( ^ω^)達は缶けりをするようです

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 13:02:42.75 ID:rRvMHNEvO


从;ー;从「返してよ! レモナちゃんとデミタスくんを返してよ!!」

('A`)「レモナってのは俺が殺ったな。デミタスってのは誰が殺ったんだ?」

(´・ω・`)「僕だよ。ホントは殺すつもりなんて無かったんだよ、本当さ。でも折角絶妙な加減で生かしておいてあげたのに殺してくれって頼んでくるもんだから……」

('A`)「絶妙な加減、ねぇ」

(´・ω・`)「手始めに眼球を毟り取ってやった。次に手足をリリスの力で捩じり切って……」

从;ー;从「いやああああああっ!! 言わないで! 聞かせないで!」

(´・ω・`)「君の方はどうやって?」

('A`)「両手をもいで犯した。そしたら舌噛み切って勝手におっ死んだよ」

5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 13:05:36.80 ID:rRvMHNEvO
从;ー;从「こんなの絶対おかしいよ……。どうして缶けりで人が死なないといけないの? 私達が何か悪い事したの?」

('A`)「弱きは罪」

(´・ω・`)「愚かしきは罪」

 二人の声が重なる。
炉端の野良犬を見下すような視線の先には布切れ同然となった衣服を羽織る少女。
 小学校六年生になったばかりの彼女の身体は僅かながらも女性となる兆しを見せており、胸は控え目に膨み、臀部は丸みを帯びていた。

从;ー;从「間違ってるよ……。こんなの絶対……」

 絹のような白い肌のあちこちから血が滲んでおり、その様は籠の中の弱った鳥のように見える。
 消えゆく命には更なる絶望を。
 壊れゆく身体には更なる悲愴を。
 その塗り潰された意志を具現化する者は……。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 13:11:11.72 ID:rRvMHNEvO
( ^ω^)「なんだってーこんなにー胸が高鳴るんだろー」

( ^ω^)「いつだってーそうさ冷静が売りだったのーにー」

( ^ω^)「あーあー夢も無い、そう希望も無いけどね諦められーなーい」

( ^ω^)「ワンタッチなら良いじゃない? せめて一晩だけーでもー」

( ゜ω゜)「ヴェイヴェェェ……」(デスボイス)

 現れてしまった。
終わりを告げる終わった存在。
零と唯の狭間の無限なる領域を支配する絶対意志。
盲目白痴の魔王アザトースをその身に宿す少年。
 彼の名前は内藤ホライゾン。

7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 13:17:21.65 ID:rRvMHNEvO
从;'ー'从「ひっ──」

 彼女、渡辺は大きく身震いして失禁した。
恐怖に打ちのめされて泣き叫ぶ事は許されていないから。
 本能が理解していた。自分はきっと競の場で品定めされている糧に過ぎないのだと。
喰われるだけの存在に自由意志は有り得ない。
ただ、自身の終わりを受け入れるだけ。

( ^ω^)「渡辺さん。僕は今から君をレイプする、異論は無いかお?」

从'ー'从

( ^ω^)「おっおっおっwwww従順だおwwwwとんだ売女だおwwwwwwww」

从;ー;从

 静かに流れる涙。奪われた純潔。
 這い寄る混沌。傍観する四つの目。
 豚
 のような吐息。どす黒い脈動。
    放た
     れた欲望。
 
 
10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 13:22:45.40 ID:rRvMHNEvO
 ぐ ち
  ゃり
 
  。
 
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 13:26:29.14 ID:rRvMHNEvO
川 ゚ -゚)「…………」

 校舎の屋上からその惨劇を見下ろす影が二つ。
彼女らは眉一つ動かすことなく、冷めた視線を送っていた。

( ・∀・)「……はあ。醜いねぇ、醜い、醜いよ」

 丹精な顔立ちながらも僅かに小学生の幼さを残す少年は噛み締めるように呟いた。
傍らに立つ黒髪の少女は何も答えない。

( ・∀・)「僕達には彼等の道を正す必要が有る。そうは思わないかい?」

川 ゚ -゚)「…………」

 黒髪の少女は尚も押し黙る。
まるで張り付けられた人形の表情。瞬き一つしない彼女の存在はあまりにも無機質だった。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 13:30:48.80 ID:rRvMHNEvO
川 ゚ -゚)「……正す。その考えはあまりにもおこがましい」

 重い口から鳴る声は澄んだソプラノの音色。
だが抑揚の無い喋り方は綺麗な声との違和を生み出し、彼女の存在を更に不気味に見せた。

川 ゚ -゚)「私達は決して他者を見下してはならない。それが最強の座に在り続ける者の使命だから……。傲慢は油断を生み、絶対という壁はそこから崩れ始める」

( ・∀・)「じゃあ僕達が彼等と対等だと思えと? それはあまりにも難しい命令じゃないかな?」

 少年の背中が神々しく煌めき、一対の翼を象ってゆく。

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 13:38:37.73 ID:rRvMHNEvO
( ・∀・)「汝に裁きを下すのは誰か『神の如き火の意志』」

 鍵語と共に光は一層強くなり、不安定な存在だった光の翼は完全に顕現する。

( ・∀・)「熾天使ミカエル。この力と拮抗し得るのは君の力だけさ。あんなちゃちな狂気なんて死骸に群がる蟻と同義」

川 ゚ -゚)「…………」

 翼がはためき、優しい風を巻き上げる。
少女の黒髪がふわりと舞い上がった。

川 ゚ -゚)「その傲慢、必ずお前を滅ぼす種となるぞ?」

( ・∀・)「言ってろ。彼等の首を君に捧げて、僕達の絶対を証明してみせるよ」

19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 13:43:27.49 ID:rRvMHNEvO
 ────。

( ^ω^)「僕達と缶けりしないかお?」

( ^ω^)「え? 遠慮しとく? 最初からアテにしてねーよ死ねビッチ」

(´・ω・`)「缶けり、あ……行っちゃった」

('A`)「…………」影が薄いのを自覚してるので最初から何も喋らない。

( ^ω^)「缶け──。いやそんなゴミを見るような目で見ないでくれお切実に。いやいや、ナンパじゃないから、いやマジで」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 13:47:30.56 ID:rRvMHNEvO
(´・ω・`)「少し派手に暴れ過ぎちゃったみたいだね。僕達に挑んでくる人も居ないし……」

(# ^ω^)「何処の世界に缶けりをセックスの隠語にする馬鹿がいるんだお!ムカつくお!!」

('A`)「もうブーンちでスマブラやらない? 64のやつ」

( ^ω^)「お前残機減ったら何も言わずに人のストック取ってくからやだお」

('A`)「じゃあゴールデンアイ──」

(´・ω・`)「トイレに引きこもるから却下」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 13:51:02.44 ID:rRvMHNEvO
( ^ω^)「大体ドクオはゲームの世界でも陰湿過ぎるんだお。一緒にやってて不快だお」

(´・ω・`)「誰も壊せないような流れをあっさりぶっこわしていくよね」

( ^ω^)「ドクオのくせに(笑)」

(´・ω・`)「ドクオのくせに(笑)」

('A`)「ぷるぷる、ぼくはわるいドックンじゃないよ」

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 13:55:44.44 ID:rRvMHNEvO
( ^ω^)「ちっ、じゃあ今日はあと一回誘って駄目だったら解散するお」

(´・ω・`)「おっ、そこに木偶の坊みたいな人がいるよ。おーい」

( ∵)

( ^ω^)「おっ、おにーさん。僕達と缶けりやらないかお?」

( ∵)

( ゜ω゜)イラッ

(;´・ω・`)「落ち着くんだブーン」

( ∵)

(´・ω・`)「あの……僕達と缶けりしませんか? 人数が足りなくて……」

( ∵)

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 13:59:06.83 ID:rRvMHNEvO
('A`)「何も言わないって事は良いって事なんだぞー。何か言わないと勝手に人数に入れちゃうからなー」

( ∵)

(´・ω・`)「あの、何か言わないとホントに人数にいれますよ?」

( ∵)「ゴエエエエエエッ!」

(; ^ω^)ビクッ

(;´・ω・`)ビクッ

(*'A`)ビクンビクンッ

( ∵)「良いよ」

26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 14:03:25.42 ID:rRvMHNEvO
( ^ω^)「まさか普通に喋れるとは思わなかったお」

( ^ω^)「そんなこんなで僕達は学校のグラウンドに移動してちゃちゃっと缶をセッティング」

( ^ω^)「後はこのビコーズくんの友達を待つだけなのでした」

(´・ω・`)「誰に説明してんの?」

( ^ω^)「気にするなお」

('A`)「地の文入れ過ぎたら頭悪いのがバレちゃうからね」

( ^ω^)「おっ、あの二人がビコーズくんの友達かお?」

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 14:09:16.09 ID:rRvMHNEvO
( ∴)

( ・∀・)「やぁビコーズ。遅れてすまないね、ゼアフォーを借りてくるのに手間取ってしまった」

( ∵))フルフルッ

( ^ω^)「すごく……イケメンです」

(('A`))

(´・ω・`)「落ち着くんだドクオ。イケメンが敵なんじゃない。イケメンを持て囃してブサメンをけなす世の中が敵なんだ」

( ・∀・)「君達が相手かい? 今日はお互い楽しくやろうじゃないか」

( ^ω^)「おっおっ、よろしくだお」

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 14:14:58.77 ID:rRvMHNEvO
( ・∀・)「っと、始める前に自己紹介がまだだったね。僕はモララー。五年生だ」

(´・ω・`)「ショボン、一年生です」

('A`)「ドクオー」

( ^ω^)「内藤ホライゾン、ブーンでいいお」

( ・∀・)「ショボン、ドクオ、ブーンだね。早速取り決めをしよう、ルールはこの街のスタンダードで良いね? 攻めと守りはこのコインで決める。表なら僕達が攻め。裏なら君達の攻めだ」

(´・ω・`)「分かりました」

( ・∀・)b「よし、じゃあ行くよ」ピーン

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 14:19:03.08 ID:rRvMHNEvO
( ・∀・)「裏だ」

(´・ω・`)「という事は……」

( ^ω^)「僕達が攻め手だお」

( ∵)ザザッ

( ∴)ザザッ

( ・∀・)「ビコーズ、ゼアフォー。二人ともやる気満々だね。では僕も下らない前置きは控えるとしよう。皆位置について」

( ・∀・)「死闘めッ!!」(^ω^ )

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 14:25:31.68 ID:rRvMHNEvO
( ^ω^)「零と唯の狭間『盲目白痴の王の間』」

 ブーンの周りの空気がざわめき、缶を取り囲むように黒い靄が這い寄る。

( ^ω^)「終わりを始めるお、アザトース」

 刹那、眩い極光と共に黒い靄が爆発し、缶を空高く吹き飛ばす。
ブーンはそれを満足げに眺めると、同志の名を呼びその場を後にする。

( ^ω^)「ドクオ」

('A`)「あいよ」

 肉眼では捉えきれないスピードでドクオは空高く飛び上がる。
右手に宿すは反逆者の力。狙い撃つは闘いのゴング。

('A`)「トリックスター『反逆者の誓い』」

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 14:31:12.92 ID:rRvMHNEvO
('A`)「征け、ヨルムンガンド」

 現れるは禍々しい大蛇。
鞭のようにしなる光の蛇は空き缶を更に空高く突き上げ、肉眼では確認出来ない高みに運ぶ。

('A`)「ショボン」

(´・ω・`)「よしきた」

 ドクオは器用に光の蛇を校舎の突起に巻き付け、ターザンの要領でその場を後にする。
 バトンを引き継いだのはショボン。
その身に宿すは人類の祖の妻。

(´・ω・`)「リリスの喚び声『嘆きの園の終わり』」

35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 14:36:47.30 ID:rRvMHNEvO
(´-ω・`)「僕の為に死ね、リリス」

 空間が歪み、物理法則を狂わせる。

(´・ω・`)「重力場を形成」

 ショボンの身体が何かに押し出されたかのように不自然な形で地面を滑る。

(´・ω・`)「死にたくなかったら離れた方が良い。それじゃあ幸運を祈るよ」

 狂気を孕んだ笑みをモララーに送り、ショボンは何かに引きつけられるようにその場を後にした。

( ・∀・)

( ∵)

( ∴)

 残された三人は微動だにせず。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 14:41:54.18 ID:rRvMHNEvO
 その時、空が煌めいた。
何の細工も無い只の空き缶はまるで流星の如く、モララー達に向かって落下する。

 それはリリスの意志。
遥か高みに打ち上げられた缶はリリスが生み出した重力場の影響で全てを貫く槍と化していたのだ。

( ・∀・)「ああ、悲しい。悲しいな。此処にも神に抗おうとする者がいる」

 落下。衝突。爆発。炎上。破壊。
 圧倒的な暴力がモララー達を貫いた。

38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 14:49:14.57 ID:rRvMHNEvO
( ∵)「ガッ──」

( ∴)「グォ──」

 悲鳴を上げる間も無く尊い二つの命が刈り取られた。
痛みも、苦しみ、屈辱も、悲哀も無い。
その事象が与えるのは完全なる破壊。
血肉が飛散した。モララーの身体が赤く染まった。モララーは壊れなかった。モララーは立っていた。

( ・∀・)「神よ。これも貴方が私に下した試練なのですね? ああっ! 何と無慈悲な事か!!」

( ;∀;)「ビコーズ、ゼアフォー。全ては神の反逆者たる彼等が悪いのだ。必ずお前達の意志は僕が真っ当しよう!!」

39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 14:55:49.69 ID:rRvMHNEvO
( ・∀・)「だからせめて……」

( ・∀・)「僕と共に永遠に生き続けておくれ」

(  ∀ )「汝に裁きを下すのは誰か『神の如き火の意志』」

 光を帯びた翼は血に塗れて赤く染まっていた。
両手を広げ、空を仰ぐモララーの頬を熱いものが伝い落ちる。

( ・∀・)「我等に神の加護があらんことを」

 次の瞬間モララーは信じられない行動を起こす。
それはあまりにも原始的で、醜かった。
ぐちゃり
   ぐちゃり
   ち
ゃり──。

 背徳の不協和音がグラウンドを支配する。

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 15:01:49.53 ID:rRvMHNEvO
('A`)「仲間を食ってやがるだと……?」

 その光景を一番最初に目の当たりにしたのはドクオだった。
 聡明な頭脳を以て敵の拠点を見渡せる安全地帯を瞬時に割り出した彼は自分達の技の影響を逸早く偵察しようとしたのだ。

 結果、圧倒的な暴力は敵二人を殲滅する事に成功した。
だが両手を上げて喜ぶ事は出来ない。
そんな功績など消し飛んでしまうほどの凄惨なる光景がそこにあったのだから。

('A`)y-「けったいな性癖だぜ……。カニバリズムなんざがはびこってやがるのか。世の中は広いな……」

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 15:08:01.62 ID:rRvMHNEvO
 ココアシガレットを噛み砕くがその甘味は舌に伝わらなかった。

(;'A`)「まさか……。ビビってやがるのか? この俺が?」

 両手で肩を抱き、震えを止めようとするがそれは無意味に終わる。

(;'A`)「ふざけろ! 鬼畜さなら俺の方が上だ!」

 思い出せ、幼稚園児の腸を首に巻き付けて自慰に更けた時の事を。

 思い出せ、幼稚園の先生を婚約者の前で犯した時の事を。

 思い出せ、母親の子宮にコガイを詰め込んだ時の事を。

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 15:12:17.11 ID:rRvMHNEvO
(# A )「そうだ。俺はいつだって残忍だ、卑劣、邪悪だ」

 物心ついた時、彼に尊敬の心を植え付けたのはルカ・ブライトだった。
 豚は死ね! と民を切り捨てる彼の悪のカリスマ。それは幼年期のドクオを釘付けにした。

( A )「残忍になる為には何が必要だ? そう力だ。弱者を捩じ伏せる力があって初めて人は残忍になれる」

 だから……。

('A`)「俺は強い。俺はあいつよりも邪悪だ。だからあいつよりももっと強い」

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 15:19:04.20 ID:rRvMHNEvO
('A`)「フェンリル」

 ドクオは拳を地面に叩き付けた。
それと同時に光り、猛り狂う狼が地面を噛む。

('A`)「全てを食らええええええっ!!」

 進撃──。
 猛る狼は地面を食い進み、モララーの元へと駆る。
その様はまるで大海を突き進む巨鯨のようだ。
 遮る木々はへし折れた。
 遮る建物は崩れ落ちた。
 躍り出た先は開けたグラウンド。だがドクオはまだ止まらない。

('A`)「モララアアアアアアアアッ!!!」

( ・∀・)「…………」

48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 15:24:32.27 ID:rRvMHNEvO
( ・∀・)「ドクオみーっけ」

 ぽんっ、と缶を踏む音がした。
間抜けな響きはドクオを一気に現実へと引き戻す。

( ・∀・)「馬鹿だなあ、自分から見つかりに来たんじゃあ缶けりにならないじゃないかwwwww」

('A`)「え、え、あ?」

('A`)「え?」

( ・∀・)「wwwwwwwwwww」

('A`)「え? 僕笑われてるの? だって……」

( ・∀・)「だぁかぁらぁ、これは缶けりでしょ? これで君はここから動けないよ、分かる?」

('A`)「あ、はい……わかりました」

49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 15:27:51.55 ID:rRvMHNEvO
('A`)「お金もなーい」

('A`)「力もなーい」

('A`)「ないないばっかでキリがなーい」

('A`)「げーんじょうはそんーなんでー」

('A`)「どうせならー街くらいー」

('A`)「きーれいなー娘と歩きたーい」

('A`)「気がつーいただぁけだあぁあぁ」(綺麗なヴィブラート)

('A`)「…………」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 15:33:11.83 ID:rRvMHNEvO
( ^ω^)「馬鹿かおあいつは」

 ドクオは熱くなり過ぎた挙げ句肝心な事を忘れていたのだ。
 これは喧嘩でも殺し合いでもなく、缶けりなのだ。
定められたルールが有り、勝敗を分かつ条件を取り決めている。

( ^ω^)「個人の感情に踊らされる奴から脱落していくんだお」

 命のやり取りはルールを守った上でする事だ。
何処の世界に缶けりにおいて万全を期した敵の拠点にのこのこと現れる馬鹿がいる?

( ^ω^)「まぁ……。真っ当に缶けりに準ずる気なんて僕にも無いんだけど」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 15:40:23.05 ID:rRvMHNEvO
(´・ω・`)「馬鹿なのかな彼は」

 呆れて溜め息すら出来なかった。
缶けりという遊びの特性から、攻め手側の行動は守り手側の行動に依存するケースが多い。

(´・ω・`)「……僕達の気に当てられて尚取り乱さずにルールを順守するか。中々の使い手だね」

 命のやり取りは決して強制ではない。
守り手側がルールによって攻め手を殺す意向ならば、当然缶けりに死者は出ない。
 命のやり取りをするという事は必然、攻め手と守り手が対峙している状況にある。

56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 15:46:38.37 ID:rRvMHNEvO
 つまり拠点に居る守り手は攻め手と対峙した時、殺し合いに発展させるかどうかを選ぶアドバンテージを得られる。
攻め手は名前を呼んで缶を踏まれれば無力化するので当然選択権は無い。

(´・ω・`)「ブーンはよく解ってるみたいだね。そして攻め手が唯一あの状況で選択権を与えられる方法も」

 名前を呼ばれて缶を踏まれる。
その動作は短いようで長い。
一対一の状況ならば守り手の優勢が約束されるがそれが多人数体一人ならばどうだろう。
長いようで短い動作を二回繰り返す。
それは攻め手に缶を譲る事と同義。

(´・ω・`)「行くよブーン。ドクオよりも賢い君ならば今がアレをする時だと解ってる筈だ」

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 15:51:23.05 ID:rRvMHNEvO
 モララーから選択権を剥奪する強引な手段。
それは多人数同時の奇襲によって缶を踏む動作を間に合わなくさせる事だ。
 戦わざるを得ない。 そんな状況を確実に作り出す手段を人々はこう呼ぶ。

(´・ω・`)「スクランブル!!」(^ω^ )

 違う場所に同じ意志を持つ者が二人。
ブーンとショボンがモララーの元へと踏切ったのはほぼ同時だった。

( ^ω^)「おおおおおおおっ!!」

(´・ω・`)「はあああああああああっ!!」

 互いに共鳴する。
 闘いはまだ始まったばかりだ。

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2011/08/09(火) 15:53:50.05 ID:rRvMHNEvO
第二話「あなどれがたきぼくら」


   わ   り

 

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