- 6 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 14:06:44.51 ID:9BRx3B/70
- ガタンゴトン。ガタンゴトン。
そんなデフォルメされた電車の音が聞こえる。
実際はバスに乗っているのだからそんな音はしない。ただ言ってみたかっただけだ。
窓の外に忍者を走らせていると屋根にぶつかって死んでしまった。
(´<_` ) 「慶三、あっちの気温はどうだ?」
(K‘ー`) 「待ってください。今コロコロ予想が変わると話題のYahooウェザーで……うわ、33度ですって」
(´<_` ) 「うひゃあ」
俺にとっては実に2か月ぶりとなる1軍の面々。
今ヴィッパーズはシベリアレールウェイズの本拠地に向かっているところだ。
レールウェイズスタジアム所沢。夏は暑く冬は寒い。
12球団一過酷な場所に球場が建っているともっぱらの評判だ。
:('A`):
それにしてもさっきから手汗が止まらないのはなんでかなあ。
緊張してんのかなあ。空調ガンガンかかってんのになあ。
- 8 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 14:11:51.48 ID:9BRx3B/70
- ( ・∀・) ヒソヒソ ヒソヒソ (・∀ ・)
('A`) 「……?」
ああ、一緒の列に並べるとややこしくなるからこれまでの10スレ会話させなかった2人が会話をしている。
なにかなあ。これまでの経験からして良くないことを話していそうだ。
(・∀ ・) (戻ってきましたよ……これでチーム防御率も0.5は上がりますね)
( ・∀・) (ああ……美府浜で少しは直ってりゃいいんだが)
(・∀ ・) 「2か月のミニキャンプぐらいで治るならとっくに治ってるでしょ……」
( ・∀・) 「もう駄目だよ。あいつは。センスがねえよセンスが」
('A`) 「陰口隠す気まったくねえなあんたら」
- 13 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 14:20:56.28 ID:9BRx3B/70
- 俺が2軍に行っていた時のヴィッパーズを整理しておこう。
現在ヴィッパーズは2位。1位は今日対戦するレールウェイズ。ゲーム差は2.5。
打撃陣が不調で現在はなんとか投手陣が踏ん張っている状態だ。
从 ゚∀从 現在9勝の高岡さん。
( ^ω^) 現在7勝の内藤。
d(´<_` ) v(・∀ ・)v ( ФωФ)b 最強の中継ぎ陣・トリプルS。
('A`) 「ここに山本さんが復活……と」
もし本当に山本さんが今日復活すれば登板過多気味の中継ぎ陣を休ませることができる。
ここはなんとか耐えて打撃陣の復調を待たなければいけない。
('A`) 「まあ……」
打撃陣については俺にも責任……いや、かなりの責任がある。
- 17 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 14:26:46.03 ID:9BRx3B/70
- 現在3割を超える打率を残しているのは宝さんのみ。
その宝さんもチーム事情で4番に置けず、3番で使っている状態だ。
ヴィッパーズにとっての誤算。
('A`) 俺の不調。 (打率2割5分を切る低空飛行)
J( ゚_ゝ゚)し アーロンの絶不調。 (打率2割前後を推移)
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ マリントンが今一つ波に乗れない。
これらが挙げられるだろう。
その他の選手もつながりが悪く、なかなか点に結び付かない。
そんな状態でも2位の位置につけられているのは交流戦で同リーグのチームが総崩れしたからだろうか。
ヴィッパーズの所属するセリーグは、アクアリウムをはじめとするパリーグのチームに大幅に負け越し。
負け続けてもほかのチームも負けているため、順位にあまり変動がなかった。
- 21 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 14:33:22.04 ID:9BRx3B/70
- そのため野球評論家を中心にリーグ間での戦力格差が取りざたされたが俺たちはそんなこと知ったこっちゃない。
とにかく目の前1試合1試合を全力でやる。それだけだ。
右手を握りしめる。まだ手の平は汗で滲んでいた。
――レールウェイズスタジアム所沢
(;'A`) 「あっつう!!!」
(K;‘ー`) 「いや……これは暑い……」
(,,;゚Д゚) 「まるでサウナだな……」
レールウェイズスタジアムには空調設備がない。すべて自然換気に任せているのだ。
さらに強制的に換気する機能もないため湿気がこもりやすく、つまり蒸し暑い。
お客さんはもちろん、選手も熱中症に十分注意しなければならない球場なのである。
- 23 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 14:39:15.57 ID:9BRx3B/70
- ( ^ω^)『おっおっwwwwww僕は所沢には帯同しないおwwwwwだって昨日投げたからwwwwww
サウナ遠征乙wwwwwwwwwwww』
(;'A`) 「くそ、内藤め……」
(K;‘ー`) 「僕も少しだけイラッとしたのは秘密です」
(;'A`) 「! け、慶三が俺に同意した……!」
(K;‘ー`) 「あ」
と、まあ川島もこんなに頭がおかしくなるぐらい暑いのである。
それはここが本拠地であるレールウェイズの選手も変わりない。
(;゚∀゚) 「あ、暑すぎる! 裸で走りたい! 裸でプレーしたい! むしろクーラーの部屋で休みたい!」
(;’e’) 「うわぁ〜」
(゚J゚)ノ スライダー
(;゚∀゚) 「ですよねー! お二人もそうですよねー!」
('A`) (会話が成立している……だと……?)
- 25 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 14:46:36.78 ID:9BRx3B/70
- (;:゚∀゚) 「ひぃひぃ……あ、毒田先輩!」
('A`) 「う」
長岡がこちらに気づいて駆け寄ってくる。
長岡と一緒にいたジョーンズとウィリアムスは来ない。
(’e’) 「うわぁ」
(゚J゚)ノ ファック
('A`)
……なんて言ってるように聞こえるのは気のせいだろ、うん。
俺、あいつらになにかしたっけ?
( ゚∀゚) 「お久しぶりです、毒田先輩!」
('A`) 「ああ」
こいつは俺の1つ後輩、長岡譲司。イケメンであり、つまり死んでほしい奴だ。
野球の成績も超一流。本来であれば俺なんかひれ伏して道をあけるレベルだ。
高校時代に30円のジュースをおごり続けてきたかいがあった。
- 28 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 14:50:19.85 ID:9BRx3B/70
- ('A`) 「お久しぶり、ってのは皮肉か?」
(;゚∀゚) 「ち、違いますよ! なんでそんなに卑屈なんですか!」
('A`) 「お前にはわからんだろうよ。……あれを見ろ!」
そういって俺はスタンドで長岡に見惚れている女子2人を指さす。
長岡はよくわからないといった顔だ。
('A`) 「お前さっき、何て言った?」
- 29 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 14:52:49.27 ID:9BRx3B/70
- ( ゚∀゚) 「え……お久しぶりです、と」
('A`) 「違う、その前だ」
(;゚∀゚) 「ん……ちょっと、覚えてないです。そんなに考えずに話してたので」
('A`) 「そうか。教えてやろう。それはな……」
【 (;゚∀゚) 『あ、暑すぎる! 裸で走りたい! 裸でプレーしたい!』 】
('A`) 「だ」
(;゚∀゚) 「はあ。……それが、何か?」
('A`) 「ああ?」
(;゚∀゚) ビクッ
- 33 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 15:06:14.64 ID:9BRx3B/70
- ('A`) 「お前自分のその言葉がどんなに影響力を持っているか知らないの!?お前のその言葉であそこの女子二人組は
お前のたくましい肉体を想像して悶絶してるんだよ見惚れてるんだよむしろ濡らしちゃってるんだよカーニバルだよ、おまんこ
カーニバルだよ。俺が同じこと言ったらどうなるか考えてみ?大被害だろ。カトリーナだよ。おっぱいハリケーンカトリーナなみの
被害が出るに決まってんだろ。お前はイケメンだから自然に※ただしイケメンに限るの内部に入っちゃってるから分からないの
かもしれないけどさ、お前の今のその発言って限りなくクロに近いグレーなわけ。俺がその言葉発しちゃうと問答無用で拘置所行
きなわけ。裸になりたいって言ってるだけで実際には裸になってるわけじゃないのにだぜ?この前なんか俺服着てたのにさ、なん
か職務質問されてさ、なんかよくわかんないけど変質者と間違われたわけ。おかしくね?だって俺はふんどしいっちょで御堂筋の
真ん中で『ルイズ!ルイズ!ルイズ!ルイズぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!! あぁああああ
…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!ルイズルイズルイズぅううぁわぁああああ!!! あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スー
ハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん んはぁっ!ルイズ・フランソワーズたんの桃色ブロンドの髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!
間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!
小説12巻のルイズたんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
アニメ2期放送されて良かったねルイズたん!あぁあああああ!かわいい!ルイズたん!かわいい!あっああぁああ!
コミック2巻も発売されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
ぐあああああああああああ!!!コミックなんて現実じゃない!!!!あ…小説もアニメもよく考えたら…
ル イ ズ ち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!ハルケギニアぁああああ!!
この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?表紙絵のルイズちゃんが僕を見てる?
表紙絵のルイズちゃんが僕を見てるぞ!ルイズちゃんが僕を見てるぞ!挿絵のルイズちゃんが僕を見てるぞ!!
アニメのルイズちゃんが僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
いやっほぉおおおおおおお!!!僕にはルイズちゃんがいる!!やったよケティ!!ひとりでできるもん!!!
あ、コミックのルイズちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!
あっあんああっああんあアン様ぁあ!!シ、シエスター!!アンリエッタぁああああああ!!!タバサァぁあああ!!
ううっうぅうう!!俺の想いよルイズへ届け!!ハルケギニアのルイズへ届け!』ってやっただけだよ。それで職務質問とは世知辛いよ。
確かに少し暑い日だったし最近物騒だから警察という名の公僕が敏感になるのは分からんでもないけどさ、流石にそれだけしかしてない
俺がそんなことになるのは流石にどうかと思うんだ。それで話は戻るけどさ、今お前が話した言葉を今ここで俺が言うとどうなると思う?
逮捕だよ。今そこの従業員通路から警備員が出てきてロッカールームに連れてかれるんだよ。そこにいる女子2人は泣き叫びそれを見た
正義感の強い男たちが俺に向かって罵言雑踏を浴びせるんだ。どうしてだよ。俺は別にそれを行動に移したわけでもないし女子に自分の
東京スカイツリーを見せつけたわけでもないのにそんなことになるんだよ。対してお前は今ここで裸になったとしても『ああ、それはそれでアリかな』
見たいな空気になるんだろ。○すぞ。イケメンとブサメンにはそういう越えられない壁があるんだよ。○すぞ。○すぞ○すぞ○すぞ分かってんのかほんとに」
- 35 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 15:10:35.26 ID:9BRx3B/70
- ('A`) 「悪気はなかったんです」
警備員 「犯人はみんなそう言うんだよ。名前と職業は?」
('A`) 「毒田剛です。あの、職業はプロ野球選手です」
警備員 「ああ?」
(;'A`) ビクビクッ
警備員 「バカ言っちゃいかん。野球選手が脅迫罪に問われるわけないだろ。ほんとの職業は?」
(;'A`) 「いや、あの、ほんとに」
警備員 「住所不定無職……精神錯乱・妄想の気配あり、と」
(;'A`) 「いや、あの」
- 42 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 15:46:15.42 ID:9BRx3B/70
- 『お待たせいたしました。シベリアレールウェイズ対ニュー速ヴィッパーズ、第13回戦を開催いたします』
( ><)『テレビの前の野球ファンのみなさんこんばんは。本日はレールウェイズ対ヴィッパーズの試合を、
実況は稚内弘人でここレールウェイズスタジアム所沢よりお送りいたします。
解説はもはやお馴染み、元ヴィッパーズの元三冠王、諸本信彦さんです』
(´・ω・`)『やけに”元”を強調しますね。こんばんは、よろしくお願いします』
( ><)『さあ本日は1位と2位の天王山。両チームのゲーム差は2.5です』
(´・ω・`)『ヴィッパーズが3連勝すれば逆転首位ですからね。ここは気を張ってくるでしょう』
( ><)『この大事な一戦、ヴィッパーズの先発は1軍昇格即先発の山本省吾が予想されています』
(´・ω・`)『んー……調子が戻っていれば問題なく任せられる投手ですが……故障明け、どうでしょう。賭けですね』
( ><)『対するレールウェイズの先発は……渡辺、でしょうか?』
(´・ω・`)『そうですね。中4日ですが……ぶつけてくるでしょうか』
( ><)『さあ間もなくスタメン発表です!』
- 44 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 15:53:52.46 ID:9BRx3B/70
- ニュー速ヴィッパーズ (※印は外国人)
打順 守備位置 名前 AA 年齢
打率 本塁打 打点
1 SS 川島慶 (K‘ー`) 23
.280 10 31
2 2B 茂等 ( ・∀・) 37
.291 2 22
3 1B 宝 ( ^Д^) 28
.318 22 72
4 RF ※ガイエル J( ゚_ゝ゚)し 38
.204 20 41
5 LF 伊陽 (=゚ω゚) 25
.278 11 39
6 C 比木 (-_-) 31
.288 9 31
7 3B ※マリントン |;;;;| ,'っノVi ,ココつ 31
.257 17 51
8 CF 擬古 (,,゚Д゚) 32
.287 0 17
9 P 山本省 [`―´] 31
0勝 0敗 防-.--
- 45 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 15:59:20.22 ID:9BRx3B/70
- ( ><)『まずは先攻・ニュー速ヴィッパーズのスタメンです』
(´・ω・`)『うーん……2位にいることが奇跡な打線ですね』
( ><)『はい、ここ最近のチーム打率は.240前後です。それでもチームはここ10試合で7勝3敗。
投手陣の健闘が光ります』
(´・ω・`)『ただ、中継ぎ陣以降の投手に負担がかかっているのは間違いないですから。なんとかして立て直したいですね』
( ><)『宝を3番に入れるという策はいかがでしょう』
(´・ω・`)『1番川島が出て2番茂等が続き、3番に入った選手が凡退というケースが目立ちましたからね。
荒巻代行としては3番を中心にした流線型打線を目標としているのでしょう』
( ><)『宝の代わりに4番に入るガイエルは打率が2割と低迷しています』
(´・ω・`)『まあ、出塁率は高いですから一概には言えませんが。やはりここ1番での強さがなくなったように感じますね』
( ><)『先発は予想通り山本省吾です』
(´・ω・`)『はい、頑張ってほしいですね』
( ><)『さあ次はレールウェイズ!』
- 47 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 16:02:06.11 ID:9BRx3B/70
- シベリアレールウェイズ (※印は外国人)
打順 守備位置 名前 AA 年齢
打率 本塁打 打点
1 SS 長岡 ( ゚∀゚) 25
.327 7 58
2 3B 関ヶ原 ( "ゞ) 29
.267 0 12
3 RF 池沼 (^q^) 35
.299 26 60
4 1B 藤山 /^o^\ 27
.287 14 49
5 CF 小和田 (^o^) 33
.302 14 50
6 LF ※ネノ ( `ー´) 29
.279 10 26
7 C 悠太郎 | ^o^ | 24
.209 2 9
8 2B 長谷川 ( ^^ω) 24
.178 0 2
9 P 金村大 [^Å^] 26
3勝 6敗 防4.78
- 49 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 16:07:48.70 ID:9BRx3B/70
- ( ><)『レールウェイズのスタメンは以上の通りです』
(´・ω・`)『先発が渡辺君じゃありませんね』
( ><)『はい。あ……今談話が入りました。
「渡辺は今疲労していて中4日では無理。本人は登板を熱望したがトレーナーの判断で回避した」
……とのことです』
(´・ω・`)『まあ、暑いですからね。なにも大けがをしたわけじゃない。ゆっくり中6日で投げりゃいいんですよ』
( ><)『はい。今の気温は午後6時前で……29度ですか。うひゃあ』
(´・ω・`)『夜になっても気温が落ちませんからね。最近は妻が夜も薄着になって夜も眠れませんよ』
( ><)『そうですか。選手たちにとってこの暑さはどうでしょう』
(´・ω・`)『(流された…)野手にはあまり関係がないでしょう。問題は投手ですね。スタミナが心配です』
( ><)『そうですか。それではプレイボールまであと少しです!』
- 52 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 16:15:43.97 ID:9BRx3B/70
- ('A`) 「ふむ」
今日の俺はベンチスタート。
茂等さんが好調だし、空き気味のサードも俺は守れないし、妥当な判断だろう。
N| "゚'` {"゚`lリ 「毒田」
('A`) 「はい」
そんなことを考えながらベンチに座っていると阿部打撃コーチに話しかけられた。
この人と会話を交わすのもずいぶんと久々に思える。
N| "゚'` {"゚`lリ 「2軍では、何か掴んできたか?」
('A`) 「……うす。一応」
N| "゚'` {"゚`lリ 「そうか。いつでも行けるように準備は怠るなよ」
('A`) 「はい」
- 53 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 16:23:12.15 ID:9BRx3B/70
- 掴んできたもの……そんな大層なものではないが、選球眼だ。
2軍の打撃コーチに狙い球の絞り方と配球の基本を教わっただけ。本当にそれだけだ。
(K;‘ー`)『そ、そんなことも知らなかったんですか!?』
その話をした時は慶三にびっくりされたが本当にあまり知らなかったのだから仕方がない。
俺は基本的に来た球を打っていただけだったのだから。
J( ゚_ゝ゚)し 「ほいほいほいっと」
('A`) 「アーロン……何やってんだ?」
J( ゚_ゝ゚)し 「お手玉やでー」
(;'A`) 「……」(手を使わずになぜか浮いている球を操作することをお手玉とは言わねぇ!)
- 54 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 16:32:57.95 ID:9BRx3B/70
- 『1回の表、ニュー速ヴィッパーズの攻撃は、1番ショート・川島慶三。背番号00』
(K‘ー`)「…」
( ><)『さあ、そろそろ試合が始まります。レールウェイズのバッテリーは若い金村と悠太郎。
これについてどう思いますか』
(´・ω・`)『ビコーズが退団して一気に苦しくなった捕手ですが悠太郎がカバーしていますね。
打撃面ではともかく、守備面は他の球団に見劣りしません』
( ><)『投手の金村はどうでしょう』
(´・ω・`)『ストレートとフォークが主体のオーソドックスな右上手投げの投手ですね。
負けが先行してはいますが悪くはないと思いますよ』
( ><)『そうですか。では、ピッチングを見守りましょう』
- 55 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 16:41:17.76 ID:9BRx3B/70
- (K‘ー`) (基本的な球種はストレートとフォーク、申し訳程度にカーブを入れてくる……)
[^Å^] 「……」
(K‘ー`) (簡単な相手じゃないけど……渡辺さんよりは怖くない。大丈夫)
[^Å^] 「……」
ゆらりと右打席で黄色のバットを構える。
こんなサウナのような球場でも自分への歓声が途切れることはない。
(K‘ー`) 「来い」
『プレイボール!』
- 59 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 16:54:28.61 ID:9BRx3B/70
- その間人物紹介でも。
前のコピペだけど。最近投下が疲れて仕方がない。ゴールしても……いいよね?
【人物紹介】
('A`) 毒田 剛 ドクタ・タケシ
ニュー速ヴィッパーズ所属の二塁手。
三割越えの打率、苦笑いの走塁、爆笑な守備が持ち味。
最近は唯一のアピールポイントである打率が不調。
素人童貞。野球板ではその顔面崩壊具合にちなんで「毒男」の勲章が授けられている。
( ^ω^) 内藤 地平線 ナイトウ・ホライゾン
ニュー速ヴィッパーズ所属の投手。
150キロを越える速球と縦に割れるカーブが武器。
昔はチキンハートの持ち主だったが今はそれを越える自信を身につけた。
シーズン10勝したら彼女であるツンにプロポーズしようと思っている。
[`―´] 山本 省吾 ヤマモト・ショウゴ
ニュー速ヴィッパーズ所属の投手。
左腕から140キロ前後の直球とバットの芯を外すシュートを投げる。
昨シーズンはローテーションの一角として活躍した。
('、`*川 伊藤 紅 イトウ・ベニ
毒田が狙っている女性 。
野球雑誌「週刊プロ野球」の記者。
少なからず毒田に好意を持っていることからブス専と思われる。
- 62 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 17:01:02.40 ID:9BRx3B/70
- (K‘ー`) 川島 慶三 カワシマ・ケイゾウ
ニュー速ヴィッパーズ所属の遊撃手。
毒田の後輩であるが特に毒田を慕っているわけではない。
実在の選手がモデルであるが特に作中で監督にホモ疑惑がかかるほど気に入られていたり、
FA選手の加入や若手の突き上げでポジションに苦しんでいるわけではない。
J( ゚_ゝ゚)し アーロン・ガイエル
ニュー速ヴィッパーズ所属の外野手。
ボールを自在に操る「魔空間」を操れる。
しかし制御が効かないので相手の有利な展開にしてしまうのもしばしば。
時空間も操るらしく、1スレに数回しか登場しないなどザラ。
- 63 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 17:01:57.86 ID:9BRx3B/70
- ( ゚∀゚) 長岡 譲治 25歳 遊撃手
大卒ドラフト1位
シベリアレールウェイズ所属の遊撃手。
高いバットコントロール技術を持ち、昨年は右打者歴代最高打率を打ちたてた。
守備も一級品、盗塁をはじめとする走塁技術も非のつけどころが無く、最高レベルの選手の一人。
毒田や内藤の高校の後輩だが、成績的な面で大きく差を空けられている。
とはいえ、2人のことを純粋に尊敬しており、顔も整っていてファンも多い。
そういった諸々の理由で嫉妬に狂った毒田から度々闇討ちを受けているがすべて撃退している。
从'ー'从 渡辺 稜 30歳 投手
大卒ドラフト4位
シベリアレールウェイズ所属の投手。
球速はいい時でも130Km前後、悪い時は120kmも怪しい。
しかし数多くの一級品の変化球、特にスローカーブを武器に毎年勝利を積み上げるエース。
狙ったところは外さないコントロールも併せ持ち、今一番安定している投手と評される。
高岡とは小学校からの腐れ縁で、お互いがお互いをライバル視している。
<(^o^)> ナンテコッタイ 小和田 仁志 33歳 外野手
高卒ドラフト4位
シベリアレールウェイズ所属の外野手。
打率・本塁打・足・守備・肩の野球選手の5ツールのみならず、おしゃれを加えた6TOOLSを持っている。
球界きってのスぺランカー体質であり、ケガをする。とにかくケガをする。
しかし新宿で黒人から『眠らなくても疲れない薬』を手に入れ永く眠っていた能力が覚醒。
ケガに滅法強くなり、シーズン40本塁打・100打点を達成し、一躍スターダムにのし上がる。
今のところ唯一の敵は薬物検査である。
- 64 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 17:03:40.38 ID:9BRx3B/70
- ( ><) 稚内 弘人 24歳 テレビアナウンサー
プロ野球番組の実況などを務める。
毎回毎回ちょっぴり頭にスパイスの効いた解説者をゲストに招いているため胃が痛い。
(´・ω・`) 諸本 信彦 39歳 解説者
元ニュー速ヴィッパーズ所属。
現役時代は3冠王をはじめとするタイトルを乱獲し、相手投手から恐れられた。
インコースイップスに陥り引退。現在は解説者。
- 84 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 19:42:22.30 ID:9BRx3B/70
- ( ><)『さあ、第1球!』
[;^Å^] 「うらっ!」
(K‘ー`)「……」
『ストラーイク!』
第1球はアウトコースに決まるストレート。
球速は140キロほどだ。それを川島は悠々と見逃す。
(K‘ー`) (ふむ…金村の調子は悪くはない、と)
( ><)『それにしても……川島は1番として板に付いてきましたね』
(´・ω・`)『そうですね。打撃陣不調の中でもコツコツと結果出してますから……毒田の不調もケガの功名という感じですかね』
- 85 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 19:45:58.97 ID:9BRx3B/70
- 第2球。
(K;‘ー`) 「ゲッ」
金村の投じた球は甘く入ったカーブ。
しかし川島はそれを簡単に打ち上げてしまう。
( ゚∀゚) 「よっと」
力なく上がったボールはショート・長岡のグラブへ。
たったの2球でワンアウトだ。
(´・ω・`)『……』
( ><)『え、えーと……』
(´・ω・`)『褒めた途端にこれだよ……川島の奴も毒田ほどではないですけど調子に乗ることがありますからね。
荒巻代行にはきついお叱りを期待したいところです』
( ><)『は、はあ。さて、とにかく淡白な攻撃で早速ワンアウト! 打席には茂等が入ります!』
- 86 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 19:50:52.78 ID:9BRx3B/70
- 『2番セカンド、茂等。背番号6』
( ><)『さあ今季からショートからセカンドにコンバートした茂等。
当初は毒田の守備固め的起用でしたが今では立派な上位打線です』
(´・ω・`)『いい時の茂等のバッティングができていますよね。この打席も期待したいところです』
[^Å^] 「うりゃっ!」
(;・∀・)「っつ……」
( ><)『金村の初球をひっかけた! ボールは力なくセカンドへ!
セカンド長谷川難なく捕球して一塁送球! アウト! 開始3球でツーアウト!』
(´・ω・`)『……』
( ><)『え、えーと……』
(´・ω・`)『あいつ、何年野球やってるんだよ……バカか……』
( ><)『さ、さあ! 次は唯一チームでの3割バッター宝です!』
- 88 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 19:55:57.65 ID:9BRx3B/70
- 『3番ファースト、宝。背番号5』
( ><)『さあランナーがいなくても怖いバッターの登場です。
打率は3割を越え、本塁打もリーグ3位の22本。打点はリーグトップです』
(´・ω・`)『そんな男を3番に入れなきゃいけないチーム事情がね……本当は毒田や川島、伊陽なんかに入ってほs』
( ><)『宝、初球を打ち上げたー!! センター少し下がって……捕った! スリーアウトチェンジ!』
(´・ω・`)『……』
( ><)『え、えーと……』
(´・ω・`)『……』
( ><)『……』
(´・ω・`)『……』
( ><)『さあ、スリーアウトチェンジで次はレールウェイズの攻撃です!
復帰後初登板の山本省吾はレールウェイズ打線にどう立ち向かうのか! 注目です!』
(´・ω・`)『……』
- 91 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 20:05:19.44 ID:9BRx3B/70
- (-_-) 「久しぶりだな」
マウンド上で2人の男が会話を交わす。
内野陣はボール回しの練習を行っている。
今小高いマウンドにいるのは投手と捕手の2人だけだ。
[`―´] 「ん。そうだね。……本当に、久しぶりだ」
(-_-) 「お前がいなくてはこちらも苦労した。……本当にな」
[`―´] 「はは。ごめんごめん。それにしても暑いね。さながらサウナTOKOROZAWAって感じかな? ……でもさ」
(-_-) 「ん」
[`―´] 「こんな暑い中、見に来てくれるお客さんがいる。自分の名前がスコアボードに記されている。
この試合は僕に任されている。……そういうのって幸せなことだろ? 例え出遅れてたとしても、さ」
(-_-) 「……格好いいことを言おうとする癖は変わってないみたいだな。安心したよ」
[`―´] 「はは。こりゃ手厳しい」
そう言って比木は自分の場所――キャッチャーボックス――に行こうとする。
しかし、途中で止まり、振り返って山本にこう告げた。
(-_-) 「でも……まあ、そうなんじゃないか?」
- 92 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 20:10:42.08 ID:9BRx3B/70
- 『1番ショート、長岡。背番号7』
( ><)『お聞きくださいこの大歓声! 今や日本を代表するショートストップ・長岡の登場です!』
(´・ω・`)『昨年ほどの勢いはさすがに無いですが、それでも3割は悠々と越えてきてますからね。
彼のあふれんばかりの才能にはただただ感心ですね』
( ><)『走攻守すべてにおいてトップクラス! 彼が見据えるのは前人未到の別世界! 長岡譲司!』
( ゚∀゚) 「さーて、行きますよー」
(-_-) (長岡は隙あらば初球でも手を出してくる……油断は禁物だぞ)
[`―´] (了解)
- 93 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 20:14:24.98 ID:9BRx3B/70
- ( ><)『さあ第1球……投げた!』
( ゚∀゚) (!)
長岡のバットがピクリと動く。
しかしそれはスイングされることはなく、山本が投げた球は比木のミットへと吸い込まれた。
(-_-) (142キロ……まあまあだな)
( ゚∀゚) (怪我明け……なんて考えは捨てたほうがいいみたいだな)
[`―´] (……)
( ><)『復帰後第1球はアウトローに決まる142キロ直球でした。これはどうですか諸本さん』
(´・ω・`)『そうですね。いいんじゃないですか。あれなら長岡君と言えど簡単には打てませんよ』
- 95 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 20:20:47.50 ID:9BRx3B/70
- 2球目はスライダーが外れボール。
3球目はフォークを打ち損じファール。
これで2ストライク1ボールだ。
( ゚∀゚) (……)
(-_-) (こいつが怖いのは……)
[`―´] 「うらっ!」
山本が投げた球は決め球であるシュート。
本来山本は微妙に動く球でカウントを稼ぐタイプの投手だ。
絶好調時は長岡と言えども打ち損じゴロになる。
しかし。
( ゚∀゚) (……)
ゴロになる、ということはバットには当たる、ということだ。
だから、少し調子が悪いと……
『ファール!』
粘られる。比木はそうなることは覚悟の上だった。
- 96 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 20:27:32.90 ID:9BRx3B/70
- 『ファール!』
『ファール!』
『ボール』
『ファール!』
『ボール』
5球続けて、最後の球が決まらない。
圧倒的なバッティングセンスと天才的な選球眼。
長岡はヒットばかりが取りざたされるが、こういった細かいこともできる打者だ。
[;`―´] (く……)
そして10球目。
苦し紛れに投げたスライダー。
( ゚∀゚) (ここだ!)
[;`―´] (!)
あっさりと山本の足元を抜け、センターの擬古まで転がっていく。
もっとも出したくなかった先頭打者を最悪の形で出してしまった。
- 97 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 20:30:55.84 ID:9BRx3B/70
- ( ><)『さあ、山本ランナーを出してしまいました』
(´・ω・`)『ランナー長岡・バッター関ヶ原ですか……なんでもできそうですね』
( ><)『そうですね。関ヶ原は小技が効きますし、長岡も俊足です。しかし、ここは……』
(´・ω・`)『送るようですね。手堅いなあ』
( "ゞ) 「だし!」
(-_-) (……)
比木は関ヶ原が転がした球を見る。
うまく球の勢いを殺している。山本が捕球した時点で、長岡は2塁を陥れようとしていた。
(-_-) 「ファースト!」
迷いなく、そう指示する。
宝が捕球し、ワンアウト。手堅く、しかししっかりと送ってきた。
- 100 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 20:40:04.46 ID:9BRx3B/70
- 『3番ライト、池沼。背番号99』
(^q^) 「猪口才な」
(;-_-) (いきなり得点圏でこいつか……)
( ><)『さあバッターは3番の池沼。得点圏では5割以上のアベレージを誇ります』
(´・ω・`)『今日もいるんですか……あの、お母さんは』
( ><)『ああ……池沼専属コーチであり、池沼の実母・淳子さん(63)は今日もきっちりベンチにいます』
(´・ω・`)『ビデオ回してますね』
淳子 「たかしちゃーん!! がんばってー!! こっち向いて男前ー!!」
(^q^) 「うぃくwwwwwwwwwwwww」
淳子 「ああ……たかしちゃんが男前すぎて濡れた」
(´・ω・`)『誰得』
- 104 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 20:44:25.30 ID:9BRx3B/70
- [`―´] (……)
(-_-) (得点圏のこいつは手がつけられん。最悪四球でも構わん。コースギリギリをついていけ)
[`―´] (了解)
ロージンを手に取り池沼を見据える。
2軍のバッターにはない威圧感。久しく触れていなかった感覚に体が震える。
[;`―´] (らしくないな……)
そのような考えを振り払い、投じた1球目のカットボール。
比木の顔色が変わった。
(;-_-) (ぐっ!)
(^q^) (コース甘すぎwwwwwwwこれはいただいたwwwwww)
池沼のバットが、白球を捉えた。
- 105 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 20:49:00.10 ID:9BRx3B/70
- 鋭い当たりはセンター擬古の前に落ちる。
ドライブ回転のかかったボールは擬古のグラブの中で暴れる。
(,,;゚Д゚) 「くっ……」
(,,#゚Д゚) 「ゴルァ!!」
それでもなんとか抑えつけ、すでに3塁を回っている長岡が向かう本塁に向かって送球する。
しかし山本がカットに入り、それが本塁に届くことはなかった。
山本のカットにより池沼は2塁に行けず1塁止まり。
(^q^) (ボールが少し動いた分スタンドに持っていけなかったのれす……)
それでも重要とされていた先制点が呆気なく入った。
レールウェイズ、先攻。
V 0−1 RW
- 106 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 20:53:16.20 ID:9BRx3B/70
- 『4番ファースト、藤山。背番号24』
/^o^\ (まだまだ続くよフッジサーン)
(;-_-) (こんなにあっさり……山本らしくない……)
[`―´] (……)
(-_-) (やはり……まだ、ダメなのか……?)
比木は迷った。
山本は意外にプライドが高い。ここで自分が行くと奴が気持ちよく投げれなくなるのではないかと。
迷った末、ここでマウンドに行くのはやめた。ドタバタしているとプレーにも影響が出てくる。
ここはどっしりと構えておくのが得策だろう、と。
- 108 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 20:57:25.03 ID:9BRx3B/70
- しかし、その判断は間違いであったことが2分後に分かった。
/^o^\ (よっしゃ!)
(;-_-) (……っ!)
( ><)『打ったー!! 痛烈に引っ張った当たりは一塁線を抜けライトへー! 池沼は俊足! 本塁を陥れるか!』
(´・ω・`)『2点目を取れればかなり金村君は楽になりますよ!』
(^q^) (うぃくwwwwww栄光に向かって走るwwwwwwwあの列車に乗っていこうwwwwwww)
淳子 「たかしちゃーん!!」
(^q^) (裸足のままで飛び出してwwwwwwwwあの列車に乗っていこうwwwwwww)
( ><)『3塁回ったー!! ガイエルの肩と池沼の脚の勝負!!』
(´・ω・`)『タイミングは微妙ですよ!』
- 110 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 21:00:42.88 ID:9BRx3B/70
- J(;゚_ゝ゚)し 「ぬぬぬ……池沼の脚とわいの肩……微妙や!」
J( ゚_ゝ゚)し 「スレのみんな! わしに力を貸してくれ!!」
(;'A`) (1人だけメタなこと言ってる――!!)ガビーン
- 111 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 21:02:05.91 ID:9BRx3B/70
- スレのみんなもやってみよう! 携帯は2つに折れてろ!
―――――――ハイパーガイエルタイム――――――――
_____
,. -─rヘ. |__/ /5Tヽ
/ ,.ィ'Tヽ.{_`|`ヾァ . | . ヽO (捕 )
| l ヽ ,ノ `二´ リ.魔 . )ヽ @ ) .___
|. ` - _,>─‐r‐-- イ . /〉 (_)_) |Base|
j`'ー一'゙L.._ └ 、__ノ
{ `'
', l_ ヽ
. >、 !`7'´ /
_/ ` _,ノ !`丶/
/´ Y ""´ .r'7 (´ 魔をダブルクリックしてガイエルビームを発射しよう
\f三ヽ `丶(二コ 当たれば敵のベース突入を阻止できるかもしれないよ
- 115 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 21:08:05.57 ID:9BRx3B/70
- ( ><)『池沼ホームインです』
(´・ω・`)『山本君は早くも苦しいですねー』
J(;゚_ゝ゚)し 「無念……」
(;'A`) (>>111もキャッチャーまで届いてねえしな……)
V 0−2 RW
- 117 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 21:14:48.41 ID:9BRx3B/70
- (-_-) 「山本……」
[`―´] 「……」
( ・∀・) 「おう」
(-_-) 「茂等さん」
マウンドに3人が集まる。
未だまともに取ったアウトはなし。ランナーを2塁に置き、バッターは乗りに乗っている小和田。
山本に抑えられるのか。そんな思いがかすかに比木の胸に去来した。
[`―´] 「球が浮いちゃうね……どうしたもんやら」
( ・∀・) 「いいんじゃねえか? 打たせてやれよ」
[`―´] 「……」
( ・∀・) 「柵さえ越えなきゃ、なんとかしてやる」
- 121 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 21:18:32.77 ID:9BRx3B/70
- [`―´] 「……ま、落ち込むような年でも老けこむような年でもないですしね。とりあえず全力でいきますよ」
( ・∀・) 「おう。俺より6つも若いんだからなんとかなんだろ。なあ、比木」
(-_-) 「はい、そうですね。……山本、かわそうとし過ぎだ。もっと力を込めろ」
[`―´] 「了解了解。任せてよ」
( ><)『さあ、マウンド上での相談が終わったようですね……』
(´・ω・`)『タイミングが遅かったかもしれませんね。藤山の打席の前に行くべきでした』
( ><)『さあ、バッターはレールウェイズ屈指の強打者、小和田です!』
- 124 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 21:23:29.29 ID:9BRx3B/70
- 『5番センター、小和田。背番号6』
(^o^) 「男なら……打たなきゃいけない時がある。わかるか? 小僧……。
オワタがやらねば、だれがやる、だ」
(´・ω・`)『なんで無駄に渋いんだよ』
( ><)『藤山を2塁においてバッターは小和田! 成績は今年も相当なものを残しています!』
(´・ω・`)『ケガさえなけりゃね。僕とタイトル争いだってできた選手ですからね』
( ><)『そうですか。さあ、山本が3点目を死守するのか! 注目の対決です!』
- 125 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 21:27:57.68 ID:9BRx3B/70
- (^o^) (……)
右打席に立ち、山本を見つめる。
通常、右打者にとって左投手は有利と言われる。球の出所が見やすいからだ。
しかし、小和田は今この場においてはそれを信じなかった。
(^o^) (山本省吾……いい面構えになった、な)
先ほどから見ていた、なんとかかわそうかわそうと逃げの手を打っていた山本とは別人。
すべての力を持って自分をねじ伏せようとする男の姿がそこにはあった。
[`―´] (……)
(^o^) (だが……おいそれとやられるわけにはいかんな)
バットを構える。
辛い時も苦しい時も泣きそうな時も薬物を摂取した時もうれしい時も傍にいた相棒だ。
(^o^) (打ち砕いてやろう)
- 127 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 21:34:05.46 ID:9BRx3B/70
- 1球目。渾身のストレート。
球速は145キロを記録した。
(^o^) (ほう……こんな球も投げれるのか)
[`―´] (……)
(^o^) (だが……ダメだな。まだまだ、だ)
2球目、スライダーが外れてカウント1-1。
(^o^) (まだ制球もあまり定まっていないと見える……攻めるなら、今だ)
[`―´] (……)
- 129 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 21:37:30.98 ID:9BRx3B/70
- 3球目。
(^o^) (絶好球!)
[`―´] (よし!)
(;^o^) (!?)
小和田が確信を持って振り抜いた。
その瞬間――ボールが動いた。
(;^o^) (ぐっ……!)
しかし、空振りはしない。
バットの根元に当たったボールは転々と3塁ファールグラウンドを走った。
[`―´] (……やはり、簡単に空振りはしてくれないか)
(;^o^) (く……シュートか。危ない……)
- 132 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 21:41:57.75 ID:9BRx3B/70
- (^o^) (しかし……最高のシュートが決まった。次は、何を投げる?)
[`―´] (……)
(^o^) (山本の主な球は直球・シュート・カットボール、そして、フォーク。
長岡にもうかなり球数を投げさせられている。俺は早く終わらせたい人間のはずだ。
……そうなると、もう一度シュートか? 一番自信のある球を放ってくるか?)
[`―´] (……)
(-_-) (……次は、これで)
[`―´] (了解)
- 133 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 21:46:27.99 ID:9BRx3B/70
- ( ><)『さあ、第4球――投げた!』
(;^o^) (!)
[`―´] (読みを外したか!?)
(;^o^) (これは……フォーク!)
(-_-) (コースも完ぺきだ! 振れ!)
(;^o^) (ぐ……)
(#^o^) 「おおっ!」
小和田のスイング音が球場に走る。
球界でも屈指のスイングスピード。
しかしそのバットは――何も捉えてはいなかった。
『ストライクアウト!!』
- 137 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 21:52:27.66 ID:9BRx3B/70
- [`―´] (よしっ!!)
(^o^) (……)
小和田は何も顔に浮かべずベンチに下がる。
勢いに乗った山本は続くネノもサードゴロに取り、チェンジ。
先制点を取られはしたが、2回以降に期待の持てる終わり方となった。
123 456 789 RH
V 0 00
R 2 23
V 山本省‐比木
R 金村‐悠太郎
- 142 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 22:16:01.20 ID:9BRx3B/70
- 『5番レフト、伊陽。背番号44』
( ><)『さあ、ワンアウトでバッターは伊陽です』
(´・ω・`)『彼も荒いバッティングですからね。金村君相手だとどうでしょうか』
(=;゚ω゚) (……)
イースタンではすべてがうまくいっていた。
1軍に上がると途端に本塁打が出なくなった。
なんとかスイングの微調整を重ね、本塁打が出るようになると打率が残せなくなった。
打率を残そうとコンパクトなスイングに切り替えると自分の持ち味の長打力が無くなった。
(=;゚ω゚) (どうすりゃいいんだよぅ……)
伊陽の最近のもっぱらの悩みはそれであった。
- 144 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 22:22:58.61 ID:9BRx3B/70
- 自分のプレースタイルを見つめなおす日々。
その答えは、まだ出ない。
(=゚ω゚) (……)
最近は完全に長打を捨て、バットを指1本分短く持っている。
これにより打率は2割8分近くまで上昇した。だが、それだけだ。
3割には遠く及ばないし、何より長打が減った。なんとか両立させたいのは山々なのだが、そんな都合のいい話があるわけない。
[^Å^] (いけっ!)
(=#゚ω゚) 「よぅ!」
バットを振り抜く。
決していい当たりではないが、転々とボールはレフトに転がっていった。
- 146 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 22:26:55.72 ID:9BRx3B/70
- (=゚ω゚) (……)
一塁コーチャーが手を差し出してくる。
自分はそれに拳を合わせて応える。しかし。自分の胸にチクリと来るのはなんだろう。
スラッガーのプライドを捨て、単打に走る自分への非難だろうか。
(=゚ω゚) (……これでいいんだよぅ。これで)
手に残る打ち損じのジンジンした感覚が、伊陽の両手に張り付いていた。
J( ゚_ゝ゚)し (……)
- 148 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 22:28:56.91 ID:9BRx3B/70
- 結局後続の比木・マリントンは続くことができずスリーアウト。
試合はレールウェイズ有利のまま2回の裏へと向かう。
123 456 789 RH
V 00 01
R 2 23
V 山本省‐比木
R 金村‐悠太郎
- 149 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 22:32:23.68 ID:9BRx3B/70
- ( ><)『さあ2回の裏です』
(´・ω・`)『さっき山本君は2点を取られはしましたが、いい感じで後続を断ちきりましたから。
期待できるんじゃないでしょうか』
( ><)『そうですか。さあ、バッターは7番の悠太郎からです!』
| ^o^ | 「なんとなんと、ゆうめいAAであるわたしがはつとうじょうなのです」
(-_-) (うっせーよテンプレ3が……)
[`―´] (……)
- 150 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 22:34:44.64 ID:9BRx3B/70
- ( ><)『さあ第1球!』
[`―´] (……)
(-_-) (!)
| ^o^ | (これは、はずれています)
『ボール』
(-_-) (……)
( ><)『初球はストレートが高めに浮いてボールです』
- 152 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 22:41:17.75 ID:9BRx3B/70
- 山本は、自分の手を見つめていた。
小和田を振り切った、あの感覚。それが今は自分から逃げて行ってしまっているのがはっきりとわかった。
そして、何を投げてもうまくいかないであろうというのも分かってしまっていた。
[;`―´] (……)
まるで、自分の腕が自分のものではないように。
2球目を投げる。アウトコースに大きく外れる。
3球目を投げればこれも大きく高めに浮いた。
[;`―´] (……)
4球目。威力を抑えたストレートを投げる。
それでもボールはいうことを聞かず、外れる。
ストレートのフォアボール。またも先頭バッターを出してしまった。
- 154 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 22:45:24.84 ID:9BRx3B/70
- [`―´] (……)
幸いながら悠太郎はそれほど脚の早いランナーではない。
判断も非常に優柔不断で、走塁技術に関して言えば2流だ。
盗塁や小技をきかせた攻撃はまずない。
[`―´] (……セットポジションなら)
ランナーを出した際に、山本はフォームを変える。
ランナーがいないときには思い切って振りかぶり、ランナーが出ればコンパクトな投球フォームを繰り出す。
どうやら、今の自分はコンパクトなセットポジションの方が向いているらしい。
先ほどの嫌な感じはすでに抜けてしまっていた。
[`―´] (我ながら……繊細な指先だな)
- 156 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 22:51:54.69 ID:9BRx3B/70
- 8番の長谷川をレフトフライに仕留める。
シュートとスライダーを効果的に使った、山本らしい投球だった。
[`―´] (……今日はランナーなしでもセットポジションで)
(-_-) (分かった)
――ただ、山本は分かっていた。
自分がこれから、自分の左腕に不安を抱えながら、怪物と対峙しなければいけないことを。
[^Å^] 「よっと」
9番の金村がきっちりと送りバントを決める。
ここで回ってくるのは――
[;`―´] (ここで……彼か。まったく、うまくできてるなあ)
『1番ショート、長岡』
- 158 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 23:00:18.87 ID:9BRx3B/70
- ( ゚∀゚) (……3点。今のヴィッパーズなら、それだけ取れば十分叩ける)
[;`―´] (……)
( ゚∀゚) (実はね、山本さん。自分は謙虚に謙虚に生きているつもりなんですけど……)
[;`―´] (……)
( ゚∀゚) (相性とか、やっぱりあるのかな。すいません、あなたに抑えられる自分が、想像できないんです)
長岡譲司。日本球界屈指のヒットメーカーでありながら、誠実な人柄にファンも多い。
その誠実な人柄とは、決して人を下に見ないことである。ファンを大切にし、同僚からも悪い話は一切聞かない。
そんな彼は試合に赴く際も決して相手投手を見下して油断することはしない。例え2軍上がりの選手でも、だ。
- 160 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 23:05:51.94 ID:9BRx3B/70
- 1度だけ、プロとしてあるまじきことだが、体調を崩して試合に臨んだことがあった。
38度の高熱の体を引きずり引きずり試合に臨んだのだ。
その時の先発投手は山本省吾。今日の対戦相手と同じだ。
( ゚∀゚) (その時でも……)
体調は最悪であったが、結果的にその日5打数2安打の成績を残した。
特に山本に対しては2打数2安打。3打席の凡打はすべて中継ぎ陣から奪われたものだった。
( ゚∀゚) (大丈夫。やれる)
数字上も長岡対山本は26打数18安打。圧倒的にカモにしている。
今日もすでに1安打。そしてその情報は長岡にとっては自信に繋がり――
[;`―´] (……)
山本に対しては、不安に繋がっていた。
- 164 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 23:10:33.47 ID:9BRx3B/70
- [;`―´] (長岡君にはいい思いが無いんだよね……)
(-_-) (それなら、歩かせるか?)
[;`―´] (……冗談でしょ?)
2回裏から1番打者を歩かせる。
そんな消極的な策を取って勝てるほど野球は甘いものではないだろう。
(-_-) (あながちそうでもないけどな。……2番が京橋ならこんな策は取らんが)
[`―´] (……)
レールウェイズの2番は関ヶ原。
小技はきくが、全体的なバッティングのレベルはそう高くはない。少なくとも長岡よりは。
[`―´] (……)
(-_-) (どうする? 俺は一向に構わんが)
- 166 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 23:15:08.94 ID:9BRx3B/70
- [`―´] (冗談)
(-_-) (……)
[`―´] (まだ7月だぜ? 優勝決定戦ならまだしも、ここで敬遠とかどんだけビビってんだよって話じゃん)
(-_-) (……)
[`―´] (俺が打たれたとしてもお前が返してくれよ。それがチームってもんだろ?)
(-_-) (ふん)
[`―´] (あ、今鼻で笑ったね? もう怒った。長岡抑えてから覚悟しとけよ?)
(-_-) (はいはい、ロージンはちゃんとつけるようにな)
- 168 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 23:20:40.27 ID:9BRx3B/70
- [`―´] (……)
1球目。セットポジションから投じられる球種はカットボール。
カウントを取りに行くときによく使う球で、無理やり打つと芯を外してゴロになる。
長岡がその策にハマってくれたらいいのだがそんなものにはまるならこれほど苦しめられてはいない。
( ゚∀゚) (……)
悠々と見送り、ストライク。
カウントの上では有利だが、長岡の怖さはカウントが進んでからだ。
長岡は早打ちの選択肢はあまりない。
- 170 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 23:23:45.35 ID:9BRx3B/70
- 2球目は再びカットボールを投じる。
少しコントロールミスをすれば長打になる球種を2度続けるとは思っていなかったのだろうか。
多少甘く入ってしまったが、長岡が打ち損じ、ファール。
(;゚∀゚) (……)
[`―´] (おーおー、焦ってる焦ってる)
いくらなんでもカウント2−0まで追い込まれるといくら長岡でも厳しい。
決め球のシュート・フォークもまだ見せていない。この勝負、勝てる。
[`―´] (3球目……)
(-_-) (これで)
[`―´] (OK)
- 172 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 23:28:04.77 ID:9BRx3B/70
- (;゚∀゚) (! ……あっぶねえ)
内角高め、顔近くに投じられた直球。
球速は143キロだ。もちろん顔面に当たれば大きなケガをする。
しかし山本は長岡に当てるようなへまはしない。
[`―´] (当てれば後味悪いし、退場になっちゃうもんね)
さすがに長岡と相打ちで死ぬのはごめんだ。
悪質な投球と判断されれば罰金・罰則もある。
そんなことしなくても、堂々と打ちとって見せる。
[`―´] (4球目……)
(-_-) (わざわざカウントを悪くする必要はもうない。決めるぞ)
[`―´] (了解)
要求されたのは小和田を打ち取ったボール・フォーク。
長岡も腰を引けさせてある。さすがにこれには対応するのは難しい。
- 173 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 23:35:01.29 ID:9BRx3B/70
- ――誤算があった。
あまりにも思い通りにカウントが進んだ。舞い上がった。
山本は、見逃した。悠太郎に相対した時の感覚が、再び襲っていたことに。
( ><)『打ったー!! おっつけた打球はライトへー!!』
[;`―´] (……)
フォークが、抜けた。
投じられた球は小和田の時と同じ球種とは思えないほどの力ないボール。
それを見逃すほど長岡は甘くも優しくもなかった。
(;-_-) (……)
わざと詰まらせた打球はふらふらとライト前へ。
その長い滞空時間の間に、スタートしていた悠太郎は3塁を回っていた。
難なくホームイン。長岡は1塁上で右手を上げ、歓声を一身に浴びていた。
V 0−3 RW
- 176 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 23:42:08.09 ID:9BRx3B/70
- 続く関ヶ原はセカンドゴロ。
あまりにも、拍子抜けするほどに簡単に取れたアウト。
今、この瞬間、この長岡の扱い方についてだけは、失策、ということになった。
123 456 789 RH
V 00 01
R 21 34
V 山本省‐比木
R 金村‐悠太郎
- 182 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/11(日) 23:51:06.46 ID:9BRx3B/70
- 3回表、チームの状況を反映するように、結果が出てこない。
決してエースクラスとはいえない金村の前に打線は沈黙し続ける。
(,,゚Д゚) 8番擬古はセカンドゴロ。
[`―´] 9番山本は三振。
(K‘ー`) そして1巡したのちの川島もサードゴロに倒れた。
(Kii‘ー`) (=ii゚ω゚) (,,ii゚Д゚) (ii'A`)
ベンチの中も、一様に暗い。
それもそのはず、金村はまだ3回を終わり26球しか投げていない。
球数を投げさせるわけでもなく、ただ淡々と凡打する。凡打にも内容が伴っていない。
それが今の状況だ。
123 456 789 RH
V 000 01
R 21 34
V 山本省‐比木
R 金村‐悠太郎
- 190 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/12(月) 00:30:27.79 ID:Ol2JSet70
- 対する山本。2回を終えた時点で球数は40球に達した。
そして内容も毎回失点と褒められたものではない。
それでも、投手陣の台所事情を考えるとロングリリーフを使いたくはない。
いかに屈強なプロと言えども人間である。暑さには疲れが出る。
/ ,' 3 「山本……」
[`―´] 「はい」
/ ,' 3 「今までの失点については、仕方がない、目を瞑ろう。……5回」
[`―´] 「……」
/ ,' 3 「5回を投げ切ってくれるだけでいい。あとはリリーフ陣に託す」
[`―´] 「……了解、しました」
- 193 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/12(月) 00:36:27.86 ID:Ol2JSet70
- 5回の回数制限。それは山本にとっては屈辱に等しい。
高岡が大成する前からローテーションを守り続けてきた。
決して見栄えのする投球スタイルではないが、それでも着実にチームのために勝ち星を重ねた。
チーム最多完投を達成したシーズンもある。それが、5回まででいいと言われた。
[`―´] (……)
5回。先発が投げ切らなければならない必要最低限の回数。
裏返せばそこまでしか期待されていないということ。
[`―´] (……)
左腕を握りしめる。
この左腕には、15アウトの価値しか認められていないのだ。
- 194 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/12(月) 00:44:07.40 ID:Ol2JSet70
- 3回の裏。
荒巻の言葉に発奮したのか3番4番と続くクリーンナップをそれぞれ内野ゴロに仕留める。
その姿に往年の山本省吾が帰ってきたと期待したものもいただろう。
しかし。ヴィッパーズの悪い流れか。
それとも山本自身の悪い流れか。
これもまた、追い込んだ後の第5球目。
強打者・小和田に対しての5球目。スライダーが高く浮いた。
[; ― ]
好打者にも色々ある。
3割を超える打率を残すもの、強烈な飛距離を稼ぐもの、勝負強さを見せるもの。
それぞれに共通していること。それは”失投を決して逃さないということ”。
- 195 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/12(月) 00:48:29.12 ID:Ol2JSet70
- \(^o^)/ヤッター
そして両手を突き上げダイヤモンドを回る小和田。
彼もまた、好打者であり、失投を逃すはずなどないのである。
( ><)『入ったー!!! 小和田センターバックスクリーンに飛び込む第15号ホームラーン!!』
(´・ω・`)『擬古も打球が飛んだ瞬間に諦めましたね。すごい飛距離でした』
[; ー ]
先ほどからの山本の変調はただひとつ。
“詰めを誤る“こと。ロジカルに組み立てた配球も、僅か数十センチのブレで崩壊する。
今の山本には、その崩壊を止める手立てを持っていない。
V 0−4 RW
- 196 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/12(月) 00:56:55.06 ID:Ol2JSet70
- 6番のノネをセンターフライに打ち取った山本。
その顔に、いつもの自信にあふれた姿はない。
[; ― ]
123 456 789 RH
V 000 01
R 211 45
V 山本省‐比木
R 金村‐悠太郎
- 198 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/12(月) 01:02:52.88 ID:Ol2JSet70
- 『4回の表、ヴィッパーズの攻撃は、2番セカンド、茂等』
( ・∀・) (……)
山本の投壊に歯止めがかからない。
このままでは山本はずるずると行ってしまうだろう。
そうなればもう一度山本はファーム行き、投手陣は再び苦しいものとなるだろう。
そうならないためには援護点を挙げ、山本を後押しするしかない。
( ・∀・) (……)
山本とはもう長い付き合いだ。
山本のおかげで取った試合。自分のミスを帳消しにしてもらったこと。
数え上げればキリがない。今度は自分が山本を助ける番なのだ。
- 199 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/12(月) 01:07:12.28 ID:Ol2JSet70
- とはいえ、自分にはもうボールをスタンドまで持っていく力はない。
今シーズン挙げた2本のホームランも狭い球場でのラッキーパンチ的なものだ。
ということは自分のすべきことはなにか。
( ・∀・) (宝……アーロン……おいしいところは頼んだぞ)
―――――
[^Å^] (ふう……いい感じに投げれてる。今日は行けそうな気がするぞ)
| ^o^ | (そうですね。このちょうしでいきましょう)
金村は立ち上がりに不安のある投手だとされている。
3回までの失点が多く、その峠を越えればナイスピッチが続くと。
[^Å^] (……)
今日はその3回を気味が悪いぐらいスイスイと投げることができた。
なんなら野球人生でも1番のスムーズさだったのではないだろうか。
- 200 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/12(月) 01:12:27.74 ID:Ol2JSet70
- [^Å^] (これなら完投……いや、完封だってあるかも……ムフフ)
あまりにもうまくいきすぎた立ち上がり。
まだ若い金村の脳裏にそんな邪で都合のいい想像が膨らんだことを誰が責めれるだろうか。
そして老獪なベテランはその油断に付け込んでくる。
| ^o^ | (1きゅうめは、すとれーとで)
[^Å^] (おk)
サインを交わし、第一球を投げ込んだ次の瞬間――金村の思考はいったん停止した。
茂等が完全に虚を突いたセーフティバントを仕掛けたからである。
- 201 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/12(月) 01:18:25.94 ID:Ol2JSet70
- [;^Å^] (んなっ……)
完全に油断していた。
バントという選択肢が完全に頭から抜けていた。
打球は3塁線を転がる見事なもの。完全に打球の勢いを殺している。
[;^Å^] (う……)
結局捕球しただけで1塁には投げられず。
初めて先頭バッターを出してしまった。
そしてバッターは今唯一といっていい恐怖のバッター。
『3番ファースト、宝』
- 204 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/12(月) 01:26:33.96 ID:Ol2JSet70
- ( ^Д^) (茂等さん……さすがっすわ)
茂等の攻撃は相手の心の間隙を突いた素晴らしいものだった。
だが、それは逆にいえば自分以降の油断を誘わないということ。
隙を突かれた相手は次は隙を作らないように動く。
つまり真正面から相手を打ち破らないといけないのだ。
( ^Д^) (上等)
願ったり叶ったり、だ。
そもそも自分は隙を見つけられてもそこをピンポイントで突けるほど器用ではない。
どちらかといえば相手をめちゃくちゃに蹂躙する方が性に合っている。
- 205 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/12(月) 01:31:19.08 ID:Ol2JSet70
- [;^Å^]
( ^Д^) (悪いな、お前のこと、どこかで舐めてたんだと思う)
|; ^o^ |
( ^Д^) (全身全霊をかけて、相手しましょうよ)
―――
[;^Å^] (茂等がランナーでバッターが宝……最悪だ)
| ^o^ | (だいじょうぶです。しょかいにはあっさりフライをあげています)
[;^Å^] (うーん……)
疑念があった。
なぜ宝は初回にあんなに淡白な攻撃をしたのか。
[;^Å^] (……)
考えても、答えは出ない。
出ないことを考えるよりも、今この場に集中した方が得策だろうか。
- 207 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/12(月) 01:37:02.96 ID:Ol2JSet70
- | ^o^ | (1きゅうめはカーブからはいりましょう)
[;^Å^] (・・・・・・おk)
嫌な予感が拭えなかった。
なんだろうか、この感じ。
[;^Å^] (ええい、さっきは俺の勝ちだったんだ! 今度もいけるさ!)
そう信じ、力強くカーブを投げ込む。
その瞬間、宝の構えを見た瞬間、金村の疑問が氷解した。
- 208 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/12(月) 01:40:38.25 ID:Ol2JSet70
- [^Å^] (そうか、俺の球が舐められてたんじゃない)
[^Å^] (宝はただ、自分のコースに来た球を打っただけだったんだ)
[^Å^] (さっきのは、俺がどうこうじゃなく)
[^Å^] (宝の、ミスショット)
ボールは弧を描き、宝のもとへと向かう。
宝が待ち構えていたコースへと。
(#^Д^) (来た!)
[;^Å^] (っ!)
(#^Д^) 「いっけえ!」
渾身の力で、バットを振るう。
捉えた感覚が、そこにはあった。
- 210 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/12(月) 01:46:13.95 ID:Ol2JSet70
- ( ><)『打ったあ! 火の吹くようなライナー!』
(´・ω・`)『3塁手の頭上を抜けて……』
( ><)『フェアグラウンドに落ちます! 長打コース!!』
(*^Д^) (よっし!!)
( ・∀・) (ナイス宝! よし、3塁陥れ……)
(;・∀・) (はあ!?)
宝の打球を確認し、スタートを切った。
盗塁王を獲得したこともあるその脚は今も少しも衰えていない。
2塁を蹴り3塁へ向かう途中――信じがたい光景を見た。
- 212 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/12(月) 01:50:47.86 ID:Ol2JSet70
- N| "゚'` {"゚`lリ 「回れいい男――!!」
(;・∀・) (レフト線だぜ!? 正気か!?)
阿部がグルグルと右腕を回していた。
宝の打球は速度が速く、並みの選手なら3塁に到達するのがやっとという感じだ。
それを3塁コーチャーの阿部はホームまで走れという。傍から見れば完全な暴走。
(#・∀・) 「でも行くしかねえだろうがあ!!」
茂等は迷いなく阿部の指示に従った。
阿部の状況判断力は確かだ。練習中にセクシュアルな目で選手を見るのが球に傷だがそんなことはどうでもいい。
大事なのは信頼に値するかどうか、だ。阿部はどうなのか。聞くまでもない。この脚で阿部が正しいと証明してみせる。
- 215 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/12(月) 02:03:27.06 ID:Ol2JSet70
- (#・∀・) 「おおおっ!!」
ダイヤモンドの最短コースを通ってホームベースへと突き進む。
そろそろホームへの返球が返ってくる頃だろう。
しかし、背後を振りむいている余裕などない。
J(#゚_ゝ゚)し 「モラ、滑りこめ!!」
ガイエルの指示に従い、スライディングでホームに触る。
タイミングはどうだ。やはりアウトか。審判を見る。
何もジェスチャーを取っていない。
(;・∀・) (……?)
J( ゚_ゝ゚)し 「ナイスランや、モラ」
(;・∀・) 「アーロン……何がどうなった? 必死に走り過ぎてさっぱりわからん」
- 216 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/12(月) 02:08:23.04 ID:Ol2JSet70
- J( ゚_ゝ゚)し 「ああ……レフトのネノがクッションボールの判断を誤ったんや」
(;・∀・) (……)
まさか、あの数秒でそこまで判断してゴーのサインを出したのか。
守備が不得手なネノのところにスピードの速い球が飛んだのを見て一瞬で判断したのか。
N| "゚'` {"゚`lリ
( ・∀・) (阿部コーチ……やはりすごいな。練習中にケツを触るのは論外だが)
J( ゚_ゝ゚)し 「ナイスランやった、モラ。わしの闘志にも火がついたで」
( ・∀・) 「ああ。宝も2塁だ。ぶちかましてやれ」
J( ゚_ゝ゚)し 「まかしんしゃい」
V 1−4 RW
- 219 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/12(月) 02:13:55.27 ID:Ol2JSet70
- ( ><)『さあ、伊陽が倒れて2アウトになったわけですが……諸本さん、どうですか』
(´・ω・`)『そうですね。まさかあそこで光の天使に覚醒したガイエルが悪の組織とドンパチ始めるとは思いませんでしたね』
( ><)『まあそのせいで三振だったんですけどね』
(´・ω・`)『金村君は落ち着いて3球キャッチボールをしましたもんね』
( ><)『さあ2アウトランナー2塁。バッターは6番の比木です!』
- 223 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/12(月) 02:21:10.55 ID:Ol2JSet70
- 今のチームはそうそうチャンスは作れない。
だが、今はチャンス。こんな時は次はいつ来るか分からない。
ならば、来たときにしっかりものにしておかなくてはいけない。
(-_-) (今、山本は参ってるからな……少しでも楽にしてやりたい)
自分は捕手だ。比喩的には恋女房とも言われる。
投手と一心同体。それこそがバッテリーとしてのあるべき姿なのかもしれない。
[^Å^] (……)
マウンドには立ち直ったと見える金村。
決して成績はエースではないが、今この時においてだけはエースの風格が漂っているような気がした。
- 224 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/12(月) 02:25:54.76 ID:Ol2JSet70
- (-_-) (……)
1球目はストレート。球速は146キロを計測している。
かなり肩も温まってきたころだ。
[^Å^] (ふんっ!)
2球目は大きく曲がるカーブ。
宝に打たれた残像もあるだろうに見事にインロー一杯にコントロールしてきた。
(-_-) (……)
2球ともストライク。
簡単に追い込まれてしまった。
こちらが早打ちはしないと決めつけての投球だったのかも知れない。
- 225 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/12(月) 02:28:53.78 ID:Ol2JSet70
- (-_-) (3球目……外してくるか……?)
その思考に至る。そこで考えた。
自分なら、金村をリードする時、どうするか。
金村はバランスよくまとまってはいるが、決め球に欠ける。
ならば、あまりカウントを進めていくと不利だ。
だったら、自分なら。
(-_-) (3球勝負をかけるな……)
それも、金村が1番自信があるであろうストレートで。
悠太郎が同じ思考かは分からない。
でも、ヤマを張って待つ価値はある気がした。
- 226 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/12(月) 02:32:09.84 ID:Ol2JSet70
- そして、第3球。
(;-_-) (来た!)
読みが当たった。アウトコースに入るストレート。
しかしそんなにコースは厳しくない。――もらった。
そう思い、バットを振る。
――しかし、分かった。
捉えた感触。スタンドに入るような、完璧とはほど遠かった。
- 229 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/12(月) 02:35:22.80 ID:Ol2JSet70
- 少し、力が入った。
力が入った分、少し詰まった。
少し詰まった分、飛距離が伸びなかった。
飛距離が伸びなかった分、センターがキャッチした。
(-_-) (……くそっ)
ヘルメットを外しながら毒づく。
捉えられない球ではなかった。
しかし実際に捉えられなかった。これが事実だ。
悪い流れの中に、確かに自分もいるのだ。
123 456 789 RH
V 000 1 13
R 211 45
V 山本省‐比木
R 金村‐悠太郎
- 15 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 21:14:58.67 ID:5JI2djtv0
- ( ><)『さあ比木が倒れてヴィッパーズは1点どまりです』
(´・ω・`)『なかなか波に乗れない打線ですからね。ここでもう1点ぐらいは欲しかった』
( ><)『そうですか。さあ試合は4回裏、レールウェイズの攻撃です!』
[`―´] (……)
深呼吸をつく。
マウンドからバックスクリーンの点数を見る。
2,1,1。自分がこの3回につけた数字だ。
(-_-) 「山本……」
[`―´] 「……」
- 16 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 21:19:40.58 ID:5JI2djtv0
- [`―´] 「だっさいところ、見せちゃったなあ」
(-_-) 「?」
ふと呟いた山本の言葉を聞いた。
その呟きは自分に言ったというより、漏れてしまった、のほうが適切だ。
[`―´] 「僕に期待して待っててくれた人がいたのにさ。……これじゃ毒田に説教なんかできやしない」
(-_-) 「毒田に説教? お前が?」
比木は山本の性格を思い出す。
端的に言うイタズラ小僧のような山本は説教されることはあれど、する場面などお目にかかったことがない。
[`―´] 「キャラじゃないでしょ?」
(-_-) 「ああ」
- 20 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 21:23:48.38 ID:5JI2djtv0
- [`―´] 「そりゃあ僕ももう30歳だもんね。説教の1つや2つするさ」
(-_-) 「ああ。……お互い、な」
[`―´] 「うん。で、30だから……」
(-_-) 「……」
[`―´] 「結果出さなきゃ、ね」
(-_-) 「わかってるならさっさとエンジンをかけるんだな」
[`―´] 「もちろん」
- 21 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 21:28:21.81 ID:5JI2djtv0
- ( ><)『さあ山本と比木の会話が終わって守備位置につきます』
(´・ω・`)『はい』
( ><)『山本のここまでの調子はいかがでしょうか』
(´・ω・`)『もちろん、よくはないですね。これ以降もこの調子なら監督も継投策を考えだすでしょう』
( ><)『そうですか、山本にとってはここが正念場ということですね。ではピッチングを見守りましょう!』
[`―´] (……)
左腕に握った白球を見つめる。
思い出せ。良かった時の自分を。思い出せ。投げられなくて涙を流した日を。
思い出せ。投げ始めた時の気持ちを。思い出せ。叩かれても立ち上がった自分を。
[`―´] (……泣き言なんて、言ってられないね)
『7番、キャッチャー悠太郎』
| ^o^ | (やまもとさんは、ちょうしがわるい。うたせていただきます)
- 23 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 21:32:15.45 ID:5JI2djtv0
- | ^o^ | (……!)
1球目。
山本の左腕から繰り出された速球は比木のグラブに吸い込まれる。
右打者の悠太郎の膝に入るインローストレート。
| ^o^ | (……いまのは、いいたまでした)
だが、これでいい。
くさいところは見逃し、甘い球を打つ。
口で言うのは簡単な基本だが、今の山本の調子ならその基本を忠実に実行できる。
- 26 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 21:39:10.91 ID:5JI2djtv0
- 2球目。
| ^o^ | (!)
アウトコースの球と読んだ悠太郎。
踏み込んだ悠太郎を挑発するようなインハイの球が鼻をかすめた、ような気がした。
『ストライク!』
しかし、判定はストライク。
鼻をかすめたように見えたのは悠太郎の主観のみだったらしい。
| ;^o^ | (にゃろう……)
これで2球続けてのインコース。
バランス良く配球したがる比木と山本なら次はアウトコースだろう。
- 28 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 21:48:09.93 ID:5JI2djtv0
- | ^o^ | (やまもとさんは、もうたまかずを、なげたくないはず)
山本の球数は4回時点で60球ほどに達している。
下位打線の自分に無駄な球は投げたくないはずだ。
| ^o^ | (と、なれば……)
アウトコースの決め球。
右打者の自分から逃げていくチェンジアップ。
| ^o^ | (でしょう)
それほど打撃に秀でていない自分ではあるが、来る球がわかっていれば当てることはできる。
当てれば何が起こるか分からないのが野球だ。
- 31 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 21:55:00.90 ID:5JI2djtv0
- しかし、それほど打撃に秀でていない自分が読みを外せばどうなるか。
そうなれば結果など、見るまでもない。
( ><)『3球目もインコース――!! スライダーに悠太郎3球三振――!!』
(´・ω・`)『完全に読みもタイミングも外されましたね。バッテリーの完全勝利です』
| ;^o^ | (うう……)
[`―´] (イン、イン、と来たから次はアウト?)
(-_-) (……ふん)
[`―´] (甘いんだよ。30歳なめんな若者)
| ;^o^ | (……)
とぼとぼと帰っていく悠太郎。
そこにはレールウェイズの守備を背負って立つ気迫は感じられない。
- 32 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 22:00:52.71 ID:5JI2djtv0
- 『8番、セカンド長谷川』
( ^^ω) (ホマホマ。悠太郎め三球三振とは、僕の7番昇格も近いホマ)
( ><)『さあ7番悠太郎が倒れて8番長谷川。これはどのようなバッターでしょう』
(´・ω・`)『ええ。今のところ守備の人間で打撃は2軍でも中の下クラスです。安パイといって差し支えないかと』
( ><)『そうですか』
(*^^ω)(ホマホマ。僕もついに7番だホマーw)
- 33 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 22:05:19.49 ID:5JI2djtv0
- [`―´] (ニヤニヤしちゃって……)
(*^^ω)(腐っても山本省吾だホマ。打てば評価はうなぎのぼり給料もうなぎのぼりだホマ)
1球目。
山本が投じた球は真ん中ややアウトコースの半速球。
(*^^ω)(甘いホマwwいただいたww)
[`―´] (甘いのは君だよ)
長谷川がスイングの動作に入った瞬間。
滑るように入ってきたボールがストンと落ちた。
(;^^ω)(ホマ!?)
- 34 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 22:07:20.60 ID:5JI2djtv0
- しかし、すでに動き始めた体は止まらない。
左打者である長谷川がスイングしたバットは――
(;^^ω)(ダメだホマー!! このままだと僕の野球殿堂入りがー!!)
こつん、と情けない音をたててボールと接触した。
もちろんジャストミートしているわけもなく、セカンドへと転々と転がる。
( ・∀・) (ほいっと)
セカンドの茂等が捕球し、送球する。
その間長谷川は走りながら茂等に念を送り続ける。
(;^^ω)(落とせ滑れ転べ落とせ滑れ転べエラーしろ――!! どうなっても知らんぞ――!!)
( ・∀・) (するかよ)
もちろん守備の名手茂等がそんなミスを犯すはずもなくアウト。
あっさりツーアウトだ。
- 36 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 22:13:42.03 ID:5JI2djtv0
- ――ベンチ
('A`) 「ハックション」
( <●><●>) 「風邪ですか?」
('A`) 「いや、なんか念を送られた気がした」
( <●><●>) 「はあ」
- 37 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 22:18:34.32 ID:5JI2djtv0
- 山本は続く9番ピッチャーの金村を危なげなく抑えスリーアウト。
レールウェイズはこの試合初めての三者凡退に倒れた。
(-_-) 「ナイピッチ」
[`―´] 「やめろよ。あんな下位打線でそんな言葉」
(-_-) 「ナイピッチ」
[;`―´] 「……もしかして、皮肉込めてる?」
(-_-) 「ナイピッチ」
- 39 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 22:22:54.30 ID:5JI2djtv0
- しかし、5回の表はヴィッパーズも下位打線。
依然調子を崩さないレールウェイズ先発・金村はここも三者凡退に切って取り、勝利投手の権利を手に入れた。
/ ,' 3 (……)
荒巻監督代行はベンチにどっかり腰を下ろし、戦局を見つめる。
山本はすでに70球近い球を投げてしまったが、4回の調子を維持できればまだ大丈夫だ。
/ ,' 3 (それよりも……)
このまま試合が膠着し、ブルペン勝負に突入する方が分が悪いように思えた。
もちろんヴィッパーズは最強と称される中継ぎ陣を擁している。
しかし、いくら首位決戦だからと言ってこの夏場に連投させるのは好ましいことではない。
- 40 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 22:25:00.71 ID:5JI2djtv0
- / ,' 3 (……)
じんわりと、汗が滲む。
それがこの暑さからくるものなのか、嫌な予感を体現しているものなのかは、わからない。
今自分にできることは選手の状態を見極め、最高のオーダーを組むことだ。
/ ,' 3 (あとは……)
/ ,' 3 (……)
/ ,' 3 (野球の神のみぞ知る、か)
【試合経過】
123 456 789 RH
V 000 10 13
R 211 0 45
V 山本省‐比木
R 金村‐悠太郎
- 43 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 22:49:07.25 ID:5JI2djtv0
- 『5回の裏、シベリアレールウェイズの攻撃は、1番ショート・長岡』
本拠地であるスタジアムの四方から歓声が上がる。
その大きさは悠太郎や長谷川のそれとは比べ物にならない。
今や日本を代表する打者といってもいい。長岡譲司の3打席目が訪れた。
[`―´] (……)
今日の長岡は2打数の2安打。相性の問題もあるだろうが、今日の長岡は調子が良さそうに見える。
だからこそ、先頭打者としては出したくない。
( ゚∀゚) (……)
右打席に入り、重心を低く落とす。
バットをゆらゆらと揺らすそのフォームは独特ではあるが基本に忠実だ。
- 45 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 22:51:47.77 ID:5JI2djtv0
- [`―´] (……だいぶ年下だってのに、なんだろうね。これは)
ロージンを拾い、パンパンと手につけ、落とす。
その間長岡は自分から一切目を離さない。
まるで、自分の獲物を見定める猛禽類のように。
[`―´] (すごいプレッシャーだよ。参ったね)
( ゚∀゚) (……)
(-_-) (先頭では出したくない……ストライクから入りたいが……)
[`―´] (甘くなれば初球からでも打たれる)
- 47 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 22:57:13.45 ID:5JI2djtv0
- (-_-) (となれば厳しいコースを突いていくしかないが……)
[`―´] (ボール先行だと、いかにも苦しい)
(-_-) (……行けるか?)
山本はいったん比木から目をそらす。
見つめるのは長岡の顔。長岡は相変わらずこちらを見ている。
その端正な顔で見つめられると悪い気はしないが、ひとつ感じることがあった。
[`―´] (長岡め、僕を全然侮ってないな)
先ほどの長谷川の打席に見られた驕りや侮りは一切見えない。
となれば妙なボールを振ってくれることもない。
[`―´] (長谷川君も、最高の教材が目の前にあるのにね)
成績から、野球に対する姿勢まで一流。
自分が生涯見ることのできない世界を、長岡はきっと見ていることだろう。
- 50 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 22:59:50.26 ID:5JI2djtv0
- [`―´] (だからと言って……負けるわけにはいかないな)
(-_-) (……)
[`―´] (比木、さっきの問い)
少し目を見開く。
それも長岡は観察しているが、自分の知ったことではない。
いくらでも観察してくれればいい。かわすつもりなどない。真正面から倒して見せる。
[`―´] (もちろん、YESだ。“若き天才”に見せてやるよ)
( ゚∀゚) (……)
[`―´] (30歳のおっさんの、“年の功”をね)
- 51 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 23:03:30.37 ID:5JI2djtv0
- 1球目。
( ゚∀゚) (!)
アウトコースの球。長岡は見逃す。
甘く入れば叩くつもりだったが、予想以上にコースを突いた球がやってきた。
( ゚∀゚) (……)
審判からはストライクのコール。
電光掲示板には”S”の黄色いランプが1つつく。
( ゚∀゚) (少し……動いたな。シュートか?)
- 53 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 23:07:53.13 ID:5JI2djtv0
- 山本の代名詞であり決め球のシュート。
それを初球から使うことは記憶にもデータにもなかった。
( ゚∀゚) (セオリーを崩してまで僕に挑んできますか……)
[`―´] (……)
( ゚∀゚) (光栄ですね)
2球目はシュートを使い、しかもいいところに決まってしまったことから、投げにくくなる。
最初に決め球を使うリスクは向こうだって承知の上だろう。
( ゚∀゚) (1球目シュートだから2球目はシュートはない……)
- 55 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 23:09:29.16 ID:5JI2djtv0
- 2球目。
山本の左腕から投じられた球は――
(-_-) (ナイスボール!)
1球目とまったく同じところのシュート。
長岡の狙いを外すことが目的だ。
[;`―´] (……)
- 56 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 23:12:27.59 ID:5JI2djtv0
- (-_-) (追いこん……)
(#゚∀゚) 「うらぁ!」
長岡は、一歩踏み出し、逃げるシュートを捉えた。
おっつけた打球はライト線へ。
(;-_-) (読まれた……!)
( ゚∀゚) (2球連続シュートはない。そう思わせる作戦。長谷川の時と同じ発想ですよ、お二人さん)
( ><)『痛烈な当たり――!!』
- 59 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 23:16:11.30 ID:5JI2djtv0
- 『ファール!!』
J( ゚_ゝ゚)し
( ゚∀゚) (……少し、捉えられなかったか)
すでに一塁を回っていた長岡だったが、戻ってくる。
フェアゾーンに入っていれば間違いなく二塁打、処理がもたつけば三塁打という当たり。
(-_-) (危ない……)
[`―´] (……)
安堵するバッテリー。しかし、危機が去ったわけではない。
- 65 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 23:19:23.43 ID:5JI2djtv0
- [`―´] (……)
( ゚∀゚) (シュート、シュート、そして……)
比木が山本に対してサインを出す。
一か八か。こうでもしないと長岡は抑えられない。
(-_-) (シュートだ)
( ゚∀゚) (シュートだ)
しかし、両者の考えは重なる。
比木が裏を取って出したシュートのサインは長岡によって読まれていた。
( ゚∀゚) (……)
長岡には自信がある。
次にどんな球が来ようが、シュートなら。
どんなコースに決まろうがヒットゾーンに落とすことができる。
- 68 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 23:22:44.32 ID:5JI2djtv0
- 3球目。
山本が首も振らず投じた球は――
[`―´] (……)
(;゚∀゚) (!)
(゚_゚) ( )
思い切り腕を振って投げた、ストレート。
140キロ後半の速球が長岡のもとへと迫る。
- 70 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 23:25:21.10 ID:5JI2djtv0
- (;゚∀゚) (くっ……)
読みを外された。
しかし長岡の天性のバッティングセンスは空振りをするほど甘くはない。
とっさに出したバットにボールが当たる。
( ><)『打った――!!』
[`―´] (!)
- 71 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 23:28:38.96 ID:5JI2djtv0
- しかし、裏を返せばそれは当たっただけ。
球威に負けた打球は転々とセカンドの守備範囲へ。
( ・∀・) (すいっと)
(;゚∀゚) (……)
唇を少し噛む。
完全に読み切ったつもりだったが甘かった。
山本の速球の球威を読み違えていた。
( ゚∀゚) (シュートだけの人間が2ケタ勝利は出来ないわな……)
走りながらベンチに帰る長岡。
その頭には、すでに山本の球威のデータが詰められている。
- 73 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 23:31:56.50 ID:5JI2djtv0
- (゚_゚) 「おっ、おまっ、おまっ」
比木が長岡を打ち取ったことを確認すると全速力でマウンドへと駆ける。
その姿はキャッチャーの装備一式を身につけているとは思えないほどの俊敏さだった。
[`―´] 「はははどうしたの比木。顔がトンベリみたいになってるけど」
(゚_゚) 「どうしたのじゃねーよ! サイン無視して投げてくんなよ!」
[`―´] 「仕様がないじゃん。首振ったらそれも長岡は計算に入れてくるんだよ? 敵をだますには……」
(゚_゚) 「まずは俺からってか! やかましいわ!」
- 76 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 23:35:18.81 ID:5JI2djtv0
- [`―´] 「ごめんごめん。なんかシュートが読まれてるような気がしたからさ」
(゚_゚) 「だからってな……」
(゚_゚)
(-_-)
[`―´] (あ、戻った)
(-_-) 「ま、いいや。次したらぶっ○すからな」
[`―´] 「おうおう、同年代はみんな怖いねえ」
(-_-) 「言ってろ」
山本は続く2番・関ヶ原をシュートでショートゴロに打ち取る。
そして3番・池沼の打席――
- 78 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 23:42:47.31 ID:5JI2djtv0
- (^q^) (ランナーなしで2アウトとかやる気しないのれす)
( ><)『池沼、カットボールを打ち上げた! センター擬古が下がって…取りました! スリーアウトチェンジ!』
(´・ω・`)『池沼の母、淳子(63)はところ構わず写真を撮ってますね』
淳子 「池沼ちゃん! 池沼ちゃん! ああ、池沼ちゃんのヘルメットくんかくんか」
(^q^) 「おい、止めろ」
(´・ω・`)『……』
( ><)『……』
(´・ω・`)『お母さんの方がきちが』
( ><)『それ以上言ったらぶっ飛ばすぞ』
(´・ω・`)『……ごめん』
( ><)『……』
(´・ω・`)『……』
- 79 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 23:43:48.73 ID:5JI2djtv0
- 【試合経過】
123 456 789 RH
V 000 10 13
R 211 00 45
V 山本省‐比木
R 金村‐悠太郎
- 81 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 23:51:26.49 ID:5JI2djtv0
- 5回の裏が終わるとグラウンド整備を兼ねたパフォーマンスが始まる。
観客はその間喧嘩をするマスコットを眺めたりトイレに行ったり小腹をすかせて売店に行ったりする。
しかし当の選手本人たちにそんなことをしている余裕はない。負けているとなればなおさらだ。
N| "゚'` {"゚`lリ 「この回は1番からだ。金村もそろそろしんどくなってくる頃合いだろう」
(K‘ー`) 「……」
N| "゚'` {"゚`lリ 「たたみかけるなら、この回だ。何としても1点をもぎ取るぞ」
(K‘ー`) 「はい」
N| "゚'` {"゚`lリ 「それで、具体的な方法だがな……」
/ ,' 3 (……)
荒巻は阿部と選手の作戦会議を尻目に、今後の継投について考えていた。
すなわち、山本をどこまで引っ張るか。序盤3回の出来なら厳しく思えたが、長岡からの攻撃をシャットアウト。
それをできる投手は数少ない。しり上がりに調子を上げている分、なんとか長期に引っ張りたい。
- 82 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/19(月) 23:55:04.74 ID:5JI2djtv0
- そしてそれは、向こうとて同じはず。
レールウェイズも強力な中継ぎ陣がいるができれば休ませたいのが本音だろう。
/ ,' 3 (となれば金村を長引かせるはず……ジョーンズでもウィリアムスでもなく、金村を)
/ ,' 3 (もしそうであれば……)
/ ,' 3 (英語は完璧……じゃない、付け入る隙は十二分にある)
N| "゚'` {"゚`lリ 「うしっ、ケツアナ締めていくぞっ!!」
「「「おうっ!!!」」」
/ ,' 3 (!)
そうこう考えているうちに作戦会議が終わったようだ。
川島が小走りでネクストサークルに駆けていく。
- 87 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 00:09:20.16 ID:QQ6ZQnVX0
- 『6回の表、ニュー速ヴィッパーズの攻撃は、1番ショート・川島慶三』
(K‘ー`) (思えば……長岡とまったく同じシチュエーションだな)
1番・ショート・年齢。違うのは、実績だけか。
(K‘ー`) (ま、確かに今のところは長岡に遠く遠く及ばないけどさ)
(K‘ー`) (今、この場のたった1打席だけなら)
(K‘ー`) (あいつに勝てる)
長岡はこの場面でセカンドゴロに倒れ、追加点の機会を失った。
自分はどうだろうか。どうなるだろうか。
- 90 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 00:12:04.55 ID:QQ6ZQnVX0
- (K‘ー`) (ま、救いはピッチャーが山本さんじゃない、ってとこかな)
土をならし右打席に入る。
バットを振り上げ金村を見つめる。
[^Å^] (……)
(K‘ー`) (俺は、あんたの目にどう映ってんのかね)
- 91 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 00:15:43.26 ID:QQ6ZQnVX0
- 1球目。
140キロの直球。少し甘いコースだ。
(K;‘ー`) (うーん……)
それを見逃してしまった自分。ここが自分が3割に突きぬけられないゆえんだろうか。
そんな考えが頭に浮かぶがすぐ振り払う。
(K‘ー`) (そんなことは試合が終わって考えることだ。集中集中!)
そしてタイムを取り靴ひもを結ぶ、ふりをする。
そこで川島は阿部の言葉を反芻していた。
- 95 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 00:22:18.66 ID:QQ6ZQnVX0
- N| "゚'` {"゚`lリ 「慶三、いい尻だな。や ら な い か」
(K;‘ー`) (違う違う、これはキャンプの筋トレの時に言われた言葉だ)
(K;‘ー`) (結局筋トレやらないかって意味だったし……しかも超きつかった)
N| "゚'` {"゚`lリ 「やるぞ、慶三。今日の金村はカーブを決め球に持ってきている。
ライト方向におっつけるのが最適だが、キレがいい。しかも今日の金村は直球も調子がいいと来た。
なにを狙う? 狙いはスライダーだ。出来が悪いからめったに投げないが、カウントを長引かせれば使ってくるかもしれない。
いいか、向こうだって球数は使いたくないんだ。直球とカーブだけじゃ限界がある。だから少しスライダーを織り交ぜる。
カーブを狙ってもいいが、基本はスライダーだ。頼んだぞ」
(K‘ー`) (よし、スライダー狙いだ)
――ベンチ
J( ゚_ゝ゚)し 「盾やでー」
(;'A`) 「アーロンそんなのどこから拾ってきたんだよ!」
- 96 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 00:26:46.13 ID:QQ6ZQnVX0
- 2球目、3球目はストレートが入り、外れ2ストライク1ボール。
簡単に追い込まれてしまった。
(K‘ー`) (カーブを使うなら、ここだろう)
3球目はウエスト気味にわざと外していた。
間違いなくここで勝負を決めたいのだろう。
(K‘ー`) (カーブ……できるか? カット……)
自分で言うのもなんだが、自分は1番のタイプではない。
どちらかというと気兼ねなく振れる7番や8番が好きなのだ。1番2番のような器用なことはなかなか出来ない。
- 98 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 00:32:06.59 ID:QQ6ZQnVX0
- (K‘ー`) (……ま)
( )
(K‘ー`) (あれ、顔思い出せないや)
まあ、とにかく自分よりも不器用な人間が去年一年1番に座っていたのだから今更どうってことはない。
カットだってヒットを打つよりはずっと簡単……な……はずだ。うん。
(K‘ー`) (とにかく! キレてようがなんだろうがかかってらっしゃい!)
[^Å^] (……)
- 101 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 00:36:00.41 ID:QQ6ZQnVX0
- そして投じられた4球目。
(K;‘ー`) (カー……バアアアアアアア!!)
来たのは、カーブではなくストレート。
タイミングを外され、しかし振らなければ見逃し三振だ。
それだけは避けなければいけない。
(K;‘ー`) (後は野となれ山となれ――!!)
完全にヤマを外した川島は試験前の学生よろしく無駄なあがきとしてスイングする。
- 104 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 00:39:04.59 ID:QQ6ZQnVX0
- ――しかし、あがきがすべて悪い結果になるとは限らない。
なんとかバットに当たったボールは1塁・藤山と2塁・長谷川の間を抜け、ライトまで転々と転がっていった。
(K;‘ー`) (ら、ラッキー!)
冷や汗を隠しながら1塁に到達する。
過程はどうあれ、結果を残した。3点差の6回。
ここからどうなるかは、後の後続次第だ。
『2番セカンド・茂等』
( ・∀・) (……)
- 105 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 00:43:16.07 ID:QQ6ZQnVX0
- ( ・∀・) (……はいよ)
サインを確認し、打席に入る。
若いころならこのサインに反発していただろうか。わからない。
少なくとも今の自分はチームのために。それが、自分のためになることを知っているから。
( ・∀・) (おいしいところ譲ってやるよ、宝)
[#^Å^] (おらっ!)
バントの構えをし、一発で三塁線に転がす。
あわよくば自分も生き残りたいが、そんなに関ヶ原の守備は甘くない。
( "ゞ) 「……2塁は無理だし」
1塁に送球し、ワンアウト。
確実にランナーを送ってきた。
- 106 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 00:49:21.98 ID:QQ6ZQnVX0
- ( ^Д^) (ここで決めるが4番の……おっと、3番か)
『3番ファースト・宝』
そう考えた宝を後押しするようにアナウンスがかかる。
あなた様、宝さんは4番ではなく3番ですよ、と。
( ^Д^) (……)
長年追い求めてきた4番の座。
それは偉大な男の引退によって手に入れることができた。
4番として恥ずかしくない成績を残してきたと自負している。これまでも、これからも。
- 108 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 00:52:14.34 ID:QQ6ZQnVX0
- だから、3番を務めることになった時複雑な感情がなかったといえば嘘になる。
しかし、以前ほど宝は4番に拘りを持ってはいなかった。
( ^Д^) (4番になるのは目的じゃない。手段だ。……チームが勝つための)
もちろん4番に座れるなら喜んで座ろう。
だが、4番ではないからやる気がないなんてことはない。
勝つオーダーを組んで自分が3番に抜擢されたのなら、喜んで働こう。
そして、勝つオーダーの肝はまさに今のような場面なのだ。
- 109 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 00:55:08.62 ID:QQ6ZQnVX0
- 宝が4番に座るとどうしても3番が空位になってしまい、繋がりが悪くなる。
ならば、1・2番で出塁したランナーを流れるように3番で返す。
これが荒巻代行の考えたオーダーだった。1点をもぎ取り、投手陣で逃げ切る。
堅守のチーム。それが荒巻代行が目指すチームだ。
( ^Д^) (俺は、そのコア。俺が働かなきゃ全部絵にかいたモチだ)
期待されている。それは胃が重くなるほど分かる。
なんなら4番の時以上に期待されているのではないだろうか。
- 110 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 01:00:06.86 ID:QQ6ZQnVX0
- ( ^Д^) (期待に応えなきゃ……男じゃねえよ。ましてや――)
4番ではない、と考えようとして笑う。
なんだ、自分は無意識下ではそれほどまでに4番に執着しているのか。
( ^Д^) (……4番じゃねえ、じゃねえ)
( ^Д^) (……)
( ^Д^) (“スラッガー”じゃねえ、だな)
( ^Д^) (……)
( ^Д^) (カックイー俺)
- 112 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 01:05:23.99 ID:QQ6ZQnVX0
- 黒のバットを天に突き出す。
唯一ヴィッパーズで恐れられているバッター・宝。
その威圧感に金村も緊張の糸をさらに張る。
[;^Å^] (甘い球はダメだ……くさいところ、くさいところ……)
そう考えて投じた1球目。しかしくさいところ、というのは考えようによっては逃げの一手である。
しかも完全に逃げる気はない。逃げつつ、あわよくばストライクを稼ごうという二兎を追う精神。
真剣勝負の場では、掬われることが多い。この場もまた、例外ではない。
( ^Д^)
阿部の指示したスライダー。一閃、振り抜いたバットは高く放り投げられた。
宝の人差し指が天を指す。ボールは、電光掲示板に叩きつけられた。
- 114 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 01:10:56.52 ID:QQ6ZQnVX0
- ( ><)『入った――!! 第23号ツーランホームラン!! バックスクリーン直撃――!!』
(´・ω・`)『……大したもんですね』
宝が大きくダイヤモンドを回る。
打った瞬間分かる高い弾道にファンも湧く。
レールウェイズスタジアム所沢。蒸し暑い中、1人の男のためのオンステージが開幕した。
そしてその男がホームベースを踏んだ時、ボルテージは最高潮に達した。
( ^Д^)
宝が手を上げる。観客が湧く。
4番ではなくとも、本物のスラッガーがそこにはいた。
V 3−4 RW
- 116 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 01:15:52.75 ID:QQ6ZQnVX0
- J( ゚_ゝ゚)し 「そんな宝さんカッケーの流れの間にワシもHR打ったで!」
具体的に言うと>>114の16行目、「スラッガーがそこにはいた」辺りである。
久々のホームランではあるがポール際超ギリギリであったのと、宝に皆注目していたので無論サイレントである。
もっと具体的にガイエルのホームランについて語りたいが30行制限が目前なので以上である。
J(;゚_ゝ゚)し 「ちょっ、全然30行じゃない」
V 4−4 RW
- 119 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 01:22:47.54 ID:QQ6ZQnVX0
- 『5番レフト・伊陽』
(=;゚ω゚) (回ってきた……まわってきたよぅ……!)
6回開始時にあった3点ビハインドはもうない。
それどころか未だワンアウト。逆転も十分狙える。
(=;゚ω゚) (と、とにかく軽打で繋ぐことを意識……)
( ^Д^) 「伊陽」
(=;゚ω゚) 「よぅ?」
- 120 名前:訂正 ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 01:25:07.96 ID:QQ6ZQnVX0
- 『5番レフト・伊陽』
(=;゚ω゚) (回ってきた……まわってきたよぅ……!)
6回開始時にあった3点ビハインドはもうない。
それどころか未だワンアウト。逆転も十分狙える。
(=;゚ω゚) (と、とにかく軽打で繋ぐことを意識……)
N| "゚'` {"゚`lリ 「伊陽」
(=;゚ω゚) 「よぅ?」
- 123 名前:訂正 ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 01:29:34.13 ID:QQ6ZQnVX0
- N| "゚'` {"゚`lリ (小さい声で話せ)
(=゚ω゚) (よぅ……わかりました)
わざわざベンチから出てきて指示することがあるだろうか。
ランナーはなし、ワンアウト。ここは何が何でも出塁して――
N| "゚'` {"゚`lリ (宝から伝言だ)
(=;゚ω゚) (宝さん?)
N| "゚'` {"゚`lリ (「俺はクリーンナップ全員4番だと思っている……」だ、そうだ)
(=;゚ω゚) (……)
N| "゚'` {"゚`lリ 「以上。具体的なことはさっきの通りだ」
- 128 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 01:35:34.46 ID:QQ6ZQnVX0
- 4番。
(=゚ω゚) (4番?)
強打者。
(=゚ω゚) (……)
伊陽の脳裏にあらゆる人間が浮かび上がる。
松井秀喜。諸本信彦。鉢知憲。アーロン・ガイエル。そして、宝笑児。
(=゚ω゚) (……)
自分は、彼らのような4番になれるのだろうか。
- 131 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 01:38:29.44 ID:QQ6ZQnVX0
- 彼らはいつもチームの中心にいた。
自分が高校や中学に行っている時から投手を助け、支えていた。
(=゚ω゚) (高校?)
ふと、学生時代の思い出が蘇る。
あのころ、バットを力強く振ることしか考えていなかったあの頃。
(=゚ω゚) (……)
いつからだろう。自分の力に限界を感じ始めたのは。
大学で巨漢の大砲を目にした時? プロに入って外国人と対峙した時?
- 133 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 01:42:21.90 ID:QQ6ZQnVX0
- 頭の中でぐるぐる回る。
ぐるぐる。ぐるぐる。回って回って――目が――最初に見たのは――見えたのは――
自分の持っているバットだった。
(=;゚ω゚) (!)
短い。違う。自分の望むバットはこんな物ではない。
なぜバットが短いのか。自分が短く持っていたからだ。
(=;゚ω゚) (なに慣れないことしてるんだよぅ……僕は)
中学だって、高校だって、大学だって、そしてプロの2軍でだって。
自分はこんなバットの持ち方をしたことはない。
握りなおす。バットのグリップエンドの一番先まで。
- 136 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 01:45:41.43 ID:QQ6ZQnVX0
- 確かに、限界を感じることはあった。壁が立ちはだかってきたことはあった。
でも、中学だって、高校だって、大学だって、そしてプロの2軍でだって。
(=゚ω゚) (僕は……僕は、――本塁打王――に、なったんだよぅ)
(=゚ω゚) (それがここでだけ通用しないなんて……ありえないよぅ)
(=゚ω゚) (繋ぐ? 僕が? 繋ぐ?)
(=゚ω゚) (……)
(=゚ω゚) (ありえないよぅ)
だって。自分の今までの野球人生を振り返る。
だって。自分の今までの足跡を振り返る。
だって。
(=゚ω゚) (僕は、わがままなんだよぅ)
(=゚ω゚) (だから)
(=゚ω゚) (狙う)
- 139 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 01:48:30.41 ID:QQ6ZQnVX0
- [^Å^] (そう一言二言、言われただけで変るもんか!)
1球目。自信のあるカーブ。
右打者の伊陽からは逃げるようにして沈んでいく。
並みのバッターなら見逃すだろう。
(=#゚ω゚) 「おおおっ!!」
しかし、伊陽は振ってきた。
風圧を感じるほどのスイング。
金村は、一瞬身じろいだ。
- 141 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 01:52:29.61 ID:QQ6ZQnVX0
- 『ストライク!!』
[^Å^] (……なんじゃ)
(=;゚ω゚) (……)
結局、最初のころの大振りの伊陽に戻っただけだ。
2軍のころと同じ。今の自分の球威なら抑えられない相手ではない。
[^Å^] (ブンブン振るだけの扇風機が。一生首振りしてろ)
(=゚ω゚) (……)
- 142 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 01:55:15.89 ID:QQ6ZQnVX0
- ( ><)『伊陽はずいぶん大きく振ってきましたね』
(´・ω・`)『そうですね』
( ><)『あんなにフルスイングしてしまうとボールを捉えられないのでは?』
(´・ω・`)『……僕が、現役中に欲しかったものが、1つ、あります』
( ><)『なんでしょう』
(´・ω・`)『伊陽君のような、フルスイングしても軸がぶれない安定性です。彼は、その点だけに関して言うと、超一流です』
( ><)『はあ』
(´・ω・`)『もし、金村君が伊陽君のことをただの大振り打者と思っているなら』
(´・ω・`)『大きいしっぺ返しがくるでしょうね』
- 143 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 02:01:59.91 ID:QQ6ZQnVX0
- しかし諸本との言葉とは相対的にカウントは金村有利で進んでいく。
カウントは2−1。ファールで1球粘ったため次は5球目だ。
| ^o^ | (これいじょう、たまかずをかけるひつようは、ありません。きめましょう)
[^Å^] (カーブだな)
1球目以降投げていないカーブを選択する。
大丈夫。多少甘くなったとしてもあんなに大振りなら打ち損じる。
勝てる。そう信じて、足を踏み出す。
- 145 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 02:07:22.82 ID:QQ6ZQnVX0
- | ^o^ | (すこし、あまい! か?)
悠太郎は少し顔をしかめた。
金村のカーブが多少高く入ってきたからである。
[^Å^] (でも、大丈夫だ!)
(=;゚ω゚) (絶好球……!)
コンパクトに振れば、ヒットにはなる。
でも、自分が期待されている役割はなんだ?
川島さんにはなんとしても塁に出ることが期待されている。
茂等さんには身を削ってチームの歯車になることが期待されている。
宝さんは相手の心を打ち砕くことが期待されている。
ガイエルは……よくわからない。
(=;゚ω゚) (僕の役割は……!)
(=#゚ω゚) 「これだよぅ!!!」
自分の筋肉・体重・遠心力すべてを乗せた一撃。
その重い重いスイングは、金村の球を呆気なく捉えた。
- 147 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 02:11:24.86 ID:QQ6ZQnVX0
- [;^Å^]
| ゚o゚ |
(=゚ω゚) 「は、はは……」
自分でもびっくりする打球が飛んだ。
恐らく、いや絶対に野球人生最高の当たり。
観客も、伊陽が架けた放物線にしばし見惚れていた。
(=*゚ω゚) 「よっしゃあああああああ!!」
そして伊陽が雄たけびを上げた瞬間、スタジアムに歓声とため息が交差した。
レフトスタンド上段、140M弾。――それが、翌日のスポーツ新聞に載った見出しである。
(=*゚ω゚) 「ひゃっほおおおおおおおお!!!」
ヴィッパーズ、逆転。
V 5−4 RW
- 148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/07/20(火) 02:18:55.45 ID:QQ6ZQnVX0
- (*^Д^) 「やったな伊陽!!」
(=*゚ω゚) 「宝さんのおかげですよぅ!!」
(K*‘ー`) 「一皮剥けましたね伊陽さん!」
J(*゚_ゝ゚)し 「伊陽の東京スカイツリーはとっくに剥けとるで!」
(*・∀・) 「あいや、これは一本取られた!」
| \
| ('A`) ドッ
/ ̄ノ( ヘヘ ̄ ̄ ワハハ/
('A`) 「数か月離れただけでもう空気についていけん……」
('A`) 「……」
('A`) 「死ぬか」
- 152 名前: ◆wqLZLRuzPQ 投稿日:2010/07/20(火) 02:24:59.29 ID:QQ6ZQnVX0
- 結局金村は最大4点のリードを守り切れず降板。
2番手には東京ビックバンズから金銭トレードで加入したブームが入る。
(;-_-) (ぐっ……!)
元々苦手にしていたブームの投球に後続が続けない。
6番比木がピッチャーゴロに倒れる。
|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「……」
さらに7番マリントンもセンターフライに倒れた。
景気よく追加点とはならなかったが、久しぶりのビックイニング。
この勢いを終盤も保てるかが課題である。
【試合経過】
123 456 789 RH
V 000 104 57
R 211 00 45
V 山本省‐比木
R 金村〜ブーム‐悠太郎
- 154 名前: ◆5Ws6J0OZQE 投稿日:2010/07/20(火) 02:28:58.37 ID:QQ6ZQnVX0
- 歓喜に沸くヴィッパーズベンチ。
その中でもどっしりと座り戦局を見つめる男がいる。
/ ,' 3 (……)
伊陽が打っても眉ひとつ動かさない。
見る人が見れば血も涙もないと非難するところだろう。
しかし荒巻はもう伊陽のホームランを見据えてはいなかった。
/ ,' 3 「……荒れるな」
誰ともなく、そう呟く。
その言葉を聞いたものは誰もおらず、よってそれは所沢の大気に消えた。
荒巻が言ったその言葉。いったん大気に溶けたそれは台風となってヴィッパーズを襲う。
それは、これから少し先の物語である。
―――続く―――
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