで走りながら口論しているのは今日先発する高岡さんと比木さんだ。
室内練習場は気温もあいまってサウナのようになっている。
このままでは誰かが倒れるのは時間の問題かも知れない。
- 46 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/05/09(土) 21:40:33.71 ID:cQLrkvQs0
- N| "゚'` {"゚`lリ 「よーし、練習終わりー」
そんな馬鹿なことを考えつつケージ打ちなどをこなし、練習時間は終わりを告げた。
阿部打撃コーチは汗が滴る高岡さんをじっと見つめている。
正直、怖い。
N| "゚'` {"゚`lリ 「……」
ああ、もう、この目。
現役時代から噂はあったがまさかこれほどとは。
仮にも現役コーチが現役選手に手を出すなんて……
阿部×高岡……いや、高岡×阿部……?
N| "゚'` {"゚`lリ 「高岡」
俺がまたもアホなことを考えていると阿部コーチが高岡さんに話しかけた。
まさか、本当に口説くつもりじゃないだろうな……?
- 47 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/05/09(土) 21:44:03.93 ID:cQLrkvQs0
- 从 ゚∀从 「なんすかー? 口説くなら他の男にしてくださいねー。
俺彼女いるんでー」
N| "゚'` {"゚`lリ 「肩、見せろ」
从 ゚∀从 「……」
('A`) 「……」
俺は長い間妄想に浸っていたため、室内練習場に残っているのはこの3人と比木さんだけだ。
俺はぎょっとした顔をするが、高岡さんと比木さんは意外にも思っていない様子だ。
从 ゚∀从 「……なんですか」
N| "゚'` {"゚`lリ 「見せろ。コーチ命令だ」
- 52 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/05/09(土) 21:49:43.36 ID:cQLrkvQs0
- 从 ゚∀从 「……」
高岡さんはしぶしぶといった様子でユニホームを脱ぎ、アンダーウェアも脱ぐ。
そうしたら誰もがうらやむトロフィーのような体のお出ましだ。
N| "゚'` {"゚`lリ 「……」
コーチはその体をペタペタと触る。
特に肩を重点的に。しかし俺の見た限りでは異常らしい異常は見当たらない。
肩が腫れてるでもない、内出血を起こしているでもない。
コーチの意図は俺には掴みがたかった。
- 54 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/05/09(土) 21:54:52.97 ID:cQLrkvQs0
- N| "゚'` {"゚`lリ 「……悪かったな、手間取らせて」
コーチはそう言うと高岡さんから手を放した。
なんだろう、本当は高岡さんの体を触りたかっただけなんじゃないだろうか。
しかし、先ほどまでのコーチの口調は真剣そのものだった。
从 ゚∀从 「……ふう、まあいーっすけど。服脱ぐくらい」
そう言って高岡さんは地面に落とした服を拾おうとする。
その瞬間、コーチはまた高岡さんの体に手を伸ばした。
从; ∀从 「づぅっ!!」
刹那、高岡さんが叫んだ。
コーチはその右手を高岡さんの肩をポン、と叩いただけだ。
それにも関わらず、高岡さんは痛みを訴えた。
- 56 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/05/09(土) 21:57:30.12 ID:cQLrkvQs0
- N| "゚'` {"゚`lリ 「……やはりな」
从 ゚∀从 「……」
高岡さんはバツの悪そうな様子で明後日の方を見ている。
ちょうど悪いことをした子供が怒られてるような態勢だ。
N| "゚'` {"゚`lリ 「開幕からおかしいおかしいとは思っていたが……やはり肩か」
从 ゚∀从 「……すんません」
N| "゚'` {"゚`lリ 「それで4勝できたのが奇跡だよ……医務室に行くぞ、もちろん俺付添だ」
从 ゚∀从 「……うぃす」
- 57 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/05/09(土) 22:00:29.22 ID:cQLrkvQs0
- そういうやり取りのもと、2人は医務室へと消えていった。
最後に、コーチは比木さんに向って、
N| "゚'` {"゚`lリ 「今日の高岡は回避だ。誰になるかはできるだけ早く伝える。よろしく頼む」
そんな言葉を残した。
比木さんは一言二言コーチたちと会話を交わし、俺の方へやってきた。
(-_-) 「……いたのか」
('A`) 「すいません。盗み聞きしちゃいました」
(-_-) 「構わん。どうせすぐ公になる」
- 60 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/05/09(土) 22:05:55.71 ID:cQLrkvQs0
- ('A`) 「比木さん……高岡さんのこと」
気づかなかったんですか、とは言えなかった。
もし気づいていなかったら非難することになってしまうからだ。
(-_-) 「……気づいてたさ」
('A`) 「……!」
(-_-) 「普段よりも横から投げている、肩をかばっている、
横から投げるから変化球の曲がりが大きくなっている、その代りコントロールが悪くなっている……」
('A`) 「……気づいてたなら、どうして」
- 63 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/05/09(土) 22:09:12.74 ID:cQLrkvQs0
- (-_-) 「……あいつの性格上、な」
('A`) 「……」
(-_-) 「あいつが入ってきた時、専属捕手になったのは当時2番手の若かりし俺だった。
どちらにも経験を積ませたかったんだろうな。俺達は犬猿の仲で全然機能しなかったが」
('A`) 「犬猿の仲……」
先ほどの2人の言い争いを思い出す。
しかし、あれはただの和気あいあいとした言い争いだ。喧嘩ではない。
物静かな比木さんが犬猿の仲だったと言うならそれはそれはすごいものだったのだろう。
- 65 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/05/09(土) 22:13:06.51 ID:cQLrkvQs0
- (-_-) 「当時は殴り合いのケンカもした。試合途中に激突するのもざらだった」
('A`) 「……」
(-_-) 「そんなことを繰り返してたら2軍に落ちた。2人仲良く、な」
比木さんは昔を懐かしむように目を細める。
(-_-) 「そこで、俺達は心機一転していつも行動を共にした。最初は死ぬほど嫌だったがな。
着替え、移動、部屋、バス、トイレ……本当に四六時中一緒にいた」
- 68 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2009/05/09(土) 22:17:57.40 ID:cQLrkvQs0
- (-_-) 「そんな生活をしていたらな、わかってきたんだ。あいつの性格が。
完璧主義者で、わがままだが、チームのことを中心にも考える。完投をしたがる。
リリーフを休ませたがる。その当時はそんな力も無いのにな」
('A`) 「……すげえっす」
高岡さんが入団したのは大卒22歳。
その時比木さんは25歳だった。22歳の時俺は何をしていただろう。
ただ漠然とぼうっと球を追いかけていただけだ。
チームとか、そんなの考えもしていなかった。
(-_-) 「すごかないさ。ただの利己的なわがままだ。
……それでその性格を心がけたリードをしたらすこぶる良かった。
すぐに1軍に揃って返り咲いた」
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/09(土) 22:29:08.70 ID:E4BtTlb3O
- (-_-)「……それからかな。なんとなくわだかまりが取れたのは。
……すまんな、何の話だったか」
('A`)「高岡さんの怪我を隠していた理由、です」
(-_-)「ああ、そうだったな……責任感、かな」
('A`)「責任感……?」
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/09(土) 22:36:22.50 ID:E4BtTlb3O
- (-_-)「ああ。責任感。今うちの先発は駒が足りてるとは言い難い」
('A`)「……ですね」
事実だった。
今規定投球回数を達成しているのは高岡さんと内藤のみ。
あとは入れ替わり立ち替わりでなんとかやりくりしているのだ。
(-_-)「そんな中、自分が離脱する。あいつには耐えがたい失態だろうさ」
('A`)「……」
(-_-)「だから、異常に気づいても俺はあいつと何ら変わらず接した。
あいつの意志を尊重しようとした」
- 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/09(土) 22:41:08.41 ID:E4BtTlb3O
- (-_-)「結局のところ……自分勝手だがな」
('A`)「そんなこと……」
ないです、とは言えなかった。
確かに今季の高岡さんは不安定すぎる投球をしていた。
勝ちよりも負けが多いのも高岡さんらしくない。
(-_-)「『そんなことないです、とは言い難い』……そんな顔だな」
('A`)「……すいません」
(-_-)「謝らなくていいさ。当たり前のことだ。
プロなら、休むべきだった。4月で異常に気づいた時点で休ませるべきだった」
- 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/09(土) 22:44:28.67 ID:E4BtTlb3O
- (-_-)「結局、甘いのさ……俺も、あいつも」
そういって比木さんは荷物を左肩にかけ歩き出す。
俺もそれに続く。
(-_-)「……あいつは、今季は厳しいかもしれん」
('A`)「えっ……」
(-_-)「これからは、厳しい戦いになるかもしれん。投打の軸がいないからな」
('A`)「……諸本さん、ですか」
- 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/09(土) 22:49:38.60 ID:E4BtTlb3O
- 諸本さんは未だ二軍で苦しんでいるらしい。
たまに練習場ではち合わせたりもするが、いつもと変わりなく接してくれる。
('A`)「……諸本さんがいないのは、大きいです」
(-_-)「それが、今度は投手陣にも出てくる。
斉藤はまとめるタイプじゃないし、杉浦は寡黙だしな」
('A`)「ううん……」
現在ヴィッパーズは首位に立っている。
2位とは9ゲーム差。
気の早いファンからは、優勝のカウントダウンも聞こえてくる。
- 91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/09(土) 22:57:20.66 ID:E4BtTlb3O
- ('A`)「……優勝しましょうね」
(-_-)「当然だ」
しかしそれが厳しいのはわかっている。
先発陣が苦しい分、中継ぎ陣に疲労がたまってくる。
いかに屈強なプロでも、この暑さに疲れは否応なく出る。
('A`)「……」
9ゲーム差が、ひどく心もとないものに見えた。
- 96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/09(土) 23:06:47.25 ID:E4BtTlb3O
- 結局この日の試合は代役の中山さんが炎上。
完投ながら12失点。
高岡さんは二軍に。
ゲーム差も8に縮められ、安定していたヴィッパーズに暗雲が立ちこめた。
8月12日
ニュー速ヴィッパーズ対大阪ジャガース
RH
J 240001302 1221
V 000013001 59
J 能美・筒居・安倍‐加納
V 中山‐比木
本塁打
金木 24 荒井 26
- 108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/09(土) 23:36:17.71 ID:E4BtTlb3O
- ( ^ω^)「……」
あれから2週間。
ヴィッパーズは案の定中継ぎ陣に疲れが見え始め8月を負け越し。
2位のレールウェイズについに2ゲーム差まで詰め寄られた。
('A`)「……」
明日からは9月。
この日デーゲームを勝利で終えた俺たちはいつものごとく寮のロビーに集まっていた。
- 109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/09(土) 23:41:18.53 ID:E4BtTlb3O
- (K‘ー`)(すっげえ、こいつが同い年かよ……)
ロビーのテレビに映るはレールウェイズの長岡。
現在打率が日本記録ペースらしい。
俺と内藤は長岡の同じ高校の一つ先輩だ。
しかしかたや今までやる気なしの男、かたややっと活躍し始めた男では長岡に顔向けできない。
('A`)「しかも……」
開幕戦でスタンドにいた、あのかわいい、
あの、可愛い……
(゚A゚)「こっ、殺すぞ長岡っ!」
- 111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/09(土) 23:45:13.94 ID:E4BtTlb3O
- そうなのだ。
メアドや携番をゲットしたにも関わらず俺は未だ伊藤さんを口説き落とせていないのだ。
(K‘ー`)「嫉妬も大概にしろや。だいたいもう9月だぞ? 中学生か」
慶三も奥手の俺に呆れてもはやタメ口だ。
いや、でもこれはシメた方が……
- 115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/09(土) 23:53:14.32 ID:E4BtTlb3O
- ('A`)「いや、でも……」
背後から俺の携帯を内藤が狙っているのはわかった。
しかし携帯の機能を使いこなした俺に敵はない。
( ^ω^)「おらっ! 取った!」
俺のジャージから内藤が携帯を抜き取る。
そしてスナップスローで内藤が慶三に携帯を投げた。
(K‘ー`)「ナイススロー、内藤さん!」
慶三が俺の携帯を開く。
そして固まった。計算通り。
- 117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 00:00:04.32 ID:lPPMkXNNO
- ( ^ω^)「どうした? 待ち受けがキモイのかお?」
失礼な。
咲‐saki‐の咲ちゃんの「私のイーピンをリンシャンカイホウしてください///」
という画像のどこがキモイのだ。
(K‘ー`)「いや、キモイですけど違います」
( ^ω^)「じゃあなに……ああ、オートロックかお」
(゚A゚)「へっ……いつまでもてめえらにユートピアのチケットを破られてたまるかよ……」
( ^ω^)「そのチケット期限切れてるんじゃね?」
- 120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 00:06:27.79 ID:lPPMkXNNO
- ( ^ω^)「心配すんなお、慶三」
(K‘ー`)(?)
( ^ω^)「ドクオ、誕生日は?」
(゚A゚)「8月22日」
( ^ω^)「0822」
(K‘ー`)「解除来ました!」
( ^ω^)「よっしゃ!」
(゚A゚)「UWAAAAAA」
- 125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 00:13:03.94 ID:lPPMkXNNO
- ( ^ω^)「さあ何を送ろうかグフフ」
(K‘ー`)「朴さんのソウルタワー(9KB)でも送ろうかグフフ」
(゚A゚)「やめろぉ……やめろぉ……」
悪魔が、悪魔2人が俺の桃源郷を潰そうとしてやがる!
誰か、誰か助けて……!
( ^ω^)「いや、ダメージ的にはセクハラの方が……」
(K‘ー`)「いや、やはり直接的に……ん」
悪魔たちがそんな会話をしていると俺の携帯が震えだした。
慶三がそれを見てニヤニヤ笑う。
(K‘ー`)「助かりましたね」
そう言って慶三が俺に携帯を投げ返す。
ディスプレイには伊藤さんの名が踊っている。
('∀`)
- 128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 00:18:15.81 ID:lPPMkXNNO
- ('∀`)「見たかいやお前ら……ピンチの後にチャンスありやで……」
( ^ω^)「いやーしかし長岡はすごいおー」
(K‘ー`)「高校からあんなにすごかったんですか?」
( ^ω^)「高校からセンスはあったけど開花したのは大学だと思うお」
(K‘ー`)「はあー。僕も大学行けばよかったなあ」
( ^ω^)「一足早くプロの世界に入れたんだからよしだお」
もはや悪魔たちは俺の話を聞いていなかった。
涙をこらえながらメールを確認する。
('A`)「……え?」
- 131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 00:22:27.76 ID:lPPMkXNNO
- ――――――――――
to:毒田剛
from:伊藤紅
title:緊急!
本文
毒田さん、大変です!
今雑誌の編集部に届いたFAXなんですけど……
多分、明日の朝の新聞に載ると思うんですが……
諸本さんが、引退表明しました……
今確認も兼ねて編集部はてんやわんやです!
詳しいことがわかり次第追って連絡します!
――――――――――
- 134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 00:25:53.26 ID:lPPMkXNNO
- もう9月だというのに、蝉がうるさかった。
俺は、大声を上げて驚いた。
2人は俺が伊藤さんに振られたとでも思ったのだろう。
ニヤニヤしながら近寄ってきた。
(;^ω^)
(;K‘ー`)
メール画面を見て、2人も固まった。
投打の軸が、完全に墜ちた瞬間だった。
- 143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[J( ゚_ゝ゚)し「眠いでー」] 投稿日:2009/05/10(日) 00:50:15.24 ID:lPPMkXNNO
- 次の日の朝、スポーツ紙は諸本さん一色だった。
VIPスポーツ、ニュー速スポーツ、スポーツチャンネル、デイリースポーツ……
書かれている文章や掲載された写真に僅かな差はあれど、大意はどれも同じだ。
『諸本さんが引退する』それを否定している新聞は、ない。
('A`)「……」
( ^ω^)「……」
(K‘ー`)「……」
( ´∀`)「皆さん、お揃いですか?」
今日は試合がない。
いつもならちょっとした練習をするのだが、今日は違う。
緊急ミーティングが組まれていた。
- 150 名前:J( ゚_ゝ゚)し<知らんかったと言える雰囲気ちゃう 投稿日:2009/05/10(日) 00:57:17.46 ID:lPPMkXNNO
- ( ´∀`)「もうご存じでしょうが、諸本が引退を表明しました」
( ・∀・)(……)
古くからの友人、茂等さんは腕を組み、目を閉じて座っている。
何か思うことがあるのかもしれない。
( ФωФ)「……諸本さんは、まだ複数年契約が残っていたはずですが」
ニュー速の最強セットアッパー・杉浦さんが質問をする。
確かに諸本さんは5年の長期契約をしていたはずだ。
- 153 名前:J( ゚_ゝ゚)し<わしは働かなくても金が欲しい 投稿日:2009/05/10(日) 01:02:48.13 ID:lPPMkXNNO
- ( ´∀`)「……ええ、確かに。それも、引退の原因の一端になったようです」
( ФωФ)「……と、言うと」
( ´∀`)「戦えない人間が金を貰うわけにはいかない、と」
( ФωФ)「……そうですか」
('A`)「……」
戦えない人間。
確かに諸本さんは二軍でもインコース責めにあい、打率1割に沈んでいたらしい。
成績だけ見れば、解雇されてもおかしくない。
- 155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 01:06:17.24 ID:lPPMkXNNO
- しかし。
しかし、『諸本信彦』という名前にはみんなをまともあげる力があった。
今4番に座っている宝さんも、諸本さんがいるからある意味安心してスイングできた。
( ´∀`)「それに、今この時期に諸本が引退表明した理由」
( ・∀・)「……」
( ´∀`)「わかりますか?」
- 158 名前:J( ゚_ゝ゚)し(わしを目立たせるためや!) 投稿日:2009/05/10(日) 01:13:05.34 ID:lPPMkXNNO
- ( ・∀・)「……カンフル剤、ですか」
( ´∀`)「ええ。今私たちは決して調子がいいとは言えません」
( ^ω^)「……」
( ´∀`)「今頃独走していてもおかしくない成績を前半残しながら失速」
('A`)「……」
( ´∀`)「諸本は、こんな状況に何か一石を投じたかったんだと思います」
( ФωФ)「……」
( ´∀`)「……もちろん、チームの失速は私たちコーチ陣の責任です」
(-_-)「……」
( ´∀`)「今日は調整日に充てます。
各自ここからをどうやって戦うかを考えてください。では、解散」
- 160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 01:21:13.79 ID:lPPMkXNNO
- ( ^ω^)「……」
('A`)「……どうする」
( ^ω^)「うーん……」
動きあぐねた。
チームメイトたちは三々五々思い思いに散らばった。
練習をする者、久々の休日に羽を伸ばそうとする者。
大別して2種類に分けられる。
('A`)「どうすんべか……」
( ^ω^)「うーん……」
しかし俺達はどちらにも属さなかった。
練習をする気にはなんとなくなれないし、かといって部屋でゴロゴロするのも性に合わない。
- 161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 01:27:25.85 ID:lPPMkXNNO
- ( ・∀・)
ふと見ると茂等さんがさっきと同じ体勢のまま座っている。
思わず話しかける。
('A`)「茂等さん……大丈夫っすか?」
( ・∀・)「……お前に心配されるほど重傷じゃねえさ」
( ^ω^)「……」
( ・∀・)「ふぅー……」
大きいため息をついてパイプ椅子の背もたれにめたれる茂等さん。
椅子がキシキシときしむ。
( ・∀・)「……俺ぐらいの歳になるとな」
('A`)「……」
( ・∀・)「同級生なんぞほとんどいなくなる」
- 163 名前:J( ゚_ゝ゚)し<わいは家族サービスや! 投稿日:2009/05/10(日) 01:31:49.50 ID:lPPMkXNNO
- ( ・∀・)「やっぱりな、しんどいもんだよ。同級生が引退すんのは」
('A`)「茂等さん……」
口調に少し茂等さんらしい覇気がない。
やはり親友が辞めるのは堪えるのだろうか。
( ・∀・)「あいつぐらいの選手になるとな、引退の時期は自分で決めるんだ」
('A`)「……」
( ・∀・)「毒田、体の衰えを感じたことはあるか?」
- 166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 01:36:02.05 ID:lPPMkXNNO
- ('A`)「いえ……」
自分はまだ25歳だ。
体の衰えを感じたことはない。
しかしいつか感じることにはなるのだろう。
( ・∀・)「……引退の時期は、自分で決める」
('A`)「……」
( ^ω^)「……」
( ・∀・)「俺も、例外じゃない」
それは、まるで茂等さんが茂等さんに言い聞かせているようだった。
- 170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 01:42:06.46 ID:lPPMkXNNO
- ( ・∀・)「さて、俺は行くぜ」
そう言って茂等さんは椅子から立ち上がる。
パイプ椅子は相変わらずキイ、と軋んだ。
思わず茂等さんに尋ねる。
('A`)「ど、どこにですか?」
( ・∀・)「……諸本の家だ。二軍も試合や練習はないから多分家にいるだろう」
(;^ω^)「茂等さん、それは……」
( ・∀・)「何でも自分の五感で確かめないと気が済まないタチでな」
('A`)「……俺も行きます」
(;^ω^)「ドクオ……! ……僕も行きますお」
- 177 名前:一応区切りよくしておこう 投稿日:2009/05/10(日) 01:51:44.84 ID:lPPMkXNNO
- ( ・∀・)「そうか」
茂等さんは俺たちがついていくことを了承した。
別に茂等さんとしてはどちらでも良かったのだろう。
( ・∀・)「じゃ、行くか」
そうして俺たちは茂等さんの車に揺られ諸本さんの家に向かった。
このとき俺は三冠王の家はどんなだろう、と場にそぐわない思考をしていた。
- 203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 09:36:13.43 ID:lPPMkXNNO
- ( ・∀・)「……」
( ^ω^)「……」
('A`)「……」
諸本さんの家に向かう車内は無言だった。
各々考えることがあるのかもしれない。
俺はさっき茂等さんに言われた引退の時期について考えた。
('A`)「……」
頬杖をつきながら右手をぐ、ぱ、ぐ、ぱさせる。
何でもないことだ。頭で指令を出せばなんの問題もなく右手は動く。
しかし、年をとれば頭から右手への距離がだんだん長くなるのだろう。
それによって生じるコンマ1秒の差は、プロにとって致命的だ。
- 204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 09:40:19.05 ID:lPPMkXNNO
- ( ・∀・)「……ついたぞ」
そう言って車は緩やかに停車する。
降りた先にあるのは豪邸とはいかないまでも、立派な一軒家だった。
( ・∀・)「……」
茂等さんが呼び鈴を押す。
インターホンに出てきた奥さんらしき人と会話を交わす。
その内、パタパタという足音と共にドアが開かれた。
ζ(゚ー゚*ζ「いらっしゃい、茂等さん、内藤さん、毒田さん。どうぞ上がってください」
- 206 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 09:44:45.60 ID:lPPMkXNNO
- ('A`)(きれいな人だな……)
諸本さんの奥さんの第一印象はそれだった。
ぱっちりとした目、ゆるやかにかけられたパーマ、こざっぱりとして洗練された衣服。
諸本さんと歳が近いから30は越えているはずだが、それをまったく感じさせない人だ。
( ・∀・)「お邪魔します」
( ^ω^)「お邪魔しますお」
('A`)「お邪魔します」
そう言って玄関に上がらせてもらう。
しかし玄関に諸本さんの姿は無かった。
- 208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 09:53:03.59 ID:lPPMkXNNO
- ζ(゚ー゚*ζ「今お茶淹れますから……ソファにでも座っててください」
( ・∀・)「お構いなく」
ζ(゚ー゚*ζ「いえいえ。……茂等くん以外ははじめましてね」
( ^ω^)「内藤ですお。ヴィッパーズでピッチャーしてますお」
('A`)「毒田です。ヴィッパーズでセカンドしてます」
ζ(゚ー゚*ζ「知ってますよ。活躍、見させてもらってます。
諸本の妻の怜です。よろしくね」
ふと、壁にかかったユニフォームを見る。
ニュー速のユニだ。背番号は諸本さんの3。
しかし縫い付けられている名前が違った。
『NOBUHIKO』『REI』『HERICAL』
('A`)(諸本さんと、奥さん……もう一人は、子供さんかな)
背番号3をつけた3着のユニは仲良く壁に吊ってあった。
- 210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 10:00:44.48 ID:lPPMkXNNO
- ζ(゚ー゚*ζ「ごめんなさいね。今あの人、ランニングに出ちゃってるのよ」
( ・∀・)「そうなんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「もう引退決めたんだからゆっくりすればいいのにねえ」
('A`)「……」
茂等さんと怜さんは2人で話している。
内藤は立ち上がって飾ってあるトロフィーをまじまじと見つめている。
('A`)「……」
ふと、隣のドアから子供が覗いているのが見えた。
恐らく諸本さんの子供だろう。
('A`)「『HERICAL』……ヘリカルか」
*(‘‘)*「……」
- 211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 10:06:55.29 ID:lPPMkXNNO
- *(‘‘)*「……おじさん知ってる! どくおとこだ!」
(゚A゚)
いささかびっくりする。
最近はネット上に留まらずファンの応援ボードにまで『独男』が浸透している。
しかしこんな小さな子供でさえも……?
(゚A゚)「まず、1から突っ込もう。俺はおじさんじゃない」
*(‘‘)*「20すぎればみんなおっさんだ!」
(゚A゚)「ヘリカルちゃんは今いくつだ?」
*(‘‘)*「いつつ!」
(゚A゚)「あと15年経てば君はおばさんだぞ?」
*(‘‘)*「そんなわけねーわ、どくおとこ!」
- 213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 10:10:10.44 ID:lPPMkXNNO
- (゚A゚)「そしてふたつめ。俺は独男じゃない」
そうだ。おじさんはともかく、否定しておきたいのはそこだ。
確かに今は彼女らしき彼女はいない。
しかし友達以上恋人未満の関係なら……!
*(‘‘)*「うっそだー! そのかおで、かのじょいるわけねーじゃん!」
- 216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 10:16:17.46 ID:lPPMkXNNO
- ('A`)
ζ(゚ー゚#ζ「コラ、ヘリカル! 謝りなさい!」
*(‘‘)*「だってホントのことじゃん!」
( ^ω^)「三冠王のトロフィーってこんなに立派なんだ……」
( ・∀・)「俺も最初見たときは焦ったわ」
(´・ω・`)「おーい」
('A`)ホンワカパッパー ホンワカパッパー ドーラエモンー
ζ(゚ー゚#ζ「ほら、毒田さんがドラえもんが未来に帰ったときののび太みたいになってる!」
*(‘‘)*「ヘリは、ほんとのこといっただけだもん!」
( ^ω^)「打撃3部門でも微妙にデザインが違うんですね」
( ・∀・)「凝ってるよな」
(´・ω・`)「おーい、帰ったぞ。おーい」
- 218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 10:27:16.74 ID:lPPMkXNNO
- ('A`)キーソウテンガイ シシャゴニュウ- テーガイクーソク ラクガキムーヨウー
ζ(゚ー゚#ζ「謝りなさい!」
*(‘‘)*「すまんな、どくおとこ!
まあかつやくすれば、かねにつられて、おんなもくる!」
ζ(゚ー゚#ζ「ヘリカル!」
(´・ω・`)「おーい」
( ^ω^)「MVPのトロフィーでかすぎワロタ」
( ・∀・)「これこそ鈍器のようなものだな」
(´・ω・`)「ねえ、俺を中心としたシリアス展開じゃないの?」
- 220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 10:33:43.91 ID:lPPMkXNNO
- ('A`)イイデスヨ、イイデスヨハハハ
なんとか事態が収束した時。
(´;ω;`)
部屋の隅で泣いている三冠王がいた。
- 221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 10:37:37.76 ID:lPPMkXNNO
- ('A`)「なんで泣いてるんすか」
(´;ω;`)「おまえ等のせいだよ! ランニングから帰ってきたらなんか騒がしいし!
だいたい怜と毒田はいいとしてなんで茂等と内藤まで俺をガン無視だ!
ふざけてたらチョークかけるぞばか!」
そうして紆余曲折あったあと。
怜さんがお茶を淹れ直してくれ、真剣な話し合いが始まった。
- 223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 10:47:08.59 ID:lPPMkXNNO
- (´・ω・`)「……さて。俺をからかうためだけに来たんじゃないだろ?」
( ・∀・)「ああ、俺たちもそこまで暇じゃないしな」
シャワーを浴びた諸本さんがソファにどっかりと座る。
つけっぱなしになっていたテレビを消す。
下品な笑い声からこの部屋は完全に隔絶された。
( ・∀・)「……本当に、引退するのか」
ゴクリ、と唾を飲み込む。
見ると内藤も同じな顔をしている。
(´・ω・`)「……するよ」
返ってきた答えは、やはりというか予想されたものだった。
- 224 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 10:52:50.58 ID:lPPMkXNNO
- ('A`)「……」
(´・ω・`)「俺が持ってる情報は、スポーツ紙に書いてあるものと大して違わないさ」
( ^ω^)「……」
(´・ω・`)「結局俺のイップスは直らなかった」
イップス。
諸本さんの場合インコースに目を瞑ってしまうことだ。
体のケガならともかく、精神の揺らぎは一朝一夕で直るものではない。
まして諸本は36歳。普通に過ごしていても衰えが見える時期だ。
- 245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 12:03:19.65 ID:lPPMkXNNO
- (´・ω・`)「……正直さ、妬ましかったよ。画面の向こうで活躍するお前等が」
('A`)「……」
(´・ω・`)「誰もいない二軍のスタジアムで真っ黒に日焼けしてドロドロになって白球追いかけて。
俺何してるんだ、って何回も思った」
( ^ω^)「……」
( ・∀・)「……」
内藤と茂等さんは何も言わずに諸本さんの次の言葉を待つ。
- 246 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 12:08:44.35 ID:lPPMkXNNO
- (´・ω・`)「今までは、一軍に戻って4番に返り咲くため、って自分に理由付けができた。
自分がいなけりゃヴィッパーズは機能しないとまで考えた」
('A`)「……」
(´・ω・`)「実際は違った」
そう。
主砲を欠いた状態であってもヴィッパーズは新4番の宝さんの活躍もあり現在首位。
言い方は悪いが、諸本がいなくてもなんとかチームは回っているのである。
(´・ω・`)「絶望したよ。俺がいないヴィッパーズなんて負ければいい、とまで思った」
( ・∀・)(……)
(´・ω・`)「そんなことを一瞬でも考えた自分にさらに絶望したよ」
- 247 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 12:13:36.37 ID:lPPMkXNNO
- (´・ω・`)「その時引退を決意したよ。勝つ気が無い奴はプロの資格なしさ」
( ^ω^)「……」
('A`)「……」
内藤も、俺も、何を言えばいいのかわからなかった。
(´・ω・`)「自分に絶望したのはもう一つあるんだ。
毒田、そのヘリカルの絵を剥がしてみてくれないか」
('A`)「え? はあ」
そう言われ、壁に何枚も貼られているヘリカルちゃんの絵を剥がす。
そして、俺は息をのんだ。
('A`)「ーーっ!」
絵の後ろの壁には、見るも無残な穴が開いていた。
- 253 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 12:21:13.21 ID:lPPMkXNNO
- (´・ω・`)「まるで中2の男子みたいだよな。俺が開けたんだ。それ」
('A`)「……」
意外だった。
温厚な諸本さんが、こんな激情に任せた行いをするとは信じがたかった。
あの茂等さんでさえ、驚いた顔をしている。
(´・ω・`)「家で悩んで悩んで。
ヘリカルに『もうお父さんテレビに出ないの?』って聞かれて切れちまった。
バットでさ、何回も何回も壁を殴った。
壁に穴を開けたことより、子どもの前でみっともない姿見せちまったのと、
バットをそんなことに使った自分が衝撃的だったよ」
見ると、ヘリカルちゃんは父である諸本さんを遠巻きに見つめている。
諸本さんのこと、すぐに謝ったのだろう。
しかし、幼いヘリカルちゃんの脳裏に諸本さんの行動は刻み込まれたに違いない。
- 256 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 12:27:42.97 ID:lPPMkXNNO
- (´・ω・`)「怜はすぐに俺が開けた穴にヘリカルの絵を貼ってくれた。
それを見て、自分のちっぽけさに泣いたさ。
ヘリカルにも必死で謝った。当然まだ許してくれないけどな」
壁には10枚ほどの絵が貼られている。
ということはあの絵たちすべての後ろに穴が隠されているのか。
絵には、諸本さんが笑顔でバットを振る姿がクレヨンで描かれていた。
( ・∀・)「……そうか」
(´・ω・`)「……ああ、俺は一抜けだ。そんなものが積もり積もってな。
引退宣言したら多少楽になったよ。寂しいけどな」
そう言って諸本さんは微かに笑った。
- 261 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 12:36:13.28 ID:lPPMkXNNO
- ('A`)「……」
帰りの車の中、頭にこびりつくのは諸本さんの家族だった。
ζ(゚ー゚*ζ「私は、この人の決断だったら、どこまでもついていくわ」
*(‘‘)*「……またこいよ、どくおとこ!」
ヘリカルちゃんはまだ諸本さんを許したわけではないらしい。
諸本さんが帰ってきてからはずっと怜さんにしがみついていた。
しかし諸本さんが真摯な態度で謝り続ければ、許してくれるのも時間の問題だろう。
('A`)「……」
俺は信号待ちの車内から見える野球帽をかぶった少年たちを見て呟いた。
('A`)「諸本さんの、最後の花道……飾りましょうね」
( ^ω^)「……お」
( ・∀・)「俺は……自分のために優勝するさ」
信号が青になる。
茂等さんがアクセルを踏む。
車は、勢いよく走り出した。
- 263 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 12:45:30.78 ID:lPPMkXNNO
- それからヴィッパーズは諸本さんの引退宣言を期に巻き返す。
負け越していた8月を忘れさせるように勝ち続けた。
9月は大幅に勝ち越した。しかし2位のレールウェイズも負けてはいない。
それどころか、ヴィッパーズの勢いを上回り、ゲーム差を1に縮めたのだ。
( ><)『スポーツニュースの時間です。解説に鳥谷さんを迎えてお送りします』
( ゚∋゚)『140試合中138試合が終了しました。首位はヴィッパーズ』
( ><)『82勝54敗2分です。2位のレールウェイズは81勝55敗2分。大接戦です』
( ゚∋゚)『明日はヴィッパーズ対レールウェイズの直接対決ですからね。
好ゲームを期待したいですね』
( ><)『はい、ヴィッパーズが勝って優勝を決めるか、
レールウェイズが勝って優勝に望みをつなぐか!
プレーボールは明日午後6時、ニュー速スタジアムです!』
- 264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/05/10(日) 12:49:39.07 ID:lPPMkXNNO
- ('A`)「……」
部屋で丹念にグラブを磨く者。
( ^ω^)「僕が……明日の先発……」
不振を、克服せんとする者。
( ゚∀゚)「……」
自らのバッティングを、鏡で省みるもの。
(´・ω・`)「……がんばれ」
戦友に、エールを送る者。
全ての思いは、明日――午後6時に収束する。
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