( ・∀・)っ】コールアウターのようです!

57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/09/25(土) 22:53:11.31 ID:oGK59FVb0


8‐Call Under Repair

( <●><●>)「嘘と弟の頭はゆったことがないですね。当然どちらも嘘ですけど」




……すたーとっ



59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/09/25(土) 22:56:15.97 ID:oGK59FVb0



 最初に両親が死んだ。
 彼等との思い出はなかったから泣くことはできなかった。



 次に、好きだった近所のお姉さんが死んだ。
 好き……というか、優しくて、家族みたいな人だった。



 最後に兄が死んだ。
 自殺だった。






 ……僕は一人になった。



61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/09/25(土) 22:59:14.71 ID:oGK59FVb0


 兄の葬儀には、兄の知り合いだという綺麗な女の人が来た。
 金色の髪と口調に尊大な印象を受けた。


「悲しい?」


 悲しくない、と答えた。


「……嘘ね」


 嘘だった。

 本当は悲しかった。
 死んでしまいたいぐらい、悲しかった。



62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/09/25(土) 23:04:28.13 ID:oGK59FVb0


「……でも、貴方は少なくともお兄さんよりは、嘘を吐くのが上手だわ」


 兄によく言われたことだった。
 悪い所が似た、と兄は言っていたけど、僕は嬉しかった。

 それが家族である証明のようで、嬉しかったのだ。


「まぁいいわ。貴方は精々素直に生きなさい」


 “どうせ無理だろうけれど”
 小さく、そう付け加えて、彼女は帰って行った。




 ……僕はやっぱり一人だった。



63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/09/25(土) 23:07:03.72 ID:oGK59FVb0



 一人になって嘘が増えた。
 身体中が嘘だらけになった。

 本物なんてないと思っていた。本当なんてありえないと思っていた。
 真実なんて分からない方がいいと思っていた。




 ――そんな時に、




64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/09/25(土) 23:10:20.65 ID:oGK59FVb0




( ><)「…………実は、一目惚れだったんですよ」




 僕は貴女に出会ったようです。





65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/09/25(土) 23:13:29.05 ID:oGK59FVb0


【――某日・帝都、南ブロック、執事喫茶『ギャリソン』】


( ^ω^)「……幼馴染に『お茶しに行きましょう!』と誘われて意気揚々と着いて来たら執事喫茶だったなう」

ξ゚听)ξ「え? 何か言った?」

(  ω)「なんでもないお……。僕はまだ、ツンのこと、よく分かってなかったみたいだお……」

ξ゚听)ξ「? 変なブーン」


ξ*゚听)ξ「こんなにも素晴らしい状況にいるって言うのに、愉しまなきゃそんじゃない!!」

ξ*^竸)ξ「よくもこんなにイケメンを揃えたもんだわっ! 流石、雷門さん!」



(  ω)「……幼馴染は周囲の執事姿のイケメンに見蕩れているので早速アウトオブ眼中になったなう」

(  ω)「軽く死にたくなってきた……」

66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/09/25(土) 23:17:36.44 ID:oGK59FVb0

<-Д-=>「――楽しんでもらえているのなら何より。何より、ですね」

ξ゚听)ξ「ああ……大河さん」

ξ^竸)ξ「でも、なんだか申し訳ないわ。ここのオーナーがお父さんの知り合いだからって、割引してもらうなんて」

<-Д-=>「というよりは従業員割引が近いです」

( ^ω^)「従業員割引?」

<-Д-=>「はい。稼ぎ頭のご友人ということなので……」

ξ;゚听)ξ「稼ぎ頭って……まさか、」

67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/09/25(土) 23:21:00.25 ID:oGK59FVb0

カランカラン

( ><)「――お帰りなさいませ、お嬢様」

川 ゚ -゚)「お席にご案内します。足元に気をつけて……よろしければ、お手を」

(/、//川「はわわわ……」




ξ;゚听)ξ「……あっれー? やっぱり見たことある顔だー?」

<-Д-=>「――素晴らしいです。本当に、素晴らしい」

<-Д-=>「ビロードさんも人気ですが、彼が臨時のバイトとして雇ったクールさん。彼女が凄い」

( ^ω^)「いやおかしくね? アイツ超の付くお嬢様だぜ? なんで雇われてんの?」

ξ;゚听)ξ「ブーン、落ち着いて。キャラキャラ」

(;^ω^)「……おっとっと。想定内でありながら不測の事態過ぎたお」

68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/09/25(土) 23:23:18.29 ID:oGK59FVb0

<-Д-=>「執事喫茶であるのに“男”で“メイド服”のビロードさん」

ξ;゚听)ξ「ねぇ、おかしいよね? 何から何まで間違い過ぎよね? 間違いしかないんだけど」

<-Д-=>「そして、“女執事”という新ジャンルを開拓しつつあるクールさん」

(;^ω^)「待てお。基本腐女子向けであるはずのこの場所でなんで男装がまかり通ってるんだお」

<-Д-=>「彼等はこの店のツートップと言えるでしょう」

ξ;゚听)ξ「正統派執事はどうしたの? それでいいの、この店?」

<-Д-=>「俺はバイトなので……」

ξ;゚听)ξ「“詳しいことは分かりません”ってか! 夢のある執事喫茶なのにそんなトコだけお役所気取りか!!」

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/09/25(土) 23:26:03.17 ID:oGK59FVb0

<-Д-=>「――では、私はそろそろ失礼します。どうも、以前の怪我以来右腕の調子が悪い」

(;^ω^)「え、放置? アレにツッコミはなし?」



( ><)「いってらっしゃいませ、お嬢様」←“アレ”=執事喫茶なのに何故かメイド姿の大学生。

川 ゚ -゚)「どうか、お体にお気をつけて」←“アレ”その二=大金持ちの女執事。



<-Д-=>「そう言われましても、私は残業しない派なので……」

ξ;゚听)ξ「それ執事じゃなくて死神の方でしょ!!」

<-Д-=>「――それでは」シュタッ

(;^ω^)「えっ、あっちょっ――……逃げられたお。逃げ足速ぇ」

70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/09/25(土) 23:29:03.04 ID:oGK59FVb0

( ><)「――お嬢様。ツッコミなら僕が手を貸させて頂きます」

ξ;--)ξ「私がツッコミたいのはアンタの存在だっつーの……」

ξ゚听)ξ「っていうか、ビロードに『お嬢様』って呼ばれるの随分久しぶりね。高校以来じゃない」

( ><)「僕がお嬢様のハウスメイドガイだった頃以来ですから……確かに久しぶりかもしれませんね」

( ><)「小さかったお嬢様も……」


ξ゚听)ξ「え?」


( ><)+「――少しは、大きくなられたようですし」

ξ#゚ー゚)ξ「……ねぇビロード。私の“どこが”小さくて、“どこが”少し大きくなったって?」

( ><)「胸ですね」

ξう;)ξ「ハッキリ言いやがった! 泣いてやるっ!!」

71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/09/25(土) 23:32:45.27 ID:oGK59FVb0

(;^ω^)「まあまあ。大きくなったんだから……」

川 ゚ -゚)「――そうだぞ。胸が大きいとこういう服がキツいんだぞ」

ξう;)ξ「さり気なく自慢するなー!!」

( ><)「モララーさんやプギャーさんは、小さい方がお好きだと聞いていますよ?」

(;^ω^)「(これ以上攻略の難易度上げる気かお? 何処までも僕の敵か、メイドガイ……)」

ξ--)ξ「むむ……」

ξ--)ξ「モララーは女の子に首絞められて喜ぶ変態……後輩は中学生に欲情して同棲してる変態……」

ξ#゚听)ξ「――どっちも変態じゃないっ!! ふざけんな!!」

(;^ω^)「事実なだけに酷ェ!!」

川 ゚ -゚)「(人間の悪評というのはこういう風に広がっていくのか……覚えておこう)」

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/09/25(土) 23:35:04.26 ID:oGK59FVb0

川 -ー-)「――しかし、どうだこの服? エロいだろう」

ξ;゚听)ξ「執事服にエロさを求めるのは腐女子だけだと思うけど……」

川 ゚ -゚)「何を言うか。男用の服を女が着ると、かなりエロい仕様になるんだぞ?」


川 ゚ -゚)「例えば、ジャケットの前のボタンを外す」

川*゚ -゚)「――すると、本来は男性用のシャツなので胸部分がキツくて膨らみがやたらと強調されて即ちエロい!!」

川*゚ー゚)「どうだ、この萌え!! ムラムラするだろう!!?」


( ><)「なるほど。ワイシャツ妹萌えと近いものがありますね」

ξ;--)ξ「知らないわよ、そんなの……」

ξ#゚听)ξ「――それで、ブーン。その鼻を覆ってる手を外して。今すぐ」

(; ω)「いやこれは改めてクーの胸とか意識しちゃって思わずエロい気分になって鼻血が出たとかそういうのじゃなくて……」

ξ#--)ξ「は・ず・せ」

73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/09/25(土) 23:38:03.44 ID:oGK59FVb0


【――数分後・店外】


( ><)「……ブーンさんは奥で氷なう、なわけで」



ξ#--)ξ「…まったくブーンは……もうっ、なんなのよなんなのよなんなのよ……」ブツブツ



( ><)「そして、ツンさんはイライラなう、なわけですが、」

( ><)「“主人公がデレデレしてるとヒロインが制裁”ってお決まりの構図は、一体いつ生み出されたのでしょうね?」

川 ゚ -゚)「そりゃアレだろう。漫画の怪物のお得意のパターン」

( ><)「ああ……なるほど。日常ラブコメの大御所ですもんね」

74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/09/25(土) 23:41:03.03 ID:oGK59FVb0

( ><)「でも、僕は『うる星●つら』より『めぞ●一刻』派なので、あまりそういうのは……」

川 ゚ -゚)「確かにお淑やかで美人で理想のヒロインだったが、でも管理人さんだってちょくちょくキツく当たってただろう」

( ><)「当たってましたけど大抵勘違いか早とちりだった気がします」

川 -ー-)「今で言う『天然キャラ』だからな。普段とのギャップにも萌えるよな」

( ><)「思えば、とてつもない時代の先取りですよね」

川 -ー-)「ああ。その萌え精神は、サンデーの作家に脈々に受け継がれている……」

(;><)「引退したみたいに言わないで下さいよ。今でもバリバリ現役ですよ、あの人。新作連載してますから」

川*゚ -゚)「サンデーの看板みたいなものだからな。『犬●叉』世代の私達にはちょっと寂しい気もするが」

( ><)「確かにそうですね……。一つの時代が終わっちゃった感があります」

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/09/25(土) 23:44:19.59 ID:oGK59FVb0

( ><)「現在のサンデーの萌え看板はなんだと思いますか?」

川* -)「絶チルだろ。美少女、はぁはぁ……」

(;><)「……設定年齢的にガチでマズイですよ……」

川 ゚ -゚)「作者繋がりで、モララーは美神さんだよな」

(;><)「準主役に徐々に主役を奪われる主人公、ということですか? ヤなポジションだなぁ……」

川 -ー-)「まったくな……」

川 -)「――アイツが女じゃなくて良かったよ」

川 ゚ー゚)「後輩と恋仲になっていたかもしれないしな?」

( ><)「おや……へぇ、そうですか……」

川;゚ -゚)「……なんだよ」

( ><)「いえ、別になんでもありませんよ」

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/09/25(土) 23:47:10.74 ID:oGK59FVb0

( ><)「――クールさん」

川 ゚ -゚)「クーでいい」

(;><)「過去に対するネタ潰しですよ、それ……いやまぁ伝わらないでしょうが」

( ><)「それで、クーさん」

川 ゚ -゚)「なんだ。改まって」


( ><)「――“恋をすると辛い”だから“恋をしない”……というのは、乱暴な論法と思いますか?」


川 ゚ -゚)「…………」

( ><)「折角恋愛漫画の話をしたんです。こういう真面目な話も、たまにはいいでしょう?」

川 -ー-)「……ふん」

77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/09/25(土) 23:50:04.89 ID:oGK59FVb0

( ><)「……どう思いますか?」

川 ゚ー゚)「……聞くまでもなく、私の答えなんてわかっているんだろう? メイドガイ」

( ><)「……ええ、」

( ><)「酷い嘘吐きの兄を持ったもので、多少は自信はありますよ」

( ><)「……それでも、僕は貴女の口から聞きたいんです」

川 ゚ー゚)「まるで私に告白しているようじゃないか」


( ><)「だとしたら……どうします?」


川 -)「…………それこそ、聞くまでもないことだろうに……」

( ><)「ですよね。……でも今の、割とキメ顔だったんですが」

川 -ー-)「はは。その程度で私が落ちると思っていたのか?」

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/09/25(土) 23:53:21.84 ID:oGK59FVb0

( ><)「それで――どうですか? クーさん」

川 -)「……ふん」


川 ゚ -゚)「恋をして恋を失った方が一度も恋をしなかったよりマシだ。――当たり前だろう、そんなこと」


( ><)「……それが叶わぬ恋だとしても?」

川 ゚ー゚)「叶う・叶わないはこの際関係ないのだ。『人を好きになること』自体が、既に何にも換え難い、尊いことなのだから」

川 ゚ -゚)「告白する必要だって、本来はないのかもしれないな」

( ><)「でも、貴女は告白するでしょう?」

川 -ー-)「当たり前だ」

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/09/25(土) 23:56:05.64 ID:oGK59FVb0

川 ゚ -゚)「口に出して伝えなければ……感謝の気持ちは伝わらない」

( ><)「感謝の、気持ち?」

川 -ー-)「なんだ、そんなことすら分からないのか。恋愛童貞か、お前」

( ><)「まぁ……恥ずかしながら」

川 ゚ -゚)「仕方ない。クーお姉様が懇切丁寧に説明してやろう」



川*-ー-)「それは――“好きにならせてくれて、ありがとう”って気持ちのことだよ」

川* -)「『人を愛する』という素晴らしいことを教えてもらったんだ。せめて……礼ぐらい言わなければ、な」



( ><)「……その想い。その終着点に――どんな結果が待っていても?」

川 ゚ -゚)「どんな結果が待っていようとも、だ。その禁忌は世界よりも重いのだから」

80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/09/25(土) 23:59:07.68 ID:oGK59FVb0

( ><)「じゃあ――僕も少し、頑張ってみますか」

川 -ー-)「……ああ。それがいいさ」




ξ#--)ξ「…ブーンの馬鹿ブーンの馬鹿ブーンの馬鹿……」ブツブツ

ガンッ ガンッ ガンッ

(;><)「――ツンさん。うちの店の看板を蹴るのは止めて下さい」

ξ;゚听)ξ「えっ? ああ……ごめん、無意識で……」

(;><)「無意識って……あなた、単なる馬鹿じゃなくて何かしら精神に疾患があるんじゃないですか?」

ξ#゚听)ξ「なんだとー!!」

( ><)「ああっと、からかいに来たんじゃなかった……えっとですね、」

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2010/09/26(日) 00:02:05.01 ID:oGK59FVb0

(;^ω^)「いちち……。ツンは容赦ねぇお……」

川 ゚ -゚)「おお、ブーン。遅かったな」

( ^ω^)「へ?」



( ><)「――ツンさん」

ξ;゚听)ξ「な、なによ、改まって……」

( ><)「今度の日曜日――僕と、デートしてくれませんか?」



( ゚ω゚)

川 -ー-)「本当に、遅かったな……」



 ――後半へ続く?


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