- 2 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 20:01:10.89 ID:hZGxMmgt0
3‐Call on the line
川 ^ 々^)「精衛海を沈む? ……そんなこと知らない。好きこそ物の上手なれだよ」
……すたーとっ
- 3 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 20:04:10.05 ID:hZGxMmgt0
【――ほぼ、同時刻】
( -∀-)「うわー。怪我した足を引き摺って急いで帰ってきたのにトソンいねー」
『買い物に行ってきます(笑)』
( -∀-)「――そして書置きの(笑)の意味が分かんねー」
( ・∀・)「『私がいない間寂しさで悶えて下さいね(はぁと』みたいなわけ?」
( -∀-)「……悶えるどころか思わず死んじゃいそう…………」
( ∀)「寝よっかな……(トソンの布団で)」
- 4 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 20:07:10.26 ID:hZGxMmgt0
トゥルルルル!トゥルルルル!
( ・∀・)「おっと、仕事仕事」
ガチャ
( ・∀・)「はい、こちら厚生労働省大臣官房秘書課付技官及び医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長……の、モララーですが」
『……やぁ。北高のロジカルモンスター』
『冷静に見せかけて熱血なのは似てるよね。君は、昔から』
( -∀-)「…………クルウさん」
『おお。声だけで分かってくれるんだ?』
( ・∀・)「一応、そちらの家にお世話になっていた身ですから」
『そういうこともあったね、昔は』
- 5 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 20:10:11.18 ID:hZGxMmgt0
( -∀-)「それに、言っちゃあなんですが――」
『?』
( ・∀・)「――随分と迷惑かけたし……迷惑かけられたんで」
『…………まぁ、ね』
『何にせよ昔の話だし、時効としてくれると嬉しいかな』
( -∀-)「…………それは俺が決めることじゃないんで」
『それもそうだね』
- 6 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 20:13:10.80 ID:hZGxMmgt0
( ・∀・)「あなたの存在は法律でも裁けないし、倫理の範疇にも入っていない」
( ・∀・)「『物事には例外なく例外がある』と俺の師匠も言ってましたが、クルウさん、あなたはまさにそうだ」
『……褒めてくれてるのかな?』
( -∀-)「これを世辞ととるのなら、流石にクーの“姉”と言ったところですか」
『やだなぁ、モララー君』
『――今の僕は、“兄”の方だよう』
( ・∀・)「…………」
『まあ、そんなことはどうでもいいけどね』
『訊きたいことがあるんだよ。――「アドバイス部」の部長さん?』
- 8 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 20:16:24.68 ID:hZGxMmgt0
【――同時刻、11号室】
('A`)「確かにクーさんの姉さんは形容し難いところがあるが、悪い人じゃあない」
川 ゚ -゚)「……そうだな。兄さんは、“悪くないから、なお悪い”タイプの人間だから……」
(;^Д^)「クー先輩の“兄さん”の話なのか“姉さん”の話なのかハッキリして欲しいんですが――その前に」
( ^Д^)「――ドクオ先輩は何当たり前に入ってきてんですか?」
('A`)「いや、玄関開いてたし」
( ^Д^)「インターホンは?」
('A`)「それは…………押してないけど」
( ^Д^)「押せ」
('A`)「細かいこと言うなよ、後輩」
- 9 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 20:20:01.14 ID:hZGxMmgt0
コト…
(#゚;;-゚)「お茶です」
(*'A`)「うん。ありがとう」
( ^Д^)「ドクオ先輩には出さなくていいから。さっきからお前の生足しか見てないぞ、コイツ」
川 ゚ -゚)「別にいいだろう。減るもんじゃない」
(#^;;-^)「クーお姉様。お茶です」
川; д)「――――ゴッパゲシャァァァアアアア!!!」
(;^Д^)「血ィ吐いて倒れた!? なにゆえ!!?」
('A`)「でぃちゃん の こうげき! クー は だいダメージ を くらった!!」
- 11 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 20:23:09.73 ID:hZGxMmgt0
川* -)「はぁはぁ……でぃタン、はぁはぁ……」
(;^Д^)「怖ッ! そして気持ち悪ッ!! この人本格的に末期だった!!」
川* -)「はぁはぁ……。お嬢ちゃん、今、何色のパンツ履いてるの……?」
('A`)「へんしつしゃクー の せいしんこうげき!」
(#゚;;-゚)「今ですか? えっと……」
(#゚;;-゚)「――白です」
川; д)「――――ゲロゲロロロロオボボォォォッ!!」
(;^Д^)「とても女性が出すと思えない擬音を出しつつ血の海に沈んで行った!!」
('A`)「でぃちゃん の こうげき! けいごキャラ + むひょうじょう!! こうか は ばつぐん だ!!!」
川* д)「我が生涯に……一片の、悔いなし…………」ガクッ
- 14 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 20:26:19.05 ID:hZGxMmgt0
【――数分後】
(;^Д^)「あのな……普通、ああいう類のことは言わなくていいんだ」
(#゚;;-゚)「すいません。つい」
(;^Д^)「あとクー先輩。人の家で鼻血出したり吐血したりするのはやめて下さい」
川* -)「はぁはぁ……。……すまない」
( ^Д^)「ったく……」←文句言いつつ掃除した人。
川* -)「ところでプギャー君」
( ^Д^)「なんすか」
川*゚ー゚)「この子、私にくれ――」
( ^Д^)「駄目です。いい加減怒りますよ」
- 15 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 20:30:56.64 ID:hZGxMmgt0
('A`)「――このタイミングで言うのもなんだが、クーさんの姉さんはこういう感じだな」
(^Д^;)「えっ、このキャラ増えるの!?」
川*゚ -゚)「厳密には違うが……近いと言えば、近い」
(;^Д^)「(そういや街で見た時も女の子を連れてたような……)」
('A`)「……いや、でもよぉ」
('A`)「お前の妹だって、お前に似てるじゃねぇかよ」
( ^Д^)「似てません。下の兄貴には……やや似てるかもですけど」
川*゚ -゚)「妹ッ!? 妹がいるのか、お前ッ!!?」
( ^Д^)「二人いますけど絶対に会わせませんからね」
- 16 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 20:35:46.53 ID:hZGxMmgt0
('A`)「確か……シベリア二中のブリザドシスターズ?とかって呼ばれてる、やんちゃな奴等だったよな」
川*゚ -゚)「なんだその某ありゃりゃぎ君の妹みたいなのは!」
(#゚;;-゚)「落ち着いて下さい。呂律が回ってません」
( ^Д^)「別に“冷たい”とか“カッコいい”ってわけじゃなく、名前が氷っぽい所為なんですけどね。そのまま」
(#゚;;-゚)「氷?」
( ^Д^)「上が『冰刃(きよは)』で、下が『雪吹(いぶき)』」
( ^Д^)「俺の実家は読めないややこしくて古めかしい名前が好きなんですよ」
( ^Д^)「……おかげで、滅多に誰も呼ばない・違う名前を名乗るのがデフォに…………」
川*゚ -゚)「美少女か? 美少女なのか!?」
( ^Д^)「可愛い妹達ですけど、何度でも言いますがクー先輩には会わせませんから安心して下さい」
(#゚;;-゚)「(可愛い……)」
- 17 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 20:40:07.91 ID:hZGxMmgt0
( ^Д^)「特徴としては……二人とも髪型が変です。あと、下の妹は猫が――」
川* -)「はぁはぁ……」
ピンポーン
( ^Д^)「――っと、客か」
川 ゚ -゚)「いい。私が出る」
(;^Д^)「私が出るって言われても……。ここ、俺の家ですし……」
川 -ー-)「ふっ……。安心しろ」
川#゚ -゚)「――お前の妹トークショーを中断した責任を取らせるからなッ!!」
(;^Д^)「何一つ安心できねぇ! そもそもトークショーじゃねぇし!!」
- 19 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 20:44:33.60 ID:hZGxMmgt0
川#゚д゚)「ぶっっ殺ぉぉぉぉすッ! YEAHーッ!!」
('A`)「アレ? ヒル魔さん?」
川#゚д゚)「背後から蹴りつけるのは、私の最上の褒め方だァァァ!!!」
ガチャ!! ←トビラを開けた音。
川 ^ 々^)「こんにちは――あ、クーちゃん」
川; -)「…………」ダラダラ
バタン!! ←直後、トビラを閉めた音
川; -)「無理……」
(#゚;;-゚)「デジャビュ?」
- 20 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 20:49:42.43 ID:hZGxMmgt0
川; -)「来たぜ、ぬるりと……」フラ…
( ^Д^)「はぁ? 何が来たって言うんですか?」
< クーチャーン マダボクナカニハイッテナイヨー トビラシメナイデヨー
川; -)「淳一族の最高権力者がだよ……」
- 21 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 20:52:36.80 ID:hZGxMmgt0
【――同刻】
(゚、゚トソン「ただいま帰りましたー」
(-、-トソン「――っと、誰もいないです……」
『クルウさん来た。ちょっと行ってくる(泣)』
(゚、゚トソン「……(泣)は、クルウさんが来たことなのか、私に会えないことなのか」
(、 *トソン「後者だといいなぁ……」
(゚、゚トソン「――さて、と」
(-、-トソン「モララーの秘蔵写真コレクションでも眺めて暇を潰しますか」
- 22 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 20:57:10.96 ID:hZGxMmgt0
【――別地点・雨霧荘へ向かう道にて】
( -∀-)「…………」
――淳家の長兄であり長女である「淳狂」は、独善家と形容されることが多い。
この国の上院議員。そして、有数の財閥組織である淳機関のトップ。
その有り余る権力を行使して――彼女は善を行う。
寄付や募金を募るのは当たり前。
臓器移植関連の法律改正、孤児院や学校といった教育機関の設立、また、公園や公共交通などの整備……。
彼女によって救われた人間は数知れない。
俺も――例外じゃない。
- 24 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 21:00:49.40 ID:hZGxMmgt0
――ただ。
一つだけ注意しなければならないことがある。
確かに、淳狂は善人だった。
“他人から観測される限りは”、だが。
( ・∀・)「……クルウさんは善人だ」
( -∀-)「彼女は間違った善人で――間違っても、善人じゃない」
だから、今日の目的は分かっている。
あの人は――――。
- 25 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 21:04:34.62 ID:hZGxMmgt0
【――室内】
川 ^ 々^)「――はじめましてなのかな。クールの兄の、淳狂です」
( ^Д^)「はじめまして。俺は――」
川 ゚ 々゚)「大丈夫。君のことは知ってるから。……プギャー君」
( ^Д^)「…………(やっぱり街で会った人か……)」
川 ゚ 々゚)「君のことも聞いているよ」
(#゚;;-゚)「?」
川 ^ 々^)「――でぃちゃん、だよね?」
(;#゚;;-゚)「…………はい」
- 27 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 21:09:32.87 ID:hZGxMmgt0
――正直な話。
一目見た瞬間から、嫌な予感はしていた。
川 ゚ 々゚)「――東郊でぃ」
クール先輩の姉、クルウさん。
彼女は自らの耳元で一度「パチン」と指を鳴らし、そして――、
- 28 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 21:12:21.45 ID:hZGxMmgt0
――でぃの全てを、話し始めた。
川 ゚ 々゚)「――生年月日及び戸籍は存在せず架空の物を使用。触れ込みでは十三歳。身長・体重等の諸情報は計測されたことがない為不明」
(;#゚;;-゚)「!!」
川 ゚ 々゚)「出身は第一級機密に属する忍の大家『東郊』で階級は甲中忍。兄弟姉妹また両親は他の商品と同じくで例に漏れずデータなし」
川 ゚ 々゚)「商品としての用途は一流の格闘術『東郊流』に拠った身辺護衛及び性欲処理玩具。貴重品。高額で中古となった今も同程度の値段で取引される」
( Д)「………ちょい、待って下さい」
川 ゚ 々゚)「現在の主人は三人目。それまで名前はなく主に代名詞か番号で呼ばれてきた。初めて性交を経験したのは五歳時。その時の主人は――」
(#^Д^)「――待て、つってんだろテメェ!!!」
- 29 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 21:15:46.95 ID:hZGxMmgt0
川;゚ -゚)「待て……ッ! とりあえず、落ち着け……!!」
(# Д)「はぁぁぁー……ふぅー……」
川 ゚ 々゚)「…………」
――十センチも距離はない。小刻みに震える右手に命令する。
胸倉を掴む手を――ゆっくりと、解いていく。
クー先輩が止めてくれてなければ、どうなっていたことか。
本当は止めて欲しくはなかったが……それでも感謝しておくべきだろう。
川 - 々-)「――申し訳ない。無神経だったね」
(# Д)「あ、あぁ……」
(;^Д^)「い、いや……俺も、悪かったです……」
- 31 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 21:20:12.82 ID:hZGxMmgt0
(#゚;;-゚)「(……この、クルウさんという人……真っ当じゃあ――ない」
(#゚;;-゚)「(私の人殺しとしての勘が警鐘を鳴らしてる……)」
(;#゚;;-゚)「(この人、多分――私が知っている全て生物の中で、一番危ない……)」
ガタッ
(#゚;;-゚)「?」
('A`;)「あ……」←こっそり窓から逃げようとしている今年二十歳になるドクオ君。
(#゚;;-゚)「…………………………この真剣な場面に何をしているのですか? あとここ二階ですよ」
('A`;)「いや〜……うん、逃げようかなー、と。後輩より自分の身の方が大事なんで」
(#゚;;-゚)「賢明ですけど最低ですね」
('A`;)「そもそもこういうシリアスモード苦手で……」
- 32 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 21:26:35.41 ID:hZGxMmgt0
川 ゚ 々゚) ジーッ
('A`;)「…………」
川 - 々-)「…………」
川 - 々-)「――プギャーさん。こんな無神経なことを言った直後に、言うべきことではないと思いますけど……」
('∀`;)「(良かった……。クルウさん、見逃してくれ――)」
ガシッ
川 -)っ(;゚A゚)「!!?」
川 -)「これぞ、我が淳一族に伝わりし捕獲術……」
川 ー)「……喜べ、お前もこれからのシリアス展開につき合わせてやる…………」
(;A;)「思わず涙が止まらなくなるぐらい嬉しいです……」
- 34 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 21:30:06.29 ID:hZGxMmgt0
川 ゚ 々゚)「簡潔に、言います」
( ^Д^)「…………」
川 ゚ 々゚)「――――『東郊でぃ』の身柄は、淳機関が預かります」
(#゚;;-゚)「…………」
(;^Д^)「アンタ、何言って――」
川 ゚ 々゚)「より正確には、淳機関傘下の専用院にて一般教養の学習や就業訓練などを行い、その後里親を探します」
(;^Д^)「……っ」
- 35 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 21:33:48.68 ID:hZGxMmgt0
川 - 々-)「心身共にケアも揃っています。国家機関なので防衛面も完璧です」
(;^Д^)「……クー先輩」
川 ゚ -゚)「――ああ。姉さんの言うことは、正しい」
川 -)「姉さんの所は……その、“こういう類の”人間の保護を目的としているから、な……」
(#゚;;-゚)「…………」
(;^Д^)「こういう類って……」
川 -)「それはまぁ、その……」
- 37 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 21:38:45.01 ID:hZGxMmgt0
('A`)「さっき、クルウさんが言ってたみたいな経歴の人間のことだよ」
(;^Д^)「ドクオ先輩……」
('A`)「人として扱われない存在。“単なるモノ”として売買されたり使用されたりする存在」
('A`)y━「苗字を聞いた時から予想はしてたんだがな……。そうか、やっぱりあの『東郊』か……」
(;^Д^)「……先輩、あの、」
(;^Д^)「――この部屋は禁煙なので、火を点けるなら外でお願いします」
('A`)「…………今言うべきことか? それ」
( ^Д^)「状況や背景でルールを変えちゃ駄目ですよ」
('A`)「だからシリアスモード嫌なんだよなぁ……」
- 38 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 21:42:24.11 ID:hZGxMmgt0
川 ゚ 々゚)「とにかく、この子の身柄は淳機関で預かります」
(;^Д^)「さっきから……横暴過ぎやしませんか?」
川 - 々-)「発言は配慮が足りなかったと思っています。それについては先ほど非礼を詫びました」
川 ゚ 々゚)「――けれど事実です。先ほど私が言ったデータは全て、事実です」
(;^Д^)「…………」
川 ゚ 々゚)「あなたの気持ちも分からないこともありません。しかし――」
川 ゚ 々゚)「――――あなた一人で、この先ずっと、この少女の面倒を見ることができると思っているのですか?」
(;^Д^)「っ!」
川 - 々-)「だとしたら……少々、現実を知らなさ過ぎですよ」
- 39 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 21:46:09.66 ID:hZGxMmgt0
(; Д)「…………」
――この人の言ってることは正しい。
一縷の隙もなく正論。『正論』が過ぎて『暴論』に聞こえるぐらいだ。
俺とでぃは本来なんの関係もない。
血の繋がりはない。長い時間を共有したわけでもない。一緒にいる必然性も必要性も何処にも――ない。
何もないんだ。
(#゚;;-゚)
兄貴が何を思ってコイツを送ってきたのかは、分からない。
俺が情にほだされやすくて状況に流されやすい軽い人間だから、ちょうどいいと思っただけかもしれない。
それを思えば――、
コイツの為を、考えるなら――――!
- 41 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 21:48:24.93 ID:hZGxMmgt0
ガチャ
「――クルウさん。現実を知らないとアンタは言ったが、」
(^Д^;)「!?」
( ・∀・)「――――現実に立ち向かう為には、現実逃避だって十二分に大事なことだと思うぜ?」
(#^;;-^)「こんにちはです。友達二号さん」
(;^Д^)「モラ先輩……」
(;^Д^)「――そこのドアくぐった瞬間、不法侵入ですよ」
( ・∀・)「この場面でそれを言うか? 普通」
- 42 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 21:51:46.03 ID:hZGxMmgt0
川 ゚ -゚)「随分と遅かったじゃないか。らしくもない」
( ・∀・)「アキレス腱が切れてると中々移動が大変で」
('A`)「ああ、まだ治ってなかったんだ」
( ・∀・)「人外魔境万国びっくり人間博覧会じゃねーんだぞ。そんなすぐ治るか」
( ・∀・)「……っつーか、なんでいるの?」
('A`)「遊びに来ただけですけど…………時折、俺はお前を“友人”というカテゴリーに所属させるべきか迷うことがある」
川 ゚ 々゚)「…………」
( ・∀・)「……クルウさんも、どーも」
川 ゚ 々゚)「お久しぶりね」
- 43 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 21:54:23.60 ID:hZGxMmgt0
( ・∀・)「さ〜って、でぃちゃん」
( ・∀・)「俺が盗聴器で聞いてた限りによると――」
(#^Д^)「おい待てコラ」
(・∀・ )「なんだお前。この大事な時に」
(;^Д^)「アンタ、いつの間に盗聴器なんて仕掛けてやがった? あと、盗聴器なんて何処で手に入れたんだよ」
( ・∀・)「ああ、」
( -∀-)「――今日の朝見つけた三つを、ちょっとね」
(#^Д^)「ちっくしょう!やっぱそれか!! 部活での会話は伏線か! トソさん、なんていらんことしてくれてんだよ!!」
( #・∀・)「ああ? テメェ、トソンにそんなこと言って無事に済むと――」
(;^Д^)「理不尽に怒ってるみたいですけど普通に怒りたいのは俺の方ですッ!!」
- 44 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 21:59:05.71 ID:hZGxMmgt0
( -∀-)「――まぁいいや」
( ・∀・)「それで、――でぃちゃん」
(#゚;;-゚)「はい」
( ・∀・)「俺が感じる限りでは……何か言いたいことがあったんじゃない?」
(#゚;;-゚)「……?」
(# ;;-)「私は、自分の処遇に対する発言権は持ち合わせていませんし……」
( -∀-)「あーあー。じゃなくて、じゃなくて」
( ・∀・)「この後輩君に言いたいことが、あったんじゃない?」
(#゚;;-゚)「…………」
(*゚;;-゚)「あ。」
- 45 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 22:04:46.95 ID:hZGxMmgt0
(# ;;-)「あの……プギャーさん……」
( ^Д^)「なんだよ、居候」
(#゚;;-゚)「私は教養や一般常識と言ったものがなく……辛うじて持っている“技能”も今は使わないように言われています」
(# ;;-)「だから、その……どうしてお怒りだったのかは分からなくて……でも、」
(*^;;-^)「――でも、とっても嬉しかったです」
(;^Д^)「っ!?」
(*゚;;-゚)「わざわざ私などの為に怒って下さって、どうも、ありがとうございました」
(* ;;-) ペコリ
(;^Д^)「…………あ」
- 46 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 22:08:05.20 ID:hZGxMmgt0
( ・∀・)「――お前、ここまで言われて、まだ“関係性がない”ってぬかすか?」
( -∀-)「だとしたら見損なうぜ、俺は」
(; Д)「……んで俺の思ってたこと…………」ボソボソ
( -∀・)「淳一族に代々伝わりし読心術だよーん」
(; Д)「アンタ、別に淳家の人間じゃねぇし……はぁ、まったく…………」
( ^Д^)「――っとーに、そん通りですよ」
- 47 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 22:11:11.74 ID:hZGxMmgt0
( ^Д^)「――クルウさん」
川 ゚ 々゚)「なにかな?」
( ^Д^)「さっきの話の答えを言います」
( ^Д^)「――――い・や・で・す!!!」
(#゚;;-゚)「プギャーさん……」
( ^Д^)「俺は、コイツが嫌になるまで一緒にいるって約束しました。んで、まだ『嫌だ』って言われてません」
川 ゚ 々゚)「……あなたには、本来何の義務も何の意味も何の関係性もないのに?」
( ^Д^)「知らないっすよ、そんなのは。俺、コイツの友達ですもん」
川 ゚ 々゚)「!!」
( ^Д^)「その、義務やら意味やらって面倒なのは、その一言で片付けます」
- 48 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 22:14:09.69 ID:hZGxMmgt0
( ^Д^)「だから――」
:川 々):「くくく……」
(;^Д^)「……え?」
川* 々)「――――いひっ。は!あはは!!あははっ、あははははははははははははは!!!」
(;^Д^)「(再び地雷っ!?)」
- 50 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 22:18:01.82 ID:hZGxMmgt0
川*゚ 々゚)「あー、失礼。悪い癖が出た」
川*^ 々^)「好きな奴とは『好き』という理由だけで一緒にいていい……。朝比奈の代表が言ってたのは、そういうことだったか」
(;^Д^)「は?」
川*゚ 々゚)「いやいや。なんでもない」
川*゚ 々゚)「正直――感服しているんですよね。あなたにも、あなたの周りの存在にも」
川*^ 々^)「こんなにも――ああ、こんなにも!!」
(#゚;;-゚)「?」
川*^ 々^)「今、この子は世界中で一番綺麗。誰にも負けないぐらい美しい」
(;^Д^)「何を言って……?」
川* 々)「こんなにも、こんなにも綺麗なのは透明なのは幽玄なのは……。は!あはは!あはははっ!!あはははははははははは!!!」
- 51 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 22:21:29.68 ID:hZGxMmgt0
淳狂という人間は、人助けを趣味としている。
『善いこと』だからやっているのではない。単に『楽しいから』やっているのだ。
ずたずたの、ぐしゃぐしゃの、ぼろぼろの、
不幸で、不運で、下賤で、下劣で、低級で、低俗な、
生き狂ってブチ壊れて捻じ曲がって、触れて外れて異なって違えた――、
――――そういう。
川* 々)
どうしようもない悲劇の主人公達が――好きで好きで堪らないのだ。
絶望した人間が好きで、切望する人間が好き。泣き叫ぶ表情も悲痛な慟哭も濁り切った瞳も全てを愛している。
――人間が、大好きなのだ。
- 52 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 22:24:09.20 ID:hZGxMmgt0
(;^Д^)「…………」
そういう特殊な性癖を説明されたのは全部が終わった後だったけど。
それでも、俺は怖かった。
理解したからこそ、怖かった。
川*^ 々^)「いいです。もう何も言いません。とても楽しかった。ああ――楽しかった!!」
――この人が、怖くて怖くて仕方なかった。
- 54 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 22:27:49.57 ID:hZGxMmgt0
川*^ 々^)「でぃさん。これからも、どうかお幸せに」
(#゚;;-゚)「……? はぁ……」
ガチャ
〈:メ゚−゚〉「……総代様。あまり仕事を放っておかれては困ります」
川* 々)「いや、申し訳ない……。いひっ……」
川*゚ 々゚)「私も迎えが来たので……。では、これにて」
(;^Д^)「…………」
――「御機嫌よう」
恭しく礼をしながら、そう一言だけ言い残して、彼であり彼女でもある誰かは帰っていった。
会って、帰るまで一時間弱。
それはさながら嵐のように過ぎ去った半時だった――。
- 55 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 22:30:22.00 ID:hZGxMmgt0
【――しばらく後】
川 ゚ー゚)「……な? あんまり自慢できたもんじゃないだろ?」
(; Д)「ええ……。滅茶苦茶、疲れました……」
川 ゚ -゚)「クルウ姉さんは善人の皮を被った快楽主義者だからな。“疲れた”ぐらいで済んだのは幸運だぞ?」
(; Д)「……クー先輩は随分まともな部類なんだと理解しました…………」
川 ゚ -゚)「どういうことだお前。ちゃんと説明しろ。舐め回すぞ」
(; Д)「もう、好きにして下さい……」
川 ゚ -゚)「……素直に承諾されると、それはそれでつまらんな」
(;^Д^)「どうしろっつーんだよ……」
- 56 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 22:33:13.42 ID:hZGxMmgt0
( ・∀・)「まー、あの人がああなっちゃったのは、俺達の所為でもあるしな」
( ^Д^)「“俺達の所為”?」
( -∀-)「俺にしろクーにしろ……あの人の周囲は無能が多くて」
( ・∀・)「だから、小さい頃から半ば拷問のような英才教育を受けさせられて、今がある」
( ^Д^)「…………」
( ・∀・)「泣くことも逃げることも許されず。それ故に、あの人は有能になったけど――でも、そうだなぁ……」
( -∀-)「クルウさんが不幸な人間を愛しているのは――――自分と似てて、自分の代わりになってるからなんだろうな」
( ・∀・)「弱くない自分や、普通になれない自分。その代わりなんだろうよ」
( ^Д^)「ベクトルの方向が違うだけで“周囲に歪められた”ってことは同じ……」
( -∀-)「そー。そんな感じだ」
- 58 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 22:37:02.88 ID:hZGxMmgt0
( ^Д^)「(ある意味では、でぃと同じ……)」
(#゚;;-゚)「……どうされましたか?」
( ^Д^)「……いや、別に……。でも、一つだけ言っとくとすれば――“でぃ”」
(*゚;;-゚)「(呼び捨て……)」
(* ;;-)「(初めて、呼び捨て……!)」
川 ゚ -゚)「(ジゴロだ)」
( ・∀・)「(将来はヒモになれるな)」
('A`)「(リア充死滅しないかなぁ……)」
- 59 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 22:42:09.02 ID:hZGxMmgt0
( ^Д^)「――友達の為に怒るのは当たり前だ。わざわざ礼なんて言わなくていい」
(#゚;;-゚)「……!」
(*^;;-^)「ありがとう、ございます……」
(;^Д^)「ああっ、だから、別にいいんだってもう……」
VIP大『アドバイス部』
本日の活動、これにて終了!!
……お後がよろしいようで?
- 60 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 22:45:11.71 ID:hZGxMmgt0
アトガキ――
ご支援ありがとうございました。
「これってモララーが主人公じゃないの?」という突っ込みはナシの方向で。
今回の“Call out”の意味は、しいて言えば“〜〜を要請する”でした。
『ブッ壊れた善人』であるクルウさん。究極の結果善。実存と本質、外面と内面、礼と仁。
彼(あるいは彼女)の結末は、当然、『それはまた別のお話であるのだが』です。
では、オマケを。
- 61 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 22:48:44.48 ID:hZGxMmgt0
Call back‐3
〈:メ゚−゚〉「結構は阿呆の唐名と言いましても……そういう酔狂な人の方が私は好きです。多分、あの『東郊』の少女も」
……すたーとっ
- 62 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 22:52:17.78 ID:hZGxMmgt0
〈:メ゚−゚〉「――総代様。幾ら優秀な部下がいらっしゃったとしても、仕事はしていただかないと……」
川*^ 々^)「ごめんごめん。帰ったらすぐにやるからね」
川 ゚ 々゚)「……ところで石ちゃん」
〈:メ゚−゚〉「何でしょうか」
川 ゚ 々゚)「主人との関係は、どんな感じかな?」
〈:メ −〉「…………主様には大変良くしていただいています……。他人行儀なほどに……」
川 ^ 々^)「――そ。良かった」
川 ^ 々^)「ところで、カール・ヤスパースだっけね。限界状況の中での他者との交わりが、自己確立へのキーと主張していたのは」
川* 々)「あの出来損ないの弟に、それが務まるかな……」
川* 々)「いひっ♪」
- 63 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 22:55:12.68 ID:hZGxMmgt0
【――その夜・11号室】
(*゚;;-゚)「お風呂、お先でした」
( ^Д^)「あ、ああ……」
(*゚;;-゚) ←やや簡素なメイド服着用の美少女。
(;^Д^)「(なんで風呂上りまでメイド服なんだろう……)」
(;#゚;;-゚) ――ッ!!
(#// -/)「あぅ……」
(#// -/)「その節は、本当に粗末なものをお見せしてしまい……」
(;^Д^)「もういいっての」
- 64 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 22:58:03.91 ID:hZGxMmgt0
白い肌、細い首――ほっそりとした四肢――――
――控えめな双丘―――小さい背中、括れた腰つき――抱きしめたら壊れてしまいそうな華奢な立ち姿―――
そして。
(#゚;;-゚)
――そして、“身体に走る幾筋もの傷痕”。
何十、何百という傷。おそらくは、二度と消えることのない痕。
( ^Д^)「…………」
蚯蚓腫れ。それは、鞭によるものだろうか。
円形に晴れ上がった青痣は、殴られたのか蹴られたのか。
煙草を押し付けられたらしき小さな熱痕。刃物で切られたらしき裂傷痕。
- 65 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 23:01:23.35 ID:hZGxMmgt0
背中も、首筋も、肩も二の腕も胸も腹部も臀部も太腿も。
足首から下に至るまで。
普通に服を着ていれば見えることのない――隠された傷痕の数々。
(#゚;;-゚)「……どうか、なされましたか?」
( ^Д^)「…………いや」
一番目立つのは涼しげな目元から頬骨にかけて走る顔の傷か。
けれど。
一番深いのは、そんなものではないのだろう。
( ^Д^)「疲れただろう? もういいから、さっさと寝るといい」
(#^;;-^)「はい。……プギャーさんは、優しいです」
(; Д)「――――っ!」
- 66 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 23:04:09.38 ID:hZGxMmgt0
そんなことはないんだと。
こんなのは全然普通なんだと。
言ってやりたかったのに――俺は、言えなかった。
その一言で、“今までの人生”を穢れた不浄なものだと断定してしまうような気がして。
その一言は、「お前の傷は何の意味もないんだ」と示しているような気がして。
その一言が、でぃの存在意義や目的を全て否定するような気がして。
( ^Д^)「……でぃ。お前今、幸せか?」
(#゚;;-゚)「…………」
(*^;;-^)「はい。とっても、幸せです。プギャーさんも、皆さんも、多分クルウさんも……優しいです」
( ^Д^)「そっか」
( ^Д^)「だからって、惚れるんじゃねぇーぞ?」
- 67 名前:名無しさん@そうだ選挙に行こう 投稿日:2010/07/11(日) 23:07:06.67 ID:hZGxMmgt0
でぃは笑った。
冷ややかで、黒くて玄い目を細めて。
「――もう、惚れてます」
(;^Д^)「……え?」
(#^;;-^)「お休みなさいです」
――呟かれた言葉はあまりにも小さくて、聞こえなかったけど。
その笑顔は、俺の妹にとてもよく似ていた。それは誰かを幸せにすることができる笑顔。
明日も、頑張ろうと思った。
Call back‐3 END
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