( ・∀・)っ】コールアウターのようです!

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 19:34:24.61 ID:8ddUBzES0


【オープニング代わりの「会話文だけでシチュエーションを想像し興奮したら負けゲーム」】



(#^;;-^)「皆さん、こんばんは。でぃです」

('A`)「結局キャラ紹介コーナーには出れないドクオです」

(#゚;;-゚)「このゲームは“ちょっとえっちな会話文に興奮してしまったら負け”という、ただそれだけのものです」

(;'A`)「スルーしないで、死にたくなるから……」

(#^;;-^)「罰ゲームもあるので注意して下さいね」

(;'A`)「モララーか? この仕打ちはどうせアイツの指示だろう?」

(# ;;-)「本日はプギャーさんとデレさん、です……」

('∀`)「……アレ? でぃちゃん、もしかしてアイツのこと、好k(#// -/)「――すっ、すたーとですっ!!」

4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 19:38:22.36 ID:8ddUBzES0


【ゲームスタート】


ζ(-、-*ζ「――じゃあ、見せるね……」

(;^Д^)「…………」ゴクリ

ζ(゚ー゚*ζ「……見るだけだからね?」

(;* Д)「分かってます……」

ζ(-、-;ζ「信用できないけど……まあいいか」

ζ(^ー^*ζ「――はい」

(;*^Д^)「……っ。これが、デレさんの……」

(;* Д)「(……ヤベェ。相変わらず大きいし、綺麗だし……美味しそう)」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 19:41:18.21 ID:8ddUBzES0

ζ(/- //*ζ「ど、どうかな……?」

( *^Д^)「前よりおっきいですね……。でも、カタチは綺麗なお椀型って言うか……あの……」

( * Д)「(あー……この甘い匂いヤベェわ……)」

ζ(/ー//*ζ「これでも日々頑張ってるから……。その……君の為に、ね……?」

(;*^Д^)「――あっ、あの!」

(;*^Д^)「触るだけ! 触るだけで我慢しますから、触っても……いいですか?」

ζ(-、-*ζ「そーくると思ってた」

ζ(ー *ζ「……いいよ。でも……ちょっとだけだよ?」

(;*^Д^)っ「……っ」スッ…

ζ(/- //*ζ「ふぁ……。なんか君……触り方が、やらしいよ……」

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 19:45:15.18 ID:8ddUBzES0

( * Д)「触り心地、スゲェいいですね……。それにやっぱ、柔らかい……。こぼれそう……」

ζ(-、-;ζ「(聞いてないし……)」

ζ(/、//*ζΣ「――うぁッ……! 何舐めてるのっ!」

(;*^Д^)「だって、こんなの目の前にされて何もするなって……!」

ζ(/、//*ζ「“だって”じゃないっ!」

ζ(/、//*ζ「まったく、君は……。後でちゃんとあげようと思ってたのに……」

(;* Д)「すいません……。でも三大欲求にはどうも弱くて、俺……」

ζ(、 *ζ「――もうっ」

ζ(/、//*ζ「…………いいよ」

(;*^Д^)「えっ……」

ζ(/ー//*ζ「全部……君だけのモノだから。思う存分、食べちゃって。ね……?」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 19:50:00.34 ID:8ddUBzES0

( *^Д^)「うわ、何これっ!? このプリン超旨いっ!!」

ζ(゚ー゚;ζ「――って、もう食べてるじゃん!? 君、そんな健啖家キャラだっけ!? 私がそれを作るのにどれだけ――」

( *^Д^)「バレンタイン最高! ありがとうございますっ!!」

ζ(/、//*ζ「…………喜んでくれたなら、いいけど」


【今回のシチュエーションは――『デレが作ったプリンを前に、プギャーがお預けを食らっている』でした】


ζ(-、-*ζ「いないとは思うけど……私の胸を連想した人は好きなおっぱいアニメを書き込んでいってね」

( *^Д^)「愚息を勃起させた人は明日の朝御飯はプリンのみ。抜いた人は……明日一日プリンのみ生活!!」


(゚、゚*トソン「『セキレイ』!!」

川 ゚ -゚)「おっぱいアニメ、おっぱいアニメなぁ……」

(;#゚;;-゚)「あの、あんまりそういうことを連呼するのは……」

(:#^;;-^)「……えっと。……本編スタート、です」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 19:53:17.82 ID:8ddUBzES0


11‐Call Who would you like to talk to ?

(,,^Д^)「恋は闇に都合が良いらしいけど……よを籠めたなか、関所も許さぬ闇に惑うのは怖いよねー」




……すたーとっ



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 19:56:57.28 ID:8ddUBzES0


【――数年前・闇の中】



 これは、私のようなモノ、私と同じようなモノにならきっと伝わると思うのだけれど、


  ――“分かること”


 がある。
 “分かってしまうこと”と言うべきなのかはそれこそ分からないけれど……とにかく“分かること”がある。






13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 19:59:17.11 ID:8ddUBzES0

 聞いた話では、「剣道」というスポーツでは「柔道」の“黒帯”のような、外見で強さを判別できる物が存在しないそうだ。
 “段位”がそのまま“強さ”に結びつくか、と言えば決してそうではないらしいが……とりあえずそれは傍に置いておくことにしよう。

 けれど、それを聞いて私は思った。


  ――きっと本当に強い人同士はそんなものがなくても分かるんだろうな


 ……と。
 サブカル的イメージに引っ張られた、薄っぺらな理解(剣道部の子は異能バトルに巻き込まれても勇猛果敢に戦いそう、的な)の下で生まれた考えだったとも思う。
 そもそも私の中での『強さ』が曖昧なのに“強い人同士”の話が明確になる訳がない。




 ちなみにライトノベルが大好きな私はよくある「優しさは『強さ』だ」というフレーズがイマイチ納得できない。
 優しさは優しさだろう。
 それ以外の何になるというのだ。



14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 20:03:03.52 ID:8ddUBzES0

 塾の講義中もずっとそんなことを考えていて、結論が出なかったので帰り道もずっと考えていた。
 『強い』ということについて。


 それはきっと制御された力なのだろう――と自分の中での一応の定義が決まった頃だった。

 目の前に二人の人が見えた。
 一軒家、玄関灯が照らす中で、一人がもう一人へ頭を下げていた。


 頭を下げているのは女性……おそらくは学生だろう。

 その、やや頬を赤く染めた彼女を、塾の構内で見かけたことがある気がしたのだ。
 人違いかもしれないが結構私の好みのタイプだったので多分そうだと思う。


 下げられている方――男性の方は言わずもがな。
 知り合いではないが、知っている人だった。



15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 20:07:13.84 ID:8ddUBzES0

 人伝に聞いた彼の人柄を考えれば「塾の帰りに女の子を送って、それでお礼を言われている」というぐらいか。
 手刀を切ったり前に出した手を振っていることから推測するに……なるほど、聞いた通り、送り狼のような無粋な輩ではないらしい。

 ……草食系男子?


 少女に手を振り別れを告げ、彼がこちらに向かい歩いてくる。
 どうやら家の方向は私とは真逆のようだ。


 黒い髪に黒い両目。眉目秀麗。その四字熟語がピッタリと合う端整な顔立ち。
 「美形」というのは須く人に威圧感というか、何か圧力をかけてくる感じというか、まあそんな所があるけれど、その点彼はまさしく例外だ。
 お高くとまっていない……どころか、うっかりすると仲間内で「パシリ」にでもされてそうだ。

 むしろ、彼の人柄を考えるに率先して立候補するだろう。
 朗らかで親しみ易い印象を与える。

 かと言って軽薄かと言われるとそんなわけもなく、かなり思慮深い方。
 ファッションセンスも、やや控えめだが良い。
 スポーツもできたような気がする。剣道部ではないが……武道家、だったような。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 20:10:14.99 ID:8ddUBzES0

 なんだろう……“乙女が思い描く理想の恋人”を体現しているような人だ。
 少なくとも私の理想ではないけれど。


 誰で喩えれば分かりやすいだろうか……と、そんなことを考えていると、彼との距離が詰まってきた。


 考え事をしていたのか、彼は腑抜けた顔だったが、私の姿を見ると、先ほど少女と接していた時の様にちゃんとした“外用の顔”に戻った。
 まさか私のことを知っているわけではないだろうけど……彼ならありえる。
 我が校の七不思議的な噂では、「全生徒の顔と名前と所属クラスと出席番号を把握している」彼だから。

 ありえないとは思うけど、“ありえないなんてことはありえない”し。
 私も一度挑戦したことがあるし。




 いつも通りの笑顔で会釈をする彼。そして、一応は笑顔を作り会釈を返す私。
 知り合いではないので、そのまますれ違うだけだ。



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 20:13:23.78 ID:8ddUBzES0

 すれ違った瞬間だった。


(,,^Д^)


                                                                  その瞬間。
                                                                   私の、
                                                                    心が、
 ――犯された。


 その一瞬間で、私の心の最も深い部分が、
 破壊され、蹂躙され、殺戮された。

 息が詰まり思わず手を口に……いや、身動ぎ一つできず、崩れ落ちることすらできず――私は立ち尽くした。

 ずっと――立ち尽くしたまま。
 私がやっと後ろを振り返れたのは、彼がもう見えなくなってからだった。



18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 20:16:18.52 ID:8ddUBzES0

 きっと彼は何もしていない。
 “何もしていないことをしていた”――だけで、私に危害を与えたわけではない。


 けれど、

  私の心の最も深い部分が、

  重油のように暗く淀んだ泣きたくなるほどに汚れた部分が、

  冷たく冷たく沈んだ部分が、

 共感し、共振し――――そして、共鳴した。


 “強い人同士”がマークやアイコンを必要とせずに、『強さ』を認識し合うよう。

 私は、私自身の『危うさ』に共通する、
 彼が、内に秘めている『危うさ』を認識したのだ。


19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 20:19:15.24 ID:8ddUBzES0

 最初に見た時は「カッコいい人だな」と思った。
 次に見た時は「人の好さそうな感じの先輩」と感じた。

 そして――今日。


 幾度目かの遭遇で、私は彼の本質を見抜いてしまい、自分と“同じ”なのだと分かってしまい、

 自身の制御できない『危うさ』で――




(゚、゚トソン「…………よし」






                                                                 ――彼のことを、殺そうと思った。



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 20:22:21.54 ID:8ddUBzES0


【――現在・マンション『Que sais-je』五階、505号室】


(゚、゚*トソン「――でねっ、私は思うんですよっ! イザイザは実は寂しいんじゃないか、って!」

( -∀-)「ああ……クーみたいな、な」

(゚、゚*トソン「そうですっ! 普通の人ってどっかで挫折しちゃって、それで『普通』に近づいていくんですけど、それができなかったみたいなっ!!」

川* -)「あー……。でも……、クーは……ぅぅ……」

( ・∀・)っ「……クー? 気持ち悪いのか? 飲み過ぎたか?」

川* -)「ううん、大丈夫……」




( ^Д^)「…………」

(;^Д^)「……………………アレ?」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 20:25:14.49 ID:8ddUBzES0

( -∀-)「嘘吐け。一人称が下手な萌えキャラみたいになってんぞ」

( ^Д^)「誰の妹が下手な萌えキャラですか」

(^ー^*トソン「あなたの妹のことかも、ってトソンはトソンは笑いながら指を指してみるっ!」

( ^Д^)「止めて下さい、腹が立ちます。ちょっと似合ってて余計に」

川* -)「ぁ……ぅ、ぁ……」

( -∀-)っ「クー? ……どうする?休むか?」ナデナデ

(゚、゚*トソン「あーっ! 私もっ! 私も撫でてくださいようっ!!」

( ・∀・)「また今度な」




(;^Д^)「……いや、じゃなくてじゃなくて」

(;^Д^)「(あっれー? おっかしいぞー?)」

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 20:28:15.02 ID:8ddUBzES0

(;^Д^)「(確か、俺はとてもシリアスな話をしようとして……)」

( -∀-)「……悪い。やっぱクー寝かせてくるわ」

(^Д^;)「あっ、はい……っつーかモラ先輩、酔ってる時はクー先輩に激甘ですね」

( -∀・)「そうか? よっ……と」

川* -)「ぁぅ……ぁ、ぅ……」

(;^Д^)「いつもなら、多分怪我しててもお姫様抱っこはしないでしょう……」

(;*^Д^)「クー先輩はクー先輩で、されるがままだし……なんか大人しいし内気になってるしあどけない顔でフツーに可愛いし……」

( ・∀・)「――襲うなよ。もしなんかやったらお前の全ての関節の稼動域を二倍にする」

(;^Д^)「ほら。ぜってー甘くなってますって」

( ・∀・)「甘くなってねーよ。そもそも酔ってない」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 20:31:15.00 ID:8ddUBzES0

(-、-*トソン「そうですよっ! 《近頃流行りの肉食系女子、ただし食べるの大豆だけ》みたいなっ!!」

( ^Д^)「基本、西尾さん関連はクー先輩の持ちネタでしょ。取っちゃ駄目じゃあないですか」

(゚、゚*トソン「でーもーっ! ミステリである以上私のテリトリーでもありますよっ!」

( -∀-)「はいはい。わかったわかった」

(;^Д^)「あと、トソさんはいつも以上に子供っぽいです。ついでにモラ先輩はなんかドライだ……」

( ・∀・)「いつも通りだっての。……じゃあ、ちょい寝かせてくる」

川* -)「…………ぁぅ……ぅぅ……」

(゚ー゚*トソン「えっちなことしちゃ駄目ですよっ!」

( -∀-)「するかボケ」

(;^Д^)「(どう考えてもいつもより冷たいじゃないスか……)」

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 20:34:28.78 ID:8ddUBzES0

(;^Д^)「――って、そうじゃなくて……」

(;^Д^)「(おかしい……。ついさっきまではシリアス展開だったはず……)」

(;^Д^)「(なのに、モラ先輩とクー先輩が戻ってきて……そこでトソさんが酒を出して、酔わされて――)」


〜 回想中 〜


(;^Д^)『…トソさん、あの……話の続きがしたいので、ちょっと外に出ませんか……?』ボソボソ

(-、-*トソン『ふぁぁ〜……。私、酔うと脱いじゃうタイプなんですよねー……』

( ^Д^)『…………』

(-、-*トソン『下着姿で止まれば良い方で、場合によっては全部……ん、でも夜風に触れれば目も覚めるから――』

( *^Д^)+『――いえ、いいです。どんどん飲みましょうじゃんじゃん飲まれましょう』


〜 回想終了 〜


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 20:37:14.90 ID:8ddUBzES0

(゚ー゚*トソン「――ねえねえっ、脱衣麻雀しましょうようっ!」


(; Д)「(ちくしょー! やっぱりこの人の所為かー!! そしてまんまと乗せられてる俺も俺だぁぁぁっ!!)」

(゚、゚*トソン「……しませんか? 脱衣麻雀」

(;^Д^)「二人でして楽しい類のゲームじゃないでしょ、それ……」

( ^Д^)「(……ん? 今トソさんは酔って脱いだ所為でシャツ一枚にホットパンツ姿……)」


(゚、゚*トソン「?」


(;*^Д^)「(ブラしてないんだから…………アレ? これ一回勝てば、上半身全裸にできるのでは……?)」

(゚、゚*トソン「やりませんか?」

(; Д)「勿論、やりま――――じゃねぇぇぇぇえええっ! しっかりしろ俺っ!!今そんなことしてる場合じゃねぇからっ!!!」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 20:40:14.51 ID:8ddUBzES0

(;^Д^)「危ない危ない……。また乗せられるところだったぜ……」

(;^Д^)「くっ……。なるほど、トソさん……アンタも中々策士ですね」

(゚、゚*トソン「え?」

( ^Д^)「あの先輩サンに関連して、モラ先輩やクー先輩の過去に何かあったと……。そういうことですか」

(゚、゚*トソン「はあ、まあ」

(-、-トソン「確かに色々ありましたが……」

( ^Д^)「自分のことを話す過程でそのことも話さないといけなくなる」

(;^Д^)「だから……俺からの追及から逃れる為に天然を装い、誤魔化した……っ!」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 20:43:19.03 ID:8ddUBzES0

(゚、゚*トソン「…………ほえ? 何のことですか?」


(; Д)「ちくしょぉぉおおっ! 薄々は分かってたけど、この人ホントに天然だぁぁぁあっ!!」

(、 *トソン「……むぅ。私は天然じゃないですよう」

( *^Д^)「(くそっ、可愛いなぁこの人。家に持って帰りたい……)」

( * Д)「(貧乳派に鞍替えしたくなって来る可愛さだぜ……! いいなぁ、モラ先輩……)」




(; Д)「(あー……じゃねぇじゃねぇ。いい加減、ちゃんとしないと)」

( ^Д^)「――トソさん。そろそろ…………マジモードに移行しましょっか」

(゚、゚トソン「!」

(-、-トソン「……待ってました。その言葉を」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 20:46:34.45 ID:8ddUBzES0

(゚ー゚*トソン「――さあっ、ガチンコ勝負ですっ! 言っておきますけど、私、麻雀超強いですよっ!?」


(;^Д^)「いや、麻雀の話じゃねぇよ!! 麻雀はもういいの! どんだけ脱ぎたいんだよアンタはっ!!?」

(゚、゚*トソン「脱ぎたいんじゃないです。“脱がせたい”んですよ!」

(;^Д^)「どうでもいい! それは俺も同じだけど、そこら辺は心の底からどうでもいいっ!!」




(;-Д-)「あー……もう、麻雀は後でゆっくりやりましょう」

( ^Д^)「とりあえず外へ行きましょう。ちょっとコンビニまで。んで、歩きながら話を聞かせて下さい」

(-、-トソン「むぅ……分かりましたよ」

( ^Д^)「(“殺しに来た”が比喩じゃなくそのままの意味でも……流石に、二人でいるトコを襲ってきたりはしないだろうし)」

( ^Д^)「…そもそも、そんな悪い人に見えなかったしなぁ……」

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 20:49:15.30 ID:8ddUBzES0


【――数年前・闇の中】



 気づかれないように距離を置きながら彼の後ろをつける。

 出来るだけ早く殺してしまいたいけど、今日は彼の家をつきとめる程度でいいかな、とも思っていた。
 こういうことは、絶対に、焦ってはいけない。


 勿論、今日も隙さえあれば殺すつもりだ。

 焦ってはいけないけれど……早い方がいいのは確かなのだ。




31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 20:52:18.02 ID:8ddUBzES0

 “殺したい”わけではない。
 “いなくなって欲しい”――ただ、それだけ。


  ――だって、危ないから


 危ないものは無くさないといけないんだ。
 私は安全で平和な毎日が好きだから。

 危ないものは嫌いだから。

 私には分かる。あの人はきっと誰よりも『危ない』。
 他の人には分からないかもしれないけど……でも、私には分かる。分かってしまう。




 ショートカットをするつもりなのか、彼は工事現場に入っていく。
 私もそれに続く。
 慎重に、足音を殺し、隠れる場所を探しながら――。



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 20:55:17.61 ID:8ddUBzES0



「――常々、俺は疑問だったんだよね〜」



 彼の足が止まった。
 代わりに、彼の口が開かれる。



「たとえばマンガとかでさ、『お前に僕の苦しみが分かるかー』とか言ってるキャラを見た時に……思ったこと、ない?」



 骨組みだけのビルを見上げながら、軽く暖かい声音で彼は語り続ける。

 町外れでこそないが、この辺りに民家はない。
 叫び声を上げたところで誰も気がつかないだろう。


33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 20:58:14.79 ID:8ddUBzES0

 ああ、嵌められた――私はそう思った。
 ここに来たのはショートカットなんかじゃなく……ただ私と話す為だった。

 隠れるのを止め、彼の真後ろに立つ。


 彼が――振り返る。



(,,^Д^)「――ギコハハ。俺も、今そんな感じの気分なんだよね〜」



 目の色が変わっていた。
 慣用句的な意味ではなく、左目が鈍い銀色に変わっていた。

 そして、そんなことを気にできないほどに――“目が笑っていない”。

 その笑顔もその口調もその雰囲気も。
 何もかもを嘘と思わせるような。


34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 21:01:14.90 ID:8ddUBzES0

 良いも悪いもごちゃ混ぜにして、その上で台無しにしてしまうような――そんな。


(,,゚Д゚)「……ねぇ、病葉トソンさん。考えなかったの?」


 彼は、当然のように私の名前を呼んだ。
 何処も、何一つきちんと認識してない両の瞳が、私を射抜く。


(,,^Д^)「君がね、たとえば俺のことを“同じ”と感じたとするよね。そしたらさ……俺だって、気づいてるに決まってるよね〜」


 私は……動けない。

 理由は二つ。
 「迂闊だった」という動揺――もう一つは、彼の視線だ。

 睨んですらいない彼の視線が……私の両足を地面に縫い付けている。
 胸を締め付ける正体不明の“威圧感のようなもの”が、私を拘束し続けていた。


35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 21:04:15.85 ID:8ddUBzES0

 敵意を向けられてるわけでもないのに。
 殺意を向けられてるわけでもないのに。


(、 ;トソン「……っぁ……!」


 駄目だ、息が……できない、


  くうきを、すわないと

    すうためには、
   はかないと
                                                                    ヤだ、
                                                                 もうやだ、死にたいよ

 ……しっかりしろ、私

 まだ、何もしてないじゃないか


36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 21:07:15.15 ID:8ddUBzES0

(,,-Д-)「――君みたいな不幸な人の悪い所はね……自分を一人だと思い込むトコだよ。『特別』って思い込む、って言い換えてもいいかな〜」


   大丈夫……
       まだ、
大丈夫だから
                                                              もう無理だよ
                                                                  やだよぉ
      まず息を吐いて、
               吸って

 ちゃんと    目線を
      合わせて、睨みつけて


(,,^Д^)「その点、君は良い感じだったよね。“同じ奴”を見つけたら、ちゃんとすぐに殺しに来た。偉いね」


                                                                ……助けて
                                                               誰か
 ……そうか、分かってたんだ
 私が「殺そう」って、思ってることも


38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 21:10:14.72 ID:8ddUBzES0

(-、-;トソン「……なら、覚悟はできてるんですよね……?」

(,,^Д^)「ギコハハ。これでも男の子だからね、死ぬ覚悟ぐらいはいつだってできてるよ〜」


 …………よし。
 ちゃんと、身体は動く。

 意図を見透かされて、顔を見られた。
 もう後戻りなんてできやしない。


         だから、


      もう
                                                                     殺すしか、
    ないんだから



39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 21:13:21.80 ID:8ddUBzES0



(、 トソン「――今から、あなたのことを、殺します」



(,,^Д^)「……いいよ、やってみな」


 私の言葉に対し、彼は抱擁するように両手を広げた。
 ただし――と何か言いかける。

 その時には、もう。



 私は、もう、


 ただ彼を殺す為だけに――動き始めていた。



40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 21:16:19.61 ID:8ddUBzES0


【――現在・マンション『Que sais-je』近く】


(-、-トソン「――ふぁ……。コンビニ行って、何買うんですか……?」

(;^Д^)「いやだからですね、その『殺しに来た』の真意を聞きたいわけです。コンビニはついでです」

(゚、゚トソン「真意って…………そのままですけど」

(;^Д^)「“KILL”の意味ですか」

(゚、゚トソン「“KILL”の意味ですけど……それが何か?」

(;^Д^)「その、夢中にする的な意味の“殺す”ではなく、モロに“殺す”ですか」

(-、-トソン「しつこいですね、そのままの意味ですよ」

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 21:19:20.73 ID:8ddUBzES0

(;^Д^)「……んな、ヤンキー同士の諍いじゃあるまいし。殺すとか殺されるとか……」

(゚、゚トソン「いえ、本当に『死』ってモノがイメージできる人間というのは“殺す”などは簡単に言えないので、言えるのは何か壊れ……ハッ!!」


(゚ー゚*トソン「――あまり強い言葉を使うなよ、弱く見えるぞ?」


(;^Д^)「だから思い出したからと言って適当にパロディ使うの止めてもらえませんかねぇ!!?」

(-、-*トソン「憧れのモノに近づく為には日々精進するのが大事と言いますか……」

(;^Д^)「さっきの台詞を言った人は『憧れは理解から最も遠い感情』とも言ってるんですけどご存知ありませんか!?」

(゚、゚トソン「え? そうなんですか?」

(;^Д^)「ご存知なかったんですね!!」

(-、-;トソン「すみません……。たまに立ち読みする程度だったので……」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 21:22:26.35 ID:8ddUBzES0

(゚、゚トソン「まあまあ、そんなに声を荒立てないで下さいよ」

(゚ー゚トソン「ほら、『僧正の白玉すくい』とも言いますし……ね?」

(;^Д^)「アンタは用賀インター降りてすぐな妖怪と人間が一緒に暮らしている町の女子高生ツンヘコ町長かなんかですか!! その慣用句意味分かんねぇよ!!」

(-、-トソン「……私は本誌で読む派なんですが、単行本の発売の時は驚きました」

( ^Д^)「ああ……。帯がこれいじょうないほどに内容と関係なかったですからね」

(゚、゚トソン「『ツンツン!デレ!ツン!デレ!ツンツン』とか書いてあるのに、一人もツンデレらしいキャラ出てこないですし」

(;^Д^)「でもんなこと言い出したら、タイトルは如何にもツンデレっぽいのに内容は相思相愛な兄と妹がイチャつくだけな作品も……」




(;^Д^)「――って、だーかーらっ!! 今はオタトークはいいの!」

(゚、゚*トソン「えー……もっとしたいです」

(;*^Д^)「あっ……甘えた声出しても駄目です!!」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 21:25:24.85 ID:8ddUBzES0

(-、-トソン「……そうそう。聞いた話ですが『レ●ルE』というタイトルは、作者の勘違いから来ているらしいですね」

(;^Д^)「スルー!? 今サラッと酷いことされた!!」

(゚、゚トソン「思えば『ジョ●ョの奇妙な冒険』も“冒険”してることの方が珍しいんじゃないですか? ほら、四部とか」

(;^Д^)「いや、それは“冒険”という言葉の本来の意味は“危険を冒すこと”なので、その意味でいけば全編冒険しっぱなしですよ」

(゚、゚トソン「ジョジョではないですよね?」

(;^Д^)「ジョジョではないですけど……」

(-、-トソン「むぅ……しかし、こう考えていきますと、実は作者さん達はタイトルなんて結構どうでもいいと思っているのかもしれません」

(゚、゚*トソン「知っていますか? 夏目漱石の『彼岸過迄』という作品は――」

(;^Д^)「ドヤ顔で『さよ●ら絶望先生』で仕入れた雑学披露しないで! 話の流れが丸パクリになっちゃうから!!」

(-、-トソン「確か……。図書室で、“内容に合ったタイトルを付ける”みたいなことをする話でしたよね?」

( ^Д^)「あー、そんな話でしたねぇ。最終的には『さ●なら絶望先生』っぽいことをすることになって、先生が……」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 21:28:25.03 ID:8ddUBzES0

(;^Д^)「――って、だからさぁ!! 話の腰を折るの止めて貰っていいですかねぇ!!?」

(゚、゚*トソン「ところで、あの伝説の『かってに●造』がアニメ化されると耳にしたのですが、果たして初期なのか後期なのか……」

(;^Д^)「無理矢理! スゲェ無理矢理話題戻された!!」

(-、-*トソン「ところで、“冒険”がそういう意味なら本物の“ボウケンジャー”は“危ない刑事”の方々だと思いませんか?」

(;^Д^)「より無理矢理! ネタ自体が無理矢理になってる!!」

(゚ー゚*トソン「ところで、帯の話ばかりしていましたが……そもそも表紙にしたってヤスダさんの趣味ですよね?」

(;^Д^)「いや、そりゃそうですけど! その理屈だとタイトルもそうですけど!!」

(゚、゚*トソン「そう考えれば『BL●ACH』が如何に分かりやすくてかつ上手いタイトルなのか分かりますよね」

(;^Д^)「そのタイトルが合ってたのは初期だけです!!」

(-、-*トソン「ジャン●ならば『めだ●ボックス』も好きですが……ただ一つ言いたいことが、」

(;^Д^)「『“めだかボックス(目安箱)”を出せや!』ですか? それは俺も思ってました!!」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 21:32:27.85 ID:8ddUBzES0

(-、-トソン「――これは腐った女子として言ってはいけないことなのかもしれませんが、」

( ^Д^)「あぁ、自覚はあったんスね……」

(゚、゚トソン「シードの何が一番駄目って、“SEED”が何なのか全然分からな――」


 ――後ろ歩きをしていた彼女。
 その背後で、何か銀色の輝きが見えた。

 いや……
 
 “何か”なんて曖昧な表現になってしまったのは、その非日常的な光景を認識するのに時間がかかったからに過ぎない。
 俺の目には最初からちゃんと見えていた。


(;^Д^)「――っ!!? トソさん、後ろッ!!」

(゚、゚トソン「…………へ?」


 今まさに、彼女に突き刺されんとしている――巨大な西洋剣が。


46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 21:35:20.93 ID:8ddUBzES0


【――数年前・闇の中】


(,,^Д^)「おおっと、こんな速度の蹴りは普通の人には避けられないなー。まあ俺は普通の人じゃないから避けられるんだけどね〜」


  ――その日、私は知った。


(,,-Д-)「こんなに多彩な攻撃パターンを繰り出されちゃ困っちゃうよ。全部覚えたけど」


  ――この世には思いも寄らぬことがあること。


(,,゚Д゚)「あと……なんだろう? ねぇ、なんかあったっけ?」


  ――そして、



47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 21:38:33.14 ID:8ddUBzES0

(,,^Д^)「どうも俺は挑発するのが苦手で……駄目だね」


  ――目の前にいる男は、“私と同じ”どころか“私以上に壊れている”のだということを。


 なんだ、この人は……。
 “私の目の前にいるヒト型のモノは、一体何だ?”

 どれほど手数を増やしても記憶・対処され、どんなに速い攻撃でも避けられ、かろうじて当たっても痛がる素振すらせず、
 そもそも痛がるどころか疲れてすらいないようで、疲れる云々以前にまず鉄パイプを素手で受け止めへし折ることのできる人類なんてこの世に存在するわけがない――!

 一体、コイツは何なんだ――!?


(、 ;トソン「はぁっ……ふぅ……っ」

(,,^Д^)「もう終わり? あっ、そっか。トソンちゃんは文化部の人だったよね。ごめんね〜、俺の基準で話しちゃって」

(,,゚Д゚)「んで、終わりなら――俺の番かな?」

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 21:41:28.35 ID:8ddUBzES0


【――現在・マンション『Que sais-je』近く】


(゚、゚トソン「む、でも……やっぱり『殺しに来た』は言い過ぎだったかもしれません」

(;^Д^)「いやあの、トソさん……」

(-、-トソン「“仕返しに来た”ぐらいで……いえ、そもそも私は殺そうとしたわけですし、殺されても文句は言えないのかもしれませんが……」

(;^Д^)「そうじゃなくてですね……」

(゚、゚トソン「あの人、フェミニストですし――あっ、忘れてました」


 そんな風に、トソさんは。
 小首を傾げつつ、えへへとはにかみながら、


 ――“真後ろから放たれた突きを、その剣を何事もないかのように脇で挟み、受け止めながら”、



49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 21:44:39.31 ID:8ddUBzES0

(゚ー゚*トソン「――虚刀流、『菊』」

<-Д-=;>「っ!!?」


 そう、“キメ顔”ならぬ“ドヤ顔”で言って、
 思い切り後ろ蹴りを放ち――名も知らぬ襲撃者を吹き飛ばした。

 学生服姿の誰かがゴミ捨て場にぶち込まれた音を聞き、やっとそこで彼女は振り返った。
 自分を襲った者を視認すると、他人事のように「危ないですね」と呟いた。


(-、-トソン「常識がない人もいたものですねっ! あんな剣、たとえ玩具でもフツーに危ないですよ!」

(;^Д^)「…………あ、はい」

(; Д)「そうですね……」


 ……数秒前までは完全にシリアスシーンだったのに。
 心配した俺が馬鹿みたいだ。

 つーか、アンタが一番危ねぇよ。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 21:48:10.43 ID:8ddUBzES0

(゚、゚トソン「――ところで、プギャーさん」

(;^Д^)「なんスか、もう……」


(-、-トソン「私は今包丁を何本か持っていますが、それが何かの間違いで私を殺しに来た(らしい)方に刺さってしまった場合……何か罪に問われるのでしょうか?」


(;^Д^)「普通に殺人罪と銃刀法違反ですよ!!」

(゚、゚トソン「……そうですか」


 なら極力刺さない方法でやってみます――と、やっぱり他人事のように言うと、ハンドバックの中から包丁を二本取り出す。
 鞄を丁寧に地面に置き、対照的に刺身包丁二本は片手で持った。

 身体の一部か何かのように。
 ジャグリングでもするかのように。

 それが首筋の絆創膏や、健康的で白く引き締まった手足に巻かれている包帯にマッチしていて。
 馬鹿みたいに現実離れした光景なのに――その姿は、妙に“彼女らしかった”。

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 21:51:17.37 ID:8ddUBzES0

(゚、゚トソン「――プギャーさん。警察とかは呼ばなくていいですよ。私、嫌われてるんです」


 警察を呼べば捕まるのは多分アンタだ――とそんなことを言えるわけもなかったので、黙って首肯しておく。

 そもそも警察云々以前に、
 羽交い締めにするとか、モラ先輩を呼ぶとか、せめて大声を上げるとか。

 そういったことを、本来ならばしなければならなかったんだろうけど――でも。


(ー トソン


 ほんの数歩先で淡く微笑んでいる彼女に。
 “夢で見た誰か”そのままな彼女に。
 何故か、無性に“関わりたくない”ような……そんな印象を持ってしまって。


 正直な話。

 俺は、ビビッて動けなくなっていたのだ。


52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 21:54:16.36 ID:8ddUBzES0

 あの時モラ先輩が出した『殺気』は、よく使う表現で言えば“人を人とも思わない”類のモノだった。

 相手を人間扱いしていない。
 そんな感じの、兄貴がたまに見せていたのと同じ類の――『殺意』。


<-Д-=>「お前……」

(゚、゚トソン「逃げますか? それなら、その前に一言ぐらい謝って下さいね?」


 でも、この人の出す『殺気』は。
 そうじゃ、なくて。


 “人を人とも思わない”のように分かりやすいものでもなくて、
 そう、“雑草を抜くように人を殺す”なんて表現があったはずだけど、それよりも遥かに軽く、薄い。

  ――どうでもいい感じの、

 そういう類の――『殺気』とも呼べぬ“雰囲気”。



53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 21:57:15.55 ID:8ddUBzES0

 憎悪とか悦楽とかそういった雑多の感情が欠落した、“生きるように殺す”雰囲気。
 “人を人とも思わない”ではなく、

  ただ、“人の生き死にをどうとも思わない”ような。

 どうせいつか死ぬんだから今死ねばいいじゃん――と言わんばかり。
 「他人事」というか……自分も相手も、そもそも“どうでもいい”感じの。

 そう、思わせる。


(;^Д^)「(…………っ)」


 デレさんは、彼女を『リャナンシー』と称していた。
 俺が知る限りでは、西欧の神話に登場するその妖精は――実は、デュラハンなどと同じく“死神”でもあるのだと。

 人が生きようが死のうがどうでもいい――“妖精”であり“死神”。
 それが『リャナンシー』。

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 22:00:25.15 ID:8ddUBzES0


 コイツは、

 コイツは――!




(ー *トソン「……ふふっ」



 そう。

 俺はやっと、夢と同じように。
 初めて“本物の彼女”を見て、理解したのだ――。




55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 22:03:24.38 ID:8ddUBzES0


【――数年前・闇の中】


(,,゚Д゚)「――それで、最初に言いかけた言葉の続きなんだけどね、」

(、 ;トソン「ぁ……いっ……」

(,,^Д^)「“ただし、君にできることなら俺にも大抵できると思うけど”……あっ、ごめん。首絞めたままじゃ聞けないよね?」


 そう言うと、まるで人形でも扱うように丁寧に私を地面に下ろし、締め上げていた手を離す。
 咳き込む私を瞳に映さないまま彼は続けた。


(,,-Д-)「う〜ん……上手くまとめられないんだけど、あんまり自分が『特別』だと……“ひとり”だと思い過ぎない方がいいよ?」

(、 ;トソン「げほっ、ごほっ……。うっ……ぇっ……」

(,,゚Д゚)「俺みたいな――だから、“自分と同じ”で、かつ“自分より上”な相手に出会った時に困るから」

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 22:06:46.45 ID:8ddUBzES0

(,,^Д^)「いやぁ、まあ俺が『同属殺し』と呼ばれるぐらいに、君みたいな“変な奴”の相手が得意ってこともあるんだけどね〜」


 そんな風に軽く心地の良い口調で話し続けながら、蹲る私を蹴り飛ばし、仰向けにさせる。

 ああ、私犯されるのかな――と、
 痛みすら麻痺した中、ぼんやりとした頭でそんなことを、
                                                                    あの時と、
                                                                       同じ
                                                                   ように
 思っていた。


(、 ;トソン「げほっ……っ……」


 もう……ちょっと、どうでも良くなってしまった。
                                                                     やだ
                                                                       いやだ
                                                                ナミダ、気持ち悪い、
 本当は、どうでも良くなんて、ないけど。
 「どうでもいい」って、してた方が楽だから。
 そういう性格の方が、楽だから。

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 22:09:31.07 ID:8ddUBzES0

(,,^Д^)「ああ、安心して。君をどうこうしようとか思ってないしっ。大丈夫だよ」

(、 トソン「…………」

(,,-Д-)「――うん、」



(,,^Д^)「喉を潰して目を見えなくして鼓膜破ったら、許してあげるからねっ!」



 ぶちっ、
 という音と、変な感触や変な痛みと一緒に右耳が聞こえなくなり、
 次は反対の耳で、

 催涙スプレーのようなものを目にかけられて、見えなくなって、
 喉は、どろどろとした液体みたいなものを飲まされて、焼けるように痛くて、声が出なくて、


 真っ暗で、



59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 22:12:22.23 ID:8ddUBzES0

 でも、ちゃんと「どうでもいい」って思ってたから、痛くなくて、

 辛い時も、悲しい時も、
 嫌なことを思い出した時だって、

 どんな時でも、「どうでもいい」って思えたら……私は、いつも、大丈夫で、


 だって、“どうでもいいんだから”
 本当はどうでもなんて良くないんだけど、どうでもいいことにしないと、
 
                                                                  ――私が、私じゃ、なくなるから、


 過去とか、自分とか、

 痛いのとか悲しいのとか気持ち悪いのとか、全部、どうでもいいことにして、




 ……どうでもいいことに、してきたのに、


61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 22:16:15.33 ID:8ddUBzES0

(、 トソン「…………」


 でも――今日は、
 真っ暗な中で、何も聞こえない中で、ひとりきりにされた時、

 今までとは比べ物にならないぐらい――痛くて、辛くて、悲しくて、寂しくて、

 「私、このまま死ぬのかな」って思ったら、

 “死にたくない”とか“ひとりは嫌だ”とか今更ちゃんと思えて、

 だけど、声に出そうとしても声が出なくて、
 目も見えなくて、
 耳も聞こえなくて、

 ずっと本当に“ひとりきり”で、


 ……私は。


62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 22:19:46.16 ID:8ddUBzES0

 ここまでされて――やっと、私は。



(;、;トソン「ううぅぅぅっ、あああぁぁぁ――――っ!!!」



 ……たぶん、だけど。
 あの日から初めて……ちゃんと泣いた。

 恥も見聞もない赤ん坊のように泣き叫んで――誰かに、助けを求めた。
 必死で――生きようとした。

 とてもみっともなく――死ぬのを、怖がった。


 本当に“ひとり”になるのを、ただ恐れた。



 そして、


64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 22:22:20.12 ID:8ddUBzES0


 そして。




(;、;トソン「ふぇ……っ?」








                                                                    ――私は、彼に出会った。





65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 22:25:21.16 ID:8ddUBzES0


【――現在・マンション『Que sais-je』近く】


 ――けれど。
 夢と、違っていたのは。


(、 *トソン「みっ、見たら……殺しますから」

(;^Д^)「…………え?」

(、 *トソン「今ホットパンツでっ、もしかすると“見えて”しまうかもしれませんが……恥ずかしいので見ないで下さいって言ってるんですよっ!」

(;^Д^)「あ、はい……」

(/、//トソン「あとっ、私今シャツ一枚ですけどっ……少年漫画的に服が破けちゃったら――ちゃんとそのジャケット投げて下さいよっ!!」


 トソさんは恥らいながら、一言。

 それがまた、どうしようもなく“彼女らしく”て。
 放つ“空気みたいな殺気”とは全然合ってなくて――なのに、やっぱり“彼女らしく”て。

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 22:28:28.72 ID:8ddUBzES0

 もしかするとこの人ヤバいのかも――とか、そういう感じの前振りが台無しな。

  ――台無しなのに、安心するような、

 そこで俺はやっと思い出した。
 謎の暴漢に颯爽と向かい、パクったっぽい決め台詞を言い放つトソさんを見て――思い出した。

 この人やっぱ馬鹿だろ、と思いつつ思い出した。



(゚ー゚*トソン「では――私にトキめいて頂きますっ!!」



 『リャナンシー』という妖精は確かに“死神”としての側面も持つし、人間などどうでもいいと思っているらしいが、

 基本的には、好きになった人を一途に愛すだけの。
 好きな人しか目に入らなくて、その人の命も含めて全てを欲しがるような。


 いじらしく、我が儘で、独占欲の強い。
 そして何より可愛らしい――ただの無害な“妖精”なのだ。



68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 22:31:41.20 ID:8ddUBzES0


【――同じ頃】


 リビングに戻ると、携帯にメールが来ていた。
 送り主は副部長こと後輩。

 メールを開こうとした――その時。チャイムの音が響いた。
 携帯をポケットにしまい、玄関に向かう。

 相手を確かめると懐かしい顔があった。


( ・∀・)「……おっ」


 相変わらずどう見ても栄養不足な体付きをしてやがる。
 そして相変わらず夏も近いのに普通に冬服だな、コイツは。

 そんなことを思いつつ、扉を開ける。


69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 22:34:19.59 ID:8ddUBzES0

リパ -゚ノゝ「…………お久しぶりです、」

( ・∀・)「本当に久しぶりだな。どうした?」


 小学校時代からの後輩は、見てくれには全く変化が見られなかった。
 でぃちゃんほどではないがかなり小柄だ。
 少しは女らしい身体になったかと思ったらそんなこともなく、蚊の鳴くような小さな声も変わっていない。

 高校の制服を着ているが……正直に言って、“着られている”。
 まあ、可愛いからいいけどね。


リパ -゚ノゝ「…………お酒、」

( -∀・)っ「ん? ああ……俺はもう成人だ。うりうり」

リハ*//-/ノゝ「うぅぅ……」


 ぷにぷにの頬をつねって遊ぶ。
 後輩いじめ……トソンに知れたら殺されるな。


70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 22:37:17.18 ID:8ddUBzES0

リハ* -ノゝ「――…………でも、」

( ・∀・)「ん?」


リパ -゚ノゝ「…………その人のことは――見逃せない、です」


 彼女の視線は、俺の後ろ――起きてきた少女に向けられていた。
 顔に残った大きな傷と涼やかな目元。玄い両目。


(#゚;;-゚)「……?」


 その少女、「東郊でぃ」を捉えながら後輩は懐に手を入れ、一枚の用紙と身分証を取り出す。
 良い革が使われているらしい身分証は濃い黒色で、学校のものではない。


 嫌な予感が――した。


71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/02/19(土) 22:40:21.85 ID:8ddUBzES0

リパ -゚ノゝ「特務機関『FOX』第七探査及び索敵部隊です、」


 たどたどしい動作で身分を示す。

 そして、礼状を広げ。
 彼女は小さいながらも強い意志を込めた、よく通る声で宣言する。



リパ -゚ノゝ「――その少女を拘束対象『東郊』の一人とし、よってその第二種捜索対象を特務機関権限により連行します」

(;#゚;;-゚)「!!」




( ・∀・)「…………チッ」



 ――延長戦に突入?




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