( ・∀・)っ】コールアウターのようです!

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 20:59:10.05 ID:WQ4SzNr50


【オープニング代わりの「会話文だけでシチュエーションを想像し興奮したら負けゲーム」】



(#^;;-^)「こんばんは。でぃです」

('A`)「今日の投下では久々に出番があるドクオでーす」

('A`)「前回はあの後トソンさんに『でぃちゃんを苛めないで下さい、このクソ虫』と罵られました」

(#^;;-^)「皆さんルールは、覚えて頂けましたか? 今日は、シュールさんとフサさんです」

(*'∀`)「それで、下品な話になりますが……勃起、してしまいましてね……」

(-、-トソン「気持ち悪いです」

川 ゚ -゚)「気持ち悪いな」

(*'A`)「フヒヒッ……」

(;#゚;;-゚)「(収拾が付くうちに……) それでは、スタートです」

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 21:04:07.42 ID:WQ4SzNr50


【ゲームスタート】


くちゅ… くちゅ……

ミ * Д彡「くっ――ぁ……、あ……」

lw´‐ _‐ノv「……どうかな? 気持ち良いかい?」

ミ * Д彡「ああ……。シューの小さい手が……やばい、すげー気持ち良い……」

ぐちゅっ…… くちゅ…

ミ * Д彡「っ……! 初めてとは、思えないんだが……」

lw´‐ _‐ノv「初めてだよ。君以外の相手にこんなことをする訳がないだろう?」

lw;´‐ _‐ノv「このヌメヌメしたのは、ちょっと――苦手だが」

ミ * Д彡「一般的に考えてそういうもんだ。我慢してくれ……っ!」

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 21:08:41.25 ID:WQ4SzNr50

lw´‐ _‐ノv「(この窪みの所がいいのかな……?)」

ぐりっ…!

ミ * Д彡「〜〜〜っ!!」ビクッ…!

lw;´‐ _‐ノv「ごめんっ。痛かったか……?」

ミ * Д彡「い、いや…………大丈夫だ」

ミ * Д彡「その、前後に動かすだけじゃなくて……さっきみたいに、親指とか、もうちょい……」

くちゅ…… ぐちゅ…

ミ * Д彡「ふぁ……う、あ……」

ミ * Д彡「(手つき……ヤバい。なんでコイツ、こんなエロ……っ!!)」

lw´‐ _‐ノv「(フサ、気持ち良さそう……。涎、垂れちゃってる)」

lw*´‐ _‐ノv「(おっきいな……。それに、硬くて、熱い……)」

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 21:11:45.93 ID:WQ4SzNr50

ミ * Д彡「あ、あっ……! 腰、砕けちまいそうだ……」

lw´‐ _‐ノv「何を言ってるのだか。昔は他の女にやらせていたんだろう?」

ミ * Д彡「でも今日のが一番気持ち良いんだよ。シューにやってもらってるから、かな……」

くちゅ… ぐちゅっ……

lw*´ _ ノv「本当に……君は、何を言ってるのだか。これぐらい頼んでくれたならいつでもやったのに……」

ミ * Д彡「あっ――じゃあ、次は足でやってくれないか?」

lw´‐ _‐ノv「……え? 足?」

ミ * Д彡「思いっ切り……踏んで欲しい。これは、シューじゃないと……嫌だ」

lw*´ _ ノv「…………まったく、君という奴は」

lw*´ _ ノv「(可愛くって……仕方がないよ)」

lw*´‐ _‐ノv「――いいよ、やってやろうじゃないか。この場合、靴下は脱いだ方がいいのかな?」

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 21:15:59.15 ID:WQ4SzNr50

ミ *-Д-彡「ああ〜……そこそこ。シューの体重、ちょうどいいわー……。何キロだっけ」

lw;´‐ _‐ノv「背中に乗られてそんなこと言うと中年みたいだぜ? というか、女の子に対して体重の話を振るな」

ミ *-Д-彡「シューの抱き締め心地は感触的に素晴らしいものがあるな」

lw;´‐ _‐ノv「待て、その言い方だとまるで僕が太いみたいじゃないか。太くないぞ、僕は太ってないぞ。決して断じて太くはない!」


【今回のシチュエーションは――『フサがうつ伏せの状態で、シュールがその背中をマッサージしている』でした】


lw´‐ _‐ノv「僕がフサの陰茎を扱いているシーンを想像した非常識な人は前回の自慰時に使ったネタを書き込んでくれ」

ミ,,゚Д゚彡「勃起させた奴は一週間オナ禁な。抜いた奴は初体験の年齢を書いていけ。……童貞の場合? 好きな米の銘柄でも書いとけ」


(^ー^*トソン「オイルたっぷりつけて、先っぽのトコを猫さんみたいな手でぐりぐりすると面白いですよ! びくびく〜、ってっ!!」

(;*^Д^)「(うわ、ドSモード……。でもちょっとやって欲しいかも……)」

(#゚;;-゚)「――本編スタートです」ツーン

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 21:20:18.67 ID:WQ4SzNr50


11‐Call I see, I'll connect you

(*^ー^)「自分が憎む者を愛してやることなんてできないから、私があなたを憎みます」




……すたーとっ



14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 21:23:48.77 ID:WQ4SzNr50


【――数年前・道の上】


「俺は理解できないんだ。“本当は”って言葉が」


 まだ、俺が『同属殺し』なんてふざけた渾名――事情を知る者の間だけではあるが、そんな不名誉な呼ばれ方をする前のことだった。
 中学も初め。
 多分俺を産んだあの人が自殺した直後で上機嫌になっていたんだと思う。

 珍しく本心で饒舌だった俺は“彼女”とそんなことを話していた。
 暮れなずむ街の、道の上で。


「じゃあ今のお前は嘘なのかよ、って思わない?」


 答えは期待していなかったが、そう呟いた俺に“彼女”は曖昧に微笑みかけた。
 小首を傾げながら、困ったように。



15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 21:27:09.66 ID:WQ4SzNr50

「君みたいな境遇の人間なら、そうだね――」


 そう思うのかもね、と“彼女”は笑う。蠱惑的に。
 決して同意をしているわけではなかったのだろうが、それでも、こうして話している時間は楽しかった。

 “彼女”との幸せな未来を。
 ふと、間違って――思ってしまうほどに。


「君は許せないんだよね。言動が一致していない人間が。……だから、あのモララー君って言う人は好きなんだよね?」

「アイツは単純だから。この間も、クーが云々、とか言って……」

「私からすれば、君と……よく似てると思うけどね」


 何処がですか、と俺は言った。
 いっそ高慢なほどに内罰的なトコが、と“彼女”は返した。


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 21:32:15.71 ID:WQ4SzNr50

「君や彼には分からないかもしれないけど……“本当は”って言う人は“本当”があるんだよ」


 何も穢されていない、誰にも偽らなくても良い心の奥深く。
 『弱さ』という名の“本当”。

 裏がない俺には分からない。
 心がない俺には分からない。

 ウラがない俺には、分からない――。


「そういう“本当”を持つ人は……心の中で色んな想いが交じり合って、どうしようもなくなっちゃってるんだよね」

「どうしようもないから、って――」

「――分かってるよ。君が言いたいことはね」


 でも、と前置く。
 続けて、“分かってるからこそ、どうしようもないんだ”と、何処か悲しげに言った。


18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 21:36:12.41 ID:WQ4SzNr50

 そして俺の顔を伺い、何を思ったのかこう続けた。
 どうしようもないけれど――、


「――だから、君は許さなくても良いんだよ。だって君は少しも悪くないんだから」

「でも……」

「“許さない”ことで“認めてあげる”ってことも、できるから」


 韜晦したような言葉だったが、何故だか意味も分からないのに納得してしまい、それ以上話を続けることはしなかった。
 その後の帰り道は、学校での話や最近のニュースなど取り留めのないことを話していた。

 “彼女”と過ごす時間は、楽しくて、楽しくて。

 俺は――また。
 「こんな時間がずっと続けばいいのに」なんて、そんなことを。


 間違って、思ってしまっていた。



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 21:40:00.65 ID:WQ4SzNr50


 そんなことを思った、少し先で。
 俺は“彼女”を殺したのだから――本当に、間違っていたとしか良いようがない。

  ――間違っていたんだ

 幸せな時間がいつまでも続くはずはなく、ましてや“彼女”との幸せな未来なんてあるはずもないのに。
 俺のような、あるいは“彼女”のような存在がそんなことを思うなんて。
 「烏滸がましい」と言うか、「身の程を弁えていなかった」と言うか、「現実を見ていなかった」と言うか。

 本当につまらない感傷だった。


(,, Д)「…………」


 “彼女”は殺されるべきだった。
 他でもない“彼女”が肯定したのだから。「許さなくても良い」と。

 俺は――少しも、悪くない。



20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 21:44:07.86 ID:WQ4SzNr50

 犠牲になった沢山の人達の為にも、これから犠牲になるかもしれない誰かの為にも。
 何より俺自身の為に。
 “彼女”は殺されなければならなかったのだ。

 理想とする美しい世界を作る為には、ああいう“気持ちの悪いもの”は一つでも減った方がいいのだから。
 俺は間違いなく、正しかった。

 正しかったし、悪くない――けど。


 “彼女”がいない世界は綺麗だけど――酷く、色褪せて見えて。


(,, Д)「ギコハ……ハハ…………」


 俺は、その時初めて。
 おそらくは、生まれて初めて。

 “本当は”――という弱い言葉を、使いたくなった。



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 21:47:10.02 ID:WQ4SzNr50


【――現在・マンション『Que sais-je』五階、505号室、玄関】


( ・∀・)「十中八九、先輩の差し金だな」

リパ -゚ノゝ「…………善意の一市民から『未成年が飲酒しているらしい』との通報が入りその場所に駆けつけてみれば重要参考人をたまたま見つけた、」

( -∀-)「――という筋書き、か?」


 あらゆる“プラス”とあまねく“マイナス”を使いこなす、悪意の天才。
 他人を不幸にする為ならば、どんな手段でも躊躇いなく選び取る“マイナス方向のカリスマ”。

 初めて会った時から、何も変わらない最悪な手口。

 当時の先輩は、優等生には制裁や脅迫と言った“マイナス”の方法で、俺のような不良には教師陣や警察などを使う“プラス”のやり方で。
 その他一般生徒は――ただの、義理や人情で。
 大袈裟ではなく「完璧」に人を操り、自分の世界を掌握していた。

 だから、『恐怖の均衡によった平和主義者』。


23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 21:51:07.81 ID:WQ4SzNr50

( -∀-)「ああ、くそっ――」


 携帯の振動を感じ取り、ポケットから取り出した――瞬間。
 右手首に鋭い痛みが走った。

 見れば、


リパ -゚ノゝ「…………動かないで下さい、」

( ・∀・)「……ふん」


 いつの間にやら、後輩は竹刀を構えていた。
 中段の構え、一足一刀の間合い。
 最初から距離を調整していたのだろうか。コイツは、本当にどうしようもないほど剣道家で――人斬りだな。

 こうも殺意の乗った切っ先を向けられていれば、落とした携帯を取ることすらできない。
 コイツが相手である以上、大人しくしているしかない。


24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 21:54:16.11 ID:WQ4SzNr50

 勿論、マンガやラノベじゃあるまいし……竹刀程度どうとでもなる。
 これでも一応“元ヤン”だからな。

 俺の経験から言わせて貰えば、下手な武道家よりも喧嘩慣れした不良の方がよほど厄介だ。
 剣道なんてもっての他だ。トソンの理解では「異能バトルに巻き込まれても勇猛果敢に戦いそう」らしいが……そんなことがある訳がない。
 向き合うのは“相手”ではなく“自分”で、斬るのは“敵”ではなく“自らの弱さ”なのだから。

 刀は弧を描くように斬るが、竹刀はそうではない。
 それだけでも違いは明らかで、剣道家が刀を持ったところで脅威にはならない。


 だが――コイツの場合は、少し事情が違う。


リパ -゚ノゝ「…………せんぱい。私は“竹刀で人が殺せます”、」

( ・∀・)「分かってるっての。無表情でその馬鹿みたいな決め台詞を言うのは止めろ」


 コイツは、竹刀で人を殺せる人間なのだ。
 そしておそらくは、手にするのが日本刀でも相手を殺せる類の人間。


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 21:56:51.03 ID:WQ4SzNr50

( -∀-)「(“剣道”と“剣術”で、唯一剣の軌道がほぼ同じである技――)」


 ――“突き”。

 目の前の美少女は、片手突きを最も得意とするタイプの剣士だ。
 右足の踏み込みと共に左手を突き出す至極単純な動作。単純故に――疾い。そして比類なき威力を誇る技。
 そんな加減の効かない速度を喉に受けてしまえば声帯が壊れることは必至だ。

 ついでに言えば、


( -∀-)「(見知らぬ人間じゃなく、見知ったコイツを――ぶっちゃけ警察とか全然関係ない後輩を寄越したのは…………ああ)」


リパ -゚ノゝ「?」


 “避けれた所で、可愛い後輩を痛めつけられる訳がない”。
 逃げられる訳もない。
 むしろ積極的に痛めつけられたい。このドヤ顔――スゲェ可愛いもん!!


27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 21:59:21.23 ID:WQ4SzNr50

 俺の後ろで物凄くオロオロしている(らしい)でぃちゃんも可愛いのだが、俺はロリ系ではコイツの可愛さがトップだな。
 庇護欲をそそる感じの……あどけない顔立ち。
 なのに、目は墨汁をどろどろに煮詰めたような――レイプ目みたいになってて。


( ・∀・)「(ヤッベー……、久々に会うと超可愛いなー。抱き締めてー、撫で撫でしてー)」

リパ -゚ノゝ「…………もうすぐはにゃさんが来ますから、そしたらちゃんと引き渡して下さい、」

( -∀-)「ふん……どうだろうな。(また声がスゲェ可愛いんだよなー)」


 舌先で飴玉を転がすような甘ったるい声。アニメの妹キャラ的な。
 蚊の鳴くような声でやたら早口なのは……実はその声を恥ずかしく思ってるからだったりで、そういうとこが、また……。


( ・∀・)「一応は“対極”である俺が、大人しく従うとでも? (ちゅーしちゃおっかなー)」

リパ -゚ノゝ「…………従わせます、」

( -∀-)「そんなことを言いながらも先輩は結局俺を――中学高校と、篭絡できなかったぜ? (あー、口ん中に指突っ込んでぐちゃぐちゃしてー)」

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 22:05:44.80 ID:WQ4SzNr50

( ・∀・)「大体、お前はそもそも関係ないだろ? 飲酒にしろ、何にせよ……警察の仕事だ。(俺が後輩に手を出した場合もまた然りだし)」

リハ*//-/ノゝ「でもっ……せんぱいは、前に……関係ない私を、助けて……ゴニョゴニョ」

( -∀-)「……何年前の話だよ。(うーん……。どうせ身寄りないんだし、引き取ることとかできねーかなー)」

リハ;//-/ノゝ「それにあんな小さな子が近くにいるのは、その……!」

( ・∀・)「…………ん?」


 ……ん?
 もしかして、コイツ……俺が気になってここまで来たのか?

 トソンと付き合うことになった時も不服そうだったし……俺の近くにロリ系の美少女がいることに、我慢できなかったのか?
 正義感とか先輩の頼みとか関係なく、単に嫉妬みたいな感情で?
 てっきり“過去に助けて貰ったから慕ってる”程度だと思ってたが……おお、ガチで好意持たれてるのか。


( ・∀・)「(奥手っつーか、なんつーか……可愛いなぁ、ホントに。食べちゃいてぇ)」


29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 22:09:44.71 ID:WQ4SzNr50

( -∀-)「――さて、」


 俺の後ろでオドオドしっぱなし(らしい)でぃちゃんも可哀想になってきたことだし。
 後輩は食べちゃいたいほどに可愛いし。

 そろそろ――コイツには、刃を引いて貰わないとな。


リパ -゚ノゝ「!」


 俺の心情を感じ取ったのか、緩みかかっていた気を引き締める。
 気を引き締めなければならないのは俺も同じで、このまま膠着状態が続き警察沙汰になった場合、飲酒+何かよく分からない罪で実刑確定だ。
 トソンやプギャーには酒飲ませるんじゃなかった。

 そもそも飲酒云々以前に「戸籍のない中学生を匿う」という、よくよく考えれば恐ろしくヤバいことに加担している。
 何かしらの法律には引っかかるだろうし……引っかからなくても、“引っかかったことにされる”。先輩ならば、おそらく。

 しかも、今から来るのは『特務機関』らしい。
 『特務機関』なんて言う“特殊な犯罪”しか担当しない組織に捜索されていたとは……でぃちゃん、若いうちから中々デンジャラスな道を歩んでいらっしゃる。
 いや、何よりもデンジャラスなのは他でもない俺達だが。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 22:14:51.32 ID:WQ4SzNr50

 ――というわけで。
 少しばかり、時間稼ぎをしよう。


( ・∀・)「……なあ、後輩」

リハ;゚ -゚ノゝ「…………なんですか、」

リハ -ノゝ「…………はにゃさんからはせんぱいは“とても悪いことに加担してて素直に出頭してもらわないと大変なことになる”と言われてて、だから、」

( -∀・)「俺のこと心配してくれてるの? 優しいなー」

リハ* -ノゝ「いえ、あの……悪いことは、駄目だから…………」

( -∀-)「そうだよな。悪いことは――駄目だ」

リハ*//-/ノゝ「そのっ……中学生は、駄目だから……。駄目、だから……」

( ・∀・)「…………」




( ・∀・)「(…………あれ、もしかしなくても“俺が”でぃちゃんに手を出したことになってね?)」

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 22:18:13.55 ID:WQ4SzNr50

(;-∀-)「(あの野朗……。俺の可愛い後輩に、あることないこと吹き込みやがって……)」

リハ* -ノゝ「その……だから、私が……あの……」


( ・∀・)+「――ああ、まったくだな! 中学生に欲情したりとか中学生を押し倒したりだとか中学生と添い寝したりとかは、駄目だよな!」


リハ*゚ -゚ノゝ「…………せんぱい、分かってくれ――……ん、ん?」

( ・∀・)「どうした?」

リパ -゚ノゝ「でも、後半二つは私が中学生の頃、せんぱいが私にしt(;-∀-)「――ああ、まったくロリコンは駄目だよなー!!」

リハ* -ノゝ「それだけじゃなくてお風呂とかm(;・∀・)「――いやー! ロリコンは駄目だよね、うん! 本当にさ!!」

リパ -゚ノゝ「…………?」

(;・∀・)「そうそう、お風呂だよ! お風呂の話をしたかったんだよ!!」

リパ -゚ノゝ「…………はあ」

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 22:22:04.96 ID:WQ4SzNr50

( -∀-)「俺が予想するに……なあ、後輩。お前……部活の遠征か何かの帰りだろ?」

リパ -゚ノゝ「!」

( ・∀・)「金曜日の夜中に制服姿で竹刀と防具袋持ってて……多分だけど、帰る途中に先輩に言われたんだろ?」

( -∀-)「『モララーの所に行ってくれ』とか『悪いことをしてるから説得して欲しい』とか、な」

リハ -ノゝ「…………だって、」

( ・∀・)「……言っておくが手を出してはないぞ? 手を出したのは他の奴だからな」

(;#// -/)「っ――モララーさんっ!?」

( -∀-)「後ろにいる中学生は俺の友達とイチャラブ状態でな。だから、俺は手を出してないんだよ」

(#// -/)「あう、あぅぅ……」

リハ;゚ -゚ノゝ「本当ですか!?」

( ・∀・)「誓ってもいいぜ? 俺は、手を出してない。……アイツは知らねぇが」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 22:26:09.58 ID:WQ4SzNr50

( ・∀・)「まあ、その話は置いておこう」

( -∀-)「さて後輩――いや、ユキ。剣道部のホープにしてエース」

リパ -゚ノゝ「…………はい」


( ・∀・)「近隣の体育館・剣道場・あるいは学校のうち、シャワー室があって、それを使える場所って……どれくらいだと思う?」


リハ;゚ -゚ノゝ「!!」

( -∀-)「ユキは優しいからなー。もしかすると帰り道なんかじゃなく、練習終わりにすぐ駆けつけてくれたのかなー?」

リハ;゚ -゚ノゝ「う……」

( -∀・)「着替えるだけで精一杯だったかなー? シャワーなんて……浴びる暇なかったんじゃねーの?」

リハ;//-/ノゝ「う、うぅぅぅ……」

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 22:32:54.53 ID:WQ4SzNr50

リハ;//-/ノゝ「だって、だって、はにゃさんが“急いで行ってくれ”って言うからぁ……っ!」

( ・∀・)「走ってきてくれたのか? へぇー」


( -∀-)「七月なのに冬服着て走ったら、さぞかし汗かいtリハ;//-/ノゝ「――うあぁぁぁっ! やめてくださいよぉ!言わないでよぉ!!」


リハ;//-/ノゝ「うあ、うぁぁ……」

リハ; -ノゝ「(汗臭い女だって思われた……。せんぱいに、嫌われちゃったぁ……)」

( ・∀・)「…………」




( ・∀・)「――ところでトソンのやつでよければ着替えあるけど、シャワー使う?」

リハ;//-/ノゝ「使いますっ!!」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 22:36:12.46 ID:WQ4SzNr50

バタバタバタ…!

―バタン!




( -∀-)「……あーあ、竹刀放り出しちゃって。それって剣道家としてどーよ」

(#゚;;-゚)「…………あなたは、人としてどうなんですか」

( ・∀・)「実は汗の匂いとかも嫌いじゃねーんだけどね」

(;#゚;;-゚)「ほ、本当に人としてどうなんですか?」

( *-∀-)「いっやー、楽しかったわー。久々に会った後輩を苛めるの最高に楽しいわー」

(;#゚;;-゚)「(この人、最初からこういうキャラだったっけ……?)」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 22:39:46.38 ID:WQ4SzNr50

( ・∀・)「何にせよ、ユキがシャワーを浴びている間に何か作戦を――」


トゥルルルル!トゥルルルル!


( ・∀・)「――っと、」ピッ

『おお、やっと繋がった。今そっちに特務機関の刺客が向かってるらしい。逃げるか対策打つかするかした方がいいぜ』

( -∀-)「…………アリガトウ、ドクオクン。もう来たわボケ」

『アレ? マジで?』

( ・∀・)「俺の知る限りではお前って、“無能っぽいけど実は都市伝説になるほどの凄腕の情報屋でした!”“な、なんだってー”的な、そういうポジだったと思うんだが?」

『リアルの知り合いには隠してるが、そうだ』

( ・∀・)「その地味なスキルを生かす千載一遇のチャンスに情報が間に合わないってどーよ」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 22:43:40.07 ID:WQ4SzNr50

『むしろ、折角気を使って助けてやったのにそんなことを言うお前がどーよ?』

( ・∀・)「だから助かってねーんだっての。間に合ってねーんだっての」

『そうでした』

『ただ言い訳をさせてもらえるならな、』

( ・∀・)「不許可」

『言い訳ぐらいさせろ!! ……言い訳になっちまうが、ちょっとばかし邪魔が入って』

( ・∀・)「……“邪魔”?」

『俺も自分のことそこそこ優秀な情報屋……つーかハッカーだと思ってるが、相手も中々やり手で……』

『あんな手際……伊藤さんのお母さんぐらいしか見たことねぇ』

( -∀-)「あー、気にするな。多分、そいつは知り合いだから。……っつーか伊藤さん誰よ。なに、近所のお母さん?」

( ・∀・)「(ササッキーかねぇ……先輩本人ってことはねーだろうけど)」

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 22:47:27.60 ID:WQ4SzNr50

( ・∀・)「――まあ、気遣いありがとーな。役に立たなかったけど」

『……どういたしまして。役に立てなかったが』

ピッ




川 ゚ -゚)「――なんだ、モララー。先ほどから騒がしいぞ」

(;#゚;;-゚)「クーお姉様、あの……!」

( -∀-)っ「あーあー。別になんでもねーよ。大したことじゃない」

川 -ー-)「…………ふん。……いい加減、先輩と仲直りすればいいのものを」

( ・∀・)「仲直り? ばーか」


( -∀-)「――『悪』っつーのは『善』の唯一の存在理由なんだよ。仲直りは……ありえねーんだ」



39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 22:50:45.74 ID:WQ4SzNr50


【――現在・マンション『Que sais-je』近く】


 病葉トソンは戦う女の子だ。美少女戦士なのだ。
 ショーパンにシャツという夏真っ盛り(ノーブラ)な結構危うい服装で、彼女は戦う。

 何の為に?


( ^Д^)「(多分……“自分の為”だろうな)」


 最近気が付いたが、彼女はかなり刹那的に生きている。
 刹那主義的で、快楽主義的。
 そうでなければ“訳の分からん刺客とサシで殺り合う”なんて選択は、まず取らないはずだ。

 そもそもそんな危険なことをすればモラ先輩に怒られるのは必至だろうに。
 昔のデレさんを思い出させるような、“どうでもいい”から発展した類の刹那主義者。


40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 22:54:57.03 ID:WQ4SzNr50

(-、-トソン「――むぅ。お仕置きしてさっさと帰るつもりでしたが……案外、手強いです」


 三本目の包丁が完全に折れ、武器を失くしての言葉がそれ。
 直後、振り下ろされた西洋剣を月牙を二つ合わせたような物で受け止め――って、なんで子母鴛鴦鉞とか持ってんだ、あの人。
 何ナチュラルに器械を出してきてんだよ。

 どうやら彼女の属性は『暗器使い』らしく、隠し持っていたスローイングナイフを投げるなど、とても素人とは思えない戦い方をしている。
 だが動きそのものは無駄が多く、あわや即死みたいな攻撃も寸でで避けている状態だ。


(゚ー゚*トソン「クーさん風に言うならば――病葉トソンの真骨頂そのA! 『禁手開放・死線渡り』です!!」

(;^Д^)「お願いですから戦いに集中して!!」

<-Д-=>「――まったくだ」


 ふざけたこと言ってた所為で折角取り出した暗器も弾き飛ばされてしまった。
 これで、本当に徒手空拳。


41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 22:57:51.83 ID:WQ4SzNr50

 しかし――『死線渡り』は全く言い得て妙なネーミングだ。
 彼女の動き方は、まるで迫り来る“死”をピンポイントで把握しているかのような、奇妙なもの。

 そして、それだけではない。


(゚、゚トソン「……えいっ」


 何度目かの交錯の瞬間――大して力も込めてないであろう拳で軽く小突いただけで、西洋剣が“折れた”。
 どういうことが分からず咄嗟に後ろへ飛んだ制服姿の襲撃者。


<-Д-=;>「!?」


 次いで、彼の視界は“真紅”で塞がれた。

 いつの間にやら彼女は手首を切り血を流していたようで、右手を振るい、目潰し代わりに自身の血液を飛ばしたのだ。
 流石に当たることはなかったが――けれど、

 次の瞬間には――二人の距離は零になっていた。


42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 23:00:40.61 ID:WQ4SzNr50

 タンッ、という力強くアスファルトを踏み締める音。
 同時に懐に潜り込んだ彼女は血塗れの手を僅かに、二センチほどのみ動かした。

 ――寸勁。


(-、-トソン「…………はい。お仕置き終了、です」


 その攻撃で満足したらしく、トソさんは止血をしながら俺の所まで戻ってきた。
 訳の分からないこと尽くしだったが……とりあえず、「刺さない方向で」ということは守ってくれたらしい。


(゚ー゚トソン「では、帰りましょうか。もう学園異能バトルは飽きちゃったでしょ?」

(;^Д^)「…………え、ええ?」

(-、-トソン「……むぅ。足りないというのなら……あの人にトドメを刺すのも吝かではないですが」

(;^Д^)っ「いやいいですいいです帰りましょう!! いやー!楽しかったなー!!」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 23:03:35.71 ID:WQ4SzNr50

(゚ー゚*トソン「そうそう、能力の説明をしなければなりませんね! 私の異常性は『集中力』でして……フルに使うとああいう風になれます」

(;^Д^)「いや、あの」

(-、-*トソン「単に“集中力が凄い人”です。脳のリミッターがおかしくなってるんですね。ちなみに精神医学的には“複雑性PTSDによる過覚醒”と……」


 ……ああ、なるほど。集中力、ね。
 剣を折ることができたのは脆くなっている部分を狙って、そこに攻撃を当て続けたからか。
 奇妙な動き方は相手の殺気を感じ取っていた為かな。

 料理や裁縫など手先を使うこと――“集中力を必要とすること”が得意なのは、そういう才能、もとい欠陥があるから。
 危険予知の為の過度の不安をプラス転化した、ということか。


(;^Д^)「……つーかそんな設定初めて聞きましたよ」

(゚、゚トソン「初めて言いましたもん」

(;^Д^)「サラッと言わないで下さいよ……。吃驚だよ……」

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 23:06:51.56 ID:WQ4SzNr50

(-、-トソン「あのですね、私達みたいなのは――」

(;^Д^)「――じゃなくて! 俺が言いたいのは、あの後ろに転がっている人を放っておいていいんですかっつーことで……」

(゚、゚トソン「大丈夫ですよ。ほら」


 後ろを見遣れば、ちょうど制服姿の刺客さんが帰って行くところだった。
 二分割された剣を小脇に抱え、やたらゆっくりとした足取りで角を曲がっていく。


(゚ー゚トソン「…………ね?」

(;^Д^)「はぁ……確かに」

(-、-トソン「流石にあんな状態で戦おうとなんて思いませんよ」

( ^Д^)「え?」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 23:09:42.51 ID:WQ4SzNr50

(;^Д^)「トソさん……なんかしたんスか?」

(゚、゚トソン「…………引きませんか?」ズイ

( ^Д^)「今の時点で大分ドン引きなんで、もうこれ以上引きようがないです」

(゚、゚トソン「…………私のこと、危ない奴だと思いませんか?」ズズイ

( ^Д^)「俺の中では、アンタは初めて会った時からずっと“危ない奴”なんですけど。ヤンデレですし」

(゚、゚トソン「ヤンデレですよ」


( ^Д^)「だから、大丈夫です。もう引きませんし――そもそも言うほど引いてないですよ」


(゚、゚トソン「…………」

(-、-トソン「………………分かりました。では、お話します」

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 23:12:27.73 ID:WQ4SzNr50

(゚、゚トソン「――最後のパンチで肋骨を一本外して動かしておいたので、あの人咳一つでもすれば内臓が刺し抜かれます」


(;^Д^)「…………は?」

(;^Д^)Σ「――ってこえぇぇぇええっ!! 何その恐ろしい技!?アンタ、そんなことできたんスか!!?」 

(っ、;トソン「ほら、ほらぁっ! だから嫌だったんですよぉ!!」

(;^Д^)「っつーか刺してんじゃん!未満ではあるけど刺してんじゃん!! 約束守れてねぇよ!!」

(;、;トソン「う、うそつき……。“ひかない”って……言っだのに゛ぃ……っ!」

(;^Д^)「分かりました!分かりました! 俺が悪かったです! だから泣かないで、モラ先輩に殺されるっ!!」

(っ、;トソン「私を止めなかった時点で既に怒られる条件は満たしているのでもうどっちでも同じですよぉ! うわぁぁぁああんっ!!」

(;^Д^)「分かってんなら戦わないで下さい! なんで俺を巻き込むの!!」

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 23:15:31.10 ID:WQ4SzNr50

 そんな風に、ちょっとした非日常を通して、俺は友人のことをまた一つ知った。


 ヤンデレ文学少女の違う側面。
 決して“本当の彼女”などではない――ただ普段は見せないだけの一面。

 そういう面が知れるなら、たまには非日常も悪くはない。


  いつも、馬鹿な話をしている彼女も、彼女。
  好きな人とイチャイチャしている彼女も、彼女。
  そして朱に染まっている彼女も、彼女。


 “本当の彼女”なんて、何処にもいない。
 病に犯された葉も、紅く色づく葉も。同じもの。
 そんな当たり前なことを再認識できただけでも、今日のことは、良かったと思える。


( ^Д^)「戯言だけど……ってか?」

(っ、;トソン「?」

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 23:18:28.87 ID:WQ4SzNr50

 そして、おそらくは。
 これからも彼女の“知らない面”を知ることになるのだろう。


( ^Д^)「(トソさんは“複雑性PTSDによる過覚醒”と言っていた。でも、だったら……)」


 モラ先輩の持つ奇妙な感じや、クー先輩の持つおかしさ。
 それと同じようなマイナス方向の設定を――彼女も、持っていることになるのだから。


  ――誰でも一つぐらいは持つ“已むに已まれぬ事情”


 普段はその残滓程度しか触れることができないが……もしかすると。
 彼女達の抱えるモノの“根幹”に触れなければならない時が、来るのかもしれない。

 少なくとも。


( -Д-)「(俺はデレさんと付き合う中で、彼女が抱えていた“已むに已まれぬ事情”と、対峙することになったから――)」




50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 23:21:29.29 ID:WQ4SzNr50


【――現在・マンション『Que sais-je』五階、505号室】


川 ゚ー゚)「さて――久しぶりだな」

リハ*゚ -゚ノゝ「…………お久しぶりです」

川*゚ -゚)っ「……うりうり」ムニムニ

リハ*//-/ノゝ「うぅぅ……」




(#゚;;-゚)「――結構長かったです」

( -∀-)「ああ。……アイツ、シャワーだけじゃなく風呂まで入りやがったな」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 23:24:31.56 ID:WQ4SzNr50

リハ;゚ -゚ノゝΣ「――っ!!」

リハ -ノゝ「…………すっかり忘れていました、私が来た理由を、」



( ・∀・)「(忘れてたのかよ。のんびり風呂浸かり過ぎなんだよ)」

川 ゚ -゚)「(“忘れるところだった”とかじゃなくモロに忘れちゃってたのか)」

(;#゚;;-゚)「(私……こんな人に、捕まえられるんですか?)」



リパ -゚ノゝ「…………その『東郊』の少女を引き渡して貰いに来たんでした、」

川 ゚ー゚)「ん? モララーに会いに来たのではなかったのか?」

リハ*//-/ノゝ「ちっ――ちが…………わ、ないです……」

( ・∀・)「つくづくシリアスに向かないタイプだな、お前」

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 23:27:33.02 ID:WQ4SzNr50

リハ;゚ -゚ノゝ「――とにかく……はにゃさんが来たらその戸籍不明の少女を引き渡して下さい、」

(# ;;-)「…………」

川 ゚ -゚)「ふん、私達『元老院』には“不逮捕特権”があったと思うが?」

リパ -゚ノゝ「…………その権限は有事の際に限られますし、そもそも『特務機関』には通用しないものです、」

川 -)「ふむ……」




川*゚ -゚)「――で、どうするんだ?」

( -∀-)「お前に僅かでも期待した俺が馬鹿だった」

( ・∀・)「……とにかく、でぃちゃんをどうにかすれば飲酒の件は誤魔化せるだろ。ちょうど未成年二人はいねーし」

川*゚ー゚)「お酒は二十歳になってから、だな!」

( ・∀・)「言っとくけどお前も共犯だからな。バレた時に元老院権限で一人だけ逃げるとかなしだぞ」

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 23:30:35.71 ID:WQ4SzNr50

( ・∀・)「――なあ、後輩」

( -∀-)「たとえば……そこにいる中学生が、お前が探せと言われた『東郊』でも何でもない場合……どうする?」

リパ -゚ノゝ「…………ありえないです、だってはにゃさんが、」

( ・∀・)「だから“もし”の話だっての」

( -∀-)「そこに可愛らしい女の子が……戸籍もちゃんとある普通の女の子な場合、はどうなるんだ?」

リパ -゚ノゝ「…………多分、『FOX』の指名手配が取り消されると思います」




( ・∀・)「……それだけ? お前個人は?」

リハ;゚ -゚ノゝ「え?」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 23:33:45.05 ID:WQ4SzNr50

( -∀-)「いやー、俺の心は友達をまるで犯罪者のように扱われたことで傷ついちゃってるかもなー」

( ・∀・)「俺の友達をそーんな風に酷い扱いして…………何も、なし?」

リハ -ノゝ「…………それは、」

( -∀-)「不義理だよなー。人情も何もないよなー。『任侠』という素晴らしき文化はもはや絶えたのか……」

リハ -ノゝ「…………」ピクリ

( ・∀・)「“もし”の話だけどー……人違いだった場合、切腹もんじゃね?」




リハ -ノゝ「…………分かりました、もし人違いなら……切腹します、」

( -∀-)「いやー、でも切腹は可哀想だから……メイド服着て俺に御奉仕とかでいいぞ?」

リハ*//-/ノゝ「う、うぅぅぅ……っ!! わ、分かりました……っ」

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 23:36:46.03 ID:WQ4SzNr50

川;゚ -゚)「おい、モララー……」

( ・∀・)「――本当だな? 刀に誓えよ、本当にただの勘違いなら俺に御奉仕だからな?」

リハ;//-/ノゝ「二言は……ありません」

( -∀-)「よし、分かった」




(・∀・ )「ということらしいですが――クルウさん」

リハ;゚ -゚ノゝ「っ!!?」


ガチャ…


川 々)「…………本当に、」


56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 23:39:42.25 ID:WQ4SzNr50

川 ゚ 々゚)「――君も、酷いことをするね。いたいけな少女と少年の味方である私には見過ごせないよ」


( ・∀・)「わざわざ来て貰ってすみません」

川 ゚ 々゚)「いーよ。義理とは言えど弟の頼みだし……津出機関長と約束もしたことだ」

〈:メ゚−゚〉「総代様、お時間が、」

川 - 々-)っ「分かってるから。――はい、これ書類」

( -∀-)「ありがとうございます」




リハ;゚ -゚ノゝ「え? ええ、なにこれ……?」

川 -)「(あーあ……。アホみたいに風呂堪能してるから、こうなる……)」

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 23:41:44.38 ID:WQ4SzNr50

川 ゚ 々゚)「でぃさん……今、幸せかな?」

(#゚;;-゚)「!」


(#^;;-^)「……はい、とても」


川*- 々-)「そう、それは良かった。……では、御機嫌よう――“連 禰子”さん」

(;#゚;;-゚)「むらじ……ねいこ……?」




川 ゚ -゚)「…作ってたんだな、戸籍」ボソボソ

( -∀-)「…でぃちゃん送りつけて来た後輩の兄さんが手配してたらしい。……アイツの知り合いも中々ブッ飛んでる」ブツブツ

川 -)「…無茶苦茶だな」ボソボソ

( ・∀・)「…まあ、ダンボールに美少女詰めて送ってくるような兄さんだからなー」ブツブツ

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 23:44:28.12 ID:WQ4SzNr50

( -∀-)「――というわけで。この子は『連 禰子』という何の変哲もないただの中学生だ」

リハ;゚ -゚ノゝ「え、嘘……え?」

( ・∀・)「訳あって俺の後輩が預かっているが……彼女は『東郊』とか言うよく分からんものじゃなくて、ただの戸籍もある普通の子だ」


( -∀-)「人殺しの道具でも金持ちの玩具でもねぇ、ただの――俺の友達なんだよ」


(* ;;-)「……モララーさん」

( ・∀・)「嘘だと思うなら問い合わせてみるといいぜ」

( -∀-)「役所だろうが警察だろうが――特務機関だろうが、な」

リハ;゚ -゚ノゝ「う……」

リハ; -ノゝ「あ、あの…………申し訳ありませんでした、」

(#゚;;-゚)「いえ……」

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 23:47:30.71 ID:WQ4SzNr50

(  ∀)「――さて、後輩……」

リハ;゚ -゚ノゝ「ひっ……」

(  ∀)「約束……覚えてるよな? 刀に誓ったよな?」

リハ;//-/ノゝ「うぅ、ぅぅぅ……。御奉仕……。メイド服で、一日、御奉仕……」

( ・∀・)「おいおい、何を勘違いしてるんだ?」


( -∀-)「誰が“一日”っつったよ――“半永久的に”に決まってるだろうが」


リハ;//-/ノゝ「そんな……。うあ、うあぁぁぁ……っ!」




川;゚ -゚)「(酷い……。外道、鬼畜、悪逆……)」

(;#゚;;-゚)「(流石に可哀想になってきました……)」

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 23:50:27.36 ID:WQ4SzNr50


【――そんなこんなで、】


ガチャリ

( ^Д^)「――というわけで、やっと『日常』に帰還ー」

(゚、゚*トソン「消毒消毒〜♪」

( ^Д^)「バトル展開も素敵だけど……俺はこうじゃねぇと」

( ^Д^)「いやー、やっぱこのゆるゆるした雰囲気が一番ですわー。ただいまーっス」

( -∀-)「はい、おかえり二人共。無事で良かったぜ」




( #・∀・)っ「――っつーか、お前は何俺の許可なくトソンと出かけてんの? 二人で? ふたりで? ふ・た・り・で!?」

(; Д)「ちくしょーっ!! “泣かせた”とか“怪我させた”とかそんなこと以前に、そこでキレられる条件満たしてんのかー!!」

61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 23:53:27.71 ID:WQ4SzNr50
( -∀-)「ふん――まあ、いい。許してやるよ」

(;^Д^)「(あれ……? 優しい……)」

( ・∀・)「……後輩。トソンと出かけて、どうだった?」

( ^Д^)「…………」


( ^Д^)「訳の分からない刺客に襲われましたけど――結果的には、トソさんの違う面も知れて良かったです」


( -∀-)「……そか」

( ・∀・)「ありがとうな……ちゃんと、アイツを連れて帰ってきてくれて」




(;^Д^)「――ところで、さっき泣き笑いしつつ走っていく小さな子とすれ違ったんですが」

( -∀-)「気にするな。次はメイド服姿で会えるから」

(;^Д^)「(ヤベー、超気になるぞー。……何があったんだ?)」

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/04(金) 23:56:32.70 ID:WQ4SzNr50

( ・∀・)「しかし、“刺客”ね……どんな奴だった?」

( ^Д^)「ええっとですねー。学生服着てて、西洋剣持ってて、目の下辺りに引っ掻き傷みたいな刺青がある……」

( -∀-)「――ああ、もういいぞ。ドクオから聞いた通りだ」

( -∀-)「そっちも先輩の差し金なんだろうが……あの人は、本当に仕方がない」

( ^Д^)「トソさんは『殺しに来た』って言ってましたけど……にしては、かなり容赦してくれてた気がします」


( ・∀・)「『殺さない死神』――と、言うんだと」


( ^Д^)「え?」

( -∀-)「その刺客。そこそこ腕が立つ裏家業の人間らしいが……相手を絶対に殺さないんだと」

(;^Д^)「じゃあ……殺すつもりなんて、最初からなかったんですか?」

( ・∀・)「……多分な」

63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/05(土) 00:00:07.40 ID:YotCo0J60

( -∀-)「(戸籍の件にしろ、ドクオと拮抗するほどの情報網があるなら分かりそうなもんだ)」

( ・∀・)「(だから、多分――)」


(゚、゚トソン「――明日は、しぃさんという人の誕生日でしょう?」


( -∀-)「……ああ。そうだったな。“だから”、なんだろうなー」

( ^Д^)「“しぃさん”……?」

( ・∀・)「『椎名深夏』。俺等の先輩だよ」




(;^Д^)「――また随分と熱血美少女っぽい名前ですね」

( -∀-)「言うと思った」

川 ゚ -゚)「“真冬”という名前の妹とかはいないからな?」

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/05(土) 00:03:38.14 ID:YotCo0J60

( ・∀・)「しぃさんは俺達の先輩で、はにゃ先輩の……なんだろうな?」

川 ゚ -゚)「初恋の人、とかじゃないか?」

(-、-*トソン「同時に最後の恋の相手……ロマンチック、です」

( -∀-)「…………何よりも――“初めて殺した仲間”だろう」

( ^Д^)「殺した、相手……」

( ・∀・)「先輩は俺の知り合いの中でもトップクラスに面倒な性格をしててな……たまにそういう、訳の分からないことをしたりするんだ」

( -∀-)「はにゃ先輩は『本当は』という言葉が嫌いだった。でも、」


( ・∀・)「“本当は”――しぃさんのこと、殺したくなかったんだと思う」


( ^Д^)「…………」

( -∀-)「あんまり人の過去ベラベラ喋るのもアレだから、続きは仲良くなって本人から聞くんだな」

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/05(土) 00:06:29.66 ID:YotCo0J60

( ^Д^)「……でも、それと今日のことに何の関係が?」

( ・∀・)「きっと忘れて欲しくなかったんだろうよ」

( -∀-)「一度殺した分際で、と言われりゃそれまでだが……“一度殺した”からこそ“二回は死なせたくない”んだ」

川 -)「忘れられた時に人は本当に死ぬ、と……ふん。私達が忘れるわけがないだろうに」




(;^Д^)「え、じゃあ。『誕生日覚えてるか?』とか、そんな直接言えばいいようなことを伝える為に……今日のことが?」

( ・∀・)「おうよ」

(;^Д^)「…………素直になれない人なんですか?」

( -∀-)「“素直になっちゃ駄目な人”だよ。いや、もういーや。どうせ説明しても分からねーもん」

( ・∀・)「俺はあの人のこと恨んで憎んで嫌いでいいし……あの人は、俺のことなんか恨んで憎んで嫌いでいーんだ」

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/05(土) 00:09:27.54 ID:YotCo0J60



 これは――後からトソさんから聞いたこと。
 彼女は昔、あのはにゃ先輩という人にこんなことを言われたらしい。


(,,-Д-)『自分を憎みながら生きるって……馬鹿みたいだよね』


 いくら自分を憎んでも、どれほど自分を恨んでも、どんなに自分を嫌っても。

 過去が――消えてなくなるわけじゃないのに。
 それなのに、憎み続けて恨み続けて嫌い続けるのは馬鹿みたいだ、と。


(,,゚Д゚)『でも、君は自分のこと許せないでしょ?』


 許せないのか、許したくないのか。
 許してはいけないのか。
 どれでもなく――おそらくは、その全部。


67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/05(土) 00:12:22.35 ID:YotCo0J60

 だから、と彼は言ったそうだ。


(,,-Д-)『だから……俺が嫌いでいてあげるよ。一生ね』


 あなたの弱さを、あなたの過ちを。
 ありとあらゆる後悔を。
 あなたが許せなくて、許したくなくて、許してはいけない――全ての要素を。


(,,-Д-)『俺が憎んで、恨んで、嫌いでいてあげるから――君はもう、自分のことを愛して、許して、認めてあげればいい』


 自分を憎みながら、同時に愛すなんてできないから。
 そんなことは誰にも不可能だから。

  ――“許さない”ということで“認めてあげる”

 何処までもマイナス思考で否定的で後ろ向きな……モラ先輩とはまるで違う解答。
 絶対に相容れない答え方。



68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/05(土) 00:15:56.64 ID:YotCo0J60

 けれどそういう話を聞いて、俺は分かった。
 やっと――理解した。


 あの時モラ先輩が放っていた『殺意』には“憎悪”という要素がなかったのだ。


 先輩は、あの人のことを憎むべきで、恨むべきで、嫌うべきだった。
 二人は対極にいるのだから。
 どちらかが“善”である以上どちらかは“悪”であるしかない――そういう関係性。

 お互いを否定していることが、お互いの存在意義。


  優しい世界を作りたいのならば、多少の汚れには目を瞑らねばならない。
  美しい世界を作りたいのならば、仲間でも残酷に接しなければならない。


 望むことは“自分ではない誰かの幸せ”で、願うことは“自分のような思いをする人が一人でも減ること”で、祈ることは“自分以外が救われること”。
 それでも。それなのに。それだから。
 どうしようもないほどに対極で、悲しいほどに相容れない。



69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/05(土) 00:18:31.83 ID:YotCo0J60

 でも――“本当は”。
 憎んでなかったし、恨んでなかったし、嫌いじゃあ――なかったのだろう。

 きっと、あの人も同じく――。


( ^Д^)「おかしなもんですよね」

(゚、゚トソン「?」

( ^Д^)「理解者同士で、似た者同士なはずなのに……一緒にいることができないなんて。変な話だと思いませんか?」

(-、-トソン「そうですかねー……私は分かりますけど」


 飲み会の翌日のことだった。
 モラ先輩やクー先輩は“しぃさん”の所に行ってしまったので、酔い醒ましも兼ねて二人で歩いていた際のやり取り。

 何かルールを決めているのか、それとも単に酔っているのか。
 俺の前を歩く彼女はそのフラフラとした足取りを止め、振り返った。
 いつもと同じ、可愛らしい笑顔。


74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/05(土) 00:21:32.35 ID:YotCo0J60

(゚、゚トソン「世の中の“高二病”の方々は私達“中二病”の人が――」

( ^Д^)「あ、自覚はあったんスね」

(-、-トソン「……嫌いらしいですけど……それってある意味、同属嫌悪も含んでるでしょ?」


 自分が、かつてそうだったからこそ。あるいは自分の中にそういう部分があるからこそ。
 どうしようもないほどに、否定的になってしまう。


(゚、゚トソン「……はにゃ先輩は私のことも、クーさんのことも――勿論、モララーのことも。口癖のように『気持ち悪い』と言っていました」

( ^Д^)「オタクに対するアレルギーとかではなく?」

(-、-トソン「違います」


 他人を見て抱く劣等感などではなくて、鏡を見続けた時のような生理的な嫌悪感。
 そういう風にトソさんは語った。

 多かれ少なかれ誰の心の中にもある“否定したい自己”を外の世界に見つけてしまった感じ――だと。


79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/05(土) 00:24:28.98 ID:YotCo0J60

(-、-トソン「私はしぃさんのことを知りませんが……きっと先輩は“同じ”に感じてしまったんだと思います」

( ^Д^)「“同じ”?」

(゚、゚トソン「殺したいほど否定し続けている自分自身と――“同じ”に」


 普通、人は他人に共通点・共通項を見つけると嬉しくなる。

 でも――自分が自己否定の塊なら?
 “同じ”部分があればあるほどに、相手のことが憎くなってしまうだろう。


(-、-トソン「私の時にしたって、したり顔で“不幸なワタシはヒトリで生きてますー”と主張しているような私に、自分を見たんでしょう」

(;^Д^)「……そんなキャラだったんですか?」

(゚ー゚トソン「そんなキャラでしたよー。自分隠して可哀想ぶってたんです。フコウフコウ病でしたね」

( ^Д^)「へぇ……なんか、意外です」

83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/05(土) 00:26:31.12 ID:YotCo0J60

(-、-トソン「しぃさんの場合は――ふと、ある時。とても些細なキッカケで、相手のことを“同じ”と思ってしまった。それで――」

(;^Д^)「それで殺した、って……そりゃあ横暴過ぎやしませんか?」

(゚、゚トソン「横暴に決まってるじゃないですか。あの人が掲げている物はモララーと同じく、自分のことを度外視してるものですから」

(;^Д^)「はぁ……?」


 自分の為ではなく、誰かの為。
 その自己犠牲的な思想が行き過ぎれば――『自分』の中に在る“他人”まで、犠牲にしてしまう。

 どれほど愛した相手でも、“他の誰かの為”に犠牲にしなくてはならない。
 自分の内側の心地良い場所で『弱さ』をのさばらせたくはない。
 掲げてきた絶対的な正しさが身体を、精神を、感情を――自分自身の全てを喰らっていく。

 そんな危うい『強さ』。


(゚、゚トソン「……分かりませんか?」

(;^Д^)「う〜ん……」

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/05(土) 00:28:31.91 ID:YotCo0J60

(゚ー゚トソン「分からないのなら――もういいですよ。あの人は優しい、ということだけ分かってくれれば」

( ^Д^)「……優しい、んですか?」

(-、-*トソン「優しいですよー。モララーと“同じ”ですから」


 私を助けてくれたのはモララーでも、私を救ってくれたのは――先輩です、と。
 照れたように笑いながら、そう言った。

 なるほど、確かにあの人は『優しい人』らしい。
 甘いのではなく、優しい人。
 トソさんが慕う――いや、きっとトソさん以外にも多くの人から慕われているのであろう、優しい異常者。


(-、-*トソン「先輩は……私達のことを『気持ち悪い』と思っていますが、大好きでもあるんです」

( ^Д^)「憎んでて、恨んでて――嫌いなのに?」

(゚、゚*トソン「――それでも。大好きなんですよ、あの人は」

(-、-*トソン「先輩はいつだって……大好きな人達の為に戦ってるんです。大好きな人達と、大好きでいてくれる人達の為に」

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/05(土) 00:31:41.71 ID:YotCo0J60

 大好きな人達と、大好きでいてくれる人達。
 “マイナス方向のカリスマ”とまで呼ばれる『最悪』が戦う理由は、モラ先輩と同じらしい。

  ――『似てる』のではなく、『同じ』。

 いつかは分かる時が来るのだろうか。いつかは分からなければならない時が来るのだろうか。
 けれど――何にせよ、今は。

 俺は。「このままでいたい」――と思うのだ。


(゚ー゚*トソン「ついでに本屋寄りましょうかっ! マンガ買いましょう!」

( ^Д^)「あー、まあそうっスね。行きますか」



 ……VIP大『アドバイス部』の過去と現在。
 変わったものと変わらなかったもの。
 色々な想いを抱いて未来へ進んで行くけれど……今日のところは活動終了!



87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/05(土) 00:34:28.95 ID:YotCo0J60

Call back‐11




从 -∀从「仁を成す為に犠牲になるは“自分の身”だけじゃなく、“親しい人”でもあるんだよな」


……すたーとっ



88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/05(土) 00:37:33.33 ID:YotCo0J60


(,,^Д^)「――ねぇ、クーにゃん」



川;゚ -゚)「…………え?」

(,,゚Д゚)「え?」


 妙な呼び名に思わず二度見した私を先輩も二度見する。
 虚無よりも深く冷たく心地良い涅色の、けれど朧々とした両の瞳が不思議そうに揺れていた。

 音が鳴りそうなほどに長い睫を初めとし、先輩の顔は少女マンガのキャラクターのように整っている。
 黙って窓の外でも眺めていれば間違いなくモテるだろうに。
 残念ながらそう上手くは行かず、先輩を一言で表すと「馬鹿」でしかない。

 ちなみに二言で表すと「超・馬鹿」だ。
 間の“・”は星のマークでも可。「超☆馬鹿」。うむ。


89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/05(土) 00:40:45.27 ID:YotCo0J60

(;-Д-)っ「あっ、ごめん! 今のは俺の中の個人的な呼び方であってね、決してその、セクハラ? みたいなのじゃなくて……」

川;゚ -゚)「気にしてないですから」


 ほら、“超☆馬鹿”。
 そんな「先生のこと『お母さん』って呼んじゃった〜」みたいなシチュエーション、高校二年生にもなってやらないで欲しい。
 生徒会長なのに威厳も何もない人だな。

 でも、『クーにゃん』か……。
 可愛い……かもしれない。


川;゚ -゚)「それより…………先輩、私のことを心の中では『クーにゃん』と呼んでいるのですか?」

(;゚Д゚)「ごめん! 駄目だよね!?気持ち悪いよね!?」

川* -)「いえ、別に……私は……」


 恥ずかしくはあるけれど。
 それは「嫌」なわけではない。


91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/05(土) 00:43:32.17 ID:YotCo0J60

(;-Д-)「――そ、それで…………クーちゃん」

川 -)「(……なんだ。“クーにゃん”とは呼んでくれないのか)」

(,,゚Д゚)「たとえばの話なんだけどね、」



(,,-Д-)「“近くの中学校に通っているはずの直接認識はないんだけどこの高校に進学するであろう文系っぽくてちょっと目元がきつめだけど可愛い未来の後輩の女の子が、」

(,,゚Д゚)「塾の帰りに野良犬に襲い掛かられてたんだけどその子はそれを軽くあしらい快楽殺人鬼の犯行現場みたいになるまで犬を細切れバラバラに解体してたりしてて、」

(,,-Д-)「つまり正当防衛とは言えど返り血を一滴も浴びないほどの見事な手際で犬を殺した”――と、する」



川;゚ -゚)「は、はぁ……」

(,,゚Д゚)「その可愛い後輩のこと、どう思う?」

92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/05(土) 00:46:36.21 ID:YotCo0J60

川 ゚ -゚)「忌憚のない意見を言うならば……正直、“頭がおかしい”と思います」

(,,^Д^)「だよねっ」


 先輩は――嬉しそうに笑った。心底嬉しそうに。
 何処か兄さんに似ている、自分が異端ではないことに安心したような笑み。

 箍が外れてしまっている人間特有の。


川 -)「(――そして、)」

(,,^Д^)「ギコハハ。……やっぱ、そういう気持ち悪くて“変な奴”はいないほうがいいよね〜」


 それは、“不安定な私を安定させる笑み”。
 抗いようのないほどに。
 先輩が持つ能力の中でも最悪の才能――“マイナス方向のカリスマ”。



93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/05(土) 01:02:33.78 ID:YotCo0J60

 「救われたい」とか、「助けられたい」とか。
 そういった雑多の『弱さ』が欠落している“間違った『強さ』”。

  ――酷く、非人間的な魅力。

 私達の“負”の部分を惹き付けて已まない圧倒的なまでの虚無。
 『人間』であることを捨ててしまった者だけが持つ、絶対に辿り着いてはならない到達点。


(,,-Д-)「犬を解体する女子中学生って……気持ち悪いし、危ないし、怖いし、気持ち悪いし、迷惑だし、気持ち悪いし……あと、気持ち悪いしねっ」

川 ゚ -゚)「先輩。理由の半分以上が同じです」

(,,^Д^)「でも“ああいうの”って気持ち悪いでしょ? 世界が汚くなっちゃうよね〜」


 醜悪で、姦悪で、最悪な。
 誰も共には歩けないほどに血と罪に塗れた『同属殺し』。

 理解も共感もされない孤独な英雄。



94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/05(土) 01:05:27.96 ID:YotCo0J60

 さて――と、唐突に先輩は立ち上がった。
 片目の色が変わっていた。刃のように鋭い銀ではなく、掴み取れない水銀のような鈍い銀色に。


(,,^Д^)「んじゃあ――ちょっと、世界を綺麗にしてくるよ。清掃委員として」

川 ゚ -゚)「先輩。……先輩は風紀委員です。清掃委員ではないです」

(,,゚Д゚)「あれ、そうだっけ? んじゃ……そうだ、生徒会の地域への奉仕活動ってことで〜」


 素での勘違いか、それとも冗談か。
 表なのか裏なのか。本心なのか建前なのか。真実なのか虚構なのか。

 判別することはきっと――不可能で。

 だって、液体には“本来のカタチ”などないから。
 あるとしても、それはおそらく人間が自分の都合で決めたもの。


川 ゚ -゚)「(『正義の反対は別の正義』と言うと……陳腐だけどな)」


96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/05(土) 01:08:30.30 ID:YotCo0J60

(,,゚Д゚)「あ、ところでクーちゃん。“英雄”や“君主”と呼ばれる存在と、“主人公”との一番大きな違いって何だと思う?」

川 ゚ -゚)「…………戦う理由、か?」


 たった一人の為に、たった一人きりだとしても己が正義を貫けるのが――“主人公”。
 対し、自らがその背に負うその総ての為に、臣下や群集と共に大義に殉ずるのが――“英雄”。

 英語に訳せばどちらも“Hero”だが、そこには確かに違いがある。

 埋めようもない。
 歩み寄ることができぬ、相容れない対極。


(,,^Д^)「うん。俺もそう思う――でも、生徒会室ではちゃんと敬語でね」


 謝罪と見送りの意味を込めて軽く頭を下げる。
 私が憧れる“最悪”で“孤独”な『英雄』が今日も出撃していく。


98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/05(土) 01:11:38.32 ID:YotCo0J60

 ――今日も、先輩は自らの『同属』を寸鉄によって殺戮し続けるのだろう。
 この美しくない世界を少しでも綺麗にする為に。
 背負った大義は親しい人すらも滅ぼす。いつかのように、大切な人を殺すことになったとしても――彼は止まることなく進み続ける。

 それは決して優しくはない正しさ。
 “孤独”で“最悪”な――“正”ではなく“負”の『強さ』。

 けれど。


川 ゚ -゚)「……先輩」

(,,゚Д゚)「ん? なに?」


 “頑張ってください”。
 私が搾り出した言葉に先輩は両目を細めた。


(,,^Д^)「ギコハハ、別に俺は頑張ってなんかないよ〜」


100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/03/05(土) 01:14:58.39 ID:YotCo0J60

 誰からも理解も共感もされない代わりに、多くの人から期待と信頼を寄せられる。
 自分自身がどうしようもないほどに“マイナス”だったからこそ、“プラス”を守ろうと思えている。

 先輩が持つ『強さ』は、そういう“強さ”だった。

 何もなかったはずの中身は――今や、沢山の想いで溢れ返っている。
 それは皆持っているはずなのに気づけない大切なこと。


(,,-Д-)「俺は好きでやってるんだから……好きなだけ、好きにやらせてよね」


 退廃的で、否定的な。最初から何もなかった彼だから。
 誰よりも残酷で、同時に誰よりも優しい――“マイナス方向のカリスマ”。


 それが、私の先輩だった。



Call back‐11 END



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