- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/26(日) 21:36:53.67 ID:gNr/dFaC0
- 「む、誰かおるのか?」
こたつがしゃべった。
老人のような、しわがれた声。
それは二週間分の買い物をしてアパートに戻ったときのこと。
こたつのコンセントが差してあって、俺としたことが差しっぱなしだったか?
とドクオは不審に思っていたところだった。
('A`)「……」
おもむろにこたつ布団を上げてみると、
(,,゚Д゚)「よう。ここの家主か、邪魔してるぞ」
喋る猫がこたつを占領していた。
(,,゚Д゚)は居候な猫のようです
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/26(日) 21:38:01.84 ID:gNr/dFaC0
- ('A`)編
こたつで丸まっていた猫は、老人臭く息を吐く。
(,,゚Д゚)「やはりいいな、人間の住み家は恵まれておる」
('A`)「なんだお前。出て行けよ」
(,,゚Д゚)「ん、なんだ猫が喋ってるのに驚かんのか」
('A`)「ありきたりな設定だからな」
(,,゚Д゚)「ありきたりな設定て。わしはリアルなんだが。設定なんかない」
('A`)「んな猫が喋ってるくらいでいちいち腰抜かしてたまるか。俺も暇じゃないんだよ」
そう言いながらドクオはパソコンの前に座る。
(,,゚Д゚)「……そんな風には見えんが」
ドクオの目は画面を向いていた。
画面にはもちろんエロ系の動画。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/26(日) 21:39:22.49 ID:gNr/dFaC0
- ('A`)「……」スルッ
(;゚Д゚)「え、おい」
('A`)「……」シコシコ
(;゚Д゚)「む、無言無表情で自慰を始めるなオイ!」
('A`)「……ちょっとそこのローションとって」シコシコシコシコ
(,,゚Д゚)「む、どこにあるんだ? というか何に使うんじゃ」
('A`)「いいからとって……そこのテーブル……」
(,,゚Д゚)「あぁあれだな。ちょっと待っておれ」
(,,゚Д゚)「あれ、届かん。猫ジャンプ届かんぞゴルァ」
('A`)「はやく。イっちゃうからはやく」
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/26(日) 21:43:58.18 ID:gNr/dFaC0
- (,,゚Д゚)「よし、取れたぞ。おい少年、これでいいのか?」
('A`)「よし、それをこっちへ……」
ローションを受け取るため一旦、一物を握りながら猫の方を向くドクオ。
その表情が一瞬恍惚なものに変わる。
(*'A`)「あっ」ドッピュ
(,,゚Д゚)「……」
(,,゚Д゚)「くっさ……なんじゃこれ……」
('A`)「正直すまんかった」
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/26(日) 21:50:50.68 ID:gNr/dFaC0
- 4日後、いつものようにパソコンをいじるドクオ。
猫がゆっくりとドクオの頭によじ登り、てっぺんで体を丸める。
('A`)(……重い)
(,,゚Д゚)「なんだかんだで居候させてもらって4日になるな」
('A`)「そうだな。よく俺のホワイトソースかけられて出て行かなかったよ」
(,,゚Д゚)「ほんとにな。というかお前この4日間、外に出てないよな。学校や仕事はどうした」
('A`)「学校にも仕事にも行ってない。たまにやるバイトで最低限の金もあるし問題はない」
(,,゚Д゚)「ははぁ、引きこもり兼、フリーターってことか」
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 21:52:22.34 ID:gNr/dFaC0
- ('A`)「文句あるか?」
(,,゚Д゚)「否定はしないね。利口な生き方だと思うよ」
(,,゚Д゚)「最低限の働きでも食ってはいける、そういう日本のシステムを利用するのも一つの生き方だと、わしは思う」
('A`)「思う思うって、随分曖昧な言い方だな」
(,,゚Д゚)「食っていくだけじゃ駄目なんだろう、人間は。わしは猫だからな。そのへんはよく理解できん」
('A`)「はぁ、そうか」
(,,゚Д゚)「……人間の世界ってのは、便利なのか不便なのかわからんな」
('A`)「そうだな」
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/26(日) 21:56:09.61 ID:gNr/dFaC0
- それっきり会話が途切れた。
ドクオがひたすたネットサーフィンしているのを、猫は頭の上で退屈そうにブラブラ揺れていた。
そのたびに尻尾が首をかすめて、くすぐったい。
(,,゚Д゚)「なぁドクオよ。それより知ってるか?」
('A`)「知らん」
(♯゚Д゚)「聞いてから言わんか」
憤慨する猫。
(,,゚Д゚)「猫はさ、犬と違って門番もできないし、芸も覚えられないだろ」
(,,゚Д゚)「なのに犬と同じくらい多くの家庭で飼われているんだ。どうしてかわかるか?」
('A`)「さぁな」
お喋りな猫だな、とうんざりしつつ答えるドクオ。
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/26(日) 21:58:36.89 ID:gNr/dFaC0
- (,,゚Д゚)「わしら猫が可愛いからだよ。人なつっこくておとなしいし、最高な愛玩動物なのだよ」
お前はあんまり可愛くないけどな。
(,,゚Д゚)「可愛いは正義なのだよ可愛いだけで養ってもらえる」
(,,゚Д゚)「その点ではニートや引きこもりはわしらに似ているな。親は子供が可愛い。だから無償で面倒も見るし、食事も用意するんだ」
('A`)「……別に俺は親からの仕送りはないけどな」
('A`)「つか……結局何が言いたいんだ、居候」
(,,゚Д゚)「わしが可愛いならそろそろ飯を用意しろ」
死ぬほど回りくどい奴だ。
('A`)「キャットフードがあるだろ。それでも食ってろよ」
(,,゚Д゚)「あれ、味ないからやだ。鯖缶開けてくれ。しょっぱいから味噌抜きで」
('A`)「駄目」
(,,゚Д゚)「……けち」
そう言って猫は、ドクオの頭の上からだらーっとだらしなくずり落ちた。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 21:59:27.51 ID:gNr/dFaC0
- 皿の上に乗った鯖(味噌抜き)を嬉しそうに頬張る猫を、ドクオは眺めていた。
結局ドクオの今日のおかずはビックカツ(20円)のみとなってしまった。
質素すぎて泣けてくる。
(,,゚Д゚)「き、貴様がくれたんだからな。そんな物欲しそうな目で見ても遅いんだからな。ゴ、ゴルァ」
('A`)「はぁ、別に」
(,,゚Д゚)「……」
('A`)「なんだよ」
(,,゚Д゚)「なぁドクオ……お前は自分の考えをあまり言わん奴だよな」
('A`)「俺は……」
('A`)「もともとこんなキャラだからな」
言葉を濁すドクオ。
猫はフーッとため息を吐き、続ける。
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 22:03:55.11 ID:gNr/dFaC0
- (,,゚Д゚)「そうじゃないだろ。お前と言葉をかわすと釈然としないというか……後味が悪い」
(,,゚Д゚)「わしはお前と話しているのに、まるで第三者からふわふわと見られているような、そんな気分なんだ」
(,,゚Д゚)「ここに居候して4日目。これほど相手の上辺だけしか知らないのは、初めてだ。そんなにわしが信用ならないか? 喋る猫など、やはり気味が悪いか?」
ドクオは下を向いて、語り始める。
('A`)「違う。猫が喋るからとか、そんなの関係ない。それ以前に俺は――」
('A`)「他人を信じることを、やめたんだ」
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 22:08:06.87 ID:gNr/dFaC0
- ドクオは高校の頃、完全にクラスで独立していた。
友達は一人もいなかったが、特にいじめはなかったし、この孤独を心地よいとさえ思っていた。
そんなとき。
( ^ω^)「おっおっ。次は移動教室だおドクオくん。一緒にいくお!」
クラスのムードメーカー、ブーンだった。
いつもは他の友達と一緒に教室も移動していたし、あまり会話もしたことがなかったので、ドクオはたじろいでいた。
('A`)「あ、あぁ」
( ^ω^)「は、早く教科書を用意するお。遅刻しちゃうお」
ブーンは、どこか落ち着かなさそうにしていた。
まだチャイムまでは時間があるのに。
あまり話さないものだから、緊張しているのだろうか。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/26(日) 22:08:56.52 ID:gNr/dFaC0
- その一日でドクオは急速にブーンと仲良くなっていた。
アニメや漫画、格闘ゲームという趣味が共通したからか、話題も尽きなかった。
――校門前
( ^ω^)「また明日だお、ドクオくん! 今度ドクオくんの家に格ゲーしにいくお!」
('A`)「あぁ来い来い。あ、あと……」
('A`)「くん付けはやめてくれよ。ドクオでいいぜ」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「わかったお。ドクオもブーンって呼び捨てにしてくれお」
('∀`)「……へへっ。また明日な」
( ^ω^)ノシ「ばいぶー」
高校で初めて友達ができた。
ドクオは今までとは違う幸せな気分で校門を出て行った。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 22:09:39.27 ID:gNr/dFaC0
- ( ^ω^)「おっおwwwもうみんな出てこいおwwwww」
( ・∀・)「おまwwwぼっちと仲良くなるのうますぎwwwww」
爪'ー`)y‐「あいつの笑顔初めてみたwwwキモ過ぎwwwww」
( ^ω^)「これが一週間続くとかwwwマジ勘弁だおwwwww」
<ヽ`∀´>「罰ゲームはしっかり最後までやらなきゃ面白くないニダー!」
( ^ω^)「わかってるおwwwww」
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 22:14:11.34 ID:gNr/dFaC0
- ('∀`)「〜♪」
苺コンプリートを口ずさみながら家につくドクオ。
いつにもなく気分上々だった。
('∀`)「ただいまー!」
('、`*川「あら、おかえりドクオ。いつになく上機嫌ねぇ」
('∀`)「聞いてくれカーチャン。今日俺にもついに……」
( ´∀`)「ドクオ君おかえりモナー」
(;'A`)「?」
(;'A`)「カーチャン、この人は?」
('、`*川「うふふ、この人はモナーさん。たまたまお店で知り合って仲良くしてるの」
( ´∀`)「よろしくモナー」
(;'A`)「あ、よろしくお願いします」
('、`*川「挨拶も済んだことだし、これから3人でお食事にでも行きましょ」
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 22:24:57.86 ID:gNr/dFaC0
- それから、3人でファミレスに出掛けた。
モナーは人見知りだったドクオにも気さくで、ドクオもだんだん打ち解けていた。
父が死んでから、こんなに母が楽しそうにしているのをドクオは久しぶりに見た。
母は、このままモナーと一緒になってしまうのだろうか。
それでもいい。
母のこの笑顔を、ドクオはこれから見守っていきたいとさえ思っていた。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 22:25:39.70 ID:gNr/dFaC0
- ――翌日
('∀`)「ブーン!」
( ^ω^)「どうしたんだおードクオ」
('∀`)「明日土曜だろ、うちに来てアルカナやろうぜアルカナwww」
( ^ω^)「おっお、そういえばそんなこともいってたお(まずいお、明日はフォックスたちと遊ぶ約束してたお……)」
('A`)「来てくれるだろ……?」
( ^ω^)「も、もちろんだお!」
('∀`)「……へへっ」
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 22:27:33.43 ID:gNr/dFaC0
- (;^ω^)「……というわけで明日は不参加だお」
( ・∀・)「ブーン抜きだとつまんねぇんだが、しょうがねぇな」
爪'ー`)y‐「せいぜいぼっち君とのホリディ楽しんでこいよwww」
<ヽ`∀´>「罰ゲームは絶対ニダー! ついでにカマ掘ってもらえニダ!」
( ^ω^)「ちょwwwドクオそっちの気ありかおwww」
( ・∀・)「まだ二日しか仲良くしてねぇのに家呼ぶとかそれしかねぇだろwwwww」
( ^ω^)「ますます行く気失せるおwwwとにかく明日はごめんおwww」
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 22:30:18.04 ID:gNr/dFaC0
- ――翌日
( ^ω^)「はぁ……」
足取り重く、ブーンはドクオの家に来ていた。
呼び鈴をならすと、嬉しそうな笑顔のドクオが出てきた。
('∀`)「へへっ、よく来たな」
( ^ω^)「おっお(はぁ、だるいお……)」
('、`*川「あら、いらっしゃい。あなたがドクオが言ってたブーンくん?」
(*^ω^)「そ、そうですお! お邪魔しますお!(うはwwwドクオのカーチャン美人www)」
- 33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 22:37:46.76 ID:gNr/dFaC0
- ドクオはブーンを部屋に入れ、早速ゲームを始めていた。
('∀`)「へっへ、ブーン格ゲー弱いな」
( ^ω^)「お、じゃあブーンも本気を出すしかないおね」
('∀`)「へっ、じゃあ俺は持ちキャラでも使うか(やっぱり格ゲーは一人より対人のが断然おもしれぇw)」
( ^ω^)「ディズィーwwwさっきのアルカナといいドクオの使うキャラは露出度が高いかロリキャラばっかだおwwwww」
('∀`)「うるせwww」
( ^ω^)「大技できわどいポーズばっかさせんなおwwwww」
('∀`)「たwまwたwまwだwかwらwwwww」
( ^ω^)「おっおwww(なんか……)」
( ^ω^)(ちょっと楽しいおwww)
('、`*川「二人とも楽しんでるとこごめんね。お母さんちょっと出掛けてくるから」
('∀`)( ^ω^)「はーい(お)」
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 22:39:44.56 ID:gNr/dFaC0
- ――ある喫茶店
('、`*川「モナーさん。大事なお話って?」
( ´∀`)「ペニサスさん」
モナーはもったいぶったように一拍おいて、続ける。
( ´∀`)「こんな僕でよければ……結婚してほしいモナ」
('、`*川「!」
ペニサスの胸が高鳴る。
夫が他界してから数年。
こんな感情は、久しぶりだった。
- 38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 22:41:19.89 ID:gNr/dFaC0
- それから一週間過ぎた。
母がモナーとの結婚の話をしてきていた。
その顔はこの上なく幸せそうで、モナーなら、母を大事にしてくれるはず。
ドクオはそう確信していた。
父が死んで3年。毎日が楽しく思えるのはそれ以来だ。
('∀`)「ブーン、放課後ゲーセンでDQNボコろうぜwww」
( ^ω^)「おっお、上等だおwwwww」
( ・∀・)「……」
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 22:44:48.09 ID:gNr/dFaC0
- ――放課後
('A`)「よっしゃ、早速いくか」
( ^ω^)「いくおwww」
( ・∀・)「……」
爪'ー`)y‐「あー、ちょっといいかブーン」
<ヽ`∀´>「ニダ」
( ^ω^)「お? ちょっと先に駅前のゲーセンいっててくれおドクオ」
('A`)「お、おぉ」
なにやら不穏な雰囲気だ。
俺を先に帰らせるブーンも、いつになく気まずそうにしていた。
教室を出ようとするドクオの背中に、フォックスの声が掛かる。
爪'ー`)y‐「待て、ドクオも残れ」
(;'A`)「……」
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 22:48:09.80 ID:gNr/dFaC0
- 爪'ー`)y‐「なぁブーン。罰ゲームってもう終わったんじゃなかったっけ?」
(;^ω^)「お……」
(;'A`)「は? 罰ゲーム?」
( ・∀・)「そ、罰ゲーム。ルールはトランプで負けたら」
<ヽ`∀´>「一週間ぼっちドクオの友達の”フリ”をすることニダー」
('A`)「……」
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 22:50:16.41 ID:gNr/dFaC0
- ('A`)「……ブーン……」
(;^ω^)「ち、違うお」
爪'ー`)y‐「なにが違うわけ? まさか罰ゲームなしって言い出すんじゃねぇだろうな」
( ・∀・)「おいおい、これから俺らほったらかしてそのぼっち君と遊ぶわけ?」
(;^ω^)「ドクオは面白いやつだお! きっとみんなも仲良くなれるはずだお!」
爪'ー`)y‐「……お前もハブくよ?」
(;^ω^)「うっ」
(;^ω^)「違うんだおドクオ、これは……その……」
( A )「……どう何が違うんだよ……」
ドクオの掠れた声がブーンを更に追い詰める。
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 22:56:24.89 ID:gNr/dFaC0
- (;^ω^)「そ、それは……」
( A )「いや、罰ゲームだもんな。あぁそっか。しかたなかったんだもんな、ハハハ……」
(;^ω^)「……」
('∀`)「……いい夢、見させてもらったぜ」
無理矢理、引きつった笑顔を作るドクオ。
そして教室ドアの方を向く。
泣いてたまるか。こんなやつらに、涙を見せてたまるか。
これは必然。
俺なんかに、友達ができるわけがないんだ。
ドクオは一気に教室を出て行った。
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 23:00:18.27 ID:gNr/dFaC0
- ドクオの背中を追いかけることもできず、ブーンは呆然と立ち尽くしていた。
( ω )「……」
確かに、最初はポーズだった。
でも一週間ドクオと一緒にいて、本当に友達になれると思ったんだ。
でも。
爪'ー`)y‐『……お前もハブくよ?』
僕は。
(;^ω^)「おっおwwwドクオ完全に騙されたおwwwww」
<ヽ`∀´> 「ニダ?」
(;・∀・)「え? ちょおまwww今のもまさか演技www」
爪;'ー`)y‐「おいおいwww柄にもなく騙されたじゃねぇかwww」
何を言っているんだろう、僕は。
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 23:02:05.88 ID:gNr/dFaC0
- 僕は。僕は。
( ^ω^)「敵を騙すならまず味方からだおwww罰ゲームのフィナーレとしては最高だったはずだおwwww」
( ・∀・)「ふざけろwwwやっぱブーンは最高すぎwwwww」
爪'ー`)y‐「おい今度はボーリング行くぞwwwまた負けた奴は罰ゲームなwwwww」
( ^ω^)「おっおwww今度は負けないおwwwwww」
僕は最低の、卑怯者だ。
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 23:04:57.34 ID:gNr/dFaC0
- ('A`)「くそっ……くそっ……」
街を走りながら、呪詛のように悪態を吐くドクオ。
なにが友達だ、なにが友情だ。
(#'A`)「くそがぁぁぁぁ!」
引きこもってやる。
あんなことがあったあと無理して行く必要はないんだ。
ふと、足を止めるドクオ。
視線はある反対側の歩行者道路。
男女が体を寄せて歩いていた。
( ´∀`)ζ(゚ー゚*ζ
('A`)「モナー……さん?」
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 23:06:26.19 ID:gNr/dFaC0
- 誰だ、あの女は。
無意識のうちにドクオは二人のあとをつけていた。
妹?
そうであってほしい。
でも、兄妹だとしてもくっつきすぎじゃないか?
('A`)「あっ」
人通りの少ない通り。
モナーとその女がキスをしていた。
ζ(゚ー゚*ζ「ねぇモナーさん。あのオバサンといつまで付き合ってるの? 私と一緒になってくれるんでしょ?」
( ´∀`)「モナモナ。もうちょっと遊んだらスッパリ切り捨てるモナ」
('A`)(……野郎)
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 23:21:54.97 ID:gNr/dFaC0
ドクオは気がつくと二人の前に躍り出ていた。
ζ(゚ー゚*ζ「な、なぁに、この子」
( ´∀`)「……ドクオくん、聞いていたモナか」
(#'A`)「どういうことだ。カーチャンを……俺のカーチャンを騙してたってのか!」
( ´∀`)「あぁそうだモナ。ちょっと美人だったから遊んでやったモナ」
(#'A`)「野郎ぉ……」
- 67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 23:21:00.76 ID:gNr/dFaC0
- 拳を作り、振り上げようとするドクオ。
と、女が携帯を取り出し、それを見せびらかす。
ζ(゚ー゚*ζ「ねぇ、暴力はやめてくれない? 警察呼んじゃうよ?」
(#'A`)「くっそ野郎ども……」
こいつらもアイツらと、ブーンたちと同じだ。
人の気持ちを踏みにじる、糞野郎。
ドクオは家の方へと走り出した。
せめてモナーから捨てられる前に、俺がカーチャンに伝えてやらなきゃ。
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 23:24:21.37 ID:gNr/dFaC0
- くそ、くそ。
もう誰も信じられるか。
やっぱり最後に信じられるのは……。
('A`)「カーチャン!」
('、`*川「あら、おかえり。どうしたの? そんなに慌てて」
(;'A`)「カーチャン落ち着いて聞いてくれ。実はさっき――」
俺は全てを話した。
さっきあった全てのこと。
カーチャンは、それを黙って聞いていた。
( 、 *川「……」
(;'A`)「信じられないかもしれないけど、事実だ。だからアイツのことはもう――」
――バシッ!
- 73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 23:26:06.02 ID:gNr/dFaC0
- 一瞬、何をされたのかわからなかった。
左頬が熱い。
叩かれたのだ、母に、平手で。
母に叩かれたのは、いつ頃ぶりだろう。
そう、小学校のとき。俺がふざけて窓ガラスを割ってしまったのだ。
愛のある、戒めを込めた平手。
でもこれは、俺に対して憎しみでもあるような――
(;、;*川「嘘を吐かないで! モナーさんが……モナーさんが……」
(;'A`)「でも、でも」
(;、;*川「モナーさんが気に入らなかったのは分かるわ。でも、ありもしない嘘を吐くなんて最低よ!」
(;'A`)「ち、違……」
(;、;*川「そんなにモナーさんが嫌なら……」
「あなたが出て行きなさい」
( A )「は……」
- 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 23:28:14.75 ID:gNr/dFaC0
- その言葉を理解するのに、だいぶ時間がかかった。
そうだ。
今まで最も信じていた人に、裏切られたんだ。
何か、世界が違う物に見えてきた。
母にとって、ここで生まれ今まで暮らして来た俺より、あのモナーとかいうやつの方が……。
( A )「……出てってやるよ」
(;、;*川「え?」
(;A;)「出てってやるつってんだよ、こんな家!!」
('、`;川「そ、そんな。私、そんなつもりじゃ……」
(;A;)「も、もう誰も……」
(;A;)「うわあああああああ!!」
俺は学生服のまま、家を飛び出していた。
- 77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 23:30:47.95 ID:gNr/dFaC0
- ('A`)「ま、そんなこんなで今に至るわけ」
(,,゚Д゚)「……」
('A`)「信じるってなんだ? 裏切られてもいいってことなんだろ? つまり俺は」
('∀`)「負けたのさ」
皮肉に笑ってみせるドクオ。
そんなドクオに、猫は押し黙ってしまう。
('A`)「信じた俺の負け。信じた俺が悪い」
('A`)「信じた俺が信じた俺が信じた俺が信じた俺が」
(,,゚Д゚)「ドクオ……」
- 78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 23:32:50.33 ID:gNr/dFaC0
- ――ピンポーン
不意に、チャイムが鳴る。
(,,゚Д゚)「確かに、信じるに値しない人間はいるかもしれない」
(,,゚Д゚)「だがどんな人間でも、時に嘘を吐いて、時に裏切って、時に騙すという行為に逃げてしまいたいこともあるんだ」
――ピンポーン
こんな時に誰だ。
チャイムの音からも、猫の言葉からも逃げたくて、俺は耳を塞ぐ。
(,,゚Д゚)「それが、人の弱さ。これだけは分かってほしい」
- 80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 23:34:36.64 ID:gNr/dFaC0
- インターホーンを押す主は、やがて玄関のドアを叩き出す。
うるさいうるさいうるさい。
「ドクオ!」
ドアの向こうから聞こえるこの声、確かに聞き覚えがあった。
「ドクオちゃん! いるんでしょ!?」
この声も。
(,,゚Д゚)「だからもう一度だけ……信じてみないか?」
- 82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 23:35:53.65 ID:gNr/dFaC0
- (;^ω^)「僕だお、ブーンだお! どうしても謝りたいことがあるんだ。開けてくれお!」
('、`;川「ドクオちゃん! 私が間違っていたわ! お願いだから開けてちょうだい!」
(,,゚Д゚)「ドクオ!!」
( A )「……」
( A )「……っせぇな……」
ドクオはゆっくりと立ち上がった。
苛立たしげにズカズカと玄関の方へ行き、乱暴にドアを開けた。
- 87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 23:38:57.46 ID:gNr/dFaC0
- (#'A`)「今更なんの用だてめぇら……」
( ^ω^)「あれからずっとこんなアパートで暮らしていたのかお……。捜したお、ドクオ」
(#'A`)「今更よくその面見せられたな……ブーン」
( ^ω^)「ドクオ……」
( ;ω;)「ブーンが、ブーンが間違っていたお」
( ;ω;)「確かに、最初はお遊びだったお。ただの友達ごっこだったお。でも、一緒に遊んでいるうちに……」
( ;ω;)「本当に友達になれると思ったんだお……」
( ;ω;)「ごめんだお。謝っても謝りきれないことだけど、これだけは言いたかったんだお」
('A`)「……」
- 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 23:40:02.83 ID:gNr/dFaC0
- (;、;*川「私もよ、ドクオちゃん」
ペニサスは既に号泣していた。
(;、;*川「今まで一番ドクオちゃんを見てきたのは私なのに、ドクオちゃんのこと何も分かってあげられなかった」
(;、;*川「あのあとモナーさんに会って、そのことを問い詰めてみたの」
(;、;*川「そしたらドクオちゃんの言う通りで……そのとき、痛感したの」
(;、;*川「あぁ、私って、なんて駄目な母親なんだろうって」
( A )「……」
(;、;*川「たった一人の息子のことも……信じてあげることができなかった」
- 90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 23:41:31.35 ID:gNr/dFaC0
- それからその場は静寂に包まれた。
聞こえるのは、二人が啜り泣く音。
静寂を破ったのは猫の一声だった。
(,,゚Д゚)「どうだ、ドクオ」
喋る猫に、二人は少しぎょっとしていた。
だがお構いなしに続ける猫。
(,,゚Д゚)「二人は自分のしたことを認め、頭を下げた。だが一度お前を裏切った者たちだ。信じるかどうかは」
(,,゚Д゚)「あとはお前次第だ」
( A )「……」
俺は。
- 92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 23:44:03.71 ID:gNr/dFaC0
- ( A )「まいった……ここまで謝られちゃ、仕方ねぇな」
( ;ω;)「!」
(;、;*川「!」
( A )「次に裏切ったら、次に裏切ったら、お前ら……」
(;A;) 「絶対にもう、許してやらねえからな……。絶対、死んでも許さねぇ」
( ;ω;)「ドクオ……」
(;、;*川「うぅ……」
(,,゚Д゚)「……」
3人で泣き崩れているのを、猫は静かに見つめていた。
- 94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2009/07/26(日) 23:47:21.75 ID:gNr/dFaC0
- それを見届けた猫は、開け放たれた窓の枠に飛び乗った。
(;'A`)「? ……どこいくんだ、居候」
(,,゚Д゚)「わしは同じところには5日以上居座らない主義だ。区切りもついたことだしな」
(,,゚Д゚)「ここを出て行くことにした」
(;'A`)「居候。お前のおかげだ、二人を許すことができたのは」
(;A;)「ありがとう……」
(,,゚Д゚)「……いや、踏み出せたのはお前の力だ。これからはせいぜい」
(,,゚Д゚)「人を信じられる人生を送ってくれ」
(,,゚Д゚)b「笑え。お前が人を許したその勇気、ぐっじょぶだ」
親指を立てたいのだろう。猫は少し可愛らしく前足を上げただけだった。
(;A;)「うぅ……」
( ;∀;)b「……」
俺の不格好な笑顔で満足したのか、そのまま猫は窓から降り立っていった。
- 96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 投稿日:2009/07/26(日) 23:48:02.50 ID:gNr/dFaC0
('A`)編おわり
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