- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 18:59:26.06 ID:Vf5L9opX0
【オープニング代わりの「ちょっとした内輪ネタ・楽屋裏トーク」】
(#^;;-^)「はーい、皆さんコンドルワです」
(#゚;;-゚)「ほとんどの方がキャラ作りで口調を作っていらっしゃる中、素で天然要素持ちなのが持ち味のでぃです」
(;^Д^)「キャラ作りとか言っちゃった!!」
(#゚;;-゚)「前回までのコーナーに変わり、今回からは使われなかったネタや設定集をオープニングの代わりにやっていきたいと思います」
(;^Д^)「いや、普通そういうのって本編の後のおまけでやるもんじゃねぇの!!?」
(*^;;-^)「のーさんきゅー不謹慎? どんとこい超常現象?」
(;^Д^)「それ上田教授だろ!でぃ、お前っ、誰にいらんこと吹き込まれた!?」
(#゚;;-゚)「――それではすたーと、です」
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 19:02:29.36 ID:Vf5L9opX0
【コーナースタート】
(-、-トソン「――と、いうわけで第一回のパーソナリティーは私、病葉トソンです」
(゚ー゚トソン「では早速裏話、行ってみようっ!」
Q.サブタイトルで、話数と一緒についている英文はなんですか?
(゚、゚トソン「あー……。はいはい、アレですか」
(-、-トソン「十三話では“Line is busy”や“Would you like to hold ?”が使われていますねー……」
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 19:05:25.27 ID:Vf5L9opX0
(゚、゚トソン「端的に言いますと、アレは“前編”や“後編”の代替としてつけているものです」
(゚、゚トソン「一応、全て『電話』に関連したものになっています。おまけの“Call back”も“Off the record”もそうですねー」
“Line is busy”→「今通話中です」
“Would you like to hold ?”→「そのままお待ちになりますか?」
(゚ー゚トソン「こういう風な感じです!」
(-、-トソン「“Line is busy”の後によく使っている“on the line”は『Your party on the line.(相手が電話に出ました)』というような定型句の一部分からですね」
(゚、゚トソン「話によって違う場合は内容に関係している場合が多いです」
(^ー^トソン「分かり易いのは十一話。“Who's calling, please ?”は内容そのまんま、『どちら様ですか?』という意味でした!」
(-、-;トソン「……ええと、こういう感じで良かったでしょうか?」
【コーナー終了】
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 19:08:18.15 ID:Vf5L9opX0
(゚、゚トソン「――やっといてなんですが、これつまらなくないですか?」
(;^Д^)「言っちゃった! いや、だとしてもそれはやる前に言いましょうよ!!」
( ・∀・)「んでも、どうするよ。ニュース紹介でもするか?」
(;^Д^)「まとめブログかよ!!」
( -∀-)「トヨタから赤信号を知らせてくれるカーナビが出るらしいが、声優のカーナビももっと流行りゃあいいのにな」
(;^Д^)「マッ●ラス!?」
川 -ー-)「『後ろにも目をつけるんだ!』と『私は貴様のように運転だけしていれば良いだけではない!』などと言われたら流石に叩き壊したくなるだろうな……」
(-、-トソン「べしさんボイスなら道を間違えるだけで『不幸だーっ!!』と叫んでくれたりするのでしょうか……」
( ・∀・)「そしてきっと二回目以降はとても熱く励ましてくれるんだろーな」
(#^;;-^)「――そんなこんなで、本編すたーとですっ」
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 19:11:25.18 ID:Vf5L9opX0
13‐Call The lines are crossed.
リパ -゚ノゝ「“Many a true word is spoken in jest.” or “It is sometimes necessary to lie.”」
……すたーとっ
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 19:14:16.47 ID:Vf5L9opX0
【――しばらく経って、】
( -∀・)「さて、お前のターンだぜ? クー」
川;゚ -゚)「う……」
( ^Д^)「トリですよ、トリ」
川;゚ -゚)「ううっ……」
川; -)「――さ、されんだー……」
( -∀-)「認めるわけねーだろ、んなもん」
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 19:17:26.75 ID:Vf5L9opX0
( ・∀・)「お、そうだ。なんなら指定して貰おうぜ」
从*゚ーノリ「さっきみたいにですか?」
( -∀-)「そーそー。お前はクーのどんな話を聞きたい?」
从*^ーノリ「そりゃあ、もう。決まってますよ。恋の話に」
川;゚ -゚)「……“こい”?」
从*>ーノリ「恋です、恋! けど『今の私が言わばまな板の上の“鯉”』みたいな落語的なオチは止めてくださいよ!」
(;^Д^)「うわちょっと上手ェ!!」
(;-_-)「ホントに好きなんだね、ルカちゃん……」
ζ(゚ー゚*ζ「女の子は大抵好きですよ? 恋の話は」
(;-_-)「そういうもんかな……」
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 19:20:31.76 ID:Vf5L9opX0
川;゚ -゚)「――でっ、でもだな!?」
( ^Д^)「声裏返ってますよ、先輩」
川; -)「でもだな私はその……ほら、アレだよ。恋とか、あまり……」
从*゚ーノリ「――恋愛童貞なんですね!」
川; -)「ひぎぃっ!」
从*^ーノリ「告白してくれた人を景気良く振ってきていて、たまには友達に恋愛について熱く語ったりしてるのに、そういう自分は好きな人と手さえも繋げない感じの」
川; -)「ら、らめぇ……」
从*゚ーノリ「いますよねー、そういう人。なんでもできるのに恋愛には不器用な……」
:川; -): ガクガクブルブル…
(;-_-)っ「ルカちゃんストップ、クーちゃんの目がヤバくなって来てるから! 今にも泡吐きそうだよ!」
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 19:23:26.63 ID:Vf5L9opX0
从*゚ーノリ「と、言いますか、前提に対しての疑問なんですけど、お姉さんのその想いって『恋』なんですか?」
川;゚ -゚)「え……?」
从*-ーノリ「あなたが抱えている感情は『恋』と呼べるものなんでしょうか」
( ・∀・)「…………」
从*^ーノリ「私にはどうしても依存や安心感みたいな――『甘え』と同じように“視える”んですけど」
川;゚ -゚)「あ、う……」
从*゚ーノリ「本当にその人のこと、好きなんですか?」
从*-ーノリ「本当はお姉さん、人を好きになんてなれないんじゃないですか? ……私には分かりませんけども」
川; -)「う、うぅぅ…………っ」
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 19:26:32.66 ID:Vf5L9opX0
川; -)「ち、ちがう……止めろ。だから――止めろ」
川* -)「私にだって…………私にも、好きな相手ぐらい、いる……。私はアイツが――」
从*^ーノリ「へぇ? そうなんですか?」
川;* -)「いる!ちゃんといる!! クーは……。告白だって、好きな人がいるから断っていただけで、クーは……」
( -∀-)「ヤバいな、ルカちゃんが負荷を掛け過ぎた所為で幼児退行し始めた」
(;*^Д^)「絶対にこっちの方がいいでしょ……」
( ・∀・)「一人称が“クー”になって来たし、そろそろ止め時かなー」
ζ(-、-*;ζ「早く止めてあげなよ……」
( ・∀・)「いや、こっちの方が可愛いのも確かだし。とはいえ、まー、そろそろ話をつけてくるわ」
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 19:30:12.56 ID:Vf5L9opX0
( -∀-)「――あー、良い舌と口を持つルカちゃん」
从*゚ -ノリ「言い方がやらしーですよ、お兄さん」
( -∀-)「俺からすりゃそれをやらしーと思うお前の方がやらしい――って、そうじゃねぇ」
( ・∀・)「そろそろ許してやってくれねーかな? ほら、」
川// -/)「あひぃ……」
( -∀-)「クーももうあんな感じだし」
从*゚ーノリ「可愛いと思いますけど?」
( ・∀・)「そりゃ俺も可愛いとは思うけどさ」
从*^ーノリ「らぶらぶですねー」
( -∀-)「……馬鹿言え。そういうのじゃねーよ」
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 19:33:38.67 ID:Vf5L9opX0
从*゚ーノリ「――私みたいな年頃ってよく『恋に恋する〜』と言われたりしますが、モララーお兄さんも似てますよね」
( ・∀・)「あ?」
从*゚ーノリ「“恋に恋する”ならぬ“愛に恋焦がれてる”」
从*-ーノリ「義務感で人を愛してる気がしますねー。まるでそれが『人間』の証明だと、まるでそれが『自分』の証明だと言わんばかりに」
从*^ーノリ「お兄さんが言うように『恋とは嘘のこと』なのなら――きっとお兄さんは何もかも“嘘”で、何処にも“真実(ほんとう)”なんて存在しないんでしょうね」
( -∀-)「…………ふん」
( ・∀・)「随分と知ったような口を利くな、お前」
从*゚ーノリ「視たまま言ってるだけですよ?」
( ・∀・)「まー、お前の認識するセカイはそういう風なんだろーな」
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 19:36:35.13 ID:Vf5L9opX0
( ・∀・)「しかし、ルカ、お前は本当に毒舌の神に愛されてるんだな」
从*゚ーノリ「そうですか?」
( -∀・)「そうだよ。心配になるぐらいにな。あんまそーいうこと言い過ぎると友達失くすぞ?」
从*-ーノリ「私、友達は多い方なんです」
从*^ーノリ「それに――外側だけの友達なんて、いくらいなくなっても構いませんよ」
( ・∀・)「……現代っ子だよなあ、お前。そういうところは本当に現実的で非幻想的だ」
从*゚ーノリ「正直に“『普通』っぽい”と言っちゃったらどうですか?」
( -∀-)「そりゃ流石に失礼だろ。はにゃ先輩じゃあるまいし、俺は自分だけが特別だとか、世界からハブられてるとか思ってねーよ」
从*^ーノリ「そうですねー。そうかもしれません」
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 19:39:21.75 ID:Vf5L9opX0
( -∀-)「ルカ。お前さ、西尾維新読むか?」
从*゚ーノリ「いえ? クラスの男子は読んでるらしいですけど……私、サブカル方面には詳しくないんです」
( ・∀・)「俺はクーが好きだから読むんだけどな。こないだ読んだ作品の中に、矢印が広まっちゃったクラスが出てきたんだよな」
从*゚ -ノリ「“矢印”……ですか」
( ・∀・)「好意とか敵意とか、そういう人に向ける“矢印”。好きとか嫌いとかそういうのだ」
( -∀-)「それが分かっちゃったクラス。どうなったと思う?」
从*゚ーノリ「――“どうにもならなくなった”」
( -∀-)「正解。どうにもならなくなっちゃったんだよなー」
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 19:42:41.27 ID:Vf5L9opX0
( ・∀・)「ネタが通じる奴ならキノの人の痛みが分かる国の話とか、ハマーン様の台詞を引用するんだが……お前には直に言ってやるよ」
( -∀-)「緩衝材を何も挟まずに――言ってやる」
从*^ーノリ「はい、どうぞ」
( -∀-)「あんまりクーを苛めんなよ、お嬢さん――“視て”貰えれば分かるだろうが、俺は短気なんでな」
从*-ーノリ「……承りました」
( ・∀・)「ありがとう。俺は物分りの良い子、好きだぜ?」
从*゚ーノリ「私はお兄さんのこと苦手ですよ。怖いから」
( -∀-)「…………そーかよ」
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 19:45:35.23 ID:Vf5L9opX0
( -∀-)「――よーし、交渉成立だ」
( ^Д^)「随分かかってましたね、何を話してたんですか?」
( -∀・)「いーやっ、別に? ルカちゃんみたいな子を虜にできる先輩はスゲーなー、みたいな話」
ζ(゚ー゚*ζ「……ふぅん?」
( -∀-)「決定事項だけ伝えると、ルカちゃんのガイドは別の奴に頼むことにした」
( ・∀・)「ヒッキー先輩の頼み事云々は俺の部屋でしよーぜ」
(;-_-)「でもさ……」
( -∀-)「じゃあ先に行っててくれ。俺はルカちゃんをガイドに引き合わせて、クーを家に送ってから行くから」
( ・∀・)「はーい、じゃあかいさーん!!」
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 19:48:48.11 ID:Vf5L9opX0
【――その後・マンション『Que sais-je』内、エレベーター】
( ^Д^)「――先輩、明らかにおかしかったっスよね」
ζ(゚ー゚*ζ「ルカちゃんと話した前後くらいから?」
( ^Д^)「はい。なんかこう……余所余所しい感じで。焦ってるっつーか」
(-_-)「……ルカちゃんが何か言ったんだろうね」
(^Д^ )「え?」
(-_-)「モララー君をふと素に戻しちゃうような、そういう言葉を。恋から醒まさせるような一言をさ」
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 19:52:57.18 ID:Vf5L9opX0
( ^Д^)「俺には悪口を言う子には見えなかったっスけどね」
(-_-)「言ったのは多分悪口じゃないよ。他人を簡単に憎めるような子じゃないから」
(-_-)「だからこそ本当のことしか言わない」
(-_-)「本当のことしか言わないんだろうけど……でも、それを聞く側が心地良く感じるかどうかは別問題だよね」
(;^Д^)「はぁ……」
(;^Д^)「(深く訊いた方が良いのか? でも『非日常』の要素が増えそうだしなぁ、どうするか)」
(;^Д^)「(スポット参戦のゲストキャラクター的位置付けなのに、なんでこう、モラ先輩の知り合いは一筋縄で行かない奴ばっかなんだ……)」
(; Д)「あー……ちくしょう」
( ^Д^)「隅から隅まで、余すところなく――戯言だよなぁ……」
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 19:55:26.16 ID:Vf5L9opX0
【――甘味処『すりーぴんぐ・びゅ〜てぃ〜』店頭】
|・∀・|「お前は余計なところだけぼくに似たな」
从*゚ーノリ「そうですか?」
|‐∀−|「ああ。そーさな、ぼくも学生時代はほとんど友達がいなかった」
从*-ーノリ「空気読めない人は孤立する運命なんですよ」
|・∀・|「読めなかったわけじゃないさ。おそらくは人並み以上に読めたが、読む必要性が見出せなかったんだ」
|‐∀−|「独りなのが苦じゃなかったんだな」
从*゚ーノリ「むしろ、大勢でいるのは苦だった?」
|・∀・|「そうかもしれない」
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 20:00:44.36 ID:Vf5L9opX0
从*゚ーノリ「というかツッコミ忘れてたんですけど、おじさん結構友達いるじゃないですか」
|・∀・|「たとえば?」
从*-ーノリ「ほら、前に来てた黒尽くめの人とか」
|‐∀−|「あれはただの知り合いだよ」
从*゚ーノリ「じゃあモララーお兄さん達は?」
|・∀・|「お得意さん」
从*゚ーノリ「――要するにおじさんも、自分が『友達』だと思う相手が少ないだけなんですね」
|・∀・|「そうなのかも」
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 20:03:28.42 ID:Vf5L9opX0
从;*゚ーノリ「じゃあ、おじさん――――あの人は?」
震えた私の声を聴きながらも、おじさんは「知らね」と奥に引っ込んでしまった。
お前の客だろ、ということらしい。
実際そうなのだろう。
いや、そうなんだけど。
モララーお兄さんも……何も、こんな人をガイドにしなくても。
怒らせちゃったなあ。
「――どうしたのかな、お嬢さん」
私の心境を知ってか知らずか、その人は親しみやすさ全快の笑みを浮かべつつ、私に呼びかける。
まさにメンターな印象。
だけどその“外側”は“内側”を視ることができる私にとっては恐怖の対象でしかなかった。
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 20:06:19.38 ID:Vf5L9opX0
“外側”は何でもかんでも安請け合いしてしまいそうな人の好さが滲んでいるくせに、“内側”は世界そのものを敵視しているかのようにどろどろと濁っている。
それがどちらも嘘でないのが怖い。
一つの矛盾もなく、全てが矛盾している。
「まるで――」
嘘も、真実も。
全部纏めてしまってその上で台無しにしてしまうような。
「見えるはずのない人の心が視えちゃって、皆が皆本当は嘘だらけなことに一人だけ気づいちゃって、せめて自分だけは嘘を吐かないようにしようと決めちゃって、」
「決めちゃったんだけどそんなことしてると孤立しちゃうから結局自分も嘘吐いちゃって、仕方ないよねとか自分自身に言い訳しちゃって、あろうことか自分に対して嘘吐いちゃって、」
「でも嘘吐いてる自分に気づいてる分自分は特別だとか思っちゃって、優越感感じちゃって、だけどその程度の快感じゃ深い不快感は全く拭えない――みたいな、」
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 20:09:22.08 ID:Vf5L9opX0
さらさらと流れる川の底、一番深い、光も届かない世界の冷たい泥を掬ったみたいな。
心地良い虚無。
その何もない空間には時折、鈍く光る銀色や川を干上がらせてしまうんじゃないかと思うほどの熱量の焔がよぎる。
そういう。
(,,^Д^)「そんな、まるで何処かの俺の後輩みたいな顔をしてるけど…………どうかしたの?」
今まで出会って来た人の中でも一二を争うほど奇妙な色を“視せる”彼が、モララーお兄さんの先輩が。
ハニャーンさんが。
嫌がらせとしか思えないけれど、本日の私のガイドらしかった。
そして――私は、
- 47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 20:12:48.35 ID:Vf5L9opX0
とりあえず叫んだ。
从;*゚дノリ「――チェンジ! チェンジチェンジ!!」
(,,-Д-)「だーめっ」
从;*>ーノリ「嫌ですよぉ!はにゃーんさんと二人きりで観光なんて!! 怖いっ! 怖過ぎます!!」
(,,-Д-)「俺と二人きりで観光なんて人によっちゃあ小躍りして喜ぶ権利なのに……」
从;*゚ーノリ「それははにゃーんさんの内面を知らないからでしょっ!? 私は嫌でも“視え”ちゃうんだから怖くて仕方ないんです!!」
(,,-Д゚)「視えるのなら俺が敵意持ってないことは分かるでしょ?」
从;*゚ーノリ「ええ視えますよ! あなたが大した敵意も持たずに人を傷つけられる存在ということも!!」
(,,^Д^)「ギコハハ。色覚と第六感の共感覚だなんて変わった性質を持ってるよねぇ、ルカちゃんは。人の気持ちが色として視えるんだっけ?」
从;*>дノリ「ほら凄い勢いで話逸らしてるじゃないですかぁっ!!」
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 20:15:24.02 ID:Vf5L9opX0
(,,-Д-)「まあまあ、安心してよ。俺は繋ぎだからさ、次の人が来るまでの」
(,,^Д^)「かつては『なんか危なそうな雰囲気だから』という理由で後輩に殺されかけちゃった俺だからね〜、自覚はあるんだよ」
从;*゚ーノリ「どういうことですか! どういうことでどうなったんですかそれ!?」
(,,゚Д゚)「最終的に俺が殺し返した」
从;*゚ーノリ「犯罪者!」
(,,-Д-)「うん、俺は犯罪者なんだよ。可愛い女の子の心を盗む泥棒なんだ」
从;*゚ーノリ「自分で思ってるほど格好良くないですよ今のはにゃーんさん!」
(,,゚Д゚)「ちなみに次の人はその俺を殺そうとしてた子だ」
从;*>ーノリ「嫌がらせだ! モララーお兄さんは、絶対に嫌がらせをしてるんだっ!!」
……はあ、もう。
私はいつだってこの視界が災いの元だ。
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 20:18:42.06 ID:Vf5L9opX0
【――マンション『Que sais-je』五階、505号室前】
(゚、゚トソン「――はぁ、ようするに、」
(-、-トソン「皆で小説家ごっこをするからスペースを貸して欲しい……ということなんですね?」
(;-_-)「ごっこではなく仕事なんだけど……そうだよ」
(゚、゚トソン「そしてここに来るまでの過程のいざこざで私がモララーと一緒に過ごす時間が減った」
(;-_-)「否定はできないかな」
(、 トソン「指折り数えていたのに……指折りますよ、皆さん」
(;^Д^)「怖ッ!!」
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 20:22:31.38 ID:Vf5L9opX0
(゚、゚トソン「“人の恋路を邪魔する奴は馬に引き摺り回されて晒し者にされろ”という言葉をご存知ないのですか?」
(;^Д^)「何だその昔の刑罰みたいなの!?」
ζ(゚ー゚*;ζ「(……西部劇?)」
(-、-トソン「要するに。私は今、とても機嫌が悪いということですよ」
(゚、゚トソン「思わずスーパーアーリア人になってしまいそうです」
(;^Д^)「いや、怒り過ぎでしょ!! アンタは大和田●樹が冗談で書いたみたいな麻雀漫画に登場する第四帝国の総統閣下かなんかですか!! そう言うなら慈愛に溢れ――」
(^ー^*トソン ニコッ
(;* Д)「――ぎゃあああああ頬に指添えて小首傾げる仕草超かわいぃぃぃいいいっ!!!」バタッッ!
(;-_-)「あまりの可愛さで卒倒!?」
ζ(-、-*;ζ「(『あなたは流水大説に登場する美し過ぎる為に警視庁からサングラス着用を義務付けられている探偵神かなんかですか』だよ……)」
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 20:25:32.55 ID:Vf5L9opX0
(; Д)「なんなんだよ……」
(;*^Д^)「なんでモラ先輩ばっか可愛い女の子に好かれるんだよ!俺もモテたい!!」
(゚、゚トソン「プギャーさんもそこそこモテてるじゃないですか」
(;^Д^)「はぁ?俺がですか?」
( ^Д^)「そういうラノベの主人公にありがちな『君は気づいてないかもしれないけれど、君ってクラスの女子から結構人気あるんだよ?』的なのはないですよ、まったく」
(-_-)「…………」
ζ(-、-*ζ「…………」
(;^Д^)「……えっ?」
(-、-トソン「…………まあいいです、話を続けましょう。中にどうぞ」
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 20:28:22.35 ID:Vf5L9opX0
【――室内】
ζ(゚ー゚*ζ「お邪魔します」
(;-_-)「うん……。綺麗に整理整頓された部屋だよね……。(なんでこの子達、僕より広い部屋に住んでるの?)」
(-、-トソン「厳密には私の部屋ではなくモララーの部屋なので、お寛ぎ下さいとは言えませんが……」
( ^Д^)「あー、そういやトソさんの部屋は隣でしたね。こんな良い部屋なら家賃払うのも大変だろうに、なんで一緒に住まないんですか?」
(、 *トソン「女が“女の子”としてある為には色々努力が必要で、そういう場面は彼に見せたくないんです……」
(;*^Д^)「いじらしい!可愛いっ!!」
(-、-トソン「それにほら、リストカッ――とにかく一緒に住むとドキドキできないですから」
(;^Д^)「……なんか今、不穏なワーd(゚、゚トソン「何も言ってませんよ?」(否定早ェよ……)」
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 20:32:20.56 ID:Vf5L9opX0
(-、-トソン「ほら、えっと……」
ζ(^ー^*ζ「『デレ』でいいですよ」
(゚、゚トソン「ではお言葉にお甘えしまして――デレさんも経験ありませんか?」
ζ(゚ー゚*ζ「何がですか?」
(-、-トソン「――恋人の部屋でえっちな本を見つけてしまったり……」
(;^Д^)「何言ってんのこの人!?」
ζ(^ー^*ζ「ありますよね」
(^Д^;)「あるんスか!!?」
(;-_-)「(やっぱりあるんだなあ、そういうこと……)」
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 20:36:20.33 ID:Vf5L9opX0
(゚、゚トソン「そういうのを見ると……なんだか、居た堪れない気分になりませんか?」
(、 トソン「私がいるのに……。いつでも相手になるのに……。私のものなのに……、私だけの…………」ブツブツ
(;^Д^)「怖ッ! いつものことだけどやっぱ怖ッ!!」
(;-_-)「(モララー君はこういう子にしか好かれないんだね……)」
ζ(-ー-*ζ「そうですね……でも、」
ζ(^ー^*ζ「――そういう時はグッと堪えて、全部読んで、彼が何処を重点的に見たのかを考えて……それでそういう風にしてあげるのがオススメです」
(-、-トソン「なるほど」
(; Д)「あー……」
ζ(゚ー゚*ζ「どうしたの?」
(; Д)「いえ……。(妙にツボ押さえられてたのはそういうことかー……ちょっと死にたい)」
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 20:40:01.01 ID:Vf5L9opX0
(゚、゚トソン「私も捨てずに読めば良かったですかね」
ζ(゚ー゚*ζ「捨てたんですか?」
(-、-トソン「正確には目の前で焼きました。焼かないでくれとうるさかったです。妬いているのは私の方だというのに……」
(;^Д^)「上手いこと言ったつもりか!!」
(゚、゚トソン「……とにかく、男の方がそういう本を隠し持っているのと同じく、私達も持っているのです」
(-_-)「何を?」
(-、-*トソン「見られたくない本、ですよ」
( ^Д^)「へぇ。たとえばどんなやつとかを?」
(-、-トソン「――セクハラですよ。プライバシーの侵害です」
(;^Д^)「いやっ、純粋な興味からですよ!? 俺も振り返ってみるとこの質問どうかなーとは思いますけどそれにしたって普段のトソさんの言動に比べれば可愛いもんです!!」
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 20:43:25.71 ID:Vf5L9opX0
(-、-トソン「白状しますと私が見ているのはただの雑誌です」
(゚、゚トソン「あまり引かないで欲しいのですが……ほら、女性誌でも“彼のオトし方特集!”などがやっているでしょう?」
ζ(-ー-*ζ「やってるね、よく」
(、 *トソン「そういうのを見られるのは、ちょっと……」
(-_-)「なるほど。だから“努力が必要”ね……」
(;^Д^)「興味本位なんですけど、たとえば――――あっ、やっぱ今のなし。なんもないです」
(゚ー゚トソン「そこまで警戒せずとも内容の一つ二つぐらいならば良いですよ。実演も交えて」
(;^Д^)「でも……オムライスがどーのこーのとかでしょ? 『ヒヨコさんがかわいそうー』とか」
(-、-トソン「私があんなブリっ子アピールできるような器用な女に見えますか?」
(;*^Д^)「(じゃあいつもの可愛い仕草は完全に素なのかよ……。可愛いなぁ……)」
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 20:46:23.28 ID:Vf5L9opX0
(゚、゚トソン「――では、一つお見せします。暗い夜道で彼をオトすテクニックです」
(-、-トソン「プギャーさん、私の隣に立って下さい」
( *^Д^)「あ、はい……」
(゚、゚トソン「その一。隣に並んだ状態から、一歩後ろに下がります。音を立てないのがベストです」
(-、-トソン「その二。彼の真後ろに回り込みます」スッ…
( ^Д^)「?」
(、 トソン「その三。後ろから彼に、胸を当てるように抱き着く――」
(;* Д)「お、おぅ? (柔らかさはあんま感じないけど体温とか良い匂いとかが……これはなんて天国ですか?)」
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 20:49:29.30 ID:Vf5L9opX0
(、 トソン「――のと同じ要領で、色香に惑わされ油断している彼の首に片腕を回します」
(; Д)「うぐっ!?」
(゚、゚トソン「その四。そのままもう一方の手の上腕辺りを掴み、片方の手で相手の後頭部を押します」
(; Д)「ちょっ、トソさんこれなんかちg――――」
(-、-トソン「最後に注意点。気管を絞めず、咽仏の左右にある頚動脈洞のみを締めるようにしましょう。上手くいけばおよそ七秒で失神します……おや?」
( Д)「………………」
(-、-トソン「早いですね、もう落ちたんですか? モララーは十秒弱耐えたのに……情けないですよ」
(;-_-)「うん、えっと……上手く言えないんだけど、何か違うんじゃない?」
ζ(-、-*;ζ「(プギャー君が“情けない”というか、あなたは情けがないの? トソンさん……)」
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 20:53:18.29 ID:Vf5L9opX0
【――同じ頃】
(#゚;;-゚)「(プギャーさん、遅いな……)」
(# ;;-)「…………」
トゥルルルル!トゥルルルル!
(*゚;;-゚)「!!」
ピッ
(* ;;-)っ「――もしもし……えっと、プギャーさん……ですか?」
(;#゚;;-゚)「………………あれ?」
- 63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 20:56:52.24 ID:Vf5L9opX0
(# ;;-)「…………電話じゃなく、“めーる”でした……」
(# ;;-)「プギャーさん、帰るの遅くなるのですか……」
(#゚;;-゚)「寂しい――なあ……」
ゴロン…
(# ;;-)「早く帰ってきて欲しい、なあ……」
(# ;;-)「(独りなのは、嫌だから。この感情は――嫌いだから)」
(#゚;;-゚)「早く帰って来ないかなあ……」
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 21:00:12.32 ID:Vf5L9opX0
…ゴロン
(#゚;;-゚)「!」
(#゚;;-゚)っ「ベッドの敷布団に何かが挟まってる……」ゴソゴソ
(# ;;-)「……んしょ、」
(;#゚;;-゚)「――う、わぁ……」
(* ;;-)「これは……その、やっぱりプギャーさんも男の方だから……」
(*゚;;-゚)「それにしてもこれは……凄い趣味です。クールお姉様の普段の発言が、可愛く思えるほどに……過激な……」
:(* ;;-):「うわあ、うわぁ――――」
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 21:04:08.74 ID:Vf5L9opX0
【――五分後】
(;^Д^)「――死ぬかと思ったわ!!」
(゚、゚トソン「? 死にませんよ?」
(゚ー゚トソン「ほとんど後遺症を残すことなく相手を戦闘不能に至らしめることのできる、軍隊でも活用されている極めて有効な技術ですから」
(-、-トソン「脈拍が過剰になった際……過呼吸の時も応用できますね」
(;^Д^)「そういうことが聞きたいわけじゃなくて! 俺の期待! 俺のワクテカ返せ!!」
( Д)「何より……」
(;^Д^)「――なんで俺縛られてんだよ!意味分からねぇよ!!」
(-、-*トソン「“夜道で彼をオトすテクニック”に続いて“彼をお持ち帰りするテクニック”の実演(;^Д^)「んなことは訊いてない!!」
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 21:06:34.74 ID:Vf5L9opX0
(-、-トソン「理屈はよく分かりませんが、人間は両親指を掴まれると動けなくなるそうです。それを使った拘束法」
(;^Д^)「遂に“拘束法”って言いやがったな!!」
(゚、゚トソン「ちなみに他には正面から彼をオトす方法や腕力に自身のある方の為の方法もあります」
(゚ー゚トソン「正面からの場合は、@じゃれるようにし相手の右手首を掴む、A背後に回り込む、B右腕を捻り上げながら左手で口と鼻を塞ぐ、ですねー」
(;^Д^)「誘拐でもするつもりか!!」
(-、-*トソン「誘拐なんて……盗むだけですよ? 彼の身体ごと、彼の心を」
(;^Д^)「それそんなに上手いこと言えてねぇよ!!」
(-、-トソン「武道の心得のある方は、@胸元のユルい服を着る、A胸の谷間に視線を釘付けにさせる、B油断している相手の顎先や側頭部に素早く拳を叩き込む、ですねー……」
(;^Д^)「さっきから一々女の魅力を使った微妙に現実的な方法だから余計に怖い!!」
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 21:09:30.22 ID:Vf5L9opX0
(、 *トソン「まあ、後の二つはモララーに使うことはできないんですけど……。対処されてしまいましたし……」
(; Д)「チクショウ! “彼をオトすテクニック”って、彼の意識を落とす技術のことか!!」
(゚、゚トソン「そうですが……何か?」キョトン
(;^Д^)「ああそうですね! 変な期待した俺が馬鹿だったんですね!分かりました!!」
ζ(ー *ζ「…………」ニヤニヤ
(;-_-)「……もしかして、何かよからぬことを考えていたり?」
ζ(ー *ζ「いえ、別に」
ζ(^ー^*ζ「(ふふっ……相変わらず馬鹿だねぇ、プギャー君は)」
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 21:12:24.87 ID:Vf5L9opX0
(;^Д^)「――っつーか、そんな知識が書いてある雑誌って……」
(゚、゚トソン「ここまでではないにせよ、似たようなことが書いてあるものはありますよ。相手も使ってくる技ですから」
( ^Д^)「“相手”?」
(゚、゚トソン「はい。強姦にせよ、誘拐にせよ、殺人にせよ。そういうのがいると知りながら警戒をしないのは一種の罪だと思います。落ち度ですよ」
( ^Д^)「…………」
(-、-トソン「世界に生きる上での自己責任……そんな話は今日はいいです。それで、と」
(゚ー゚*トソン「――『何の変哲もない男の子が実は凄くて皆から好かれているという設定が嫌』というのは私も同意ですね!」
(;^Д^)「え、その話に戻るんスか!?」
(-、-トソン「“本当は人並み外れた能力の持ち主である”とか“本当は暗い境遇を背負っている”とか……溜息が出ちゃいますよ。あ、お茶を用意しないと……」
(;^Д^)「トソさん、俺の話を聞こう! お茶汲みながらでも良いですからこっちの話も聞いて下さい!!」
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 21:15:25.52 ID:Vf5L9opX0
(゚、゚トソン「凄い人というのは見るからに凄いものだと私は思いますよ?」
(;^Д^)「前から言いたかったんだけどアンタしょっちゅう耳遠くなりますよね! 都合の悪いことは聞かないって……北●の拳か!!」
(;-_-)「(トソンちゃん、話聞かないもんなー……)」
ζ(-、-*ζ「――でも、分かるような気もするよ。そういう設定が人気あるのは」
(^Д^ )「……え?」
(-、-トソン「……粗茶ですが」コト…
ζ(^ー^*ζ「ありがとう」
(;-_-)「…………僕の分ないんだけど……」
(゚、゚トソン「あ、申し訳ありません、わざとです。今淹れます」
(;-_-)「正直だね、君……」
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 21:18:27.50 ID:Vf5L9opX0
ζ(-、-*ζ「話を戻すけれど――そういう設定があると感情移入し易いじゃない?」
ζ(゚ー゚*ζ「ほら、物語を書く上での大前提として“主人公がある程度は常識を持っている”ということがある。それと同じ」
(-、-トソン「推理小説にはワトスン役が必要ですが、ライトノベルの主人公は探偵役とワトスン役を兼任する為そういうことになる、ということですか……」
ζ(゚ー゚*ζ「うん」
(゚、゚トソン「そう言えばシャーロック・ホームズシリーズの中でも『ワトスンは自分のことを無能に書き過ぎている』というような発言がありましたね」
( ^Д^)「へぇ、そんなことが」
(-、-トソン「『彼自身は書き立てることはないが、彼はとても素晴らしい特性を有した人物である』というようなことを言ってるんです」
(゚ー゚トソン「彼がいたからこそ成功した作品という見方もあります。今なお語り手や助手のことを“ワトスン役”と言うのも頷ける話ですよねー……」
(-_-)「……物語として仕方のないことなのかもしれないね」
(-_-)「だって、どう考えても大多数の人間は『普通』なんだから。名探偵なんて役回りは圧倒的に少数派だからさ」
- 71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 21:21:34.08 ID:Vf5L9opX0
ζ(-、-*ζ「だからあなたが好きになれないのも仕方ないと思うの」
ζ(゚ー゚*ζ「だって、あなたの好きなモララーさんは、どっちかと言うとホームズの方でしょう?」
ζ(-、-*ζ「いっそ――“悪役”とさえ言えるかもしれない」
(゚、゚トソン「悪役…………」
ζ(゚ー゚*ζ「それもカリスマを持った、最後の敵のような。モリアーティ教授だね」
ζ(-ー-*ζ「分かり易く強大で、何かの目的の為にしか行動しない、迷いと淀みが少しもないキャラクター」
( ^Д^)「“強く”かつ“悪どい”故に『強悪』か……」
ζ(^ー^*ζ「あるいはライバルなのかな? ずっと主人公と相容れない、ね……」
(-、-トソン「(ある意味でモララーも『同属殺し』ということでしょうか……。むぅ……)」
- 72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 21:25:07.87 ID:Vf5L9opX0
ζ(-、-*ζ「ご気分を損ねる結果になったのなら謝りますけど……」
(、 トソン「……いえ」
(゚ー゚*トソン「――カッコいいじゃないですか、悪のカリスマ!」
(、 *トソン「たとえ意思や行動が褒められたことではなかったにせよ、それが誰かを救ったなら、その人は紛れもない英雄でしょう?」
(-、-*トソン「“悪には悪のカリスマが必要だ”」
(゚、゚トソン「どうにもならない状況で、何かに縋って生きるのは……きっとそんなに悪いことじゃないんです」
(-_-)「……そう、なのかな…………」
(;^Д^)「――話が一段落したのならそろそろ縄解いてくれませんかねぇ!?」
(-、-;トソン「あっ、すみません……。すっかり忘れてました……」
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 21:28:31.13 ID:Vf5L9opX0
【――境界線上、】
私が認識する世界はモノクロームだった。
物心つく寸前くらいまではちゃんとカラーだった気もするんだけど、“物心つく寸前”だから、意味がない。
私にとっては赤リンゴも青リンゴも変わらない。
だけど、完全な白黒の世界かと言えば、そういうわけでもなかったりする。
赤だったり青だったり、黒だったり白だったり。
珍しいのでは透明っていうのもあったかな。
私の視る世界には数え切れないほど沢山の色が溢れている。
世界を染めるそれ等が人の心だと知ったのは結構、後になってからだった。
- 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 21:31:23.44 ID:Vf5L9opX0
私の視界には色が満ちている。
この世界には心が満ちている。
だけど――。
从*゚ーノリ「人の心が読める、なんて、思ってるほど良いものじゃないんですよね」
从*-ーノリ「知らなくていいことまで知ってしまう、知りたくないことまで知ってしまう」
从*^ーノリ「私にこんな視界がなければ……はにゃーんさんとも、モララーお兄さんともクーお姉さんとも、仲良くできていたんだと思います」
(,,^Д^)「ギコハハ」
(,,゚Д゚)「それがなんとなくであっても、内側を知ってしまった俺達とは、仲良くできない?」
从*^ーノリ「無理ですね」
(,,^Д^)「即答だね、迷いがない」
(,,゚Д゚)「俺の敵にも見え過ぎるからってよく片目閉じてる奴がいるけど……それはそういうことなのかな」
- 75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 21:35:10.96 ID:Vf5L9opX0
(,,゚Д゚)「ちなみにさ、ルカちゃん」
从*゚ーノリ「なんでしょう」
(,,^Д^)「今の俺はどんな色に見える?」
从*-ーノリ「……はにゃーんさんって田植えとかしたことありますか?」
(,,゚Д゚)「ん? あるけど?」
从*^ーノリ「私はしたことないんですが、きっと初夏の田んぼに入るとこんな感じがするんだろうなー、って思うような色です!」
(,,^Д^)「ギコハハ、泥色ってことかな」
从;*゚ーノリ「こっちが気を使ったのに自分で言っちゃわないでくださいよ……」
- 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 21:38:24.40 ID:Vf5L9opX0
(,,-Д-)「――さて、と。ロクに案内もできてないけど、言いたいことだけ言っておくね」
从*゚ーノリ「はい」
(,,゚Д゚)「言いたいのは二つ。俺の個人的な意見だから聞き流してくれても構わない」
(,,-Д-)「まず一つ目として“こんな視界がなければ”と君は言ったけど、その視界がない君は今の君になっていないと思う」
(,,゚Д゚)「そして二つ目。心地良いだけの人間関係なんてほとんど存在しない」
从*゚ーノリ「…………」
(,,^Д^)「その二つがどういう意味なのかは次の人にでも訊いてみなよ。君と似たような特性を持つ、俺の後輩にさ」
从*-ーノリ「……分かりました」
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 21:42:05.29 ID:Vf5L9opX0
「そしておまけとして、」
私の少し先を歩いていたその人は、振り返る。
振り返った見せた瞳は、片目のみ鈍い銀色に変わっていた。
そして、その――心の色は。
その黒く冷たく淀んだ原初衝動は、私の視界をもまとめて染め切ってしまうほどに黒かった。
視ているこっちが、泣きたくなってしまうほどに。
「俺は自分だけが特別だとか自分だけが不幸だとか思ってる奴が大嫌いだ、あんまりそういうことを言うのなら――」
最後の言葉は声にならず、小さく口が動いただけだった。
だけど。
人の心が視える私は唇を読むまでもなく、彼が言いたいことが分かってしまった。
思えば彼は最初からそう言っていたのだから――。
- 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 21:45:22.33 ID:Vf5L9opX0
――こ、
ろ、
す、
よ
?
- 81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 21:49:05.65 ID:Vf5L9opX0
【――道の外】
クーの部屋に入るのは結構久しぶりだった。この新しい部屋に限れば初めてでもある。
中学の初めまでは比喩でもなんでもなく毎日来ていたのに、さて何が切欠でその習慣がなくなったのか。
「クーが立ち直ったことだったかな……」
“立ち直る”とまではいかずとも、ある程度は“独り立ち”できるようになったからだった気がする。
その時俺の胸に到来した感情は少しの嬉しさと沢山の寂しさ。
涙を流すことこそしなかったが、我ながらみじめだなあと思ったのを覚えている。
意識がはっきりとしない彼女を背負ったまま部屋に入る。
クーの色が滲む空間。
それなりに整理整頓された室内には相変わらず、特にベッドの周りには大量のぬいぐるみが置いてある。
体温が離れていくことを惜しみながらクーをベッドの上に寝かせて、その時に気づいた。
- 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 21:53:29.78 ID:Vf5L9opX0
可愛らしい刺繍が施された枕のすぐ隣には少し大きなぬいぐるみがある。
昔流行ったアニメのマスコットで、それは随分前に――まだクーの部屋に通っている頃に、俺が取ってやったものだった
その時に全然笑わなかったアイツが笑ってくれたのが、嬉しくて。
「……っはは、あ、っはっはっは」
要するに――俺は。
クーには一生、俺がいないと生きていけないような弱い存在で在り続けて欲しかったんだ。
守るようで守られていた。支えるようで支えられていた。救うようで救われていた。
彼女を守っているという事実に守られ、彼女を支えているという現実に支えられ、彼女を救ったという真実に救われた。
流石対極、俺も先輩と同じだった。
独りでなんて生きていけない。
誰かに必要とされていなければ立てなくて、誰かに愛されてなければ歩けない。
- 84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 21:56:21.68 ID:Vf5L9opX0
何が“なんでもできる”だよ、苦手なことばっかりじゃないか。
息をするのも、歩くのも。誰かがいなくちゃ生きていけないぼく達は生きること自体が難しい。
ぼくはきみがいないと生きていけないんだ。
だから――もう一度、あの時と同じようにきみに誓おう。
もうぼくの両腕できみを抱き締めることはできないし、もうぼくの唇できみに口付けることもできないけれど。
それでも、今だけでいいから、この手だけは握らせてくれ。
「もう一度、約束する」
いつかの為に、この愛を。
気づかなくたって構わないから。
- 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 22:00:40.07 ID:Vf5L9opX0
“安心して眠れば良い”
“きみの全ては、ぼくが請け負うから”
( -∀-)「……好きだよ、クー」
ぼくはあなたのことが大好きです。
だから、あなたのことを一生守らせてください。
――Encore!
- 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 22:04:27.96 ID:Vf5L9opX0
Call back‐13 PART-B
川 -)「…………忍ぶれど 色に出でにけり わが恋は。物や思ふと 人の問ふまで」
……すたーとっ
- 87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 22:07:31.94 ID:Vf5L9opX0
【sailing days. ――featuring 『Femme fatale like "Heavy Starry Chain"』】
何処が好きかと聞かれると、実は困る。
いつから好きなの? と根掘り訊かれても結構困る。
どれくらい好きなの? と順列を求められても割と困る。
昼寝の夢に見るぐらい好きなの? と具体的に訊かれると恥ずかしい。
じゃあ好きじゃないの? と訊かれると、その否定はとても易しい。
気持ちが慣れてしまうほど、「好き」だなんて改まって言えないほど、長い間これが恋だと気づかなかったほど、どころか彼が隣にいないのが不自然に感じてしまうほど。
私は、彼のことが好きなのだ。
……困った。
- 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 22:10:55.96 ID:Vf5L9opX0
その背中に泣き叫ぶことも引き止めることもせず、
平気なフリをして、
どうして私じゃないんだろうと自問して、
認めるようにどうせ無理だと諦めて、
切なさや哀しさを心の奥深くに押し込めて、鍵を掛けて、
そんな、つよがりだらけの。
見得と虚勢に彩られた、嘘だらけな私のこれ以上ないほどにみっともない恋だけど――でも。
唯二他人に誇れるところがあるとすれば、
私は「自分を助けてくれたから」というだけの理由で、彼のことを好きになったわけではないし。
彼の前ではあらん限りの弱さを見せてしまったからこそ、私は強くなろうと決めたのだ。
- 89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 22:13:25.34 ID:Vf5L9opX0
だって……ねえ?
哀しい夢と冷たい記憶によって結ばれた王子様と姫君なんて、それはきっと“恋愛”じゃなく“状況”だと思うから。
- 90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 22:16:31.11 ID:Vf5L9opX0
【―― 3 ――】
久しぶりに見た髪は変わらず美しい灰色だった。
こめかみ辺りで癖をつけている。合わせたように両の瞳も灰色だ。
その珍しい色は中性的な顔立ちと可愛らしい目元に深みを持たせているようで、軽薄ではない魅力を感じさせた。
深く、重く、強い色。
洗練された雰囲気もやはり灰色だった。
リパ -゚ノゝ「(絵画みたいな美しさを持つ人だ)」
それは神様から選ばれたモノだけが持つ魔性。美貌。
微笑みかけるだけで大抵の女性は虜にされてしまうことだろう。
常に浮かべる無邪気な笑みは苦労を知らぬ良家の跡継ぎらしいものだが、時折見せる凄惨そのものな笑みは暗黒街の首領のようだ。
私からすればどちらも同じようなものだけど。
- 91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 22:20:38.74 ID:Vf5L9opX0
空港から出てきた彼に一礼をし、待たせていたタクシーの扉を開く。
そんな執事のような訓練は受けていないのでその動作はややお粗末なものだったが、彼は気にせず乗り込んだ。
そして私も隣に乗り込んだ。
(*-∀-)「……躊躇なく上司の隣に乗るかなあ? 普通」
リパ -゚ノゝ「…………私は普通ではありませんので、」
それもそうだ、と笑いながら言い、続けて運転手さんに行き先を告げる。
ミラー越しに目が合ったその人は驚いたようだったが、そこは仕事中、何も言わずに車を出した。
そう言えば紹介するのを忘れていた。
(*^∀^)「あっ、ゆっくりで良いからね。あひゃひゃ」
この人は『ツーヴァイクル=V=エルシール』。
VIP国第四皇位継承者にして―――おそらくは十年以内にこの国で最も偉くなる人間である。
- 93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 22:23:43.53 ID:Vf5L9opX0
【―― 4 ――】
言われた言葉を。
ふと、思い出してみた。
( ^Д^)「人を殺す家業の人間である、ただし仕事でしか殺さない、けれど自分はできた人間ではない、か……」
とても遠回しに「私を怒らせるようなことをしたら殺す」という風なことを言われたのか。
まるで異常者の言い分だと思い、絣も自分のことを『普通』だなんて思っていないんだろうな、と苦笑する。
そもそも『普通』だなんて珍妙な性質を持つ奴が、モラ先輩はまだしもはにゃ先輩と仲良くなれるわけがない。
普通嫌いの異常――同属殺し。
あの人をそういう風に表現していたのは、確か、トソさんだったか。
( ^Д^)「そういや、ああいう感じの理屈はトソさんも使いそうだよな……」
案外、仲が良かったりするのかもしれない。
- 95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 22:26:36.54 ID:Vf5L9opX0
“私は異常である、だから異常なことをする”
……その理屈を正当と思うか、あるいは言い訳と感じるかは人によるのだろう。
連続殺人鬼なんかはこの理屈なら「仕方ない」ことだ。
何故ならああいう人間は『異常』で、こちら側と全くもって通じていない世界に生きているのだから。
それが正しいにせよ間違っているにせよ、一応筋は通る論理だ。
“それっぽい”というか。
( ^Д^)「トソさんなら『私も異常だからあなたを殺す』みたいに言うんだろうな」
フィクションの世界で悪役として描かれる吸血鬼は本当に悪いのだろうか?
彼等はただ、生きているだけなのに?
道徳的倫理的に悪いことと都合が悪いことは必ずしも一致しない。
吸血鬼でたとえるのなら、生きようとしている彼等を「自殺は良くない」とする社会の常識が否定できるはずもないのだ。
それとも人間の理屈は「人に迷惑をかけるぐらいなら死ね」とするのだろうか。
……ありえる話だ。
- 98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/09(土) 22:30:41.75 ID:Vf5L9opX0
ならば、『異常』と称される存在を好き好んで守っているはにゃ先輩は世界の反逆者か。
そして――俺は。
( ^Д^)「言わば『異常』の敵対者、なのかもな……」
今の「連 禰子」という『人間』は、かつては名も無き『道具』だった
俺はそれを俺の感情に従って否定した。
常識に准じて排斥した。
しかし、今改めて考えてみれば――その“名も無き『道具』”だって理由があって存在していたんだとも思ってしまう。
何かが在って、彼女はあそこにいた。誰かに求められて彼女はそこにいた。
その背景は俺の無知さとでぃの寡黙さ故に分からない。
分からないのだが、確かに言えることは……俺が誰かの意思を否定した、ということ。
“ただ単に否定して、異常だとか非現実的だとか、そういうことを言うのは卑怯です”
……さて、これは何の台詞だったかな。
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/10(日) 21:30:06.33 ID:XCP02wc10
俺は近いうちに、場合によれば今日か明日にでも、不都合な事実を聞かされるらしい。
それはきっと俺が『異常』だと感じてしまうこと。
デレさんと初めて出会った時、でぃに手を差し伸べた時のように、何かしら否定的な態度を取ってしまう類のことなのだろう。
……それが“不都合な真実”でなかったのは僥倖だったのか。
真実は大抵一つだが、事実は一つじゃない。
残った事実だけが歴史となり――真実となっていく。
( ^Д^)「まあ……でも、」
なんだか無性に、またあの『最悪』に遭いたくなってしまった。
俺とは真逆の場所にいる非人間に。
相談ならデレさんでもいいんだけど、というかデレさんの方がいいんだけど……まあ、それはちょっと。
なんつーか。
そこは別れたんだからケジメが大事だし。
何より、デレさんと二人きりは色々マズいのだ。
- 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/10(日) 21:33:26.13 ID:XCP02wc10
と、そんなことを平日のスタバでつらつらと考えていると――、
...(,,゚Д゚)
(;^Д^)「(……ヤベェ)」
――ちょうど目の前をその『最悪』が通りかかった。
凄いタイミングだった。
(,,゚Д゚)「あれ、こんな所でどうしたの? プギャーちゃん」
(,,^Д^)「まるで人間関係の不和を生じさせる友人の秘密を他人から漏らされることを決定付けられたような顔だけど」
( ^Д^)「……前もクー先輩に心を読まれたんですけど、俺ってそんなに顔に出やすいんスかね?」
よくよく考えれば「噂をすれば影が差す」という論理は身体が影で構成されているはにゃ先輩には全く通用しない理屈だと、気づくのは遅過ぎた。
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/10(日) 21:36:24.09 ID:XCP02wc10
【―― 5 ――】
柔らかな日差しを浴びながらコーヒーを飲む大学生男子二人。
二枚目ならば絵になるところだが、残念ながら俺もはにゃ先輩もイケメンではない。
いや、はにゃ先輩はどっからどう見ても眉目秀麗なんだけど普段の立ち振る舞いが三枚目過ぎる。
カッコつけようとして三枚目っぽさが出てしまっているモラ先輩とは対極。クー先輩みたいな感じだ。
相性が良いのだか、悪いのだか。
唯一言えるのは「二人共とりあえず黙ってたらどうですか?」だが。
( ^Д^)「(黙ってるようなキャラなら……仲良くなんてなれてないだろうけど)」
それはトソさんやクー先輩も同じく。
変な風にズレているからこそ上手い具合に合ってしまう。
惹かれ、曳かれ、牽かれてしまうのだ。
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/10(日) 21:39:09.63 ID:XCP02wc10
木漏れ日の中で肘をつき、まどろむように目を細める先輩。
黒い両の瞳にも、音が鳴りそうなほど長い睫にも、彫刻みたいに精巧な手にも――やはり俺は危険性を感じ取れない。
ただの優しい先輩のように見える。
絣ならちゃんとこの人を裏を読み取るのだろうか、と彼女の話題を出した際に少しだけ気になった。
(,,-Д-)「なるほど……」
( ^Д^)「なんかすいませんね、個人的な話を」
こんな漠然としたことを聞かされたら俺なら絶対に困ると思っての言葉だったが、先輩は「いいよ」と何気無く返答する。
(,,゚Д゚)「あのね、プギャーちゃん。愚痴や相談事っていうのはさ、誰かに言うことが大事なんだよ」
( ^Д^)「え?」
(,,-Д-)「聞いて貰うだけで楽になるし、言うだけで気持ちが整理できたりするものだから。抱え込まないのが大事なの」
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/10(日) 21:42:08.10 ID:XCP02wc10
(,,^Д^)「ほら、よくあるでしょ? 怒ってる時は“自分が何故怒っているのか”を書き出してみると良い、って」
それと同じだよ、と気取った風もなく、けれどどうでもよさげには決して見えないような笑みを浮かべて言う。
こういう事態への慣れが――直結して彼の人柄が窺える対応。
……なるほど、『同属殺し』ね。
言い得て妙な渾名だ。
自分と同じ異常な人間を相手取ることに長け――自分と同じ傷を負った人間を癒すことにも長ける。
二つの意味を持つ、二つ名か。
(,,-Д-)「まあユキちゃんは俺の親戚だからさ、今度ちょっと言っておくよ」
(;^Д^)「あ、はい。よろしくお願いしま――ええっ!?」
思わず立ち上がり注目を浴びてしまい、頭を下げて座り直す。
……いいのだ。
この程度の恥を気にしていたら生きていけない。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/10(日) 21:45:04.79 ID:XCP02wc10
それより――問題は。
(;^Д^)「あの子、はにゃ先輩の血縁なんスか?」
(,,゚Д゚)「うん。一応うちが本家で、あっちが傍流だけど……源泉は一緒だよ。家業も同じだし」
そういやこの人も職業軍人の家系だ。
完全に失念していた。
(; Д)「あー……またエリートな知り合いが……」
(,,^Д^)「ギコハハ。ユキちゃんは味方にしておくべき人間だよ、少なからずパイプができて良かったじゃん」
(;^Д^)「いや、敵とか味方とか、俺の『日常(ギャク主体)』ではないですし……」
(,,-Д-)「尋常じゃないほどに強いからねー、ユキちゃんは」
(;^Д^)「しかもそれ“味方にしておくべき”ではなく“敵に回すべきではない”ですし……」
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/10(日) 21:48:06.71 ID:XCP02wc10
そして先輩は聞き捨てならないことを言った。
(,,-Д-)「多分、君のお兄さんよりも強いよ……上の方のお兄さんよりね」
(;^Д^)「!!」
強いとか弱いとかそういうことはどうでもいい。
問題は、兄さんのことを知っている人間がいるということ。
“いた”と――いうこと。
(;^Д^)「先輩……アンタ、俺の兄さんのこと、知ってるんスか?」
(,,゚Д゚)「知ってるよ。雨斎院月次――剣術と槍術と弓術を全て極め、かつそれらを同時展開していた豪傑でしょ?」
名前は“月次(つきなみ)”であるくせに、何処を見ても月並みな部分はなかった俺の兄を。
今ではもう二度と話すことのできないあの人を。
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/10(日) 21:51:09.80 ID:XCP02wc10
(,,-Д-)「強い人だったよね。あのまま順当にいってたらユキちゃんでも勝つのは難しかったかもね〜」
(;^Д^)「いや、あの……一応確認なんですが、その人俺の兄さんですよね? 人違いじゃないですよね?」
(,,゚Д゚)「だからあのカッコいい人でしょ?」
俺の知る兄貴は確かに凄い人だったが、そんな『非日常(シリアス)』に生きる奴ではない。
むしろ超コミカルなキャラでアメリカのホームドラマに出てきそうな人柄をしてたはずなんだが。
何よりカッコ良くはない。
(,,゚Д゚)「――常に十匹ぐらいの猫に囲まれてて、得意料理は肉じゃがの。よくエプロンつけてた」
(; Д)「ソイツですね……」
あんな変な奴がこの世界に二人といるわけがなかった。
確定だ。
この人は俺の兄さんを知っている。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/10(日) 21:54:03.77 ID:XCP02wc10
(,,-Д-)「俺が最後に会ったのは“あんなこと”になる直前だったけど、やっぱり凄くカッコいい人だった」
( ^Д^)「…………」
(,,゚Д゚)「刀の道は鬼の道で、神主は神と繋がるものだ。そしてあの人は鬼神の如く強かった」
だけどさ、と。
あの人は鬼にも神にもなれなかったんだよ――と、先輩は言った。
人間だったから鬼にも神にもなれなかった。
人間だったから鬼にも神にもならなかった。
きっと鬼になるにも、神になるにも、あの人はいい奴過ぎたんだよ――なんて。
( Д)「(馬鹿じゃねえのか……?)」
そんな風で“あんなこと”になってしまって。
損してるのは自分だけじゃないか。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/10(日) 21:57:05.62 ID:XCP02wc10
(,,-Д-)「でもそれも当然なんだよ――だってあの人って、技術云々以前にそのモチベーションが誰よりも強かったんだから」
( ^Д^)「……“モチベーション”?」
(,,^Д^)「うん。家族と恋した相手の為に戦うような意思がさ」
家族と恋した相手の為に。
生きるのも、死ぬのも。
(,,-Д-)「愛に生きて、恋に死ぬ――だから、あの人が“あんなこと”になっちゃった理由も、そこら辺にあるんだと思う」
つまり。
神にも鬼にもなれず、ならなかった兄さんは。
誰かを愛したように誰かに愛されて、誰かに恋したように誰かに恋された兄さんは。
(,,^Д^)「愛に生きて恋に死ぬことができたあの人は、幸せな男というわけだね」
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/10(日) 22:00:12.84 ID:XCP02wc10
しんみりとした雰囲気をどう思ったのか。
それにしても、とはにゃ先輩は話を元に戻した。
(,,-Д-)「君は一体何を言われるんだろうね〜」
(;^Д^)「なんか心辺りないんスか……?」
(,,-Д゚)「モララーちゃんとトソンちゃんのことでしょ? ないなぁ〜」
兄さんと同じように恋と愛に生きる二人のこと。
不都合な事実。
(,,-Д-)「……まあ、モララーちゃんなんかは“愛に生きて死ぬ為、恋をかたる”だと思うけど」
( ^Д^)「ああ、まあそうっスね」
確かにその方がモラ先輩らしい。
先輩は兄さんと似ているけど、兄さんと違って“それっぽい”ことを言うのは得意だもんな――と思った、次の瞬間。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/10(日) 22:03:07.21 ID:XCP02wc10
(,,^Д^)「――――好きな人を守る為に、好きでもない相手と付き合うなんて……常軌を逸してるよね〜」
( ^Д^)「…………え?」
…………え?
今、なんて言った?
(,,-Д-)「愛に生きて死ぬ為に、恋を騙る」
ちょっと、待て。
(,,^Д^)「しかもその騙られた恋にトソンちゃんも薄々気がついてるんだから、これはもう凄い物騙りだよ。騙しまくりだ」
ちょっと待て、なんだそれは。
聞いてないし知らないぞ、そんな――『異常』は。
- 49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/07/10(日) 22:06:24.46 ID:XCP02wc10
(,,゚Д゚)「あれ、知らなかったの?」
誰でも一つは持つ已むに已まれぬ事情、誰でも一つは持つ已むに已まれぬ異常。
……ああ、そうか。兄さんと似ている先輩の、兄さんと違う部分。
愛に生きて恋に死んだ兄さんとは違う、『人間』を捨てなかった兄さんとの違い。
あの人は、愛した相手の為ならば鬼にも神にもなれる――――何より。
(,,^Д^)「モララーちゃんはクーちゃんを助ける代償として、『病葉トソン』という空前絶後の殺人鬼を押さえ込む役目を負ってるんだよ?」
“人間であること”すら捨てる――人間だ。
Call back‐13 PART-B END
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